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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1264041
審判番号 不服2011-18267  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-24 
確定日 2012-10-04 
事件の表示 特願2008-514421「耐熱性基板内蔵回路配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月15日国際公開、WO2007/129545〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年4月20日(パリ条約による優先権主張2006年5月2日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年5月16日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成23年8月24日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。

第2 平成23年8月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年8月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成23年8月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「耐熱性基板と該耐熱性基板を内蔵する内蔵用配線基板とからなる耐熱性基板内蔵配線板であって:
前記耐熱性基板が、
セラミック製のコア基板と、
該コア基板の表面と裏面とを導通するスルーホール導体と、
コア基板上に形成されていて、層間樹脂絶縁層と導体層とが交互に積層され、各導体層間がバイアホール導体にて接続されたビルドアップ配線層と、からなり、
前記内蔵用配線基板が、前記耐熱性基板の裏面側に形成されている層間樹脂絶縁層と、該層間樹脂絶縁層上に形成されている導体回路と、該導体回路と前記スルーホール導体とを電気的に接続するバイアホール導体とを有し、
前記耐熱性基板は、さらに、
コア基板の表面に形成されたビルドアップ配線層の表面に、電子部品の電極と接続する実装用パッドを有し、
前記実装用パッドのピッチは、前記コア基板のスルーホール導体のピッチより狭いことを特徴とする耐熱性基板内蔵回路配線板。」(なお、下線部は補正箇所を示す。)
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「コア基板」について、「セラミック製の」との限定を付加し、「層間樹脂絶縁層」の形成箇所について、「耐熱性基板」から「耐熱性基板の裏面側」に限定し、「耐熱性基板」について、「前記耐熱性基板は、さらに、コア基板の表面に形成されたビルドアップ配線層の表面に、電子部品の電極と接続する実装用パッドを有し、前記実装用パッドのピッチは、前記コア基板のスルーホール導体のピッチより狭い」との限定を付加したものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-284632号公報(以下、「引用例1」という。)には、「回路基板及びその製造方法」(段落【0001】参照)に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0002】
【従来の技術】近年、電子機器を小型化、高速化するには、半導体集積回路装置の集積度の向上とともに、実装基板の高密度化が要望されている。このため、回路基板内の配線が微細化されるとともに、単層プリント基板から、層状に複数の配線が形成された多層プリント基板が用いられるようになっている。現在では数十層の多層配線が内蔵されたプリント基板が実用化されている。そして、異なる層の配線同士はプリント基板を貫通するスルーホールを通して接続される。殆どの電子部品はこのようなプリント基板上に実装されている。
・・・(中略)・・・
【0004】次いで、図7(c)に示すように、スルーホール4a?4dの内壁面に銅膜5a?5dを形成して所望の層間の配線2a?2dの接続を行う。しかし、このようなプリント基板101の場合、1つのスルーホール4aで1組の配線3b,3dの接続しか行えないこと、全ての層でスルーホール4a?4dを避けて配線する必要があることなどの理由で、高密度化には限界がある。一方で、半導体集積回路装置の多端子化、狭ピッチ化に伴い、上記のような形態のプリント基板では対応困難な高密度配線に対する要望が増しつつある。
【0005】より一層の高密度化を実現するためには、インナビアホール(層間接続孔)による層間の配線接続が必要である。そのようなものとして、図8に示すように、多端子、狭ピッチのLSIチップを複数搭載するマルチチップモジュール(MCM)用に、薄膜多層法やビルトアップ法によって層状に複数の配線12a?12dを高密度に形成し、層間絶縁膜13a?13cに形成されたインナビアホール14a?14cにより異なる層の配線12a?12dを接続した多層回路基板(MCM基板)102が開発されている。」
イ 「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、回路基板全体をこのようなインナビアホール14a?14cを有する多層回路基板102とするのは著しく高価となる。このため、高密度配線を有する半導体チップを一度MCMとしてまとめてから比較的密度の低い配線を有する部品とともに通常のガラスエポキシ基板に実装している。
【0008】このような方式は工程数が増えるという問題があり、さらに、MCMユニット103と他の部品(チップ抵抗やQFPなど)とをプリント基板101に搭載する際、先にハンダ付けしたMCMユニット103側のハンダ接合部が外れないように対処しなければならない。このため、MCMユニット103側のハンダが溶融しても、部品が外れないよう接着剤等で補強・固定するか、或いはMCMユニット103側のハンダ付けにPb-5SnやPb-10Snといった高融点ハンダを使用する必要がある。前者の場合、工程が煩雑になるし、後者の場合は、基板材料や回路部品に対して高い耐熱性が要求されるため、材料コストが高くなるという問題がある。
【0009】更に、表面実装部品の割合が増加しつつあるとはいえ、現状ではDIP(DualInline Package )等の挿入型部品も使用されており、半導体チップと挿入型部品とを同一基板に搭載する必要もある。しかし、インナビアホール14a?14cを有する多層回路基板102はスルーホールを有しないので、挿入型部品を搭載することは困難である。
【0010】本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて創作されたものであり、通常の耐熱性を有する基板材料や回路部品を用いたときでも回路部品の搭載作業が簡単で、チップと挿入型部品とを同一基板に搭載することができ、かつ高密度化を図ることができる回路基板及びその製造方法を提供するものである。」
ウ 「【0012】本発明においては、上下の配線同士が回路基板を貫通する貫通孔を通して接続されている回路基板の一部に、上下の配線同士が層間絶縁層のビアホールを通して接続されている多層配線部分を有する。即ち、回路基板には、インナビアホールによる配線接続領域と貫通孔による配線接続領域が混在している。また、多層配線部分内の配線と多層配線部分以外の回路基板の配線とは、多層配線部分とその下の回路基板の両方を貫く貫通孔を通して接続されるか、或いは、多層配線部分の接続孔を通して接続される。
【0013】ところで、隣接するインナビア間の間隔は隣接する貫通孔間の間隔と比べて狭くしうる。しかも、インナビアは、接続すべき異なる層の配線の間に介在する層間絶縁膜のみに形成されるのに対して、貫通孔は接続すべき異なる層の配線の間のみでなく、回路基板全体に及ぶ。このため、貫通孔による配線接続領域では配線密度をあまり高くできないが、貫通孔が部品搭載領域に露出するため挿入型部品を搭載することができる。一方、インナビアによる配線接続領域では、貫通孔がないため挿入型部品を搭載することはできないが、配線密度を高くすることができる。」
エ 「【0036】(2)第2の実施の形態
第2の実施の形態において、第1の実施の形態に係る回路基板と異なるところは、薄膜多層基板113の下地基板(絶縁性基板)41に予め下地基板41を貫通する基板間接続孔44a,44bを形成し、この基板間接続孔44a,44bを通して表面及び裏面の電極42a,43同士を接続し、その裏面側の基板間接続孔44a,44bに導電性接着剤55a,55bを埋め込んでいることである。そして、この基板間接続孔44a,44bの導電性接着剤55a,55bを介して回路基板114内の配線と薄膜多層基板(部分基板)113内の配線とが接続される。」
オ 「【0037】(薄膜多層基板(部分基板)の作成方法)図3(a)?(d),図4(a)?(c)は、本発明の第2の実施の形態に係る薄膜多層基板の作成方法について示す断面図である。
(a)まず、図3(a)に示すように、縦横2インチで、厚さ0.8mmのガラスエポキシ基板(絶縁性基板)41の両面に電極又は配線42a,43を形成する。続いて、そのガラスエポキシ板41の両端にある電極又は配線42a,43を通るスルーホール(接続孔)44a,44bを形成し、その内壁に導電膜45a,45bを形成して両面の電極又は配線42a,43同士を接続する。次いで、スルーホール44a,44b内にエポキシ樹脂46a,46bを充填する。
【0038】(b)次いで、図3(b)に示すように、両面にアクリル樹脂からなる接着層を形成した厚さ55μmのポリイミドフィルムからなる層間絶縁膜47aと厚さ10μmのCuホイル48をこの順にガラスエポキシ基板41の上に積層する。
(c)次いで、図3(c)に示すように、Cuホイル48上にフォトレジスト膜49を形成した後、露光し、その後現像してインナビアホールを形成すべき領域にフォトレジスト膜49の開口部を形成する。
【0039】続いて、フォトレジスト膜49の開口部を通してCuホイル48をエッチングし、ポリイミドフィルム47aを露出させる。次いで、KrFエキシマレーザを全面に照射し、レーザアブレーションによってフォトレジスト膜49の開口部内に露出したポリイミドフィルム47aをエッチングし、除去してCuホイル48b及びポリイミドフィルム47aを貫通する開口部(インナビアホール)50aを形成する。
【0040】(d)次に、図3(d)に示すように、フォトレジスト膜49を除去した後、開口部50a内及びCuホイル48b上に無電解メッキによってCu膜51bを形成する。
(e)次いで、図4(a)に示すように、フォトレジスト膜52を形成した後、露光し、その後現像して配線を形成すべき領域にフォトレジスト膜52を残す。このフォトレジスト膜52をマスクとしてCu膜51b及びCuホイル48bをエッチングし、除去して最小線幅60μmの第2層目の配線42bを形成する。
【0041】以上により、第1層目及び第2層目の配線42a,42bとこれらの間に挟まれたインナビアホール50aを有する層間絶縁膜47aが形成される。
(f)引き続き、上記(b)?(e)の工程を繰り返し、図4(b)に示すように、層間絶縁膜47bと3層目の配線42cと層間絶縁膜47cとを順に形成し、さらに最上層の層間絶縁膜47c上に4層目の配線と部品搭載のためのパッド42dを形成する。
【0042】(g)以上のようにして4層の配線を形成した後、図4(c)に示すように、絶縁性基板の裏面にエポキシプリプレグフィルム(接着用絶縁膜)53を置き、エポキシプリプレグフィルム53が硬化しない程度の温度凡そ120℃に加熱して接着する。次に、エキシマレーザを部分的に照射して電極43及び導電膜45a,45b上のエポキシプリプレグフィルム53を除去する。
【0043】次いで、銀粉と熱硬化型のエポキシ樹脂からなる導電性接着剤55a,55bを印刷により電極43及び導電膜45a,45b上に形成する。以上により、薄膜多層基板113が完成する。」
カ 「(回路基板の作成方法)図5(a)?(c)は、本発明の第2の実施の形態に係る回路基板の作成方法について示す断面図である。
【0044】まず、図5(a)に示すように、第1の実施の形態と同じエポキシプリプレグフィルム63a?63dを間に挟んで第1の実施の形態と同じガラスエポキシ板61a?61eを5枚、薄膜多層基板113を入れ込む凹部116が形成されるように重ねる。このとき、エポキシプリプレグフィルム63bには開口部が形成されており、かつ第2層目のガラスエポキシ板61bの上面には、第1の実施の形態の配線のほかに薄膜多層基板113の裏面の導電性接着剤55a,55bと接続させる電極又は配線62bが形成されている。従って、凹部116の底部には電極又は配線62bが露出し、薄膜多層基板113の導電性接着剤55a,55bと接触するようになっている。
【0045】次いで、回路基板の凹部116内に上記の薄膜多層基板113を入れ込んだものを、温度180℃,圧力10気圧の条件でホットプレスし、それらを相互に固着させる。このとき、薄膜多層基板113裏面の電極43及び導電膜45a,45bと2層目のガラスエポキシ基板61b上の電極又は配線62bとが導電性接着剤55a,55bを介して圧着される。なお、ガラスエポキシ板61a?61eを5枚重ねた基板が薄膜多層基板113以外の回路基板114を構成する。
【0046】次いで、加熱して薄膜多層基板113裏面の電極及び導電膜45a,45bと2層目のガラスエポキシ板61b上の電極又は配線62bとの間で電気的な接続を得る。上記のように薄膜多層基板113を入れ込んだ回路基板114を形成した後、回路基板114のガラスエポキシ板61a?61eの積層部分であって層間接続を行う部分をドリルで孔明けしてスルーホール(貫通孔)64a,64bを形成する。
【0047】続いて、スルーホール64a,64b内を活性化した後、無電解メッキによりスルーホール64a,64bの内壁に銅膜65a,65bを形成する。これにより、接続すべき異なる層の配線同士を接続させる。以上により、回路基板が完成する。その後、図5(c)に示すように、回路基板を加熱した状態で、薄膜多層基板113上にハンダ等を介してLSIチップ122を載せ、薄膜多層基板113以外の回路基板114上に挿入型部品121や配線密度の比較的低い回路部品123をハンダ等を介して載せた後、冷却し、固着させて回路装置が完成する。」
キ 「【0048】以上のように、本発明の第2の実施の形態に係る回路基板においては、第1の実施の形態と同様に、配線密度の高い領域とスルーホール64a,64bを有する領域とが同一の回路基板に存在するため、スルーホール64a,64bを有する領域に挿入型部品やサイズの大きい回路部品を搭載し、配線密度の高い領域にチップ等の引出し電極数の多い部品を搭載することにより、半導体チップや挿入型部品及びその他の必要な部品を同一の回路基板に搭載することができる。」
ク 図4(b)及び(c)から、パッド42dの間隔は、ガラスエポキシ基板41のスルーホール44aとスルーホール44bとの間隔より狭いことが看取できる。
ケ 図4には、ガラスエポキシ基板41上に形成されていて、層間絶縁膜47a,47b,47cと配線42a,42b、42cとが交互に積層され、各配線42a,42b、42c間がインナビアホール50a,50b、50cにて接続された「ビルドアップ配線層」が図示されている。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「薄膜多層基板113と該薄膜多層基板113を内蔵する回路基板114とからなる回路基板であって:
前記薄膜多層基板113が、
ガラスエポキシ基板41と、
該ガラスエポキシ基板41の表面と裏面とを導通する内壁に導電膜45a、45bが形成されたスルーホール44a,44bと、
ガラスエポキシ基板41上に形成されていて、層間絶縁膜47a,47b,47cと配線42a,42b、42cとが交互に積層され、各配線42a,42b、42c間がインナビアホール50a,50b、50cにて接続されたビルドアップ配線層と、からなり、
前記回路基板114が、前記薄膜多層基板113の裏面側に形成されているガラスエポキシ基板61a,61bと、該ガラスエポキシ基板61a,61b上に形成されている配線62a,62b,62eと、該配線62a,62b,62eと前記スルーホール44a,44bとを電気的に接続するスルーホール64a,64bとを有し、
前記薄膜多層基板113は、さらに、
ガラスエポキシ基板41の表面に形成されたビルドアップ配線層の表面に、LSIチップ122の電極と接続するパッド42dを有し、
前記パッド42dの間隔は、前記ガラスエポキシ基板41のスルーホール44aとスルーホール44bとの間隔より狭い回路基板。」

(2)引用例2
同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-197811号公報(以下、「引用例2」という。)には、「コア基板、配線基板、あるいはそれらを用いた半導体モジュールおよびそれらの製造方法」(段落【0001】参照)に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
サ 「【0002】
【従来の技術】マルチチップモジュールやマルチチップパッケージなどはベースとなるコア基板上に微細配線層を介して複数の半導体チップや受動電気素子を高密度に実装してひとつの機能モジュールを形成したもので、例えばこれらをマザー基板上に搭載して使用する。この際、コア基板には用途によってガラスエポキシ基板などの有機基板やセラミック基板などの無機材料基板が用いられることが多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、一般的に用いられる前記のようなコア基板は、基板の材料構成あるいは基板製造工程中の熱などに起因する基板寸法変化や表面うねりあるいは表面凹凸のため、微細配線の形成が難しい。また、受動電気素子を基板に作り込む場合、有機基板では耐熱性の面から難しいという問題がある。さらに、基板上に搭載される半導体素子との熱膨張の不整合によって、半導体素子とそれを受ける配線基板のはんだ接続部に発生するせん断応力を解消するのに多々工夫を要する。
【0004】このため、最近、熱膨張が比較的シリコンに近く表面平坦性と耐熱性に優れたガラス基板に微細貫通孔を形成してコア基板とする試みがある。しかしながら、貫通孔付きガラス基板をコア基板として用いる方法では、非晶質脆性材料であるガラスに円筒度の良い多数の微細貫通孔を能率よく形成することが極めて難しいという問題がある。」
シ 「【0015】図1は、本発明の一実施の形態を示すもので、本発明による貫通孔を有するガラス基板をコア基板として用いた半導体実装モジュールの一例を示す部分断面図である。図1において、1はガラス基板、2はガラス基板1に形成した貫通孔、3は貫通孔2内に充填された導体プラグ、4は配線、5は絶縁層、6は配線4と絶縁層5からなる再配線層、7は裏面配線、8はソルダレジスト、9ははんだボール、10は半導体素子(半導体チップ)、11は裏面はんだボール、をそれぞれ意味する。」
ス 「【0049】なお、以上の例ではガラス基板に貫通孔を形成し、半導体実装基板を形成する例について説明したが、これに限らす、例えばシリコンウエハやセラミックスに微細貫通孔を形成し、配線形成する場合にも全く同じ手法を適用することが可能である。」
セ 図1には、ガラス基板1と、ガラス基板1の表面と裏面とを導通する貫通孔2と、ガラス基板1上に形成されていて、絶縁層5と配線4とが交互に積層され、各配線4間がバイアホール導体にて接続された再配線層6と、からなる半導体実装モジュールの部分断面図が図示されている。
ソ 図1及び図4(e)から、ガラス基板1の表面に形成された再配線層6の表面に、半導体素子10の電極と接続するパッドを設け、そのパッドのピッチを、ガラス基板1の貫通孔2のピッチより狭くした点が看取できる。

3 対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能又は作用などからみて、後者の「回路基板114」は前者の「内蔵用配線基板」に相当し、以下同様に、「内壁に導電膜45a、45bが形成されたスルーホール44a,44b」は「スルーホール導体」に、「層間絶縁膜47a,47b,47c」は「層間樹脂絶縁層」に、「配線42a,42b、42c」は「導体層」に、「インナビアホール50a,50b、50c」は「バイアホール導体」に、「ガラスエポキシ基板61a,61b」は「層間樹脂絶縁層」に、「配線62a,62b,62e」は「導体回路」に、「LSIチップ122」は「電子部品」に、「パッド42d」は「実装用パッド」に、それぞれ相当する。
引用発明の「薄膜多層基板113」と本願補正発明の「耐熱性基板」とは、どちらも「多層基板」である点で共通し、引用発明の「回路基板」と本願補正発明の「耐熱性基板内蔵配線板」又は「耐熱性基板内蔵回路配線板」とは、「多層基板内蔵配線板」又は「多層基板内蔵回路配線板」である点で共通する。また、引用発明の「セラミック製のコア基板」と本願補正発明の「ガラスエポキシ基板41」とは、どちらも「コア基板」である点で共通する。さらに、引用発明の「スルーホール64a,64b」と本願補正発明の「バイアホール導体」とは、どちらも導体回路(配線62a,62b,62e)とスルーホール導体(スルーホール44a,44b)とを電気的に接続する手段であるから、「導通接続手段」ということができる。

したがって、両者は、本願補正発明の用語を用いて表現すると、
[一致点]
「多層基板と該多層基板を内蔵する内蔵用配線基板とからなる多層基板内蔵配線板であって:
前記多層基板が、
コア基板と、
該コア基板の表面と裏面とを導通するスルーホール導体と、
コア基板上に形成されていて、層間樹脂絶縁層と導体層とが交互に積層され、各導体層間がバイアホール導体にて接続されたビルドアップ配線層と、からなり、
前記内蔵用配線基板が、前記多層基板の裏面側に形成されている層間樹脂絶縁層と、該層間樹脂絶縁層上に形成されている導体回路と、該導体回路と前記スルーホール導体とを電気的に接続する導通接続手段とを有し、
前記多層基板は、さらに、
コア基板の表面に形成されたビルドアップ配線層の表面に、電子部品の電極と接続する実装用パッドを有する多層基板内蔵回路配線板。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、「耐熱性基板」を有する「耐熱性基板内蔵回路配線板」であり、その耐熱性基板のコア基板が「セラミック製」であるのに対して、引用発明は、「薄膜多層基板113」を有する「回路基板」であり、その薄膜多層基板113のコア基板が「ガラスエポキシ基板41」であるため、回路基板及び薄膜多層基板113が耐熱性であるとはいえない点。
[相違点2]
該導体回路と前記スルーホール導体とを電気的に接続する導通接続手段が、本願補正発明おいては、「バイアホール導体」であるのに対して、引用発明においては、「スルーホール64a,64b」である点。
[相違点3]
本願補正発明においては、「前記実装用パッドのピッチは、前記コア基板のスルーホール導体のピッチより狭い」のに対して、引用発明においては、「パッド42dの間隔は、ガラスエポキシ基板41のスルーホール44aとスルーホール44bとの間隔より狭い」点。

4 判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用例2には、上記サに摘記したとおり、「コア基板には用途によってガラスエポキシ基板などの有機基板やセラミック基板などの無機材料基板が用いられることが多い。」(段落【0002】)と記載され、「有機基板では耐熱性の面から難しいという問題がある。」(段落【0003】)ところ、「最近、熱膨張が比較的シリコンに近く表面平坦性と耐熱性に優れたガラス基板に微細貫通孔を形成してコア基板とする試みがある。」(段落【0004】)と記載されていることからみても明らかなように、電子部品を実装するコア基板においては、耐熱性は、当業者であれば当然に考慮する課題であり、耐熱性を付与するためにコア基板をセラミックス製とすることは従来周知の技術にすぎない。
しかも、引用例2には、ガラス基板1と、ガラス基板1の表面と裏面とを導通する貫通孔2と、ガラス基板1上に形成されていて、絶縁層5と配線4とが交互に積層され、各配線4間がバイアホール導体にて接続された再配線層6と、からなる半導体実装モジュールが記載され、さらに、その段落【0049】に「なお、以上の例ではガラス基板に貫通孔を形成し、半導体実装基板を形成する例について説明したが、これに限らす、例えばシリコンウエハやセラミックスに微細貫通孔を形成し、配線形成する場合にも全く同じ手法を適用することが可能である。」と記載されていることから、結局、引用例2には、本願補正発明の用語を用いて表現すると、「セラミック製のコア基板と、該コア基板の表面と裏面とを導通するスルーホール導体と、コア基板上に形成されていて、層間樹脂絶縁層と導体層とが交互に積層され、各導体層間がバイアホール導体にて接続されたビルドアップ配線層と、からなる耐熱性基板」が記載されているということができる。
そして、引用発明と引用例2に記載された発明とは、半導体等の実装に用いる基板という同一の技術分野に属するものであることから、その技術は相互に採用可能なものであって、引用例2に記載されたセラミック製の耐熱性基板を引用発明に適用することを妨げる特段の事情も認められないことから、引用例2に記載された事項を引用発明に適用して、引用発明のガラスエポキシ基板41をセラミック製のコア基板とすることにより、薄膜多層基板113を耐熱性基板とするとともに回路基板を耐熱性基板内蔵回路配線板とし、相違点1に係る本願補正発明のように構成することは、当業者が格別創意を要することなく容易になし得たことである。

(2)相違点2について
引用発明においては、配線62a,62b,62e(導体回路)とスルーホール44a,44b(スルーホール導体)とをスルーホール64a,64b(スルーホール導体)によって電気的に接続している。
引用例1にも記載されているように、回路基板においては、層間の配線同士を接続するための導通接続手段として、スルーホール導体及びバイアホール導体はいずれも従来周知の手段であり、いずれの導通接続手段を採用するかは、回路基板の目的やコスト等を考慮し当業者が適宜選択すべき設計的事項である(上記ア及びイ参照)。しかも、基板の表面と裏面とを導通するスルーホール導体と基板の裏面側に形成されている層間樹脂絶縁層上に形成されている導体回路とをバイアホール導体で電気的に接続することは、例えば特開2001-44639号公報(図1には、感光性ガラス2のスルーホール3と感光性ガラス2の裏面側に形成された絶縁層10に形成されている配線パターンとをバイアホール導体で電気的に接続している点が図示されている。)や特開2005-32905号公報(図8には、コア基板30のスルーホール36とコア基板30の裏面側に形成された層間樹脂絶縁層50、150上に形成されている導体回路58、158とをバイアホール導体で電気的に接続している点が図示されている。)などに示されるように、従来周知の手段にすぎない。
そうすると、引用発明において、配線62a,62b,62eとスルーホール44a,44bとを電気的に接続するスルーホール64a,64bの部分につき、スルーホール64a,64bに代えて従来周知のバイアホール導体を採用し、相違点2に係る本願補正発明のように構成することは、必要に応じて当業者が適宜容易になし得たことである。

(3)相違点3について
引用発明は、パッド42dの間隔を、ガラスエポキシ基板41のスルーホール44aとスルーホール44bとの間隔より狭くしたものであり、言い換えれば、ガラスエポキシ基板41のスルーホール44aとスルーホール44bとの間隔を、パッド42dの間隔よりもかなり大きくしたものであるから、ガラスエポキシ基板41の熱変形を抑えることができる構成を採用している点で、実装用パッドのピッチをコア基板のスルーホール導体のピッチより狭くして、コア基板の変形量を小さくした本願補正発明と軌を一にするものということができる。
また、コア基板と、該コア基板の表面と裏面とを導通するスルーホール導体と、コア基板上に形成されていて、層間樹脂絶縁層と導体層とが交互に積層され、各導体層間がバイアホール導体にて接続されたビルドアップ配線層と、からなる基板において、コア基板の表面に形成されたビルドアップ配線層の表面に、電子部品の電極と接続する実装用パッドを設け、その実装用パッドのピッチを、前記コア基板のスルーホール導体のピッチより狭く構成することは、例えば引用例2(上記セ及びソ参照)、特開2005-32905号公報(図8参照)、特開2003-174250号公報(図7参照)、特開2000-183532号公報(図6参照)などに示されるように、従来周知の技術にすぎない。そして、これら従来周知の技術における基板は、コア基板と、該コア基板の表面と裏面とを導通するスルーホール導体と、コア基板上に形成されていて、層間樹脂絶縁層と導体層とが交互に積層され、各導体層間がバイアホール導体にて接続されたビルドアップ配線層と、からなる点で、引用発明と構成が共通するものである。
そうすると、引用発明において、パッド42d及びスルーホール44a,44bに上記周知技術を適用し、相違点3に係る本願補正発明のように構成することは、当業者であれば容易になし得たことであるといえる。

そして、本願補正発明が奏する効果は、引用発明、引用例2に記載された発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成23年4月20日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「耐熱性基板と該耐熱性基板を内蔵する内蔵用配線基板とからなる耐熱性基板内蔵配線板であって:
前記耐熱性基板が、
コア基板と、
該コア基板の表面と裏面とを導通するスルーホール導体と、
コア基板上に形成されていて、層間樹脂絶縁層と導体層とが交互に積層され、各導体層間がバイアホール導体にて接続されたビルドアップ配線層と、からなり、
前記内蔵用配線基板が、前記耐熱性基板上に形成されている層間樹脂絶縁層と、該層間樹脂絶縁層上に形成されている導体回路と、該導体回路と前記スルーホール導体とを電気的に接続するバイアホール導体とを有すること特徴とする耐熱性基板内蔵回路配線板。」

2 引用例
引用例1及び引用例2の記載事項並びに引用発明は、前記「第2」の「2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」の「1」の本願補正発明から、「コア基板」についての限定事項である「セラミック製の」との事項を省き、「耐熱性基板」についての限定事項である「前記耐熱性基板は、さらに、コア基板の表面に形成されたビルドアップ配線層の表面に、電子部品の電極と接続する実装用パッドを有し、前記実装用パッドのピッチは、前記コア基板のスルーホール導体のピッチより狭い」との事項を省くとともに、「層間樹脂絶縁層」の形成箇所についての限定事項である「耐熱性基板の裏面側」との事項を「耐熱性基板」に拡張したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の「3」及び「4」に記載したとおり、引用発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そうすると、本願発明が特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-03 
結審通知日 2012-08-07 
審決日 2012-08-21 
出願番号 特願2008-514421(P2008-514421)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長清 吉範貞光 大樹  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 島田 信一
冨岡 和人
発明の名称 耐熱性基板内蔵回路配線板  
代理人 田下 明人  

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