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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1265073
審判番号 不服2011-12197  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-08 
確定日 2012-10-25 
事件の表示 特願2007-295801「携帯型電話装置、装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月15日出願公開、特開2008-112456〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年11月11日に出願した特願平10-320649号の一部を平成15年1月27日に新たな特許出願とした特願2003-18028号の一部を平成19年11月14日にさらに新たな特許出願としたものであって、平成22年5月19日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月26日付けで手続補正がなされ、同年10月5日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月13日付けで手続補正がなされたが、平成23年3月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、当審において、平成24年5月11日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、同年7月17日付けで回答書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項2に係る発明は、平成23年6月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「装置の制御方法であって、
振り仮名を生成する手段が、文字列が入力されると文字列に対応する振り仮名を生成し、
制御手段が、前記入力された第1の文字列と第2の文字列の間に新規文字列が挿入されると、前記第1の文字列に対応する第1の振り仮名と前記第2の文字列に対応する第2の振り仮名の間に前記新規文字列に対応する振り仮名を挿入する
ことを特徴とする制御方法。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-56910号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(以下の摘記中の下線は、当審において付与したものである。)

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 読みデータを入力する入力手段と、
入力された該読みデータを漢字データに変換するかな漢字変換手段と、
前記漢字データを表示する行とその前の行との間に読みがな行としての空白行を挿入する空白行挿入手段と、
前記かな漢字変換手段により変換された漢字データを表示する漢字データ表示手段と、
前記空白行に前記入力手段より入力された読みデータを読みがなとして表示する読みがな表示手段と、
を有することを特徴とするワードプロセッサ。
【請求項2】 編集モードの指定に応じて、文書編集時に前記読みがな行の読みがなも前記漢字データといっしょに編集する編集手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のワードプロセッサ。」

イ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ワードプロセッサに関し、特に1回の文字入力及び変換作業で、該当する文字だけでなく対応する読みがなも表示する(読みがな付漢字入力)ことのできるワードプロセッサに関する。」

ウ.「【0010】図1から図7は本発明の一実施例の構成と制御手順を示す。図1は本発明の一実施例の回路構成をもっともよく表すブロック図であり、2はCPU(中央演算処理装置)、3はかな漢字変換部、4はRAM(ランダムアクセスメモリ)である。RAM4内において、5は現在の変換モードが読みがな付変換か否かの状態を保持する変換モード保存領域、6は現在の編集モードが通常のデータを編集するのか、読みがなデータを編集するのかの状態を保持する編集モード保存領域、7は画面上に編集されたデータを保持する編集データ保存領域である。8はキー入力のためのキーボード、9はデータ保存のための外部補助記憶装置(Disc)、10は編集データを表示するためのディスプレイである。1はデータ処理装置であって、CPU2とかな漢字変換部3とRAM4を有し、キーボード8から入力されてかな漢字変換部3を通して送信されたデータ情報に基づいて文字情報をディスプレイ10に表示する機能を有している。
【0011】図2は図1のキーボード8から入力された読みがなデータが、かな漢字変換部3を通してCPU2に送信される場合のデータ・フォーマットを示す。このデータは変換結果の漢字データのみ、あるいは漢字データと変換対象として入力された読みがなデータの連結された読みがな付データに分けられる。図2の(a)に示すように、漢字データはデータのみのフォーマット形式を持つが、後者の読みがな付データは、図2の(b)に示すように、漢字データと読みがなデータを含むことを示すヘッダーHe、漢字データ、漢字データと読みがなデータの区切りを示すセパレータSe、読みがなデータ、デリミタDeを1つの組としてもつ。この(a)の通常データと(b)の読みがな付データは混合されて使用されることができる。」

エ.「【0012】・・・(中略)・・・図3の(b)は上記の「行情報管理テーブル」の内容を説明するものであり、実際の表示画面に対応している。」

オ.「【0014】図4は図1のキーボード8から入力されたデータが、図1のかな漢字変換部3を通して変換された場合にCPU2が行なうデータ入力処理の手順を示す。まず、ステップ401でデータを取得する。ここでは、読みがなを持たない通常のデータはデータだけが読まれるが、読みがなを持つデータは、図2に示すようにデリミタDeまで読まれる。まず、以下の処理で通常のデータを表示する。即ち、ステップ402でデータ保存領域7にデータを保存する。ステップ403で編集データ保存領域7内の「データ行の長さ」(図3の(a)参照)と表示しようとする文字の「文字の大きさ」(図3の(d)参照)を比較し、「データ行の長さ」の方が大きければ、ステップ406に移行する。しかし、「データ行の長さ」の方が小さければ、ディスプレイ10の画面にデータを表示できないので、ステップ404で必要な分の空白行を画面内の現在の「データ行」の上に挿入して「データ行」を広げる。そして、ステップ405で「データ行の長さ」を更新する。
【0015】次に、ステップ406で「行情報管理テーブル」を基に、表示位置を計算した後に、ステップ407で漢字データをディスプレイ10の画面に表示する。ステップ408でデータの種類を判別して、読みがなを持たないデータならばこのデータ入力処理を終了する。しかし、読みがなを持つデータならば以下の処理で読みがなを表示する。
【0016】まず、ステップ409で「文字の大きさ」から「読みがなの大きさ」を計算する。ステップ410で「読みがな行の長さ」(図3の(a)参照)とその「読みがなの大きさ」を比較し、「読みがな行の長さ」の方が大きければステップ413へ移行する。「読みがな行の長さ」の方が小さければ、ディスプレイ10の画面に読みがなを表示できないので、ステップ411で必要な分の空白行を画面内の現在の「読みがな行」の上に挿入して、「読みがな行」を広げる。そして、ステップ412で「読みがな行の長さ」を更新する。
【0017】次に、ステップ413で「行情報管理テーブル」を基に、表示位置を計算した後に、ステップ414で読みがなをディスプレイ10の画面に表示してこのデータ入力処理を終了する。
【0018】図5は、図1のCPU2が行なうデータ編集処理のうち、削除処理の手順を示す。まず、ステップ501で編集モードをチェックして、読みがな編集モードであるならば後述のステップ510に移行する。しかし、通常のデータ編集モードであれば、ステップ502で編集データ保存領域7内のデータを削除する。次にステップ503で図3の「行情報管理テーブル」を基に、表示位置を計算した後に、ステップ504でディスプレイ10の画面に表示されているデータを消去し、その画面を再描画する。
【0019】続いて、ステップ505でその「行情報管理テーブル」の「データ行」にデータがない場合か、あっても、ステップ506で「データ行」の長さが最大のデータの大きさより大きい場合には、ステップ507で不要な分の「データ行」を画面から消去し、ステップ508で「データ行長」を更新する。次のステップ509で読みがなデータがなければこの削除処理を終了する。
【0020】一方、読みがな編集モードの場合は、ステップ10(審決注:図5を参照すると、この「ステップ10」との記載は、「ステップ510」の誤記であると認められる。)で編集データ保存領域7内の読みがなデータを削除する。次に、ステップ511で図3の「行情報管理テーブル」を基に、表示位置を計算した後に、ステップ512でディスプレイ10の画面に表示されている読みがなを消去し、その画面を再描画する。【0021】続いて、ステップ513でその「行情報管理テーブル」の「読みがな行」に読みがなデータがない場合か、あっても、ステップ514で「読みがな行」の長さが最大の読みがなデータの大きさより大きい場合には、ステップ515で不要な分の「読みがな行」を画面から消去し、ステップ516で「読みがな行長」を更新し、その後にこの削除処理を終了する。」

上記ア.?オ.の記載及び関連する図面を参照すると、次のことがいえる。

(ア)上記イ.の「ワードプロセッサに関する。」との記載、及び、上記ウ.の段落【0010】の「制御手順を示す。」との記載から、引用例には、「ワードプロセッサの制御方法」が開示されているといえる。

(イ)上記ウ.の段落【0011】の「入力された読みがなデータが、かな漢字変換部3を通してCPU2に送信される場合のデータ・フォーマットを示す。このデータは変換結果の漢字データのみ、あるいは漢字データと変換対象として入力された読みがなデータの連結された読みがな付データに分けられる。」との記載に続いて、上記オ.の段落【0015】に「読みがなを持つデータならば以下の処理で読みがなを表示する。」と記載され、続く段落【0016】?【0017】に記載の処理を行って「読みがなをディスプレイ10の画面に表示」する旨の記載がなされている。
ここで、上記段落【0011】の記載において、CPU2に送信されるデータ・フォーマットが「漢字データと変換対象として入力された読みがなデータの連結された読みがな付データ」の場合、「漢字データ」と「変換対象として入力された読みがなデータ」が連結された「読みがな付データ」が、CPU2に対して入力されるといえる。
そして、上記「読みがな付データ」がCPU2に対して入力された後に、段落【0016】?【0017】の処理が行われた結果として、図3(b)のように「漢字データ」に対応する「読みがなデータ」が生成されると解される。
よって、引用例には、「読みがなデータを生成する手段が、漢字データと変換対象として入力された読みがなデータの連結された読みがな付データが入力されると、漢字データに対応する読みがなデータを生成」することが開示されているといえる。

(ウ)上記オ.の段落【0018】?【0021】の「データ編集処理」のうちの「削除処理の手順」において、「読みがな編集モードの場合」には、「ステップ511で図3の「行情報管理テーブル」を基に、表示位置を計算した後に、ステップ512でディスプレイ10の画面に表示されている読みがなを消去し、その画面を再描画する。」とされている。
そして、図5のフローチャートを見ると、「読みがな編集モード」は、「データ編集モード」において「読みがなあり」(ステップ509)の場合に該「読みがな編集モード」に移行するようなモードであり、そこで行われる動作は、上記ア.の【請求項2】の「編集モードの指定に応じて、文書編集時に前記読みがな行の読みがなも前記漢字データといっしょに編集する編集手段をさらに有する」との記載に照らせば、「漢字データが削除されると該漢字データに対応する読みがなデータを削除する」動作であると解される。

上記(ア)?(ウ)の事項を踏まえると、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例記載の発明」という。)
「ワードプロセッサの制御方法であって、
読みがなデータを生成する手段が、漢字データと変換対象として入力された読みがなデータの連結された読みがな付データが入力されると、漢字データに対応する読みがなデータを生成し、
CPUが、前記入力された漢字データが削除されると該漢字データに対応する読みがなデータを削除する
ことを特徴とする制御方法。」

4.対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用例記載の発明における「ワードプロセッサ」は、本願発明における「装置」に相当する。

イ.引用例記載の発明における「読みがなデータ」は、引用例の図3(b)に見られるように、漢字の真上に表示されるものであり、本願発明における「振り仮名」に相当するといえる。
そして、引用例記載の発明において、「漢字データと変換対象として入力された読みがなデータの連結された読みがな付データが入力される」場合に、少なくとも「漢字データ」が入力されることには相違なく、また、該「漢字データ」は、引用例の図3(b)に見られるように、複数の漢字からなるものを含むものであることから、本願発明における「文字列」に相当するといえる。
よって、引用例記載の発明において、「読みがなデータを生成する手段が、漢字データと変換対象として入力された読みがなデータの連結された読みがな付データが入力されると、漢字データに対応する読みがなデータを生成」することは、本願発明において、「振り仮名を生成する手段が、文字列が入力されると文字列に対応する振り仮名を生成」することに相当する。

ウ.引用例記載の発明における「CPU」は、本願発明における「制御手段」に相当する。
そして、引用例記載の発明において、「漢字データが削除される」場合というのは、当然、「第1の漢字データ」と「第2の漢字データ」の間の漢字データが削除されることも含むものと解され、その場合の動作は、「第1の漢字データに対応する第1の読みがなデータ」と「第2の漢字データに対応する第2の読みがなデータ」の間の漢字データに対応する読みがなデータを削除することになると解される。
さらに、引用例記載の発明における「削除」と本願発明における「挿入」は、上位概念では「編集」である点において、共通するといえる。
よって、本願発明と引用例記載の発明とは、「制御手段が、入力された第1の文字列と第2の文字列の間の文字列が編集されると、前記第1の文字列に対応する第1の振り仮名と前記第2の文字列に対応する第2の振り仮名の間の文字列に対応する振り仮名を編集する」動作を行っている点において共通するものである。

上記ア.?ウ.の事項を踏まえると、本願発明と引用例記載の発明とは、
「装置の制御方法であって、
振り仮名を生成する手段が、文字列が入力されると文字列に対応する振り仮名を生成し、
制御手段が、前記入力された第1の文字列と第2の文字列の間の文字列が編集されると、前記第1の文字列に対応する第1の振り仮名と前記第2の文字列に対応する第2の振り仮名の間の文字列に対応する振り仮名を編集する
ことを特徴とする制御方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:「制御手段(CPU)」が行う「編集」動作が、本願発明においては、「入力された第1の文字列と第2の文字列の間に新規文字列が挿入されると、前記第1の文字列に対応する第1の振り仮名と前記第2の文字列に対応する第2の振り仮名の間に前記新規文字列に対応する振り仮名を挿入する」動作であるのに対し、引用例記載の発明においては、「入力された漢字データが削除されると該漢字データに対応する読みがなデータを削除する」動作である点。

5.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
引用例のものにおいて、実施例において示されているのは、「CPU2が行なうデータ編集処理のうち、削除処理の手順」(引用例の上記3.オ.の段落【0018】の記載参照)であるが、引用例のものは、そもそも、「削除処理」だけをするものに限らず、「文書編集時に読みがな行の読みがなも漢字データといっしょに編集する」(引用例の上記3.ア.の【請求項2】の記載参照)ものである。
そして、文書を「編集」するときに、「文字列」を「削除」するのみならず「挿入」することも、当然考えられることであり、「いっしょに編集する」動作を行うとき、「文字列」を「削除」する場合に、対応する箇所の「振り仮名」を「削除」するのと同様に、「文字列」を「挿入」する場合に、該「文字列」を「挿入」した位置に対応する箇所に「振り仮名」を「挿入」するようにすること、すなわち、「入力された第1の文字列と第2の文字列の間に新規文字列が挿入されると、前記第1の文字列に対応する第1の振り仮名と前記第2の文字列に対応する第2の振り仮名の間に前記新規文字列に対応する振り仮名を挿入する」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、引用例記載の発明において、「制御手段(CPU)」が、「編集」動作の一種として「入力された第1の文字列と第2の文字列の間に新規文字列が挿入されると、前記第1の文字列に対応する第1の振り仮名と前記第2の文字列に対応する第2の振り仮名の間に前記新規文字列に対応する振り仮名を挿入する」動作を行うようなものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-22 
結審通知日 2012-08-28 
審決日 2012-09-10 
出願番号 特願2007-295801(P2007-295801)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 成瀬 博之今村 剛  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 田中 秀人
酒井 伸芳
発明の名称 携帯型電話装置、装置の制御方法  

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