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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1264790
審判番号 不服2010-1996  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-29 
確定日 2012-10-17 
事件の表示 特願2003-328496「情報検索装置、情報検索方法、プログラム及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月10日出願公開、特開2004-164608〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年9月19日(パリ条約による優先権主張2002年9月19日、英国)の出願であって、平成21年5月13日付けで拒絶理由通知がなされ、同年8月26日付けで手続補正がなされたが、同年9月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年1月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、当審において、平成23年10月3日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、同年12月28日付けで回答書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成22年1月29日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「複数の情報項目を記憶する記憶手段と、ニューラルネットワーク技術を用いて、前記記憶手段に記憶された前記複数の情報項目のうち互いに類似する情報項目を、2次元格子状配列であるノード配列上の類似した位置のノードにそれぞれ位置させるために、前記情報項目と、前記ノードの位置情報とを関連付ける処理を行う関連付け処理手段と、ユーザにより操作されるユーザ操作手段とを備えた情報検索装置であって、
前記記憶手段に記憶された複数の情報項目から、前記ユーザによる前記ユーザ操作手段を介してのキーワード検索の動作に応じた前記情報項目を選択する検索手段と、
前記検索手段により選択された前記情報項目のうちの少なくとも幾つかの情報項目に関連する、前記関連付け処理手段によりそれぞれ関連付けられた少なくとも幾つかの前記ノードの位置情報を識別する検索結果処理手段と、
前記検索結果処理手段により識別された前記少なくとも幾つかのノードを、前記ノードの位置情報に基づいて、ユーザディスプレイ上の表示領域内の2次元表示配列内での表示点として表示するグラフィックユーザインタフェースと、
前記ユーザにより前記ユーザ操作手段を介して前記表示領域内に2次元領域が定義された場合、前記表示領域内の前記2次元領域内に存在する前記表示点を検出する検出手段とを備え、
前記グラフィックユーザインタフェースは、前記表示領域内の前記2次元領域内に存在する前記表示点に対応する前記ノードの前記位置情報に関連付けられた前記情報項目を表すデータのリストを表示する
情報検索装置。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-41571号公報(以下、「引用例1」という。)、及び「Teuvo Kohonen , Samuel Kaski , Krista Lagus , Jarkko Salojarvi , Jukka Honkela,Self Organization of a Massive Document Collection,IEEE TRANSACTIONS ON NEURAL NETWORKS,米国,IEEE,2000年5月,Vol.11,No.3,pp.574-585」(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(以下の摘記において、下線は、当審において付与した。)

(引用例1)
A.「【0002】
【従来の技術】近年、コンピュータ技術やインターネット技術の発達により、非常に大量のコンテンツにアクセスできるようになっている。これに伴い、大量のコンテンツの中から必要なものだけを取り出す検索技術の重要性が高まっている。
【0003】テキストデータを対象とした一般的な検索方法では、利用者がキーワードを入力し、データの中にこのキーワードが含まれるか否かを判定して、データを選択していることが多い。しかしながら、画像や音声などのコンテンツを対象として検索を行う場合、その特徴を適切なキーワードで表現するのが難しいため、キーワードを入力する方法では、十分な使い勝手が得られないという問題があった。
【0004】この問題を解決する一つの技術として、コンテンツとその属性であるキーワードを2次元座標にマッピングして表示する方法が提案されている。この座標上では、性質の似たコンテンツあるいはキーワードが近くに配置されるようになっており、利用者はマップ上の一点をマウス等のポインティングデバイスで選択して検索を行う。性質の似たキーワードあるいはコンテンツが近くに配置されているので、1つのキーワードあるいはコンテンツをベースにして、これから連想される他のキーワードあるいはコンテンツを容易に捜すことができる。このような座標を作成する手法として、自己組織化マップや主成分分析などが使われている。
【0005】このような検索方法では、コンテンツやキーワードの数が多くなると、画面に表示されるコンテンツやキーワードが重なり合って、表示が複雑になり、利用者にとって使いづらいという問題があった。」

B.「【0008】本発明は、コンテンツとこれに付与されたキーワードを各々多次元の座標に変換して表示する情報検索装置であり、マップ画面に表示するコンテンツとキーワードの数を適切に制限することにより、データ数が多い場合にも見易い表示を行い検索操作が容易である情報検索装置を提供することを目的としている。」

C.「【0010】
【発明の実施の形態】本発明の情報検索装置の一実施例の全体構成を図1に示す。コンテンツを格納するコンテンツ格納部1と、コンテンツを一意に識別できるコンテンツID、タイトル、制作者名、コンテンツ格納場所(ファイル名)、コンテンツの制作日付、キーワード適合度などの属性を格納するコンテンツ属性格納部2と、コンテンツに付与されたキーワードから、コンテンツとキーワードとの多次元空間内の座標値を算出する座標計算部3と、座標計算部3の計算結果を格納する座標格納部4と、利用者が利用したキーワード及びコンテンツの利用履歴を格納する利用履歴格納部5と、コンテンツのタイトル、あるいはコンテンツの内容を示すアイコン、あるいはキーワードを座標値に従って2次元あるいは3次元マップとして表示するCRTディスプレイ等の表示装置6と、表示装置6の表示画面上の位置を指定することのできるマウス等の入力装置7と、全体の動作を制御する制御部8とを備えている。」

D.「【0028】[モード2の検索動作]モード2における検索動作のフローを図14を使って説明する。まず、表示装置6の画面に、図15に示すようなコンテンツマップを表示する。これは座標格納部4に格納されているコンテンツ座標値Ciqを2次元で表示したものである。この図では座標値と合わせてコンテンツのタイトルを表示しているが、コンテンツを識別できるアイコン等を表示しても良い。
【0029】初期状態では、最も次元番号の小さな2つの次元、すなわちq=1、q=2が選択されているが、利用者の設定により任意の2つの次元を表示することができるようになっている。以下では、初期状態の次元が設定されているものとして説明する。利用者は、図15に示すスライダーを操作することにより、画面に表示する項目数を設定することができるが、これについては後述する。また、図15に示すボタンを選択することにより、コンテンツの利用指数を使って画面表示の項目数を調整するか、あるいはコンテンツの制作日付を使って画面表示の項目数を調整するか選択できるが、これについても後述する。また、後述するコンテンツ利用指数やコンテンツ制作日付に応じて表示フォントの大きさや色などを変えても良い。
【0030】次に、利用者は、コンテンツマップ上の一部をマウス等の入力手段を使って選択する。利用者はマップ上の一点を指定しても良いし、ある領域を指定しても良い。一点が指定された場合には、指定された点の2次元座標値を(P1,P2)として、各コンテンツi(i=1?M)との距離Diを前記した(1)式に従って計算し、この距離が一定値よりも小さいコンテンツを選択する。ここでは(1)式のようなユークリッド距離を用いるが、これ以外の距離を用いても良い。また、領域が指定された場合には、コンテンツの座標値(Ci1,Ci2)がその領域に入っているコンテンツを選択する。
【0031】次に、検索結果を表示する。例えば図9に示すように、コンテンツマップとは別の画面に、該当するコンテンツのタイトル、制作者などを表示する他、コンテンツを識別できるアイコンや、コンテンツが画像である場合には、縮小画像を表示しても良い。あるいは、図16に示すようにコンテンツマップにオーバーレイするように表示しても良い。この場合、コンテンツマップに表示されていないものも含めて該当する全てのコンテンツのタイトル、制作者、アイコン等の詳細情報を表示する。
【0032】次に、利用者は、利用したいコンテンツを選択する。これは例えば、検索結果の画面の中から1つのコンテンツをクリックして選択することで行われる。そして、選択されたコンテンツの表示/再生が行われる。次に、検索動作で利用されたコンテンツの履歴を利用履歴格納部5に格納して、検索動作を終了する。表示/再生されたコンテンツの利用履歴を、図12に示す形式でコンテンツ利用テーブルに格納する。
【0033】[モード2の表示項目の選択動作]このような2次元マップでは、キーワードやコンテンツの関係が把握しやすく、適切なキーワードを捜すのが難しい画像や音声の検索にも適している。しかしながら、マップに表示する項目の数が多くなると、項目が重なり合い、大変使い難いものになる。従って表示する項目を適切に選択することが重要になる。
【0034】図15に示すスライダーを「全て表示」位置に設定した場合には、全てのコンテンツ(M個)が表示される。反対に「絞り込み表示」位置に設定した場合には、M1個のコンテンツが表示される。ただし、M1はMより小さく、0より大きい数である。スライダーを中間に設定した場合には、その位置に応じて、Mx個(M1≦Mx≦M)の項目が表示される。
【0035】次に、Mx個のコンテンツを制御部8で選択する方法について説明する。表示コンテンツを選択する基準として、コンテンツの利用指数を使う方法と、コンテンツの登録日付を使う方法の2種類がある。この2つの方法は、利用者が図16に示すボタンを設定することにより、好ましい方法を選択することができる。
【0036】まず、コンテンツの利用指数を使う方法を説明する。コンテンツ利用テーブルを使って、各コンテンツの利用指数を計算する。コンテンツi(i=1?M)の利用指数Eiは、(3)式に従って計算する。ここでコンテンツ利用テーブルのエントリ数(行数)はPであり、Φpiはコンテンツ利用テーブルのエントリp(p=1?P)がコンテンツiである場合に「1」、そうでない場合に「0」の値を取る関数である。またG(x)は図13のように、入力xに対して単調に減少する関数であり、Tcは現在日時、Tpはエントリpのコンテンツの利用日時である。すなわちコンテンツ利用指数Eiは、コンテンツ利用テーブルにコンテンツiが多く登録されているほど高くなり、コンテンツiが最近利用されたものであるほど高い値となる。
【0037】
【数3】
・・・(中略)・・・
【0038】コンテンツ全体(M個)の中から、このコンテンツ指数Eiが高い順にMx個のコンテンツを選択し、これをマップに表示するようにすれば良い。次に、コンテンツの制作日付を使って選択する場合を説明する。コンテンツ属性テーブルには、コンテンツの制作日付が記録されているので、このテーブルの中からコンテンツ制作日付の新しい順にMx個のコンテンツを選択して表示すれば良い。更に、キーワード利用指数に応じてキーワードの表示フォントの大きさや色を変えて、キーワード利用指数の高いものほど目立つようにしても良い。」

上記A.?D.の記載及び関連する図面を参照すると、次のことがいえる。

(あ)上記C.の「コンテンツを格納するコンテンツ格納部1」は、複数のコンテンツを格納するものであることは明らかである。

(い)上記A.の段落【0004】に記載されている技術内容は、「従来の技術」に関連するものであるが、引用例1のものは、上記A.の段落【0005】に記載されている「従来の技術」の問題点を解消するために上記B.に記載されている対処方法を採用したものであるから、上記A.の段落【0004】に記載されている技術内容(特に、「コンテンツとその属性であるキーワードを2次元座標にマッピングして表示する」にあたり「自己組織化マップ」技術を用いる点)は、引用例1のものの前提となる技術を示しているといえる。
よって、引用例1のものは、「自己組織化マップ」技術を用いて、コンテンツ格納部に格納された複数のコンテンツのうち性質の似たコンテンツを、2次元座標上の近くの位置の座標にそれぞれ配置させるものを含むことが読み取れる。
また、引用例1の図15のコンテンツマップの表示画面では、コンテンツを表す座標の位置に×印が表示されていることから、上記C.の「全体の動作を制御する制御部8」は、コンテンツと該コンテンツを表す座標の座標値とを関連付ける処理を行う関連付け処理手段の機能を備えているといえる。

(う)上記C.の「マウス等の入力装置7」は、利用者により操作されるものであると解される。

(え)上記D.の段落【0029】の「利用者は、図15に示すスライダーを操作することにより、画面に表示する項目数を設定することができる」との記載において、「スライダー」の操作は、利用者がマウス等の入力装置を介して行うものと解される。そして、上記D.の段落【0034】の「図15に示すスライダーを「全て表示」位置に設定した場合には、全てのコンテンツ(M個)が表示される。反対に「絞り込み表示」位置に設定した場合には、M1個のコンテンツが表示される。・・・スライダーを中間に設定した場合には、その位置に応じて、Mx個(M1≦Mx≦M)の項目が表示される。」、段落【0035】の「Mx個のコンテンツを制御部8で選択する方法」との記載から、引用例1の上記C.の「全体の動作を制御する制御部8」は、スライダー操作に応じて画面に表示するコンテンツを選択して絞り込む手段の機能を備えているといえる。

(お)上記(い)、(え)の事項から、引用例1の上記C.の「全体の動作を制御する制御部8」は、絞り込む手段により選択されたコンテンツの全てのコンテンツに関連する、関連付け処理手段によりそれぞれ関連付けられた全ての座標の座標値を識別する処理手段の機能を備えているといえる。
そして、「全て」には「(そのうちの)少なくとも幾つか」が含まれるから、「絞り込む手段により選択されたコンテンツの全てのコンテンツに関連する・・・座標の座標値を識別する」ことは、「絞り込む手段により選択されたコンテンツのうちの少なくとも幾つかのコンテンツに関連する・・・少なくとも幾つかの座標の座標値を識別する」ことを含むということができる。

(か)図15の×印は、スライダー操作に応じて設定されたコンテンツに対応するCRTディスプレイ等の表示装置上の表示領域内の2次元座標における全ての座標を表すものである。そして、上記(お)で述べたように、「全て」には「(そのうちの)少なくとも幾つか」が含まれるから、引用例1の上記C.の「全体の動作を制御する制御部8」は、処理手段により識別された少なくとも幾つかの座標を、前記座標の座標値に基づいて、CRTディスプレイ等の表示装置上の表示領域内の2次元座標における×印として表示する表示制御手段の機能を備えているといえる。

(き)上記D.の段落【0030】の「利用者は、コンテンツマップ上の一部をマウス等の入力手段を使って選択する。利用者は・・・ある領域を指定しても良い。・・・領域が指定された場合には、コンテンツの座標値(Ci1,Ci2)がその領域に入っているコンテンツを選択する。」との記載、段落【0031】の「次に、検索結果を表示する。例えば図9に示すように、コンテンツマップとは別の画面に、該当するコンテンツのタイトル、制作者などを表示する」との記載、及び、図9において、コンテンツのタイトル、制作者などは、リスト化されていることが見てとれることから、引用例1の上記C.の「全体の動作を制御する制御部8」は、「利用者によりマウス等の入力装置を介して表示領域内に2次元領域が指定された場合、前記表示領域内の前記2次元領域内に存在する×印を検出する検出手段」の機能を備えているといえるとともに、上記(か)で認定した「表示制御手段」は、「表示領域内の2次元領域内に存在する×印に対応する座標の座標値に関連付けられたコンテンツのタイトル、制作者などのリストを表示する」ものであるといえる。

以上の(あ)?(き)の事項を踏まえると、引用例1には、実質的に、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。)
「複数のコンテンツを格納するコンテンツ格納部と、自己組織化マップ技術を用いて、前記コンテンツ格納部に格納された前記複数のコンテンツのうち性質の似たコンテンツを、2次元座標上の近くの位置の座標にそれぞれ配置させるために、前記コンテンツと、前記座標の座標値とを関連付ける処理を行う関連付け処理手段と、利用者により操作されるマウス等の入力装置とを備えた情報検索装置であって、
前記コンテンツ格納部に格納された複数のコンテンツから、前記利用者による前記マウス等の入力装置を介してのスライダー操作に応じて画面に表示する前記コンテンツを選択して絞り込む手段と、
前記絞り込む手段により選択された前記コンテンツのうちの少なくとも幾つかのコンテンツに関連する、前記関連付け処理手段によりそれぞれ関連付けられた少なくとも幾つかの前記座標の座標値を識別する処理手段と、
前記処理手段により識別された前記少なくとも幾つかの座標を、前記座標の座標値に基づいて、CRTディスプレイ等の表示装置上の表示領域内の2次元座標における×印として表示する表示制御手段と、
前記利用者により前記マウス等の入力装置を介して前記表示領域内に2次元領域が指定された場合、前記表示領域内の前記2次元領域内に存在する前記×印を検出する検出手段とを備え、
前記表示制御手段は、前記表示領域内の前記2次元領域内に存在する前記×印に対応する前記座標の前記座標値に関連付けられた前記コンテンツのタイトル、制作者などのリストを表示する
情報検索装置。」

(引用例2)
E.“II.SELF-ORGANIZING MAP
The SOM is an unsupervised-learning neural-network method that produces a similarity graph of input data.”(第575頁左欄第40?42行)
(日本語訳:「II.自己組織化マップ
SOMは、入力データの類似度グラフを生成する教師なき学習ニューラルネットワーク方法である。」)

F.“Fig.6. The keyword search mode was utilized to find information on color displays.”(第583頁,図6の説明)
(日本語訳:「図6 キーワード検索モードは、color displayについての情報を見つけるために利用された。」)

G.“2) Keyword Search: Example: A more conventional keyword search mode has also been provided for finding good starting points for browsing.”(第584頁左欄第21?23行)
(日本語訳:「2) キーワード検索:例:より従来型のキーワード検索モードも、ブラウジングのよい出発点を見つけるために提供されている。」)

4.対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用例1記載の発明における「コンテンツ」、「格納」、「コンテンツ格納部」は、それぞれ、本願発明における「情報項目」、「記憶」、「記憶手段」に相当する。

(イ)引用例2の上記E.の記載に見られるように、「自己組織化マップ」は、「ニューラルネットワーク方法」の一種である。
よって、引用例1記載の発明における「自己組織化マップ技術」は、本願発明における「ニューラルネットワーク技術」に相当するといえる。

(ウ)引用例1記載の発明における「性質の似たコンテンツ」、「2次元座標上の近くの位置の座標」、「配置させる」こと、「座標の座標値」、「利用者」、「マウス等の入力装置」は、それぞれ、本願発明における「互いに類似する情報項目」、「2次元格子状配列であるノード配列上の類似した位置のノード」、「位置させる」こと、「ノードの位置情報」、「ユーザ」、「ユーザ操作手段」に相当する。

(エ)引用例1記載の発明における「コンテンツ格納部に格納された複数のコンテンツから、利用者によるマウス等の入力装置を介してのスライダー操作に応じて画面に表示する前記コンテンツを選択して絞り込む手段」と、本願発明における「記憶手段に記憶された複数の情報項目から、ユーザによるユーザ操作手段を介してのキーワード検索の動作に応じた前記情報項目を選択する検索手段」とは、「記憶手段に記憶された複数の情報項目から、ユーザによるユーザ操作手段を介しての動作に応じて前記情報項目を選択する手段」である点で共通するものであるということができる。

(オ)引用例1記載の発明における「絞り込む手段により選択されたコンテンツのうちの少なくとも幾つかのコンテンツに関連する、関連付け処理手段によりそれぞれ関連付けられた少なくとも幾つかの座標の座標値を識別する処理手段」と、本願発明における「検索手段により選択された情報項目のうちの少なくとも幾つかの情報項目に関連する、関連付け処理手段によりそれぞれ関連付けられた少なくとも幾つかのノードの位置情報を識別する検索結果処理手段」とは、「選択する手段により選択された情報項目のうちの少なくとも幾つかの情報項目に関連する、関連付け処理手段によりそれぞれ関連付けられた少なくとも幾つかのノードの位置情報を識別する処理手段」である点で共通するものであるということができる。

(カ)引用例1記載の発明における「CRTディスプレイ等の表示装置」、「2次元座標における×印」、「表示制御手段」は、それぞれ、本願発明における「ユーザディスプレイ」、「2次元表示配列内での表示点」、「グラフィックユーザインタフェース」に相当する。

(キ)引用例1記載の発明において「2次元領域が指定され」ることは、本願発明において「2次元領域が定義され」ることに相当する。

(ク)引用例1記載の発明における「コンテンツのタイトル、制作者など」は、本願発明における「情報項目を表すデータ」に相当する。

以上の(ア)?(ク)の事項を踏まえると、本願発明と引用例1記載の発明とは、
「複数の情報項目を記憶する記憶手段と、ニューラルネットワーク技術を用いて、前記記憶手段に記憶された前記複数の情報項目のうち互いに類似する情報項目を、2次元格子状配列であるノード配列上の類似した位置のノードにそれぞれ位置させるために、前記情報項目と、前記ノードの位置情報とを関連付ける処理を行う関連付け処理手段と、ユーザにより操作されるユーザ操作手段とを備えた情報検索装置であって、
前記記憶手段に記憶された複数の情報項目から、前記ユーザによる前記ユーザ操作手段を介しての動作に応じて前記情報項目を選択する手段と、
前記選択する手段により選択された前記情報項目のうちの少なくとも幾つかの情報項目に関連する、前記関連付け処理手段によりそれぞれ関連付けられた少なくとも幾つかの前記ノードの位置情報を識別する処理手段と、
前記処理手段により識別された前記少なくとも幾つかのノードを、前記ノードの位置情報に基づいて、ユーザディスプレイ上の表示領域内の2次元表示配列内での表示点として表示するグラフィックユーザインタフェースと、
前記ユーザにより前記ユーザ操作手段を介して前記表示領域内に2次元領域が定義された場合、前記表示領域内の前記2次元領域内に存在する前記表示点を検出する検出手段とを備え、
前記グラフィックユーザインタフェースは、前記表示領域内の前記2次元領域内に存在する前記表示点に対応する前記ノードの前記位置情報に関連付けられた前記情報項目を表すデータのリストを表示する
情報検索装置。」
である点で一致し、次の点で相違するものと認められる。

(相違点)
「記憶手段に記憶された複数の情報項目から、ユーザによるユーザ操作手段を介しての動作に応じて前記情報項目を選択する手段」、「前記選択する手段により選択された前記情報項目のうちの少なくとも幾つかの情報項目に関連する・・・ノードの位置情報を識別する処理手段」、「前記処理手段により識別された前記少なくとも幾つかのノード・・・」が、それぞれ、本願発明においては、「記憶手段に記憶された複数の情報項目から、ユーザによるユーザ操作手段を介してのキーワード検索の動作に応じた前記情報項目を選択する検索手段」、「前記検索手段により選択された前記情報項目のうちの少なくとも幾つかの情報項目に関連する・・・ノードの位置情報を識別する検索結果処理手段」、「前記検索結果処理手段により識別された前記少なくとも幾つかのノード・・・」であるのに対し、引用例1記載の発明においては、「コンテンツ格納部に格納された複数のコンテンツから、利用者によるマウス等の入力装置を介してのスライダー操作に応じて画面に表示する前記コンテンツを選択して絞り込む手段」、「前記絞り込む手段により選択された前記コンテンツのうちの少なくとも幾つかのコンテンツに関連する・・・座標の座標値を識別する処理手段」、「前記処理手段により識別された前記少なくとも幾つかの座標・・・」である点。

5.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
一般に、所望の情報を選択して得ようとする場合に、キーワード検索を行ってその検索結果を得ることは、ごく普通に行われていることであり、ニューラルネットワーク技術を用いて情報を関連付ける場合においても、引用例2の上記F.,G.の記載に見られるように、行われていることである。
ここで、上記引用例2にも見られるようなキーワード検索の技術は、数多くある情報項目(コンテンツ)を、その付与されているキーワードに基づいて絞り込むために用いることができることは明らかであるから、引用例1記載の発明における「絞り込む手段」に対して用いることができる技術であることは明らかである。
してみれば、引用例1記載の発明に対して、上記引用例2にも見られるようなキーワード検索の技術を適用することにより、「コンテンツ格納部に格納された複数のコンテンツから、利用者によるマウス等の入力装置を介してのスライダー操作に応じて画面に表示する前記コンテンツを選択して絞り込む手段(記憶手段に記憶された複数の情報項目から、ユーザによるユーザ操作手段を介しての動作に応じて前記情報項目を選択する手段)」、「前記絞り込む手段により選択された前記コンテンツのうちの少なくとも幾つかのコンテンツに関連する・・・座標の座標値を識別する処理手段(前記選択する手段により選択された前記情報項目のうちの少なくとも幾つかの情報項目に関連する・・・ノードの位置情報を識別する処理手段)」、「前記処理手段により識別された前記少なくとも幾つかの座標・・・(前記処理手段により識別された前記少なくとも幾つかのノード・・・)」を、それぞれ、「記憶手段に記憶された複数の情報項目から、ユーザによるユーザ操作手段を介してのキーワード検索の動作に応じた前記情報項目を選択する検索手段」、「前記検索手段により選択された前記情報項目のうちの少なくとも幾つかの情報項目に関連する・・・ノードの位置情報を識別する検索結果処理手段」、「前記検索結果処理手段により識別された前記少なくとも幾つかのノード・・・」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明、及び引用例2記載の技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明、及び引用例2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-21 
結審通知日 2012-05-22 
審決日 2012-06-04 
出願番号 特願2003-328496(P2003-328496)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅本 達雄  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 酒井 伸芳
殿川 雅也
発明の名称 情報検索装置、情報検索方法、プログラム及び記録媒体  
代理人 大森 純一  

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