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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01M |
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管理番号 | 1264834 |
審判番号 | 不服2011-17530 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-08-12 |
確定日 | 2012-10-17 |
事件の表示 | 特願2008-510447「クランクハウジングを排気する際にガスを浄化する装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月16日国際公開、WO2006/119890、平成20年11月20日国内公表、特表2008-540908〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願(以下、「本願」という。)は、2006年(平成18年)5月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年5月9日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成19年12月25日付けで特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲及び要約の翻訳文が提出され、平成21年4月13日付けで上申書及び手続補正書が提出され、平成22年11月22日付けで拒絶理由が通知され、平成23年2月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年4月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年8月12日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る発明は、平成23年2月10日付けで提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに平成19年12月25日付け明細書の翻訳文及び国際出願の際の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「 【請求項1】 クランクハウジングを排気する際にガスを浄化する装置(10)であって、 内部に分離室(14)が設けられているハウジング(12)と、 該ハウジング内に回転可能に軸承されたロータ軸(32)および前記分離室(14)内に配置された遠心ロータ(39)を備えたロータ配置部と、 駆動流体を用いて前記ロータ軸(32)を駆動するための流体の駆動装置(64)と、 を具備し、 前記駆動装置(64)が駆動室(60)内に配置されており、該駆動室がハウジング分離壁(16)によって該分離室(14)から分離されており、前記ロータ軸(32)が該ハウジング分離壁(16)の貫通部を通して延びており、 前記貫通部の領域内に、前記駆動室(60)を前記分離室(14)からシールするためのラビリンスシール(70)が設けられている前記ガスを浄化する装置において、 前記ハウジング分離壁(16)が、パイプ突出部(36)を有しており、該パイプ突出部(36)は、前記駆動室(60)へ向かって突出し、ラビリンスシール(70)を実現するためのものであり、 前記ラビリンスシールが、一周する軸方向の溝(76)を備えたシールディスク(70)を有しており、かつ、前記パイプ突出部(36)の自由端部が、前記軸方向の溝(76)内へ、非接触で、嵌入し、 前記シールディスク(70)が、回転するように前記ロータ軸(32)に連結されていることを特徴とする、クランクハウジングを排気する際にガスを浄化する装置(10)。」 第3 刊行物に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願平2-32679号(実開平3-123927号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、例えば、次のような事項が記載されている。(なお、下線は理解の一助のため当審で付した。) (a)「(産業上の利用分野) この考案はエンジン内部に生じるブローバイガスに含まれているオイル粉子(審決注;「オイル粒子」の誤記と認められる。)を分離するための処理装置に関する。」(明細書第2ページ第1ないし4行) (b)「(従来の技術) 車両用のエンジンではクランケース内に生じるブローバイガスを大気中に放出することなく、内部に含まれているブローバイガスを分離しながら吸気管側に戻すようにしているが、これまでの装置は処理エレメントの回転手段がモータ駆動型で、モータ外置きタイプではエレメント軸とモータ軸の心合せが厄介であり、内蔵タイプでは高温雰囲気の影響によりモータ部品の損傷を招くところから、本出願人は回転手段にモータを用いず圧力油を利用するようにしたものを先に実開平1-85412号として提案した。 その概略を示せば第5図のとおりであり、側壁に入ロパイプ1aを有すると共に上壁上に出口パイプ1bを設けた円筒状の処理ケース1の下側に油圧ケース2を一体に結合し、処理ケース1と油圧ケース2の中心部に下半分にオイル通孔3aを設けた主軸3を貫通させ、処理ケース1の上壁と油圧ケース2の底壁に設けたころがり軸受8a,8bにより支持し、主軸3の処理ケース1内の部分には、金属やセラミックの多孔体またはスチルウール、ロックウールなどの環状ろ材4aを上,下の端板4b,4cの間に挟持させた処理エレメント4を取付ける一方、油圧ケース2内の部分には、主軸3の中心孔に通じる放射通路5cを形成した円板体5aの周囲部両側に回転方向とは反対の方向に開口する噴射細孔5dを有する脚体5bを設けた回転部材5を取付け、油圧ケース2の底壁の下側に取付けたオイル溜まりを有する下蓋6に連結した導入パイプ7から圧力油を導入し、これを主軸3の中心孔および円板体5aの放射通路5cを通し、両側の噴射細孔5dから圧力油を噴射させ、その噴射反力で主軸3を回転するようにしている。」(明細書第2ページ第5行ないし第3ページ第18行) (c)「(考案が解決しようとする課題) ところで、上記先行の処理装置では、回転部材の両倒に下に突出する噴射用脚体を設ける一方、油圧ケースの底壁もその通路となるようなみぞ状に形成し、そして、オイルの導入パイプより小径の戻しパイプを側壁に開口させ、ケース中に噴射されたオイルを側方から取出すようにしているため、オイルの取出しが円滑でなく、ケース底部にオイルが溜まり易く、回転部材の抵抗になって回転低下を招いてしまい、そして、主軸の上下端をころがり軸受で支持すると共に途中を上、下ケースの仕切壁部に設けたOリングでシールする構造になっているため、主軸の支持構造が複雑でボールなどの摩耗によってガタ付きを生じ易く、また、油圧ケースの底壁の下側にオイル溜まりを有する下蓋を気密に取付けねばならず、部品点数が多くコスト高になる弱点がある。 そこで、この考案は主軸の支持構造が簡単で、オイル溜まりを持つ下壁を必要とせず、しかも回転抵抗の少ないブローバイガスの処理装置を提供するものである。」(第3ページ第19行ないし第4ページ第19行) (d)「(課題を解決するための手段ならびに作用) 上記目的のもとにこの考案は、入口パイプと出口パイプを有する処理ケースの下側に油圧ケースを一体に取付け、処理ケースと油圧ケースの中央部に主軸を両ケースにまたがって配設し、該主軸の処理ケース内の部分にはブローバイガスの処理エレメントを取付ける一方、油圧ケース内の部分には回転部材を取付け、該回転部材に主軸の通孔を介し所定圧のオイルを供給して主軸を回転するようにしたブローバイガスの処理装置として、上記主軸を処理ケースの底壁と油圧ケースの底壁に取付けたスリーブ状の含油軸受またはドライ軸受により回転自在に支持し、油圧ケース内の回転部材を主軸の通孔に通じる直管状のものとすると共に油圧ケースの底壁の周囲部には大径の戻しパイプを取付けたことを特徴とするものである。 そして、主軸のオイル通孔を介して回転部材に供給した圧力油の噴射反力により、回転部材と主軸が高速に回転し、これと一体な処理エレメントも高速に回転し、入口パイプを通して処理ケース内に流入するブローバイガスは処理エレメントに衝突しつつこれを横切り、ガス中に含まれているオイル粒子はエレメントの表面または内部組織に捕捉され、これが次第に凝集して遠心作用で壁面側に飛散され、オイルの除去されたガスは出口パイプを通じ吸気管側に流出していく。その間に油圧ケース内に噴射された作動オイルは底壁周囲部に開口する戻しパイプを通りオイルパン側に戻される。」(第4ページ第20行ないし第6ページ第8行) (e)「4.図面の簡単な説明 第1図はこの考案の一実施例の縦断面図。 第2図はそのX-X線に沿った平断面図。 第3図はその配置状態を示す油圧回路。 第4図は他の実施例の縦断面図。 第5図は先行装置の縦断面図。 図中 11・・・処理ケース、11a・・・上壁、 11b・・・底壁、 11c・・・入口パイプ、 11d・・・出口パイプ、 12・・・油圧ケース、 12a・・・底壁、 13・・・主軸、 13a・・・オイル通孔、 14・・・処理エレメント、 15・・・回転部材、 15b・・・噴射細孔、 16a,16b・・・含油軸受、 17・・・戻しパイプ、 19・・・導入パイプ。」(第12ページ第6行ないし第20行) 上記(a)ないし(e)及び図面から分かること。 (ア)上記(a)ないし(e)及び図面から、刊行物には、クランクケース内に生じるブローバイガスを処理する装置が記載されていることが分かる。 (イ)上記(a)ないし(e)及び図面(特に第5図を参照。)から、刊行物に記載されたクランクケース内に生じるブローバイガスを処理する装置(先行の処理装置)は、 内部に「処理ケース1内の部分」が設けられている「処理ケース1及び油圧ケース2」と、 該「処理ケース1及び油圧ケース2」内に回転可能に軸承された主軸3及び前記「処理ケース1内の部分」に配置された処理エレメント4を備えた処理エレメント4配置部と、 圧力油を用いて前記主軸3を駆動するための回転部材5とを具備していることが分かる。 (ウ)上記(a)ないし(e)及び図面から、刊行物に記載されたクランクケース内に生じるブローバイガスを処理する装置には、「処理ケース1内の部分」と「油圧ケース2内の部分」とを分離する仕切壁(符号なし)が設けられていることが分かる。該仕切壁を主軸3が貫通している部分を「貫通部」と呼ぶことにする。 (エ)上記(a)ないし(e)及び図面から、刊行物に記載されたクランクケース内に生じるブローバイガスを処理する装置において、回転部材5が「油圧ケース2内の部分」に配置されており、該「油圧ケース2内の部分」が仕切壁によって「処理ケース1内の部分」から分離されており、前記主軸3が該仕切壁の貫通部を通して延びており、前記貫通部の領域内に、前記「油圧ケース2内の部分」を前記「処理ケース1内の部分」からシールするためのOリングが設けられていることが分かる。 上記(a)ないし(e)及び(ア)ないし(エ)並びに図面から、刊行物には、次の発明(以下、「刊行物に記載された発明」という。)が記載されているといえる。 「クランクケース内に生じるブローバイガスを処理する装置であって、 内部に「処理ケース1内の部分」が設けられている「処理ケース1及び油圧ケース2」と、 該「処理ケース1及び油圧ケース2」内に回転可能に軸承された主軸3及び前記「処理ケース1内の部分」に配置された処理エレメント4を備えた処理エレメント4配置部と、 圧力油を用いて前記主軸3を駆動するための回転部材5とを具備し、 回転部材5が油圧ケース2内に配置されており、該「油圧ケース2内の部分」が仕切壁によって「処理ケース1内の部分」から分離されており、前記主軸3が該仕切壁の貫通部を通して延びており、 前記貫通部の領域内に、前記「油圧ケース2内の部分」を前記「処理ケース1内の部分」からシールするためのOリングが設けられている、 前記クランクケース内に生じるブローバイガスを処理する装置。」 第4 本願発明と刊行物に記載された発明との対比 本願発明と刊行物に記載された発明とを対比するに、刊行物に記載された発明における「クランクケース内に生じるブローバイガスを処理する装置」は、技術的意義からみて、本願発明における「クランクハウジングを排気する際にガスを浄化する装置(10)」に相当し、以下同様に、「処理ケース1内の部分」は「分離室」に、「処理ケース1及び油圧ケース2」は「ハウジング(12)」に、「主軸3」は「ロータ軸(32)」に、「圧力油」は「駆動流体」に、「回転部材5」は「(流体の)駆動装置(64)」に、「油圧ケース2内の部分」は「駆動室(60)」に、「油圧ケース2内」は「駆動室(60)内」に、「仕切壁」は「ハウジング分離壁(16)」に、それぞれ相当する。 また、刊行物に記載された発明における「処理エレメント4」は、回転し、遠心作用を利用してブローバイガスから油を分離するものであるから、技術的意義からみて、本願発明における「遠心ロータ(39)」に相当し、同様に、「処理エレメント4配置部」は「ロータ配置部」に相当する。 また、刊行物に記載された発明における「Oリング」は、「シール部材」である限りにおいて、本願発明における「ラビリンスシール」に相当する。 してみると、本願発明と刊行物に記載された発明は、 「クランクハウジングを排気する際にガスを浄化する装置であって、 内部に分離室が設けられているハウジングと、 該ハウジング内に回転可能に軸承されたロータ軸および前記分離室内に配置された遠心ロータを備えたロータ配置部と、 駆動流体を用いて前記ロータ軸を駆動するための流体の駆動装置と、 を具備し、 前記駆動装置が駆動室内に配置されており、該駆動室がハウジング分離壁によって該分離室から分離されており、前記ロータ軸が該ハウジング分離壁の貫通部を通して延びており、 前記貫通部の領域内に、前記駆動室を前記分離室からシールするためのシール部材が設けられている、前記ガスを浄化する装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点> 本願発明においては、「駆動室を分離室からシールするためのシール部材」として、「ラビリンスシール」が設けられ、その具体的な構造として、「前記ハウジング分離壁が、パイプ突出部を有しており、該パイプ突出部は、前記駆動室へ向かって突出し、ラビリンスシールを実現するためのものであり、前記ラビリンスシールが、一周する軸方向の溝を備えたシールディスクを有しており、かつ、前記パイプ突出部の自由端部が、前記軸方向の溝内へ、非接触で、嵌入し、前記シールディスクが、回転するように前記ロータ軸に連結されている」のに対し、刊行物に記載された発明においては、「油圧ケース内の部分〔駆動室〕を処理ケース内の部分〔分離室〕からシールするためのシール部材」として、「Oリング」が設けられている点(以下、「相違点」という。なお、〔 〕内には対応する本願発明の発明特定事項を記載した。)。 第5 相違点についての検討・判断 本願発明において、「ラビリンスシール」を設ける目的について、本願の明細書の段落【0025】を参照すると、「作動中において、タービンホィール64を駆動する際に駆動室内へ噴射される比較的大量のオイルが、収集容器48内、あるいは分離室14の領域内へ流入することは、無条件に回避されなければならない。それによって装置10の作動が著しく損なわれてしまう。そして、この目的のために、ラビリンスシールを形成するためのシールディスク70が設けられているのである。(中略)それに対して、本発明に基づくラビリンスシールは非接触で機能し、従って摩擦に基づく摩耗にさらされることはない。(改行)さらに、所定の作動状況において、特に内燃機関が高出力で駆動される場合に、分離室内に比較的高い圧力または圧力ピークが生じることがあり、それを短時間で解消させなければならない。流出スリット50と流出開口部52を介しての圧力降下は、回避されなければならない。なぜならば、それを回避できないと、オイルが流出するプロセスが中断されて、場合によっては非常に多くのオイルが分離室14内に残ってしまうからである。これは、結果として分離作用の悪化をもたらす。本発明は、シールディスク70とパイプ突出部36の間のラビリンスシールを介して、駆動室60に対する圧力降下を行うことができる、という利点を提供する。それにもかかわらず、ラビリンスシールは、駆動室60に対して分離室14を十分良好にシールしているので、駆動室60内に存在するオイル滴は分離室14内へ侵入することはできない。」と記載されている。すなわち、本願発明におけるラビリンスシールは、オイルをシールしかつ圧力降下(すなわちガスの移動)を許すために設けられていることが分かる。 しかるに、オイル等の異物をシールしかつ圧力降下(ガスの移動)を許すためにラビリンスシールを設けることは、本願の優先日前に周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開昭62-41472号公報(特に第2ページ右上欄第15ないし20行、第3ページ右上欄第14行ないし右下欄第12行及び図面を参照。)、実願平4-496号(実開平5-57444号)のCD-ROM(特に段落【0014】及び図面を参照。)、実願昭61-24528号(実開昭62-137303号)のマイクロフィルムの第9ページ第5ないし13行及び図面を参照。)、国際公開第2004/060128号(翻訳文として、特表2005-519727号公報の段落【0032】、【0033】及び図面を参照。)等を参照。)にすぎない。このような機能は、ラビリンスシールの機能としては一般的なものである。 また、具体的なラビリンスシールの構造として、回転するディスクとそれに対向する部材とによりラビリンスシールを構成することも、本願の優先日前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、審査段階において引用された特開2003-74369号公報(特に段落【0006】及び図面を参照。)、特開昭62-41472号公報(特に第2ページ右上欄第15ないし20行、第3ページ右上欄第14行ないし右下欄第12行及び図面を参照。)、特開平3-173340号公報(特に第3ページ右上欄第3ないし20行及び図面を参照。)、特開平3-261360号公報(特に第2ページ右上欄第6ないし11行、第3ページ右下欄第1ないし4行及び図面を参照。)、特開平3-52532号公報(特に第2ページ左上欄第1ないし7行、左下欄第5ないし15行及び図面を参照。)等を参照。)にすぎない。なお、ディスクに対向する部材を「パイプ突出部」とする程度のことは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。 してみると、刊行物に記載された発明において、シール手段として、Oリングに代えて、周知技術1のラビリンスシールを選択し、その際に該ラビリンスシールの形状を周知技術2のようにして適宜設計変更することにより、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。 また、本願発明を全体としてみても、刊行物に記載された発明並びに周知技術1及び2から想定される以上の格別の作用効果を奏するものとは認められない。 なお、審判請求人は、「引用文献2(審決注;特開2003-74369号公報)については、(中略)ラビリンス状のガードであって、(中略)本願発明のようなガスのシールをする本願発明1とは、シールの機能が全く異なるものであります。」(審判請求書第4ページ第12ないし17行)と主張しているが、本願発明のラビリンスシールも、引用文献2(特開2003-74369号公報)のラビリンスシールも、異物の粒子の侵入を防止するという共通の性質をもつものであり、違いがあるとすれば、どの程度以上の大きさの粒子の侵入を防止するかという、隙間の大きさの違いがあるにすぎない。 また、審判請求人は、本願発明のラビリンスシールが「ガスのシール」をするものである旨を主張している(審判請求書第4ページ第15ないし17行)が、本願の明細書には、本願発明のラビリンスシールが「ガスのシール」をするものであるとは記載されていない。(仮に、「ガスのシール」をするものであるとすると、請求人が主張する「非接触のラビリンスシールの使用は、分離室内の高い圧力の作動状態において、ラビリンスシールの間隙を通して駆動室と分離室の間の均圧化を行うことができるという利点を有し」(審判請求書第6ページ第10行ないし第12行)という作用効果を奏することもできなくなる。) 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-05-21 |
結審通知日 | 2012-05-22 |
審決日 | 2012-06-04 |
出願番号 | 特願2008-510447(P2008-510447) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F01M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋本 しのぶ |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 柳田 利夫 |
発明の名称 | クランクハウジングを排気する際にガスを浄化する装置 |
代理人 | 谷光 正晴 |
代理人 | 大橋 康史 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 島田 哲郎 |
代理人 | 西村 隆一 |
代理人 | 青木 篤 |