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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H01L
管理番号 1265030
審判番号 無効2012-800048  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-04-04 
確定日 2012-10-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第4831521号発明「縦型輪状コンベヤ及びオーバーヘッドホイストを基にした半導体製造のためのマテリアルの自動化処理システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
平成14年 6月19日 米国出願(優先権基礎)
平成15年 3月20日 国際出願(特願2004-515615号)
平成23年 9月30日 設定登録(特許第4831521号)
平成24年 4月 4日 無効審判請求
平成24年 7月13日 答弁書
平成24年 7月25日 通知書(審理事項通知)
平成24年 8月17日 両者・口頭審理陳述要領書
平成24年 8月22日 通知書(審理事項通知(2))
平成24年 8月31日 両者・口頭審理陳述要領書(2)及び(3)
平成24年 8月31日 口頭審理

本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まない。
原文の丸囲み数字は、丸1のように置き換えた。

第2.本件発明
本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下「本件発明1ないし7」という。)は、以下のとおりである。
なお、独立請求項1における分説符号は、請求人が付したものであるが、争いがなく、妥当と認められるので、そのまま採用した。

「【請求項1】
A.自動化されたマテリアル取扱システムであって、
B.貯蔵容器を含む貯蔵ユニットであって、前記貯蔵容器はマテリアル・ユニットを保持するように設定された前記貯蔵ユニットと、
C.オーバーヘッドホイストを搭載したオーバーヘッドホイスト搬送車を含むオーバーヘッドホイスト搬送サブシステムであって、前記オーバーヘッドホイストは、移動ステージ及びこの移動ステージに取り付けられ水平移動及び垂直移動可能なマテリアル・ユニットを把持するホイスト把持部を有し、前記オーバーヘッドホイスト搬送車は、貯蔵容器に隣接する所定経路を画定する懸架軌道に沿って移動するように構成された前記オーバーヘッドホイスト搬送サブシステムと、を有し、
D.前記移動ステージは、前記ホイスト把持部に把持されたマテリアル・ユニットの全部がオーバーヘッドホイスト搬送車の外に位置するように前記ホイスト把持部を水平方向に移動させ、且つ、その全部がオーバーヘッドホイスト搬送車の外に位置するマテリアル・ユニットを前記ホイスト把持部により把持可能なように水平方向に移動させるようになっており、
E.前記貯蔵容器は開放されており、前記オーバーヘッドホイストのホイスト把持部が、一製品の製造施設内の種々の立地間を軌道に沿って次の搬送のために、前記オーバーヘッド搬送車のいずれかの側方において、貯蔵容器に保持されたマテリアル・ユニットへ直接到達するようになっており、
F.前記移動ステージは、ホイスト把持部をオーバーヘッドホイスト搬送車に最も近い第1の位置から貯蔵容器に最も近い第2の位置へ移動させるように設定され、
G.ホイスト把持部は、これらの第1の位置及び第2の位置の両方の位置からマテリアル・ユニットへ到達してマテリアル・ユニットを取り出すことができるようになっているマテリアル取扱システム。
【請求項2】
前記オーバーヘッドホイストのホイスト把持部が、マテリアル・ユニットを直接に貯蔵容器へ供するように構成される請求項1のマテリアル取扱システム。
【請求項3】
前記貯蔵容器が固定された貯蔵個所として設定される請求項1のマテリアル取扱システム。
【請求項4】
前記固定された貯蔵個所が固定棚からなる請求項3のマテリアル取扱システム。
【請求項5】
前記移動ステージは、さらに、ホイスト把持部を貯蔵容器に最も近い第2の位置からオーバーヘッドホイスト搬送車に最も近い第1の位置へ移動させ、これにより、ホイスト把持部は貯蔵容器からマテリアル・ユニットを取り出すことができるようになっている請求項1のマテリアル取扱システム。
【請求項6】
前記移動ステージは、ホイスト把持部をオーバーヘッドホイスト搬送車に最も近い第1の位置から第2の位置および第3の位置の選択された少なくとも一つの位置へ移動するように設定され、これにより、第2と第3の位置はオーバーヘッドホイスト搬送車のいずれかの側方に配置される請求項1のマテリアル取扱システム。
【請求項7】
マテリアル・ユニットはカセットポッドからなる請求項1のマテリアル取扱システム。」

第3.請求人の主張
1.条文
特許法第29条第2項(第123条第1項第2号)

2.証拠
請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証 特開2001-31216号公報
甲第2号証 特開2000-53237号公報
甲第3号証 特開平3-177205号公報
参考文献1 特開2000-188316号公報
参考文献2 特開2001-144169号公報
参考文献3 特開平11-180505号公報

なお、参考文献1ないし2は、請求人・口頭審理陳述要領書とともに、参考文献3は、口頭審理陳述要領書(2)とともに提出された。

3.概要
請求人の主張の概要は、以下のとおりである。

(1)審判請求書第11ページ下から2行?第13ページ第1行
「a.「第1の位置からマテリアル・ユニットへ到達」について
・・・
これらの記載及び上述の「イ)「第1の位置」について」の検討を総合して判断するに、本件請求項1に係る特許発明の構成要件Gにおける、「第1の位置からマテリアル・ユニットへ到達」とは、参考図1に示されるように、ホイスト把持部11により貯蔵容器12内又はワークステーション等の所定部15内のマテリアル・ユニット13を取り上げるに際して、ホイスト把持部11が、オーバーヘッドホイスト搬送車14側に引き込まれた位置である第1の位置(参考図1(a)の位置)から、このホイスト把持部11によりマテリアル・ユニット13を把持するために、オーバーヘッドホイスト搬送車14の側方へ水平移動してマテリアル・ユニット13へ到達すること(参考図1(b)の位置へ到達すること)を意味するものと解される。」

(2)審判請求書第17ページ第1行?第34ページ第21行
「オ)以上によれば、本件請求項1に係る特許発明の構成要件G「ホイスト把持部は、これらの第1の位置及び第2の位置の両方の位置からマテリアル・ユニットへ到達してマテリアル・ユニットを取り出すことができるようになっている」とは、ホイスト把持部が、(i)オーバーヘッドホイスト搬送車側に引き込まれた移動ステージのストローク基端位置から側方に水平移動してマテリアル・ユニットへ到達する機能と、(ii)ホイスト把持部がオーバーヘッドホイスト搬送車の側方に突き出た移動ステージのストローク先端位置から下方に垂直移動してマテリアル・ユニットへ到達する機能、の両機能を備えていることを意味するものと解することができる。
丸2 先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明
1)甲第1号証(特開2001-31216号公報、平成13年2月6日発行)
・・・
ウ)本件請求項1に係る特許発明の構成要件Cについて
・・・
これらの記載から、甲第1号証のものは、天井から吊下げられた形式、所謂オーバーヘッド式の搬送車である天井走行車36を含む搬送システムであり、この天井走行車36から吊下げられた移載装置38はカセット(物品)40を把持する把持部を有するとともに、把持部を移動させる移動部を有し、この移載装置38、言い換えれば把持部を前進又は後退移動させることによってカセット40を貯蔵容器としての棚20に搬出入させることができるように構成されている。また、天井走行車36は、自動倉庫2の棚20に隣接する所定経路を画定する懸架軌道に沿って移動する。ただ、甲第1号証のものは、カセット40を把持する把持部が垂直移動可能であるか否かの構成が明確ではない。よって、甲第1号証には、この明確でない点を除く他の構成が記載されていることから、本件請求項1に係る特許発明の構成要件Cに対応するC´なる点が記載されている。
エ)本件請求項1に係る特許発明の構成要件Dについて
・・・
これらの記載から、甲第1号証のものにおいて、把持部を移動させる移動部は、カセット(物品)40が所定位置に位置するように把持部を水平方向に移動させ、また所定位置に位置するカセット40を把持部により把持可能なように水平方向に移動させるものである。ただ、甲第1号証のものは、移動部による把持部の水平方向への移動によって、カセット40の全部が天井走行車36の外に位置するように構成されたものではない。言い換えれば、天井走行車36の内部空間にあるカセット40が水平方向に移動されることによってカセット40の全部が天井走行車36の外に位置するものではない。よって、甲第1号証には、この点を除く他の構成が記載されていることから、本件請求項1に係る特許発明の構成要件Dに対応するD´なる点が記載されている。
・・・
キ)本件請求項1に係る特許発明の構成要件Gについて
・・・
この記載から、甲第1号証のものにおいて、把持部を移動させる移動部は、把持部を天井走行車36に最も近い天井走行車36の下方位置(第1の位置)から棚20に最も近い前進位置(第2の位置)へ移動させることによってカセット40を棚20に移載するか、あるいは棚20上にあるカセット40へ到達してそのカセット40を取出すものである。ただ、甲第1号証のものでは、第2の位置から更に移動してカセット40へ到達する動作を行うか否かの構成が明確ではない。よって、甲第1号証には、この明確でない点を除く他の構成が記載されていることから、本件請求項1に係る特許発明の構成要件Gに対応するG´なる点が記載されている。
・・・
2)甲第2号証(特開2000-53237号公報、平成12年2月22日発行)
・・・
ウ)本件請求項1に係る特許発明の構成要件Cについて
・・・
これらの記載から、甲第2号証のものにおいて、ホイスト43は、カセットボックス49を上下移動させてストッカ15、製造装置16等に搬送する機能を有していることから、オーバーヘッドホイストであると言える。そして、このホイスト43は、カセットボックス49を把持するチャック機構47(ホイスト把持部)を備え、このチャック機構47がアーム42(移動ステージ)によって水平移動可能に構成されるとともに、ホイスト43に設けられたウインチ46によって垂直移動可能に構成されている。ただ、甲第2号証のものは、搬送台車21を誘導する軌道13が懸架軌道と言えるか否かが明確ではない。よって、甲第2号証には、この明確でない点を除く他の構成が記載されていることから、本件請求項1に係る特許発明の構成要件Cに対応するC´なる点が記載されている。
エ)本件請求項1に係る特許発明の構成要件Dについて
・・・
これらの記載から、甲第2号証のものにおいて、アーム42(移動ステージ)は、チャック機構47(ホイスト把持部)に把持されたカセットボックス49の全部が搬送台車21の外に位置するようにチャック機構47を水平方向に移動させ、且つ、その全部が搬送台車21の外に位置するカセットボックス49をチャック機構47により把持可能なように水平方向に移動させるようになっている。よって、甲第2号証には、本件請求項1に係る特許発明の構成要件Dに相当する構成が明らかに記載されている。
・・・
キ)本件請求項1に係る特許発明の構成要件Gについて
・・・
これらの記載から、甲第2号証のものにおいて、把持部であるチャック機構47を移動させるアーム42は、把持部を搬送台車21に最も近いカセット収納体39内部に保持された第1の位置から収納部に最も近い第2の位置へ移動させることによって収納部のカセットボックス49に到達するか、あるいは第2の位置からさらにウインチ46により下降してカセットボックス49に到達する機能を有しているものである。よって、甲第2号証には、本件請求項1に係る特許発明の構成要件Gに相当する構成が明らかに記載されている。
・・・
丸3 本件特許発明と先行技術発明との対比
(請求項1)
・・・、本件特許発明と甲第1号証に記載の発明との相違点は次の点にあり、その余の点において両者は一致するものである。
a)相違点1:本件特許発明においては、マテリアル・ユニットを把持するホイスト把持部が垂直移動可能であるのに対し、甲第1号証のものでは、カセット40を把持する把持部が垂直移動可能であるか否かの構成が明確でない点。
b)相違点2:本件特許発明においては、移動ステージが、ホイスト把持部に把持されたマテリアル・ユニットの全部がオーバーヘッドホイスト搬送車の外に位置するようにホイスト把持部を水平方向に移動させるように構成されているのに対し、甲第1号証のものでは、把持部の水平方向への移動によって、カセット40の全部が天井走行車36の外に位置するように構成されたものであるか否か明確でない点。
c)相違点3:本件特許発明においては、ホイスト把持部がオーバーヘッドホイスト搬送車に最も近い第1の位置及び貯蔵容器に最も近い第2の位置の両方の位置からマテリアル・ユニットへ到達してマテリアル・ユニットを取り出すことができるようになっているのに対し、甲第1号証のものでは、第2の位置からカセット40へ到達する動作を行うか否かの構成が明確でない点。
上記本件特許発明と甲第1号証に記載された発明との相違点について以下に検討する。
a)相違点1について
甲第2号証には、天井に沿って走行する搬送台車21に設けられた移載装置40がホイスト43を備え、ホイスト43が、ワイヤー45を巻き取り・巻き出し自在なウインチ46と、ワイヤー45の先端に設けられたチャック機構47とを備え、チャック機構47によりカセットボックス49が保持されるようにされた構成が記載されている。言い換えれば、上記相違点1である天井を走行するオーバーヘッドホイストに設けられたホイスト把持部を、水平移動及び垂直移動可能に構成する技術手段が、甲第2号証に記載されている。しかも甲第2号証に記載されたものはマテリアル取扱システムに関する技術であり、本件特許発明及び甲第1号証に記載された発明と技術分野を同一にするものであるから、甲第2号証に記載された上記の点の構成を甲第1号証に記載されたものに適用することは当業者が容易に推考し得るものである。
b)相違点2について
甲第2号証には、アーム42を搬送台車21の側方に延出させるように水平移動させることによって、カセット収納体39の内部に保持されていたカセットボックス49の全部を搬送台車21の外に位置するように構成したものが記載されており、言い換えれば、上記相違点2であるホイスト把持部に把持されたマテリアル・ユニットの全部がオーバーヘッドホイスト搬送車の外に位置するようにホイスト把持部を水平方向に移動させるようにする移動ステージに係る技術手段が、甲第2号証に記載されている。しかも甲第2号証に記載されたものは上述のように本件特許発明及び甲第1号証に記載された発明と技術分野を同一にするものであるから、甲第2号証に記載された上記の点の構成を甲第1号証に記載されたものに適用することは当業者が容易に推考し得るものである。
c)相違点3について
甲第2号証には、ホイスト把持部を、搬送台車21に最も近い第1の位置であるカセット収納体39内部に保持された位置から、第2の位置であるカセットボックス49の移載位置又は取出位置の直上位置へ到達させることができ、さらにその第2の位置から移載位置又は取出位置へ降下させることができるようにした構成が記載されている。つまり、ホイスト把持部が、搬送台車21内に引き込まれた位置から側方に水平移動してカセットボックス49へ到達する機能と、ホイスト把持部が搬送台車21の側方に突き出た位置から下方に垂直移動してカセットボックス49へ到達する機能、の両機能を備えていることは明らかであるから、相違点3の構成は甲第2号証に記載されている。しかも甲第2号証に記載されたものは上述のように本件特許発明及び甲第1号証に記載された発明と技術分野を同一にするものであるから、甲第2号証に記載された上記の点の構成を甲第1号証に記載されたものに適用することは当業者が容易に推考し得るものである。」

(3)口頭審理陳述要領書第3ページ第24行?第10ページ第19行
「したがって、被請求人の「ホイストグリッパー(ホイスト把持部)835が、FOUP810をオーバーヘッド搬送車805内で掴んだ状態から下降して搬送車の真下にある処理加工治具ロードポート899へFOUP810を卸す」との解釈は、明細書及び図面の記載に基づくものであるとは言えず、恣意的な解釈であると言わざるを得ません。
これに対して、図5a?図5bに示される実施例では、段落【0032】に、「オーバーヘッドホイスト搬送車705は、架設のトラック708の直下になる位置からFOUP710を取り上げ(そして配置する)。この目的のために、オーバーヘッドホイスト搬送車705は、移動ステージに取り付けられ、搬送車705から突き出てFOUP710を取り上げ、ついで、これを搬送車705へ引き戻すホイストグリッパー731を含み、このようにしてFOUP710は、オーバーヘッドホイスト搬送車705内を動く(図5b参照)。好ましい実施例では、前記移動ステージによりオーバーヘッドホイストでカセットポッドをオーバーヘッド搬送車705のいずれかの側面から取り上げたり、配置したりするようになっている。」と記載され、ホイスト把持部がオーバーヘッドホイスト搬送車内に位置している「第1の位置」からマテリアル・ユニットへ到達する実施例が明確に記載されているのであります。つまり、図5a?図5bが、「第1の位置からマテリアル・ユニットへ到達」する実施例を示しているのであります。
これらの記載のほかに、被請求人の上述の解釈、すなわち、ホイスト把持部が、オーバーヘッドホイスト搬送車内からその真下に直接下降するという解釈を許容するような記載は明細書中に一切見受けられないことから、被請求人の主張は妥当性を欠くものであります。
・・・
3)「甲2は吊り下げではなく、基本構造が異なるが、なぜ適用可能か」について
本件発明が対象とする半導体製造のためのマテリアル取扱システムの技術分野において、甲2のようにレール上を走行するタイプの天井搬送車(OHS;Over Head Shuttle)と、吊り下げ式の天井搬送車(OHT;Overhead Hoist Transfer)とは共に採用されております。このことを示す資料として、参考文献1(特開2000-188316号公報)および参考文献2(特開2001-144169号公報)を提示します。・・・
これらの記載から明らかなように、甲1のように天井に配されたレールに吊り下げられて走行する形式の天井走行搬送車と、甲2のように天井に配されたレール上を走行する形式の天井走行用搬送車とは、相互に代替可能な並列的な手段であり、しかも、甲1のものと甲2のものとは、半導体製造装置内のクリーンルーム内において、貯蔵部(倉庫)に隣接する天井に設置されたレールに沿って走行して該貯蔵部に対して被搬送物の搬出入を行うという作用、機能が共通していて、十分な動機付けを有していることから、搬送台車の基本構造が異なることを理由に、甲1に甲2を適用したり、甲1と甲2とを結びつけたりすることを否定し得るものではないと判断されます。
4)甲2のアーム42の進退は下方にある台車21が邪魔なためではないのか」について
・・・
これらの記載から明らかなように、甲2においてアーム42を進退させるのは、軌道12の周囲に配置されたストッカ15や製造装置16にカセットボックス49を移載したり、それらストッカ15や製造装置16からカセットボックス49を保持してカセット収納体39内部に収納するためであり、言い換えればストッカ15等の側に移載装置を設けることなく、カセットボックス49を軌道13外に移載することができるようにするためであります。したがって、アーム42の下方にある台車21が邪魔になるから該アーム42を進退させるものであるという被請求人の解釈は妥当性を欠いているものであります。
・・・
6)「甲1は、移載装置を昇降しなくとも良いようにしたものであり、阻害要因があるのではないか」について
・・・
ここで、昇降装置付きの移載装置とは、自動倉庫に設けられ、自動倉庫の棚と外部との間で物品の搬出入を行うものであって、搬送装置に設ける移載装置のことではありません。つまり、従来でも自動倉庫と搬送装置との間で物品の移載は行われており、その移載の過程でステーション等へ載置する際に物品を昇降移動させる必要があることは当業者にとって自明のことです。甲1では、自動倉庫に設けられる移載装置の昇降動作が搬出入速度に悪影響をもたらすことを課題として挙げているだけで、搬送装置に設ける移載装置の昇降動作を問題視してはいません。すなわち、甲1の段落【0002】の記載からは、搬送装置に設ける移載装置を昇降しなくとも良いようにしたものとは読み取ることはできません。そもそも、甲1は、搬送装置に設ける移載装置を昇降しなくとも良いようにしたものではなく、甲2を甲1に適用する際の阻害要因はないと判断されます。」

(4)口頭審理陳述要領書(2)第8ページ下から3行?第13ページ第17行
「2-2)「図5において、『第2の位置からマテリアル・ユニットへ到達』とは、いかなる動きか」について
図5に示される実施例は、第1の位置からマテリアル・ユニットへ到達する場合の実施例のみを示すものであり、「第2の位置」、すなわち、ホイスト把持部がオーバーヘッドホイスト搬送車の側方へ突き出た、移動ステージのストローク先端位置からマテリアル・ユニットへ到達する場合の動きについては何ら説明されておりません。
第2 判断
1)「『第1の位置からマテリアル・ユニットへ到達』を、『水平移動、垂直移動いずれも含む』と解したとして、容易性についての見解」について
・・・
これらの記載から、甲2において、ホイスト43は、カセットボックス49を上下移動させてストッカ15、製造装置16等に搬送する機能を有しており、しかも、このホイスト43は、カセットボックス49を把持するチャック機構47(ホイスト把持部)を備え、このチャック機構47がアーム42(移動ステージ)によって水平移動可能に構成されるとともに、ホイスト43に設けられたウインチ46によって垂直移動可能に構成されております。
そして、甲2は、半導体製造のためのカセットの取扱システムに関するものであり、甲1と同一の技術分野に属し、また、ストッカ側に移載機構を設けることなく搬送台車側に取り付けられた移載機構を利用してカセットボックスをストッカに移載することで、設備コストの低減化を図るという、甲1と共通する技術的課題を有しています。
このように、丸1技術分野の関連性、及び、丸2課題の共通性という動機付けを有していることから、甲2の移載装置を、甲1のものに置き換えることは当業者が容易になし得ることであると判断されます。
2)「甲1は垂直移動可能とする必然性がない旨の被請求人主張に対する見解。」及び、「請求人要領書第10頁第9行?第19行の主張、特に『自明』の根拠は。」について
本件発明の従来例について説明された段落【0016】には、
「図1は、在来のAMHS100を示すもので、・・・・図1に示すように、在来のAMHS100は、WIPストレージユニット(“ストッカー”)102とオーバーヘッドホイスト搬送システム104を備えている。WIPストッカー102は、インプットポート111とアウトポート112を含み、オーバーヘッドホイスト搬送システム104は、架設されたトラック108と、このトラック108にそって動くオーバーヘッドホイスト搬送車105と106を含む。」
とあり、また、段落【0017】には、
「在来のAMHS100においては、前記FOUPは、オーバーヘッドホイストからインプットポート111へおろされ、アウトプットポート112からオーバーヘッドホイストへ引き上げるようになっているか、」
とあるように、オーバーヘッド搬送車とストッカーとの間で物品を移載する場合、ストッカーのステーション(インプットポート、アウトプットポート)を介して物品を昇降移動させて受け渡しを行うようになっています。このような移載動作は当業者にとって一般的な技術事項であって自明のことと判断されます。
・・・
周知技術を示す参考文献3(特開平11-180505号公報)を提出します。
・・・
と記載されているように、FOUPを持ち上げる際にフォーク56(ホイスト把持部に相当)を僅かに上昇させることは当業者にとって一般的技術事項であって、甲1でもステーション56への移載において、移載装置38における僅かな昇降(垂直移動)が必要なことは当業者にとって技術常識であります。よって、甲1の搬送装置に設ける移載装置を垂直移動可能とする必然性がないとする被請求人の主張は認められないものです。」

(5)口頭審理陳述要領書(3)第2ページ第1行?第4ページ第10行
「第1 本件発明
1)「『第1の位置からマテリアル・ユニットへ到達』について、図5のものにおいては、段落0032に『トラック直下になる位置からFOUP710を取り上げ』と記載されているから、このことを指すと解することが自然ではないか。」について
1-1)本件の段落【0032】に「トラック直下になる位置からFOUP710を取り上げ」との一文のみを取り出して、ホイスト把持部が、第1の位置から「真下」(「直下」とは異なる。)に移動すると解釈するのは、それに続く文章を無視するものであり、以下に説明するように、全く不自然な解釈であると思料します。
・・・
1-2)別の観点から見ると、本件の段落【0011】に、
「・・・。」
とあります。この説明によると、下記丸1?丸4の事項を摘記することができます。
丸1 「トラックに近接の第1の位置」が定義され、
丸2 引き出し機構(スライド機構)が位置させる「第2の位置」が定義され、
丸3 この「第2の位置」を、「トラックの実質的な直下の第2の位置」としている、
丸4 なお、この「第2の位置」は、図5に示される棚732と同じ位置である、
このことを踏まえると、図3の第2の実施例は本件各発明の範囲外とは言え、請求項上の「第1の位置」、「第2の位置」はこの段落【0011】でのみ定義されており、その余の段落を確認しても見当たらないことから、この定義により「第1の位置」、「第2の位置」が特定されている以上、特許請求範囲の文言解釈はこの定義に従うべきであります。
そうすると、「オーバーヘッド搬送車はトラックの直下になる棚732からFOUP710を取り上げ」との明細書記載に沿えば、「トラック7の直下になる位置からFOUP710を取り上げ」は、「トラック7の直下になる位置のコンベヤ895からFOUP710を取り上げ」とすべきであり、審判長のロードポートを持ち出す論理には従い兼ねます。
2)「水平移動すると、『第1の位置から第2の位置を経由してマテリアル・ユニットへ到達』することとなり、不自然ではないか。」について
第1の位置から、水平移動のみによってマテリアル・ユニットへ到達することを示しており、全く不自然ではないと判断されます。
3)「図6では、トラック808の下方にロードポート899があり、『ロードポート』の機能からみて、垂直移動すると解することが妥当ではないか。」について
ロードポート899がトラック808の下方にあることは図6に示されておりますが、この図6では、紙面に直交する方向の前後の位置関係も明らかではなく、しかも、明細書中にはロードポート899へのホイストグリッパー835のアクセスについては何らの説明もなく、況や図6にはロードポート899への矢印すらも記載されていないので、ホイストグリッパー835が垂直移動するとは到底解することはできません。」

(6)口頭審理調書の請求人欄
「3 無効2012-800048について
(1)本件発明1の上下移動は、移動の程度を特定していないから、位置決めのための移動、出し入れに不可欠な微小移動、いずれも含む。
(2)甲第1号証においても、棚位置以外では垂直移動のニーズがあることは常識である。」

第4.被請求人の主張
これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。
その主張の概要は、以下のとおりである。

(1)答弁書第4ページ下から5行?第9ページ第23行
「第3 本件発明1に対する請求人の解釈の誤りの指摘
1.請求人の主張の誤りの指摘
・・・
(2) しかしながら、これらの請求人の「ホイスト把持部」についての解釈は、以下に説明するように、誤りである。
先ず、本件発明1の構成要件Cに「前記オーバーヘッドホイストは、移動ステージ及びこの移動ステージに取り付けられ水平移動及び垂直移動可能なマテリアル・ユニットを把持するホイスト把持部を有し」と記載されているように、ホイスト把持部は、水平移動及び垂直移動可能である。ここで、構成要件Dに「前記移動ステージは、・・・・・・・前記ホイスト把持部を水平方向に移動させ」と記載されているので、ホイスト把持部の水平移動は、移動ステージにより行なわれると理解可能である。一方、ホイスト把持部は、それ自体で、垂直方向移動可能である、と理解可能である。
このように、特許請求の範囲の記載に基づき、ホイスト把持部は、移動ステージに取り付けられ、移動ステージと共に水平移動可能であり、且つ、それ自体で垂直移動可能である、と理解できる。
・・・
このように、発明の詳細な説明欄の記載によれば、ホイスト把持部は、上述したように、「移動ステージが横方向に突き出た位置からホイスト把持部が下降する第1動作」及び「ホイスト把持部がオーバーヘッドホイスト搬送車内から下降する第2動作」の2つの動作が可能である、と理解できる。
・・・
このように、本件発明の構成要件Gにおける「第1の位置からマテリアル・ユニットへの到達」は、ホイスト把持部835が、搬送車805内にある「第1の位置」(被請求人参考図1(C)参照)から搬送車の真下に下降し(被請求人参考図1(D)参照)、FOUP(マテリアル・ユニニット)810に到達することを意味しているのである。」

(2)答弁書第14ページ第11行?第17ページ第7行
「2.相違点1及び相違点2
(1) 相違点1
本件発明1においては、構成要件Cに規定したように、ホイスト把持部は、垂直移動可能であるが、甲第1号証の発明では、ホイスト把持部(移載装置38)が垂直移動可能ではない点。
(2) 相違点2
本件発明1においては、構成要件Gに規定したように、ホイスト把持部は、これらの第1の位置及び第2の位置の両方の位置からマテリアル・ユニットへ到達してマテリアル・ユニットを取り出すことができるようになっているが、甲第1号証の発明では、ホイスト把持部(移載装置38)は、第2の位置からマテリアル・ユニットへ到達してマテリアル・ユニットを取り出すことができるようになっているが、第1の位置からマテリアル・ユニットへ到達してマテリアル・ユニットを取り出すことができるようにはなっていない点。
3.相違点1を得ることの困難性
(1) 甲第2号証には、上述したように、軌道13と、この軌道13の底面上を走行する搬送台車21と、この搬送台車21の上方に設けられた移載装置40を備えた搬送設備が記載されている。この甲第2号証の移載装置40は、アーム42と、このアーム42により支持されたホイスト43を備えている。アーム42は、水平方向に進出・後退自在である。ホイスト43は、ワイヤー45を巻き取り・巻き出し自在なウインチ46と、ワイヤー46の先端に設けられたチャック機構47とを備え、チャック機構47は、半導体ウェハが収納されたカセットボックス49と係合離脱可能となっており、これにより、カセットボックス49を保持することができるようになっている。
このように、甲第2号証の搬送システムでは、ホイスト43がカセットボックス49を保持し、このホイスト43をアーム42により水平移動可能となっている。
(2) 次に、この甲第2号証に記載されたアーム42を甲第1号証に適用して相違点1を得ることが容易ではない(困難である)ことを説明する。
第1に、甲第2号証に記載された搬送設備は、搬送台車21が軌道13の底面上を走行し、さらに、カセットボックス39を移載するための移載装置40が、搬送台車21の上方で懸架されたものであり、本件発明1のマテリアル・ユニットを吊り下げるタイプの「オーバーヘッド搬送車」とは、基本構造が異なるものである。それゆえ、甲第2号証の搬送設備の技術を搬送台車(搬送車)の基本構造の異なる甲第1号証の搬送システムに適用することが容易であると言うためには、何らかの動機付けが必要である。しかしながら、甲第2号証には、マテリアル・ユニットを吊り下げるタイプの「オーバーヘッド搬送車」に適用出来る等の示唆は何ら記載されていない。
第2に、甲第2号証の搬送設備において、アーム42を設け、このアーム42により移載装置40を横方向に移動させるようにしたのは、カセットボックス39を移載するための移載装置40が、搬送台車21の上方で懸架された形式のものであるからである。即ち、甲第2号証の搬送設備において、本来の目的であるカセットボックス39を搬送して所定の場所に積み卸し、且つ、所定の場所から取り上げることであるから、そのためには、移載装置40を垂直移動させるために、その前提として、アーム2により、カセットボックス39を搬送台車21から横方向に離間した位置に移動させる必要がある。このように、甲第2号証のアーム42は、移載装置40が、搬送台車21の上方で懸架された形式のものに、固有で且つ必須の機能である。一方、甲第1号証のものは、本件発明1と同様な、マテリアル・ユニットを吊り下げるタイプの「オーバーヘッドホイスト搬送車」を用いたものであり、マテリアル・ユニットを垂直移動させるために、その前提として、横方向に移動させる必要がないものである。このように、甲第1号証には、甲第2号証のアーム42を適用する必要性がないので、甲第2号証を甲第1号号証に適用することが容易であるとする理由がない。
第3に、甲第1号証には、上述したように、その段落〔0002〕及び〔0003〕には、従来装置において、自動倉庫に昇降可能な移載装置を設けることは搬出入速度の関係で好ましくないということが、明確に記載されている。このため、甲第1号証の搬送システムにおいては、移載装置を昇降させなくても良いように、図1に示すような、縦型の循環式自動倉庫2を用い、棚20を鎖14,16,18とスプロケット10、12により、垂直移動させるようにしている。この甲第1号証の従来装置に関する記載は、甲第2号証に記載されたアーム42を甲第1号証へ適用する際、まさに、阻害要因となるべきものである。
以上説明したように、上述した第1、第2、第3の理由から、相違点1を得ることは困難である。
4.相違点2を得ることの困難性
(1) 本件発明1の構成要件Gにおける「第1の位置からマテリアル・ユニットへの到達」は、上述したように、ホイスト把持部が、オーバーヘッドホイスト搬送車内にある「第1の位置」から搬送車の真下に下降し、マテリアル・ユニットに到達することを意味している。
(2) これに対し、先ず、甲第1号証には、上述したように、その段落〔0015〕に、ステーション56と天井走行車(移載装置)36との間で、移載装置38を用いて移載を行うことが記載されている。しかしながら、甲第1号証の移載装置38は、垂直移動ができないものであるため、即ち、移載装置38が物品40を下降させるようになってないため、甲第1号証から、相違点2を得ることが容易であるとすることはできない。
次に、甲第2号証に記載された搬送設備は、上述したように、移載装置40が搬送台車21の上方に懸架されている構造であるので、搬送車内にある「第1の位置」から、移載装置40がそのまま下降することができないようになっている。
さらに、この相違点2は、ホイスト把持部が垂直移動可能であることが前提であるため、相違点1を得ることが困難である上述した第1、第2、第3の理由が、そのまま、相違点2に対しても、適用可能である。
以上説明したように、上述した理由から、相違点2を得ることは困難である。」

(3)口頭審理陳述要領書第2ページ第9行?第5ページ第19行
「1.本件発明1(請求項1)
請求項1に記載された本件発明1の構成と実施例との対応は以下の通りである。また、図面との関係がよく理解出来るように、本件特許の図6をベースにして作成した参考図2を添付する。
マテリアル取扱システム(800)(図6参照)(=丸1+丸2)
丸1 貯蔵ユニット(402)(図4参照)
貯蔵容器(895)(図6参照)
マテリアル・ユニット(810)(図6参照)
丸2 オーバーヘッドホイスト搬送サブシステム(804)(図6参照)
オーバーヘッドホイスト搬送車(805)(図6参照)
オーバーヘッドホイスト(831)(図6参照)
移動ステージ(833)(図6参照)
ホイスト把持部(835)(図6参照)
・・・
第3 判断について
1.甲1について
・・・
先ず、甲1の搬送システムは、図1に示すように、複数の棚20をエンドレスに連結して上下方向(垂直方向)に循環させる自動倉庫2と、この自動倉庫2の上部に設けた搬送出入口28から物品40を搬送する天井走行車36と、自動倉庫2の下部に設けた搬送出入口30から物品40を搬送する無人搬送車42を備えたことを特徴としている(請求項1、請求項2、図1等参照)。この搬送システムにおいて、自動倉庫2内において物品40が上下動するようになっているので、天井走行車36が物品を垂直移動させる必要性が無く、さらに、床8上を走行する無人搬送車42も併用しているので、この点からも、天井走行車36により物品を垂直移動させる必要が無いものとなっている。
・・・
2.甲2について
・・・、甲2の搬送設備において、カセットボックス39を移載するためのホイスト43を備えた移載装置40が、搬送台車21の台車本体22の真上に搭載されているので、カセットボックス39をホイスト43により上下移動(垂直移動)させて所定の場所に積み卸し且つ所定の場所から取り上げるためには、真下にある台車本体22が邪魔になる。そのため、甲2の搬送設備では、最初に、アーム2により、ホイスト43を備えた移載装置40を搬送台車21から横方向に離間した位置まで移動させ、この状態で、ホイスト43を上下移動させるようにしている。このように、甲2のアーム42の進退は、ホイスト43による昇降動作が可能となるように行うものであり、移載装置40が台車本体22の上方に搭載されている搬送台車21に固有の機能である。
一方、甲1の移載装置38(甲2のアーム42に相当)は、物品40を水平方向に移動して自動倉庫2に搬送するためのものであり、甲2のアーム42とは、水平移動させる目的が全く異なっている。それゆえ、甲2のアーム42の進退の目的と、甲1の移載装置38を進退させる目的は、異なるものである。」

(4)口頭審理陳述要領書(2)第7ページ第3行?第21行
「しかしながら、甲1の搬送システムは、吊り下げ形の天井走行車OHT(天井走行車36)を使用しているが、この走行車の移載装置38は、水平移動するのみであり、垂直移動しないようになっている。このように、甲1の走行車は、垂直移動が基本である参考文献1及び2の走行台車とは、異なる形式のものであり、甲1は、参考文献1及び2と無関係である。
丸3 具体的に説明すると、甲2において、アーム42によりホイスト43に移動させているのは、ホイスト43を昇降動作させる際に台車が邪魔になるからであり、これにより、ホイスト43の基本動作である昇降動作が可能となる。一方、甲1においては、天井走行車36に、物品40を自動倉庫2に向けて水平移動させる移載装置38が既に設けられているので、甲1の天井走行車に、さらに甲2の水平移動するアームを設ける必要性(動機付け)がない。さらに、甲1のものは、自動倉庫2内で棚20が垂直移動するようになっているので、甲2の垂直移動するホイスト43を甲1の移載装置38に適用する必要性(動機付け)もない。
このように、参考文献1及び2に、吊り下げ形の天井走行車OHTと馬乗り形の天井走行車OHSが相互に使用可能なことが記載されていても、そのことから、直ちに、甲2のアーム42及びホイスト43を甲1に適用するのは容易であるとするのは、飛躍があり、合理的な理由を見出すことはできない。」

(5)口頭審理調書の被請求人欄
「3 無効2012-800048について
(1)本件発明1の上下移動は、出し入れに不可欠な微小上下移動は意図していない。
(2)甲第1号証には、棚位置以外における動きは何ら記載されていない。」

第5.当審の判断
1.本件発明
本件発明1ないし7は、上記第2.のとおりであるが、本件発明1のG.「ホイスト把持部は第1の位置からマテリアル・ユニットへ到達」の解釈について、争いがある。
請求人は、第1の位置から、側方へ「水平移動」してマテリアル・ユニットへ到達することを意味する旨、主張する(上記第3.3.(1))。
被請求人は、第1の位置から、搬送車の「真下に下降」しマテリアル・ユニットへ到達することを意味する旨、主張する(上記第4.(1))。

本件特許明細書、図面には、以下の記載がある。

ア.請求項1
「オーバーヘッドホイストは、移動ステージ及びこの移動ステージに取り付けられ水平移動及び垂直移動可能なマテリアル・ユニットを把持するホイスト把持部を有し」

イ.段落0023
「図解した操作モードにおいては、FOUP210を入れた貯蔵容器203のような選ばれた貯蔵容器がトラック208の下方にある縦型コンベヤストッカー202の頂部にほぼ位置している。ついでオーバーヘッド搬送車205がトラック208にそって走行し、貯蔵容器203の実質的な直上位置に到達する。つぎに、オーバーヘッドホイストがオーバーヘッド搬送車205から降下し、ストッカーハウジング252の開口を通り、貯蔵容器203へ向かう。・・・。」

ウ.段落0028
「図解の操作モードにおいては、FOUP310を入れた貯蔵容器332などのような選ばれたスライド可能な貯蔵容器は、前記引き出し機構330がストッカー330内から貯蔵容器332を引き出すことができる位置におかれ、貯蔵容器332は、トラック308の直下におかれる。注目すべき点は、引き出し機構330がストッカー302に組み込まれていて、貯蔵容器332が単一のサーボ制御軸398にそって動くようになっている点である。ついでオーバーヘッド搬送車305がトラック308にそって動き、引き出された貯蔵容器332の真上に来るようになっている。ついで、オーバーヘッドホイストがオーバーヘッド搬送車305から貯蔵容器332に向け、例えば、前記ストッカーの長さ方向軸と平行になって降下してくる。・・・。」

エ.段落0032
「オーバーヘッドホイスト搬送車705は、架設のトラック708の直下になる位置からFOUP710を取り上げ(そして配置する)。この目的のために、オーバーヘッドホイスト搬送車705は、移動ステージに取り付けられ、搬送車705から突き出てFOUP710を取り上げ、ついで、これを搬送車705へ引き戻すホイストグリッパー731を含み、このようにしてFOUP710は、オーバーヘッドホイスト搬送車705内を動く(図5b参照)。・・・。」

オ.段落0033
「図6は、コンベヤ895の上にあるか又は移動中のマテリアルにアクセスする移送ホイスト搬送車システム800を図示する。特には、オーバーヘッドホイスト搬送サブシステム804を用いて、FOUP810をオーバーヘッドレールをベースとするコンベヤ895から直接取り上げたり、配置したりするようになっている。・・・。移送ホイスト搬送車システム800は、さらに、処理加工治具ロードポート899を含んでいる。」

上記ア.から「ホイスト把持部」は、「水平移動及び垂直移動可能」である。
イ.及び図2、並びにウ.及び図3から、「直下」とは、字義どおり「真下」のことである。
エ.から、図5の例においては、架設のトラック708、すなわち「第1の位置」の直下になる位置との間で、FOUP710(マテリアル・ユニット)を取り上げ、配置する。すなわち、「第1の位置からマテリアル・ユニットへ到達」するために、「垂直方向」に移動することが明らかである。
オ.から、図6の例においては、トラック808の真下に「処理加工治具ロードポート899」が存する。ロードポートは物品の出し入れのためのものであるから、明細書上明記されていないものの、トラック808、すなわち「第1の位置」の直下になる位置との間で、FOUP810(マテリアル・ユニット)を取り上げ、配置することが示唆されている。
以上、「第1の位置からマテリアル・ユニットへ到達」を「真下に下降」するものと解した場合、図5、図6、いずれの例においても、妥当な解釈が可能である。

他方、請求人が主張する「水平移動」と解した場合に、図5の例との関係を検討する。
「架設のトラック708の直下になる位置からFOUP710を取り上げ(そして配置する)」動作は、本件発明1の動作とは無関係となる。さらに請求人も認める(上記第3.3.(4))ように、「第2の位置からマテリアル・ユニットへ到達」する動作は、何ら説明されないこととなる。
また、図6の例との関係では、請求人は、『「トラック7の直下になる位置からFOUP710を取り上げ」は、「トラック7の直下になる位置のコンベヤ895からFOUP710を取り上げ」とすべき』と主張している(上記第3.3.(5))が、図6を参照するに、コンベア895はトラック808の「斜め下」であり、「直下」とするのは無理がある。
よって、請求人の解釈は、図5、図6の例と整合しないから、請求人の主張は妥当でない。

以上より、「第1の位置からマテリアル・ユニットへ到達」とは、「真下に下降」するものと判断する。

2.証拠記載事項
(1)甲第1号証
甲第1号証には、以下の記載がある。

ア.段落0001
「【0001】
【発明の利用分野】この発明は、循環式の自動倉庫を用いた搬送システムに関する。」

イ.段落0010?0018
「【0010】
【実施例】図1?図4に実施例を示す。図1に実施例の循環式自動倉庫2と搬送装置との接続を示すと、自動倉庫2は例えばクリーンルーム4に設置し、・・・。自動倉庫2の上下にはスプロケット10,12を設け、主鎖14を鉛直面内でエンドレスに循環させる。また同様に補助鎖16,18を、図示しない他のスプロケット等で鉛直面内で循環させる。
【0011】20は鎖14,16,18に接続した複数の棚で、図2に棚20の構成を示す。主鎖14を例えば棚20の左右両側に設けて前記のスプロケット10,12で駆動し、位置決め用の補助鎖16,18を例えば棚20の左右に一本ずつ設けて、回動自在なピン22,24,26で鎖14,16,18に棚20を取り付け、棚20の姿勢を一定にしている。・・・。
【0012】循環式自動倉庫2には、例えば3種の搬出入口28,30,32を設け、このうち搬出入口28は天井走行車用の搬出入口で、搬出入口30は無人搬送車用の搬出入口で、搬出入口32は半導体等の処理装置との間の搬出入口である。・・・。
【0013】34は天井6により支持したレールで、36は天井走行車で、38はその移載装置で、物品40を把持している姿を図1に示した。天井走行車36は移載装置38を備えたものを用い、・・・。
【0014】50は制御装置で、スプロケット10,12の回動方向を制御し、搬出入を行う棚(以下、「所要の棚」)を移載を行う搬出入口へ近い向きへ(循環距離が短い向きへ)回転させ、最短時間で所要の棚が所要の搬出入口に現れるようにするためのものである。・・・。
【0015】図3に実施例の全体構成を示すと、例えば処理装置46の一端に自動倉庫2を設け、他端には図示しないスタッカークレーンとその両側に棚とを配置した通常のクレーン式自動倉庫52を設ける。・・・。54は無人搬送車42との間の移載用のステーションで、56は天井走行車36との間の移載用のステーションであり、それぞれ移載装置を内蔵した搬出入口58をステーション54,56に接して設けてある。即ちステーション54,56と搬送装置36,42との間の移載では、搬送装置側の移載装置38,44を用いてステーションとの間の移載を行い、ステーション54,56と処理装置46や自動倉庫52の内部との移載では、搬出入口58に設けた移載装置を用いるものとする。
【0016】・・・。
【0017】図4に天井走行車36や無人搬送車42と自動倉庫2等の間の物品のやり取りを示す。図の横向きの矢印は物品の移載を示し、循環式の自動倉庫2との間の移載では、移載装置38,44,48を搬出入口28,30,32から自動倉庫2の内部へ前進させて、直接棚20との間で物品を移載する。また図4の縦方向のラインに設けた●は搬送指令の処理を開始した時点を示す。
【0018】例えば広域搬送用の天井走行車36から短距離搬送用(工程内搬送用)の無人搬送車42への物品の移載では、最初に搬出入口28を用い、天井走行車36から物品40を自動倉庫2へと搬入する。・・・。所要の棚が搬出入口30に達すると、搬出入口30を介して、無人搬送車42の移載装置44で物品を移載する。・・・。」

ウ.図2
棚20が開放されていることが看取できる。

エ.図4
天井走行車と循環式自動倉庫との間で、搬入、搬出が行われることが看取できる。

図1、図3、及び段落0017の「自動倉庫2との間の移載では、移載装置38,44,48を搬出入口28,30,32から自動倉庫2の内部へ前進させて、直接棚20との間で物品を移載する」なる記載からみて、移載装置38が搬出入口28から自動倉庫2の内部へ前進することは明らかである。
よって、移載装置38は、水平移動可能な移動ステージ、及びこの移動ステージに取り付けられ物品40を把持する把持部を有し、移動ステージは、把持部に把持された物品40の全部が天井走行車36の外に位置するように把持部を水平方向に移動させ、且つ、その全部が天井走行車36の外に位置する物品40を把持部により把持可能なように水平方向に移動させるようになっているということができる。

これらを、技術常識を踏まえ、本件発明1に照らして整理すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「a.自動倉庫を用いた搬送システムであって、
b.棚20を含む自動倉庫2であって、前記棚20は物品40を保持するように設定された前記自動倉庫2と、
c.移載装置38を搭載した天井走行車36を含む搬送サブシステムであって、前記移載装置38は、移動ステージ及びこの移動ステージに取り付けられ水平移動可能な物品40を把持する把持部を有し、前記天井走行車36は、棚20に隣接する所定経路を画定するレール34に沿って移動するように構成された前記搬送サブシステムと、を有し、
d.前記移動ステージは、前記把持部に把持された物品40の全部が天井走行車36の外に位置するように前記把持部を水平方向に移動させ、且つ、その全部が天井走行車36の外に位置する物品40を前記把持部により把持可能なように水平方向に移動させるようになっており、
e.前記棚20は開放されており、前記天井走行車36の把持部が、一製品の製造施設内の種々の立地間をレール34に沿って次の搬送のために、前記天井走行車36のいずれかの側方において、棚20に保持された物品40へ直接到達するようになっており、
f.前記移動ステージは、把持部を天井走行車36に最も近い第1の位置から棚20に最も近い第2の位置へ移動させるように設定され、
g.把持部は、第2の位置から物品40を取り出すことができるようになっている、自動倉庫を用いた搬送システム。」

なお、請求人は、本件発明1の「第1の位置からマテリアル・ユニットへ到達」を「水平移動」と解することを前提として、甲1発明のg.について「g.把持部は、第1の位置からカセット40に到達してカセット40を取り出すことができるようになっており、かつ、第2の位置から、・・・」とすべき旨、主張する。
しかし、上記1.で検討したとおり、請求人の主張は、前提において誤りがあるから、採用できない。

(2)甲第2号証
甲第2号証には、以下の記載がある。

ア.段落0012
「【0012】図3に示すものは、上記クリーンルーム内における半導体ウェハ等のカセットの搬送システムS’の全体概要である。この搬送システムS’は、例えばクリーンルームの天井等に配置されて、搬送台車を誘導するための軌道13を有する搬送設備14を備えた構成とされている。また、軌道13の周囲には、カセットを収納するためのストッカ15,…や、上記ウェハを加工する製造装置16,…等が配置されている。」

イ.段落0014?0020
「【0014】図1は、この軌道13を走行する搬送台車21の概略構成を示す図である。図中に示すように、軌道13は、ボックス断面型に形成されており、軌道13の内部空間13aには、搬送台車21の台車本体22が収納された状態となっている。
【0015】台車本体22は、軌道13の底面上を走行する車輪24と、・・・、このリニアモータ30を推進手段として軌道13内を走行するようになっている。
【0016】また台車本体22の上部には、支柱31が設けられており、・・・。
【0017】また、支柱31は、その上端部31aが、軌道15に設けられたスリット36から上に延び、軌道13の上方に位置する荷台38を支持する構成となっている。荷台38の上方には、ボックス断面型のカセット収納体(被搬送物収納部)39が設けられており、カセット収納体39の天井部39aには、移載装置40が懸架された状態で設けられている。
【0018】図中に示すように移載装置40は、カセット収納体39の天井部39aに固定されたアーム(腕部)42と、アーム42によって支持されたホイスト(保持機構)43を備えた構成とされている。アーム42は、図中に二点鎖線で示すように、搬送台車21の走行方向と直交する水平方向(図中A方向)に進出・後退自在な構成とされている。
【0019】一方、ホイスト43は、ワイヤー45を巻き取り・巻き出し自在なウインチ46と、ワイヤー45の先端に設けられたチャック機構47とを備えた構成となっている。チャック機構47は、図2に示すように、半導体ウェハが収納されたカセットボックス(被搬送物)49の取っ手50と係合離脱自在な構成となっており、これによりカセットボックス49を保持することが可能となっている。
【0020】したがって、この移載装置40によれば、図1中鎖線で示すように、アーム42を搬送台車21の側方に延出させた状態で、ウインチ46によってワイヤー45を巻きだし、チャック機構47を降下させることが可能である。そして、チャック機構47を軌道13外に降下させた状態で、軌道13外に位置するカセットボックス49の取っ手50を図2に示すようにチャックし、さらに、チャックされたカセットボックス49を吊り上げて、アーム42を後退させれば、軌道13外に位置していたカセットボックス49を、図1中に実線で示したように、カセット収納体39内部に保持したまま収納することができる。また、これと逆の手順を行うことによって、カセット収納体39内部に保持されたカセットボックス49を軌道13外に移載することが可能である。」

ウ.段落0022?0023
「【0022】以上のような構成とされた搬送設備14においては、搬送台車21に移載機構が備えられているために、軌道13上を搬送されたカセットボックス49をダイレクトに製造装置16,…に移載することができ、したがって、従来、被搬送物の移載に必要とされていた一部のストッカや移載ロボットを不要とすることができる。・・・。また、この搬送設備14においては、ストッカ15にカセットボックス49を移載する際に、搬送台車21側に取り付けられた移載機構40を利用できるために、ストッカ15側に移載機構(ローダ)を設ける必要がない。したがって、ストッカ15,…の設備コストの低減化を図ることができ、また、従来、移載機構を設けていたスペースを利用してストッカ15の棚数の増加を図ることができる。・・・。
【0023】さらに搬送設備14においては、搬送台車21に設けられた移載装置40を搬送台車21から側方に張り出した状態でカセットボックス49の受け渡しを行うことができるために、カセットボックス49の受け渡しにあたって高さ方向の制約が生じることがない。・・・。」

これらを、図面を参照し、技術常識を踏まえ整理すると、甲第2号証には、以下の事項(以下「甲2事項」という。)が記載されている。
「半導体ウェハ等のカセットボックス49の搬送システムS’であって、
軌道13を走行する搬送台車21の台車本体22の上部に、カセット収納体(被搬送物収納部)39が設けられており、カセット収納体39の天井部39aに固定されたアーム(腕部)42と、アーム42によって支持されたホイスト(保持機構)43を備えた移載装置40が設けられ、
アーム42は、搬送台車21の走行方向と直交する水平方向に進出・後退自在とされ、
ホイスト43は、ワイヤー45を巻き取り・巻き出し自在なウインチ46と、ワイヤー45の先端に設けられ、カセットボックス49の保持が可能なチャック機構47とを備え、
軌道13外に位置していたカセットボックス49を、カセット収納体39内部に保持したまま収納すること、また、カセット収納体39内部に保持されたカセットボックス49を軌道13外に移載することが可能としたもの。」

(3)甲第3号証
甲第3号証には、以下の事項(以下「甲3事項」という。)が記載されている。
「吊下式のスタッカクレーン8を有する倉庫設備、及びスタッカクレーン8を利用して立坑内に物品31を搬入する搬入部設備に関し、走行レール4下方で物品搬送経路1の両側に配設された棚41を有し、物品搬送トラック46の荷台からスタッカクレーン8により直接物品31を把持して棚41に搬入できるもの。」

3.本件発明1
(1)対比
甲1発明の「自動倉庫を用いた搬送システム」は本件発明1の「自動化されたマテリアル取扱システム」に相当し、同様に「棚20」は「貯蔵容器」に、「自動倉庫2」は「貯蔵ユニット」に、「物品40」は「マテリアル・ユニット」に、「天井走行車36」は「オーバーヘッドホイスト搬送車」に、「搬送サブシステム」は「オーバーヘッドホイスト搬送サブシステム」に、「把持部」は「ホイスト把持部」に、「レール34」は「(懸架)軌道」に、相当する。
甲1発明の「移載装置38」と本件発明1の「オーバーヘッドホイスト」とは「オーバーヘッド部材」である限りにおいて一致する。
本件発明1と甲1発明は、以下の点で一致する。
「A.自動化されたマテリアル取扱システムであって、
B.貯蔵容器を含む貯蔵ユニットであって、前記貯蔵容器はマテリアル・ユニットを保持するように設定された前記貯蔵ユニットと、
C.オーバーヘッド部材を搭載したオーバーヘッドホイスト搬送車を含むオーバーヘッドホイスト搬送サブシステムであって、前記オーバーヘッド部材は、移動ステージ及びこの移動ステージに取り付けられ水平移動可能なマテリアル・ユニットを把持するホイスト把持部を有し、前記オーバーヘッドホイスト搬送車は、貯蔵容器に隣接する所定経路を画定する懸架軌道に沿って移動するように構成された前記オーバーヘッドホイスト搬送サブシステムと、を有し、
D.前記移動ステージは、前記ホイスト把持部に把持されたマテリアル・ユニットの全部がオーバーヘッドホイスト搬送車の外に位置するように前記ホイスト把持部を水平方向に移動させ、且つ、その全部がオーバーヘッドホイスト搬送車の外に位置するマテリアル・ユニットを前記ホイスト把持部により把持可能なように水平方向に移動させるようになっており、
E.前記貯蔵容器は開放されており、前記オーバーヘッド部材のホイスト把持部が、一製品の製造施設内の種々の立地間を軌道に沿って次の搬送のために、前記オーバーヘッド搬送車のいずれかの側方において、貯蔵容器に保持されたマテリアル・ユニットへ直接到達するようになっており、
F.前記移動ステージは、ホイスト把持部をオーバーヘッドホイスト搬送車に最も近い第1の位置から貯蔵容器に最も近い第2の位置へ移動させるように設定され、
G.ホイスト把持部は、第2の位置からマテリアル・ユニットを取り出すことができるようになっているマテリアル取扱システム。」

そして、以下の点で相違する。
相違点:ホイスト把持部について、本件発明1では「垂直移動可能」な「オーバーヘッドホイスト」に設けられており、「第1の位置及び第2の位置の両方の位置からマテリアル・ユニットへ到達してマテリアル・ユニットを取り出すことができる」が、甲1発明では「移載装置38」に設けられ「垂直移動可能」か明らかでなく、「第1の位置からマテリアル・ユニットへ到達してマテリアル・ユニットを取り出すことができる」か明らかでなく、「第2の位置からマテリアル・ユニットを取り出すことができる」ものの「到達」するかは明らかでない点。

(2)判断
相違点について検討する。
甲2事項は、上記2.(2)のとおりであり、本件発明1に照らすと、甲2事項の「半導体ウェハ等のカセットボックス49」は本件発明1の「材料ユニット」に相当し、同様に、「アーム42」は「移動ステージ」に、「搬送台車21」は「高架ホイスト搬送手段」に、「半導体ウェハ等のカセットボックス49の搬送システムS’」は「自動材料搬送システム」に、相当する。
甲2事項の「ホイスト43」は、甲第2号証の段落0023に軌道を天井付近に設置する場合があることが記載されているから、本件発明1の「高架ホイスト」に相当する。
よって、甲2事項の相違点関係部分を本件発明1に照らし、書き改めると以下のとおりである。
「自動材料搬送システムであって、軌道を走行する搬送台車の上部に高架ホイスト搬送手段を設け、高架ホイスト搬送手段は移動ステージを備え、この移動ステージに高架ホイストが取り付けられているもの。」
すなわち、甲2事項の「ホイスト把持部」は、「垂直移動可能」なものである。

甲1発明における「貯蔵ユニット」は「循環式の自動倉庫2」であり、その内部で「棚20」が「搬出入口28」の高さとなるよう上下移動する(上記2.(1)イ.の段落0014)。また、棚20との間のマテリアル・ユニット(物品40)の移載は、所定の高さ範囲に開口された「搬出入口28」を通して行われる(同段落0017)。
すなわち、ホイスト把持部が、水平方向に移動し、棚上のマテリアル・ユニットを把持するための高さ合わせは、「循環式の自動倉庫2」によりなされることから、これに加えて、「ホイスト把持部」を「垂直移動可能」とする必要はない。
甲2事項の「ホイスト把持部」は、確かに、「垂直移動可能」なものではあるが、甲1発明に甲2事項を適用し、「ホイスト把持部」を「垂直移動可能」とするためには、製造工数・費用の増加を伴う。
前記のとおり、甲1発明において、「ホイスト把持部」を「垂直移動可能」とする必要はないから、製造工数・費用の増加を伴ってまで、甲2事項を適用することはありえない。
よって、相違点を容易とすることはできない。

請求人は、以下を主張する(上記第3.3.(6))。
ア.本件発明1の上下移動は、移動の程度を特定していないから、位置決めのための移動、出し入れに不可欠な微小移動、いずれも含む。
イ.甲第1号証においても、棚位置以外では垂直移動のニーズがあることは常識である。
ア.について検討する。
出し入れに不可欠な微小移動は、請求項で特定するまでもなく技術常識である(口頭審理調書の両当事者欄の2)。あえて請求項で特定した以上、出し入れに不可欠な微小移動を含まないと解することが妥当であり、被請求人も出し入れに不可欠な微小移動は含まないとしている(上記第4.(5))。
イ.について検討する。
甲第1号証の図3、図4にみられるごとく、甲第1号証記載のものは、自動倉庫2、処理装置46、クレーン式自動倉庫52を有し、これらの間では物品の出し入れは完結しており、これら以外の装置に対する物品の出し入れは、クレーン式自動倉庫52によりなされている。してみると、甲第1号証の「ホイスト把持部」が「棚位置以外」で垂直移動のニーズがあることは、何ら根拠がない。
よって、請求人の主張は採用できない。

以上、提出された証拠により、本件発明1が容易に発明をすることができたとすることはできない。

4.本件発明2ないし7
本件発明2ないし7は、本件発明1に従属し、本件発明1をさらに限定するものである。
上記のとおり、本件発明1は、容易に発明をすることができたとすることはできない。
よって、同様の理由により、提出された証拠によっては、本件発明2ないし7が容易に発明をすることができたとすることはできない。

第7.むすび
以上、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1ないし7に係る特許を無効とすることはできない。
また、他に本件発明1ないし7に係る特許を無効とすべき理由を発見しない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2012-09-11 
出願番号 特願2004-515615(P2004-515615)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之松岡 美和  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 藤井 眞吾
刈間 宏信
登録日 2011-09-30 
登録番号 特許第4831521号(P4831521)
発明の名称 縦型輪状コンベヤ及びオーバーヘッドホイストを基にした半導体製造のためのマテリアルの自動化処理システム  
代理人 富岡 英次  
代理人 板垣 孝夫  
代理人 辻居 幸一  
代理人 井上 勉  
代理人 高石 秀樹  
代理人 山本 泰史  
代理人 弟子丸 健  
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