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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1264047
審判番号 不服2011-25007  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-21 
確定日 2012-10-04 
事件の表示 特願2006-349835号「フィルタ清掃装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年8月30日出願公開、特開2007-218576号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯
本願は、平成18年2月17日に出願された特願2006-41531号(以下「原出願」という。)の一部を平成18年12月26日に新たな特許出願としたものであって、平成23年8月31日付け(発送:9月6日)で拒絶査定がなされ、これに対して平成23年11月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成23年11月21日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年11月21日の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
平成23年11月21日の手続補正(以下「本件補正」という。)により特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

【請求項1】
メッシュフィルタとその周囲に設けられた枠体とから成り空気中の塵埃を除去する四角形状のフィルタを清掃するフィルタ清掃装置であって、前記フィルタを横切るように配置された除塵ボックスと、該除塵ボックス内でその長さ方向に沿って、且つフィルタの表面側に配置された清掃ブラシと、該清掃ブラシを回転駆動するモータと、前記フィルタを除塵ボックスに対してその長さ方向と直交する方向に往復移動させる移動手段とを備え、前記フィルタを除塵ボックスの長さ方向と直交する方向に往復移動させながら、前記モータにより前記清掃ブラシを回転駆動させて前記フィルタの表面に付着した塵埃を強制的に離脱させるフィルタ清掃装置であって、前記フィルタ清掃装置は、前記フィルタの往動時に、前記清掃ブラシをフィルタの移動方向と対向する方向に回転させることを特徴とするフィルタ清掃装置。(下線は補正箇所を示す。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「除塵ボックス」に関して「前記フィルタを横切るように配置された」との限定を付すとともに、「モータ」、「清掃ブラシ」、「フィルタ」に対し、既述のものであることを示す「前記」の記載を付加するものであり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることが出来るものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項

(1)原査定の拒絶理由にて引用された、原出願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-28487号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚れたフィルタを自動的に清掃するフィルタ清掃機能を備えた空気調和機に関し、さらに詳しく言えば、フィルタに付着した埃を確実に除去するとともに、除去した埃を簡単に回収できる空気調和機に関する。」(段落【0001】)

イ.「【0034】
上面パネル12の空気吸入口121と熱交換器3との間には、熱交換器3に向かう空気中に含まれる塵埃を除去するフィルタ5が設けられており、ベース11の側板には、フィルタ5を所定方向にスライド移動させるスライド手段6(駆動モータ6)と、フィルタ5に付着した塵埃を除去するフィルタ清掃部7とが設けられている。
【0035】
図7(a)および(b)には、フィルタを前面側および背面側から見た状態の斜視図が示されている。フィルタ5は、所定の幅を持って枠状に形成されたフレーム51と、同フレーム51に囲まれ、網目が規則的に形成されたフィルタ部52とを備えている。フレーム51およびフィルタ部52は、合成樹脂の一体成型品からなる。」(段落【0034】?【0035】)(下線は当審にて付与、以下同じ。)

ウ.「【0044】
次に、図2の拡大図を参照して駆動モータ6とフィルタ清掃部7について説明する。駆動モータ6は、取付部62を介してベース11の側面に固定されており、その出力軸には、後述するフィルタ清掃部7のボトムカバー71に設けられた回転ギア75に対して噛合される出力ギア61が取り付けられている。
【0045】
この駆動モータ6は、図示しない制御・駆動手段によって制御・駆動され、例えばリモコン操作やタイマーによって駆動される。その具体的な駆動方法や回転順序などは任意である。
【0046】
フィルタ清掃部7は、図3および図4に示すように、ボトムカバー71と、同ボトムカバー71に被せられるトップカバー72とからなり、一端側がヒンジ部70を介して固定され、他端側が開閉可能に設けられている。
【0047】
ボトムカバー71は、一体成型された合成樹脂からなり、内部に塵埃を収納する収納スペース711を備える少なくともフィルタ5の幅よりも長い箱体に形成されている。ボトムカバー71内は、所定間隔をもって補強用のリブ712a?712d(この実施形態では4枚)によって収納スペース711が仕切られている。
【0048】
リブ712a?712dのうち、リブ712b、712cは、ボトムカバー7中央に平行に設けられ、リブ712b、712cの間に駆動モータ6に噛合する回転ギア75が回転可能に軸支されている。
【0049】
回転ギア75は、図2に示すようにボトムカバー71の底面からその一部が露出しており、駆動モータ6の出力軸61に噛合される。
【0050】
収納スペース711内には、フィルタ5の一方の面を清掃する第1清掃ブラシ73が設けられているが、この実施形態において第1清掃ブラシ73は所定間隔で植設されたブラシ線を多数有するストレートブラシからなり、フィルタ5に対して直角に接触するように設けられている。
【0051】
この実施形態において、第1清掃ブラシ73はL字状の支持リブによって支持されているが、より好ましくは、図2に示すように支持リブとボトムカバー71との間に圧縮バネなどの押圧手段731を設けて、第1清掃ブラシ73が常にフィルタ5に接触するようにすることが好ましい。
【0052】
トップカバー72は、ボトムカバー71の開口周縁に沿って嵌合可能な同じく少なくともフィルタ5の幅よりも長い箱体に成型された合成樹脂からなり、上記リブ712a?712dに対向する位置に仕切り用のリブ722a?722dが収納スペース711内に4カ所設けられている。
【0053】
トップカバー72には、連結端側に回転軸723,723がそれぞれ設けられており、この回転軸723がボトムカバー71の軸受孔713,713によって軸支されることにより、開閉可能に支持される。
【0054】
トップカバー72の収納スペース721内には、フィルタ5の他方の面を清掃する第2清掃ブラシ74が設けられているが、この実施形態において、第2清掃ブラシ74は、フィルタ5に対して直角に接触する直立ブラシ741と、フィルタ5に対して所定角度をもって斜め方向から接触する傾斜ブラシ742とを備えている。
【0055】
これによれば、トップカバー72側のフィルタ面から掻き出された埃は、再びフィルタ5に付着してフィルタ清掃部7外に持ち出されやすいが、斜め方向に植設された傾斜ブラシ742がフィルタの目に差し込まれることでフィルタ5に再付着した埃を確実に掻き取ることができる。なお、上述した押圧手段731は第2清掃ブラシ74側に設けてもよい。
【0056】
図5に示すように、ボトムカバー71には、トップカバー72を一体的に嵌合するための嵌合溝714が設けられており、これに対しトップカバー72には、嵌合溝714に対して嵌合する嵌合爪724が突設されている。これらが互いに嵌合することにより、ボトムカバー71とトップカバー72とは閉じた状態で保持される。」(段落【0044】?【0056】)

エ.「【0072】
次に、この空気調和機1のフィルタ5の清掃手順の一例について説明する。まず、使用者はリモコンなどに設けられたフィルタ清掃ボタンを操作すると、図示しない制御部は駆動モータ6に指令を出し、駆動モータ6をフィルタ5の排出方向に回転させる。
【0073】
駆動モータ6の回転力は、出力ギア61から回転ギア77に伝達され、回転ギア75に噛合されたラック部53に伝達されることにより、フィルタ5を排出方向(図1では、左下方向)にスライドさせる。
【0074】
フィルタ5が排出方向にスライドを開始すると、フィルタ5の側端部に設けられたレール部54が可動スクレーパ82a、82bを開方向に移動させる。なお、可動スクレーパ82a、82bは互いに相反する方向に回転し、その移動方法は同じであるため以下の説明においては、一方のみの動作について例示する。
【0075】
図9(a)に示すように、フィルタ5が移動を開始すると、レール部54の端部に設けられたガイド部543に開閉レバー83a、83bのレバーアーム831が乗り上げるようにして、開ガイド面541に導かれる。
【0076】
このとき、レバーアーム831は開ガイド面541に乗り上げながら、回転軸81a、81bを中心に回転することにより、可動スクレーパ82a、82bが開方向に強制的に移動される。
【0077】
フィルタ5は、可動スクレーパ82a、82bが開状態のまま、フィルタ清掃部7内に導入され、フィルタ清掃部7内に設けられた清掃ブラシ73,74間を移動することで、フィルタ5に付着したゴミが掻き出される。
【0078】
このとき、図10および図11に示すように、フィルタ5の先端は、前面パネル13の開閉パネル14の下側に当接し、開閉パネル14を押し上げながら、機外へと引き出される。この実施形態において、開閉パネル14は、フィルタ5によって押し上げられるが、これ以外に専用の開閉手段を設けて、フィルタ5に負荷を与えることなく、開閉するようにしてもよい。
【0079】
フィルタ5が所定の移動量移動すると、制御部(図示しない)は、駆動モータ6に逆回転の指令を送出することで、フィルタ5を収納方向(図1では右上方向)にスライド移動させる。このとき、フィルタ清掃部7内に収納されたゴミが再びフィルタ5に付着して清掃部外に持ち出されないようにするため、可動スクレーパ82a、82bは閉方向に付勢される。
【0080】
すなわち、図9(b)に示すように、開レール面541に沿って移動してきたレバーアーム831はレール部54終端までくると、バネ付勢によって強制的に閉状態に引き戻され、各可動スクレーパ82a、82bは互いに当接し合う。
【0081】
そこで、フィルタ5が収納方向に移動を開始すると、レバーアーム831はそのまま閉レール面542に導かれ、可動スクレーパ82a、82bを閉状態で維持させる。このとき、可動スクレーパ82a、82bの接触面821によってフィルタ5面は拭き取られ、清潔な状態のまま機内に運び込まれる。」(段落【0072】?【0081】)

オ.図1?4、図7?11には、以下の事項が図示されている。
・フィルタ部52とフレーム51からなるフィルタが四角形状を有していること(特に図7参照)
・トップカバー72、ボトムカバー71からなるフィルタ清掃部7がフィルタを横切るように配置され、フィルタはフィルタ清掃部7に対してその長さ方向と直交する方向に往復移動すること(図1?4、及び、摘記事項エ【0073】、【0079】参照)
・トップカバー72、ボトムカバー71からなるフィルタ清掃部7内にその長さ方向に沿って、かつフィルタの表面側及び裏面側に第2及び第1清掃ブラシ74、73が固定配置されていること(図2、4参照)

また、上記ウ、エの記載から、駆動モータ6、出力ギア67、回転ギア75等により「フィルタを往復動させる移動手段」が構成され、該「フィルタを往復動させる移動手段」、フィルタ、第2及び第1清掃ブラシ74、73、及びフィルタ清掃部7が「フィルタ清掃装置」を構成しているといえる。

以上の事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

網目が規則的に形成されたフィルタ部52と一体成型された枠状に形成されたフレーム51とから成り空気中の塵埃を除去する四角形状のフィルタを清掃するフィルタ清掃装置であって、前記フィルタを横切るように配置されたトップカバー72、ボトムカバー71からなるフィルタ清掃部7と、該フィルタ清掃部7内でその長さ方向に沿って、且つフィルタの表面側及び裏面側に配置された固定の第2及び第1清掃ブラシ74、73と、前記フィルタをフィルタ清掃部7に対してその長さ方向と直交する方向に往復移動させる移動手段とを備え、前記フィルタをフィルタ清掃部7の長さ方向と直交する方向に往復移動させながら、前記フィルタの表面に付着した塵埃を除去させるフィルタ清掃装置。

(2)原査定の拒絶理由にて引用された、原出願の出願前に頒布された刊行物である、実願昭61-32716号(実開昭62-145019号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

カ.「(1) 吸込部に設けた一対の回転軸に環状に掛けられ、ターン駆動されるフィルタネット、上記フィルタネットの一端部でフィルタネット移動方向と対向して回転駆動され、フィルタネット横幅とほぼ同じ長さのロータリーブラシと、上記ロータリーブラシで払い落したほこりを溜めるほこり溜め部を有する着脱自在な集塵カバーと、上記ロータリーブラシの外周に先端が接し、ロータリーブラシ全長に亘って延在させたほこり落し片を備えたことを特徴とする空気調和機のフイルタ清掃装置。
(2) フィルタネットの回転軸を回つて一方向にターンするフィルタネット面と、該フィルタネットのターン方向と対向する方向に回転するロータリーブラシを前後に配設したことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載の空気調和機のフィルタ清掃装置。」(実用新案登録請求の範囲)

キ.「この考案は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、フィルタに付着したほこりを自動的に除去し、常にリフレッシュされた状態で、空気調和機の運転使用ができる。要すれば、除去したほこりの取り捨てが容易にできるフィルタ清掃装置を提供することを目的とする。」(明細書第4頁第12行?第17行)

ク.「フィルタネット15がロータリーブラシ18と対向する方向に駆動され、フィルタネット15の面をロータリーブラシ18がブラッシングし、フィルタネット15面に付着したほこりを払い落し取り、・・・中略・・・できる。フィルタネット15とロータリーブラシ18の駆動速度はほこりを効果的に払い落すためにフィルタネット15の速度を遅く、ロータリーブラシ18を速くするのが良い。(明細書第8頁第3行?第18行)

ケ.「また、この考案の一実施例では、ロータリーブラシ18にモータ20を直結させ、駆動ベルト21を介してフィルタネット15を駆動したが、」(明細書第10頁第13行?第15行)

コ.カにおける「フィルタネット面と、該フィルタネットのターン方向と対向する方向に回転するロータリーブラシを前後に配設した」の記載及び第5図の記載からロータリーブラシ18はフィルタネット15表面に面して後方位置に配設されていることがわかる。

以上の事項を総合すると、刊行物2には、空気調和機の空気吸込部に設けられたフィルタネット面に付着したほこりを自動的にかつ効果的に除去するための発明として、第5図に対応して、次の発明(以下「刊行物2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

吸込部に設けた一対の回転軸に環状に掛けられターン駆動されるフィルタネット15と、上記フィルタネット15の一端部でフィルタネット15表面に面した後方位置にフィルタネット15横幅とほぼ同じ長さのロータリーブラシ18を配設して、モータ20によりロータリーブラシ18をフィルタネット15の移動方向と対向する方向に回転させてブラッシングによりフィルタネット15面に付着したほこりを払い落し取る、空気調和機のフィルタ清掃装置。

3.発明の対比
本願補正発明と刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1記載の発明における「網目が規則的に形成されたフィルタ部52」は本願補正発明における「メッシュフィルタ」に相当し、以下同様に、「一体成型された枠状に形成されたフレーム51」は「その周囲に設けられた枠体」に、「トップカバー72、ボトムカバー71からなるフィルタ清掃部7」は「除塵ボックス」に、「除去させる」は「離脱させる」に、各々相当する。

また、刊行物1記載の発明における「フィルタの表面側及び裏面側に配置された固定の第2及び第1清掃ブラシ74、73」と本願補正発明における「フィルタの表面側に配置された回転駆動される清掃ブラシ」は、共に「フィルタに面して配置された清掃ブラシ」といえる。

よって、両者の一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
メッシュフィルタとその周囲に設けられた枠体とから成り空気中の塵埃を除去する四角形状のフィルタを清掃するフィルタ清掃装置であって、前記フィルタを横切るように配置された除塵ボックスと、該除塵ボックス内でその長さ方向に沿って、且つフィルタに面して配置された清掃ブラシと、前記フィルタを除塵ボックスに対してその長さ方向と直交する方向に往復移動させる移動手段とを備え、前記フィルタを除塵ボックスの長さ方向と直交する方向に往復移動させながら、前記フィルタの表面に付着した塵埃を離脱させるフィルタ清掃装置。

(相違点)
本願補正発明においては、「フィルタに面して配置された清掃ブラシ」が「フィルタの表面側に配置された清掃ブラシ」であると共に「清掃ブラシを回転駆動するモータ」を備え、前記フィルタを往復移動させながら「前記モータにより前記清掃ブラシを回転駆動させて前記フィルタの表面に付着した塵埃を強制的に離脱させるフィルタ清掃装置」が「前記フィルタの往動時に、前記清掃ブラシをフィルタの移動方向と対向する方向に回転させ」るものであるのに対し、刊行物1記載の発明においては、「フィルタに面して配置された清掃ブラシ」が「フィルタの表面側及び裏面側に配置された固定の第2及び第1清掃ブラシ74、73」であって、フィルタ清掃装置は「清掃ブラシを回転駆動するモータ」を備えていない点。

4.判断
そこで、相違点につき検討する。

まず、刊行物2記載の発明と本願補正発明を対比すると、刊行物2記載の発明における「フィルタネット15」は本願補正発明における「フィルタ」に相当し、以下同様に、「ロータリーブラシ18」は「回転駆動」される「清掃ブラシ」に、「モータ20によりロータリーブラシ18をフィルタネット15の移動方向と対向する方向に回転させてブラッシングによりフィルタネット15面に付着したほこりを払い落し取る」は「清掃ブラシをフィルタの移動方向と対向する方向に回転させ」て「前記フィルタの表面に付着した塵埃を強制的に離脱させる」に、「空気調和機のフイルタ清掃装置」は「フィルタ清掃装置」に、各々相当する。

したがって、空気調和機の空気吸込部に設けられたフィルタ面に付着したほこりを自動的にかつ効果的に除去するための発明である、刊行物2記載の発明は、次のように言い換えることができる。

吸込部に設けた一対の回転軸に環状に掛けられ、ターン駆動されるフィルタと、上記フィルタの一端部で上記フィルタ表面に面した後方位置にフィルタ横幅とほぼ同じ長さの回転駆動される清掃ブラシを配設して、上記清掃ブラシをフィルタの移動方向と対向する方向に回転させて上記フィルタ面に付着した塵埃を強制的に離脱させるフィルタ清掃装置。

ところで、刊行物1記載の発明は往復移動される四角形状のフィルタを清掃するものであるから、そのフィルタの表面は常に表面側(空気吸入口121側)にある。

また、刊行物2記載の発明の「回転駆動される清掃ブラシ」は、フィルタネット15の後方位置に配設されているものの「フィルタ表面に面」するものであり、これにより塵埃を強制的に離脱させるものであることから、刊行物1記載の発明に適用するに際して、吸入空気により塵埃の付着しやすいフィルタ表面に「回転駆動される清掃ブラシ」が面するよう、該ブラシをフィルタの表面側(空気吸入口121側)に配設することは、その機能からみて、当業者が、通常なすことである。

刊行物2記載の発明が「回転駆動される清掃ブラシ」をフィルタネット15の後方に配設されているとしても、刊行物2の第2図には、フィルタネット15表面に面して下方に配設する実施例も示されており、上記のように判断することを阻害するものではない。

よって、刊行物1記載の発明において、空気吸込部に設けられたフィルタ面に付着した塵埃を自動的にかつ効果的に除去するために、「フィルタに面して配置された清掃ブラシ」を「フィルタの表面側及び裏面側に配置された固定の第2及び第1清掃ブラシ74、73」に代えて「フィルタの表面側に配置された清掃ブラシ」とすると共に「清掃ブラシを回転駆動するモータ」を備え、また前記フィルタを往復移動させながら「前記モータにより前記清掃ブラシを回転駆動させて前記フィルタの表面に付着した塵埃を強制的に離脱させるフィルタ清掃装置」が「前記フィルタの往動時に、前記清掃ブラシをフィルタの移動方向と対向する方向に回転させ」るものとすることは、同じフィルタ清掃装置である刊行物2記載の発明に倣って、当業者が、容易になし得た事項である。

そして、本願発明により得られる効果も、刊行物1、2記載の発明から、当業者であれば、予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

なお、請求人は、意見書(平成23年3月7日付け)及び審判請求書にて、次の二点を主張している。

(主張1)
「引用文献1(審決注:本審決における刊行物1)には、フィルタの裏面側に第1清掃ブラシ(73)、フィルタの表面側に第2清掃ブラシ(74)が存在しており、引用文献1に引用文献2(本審決における刊行物2)のロータリーブラシ(18)を適用する際に、フィルタの表裏のいずれの側に配置するかは定かではありません。」(意見書第2頁第7行?第10行)

(主張2)
「引用文献2には、フィルタネット15を往復駆動させるという思想はなく、そのため、往動時にロータリーブラシ18をフィルタネット15の移動方向と対向する方向に回転駆動させるという概念も存在しません。
以上に基づいて、引用文献1に引用文献2を適用した場合、その構成は表1に示すようになり、本願構成要件Hを充足しません。すなわち、引用文献1に引用文献2を適用した場合、ロータリーブラシをフィルタの移動方向と対向する方向に回転駆動させる構成は、フィルタの往動時とフィルタの復動時の2通りが存在します。そのため、当業者に対して、往動時と復動時のいずれを選択するかが明確になっておりません。また、当業者に往動時を必ず選択させるための示唆や開示がなく、その他の根拠も存在しません。」(意見書第2頁第38行?第45行)
「引用文献1に引用文献2の回転ブラシを適用したとしても、本願発明の「フィルタの往動時に、前記清掃ブラシをフィルタの移動方向と対向する方向に回転させる」構成には想到し得るものではなく、本願発明特有の効果も奏し得るものではありません。」(審判請求書第5頁第26行?第29行)

そこで各主張につき検討する。

(主張1について)
刊行物1、2に記載された空調装置におけるフィルタ清掃装置は、室内空気の通過によってフィルタに付着した塵埃を除去することを目的としている。

そして、除去すべき塵埃はフィルタ裏面側に比べ、空気吸込口に面した表面側に付着しやすいことは技術常識であり、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明(回転駆動される清掃ブラシをフィルタの表面側に配置したもの)を適用する場合、フィルタ清掃装置を設ける上記目的からみて、その適用部位として「空気吸込口に面したフィルタ表面側ブラシ(フィルタの表面側に第2清掃ブラシ74)」が優先されることは、当業者に自明な事項である。

そうすると、本願補正発明の発明特定事項である「清掃ブラシ」を、本願明細書記載の実施形態に即したような「フィルタの表面側に配置された(回転駆動される)清掃ブラシ」のみが存在するものとしても、その適用は、上記検討のとおり容易である。

また、本願補正発明は「フィルタの裏面側に配置される清掃ブラシ」の有無に関しては何ら特定しておらず、「フィルタの表面側にのみ(回転駆動される)清掃ブラシを設けた」形態(例えば、特開2004-301363号公報:ブラシ72参照)のみならず、「フィルタの表面側に加えて、フィルタ裏面側にも(回転駆動される)清掃ブラシを有する」形態(例えば、特公平8-20102号公報:1対のブラシロール10、10’参照)の両者を包含するものでもある。

故に、請求人の主張1は採用できない。

(主張2について)
刊行物2記載の発明は「清掃ブラシをモータにより駆動される回転ブラシとするとともに、清掃ブラシをフィルタの移動方向と対向する方向に回転させる」というものであるから、刊行物1記載の発明のようにフィルタが往復動するものに適用する場合には、回転ブラシは、フィルタの往動行程においてはフィルタの移動(往動)方向に対向する方向に回転駆動され、フィルタの復動行程においては、回転方向が逆となって、フィルタの移動(復動)方向に対向する方向に回転駆動されるものにすることが自然である(往復動フィルタへの適用の参考例として、例えば、上記特開2004-301363号公報(段落【0040】?【0042】、【0065】?【0068】、図2)参照)。

なお、本願補正発明においては「フィルタの復動時における清掃ブラシの駆動」について何ら特定されていないため、「フィルタの復動時に清掃ブラシをフィルタの移動(復動)方向に対向する方向に回転駆動する」形態を排除するものではない。

よって、請求人の主張2は採用できない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上述のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成23年3月7日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
メッシュフィルタとその周囲に設けられた枠体とから成り空気中の塵埃を除去する四角形状のフィルタを清掃するフィルタ清掃装置であって、除塵ボックスと、該除塵ボックス内でその長さ方向に沿って、且つフィルタの表面側に配置された清掃ブラシと、該清掃ブラシを回転駆動するモータと、前記フィルタを除塵ボックスに対してその長さ方向と直交する方向に往復移動させる移動手段とを備え、前記フィルタを除塵ボックスの長さ方向と直交する方向に往復移動させながら、モータにより清掃ブラシを回転駆動させてフィルタの表面に付着した塵埃を強制的に離脱させるフィルタ清掃装置であって、前記フィルタ清掃装置は、前記フィルタの往動時に、前記清掃ブラシをフィルタの移動方向と対向する方向に回転させることを特徴とするフィルタ清掃装置。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由にて引用された刊行物とその記載事項は、上記の「第2.2」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明における発明特定事項である「除塵ボックス」に関して「前記フィルタを横切るように配置された」との限定を削除するとともに、「モータ」、「清掃ブラシ」、「フィルタ」に関して「前記」との付記を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4」に記載したとおり、刊行物1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.結び
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-31 
結審通知日 2012-08-07 
審決日 2012-08-22 
出願番号 特願2006-349835(P2006-349835)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河野 俊二  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 平上 悦司
前田 仁
発明の名称 フィルタ清掃装置  
代理人 稗苗 秀三  
代理人 大島 泰甫  

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