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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F17C
管理番号 1264595
審判番号 不服2012-5221  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-21 
確定日 2012-10-11 
事件の表示 特願2001- 96083「液化ガス気化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月 9日出願公開、特開2002-295795〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成13年3月29日の特許出願であって、平成22年10月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月20日に手続補正がなされ、平成23年4月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月11日に手続補正がなされ、同年12月16日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、平成24年3月21日に本件審判の請求がなされ、当審において、平成24年5月14日付けで拒絶理由が通知され、同年7月17日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年7月17日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりと認められる。

「マイクロガスタービンを用いるコージェネレーションにおけるマイクロガスタービンに所定圧力以上の液化燃料ガスを供給するために、液化ガス容器内に収容した液化燃料ガスから所定圧力以上の圧力を有する気化燃料ガスを得る方法であって、前記所定圧力以上の圧力にするために、前記液化ガス容器を温風加熱すること、前記温風の熱源に前記マイクロガスタービンでの発電及び温水供給後に生じる排熱を用いることを特徴とする前記方法。」

3.刊行物記載の発明
これに対し、本願出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された特開昭56-147998号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.第2ページ左上欄第8行?左下欄第4行
「本発明は、液化石油ガスを燃料とするガスタービン発電機と、ガスタービンの燃焼廃ガスを用いる廃熱ボイラーを備える設備において、液化石油ガスを、その臨界圧力以上に加圧すると同時に、廃熱ボイラーからの抽出蒸気との熱交換によりその圧力における臨界温度以上に加熱して気化し、ガスタービンの燃料とすることを特徴とするものである。
以下、本発明の液化石油ガスの燃料化方法の一実施例を図面に基づいて説明する。図は火力発電設備の系統図で、1は加圧貯蔵タンク、2は払出管、3は昇圧ポンプ、4は供給管、5は流量調節弁、6は蒸発器、7はガスタービンで、直結された発電機8を備えている。9は廃ガス管、10は廃熱ボイラー、11は給水管、12は蒸気管、13は加熱用蒸気管、14は凝縮管を示す。この設備においては、加圧貯蔵タンク1の底部から抜き出された液化石油ガスは、払出管2を通り昇圧ポンプ3に入り昇圧されて、その液化石油ガスの臨界圧力以上となる。・・・。この高圧の液化石油ガスは供給管4を通り、多管式貫流型の蒸発器6に入り、この蒸発器6で、廃熱ボイラー10から抽出されて加熱用蒸気管13を通ってきた蒸気によって昇温され、臨界温度を越えると気化状態となる。
この気化状態となった液化石油ガスは、流量調節弁5で制御されながら、ガスタービン7の入口に噴射されて燃焼する。この高圧、高温の気化状態となった液化石油ガスの燃焼により、ガスタービンがまわり、発電機8が発電する。この燃焼による廃ガスは、廃ガス管9を通り廃熱ボイラー10に供給され、給水管11からのボイラー給水を加熱して蒸気とし、蒸気管12から蒸気タービンに供給される。その蒸気のー部は、加熱用蒸気管13を通って蒸発器6で、液化石油ガスに熱を与え、凝縮水は凝縮管14を通り給水管11に戻される。」

これらを、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理する。
上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「ガスタービンに臨界圧力以上の液化石油ガスを供給するために、蒸発器6内に収容した液化石油ガスから気化状態の液化石油ガスを得る方法であって、前記蒸発器6を蒸気加熱すること、前記ガスタービンの発電による廃ガスはボイラー給水を加熱して蒸気とし、その蒸気の一部は蒸発器6で液化石油ガスに熱を与える方法。」

4.対比・判断
刊行物1発明の「臨界圧力」は本願発明の「所定圧力」に相当し、同様に、「液化石油ガス」は「液化燃料ガス」に、「気化状態の液化石油ガス」は「気化燃料ガス」に、相当する。
刊行物1発明の「蒸発器6」と本願発明の「液化ガス容器」とは、「ガス容器」である限りにおいて、一致する。
刊行物1発明の「蒸気加熱」と本願発明の「温風加熱」とは、「加熱」である限りにおいて、一致する。
刊行物1発明の「ガスタービンの発電による廃ガスはボイラー給水を加熱して蒸気とし、その蒸気の一部は蒸発器6で液化石油ガスに熱を与える」ことと本願発明の「温風の熱源に前記マイクロガスタービンでの発電及び温水供給後に生じる排熱を用いる」こととは、「加熱の熱源にガスタービンでの発電後による排熱を用いる」である限りにおいて、一致する。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「ガスタービンに所定圧力以上の液化燃料ガスを供給するために、ガス容器内に収容した液化燃料ガスから気化燃料ガスを得る方法であって、前記ガス容器を加熱すること、加熱の熱源にガスタービンでの発電後による排熱を用いる前記方法。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:ガスタービンについて、本願発明は「コージェネレーションにおけるマイクロガスタービン」であるが、刊行物1発明はそのようなものではない点。
相違点2:加熱について、本願発明は「液化ガス容器」を「温風加熱」し「温風の熱源にマイクロガスタービンでの発電及び温水供給後に生じる排熱を用いる」が、刊行物1発明は「蒸発器」を「蒸気加熱」し「ガスタービンの発電による廃ガスはボイラー給水を加熱して蒸気とし、その蒸気の一部は蒸発器で液化石油ガスに熱を与える」点。
相違点3:気化燃料ガスについて、本願発明は「所定圧力以上の圧力を有する」が、刊行物1発明は明らかではない点。

相違点1について検討する。
当審では、「請求項1において「コージェネレーション」がいかなるものか不明確である。一般に「コージェネレーション」とは、機関の排熱を利用して、冷暖房や給湯などに利用する熱エネルギーを供給する仕組み(システム)のことであると解される・・・。」と、拒絶理由において指摘した。
請求人は、「本発明におけるコージェネレーションとは、マイクロガスタービンにおいて、液化燃料ガスを燃料として発電をし、次いで発電の際にマイクロガスタービンにおいて生じる排ガスから温水を得るシステムである。この点は、拒絶理由通知書において指摘された「一般に「コージェネレーション」とは、機関の排熱を利用して、冷暖房や給湯などに利用する熱エネルギーを供給する仕組み(システム)のことであると解される」とのご理解と実質的な相違はないと思料する。」と意見書において回答した。

刊行物1発明は、「ガスタービンの発電による廃ガスはボイラー給水を加熱して蒸気とし、その蒸気の一部は蒸発器で液化石油ガスに熱を与える」もの、すなわち、発電による廃ガスの「排熱」により、給水を加熱した蒸気を利用して液化石油ガスに「熱エネルギー」を与えるものであるから、「コージェネレーション」と言える。
仮に、そうでないとしても、刊行物1発明に、相違点1ないし3を総合したものは、本願発明と同じ構成となることから、本願発明同様「コージェネレーション」となる。

マイクロガスタービンとは、請求人が意見書で主張するように、「比較的小規模の設備」である。
日本冷凍空調学会のホームページ(ご案内-用語集-マイクロガスタービン)には、以下の記載がある。
「■ マイクロガスタービンの構成と特徴
(1) 構成とその特徴
MGTの原理は,通常のガスタービンサイクル(ブレイトンサイクル)を小型に応用したものであるが,小規模で経済性を持たせるために,タービン入口温度,タービン回転数,および圧縮比に小規模の特性を充分生かすように配慮された技術である.」
「■ マイクロガスタービンの課題と展望
(4) 規制・基準面の緩和
現在,10kW以上のガスタービン設置の場合は,ボイラ・タービン主任技術者の専任が電気事業法で義務付けられている.」

すなわち、マイクロガスタービンは、通常のガスタービンと基本的原理は共通するが、「タービン入口温度,タービン回転数,および圧縮比」等、「小規模の特性を充分生かすように配慮された技術」であり、小規模であるため、法律上の安全規制が緩和されるものである。
本願発明は、上記のとおりであるが、その構成をみても、「小規模」であることの技術的特徴は、何ら特定されていない。
マイクロガスタービンそのものは、特開2000-54855号公報にみられるごとく周知であるから、刊行物1発明のガスタービンを周知のマイクロガスタービンに適用することは、必要に応じてなしうる事項にすぎない。
よって、相違点1は格別なものではない。

相違点2について検討する。
「液化ガス容器」を「温風加熱」する点は、拒絶理由で指摘した特開平11-166697号公報の段落0008?0011、図4、同じく特開平8-128596号公報の段落0010、0027、図1、新たに示す特開2000-88192号公報の段落0008、同じく特開2000-39098号公報の段落0008のごとく周知である。
かかる構造は、刊行物1発明の「蒸発器」を「蒸気加熱」するものより、簡便で低コストであるから、かかる周知技術を適用することに困難性は認められない。

請求人は、これら周知技術における「液化ガス」は半導体製造に用いられる液化ガスであって「燃料ガス」ではない旨、主張する。(意見書(3)(i))
しかし、「気化ガス」を製造する技術である点では、刊行物1発明、本願発明と同様であって、技術的に用途は問題とならないから、請求人の主張は採用できない。
請求人は、また、刊行物1発明は、「火力発電用の燃料として供給する設備に適する方法に関するものであり、そもそも貯蔵容器(加圧貯蔵タンク1)自体を加熱することは、関連法規の規制からすると安全上想定されていないと考えられる」旨、主張する。(意見書(3)(i))
しかし、安全規制は、小規模ガスタービンには適用されないから、相違点1を踏まえ、刊行物1発明を「マイクロガスタービン」としたものにおいては、簡便で低コストな周知技術を適用しうるものである。

「熱源に温水供給後に生じる排熱を利用する」ことの技術的意義について検討する。
請求人は、意見書で、以下のとおり主張する。
「請求項1は、補正前の請求項1に、・・・、及び段落0017の記載における「温風の熱源についても特に制限はなく、例えば、温水、ヒータ、ガスタービン等で生じた排ガス(排熱)を利用することができる」との記載を根拠として「前記温風の熱源に前記マイクロガスタービンでの発電及び温水供給後に生じる排熱を用いる」の記載を加え、・・・請求項である。」(意見書(1))
「さらに、請求項1では、液化ガス容器を温風加熱するための温風の熱源に前記マイクロガスタービンでの発電及び温水供給後に生じる排熱を用いることを明確にした。上記のようにコージェネレーションにおいては、マイクロガスタービンにおいて液化燃料ガスを燃料として発電をし、次いで発電の際にマイクロガスタービンにおいて生じる排ガスから温水を得る。本発明では、それに加えて、温水を得る際に生じる排熱を、液化ガス容器を温風加熱するための温風の熱源として用いる点が特徴である。」(意見書(2)1.)
「請求項記載事項と、実施例、図面との対応関係は補正により修正した。尚、図1及び2に示した方法は何れも参考例である。但し、本発明の方法は、図面による説明がなくとも、本願明細書の他の記載により、当業者であれば、容易に実施できるものと思料する。」(意見書(2)2.)
以上、「熱源に温水供給後に生じる排熱を利用する」点に関し、明細書、図面には、その具体的構成についての記載はなく、字義どおり解さざるを得ない。

刊行物1発明は、上記周知技術を適用すると「温風の熱源にマイクロガスタービンでの発電に生じる排熱を用いる」ものとなるが、「温水供給後に生じる排熱を用いる」ものではない。
熱源に温水供給後に生じる排熱を利用することは、特開昭61-110857号公報の第2ページ右下欄第9?13行、実願昭56-90862号(実開昭57-203268号)のマイクロフイルムの第1ページ第10?20行にみられるごとく周知である。
刊行物1発明においても、エネルギーの効率的利用の観点からは、種々の排熱の利用が望ましいから、かかる周知技術を適用することは、必要に応じてなしうる事項にすぎない。
よって、相違点2は格別なものではない。

相違点3について検討する。
刊行物1発明の「気化燃料ガス」は、液化燃料ガスが気化したものであるから、「所定圧力以上の圧力を有する」ことは技術常識である。
よって、この点は、実質的相違点ではない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

5.むすび
本願発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-09 
結審通知日 2012-08-14 
審決日 2012-08-28 
出願番号 特願2001-96083(P2001-96083)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F17C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 藤井 眞吾
長屋 陽二郎
発明の名称 液化ガス気化方法  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  

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