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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23Q
管理番号 1264051
審判番号 不服2011-27658  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-22 
確定日 2012-10-04 
事件の表示 特願2006- 74663「ワーク位置決め装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月27日出願公開、特開2007-245316〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成18年3月17日の特許出願であって、平成23年7月26付けで拒絶の理由が通知され、同年9月21日に手続補正がなされ、同年10月5日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、同年12月22日に本件審判の請求とともに手続補正がなされ、当審において、平成24年2月10日付けで審尋がされたが指定期間内に何らの応答がなく、同年5月7日付けで拒絶理由が通知され、同年7月3日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年7月3日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりと認められる。

「先端にワークを位置決めする位置決め部を備えた位置決め本体部を、他の部位に対して着脱可能に構成したワーク位置決め装置において、前記位置決め本体部を前記他の部位に対して着脱可能とする取付ねじ部を、前記位置決め部の中心軸線上に軸心が位置するよう前記位置決め本体部の基端に設け、
前記位置決め部は、前記ワークの位置決め孔に挿入する位置決めピンを備え、この位置決めピン内に、前記位置決め本体部上のワーク着座面との間で前記ワークをクランプするクランプアームの先端側を移動可能に収容し、このクランプアームを前記中心軸線上に沿って移動させるピストンを、前記位置決め本体部内に移動可能に収容し、
前記位置決め本体部を円柱状に形成して、この円柱状の位置決め本体部の側面に、位置決め本体部を前記位置決め部の中心軸線を中心として回転させるための回転器具係合部を設け、
前記回転器具係合部に係合する回転器具は、前記回転器具係合部に係合する被係合部と、前記円柱状の位置決め本体部の外周面に整合する円弧内面を有する円弧形状部と、作業者が把持する把持部とを備え、
前記把持部は前記円弧形状部の一方の端部に位置し、前記被係合部は、前記把持部の前記被係合部側の端面に対し前記円弧面に沿って90度隔てた位置に対応する前記円弧形状部の他方の端部に位置することを特徴とするワーク位置決め装置。」

3.刊行物記載の発明
これに対し、本願出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された特開平2-290696号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.第1ページ右下欄第8?11行
「本発明は、位置決めピン、詳しくは、例えば自動車等の製造工程において、板金の位置決めを行いそれを溶接する際に使用される位置決めピンに関する。」

イ.第2ページ左上欄第16?末行
「1.金属質の固定部材1の上面に、貫通孔を有するセラミツクス質の位置決め部材2を配置し、その貫通孔を通して金属質の導入部材3を上記固定部材1に装着してなることを特徴とする位置決めピン。」

ウ.第2ページ右上欄第18行?左下欄末行
「本発明の位置決めピンは、金属質の固定部材1、セラミツクス質の位置決め部材2及び金属質の導入部材3から構成されている。すなわち、位置決め部材2は固定部材1の上面に位置し、その貫通孔を通して導入部材3が固定部材1に装着されてなる構造を有する。
位置決め部材2の固定法については、特に制約はないが、固定部材1と導入部材3との装着を螺着とすることにより、その締付圧力によつて固定するのが好ましい。何故ならば、使用時における固着力が例えば接着剤で固定した場合よりも大であり、しかも破損等をしたときに取替えが容易であるからである。・・・。また、位置決め部材2の一部が固定部材1内に挿入されたような構造とするのが好ましい。伺故ならば、位置決め部材2の外周直胴部の一部を、固定部材1に設けた位置決め部材2の外周直胴部の直径よりもわずかに大きい直径を有する凹部に嵌め込むことにより、構造的に固定部材1と位置決め部材2の中心軸が一致しやすくなるからである。」

エ.第3ページ左上欄第3?5行
「固定部材1と導入部材3との装着法については、確実な固定の達成と前述した理由からネジ部4による螺着が望ましいが・・・。」

オ.第3ページ左上欄第18行?右上欄第2行
「位置決め部材2の形状については、・・・溶接される板金等の穴形状に応じて適切な円形や多角形などが採用される。」

カ.第3ページ右下欄第1?3行
「この位置決めピンを自動車の製造工程に使用した結果、車体の鉄板が接触する位置決め部に摩耗が見られず・・・。」

キ.第3ページ右下第17?19行
「本発明の位置決めピンは、耐摩耗性にすぐれ、しかも板金の装入・抜出し時の機械的衝撃に充分耐える・・・。」

ク.第1図
テーパー部6が位置決めピンであること、テーパー部6と位置決め部材2が全体として位置決め部であることが看取できる。

これらを、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理する。
上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「先端にテーパー部6を備えた導入部材3及び板金を位置決めする位置決め部材2を、固定部材1に対して取替え可能に構成した位置決め用のものにおいて、前記導入部材3を前記固定部材1に対して取替え可能とするネジ部4を、前記テーパー部6の中心軸線上に軸心が位置するよう前記導入部材3の基端に設け、
前記テーパー部6は、前記板金の位置決め孔に挿入する位置決めピンを備え、
前記導入部材3を円形に形成した、
位置決め用のもの。」

4.対比・判断
刊行物1発明の「板金」は本願発明の「ワーク」に相当し、同様に、「導入部材3」は「位置決め本体部」に、「固定部材1」は「他の部位」に、「取替え」は「着脱」に、「位置決め用のもの」は「ワーク位置決め装置」に、「ネジ部4」は「取付ねじ部」に、「円形」は「円柱状」に、相当する。
刊行物1発明の「先端にテーパー部6を備えた導入部材3及び板金を位置決めする位置決め部材2」と、本願発明の「先端にワークを位置決めする位置決め部を備えた位置決め本体部」とは、「先端にワークを位置決めする位置決め部を一体又は別体に備えた位置決め本体部」である限りにおいて一致する。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「先端にワークを位置決めする位置決め部を一体又は別体に備えた位置決め本体部を、他の部位に対して着脱可能に構成したワーク位置決め装置において、前記位置決め本体部を前記他の部位に対して着脱可能とする取付ねじ部を、前記位置決め部の中心軸線上に軸心が位置するよう前記位置決め本体部の基端に設け、
前記位置決め部は、前記ワークの位置決め孔に挿入する位置決めピンを備え、
前記位置決め本体部を円柱状に形成した、
ワーク位置決め装置。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:位置決め本体部について、本願発明は「先端にワークを位置決めする位置決め部を備えた位置決め本体部」であるが、刊行物1発明は「先端にテーパー部6を備えた導入部材3及び板金を位置決めする位置決め部材2」である点。
相違点2:位置決めピンについて、本願発明は「位置決めピン内に、前記位置決め本体部上のワーク着座面との間で前記ワークをクランプするクランプアームの先端側を移動可能に収容し、このクランプアームを前記中心軸線上に沿って移動させるピストンを、前記位置決め本体部内に移動可能に収容し」ているが、刊行物1発明はそのようなものではない点。
相違点3:本願発明は「円柱状の位置決め本体部の側面に、位置決め本体部を前記位置決め部の中心軸線を中心として回転させるための回転器具係合部を設け、前記回転器具係合部に係合する回転器具は、前記回転器具係合部に係合する被係合部と、前記円柱状の位置決め本体部の外周面に整合する円弧内面を有する円弧形状部と、作業者が把持する把持部とを備え、前記把持部は前記円弧形状部の一方の端部に位置し、前記被係合部は、前記把持部の前記被係合部側の端面に対し前記円弧面に沿って90度隔てた位置に対応する前記円弧形状部の他方の端部に位置する」が、刊行物1発明はそのようなものではない点。

相違点1について検討する。
刊行物1発明における位置決め本体部は、「耐摩耗性にすぐれ、しかも板金の装入・抜出し時の機械的衝撃に充分耐える」(上記3.キ)ものとするため、位置決め部を別体としたものである。
刊行物1発明においては、上記利点を生じる反面、部品点数、製造工数が多くなり製造費用が高くなる。
よって、耐摩耗性、機械的衝撃がそれほど必要とされない使用条件においては、製造費用の観点から、位置決め部を位置決め本体部と一体とし、相違点1に係るものとすることに困難性は認められない。

相違点2について検討する。
「位置決めピン内に、位置決め本体部上のワーク着座面との間でワークをクランプするクランプアームの先端側を移動可能に収容し、このクランプアームを中心軸線上に沿って移動させるピストンを、位置決め本体部内に移動可能に収容」するものは、拒絶理由で周知例として引用した特開2005-246559号公報の図3?4、同じく特開2005-279861号公報の図7?8のごとく周知である。
かかる周知技術により、ワークの確実なクランプが期待できることから、刊行物1発明にかかる周知技術を適用することに困難性は認められない。

相違点3について検討する。
「円柱状本体部の側面に、本体部を中心軸線を中心として回転させるための回転器具係合部を設け、回転器具係合部に係合する回転器具は、回転器具係合部に係合する被係合部と、円柱状本体部の外周面に整合する円弧内面を有する円弧形状部と、作業者が把持する把持部とを備えている」ものは、拒絶理由で周知例として引用した実願昭53-147856号(実開昭55-66772号)のマイクロフイルムの第2図、同じく実願昭54-93258号(実開昭56-11070号)のマイクロフイルムの第2図、同じく実願昭57-117754号(実開昭59-24267号)のマイクロフイルムの第1図、同じく実願平5-50081号(実開平7-20263号)のCD-ROMの図1、新たに示す実願平1-51571号(実開平2-143172号)のマイクロフイルムの第4図のごとく周知である。
刊行物1発明も、円柱状の位置決め本体部を回転させることがあり、その際、かかる周知技術により、回転が容易になることから、かかる周知技術を適用することに困難性は認められない。
その際、把持部と被係合部を円弧面に沿ってどの程度隔てた位置とするかについては、障害物との関係、操作の利便性等に応じて、適宜選択すべき設計的事項にすぎない。
しかも前記実願平1-51571号(実開平2-143172号)のマイクロフイルムの第4図にみられるごとく、「90度」が格別珍しい角度でもない。
さらに、「90度」とすることによる技術的意義は、本願明細書には何ら記載されていない。
したがって、把持部と被係合部を円弧面に沿って「90度」隔てた位置とすることに格別の技術的意義は認められない。
よって、相違点2は格別なものではない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

5.むすび
本願発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-03 
結審通知日 2012-08-07 
審決日 2012-08-21 
出願番号 特願2006-74663(P2006-74663)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五十嵐 康弘  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 千葉 成就
刈間 宏信
発明の名称 ワーク位置決め装置  
代理人 三好 秀和  

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