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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1264594
審判番号 不服2012-3307  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-21 
確定日 2012-10-11 
事件の表示 特願2009-200245「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月10日出願公開、特開2009-288799〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年5月25日に出願した特願2004-154911号の一部を平成21年8月31日に新たな特許出願としたものであって、平成23年10月19日付けで手続補正がなされ、同年11月21日付けで拒絶査定され、これに対し、平成24年2月21日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1?13に係る発明は、平成23年10月19日付け手続補正によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?13に記載されたとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のものである。

「断面形状が台形のレンズ部が所定の間隔で配列されるとともに、隣り合う前記レンズ部間の楔形部は、前記レンズ部と、同一又は異なる材料が充填され、
前記楔形部は観察者側に先端を有するとともに映像側に底面を有し、光吸収粒子が添加された屈折率Nxの物質が充填されて光吸収効果を具備し、前記レンズ部を構成する材料の屈折率Nyとの間に
Nx≦Ny
なる関係が成立し、前記光吸収粒子はその平均粒径が1μm以上で、前記底面の幅長の2/3以下である視野角制御シートを具備し、
前記視野角制御シートが映像源に接着されていることを特徴とする表示装置。」

3 刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2004-12918号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次に示す事項が図とともに記載されている(下線は当審で付した。)。

(1)「【請求項1】
光透過部と、
前記光透過部の入光面から入光した光の一部を、その出光面から出光させるように反射させる反射部とを備え、前記反射部は、前記入光面での入光角度よりも、前記出光面の出光角度が小さくなるように反射させることを特徴とする光線方向制御シート。」

(2)「【0062】
【実施例】
以下、具体的な実施例をあげて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
図14は、本発明による光線方向制御シートの実施例を示す図である。この光線方向制御シート10-5は、ベースフィルム(PETフィルム、厚み100μm、屈折率1.58)51の上に、光透過部11を、この台形状(入光側の幅L1=50μm、出光側の幅L3=144μm、斜面の角度θ=10°)の逆形状の金型(ロール状)を用いて、このロールとベースフィルム51の間に、UV硬化樹脂を充填しながら、圧着させたのちに、UV光を照射してUV硬化樹脂を硬化させることにより形成した(硬化後の屈折率=1.57)。
【0063】
次に、入光側の台形の頂上部分(50μm幅)に、ポリビニールアルコール樹脂を、10μm程度コーティングしたのち、アルミニウムを1μm蒸着した。その後に、ポリビニールアルコール層を水に溶解して除去して、反射層15を形成した。
こうして作製した光線方向制御シート10-5に、入光側に光源として蛍光灯を配置して光を照射したところ、-30°?+30°の範囲に発光する光源装置が得られた。
【0064】
(実施例2)
図15は、本発明による視認性向上シートの実施例を示す図である。
この視認性向上シート40-3は、ベースフィルム(PETフィルム、厚み120μm、屈折率1.58)52の片面に、実施例1と同様の形状を、同様の方法で形成した。
【0065】
次に、硬化後の屈折率が1.34になるようなUV硬化樹脂の中に、平均粒径5μmの黒色ビーズを混ぜたものを、谷部に充填し硬化させ、遮光部16を形成した。
さらに、シート52の反対面に対して、幅L4=5μmで、深さT3=370μmの溝を有する形状を、その形状の逆形状を用いて、溝の位置と初めに形成した形状の谷部の位置があうようにして形成した。
最後に、この溝に黒色インキを充填し硬化させて、光吸収部22を形成した。このようにし、視認性向上シート40-3を作製した。
この視認性向上シート40-3を、液晶ディスプレイの表面に配置したところ、屋外光の下でもコントラストの高い画像が視認できた。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、入光した光のうち、制御しようとする方向(シートの法線方向)に進まない光を吸収するのではなく、それ以外の方向に進む光を、反射させて制御しようとする方向に進ませることにより、光の損失を抑えながら、光の進む方向をそろえる制御を行うことができる。」

(3)前記(1)及び(2)からみて、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ベースフィルム(PETフィルム、厚み120μm、屈折率1.58)の片面に、光透過部を、この台形状(入光側の幅L1=50μm、出光側の幅L3=144μm、斜面の角度θ=10°)の逆形状の金型(ロール状)を用いて、このロールとベースフィルムの間に、UV硬化樹脂を充填しながら、圧着させたのちに、UV光を照射してUV硬化樹脂を硬化させることにより形成し(硬化後の屈折率=1.57)、次に、硬化後の屈折率が1.34になるようなUV硬化樹脂の中に、平均粒径5μmの黒色ビーズを混ぜたものを、谷部に充填し硬化させ、遮光部を形成した視認性向上シートを表面に配置した液晶ディスプレイ。」

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の、「硬化後の屈折率=1.57」の「UV硬化樹脂を硬化させることにより形成し」た「光透過部」、「台形状(入光側の幅L1=50μm、出光側の幅L3=144μm、斜面の角度θ=10°)の逆形状の金型(ロール状)を用いて」硬化された構成、「硬化後の屈折率が1.34になるようなUV硬化樹脂」を「谷部に充填し硬化させ」た「遮光部」、「出光側」、「入光側」、「硬化後の屈折率が1.34になるようなUV硬化樹脂」、「黒ビーズ」、「硬化後の屈折率=1.57」の「UV硬化樹脂」、「視認性向上シート」、及び「液晶ディスプレイ」は、それぞれ、本願発明の「レンズ部」、「断面形状が台形のレンズ部が所定の間隔で配列され」た構成、「隣り合うレンズ部間の楔形部」であって「前記レンズ部と、異なる材料が充填され」た構成、「観察者側」、「映像側」、「屈折率Nxの物質」、「光吸収粒子」、「レンズ部を構成する屈折率Nyの材料」、「視野角制御シート」、及び「表示装置」に相当する。

(2)そして、引用発明において、光透過部とされる台形状の入光側の幅L1が50μm、出光側の幅L3が144μm、斜面の角度θが10°であり、(1)で述べたとおり、引用発明の「出光側」、「入光側」は本願発明の「観察者型」、「映像側」にそれぞれ相当するから、引用発明の台形の間の谷部の楔形状の「遮光部」は、本願発明の「観察者側に先端を有するとともに映像側に底面を有」する形状に一致する形状を備えている。

(3)また、引用発明の黒ビーズ((1)で述べたとおり、本願発明の「光吸収粒子」に相当。)が「平均粒径5μm」であることと、本願発明の光吸収粒子が「平均粒径が1μm以上」であることとは、光吸収粒子が平均粒径5μmである点において一致する。

(4)さらに、引用発明において、光透過部11の台形状の入光側の幅L1が50μm、出光側の幅L3が144μmなのであるから、台形の間の(楔形状の)谷部の底面の幅長は144-50=94μmであり、黒ビーズの平均粒径5μmは、前記底面の幅長の5/94である。そして、引用発明において、黒ビーズからなる光吸収粒子の平均粒径が底面の幅長の5/94であることと、本願発明の光吸収粒子はその平均粒径が底面の幅長の2/3以下であることとは、光吸収粒子の平均粒径が底面の幅長の5/94である点において一致する。

(5)引用発明の液晶ディスプレイが映像源であることは明らかであるから、引用発明において、視認性向上シート(「視野角制御シート」に相当。)を液晶ディスプレイの表面に配置したことと、本願発明の視野角制御シートが映像源に接着されていることとは、視野角制御シートが映像源の表面に配置されている点において一致する。

(6)よって、本願発明と引用発明は、

「断面形状が台形のレンズ部が所定の間隔で配列されるとともに、隣り合う前記レンズ部間の楔形部は、前記レンズ部と異なる材料が充填され、
前記楔形部は観察者側に先端を有するとともに映像側に底面を有し、光吸収粒子が添加された屈折率Nxの物質が充填されて光吸収効果を具備し、前記レンズ部を構成する材料の屈折率Nyとの間に、
Nx≦Ny
なる関係が成立し、前記光吸収粒子はその平均粒径が5μmで、前記底面の幅長の5/94である視野角制御シートを具備し、
前記視野角制御シートが映像源の表面に配置されている表示装置。」

である点で一致し、以下の点において相違する。

[相違点]
本願発明においては、視野角制御シートが映像源に「接着」されているのに対して、引用発明においては、視認性向上シート(「視野角制御シート」に相当。)が液晶ディスプレイ(「映像源」に相当。)の表面に配置されてはいるものの、「接着」されているか否かは不明である点。

5 相違点についての判断
前記相違点について検討する。

(1)表示装置の技術分野において、視野角制御シートを映像源に接着することは、本願出願前周知である(例、特開2002-131526号公報【0018】【0022】図4及び図5、特開2001-92359号公報【0002】?【0004】、登録実用新案第3058477号公報【請求項1】?【請求項6】、特開2003-66206号公報【請求項1】?【請求項4】【0053】及び図1、特開2004-4148号公報【請求項15】【0204】及び図32)。

(2)そして、引用発明は視認性向上シートの発明であるから、当業者が、前記周知技術を導入し、当該視認性向上シートを液晶ディスプレイに接着することによって間に空気が入ることを防止し、もってさらなる視認性の向上を図ろうとする動機付けが存在する。
したがって、引用発明に前記周知技術を導入して、相違点に係る本願発明の構成を採用することは、本願出願当時、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)そして、「視野角制御シートが映像源に接着されている」ことにより奏する、迷光を抑制するという効果は、請求人が審判請求書で述べているとおり、引用発明に相違点に係る本願発明の構成を採用した場合に当業者が予測できる範囲の効果に過ぎない。

よって、本願発明は、進歩性を有していない。

6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-06 
結審通知日 2012-08-07 
審決日 2012-08-27 
出願番号 特願2009-200245(P2009-200245)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 最首 祐樹  
特許庁審判長 西村 仁志
特許庁審判官 立澤 正樹
清水 康司
発明の名称 表示装置  
代理人 山本 典輝  

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