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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q |
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管理番号 | 1264552 |
審判番号 | 不服2009-14018 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-08-06 |
確定日 | 2012-10-10 |
事件の表示 | 特願2003-146019「携帯端末用オンライン広告システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日出願公開、特開2004-348531〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 この出願は,平成15年5月23日の出願であって,平成20年12月10日付けの拒絶理由の通知に対して,平成21年3月16日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成21年4月2日付けの拒絶査定に対して平成21年8月6日に審判請求がなされ,平成24年2月3日付けの当審の拒絶理由の通知に対して,平成24年4月11日に意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。 2.本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年4月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 「店舗端末にオンライン広告をインターネット経由で配信する管理サーバと, 携帯端末との間で短距離無線通信による通信手段を備え,前記管理サーバから配信されたオンライン広告を前記短距離無線通信による通信手段により携帯端末に送信する1以上の店舗端末と,を含んだオンライン広告システムであって,携帯端末に送信されたオンライン広告は,前記店舗端末のいずれかにおいて利用可能であるオンライン広告システムにおいて, 前記店舗端末は,前記オンライン広告を前記短距離無線通信による通信手段により前記携帯端末に送信するときに,前記オンライン広告の識別IDと前記店舗端末の識別IDとを含み前記オンライン広告の配信元として自店舗端末を識別可能なLocation_IDを付加して送信し,前記店舗端末から前記オンライン広告を前記携帯端末に送信する際に複数の店舗端末のうちいずれにおいてユーザが取得したオンライン広告であるかが,オンライン広告データとともに前記携帯端末に記憶され, 前記店舗端末は,前記携帯端末に送信されたオンライン広告が利用されたときに,当該オンライン広告に付加された前記Location_IDを取得してインターネット経由で前記管理サーバに送信し,前記管理サーバにおいて,前記Location_IDに基づいて,オンライン広告の配信元である店舗端末を識別することを特徴とするオンライン広告システム。」 本願の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。 「【0010】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら,図13に示す従来の広告システムでは,携帯端末により広告を受け取ったユーザは店舗に来店して初めて割引等の特典を受けることができるのであり,例えば,店舗の所在地がユーザの生活圏から遠い場合には,ユーザの購買意欲を引き立てる効果は期待できない。 【0011】 とりわけ,ユーザは,雑誌,WEBサイト等にアクセスし,欲しい商品のクーポンを発見しこれを携帯端末に取得してから,当該商品が取り扱われている店舗(クーポンにより店舗が指定されている場合にはその店舗)に来店し,クーポンを提示して当該商品を購入するという一連の行動と取らねばならず,せっかく広告を配信しても購買意欲の向上にはつながりにくいという問題があった。 【0012】 このような問題点を解決するには,例えば,ユーザの携帯端末に広告やクーポンを配信する装置を店舗に設置することが考えられる。実際,コンビニエンスストアやレストランなどでは,このようなサービスを提供する店舗端末が設置され始めている。 【0013】 ところで,コンビニエンスストアやレストランなどのチェーン店舗では,複数店舗で同じ広告やクーポンを配布していることが多い。そのような広告やクーポンは,一旦ユーザの携帯端末に取得されてしまうと,いずれの店舗から配信されたものなのかが分からなくなってしまう。 【0014】 したがって,ユーザが携帯端末に取得した広告やクーポンを店舗等で使用した際にも,その配信元がどの店舗であるのかを知る手段がない。すると,配信元店舗にとっては,自店舗に関係のない広告やクーポンを配信してもコストや手間がかかるのみであり,自店舗には何ら利益とならないことになる。 【0015】 このような問題点に鑑みると,各種店舗が広告やクーポンの配信を行うための動機付けとして,配信された広告やクーポンが使用された場合には,その配信元店舗を特定し,配信元店舗に対して一定の利益還元を行うようなシステムが必要となってくる。 【0016】 そこで,本発明は,ユーザの携帯端末に広告やクーポンを配信するシステム(に)であって,特に,多数の店舗において多種類の広告・クーポンを配信するとともに,広告・クーポンが利用された場合には,配信元店舗に対して一定の利益還元が行われるようなシステムを提供しようとするものである。」 つまり本願発明は,配信された広告やクーポンが使用された場合にその配信元の店舗を特定すること,そして特定された店舗に利益還元して店舗が広告やクーポンの配信を行う動機付けとすることを課題とするものであることが理解できる。 3.当審における拒絶の理由について 当審における平成24年2月3日付けで通知した拒絶理由の概要は,以下のとおりである。 『この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2002-298025号公報(以下「引用文献1」という。) 請求項1 刊行物:引用文献1 備考 1.引用文献1について (途中略) 2.対比 (途中略) 3.相違点に対する判断 (途中略) 4.むすび したがって,本願発明は,引用発明,上記常套手段 及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 』 4.当審の判断 4-1.引用例について (1)引用例について 平成24年2月3日付けで通知した拒絶理由で引用した引用文献1(特開2002-298025号公報,以下「引用例」という。)には,以下のことが記載されている。(以下「引用例摘記事項」という。) (ア)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,広告管理システム,広告管理装置,広告管理方法及び広告管理プログラムに関する。」 (イ)「【0006】 【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は,店舗に設置された広告端末装置と,管理装置と,広告主の店舗の端末装置からなる広告管理システムであって,広告情報を表示する表示手段と,顧客からの要求に従って,前記表示手段に表示される広告情報と関連づけられたクーポン券を発行するクーポン券発行手段とを有する広告端末装置と,広告主の店舗において使用されたクーポン券の発行元を示す情報を含むクーポン情報を受信する受信手段と,前記受信手段により受信されたクーポン情報に基づいてクーポン券の発行元に対する広告報酬を算定する算定手段とを有する管理装置とからなる。 【0007】この発明によれば,管理装置は,広告主の店舗でクーポン券が使用されたときに,クーポン券の発行元を示す情報を含むクーポン情報を取得し,その情報に基づいてクーポン券の発行元に対する広告報酬を算定することができる。これにより,例えば,発行したクーポンの使用率が高い広告端末装置を有する店舗に対しては広告報酬を高くし,クーポン券の使用率が低い店舗に対しては広告報酬を低くすることことができるので,広告効果に見合った適正な広告報酬を支払うことができる。」 (ウ)「【0010】上記の発明において,管理装置が,さらに,算定手段の算定結果に基づいて広告端末装置の設置されている店舗に対して広告報酬を支払う支払い手段を有するようにしても良い。 【0011】このように構成することで,広告効果に見合った適正な広告報酬を,管理装置が自動的に広告端末装置の所有者に支払うことができる。上記の発明において,前記クーポン券発行手段は,クーポン券の発行情報をICカード,携帯端末装置または携帯電話に接触または非接触で記録するようにしても良い。 【0012】このように構成することで,ICカード,携帯端末装置,あるいは携帯電話と電気的に接触し,または無線,その他の方法で非接触でクーポン券の発行情報を記録させることができる。これにより簡単な操作でクーポン券の発行情報をICカード等に記録させることができる。さらに,ICカード等に記録されたクーポン券を使用するときに,広告主の店舗の端末装置でICカード等に記録されたクーポン券の発行情報を接触又は非接触で読み取ることでクーポン券の発行元を示す情報を収集し,その情報を管理装置に送信することができる。」 (エ)「【0013】 【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は,本発明の実施の形態の広告管理システムの説明図である。 【0014】広告情報を提供する広告提供店舗(ファミリーレストラン,飲食店,コンビニエンスストアなど)11の所定の場所には端末装置(広告端末装置)12が設置されている。以下の説明では,広告提供店舗11がファミリーレストランで,それぞれのテーブルに端末装置12が設置されている場合について説明する。この端末装置11の表示部には料理のメニューが表示され,ユーザがメニューから料理を自由に注文することができるようになっている。この端末装置12には,ユーザに無料で提供する各種の情報及び広告情報が表示される。また,この端末装置12は,ICカード13の書き込み及び読み取り機能,無線信号の送受信機能(例えば,Bluetoothによる送受信機能)を有している。また,無線信号によりデータの読み出し,あるいは書き込みが可能ICカードに対するデータの読み出し及び書き込み機能を設けても良い。 【0015】広告提供店舗11の端末装置12で広告情報を見たユーザがクーポン券の発行ボタンを操作すると,端末装置12がICカード(または,PDA等の携帯端末装置,携帯電話)13と電気的に接触した状態で,あるいは非接触の状態で,その広告情報に関連づけられているクーポン券の情報が書き込まれる(以下,ICカード等に書き込まれたクーポン券をデジタルクーポン券と呼ぶ)。 【0016】端末装置12はインターネット等のネットワークを14を介して管理サーバ15にデジタルクーポン券の発行通知を送信する。管理サーバ15は,デジタルクーポン券の発行通知を受信すると,デジタルクーポン券を発行した端末装置12が設置されている広告提供店舗11の店舗名を後述するクーポン履歴データベース31(図5)に記録する。 【0017】デジタルクーポン券をICカード13に記録したユーザは,その広告の広告主の店舗に行き,商品の購入時にICカード13を渡してデジタルクーポン券による割引きを受ける。 【0018】広告主の店舗16にもICカード13の読み取り及び書き込み機能とBluetoothによる無線送受信機能を有する端末装置17が設置されている。デジタルクーポン券による割引きを行う場合には,端末装置17のICカード13の読み取り・書き込み部にユーザから渡されたICカード13を挿入してクーポン情報(発行元の広告提供店舗を示す情報,発行日付,特典内容,割引き対象の商品が限定されている場合には,対象となる商品名等)を読み取る。さらに,読み取ったクーポン情報と,ユーザID,購入日付等の情報を管理サーバ15に通知する。 【0019】管理サーバ15は,広告主の店舗16の端末装置17から送信されてくる情報に基づいてどの広告提供店舗で発行されたデジタルクーポン券が使用されたかをクーポン履歴データベース31に記録する。 【0020】管理サーバ15は,広告提供店舗11から送信されてくるデジタルクーポン券の発行情報と広告主の店舗16から送信されてくるデジタルクーポン券の利用情報からどの広告提供店舗11で発行したクーポン券が何枚使用されたかを把握することができるので,それぞれの広告提供店舗11の広告効果を定量的に評価することができる。」 (オ)「【0021】図2は,広告提供店舗11の端末装置12に広告情報を表示させる場合の説明図である。広告端末装置12は,ファミリーレストラン,飲食店,コンビニエンスストア等の大勢の人が来店する店舗に設置される。例えば,ファミリーレストランのテーブルに設置された広告端末装置12にはメニューが表示され,ユーザが食べたい料理の注文が終了すると,情報の選択画面に切り替わり,その地域の店に関する情報,住まいに関する情報,健康に関する情報等の選択メニューが表示される。 【0022】例えば,最初のメニューからユーザがショップ(S)を選択すると,インターネット21に接続されている管理サーバ15がアクセスされ,その管理サーバ15のハードディスク22に格納されているショップの一覧情報が読み出され,その一覧情報が端末装置12に送られて表示される。ユーザが,ショップの一覧の中の特定のショップを選択すると,管理サーバ15を中継してショップのサーバ23がアクセスされ,そのサーバ23の管理するハードディスク24に格納されている広告情報や今日の推奨商品等の情報が読み出され,広告提供店舗11の端末装置12に表示される。このとき,そのショップがクーポン券を提供している場合には,端末装置12の画面右下にクーポン券の発行ボタン25が表示される。ユーザは,ICカード13を端末装置12のICカード読み取り・書き込み部に挿入して,その発行ボタン25を操作することでICカード13にクーポン情報を書き込むことができる。」 (カ)「【0023】次に,広告提供店舗11の端末装置12におけるクーポン券の発行処理を,図3のフローチャートを参照して説明する。以下に,一つの事例としてドラッグストアの広告情報を表示させ,そのドラッグストアのクーポン券を入手する場合について説明する。 【0024】端末装置(Web端末)12のメニューから地域情報サイトを選択すると,「カルチャーセンタ」,「健康と医療」,「旅行」等の情報が表示される(図3,S11)。ユーザが表示された地域情報の中から「健康と医療」を選択すると(S12),「健康と医療」に関連するWebサイトの一覧が表示されるので,その中から特定のドラッグストアを選択する(S13)。すると,選択したドラッグストアのホームページの広告が表示される(S14)。ドラッグストアの広告画面の右下にはクーポン発行ボタン25が表示される。 【0025】ユーザがそのクーポン発行ボタン25を押下すると(S15),端末装置12は会員カード(ICカード)13がICカード読み取り・書き込み部に挿入されているか否かを判別する(S16)。 【0026】ICカード13が挿入されていない場合には(S16,NO),ステップS17に進みICカード13の挿入を促すメッセージを表示する。ICカード13が挿入されている場合には(S16,YES),ステップS18に進みICカード13に発行元を示す情報,発行日付等を書き込む。ICカード13に記録されているクーポン情報は,発行日付,発行店名,クーポン種別,発行枚数,商品名(割引き対象の商品が限定されている場合の商品面),特典内容(クーポンの割引き率など),これまでの利用履歴などからなる。 【0027】書き込みが完了したなら,クーポン券の発行が完了したことを知らせるメッセージを表示する(S19)。さらに,クーポン発行情報として上述した発行店名,発行日付等からなるクーポン情報を管理サーバ15に送信する(S20)。」 (キ)「【0028】次に,図4は,広告主の店舗における処理を示すフローチャートである。商品購入時にユーザからICカード13が提示されたなら,そのICカード13を端末装置17に挿入する(図4,S31)。次に,店員が端末装置17のクーポン読み取りボタンを押下する(S32)。読み取りボタンが押下されると,端末装置17はICカード13からクーポン情報を読み取る(S33)。そして,その」クーポン情報を端末装置17の表示部に表示させる(S34)。図4のステップS34の右側に示してあるのは,クーポン情報の表示の一例であり,前述したクーポンの発行日付,商品名,発行店名,特典内容,クーポン種別,ユーザの利用履歴等が表示される。 【0029】店員は,表示されたクーポン情報を確認してクーポン券が有効か否かを判断する(S35)。クーポン券が有効であれば,クーポン情報の特典内容で指定されている割引き率で割引きを行い,ICカード13に利用実績を書き込む(S36)。さらに,そのユーザのクーポン情報(クーポン利用情報)を管理サーバ15に送信する(S37)。」 (ク)「【0030】次に,管理サーバ15における処理を,図5(A),(B)のフローチャートを参照して説明する。広告提供店舗11の端末装置12からクーポン情報を受信すると,管理サーバ15は,以下の処理を開始する。 【0031】最初に,受信した情報がクーポンの発行に関する情報か否かを判別する(図5(A),S41)。受信した情報がクーポンの発行に関する情報の場合には(S41,YES),ステップS42に進み,受信したクーポン情報をクーポン発行履歴データベース(クーポン履歴データベース31の一部)に格納した後,ステップS43に進む。また,受信した情報がクーポンの発行に関する情報ではない場合には(S41,NO),ステップS43に進む。 【0032】ステップS43では,受信した情報がクーポンの利用に関する情報か否かを判別する。受信した情報がクーポンの利用に関する情報の場合には(S43,YES),ステップS44に進み,そのクーポン利用情報をクーポン利用履歴データベース(クーポン履歴データベース31の一部)に格納する。 【0033】次に,管理サーバ15におけるクーポン情報の月単位の管理処理を,図5(B)のフローチャートを参照して説明する。先ず,クーポン履歴データベース31のクーポン発行履歴データベース及びクーポン利用履歴データベースからそれぞれのデータを読み出す(図5(B),S45)。次に,その読み出したクーポン発行情報及び利用情報に基づいてクーポン種別,広告主別のクーポンの発行/利用状況リストを作成する(S46)。 【0034】これらの処理により,広告主単位でそれぞれの広告提供店舗11でクーポン券が何枚発行されたか,それぞれの広告提供店舗11で発行されたクーポン券が何枚使用されたかを示す月単位のリストを作成することができる。」 (ケ)「【0035】図6は,ファミリーレストランに,上述した広告端末装置12を設置した場合の広告管理システムの一例を示す図である。広告端末装置12には,ファミリーレストランの料理のメニューの他に地域情報,健康に関する情報等を提供するサイトにアクセスするメニューが表示され,ユーザは無料で種々の情報を入手することができる。 【0036】同図は,健康NAVIという健康に関する情報を提供するサイトにアクセスした場合を示しており,そのサイトでは健康に関する種々の情報が無料で提供される。さらに,健康NAVIの会員となっている,近くにあるドラッグストアの広告が表示され,その画面の中にドラッグストアで割引きで商品が購入できるクーポン券の発行ボタンが表示される。その発行ボタンをユーザが指等で操作すると,クーポン券が印刷され,あるいはユーザがICカード13を端末装置12に挿入している場合には,ICカード13にクーポン情報が書き込まれる。 【0037】ユーザは,そのドラッグストアで商品を購入する際にクーポン券を提示することで一定の割引きを受けることができる。使用されたクーポン券には発行元店名がバーコード等により印刷,あるいはその他の方法で記録されているので,ドラッグストア32の端末装置でそのクーポン券がどの広告提供店舗11で発行されたものかを認識でき,クーポン券の発行元を示す情報を管理装置15に送信することができる。」 (コ)「【0047】また,広告主の店舗の端末装置17は,ネットワークに接続される専用の端末装置である必要はなく,精算機にICカードの読み取り・書き込み機能,ネットワーク接続機能等を設けたものでも良い。 【0048】さらに,クーポン券は,特定の広告主の店舗で使用できるものに限らず,複数の広告主でグループを構成しグループ内の店舗で使用できるものでも良い。上述した実施の形態は,管理装置15が複数の広告主のクーポン発行情報及びクーポン利用情報を収集して広告提供店舗11別の広告効果を評価できる様にしているが,必ずしもこのようなシステム構成である必要はない。例えば,広告主が専用の管理サーバを設け,その管理サーバがクーポン利用情報を収集し,広告提供店舗別の広告効果を評価,あるいは広告報酬を算定できるようにしても良い。」 (2)引用例発明について 引用例摘記事項によれば,引用例には,以下の発明(以下「引用例発明」という。)が記載されている。 「クーポン券を発行するクーポン券発行手段を有する広告端末装置と,広告主の店舗で使用されたクーポン券の発行元を示す情報を含むクーポン情報を受信する受信手段と,受信されたクーポン情報に基づいてクーポン券の発行元に対する広告報酬を算定する算定手段を有する管理装置により,管理装置が広告主の店舗でクーポン券が使用されたときにクーポン券の発行元を示す情報を含むクーポン情報を取得し,その情報に基づいてクーポン券の発行元に対する広告報酬を算定することができる広告管理システムであって, クーポン券発行手段は,クーポン券の発行情報を,携帯端末装置に非接触で記録するものであり, 広告提供店舗に端末装置(広告端末装置)12が設置され, 端末装置12は,無線信号の送受信機能(例えば,Bluetoothによる送受信機能)を有し,端末装置12が携帯端末装置と非接触の状態で,広告情報と関連づけられているクーポン券の情報(デジタルクーポン券)を書き込み, ユーザは,広告の広告主の店舗での商品の購入時にデジタルクーポン券による割引きを受けることができ, その際,広告主の店舗16の端末装置17がクーポン情報(発行元の広告提供店舗を示す情報,発行日付,特典内容,割引き対象の商品が限定されている場合には,対象となる商品名等)を読み取り,読み取ったクーポン情報を管理サーバ15に通知し, 管理サーバ15は,広告主の店舗16の端末装置17から送信されてくる情報に基づいてどの広告提供店舗で発行されたデジタルクーポン券が使用されたかをクーポン履歴データベース31に記録し,デジタルクーポン券の利用情報からどの広告提供店舗11で発行したクーポン券が何枚使用されたかを把握すること, さらに,インターネットに接続されている管理理サーバ15を中継してショップのサーバ23がアクセスされ,そのサーバ23の管理するハードディスク24に格納されている広告情報や今日の推奨商品等の情報が読み出されてもよく,ショップがクーポン券を提供している場合ユーザはクーポン情報を書き込むことができ, 広告提供店舗11の端末装置12におけるクーポン券の発行処理で記録されるクーポン情報は,発行日付,発行店名,クーポン種別,発行枚数,商品名(割引き対象の商品が限定されている場合の商品名),特典内容(クーポンの割引き率),などからなり, 広告主の店舗でユーザが商品購入するときに,端末装置17はクーポン情報を読み取り,クーポン情報の特典内容で指定されている割引き率で割引きを行い,ユーザのクーポン情報(クーポン利用情報)を管理サーバ15に送信し, 管理サーバ15では,受信した情報がクーポンの利用に関する情報の場合には,クーポン利用情報をクーポン利用履歴データベースに格納し, クーポン利用情報に基づいてクーポン種別,広告主別のクーポンの利用状況リストを作成するものである 広告管理システム。」 4-2.対比 引用例発明と本願発明とを比較する。 引用例発明の,広告提供店舗の端末装置12が,Bluetooth等の無線信号の送受信機能でユーザの携帯端末装置に書き込むクーポン情報は,広告提供店舗情報,特典内容,割引き対象商品名であり,又は,発行店名,クーポン種別,割引き対象商品名,特典内容(クーポンの割引き率)であり,広告主の店舗で使用できるものである。 このクーポン情報は広告情報と関連づけられるものであって,広告情報はインターネットに接続されている管理サーバを中継して広告主の店舗であるショップのサーバーから読み出される。 これら広告情報や広告情報と関連づけられるクーポン情報は,後記する点で相違するものの,本願発明のオンライン広告やオンライン広告データに相当する。 してみると,引用例発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「店舗端末にオンライン広告をインターネット経由で配信する管理サーバと,携帯端末との間で短距離無線通信による通信手段を備え,管理サーバから配信されたオンライン広告を短距離無線通信による通信手段により携帯端末に送信する1以上の店舗端末と,を含んだオンライン広告システムであって,携帯端末に送信されたオンライン広告は,店舗端末のいずれかにおいて利用可能であるオンライン広告システム」である点で共通する。 そして,引用例発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「店舗端末は,オンライン広告を短距離無線通信による通信手段により携帯端末に送信するときに,オンライン広告と店舗端末の識別情報とを含みオンライン広告の配信元として自店舗端末を識別可能な情報を付加して送信し,店舗端末からオンライン広告を携帯端末に送信する際に複数の店舗端末のうちいずれにおいてユーザが取得したオンライン広告であるかが,オンライン広告データとともに携帯端末に記憶」される点で共通する。 引用例発明は,ユーザが広告主の店舗での商品購入時にクーポン券による割引きを受られ,広告主の店舗の端末装置がクーポン情報を管理サーバに通知し,管理サーバは,広告主の店舗の端末装置から送信されてくる情報に基づいてどの広告提供店舗で発行されたデジタルクーポン券が使用されたかをクーポン履歴データベースに記録する。 してみると,引用例発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「店舗端末は,携帯端末に送信されたオンライン広告が利用されたときに,オンライン広告に付加されたオンライン広告の配信元として自店舗端末を識別可能な情報を取得してインターネット経由で管理サーバに送信し,管理サーバにおいて,オンライン広告の配信元として自店舗端末を識別可能な情報に基づいて,オンライン広告の配信元である店舗端末を識別」する点で共通する。 してみると,引用例発明と本願発明とは以下の点で一致する。 [一致点] 「店舗端末にオンライン広告をインターネット経由で配信する管理サーバと,携帯端末との間で短距離無線通信による通信手段を備え,管理サーバから配信されたオンライン広告を短距離無線通信による通信手段により携帯端末に送信する1以上の店舗端末と,を含んだオンライン広告システムであって,携帯端末に送信されたオンライン広告は,店舗端末のいずれかにおいて利用可能であるオンライン広告システムにおいて, 店舗端末は,オンライン広告を短距離無線通信による通信手段により携帯端末に送信するときに,オンライン広告と店舗端末の識別情報とを含みオンライン広告の配信元として自店舗端末を識別可能な情報を付加して送信し,店舗端末からオンライン広告を携帯端末に送信する際に複数の店舗端末のうちいずれにおいてユーザが取得したオンライン広告であるかが,オンライン広告データとともに携帯端末に記憶され, 店舗端末は,携帯端末に送信されたオンライン広告が利用されたときに,オンライン広告に付加されたオンライン広告の配信元として自店舗端末を識別可能な情報を取得してインターネット経由で管理サーバに送信し,管理サーバにおいて,オンライン広告の配信元として自店舗端末を識別可能な情報に基づいて,オンライン広告の配信元である店舗端末を識別することを特徴とするオンライン広告システム。」 そして両者は以下の点で相違する。 [相違点] 本願発明が,「オンライン広告の識別IDと店舗端末の識別IDとを含みオンライン広告の配信元として自店舗端末を識別可能なLocation_IDを付加」するのに対し,引用例発明は,「オンライン広告と店舗端末の識別情報とを含みオンライン広告の配信元として自店舗端末を識別可能な情報を付加」するものであり,さらに,本願発明が,「店舗端末」が,「オンライン広告に付加されたLocation_IDを取得してインターネット経由で管理サーバに送信」し,「管理サーバ」が,「Location_IDに基づいて,オンライン広告の配信元である店舗端末を識別」するのに対し,引用例発明は,「店舗端末」が,「オンライン広告に付加されたオンライン広告の配信元として自店舗端末を識別可能な情報を取得してインターネット経由で管理サーバに送信」し,「管理サーバ」が,「オンライン広告の配信元として自店舗端末を識別可能な情報に基づいて,オンライン広告の配信元である店舗端末を識別」するものである点。 4-3.判断 以上の各相違点について以下に検討する。 [相違点]について。 引用例発明の管理サーバは,デジタルクーポン券の利用情報からどの広告提供店舗で発行したクーポン券が何枚使用されたかを把握したり,クーポンの利用情報に基づいてクーポン種別,広告主別のクーポンの利用状況リストを作成し,クーポンの管理をする。 このような管理をするために,管理の対象となる情報に識別IDを付与して管理をすることは常套手段である。 してみると,引用例発明に上記常套手段を適用して,オンライン広告に識別IDを付与し,店舗端末の識別情報に識別IDを付与すること,さらに,付与された「オンライン広告の識別IDと店舗端末の識別ID」とを含み「オンライン広告の配信元として自店舗端末を識別可能な情報」を「Location_ID」とすること,そしてこれにより,「店舗端末」が,「オンライン広告に付加されたLocation_IDを取得してインターネット経由で管理サーバに送信」するよう構成し,「管理サーバ」が,「Location_IDに基づいて,オンライン広告の配信元である店舗端末を識別」するよう構成し,これにより配信元の店舗を特定して広告を管理する構成とすることには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。 4-4.審判請求人の主張について ここで,審判請求人の主張について,以下に検討する。 (1)審判請求人は,平成24年4月11日付けの意見書で,以下のとおり主張している。 「すなわち,店舗端末は,前記オンライン広告を前記短距離無線通信による通信手段により前記携帯端末に送信し,一方,前記店舗端末は,前記携帯端末に送信されたオンライン広告が利用されたときに,当該オンライン広告に付加された前記Location_IDを取得してインターネット経由で前記管理サーバに送信するものであり,それぞれの上きぃうに応じて,異なる通信手段を有している点も新規な構成であります。 引用文献1等では,ICカード等で読み取り書き込みを行うことから,ユーザの意思が色濃く反映させるものとなり,本願請求項1発明のようにユーザの意思によらずLocation_IDを近づいた携帯端末に送ることはできません。 尚,平成20年12月16日付け拒絶理由通知の引用文献1(特開2002-298223号公報)では。電池クーポンを支払管理装置からbluetoothなどのインターフェイスを介して携帯電話に供給する旨が記載されておりますが,支払い管理装置は,ユーザ端末からの電池クーポンの提示を受けてキャッシュバックを行うものであり,本願請求項1発明の店舗端末とは異なるものであります。この場合は,電子クーポンをオンライン広告として配布するものであり,本願のような店舗に近接すると電子クーポンが携帯端末に供給されるものとは異なります。また,状況に応じて異なる経路で送信する内容自体も,本願とは全く異なります。 従いまして。本願請求項1発明は,引用文献1等には開示も示唆もない構成を有することで顕著な効果を発揮するものであり,たとえ当業者といえども,引用文献1等に基づいて,本願新請求項1発明に想到することは容易ではないと考えます。」 (2)審判請求人の主張は,措辞が明らかではない点があるが,これを要すれば,まず,本願発明はプッシュ型の広告配信であるのに対して,引用例発明はプル型の広告配信であるという主張であると考えられる。 確かに,図10を参照した発明の詳細な説明の【0083】?【0085】段落の記載によれば,本願発明は,プッシュ型の広告配信の場面でも使用可能であることは理解できる。 しかし,本願発明は,前記「2.」で特定される発明であり,プッシュ型の広告配信を特定しない。 仮に,本願発明がプッシュ型の広告配信の場面で使用するための構成で特定されたとしても,そもそも,無線通信が可能な圏内において広告を受信する(【0083】段落の記載による。)ことは,以下のとおり周知の事項である。 例えば,特開2001-326960号公報には,携帯端末の属する通信エリアに移動したユーザの携帯端末に通信エリア内のデパートのクーポン情報を自動配信することが開示(【要約】【0025】?【0027】)され,特開2001-325291号公報には,店舗に買物にきた者が通信エリア内に入圏するとブルートゥースユニットが広告データを配信することが開示(【0018】)され,特開2003-051771号公報には,キオスク端末から近傍に存在する携帯端末に向けてブルートゥースのアドホック接続を使用して店舗の割引クーポンを自動配信することが開示(【0038】)され,特開2003-029683号公報には,ユーザの移動電話がショッピングモール内の書店を通過する際に短距離広帯域発信器で特定の書籍の特別販売やクーポンを発行することが開示(【0103】【0104】)されている。 したがって,仮に,本願発明がプッシュ型の広告配信の場面で使用するための構成で特定されたとしても,そのような本願発明は,引用例発明と周知の事項とから当業者想到容易である。 したがって,審判請求人の上記主張を採用することはできない。 (3)さらに,審判請求人の主張は,本願発明が,オンライン広告を短距離無線通信で送信し,インターネット経由で管理サーバに送信する点が相違するとの主張であると考えられる。 しかし,引用例発明と本願発明との一致点の認定・判断は,前記「4-2.」のとおりである。 したがって,審判請求人の上記主張を採用することはできない。 (4)さらに,審判請求人の主張は,原査定の拒絶の理由の引用文献1との相違点に係る主張であると考えられる。 しかし,当審の進歩性の判断の基礎となる先行発明は前記「3.」のとおりである。さらに審判請求人の主張内容を吟味しても,その主張は上記(1)と同様であると考えられ,上記(1)と同様の理由で,審判請求人の上記主張を採用することはできない。 以上(2)?(4)のとおりであるから,審判請求人の主張を採用することはできない。 4-5.まとめ 以上のとおり,本願発明における上記相違点に係る構成は,引用例発明及び常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして,本願発明の作用効果も,引用例発明及び常套手段から当業者が予測できる範囲のものである。 4-6.進歩性に関する結論 したがって,本願発明は,引用例発明及び常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用例発明及び常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-10 |
結審通知日 | 2012-05-15 |
審決日 | 2012-05-28 |
出願番号 | 特願2003-146019(P2003-146019) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 辻本 泰隆 |
特許庁審判長 |
清田 健一 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 手島 聖治 |
発明の名称 | 携帯端末用オンライン広告システム |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 平木 祐輔 |