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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 F02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02F
管理番号 1265083
審判番号 不服2011-19715  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-12 
確定日 2012-10-25 
事件の表示 特願2005-200998「シリンダライナ及びエンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月25日出願公開、特開2007- 16733〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成17年7月8日の出願であって、平成20年7月8日付けで手続補正がなされ、平成22年1月29日付けで拒絶理由通知がなされ、平成22年4月5日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成22年10月8日付けで拒絶理由通知がなされ、平成22年12月1日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成23年6月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年9月12日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成24年4月19日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、平成24年6月15日付けで回答書が提出されたものである。

第2.平成23年9月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年9月12日付けの手続補正を却下する。
[理由]

1.本件補正の内容
平成23年9月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、下記(1)から(2)へと補正された。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
括れた形状の突起が当該シリンダライナの外周面上に複数形成されるとともに、この複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されるものであり、
この皮膜の熱伝導率が当該シリンダライナの熱伝導率以上の大きさである
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項2】
シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
括れた形状の突起が当該シリンダライナの外周面上に複数形成されるとともに、この複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されるものであり、
この皮膜の熱伝導率が前記シリンダブロックの熱伝導率以上の大きさである
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項3】
シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
括れた形状の突起が当該シリンダライナの外周面上に複数形成されるとともに、この複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されるものであり、
前記シリンダライナの外周面かつ前記複数の突起が形成された部分において、シリンダライナ軸方向の上端部から中間部までの範囲に前記皮膜が形成され、
前記シリンダライナの外周面かつ前記複数の突起が形成された部分において、シリンダライナ軸方向の前記中間部から下端部までの範囲には前記皮膜が形成されていない
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
シリンダライナ軸方向の上端部から中間部までの肉厚がシリンダライナ軸方向の中間部から下端部までの肉厚よりも小さい
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜は、前記シリンダブロックに対する当該シリンダライナの密着性を高めるものである
を特徴とするシリンダライナ。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜は、溶射層により構成されるものである
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項7】
請求項1?5のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜は、ショットコーティング層により構成されるものである
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項8】
請求項1?5のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜は、めっき層により構成されるものである
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項9】
請求項1?8のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜は、前記シリンダブロックと冶金的に接合するものである
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項10】
請求項1?9のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記シリンダブロックの鋳造材料の溶湯について、当該シリンダライナを鋳ぐるむ際の同溶湯の温度を基準溶湯温度として、
前記皮膜は、この基準溶湯温度以下の融点を有するものである
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項11】
請求項1?10のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜がシリンダライナ軸方向の上端部から下端部までにわたり形成される
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項12】
請求項1?11のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜について次の括弧内の条件が満たされる
「皮膜の厚さが0.5mm以下である」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項13】
請求項1?12のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「外周面上の1cm^(2)当たりの突起の数が5個?60個の範囲に含まれる」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項14】
請求項1?13のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「突起の高さが0.5mm?1.5mmの範囲に含まれる」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項15】
請求項1?14のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「3次元レーザ測定器により得られる突起の等高線図において、高さ0.4mmの等高線により囲まれた領域の面積率が10%以上である」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項16】
請求項1?15のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「3次元レーザ測定器により得られる突起の等高線図において、高さ0.2mmの等高線により囲まれた領域の面積率が55%以下である」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項17】
請求項1?14のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「3次元レーザ測定器により得られる突起の等高線図において、高さ0.4mmの等高線により囲まれた領域の面積率が10%?50%の範囲に含まれる」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項18】
請求項1?15のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「3次元レーザ測定器により得られる突起の等高線図において、高さ0.2mmの等高線により囲まれた領域の面積率が20%?55%の範囲に含まれる」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項19】
請求項1?18のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「3次元レーザ測定器により得られる突起の等高線図において、高さ0.4mmの等高線により囲まれる各領域の面積が0.2mm^(2)?3.0mm^(2)の範囲に含まれる」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項20】
請求項1?19のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「3次元レーザ測定器により得られる突起の等高線図において、高さ0.4mmの等高線により囲まれる各領域が独立している」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項21】
請求項1?20のいずれか一項に記載のシリンダライナを備えたエンジン。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
シリンダブロックに 適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、 当該シリンダライナの外周面上に複数の突起が形成されていること、
前記複数の突起のそれぞれが括れた形状の突起であること、
前記複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されていること、
ならびに、前記皮膜の熱伝導率が当該シリンダライナの熱伝導率以上の大きさであること
を特徴とするシリンダライナ。
【請求項2】
シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
当該シリンダライナの外周面上に複数の突起が形成されていること、
前記複数の突起のそれぞれが括れた形状の突起であること、
前記複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されていること、
ならびに、前記皮膜の熱伝導率が前記シリンダブロックの熱伝導率以上の大きさであること
を特徴とするシリンダライナ。
【請求項3】
シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
当該シリンダライナの外周面上に複数の突起が形成されていること、
前記複数の突起のそれぞれが括れた形状の突起であること、
前記複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されていること、
前記シリンダライナの外周面かつ前記複数の突起が形成された部分において、シリンダライナ軸方向の上端部から中間部までの範囲に前記皮膜が形成されていること、
ならびに、前記シリンダライナの外周面かつ前記複数の突起が形成された部分において、シリンダライナ軸方向の前記中間部から下端部までの範囲には前記皮膜が形成されていないこと
を特徴とするシリンダライナ。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
シリンダライナ軸方向の上端部から中間部までの肉厚がシリンダライナ軸方向の中間部から下端部までの肉厚よりも小さい
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜は、前記シリンダブロックに対する当該シリンダライナの密着性を高めるものである
を特徴とするシリンダライナ。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜は、溶射層により構成されるものである
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項7】
請求項1?5のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜は、ショットコーティング層により構成されるものである
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項8】
請求項1?5のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜は、めっき層により構成されるものである
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項9】
請求項1?8のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜は、前記シリンダブロックと冶金的に接合するものである
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項10】
請求項1?9のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記シリンダブロックの鋳造材料の溶湯について、当該シリンダライナを鋳ぐるむ際の同溶湯の温度を基準溶湯温度として、
前記皮膜は、この基準溶湯温度以下の融点を有するものである
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項11】
請求項1?10のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜がシリンダライナ軸方向の上端部から下端部までにわたり形成される
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項12】
請求項1?11のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記皮膜について次の括弧内の条件が満たされる
「皮膜の厚さが0.5mm以下である」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項13】
請求項1?12のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「外周面上の1cm^(2)当たりの突起の数が5個?60個の範囲に含まれる」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項14】
請求項1?13のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「突起の高さが0.5mm?1.5mmの範囲に含まれる」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項15】
請求項1?14のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「3次元レーザ測定器により得られる突起の等高線図において、高さ0.4mmの等高線により囲まれた領域の面積率が10%以上である」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項16】
請求項1?15のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「3次元レーザ測定器により得られる突起の等高線図において、高さ0.2mmの等高線により囲まれた領域の面積率が55%以下である」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項17】
請求項1?14のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「3次元レーザ測定器により得られる突起の等高線図において、高さ0.4mmの等高線により囲まれた領域の面積率が10%?50%の範囲に含まれる」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項18】
請求項1?15のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「3次元レーザ測定器により得られる突起の等高線図において、高さ0.2mmの等高線により囲まれた領域の面積率が20%?55%の範囲に含まれる」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項19】
請求項1?18のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「3次元レーザ測定器により得られる突起の等高線図において、高さ0.4mmの等高線により囲まれる各領域の面積が0.2mm^(2)?3.0mm^(2)の範囲に含まれる」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項20】
請求項1?19のいずれか一項に記載のシリンダライナにおいて、
前記括れた形状の突起について次の括弧内の条件が満たされる
「3次元レーザ測定器により得られる突起の等高線図において、高さ0.4mmの等高線により囲まれる各領域が独立している」
ことを特徴とするシリンダライナ。
【請求項21】
請求項1?20のいずれか一項に記載のシリンダライナを備えたエンジン。」
なお、下線は、請求人が付した。

2.本件補正の適否についての判断
[理由1]
2.-1 目的要件違反
(1)判断
本件補正は、本件補正前の請求項1及び2に係る発明を特定するために必要な事項である「括れた形状の突起が当該シリンダライナの外周面上に複数形成されるとともに、この複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されるものであり、
この皮膜の熱伝導率が当該シリンダライナの熱伝導率以上の大きさである」を「 当該シリンダライナの外周面上に複数の突起が形成されていること、
前記複数の突起のそれぞれが括れた形状の突起であること、
前記複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されていること、
ならびに、前記皮膜の熱伝導率が当該シリンダライナの熱伝導率以上の大きさである」と補正する事項を含むものであるところ、当該補正事項は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当しない。
また、本件補正は、本件補正前の請求項3に係る発明を特定するためのに必要な事項である「括れた形状の突起が当該シリンダライナの外周面上に複数形成されるとともに、この複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されるものであり、
前記シリンダライナの外周面かつ前記複数の突起が形成された部分において、」を「 当該シリンダライナの外周面上に複数の突起が形成されていること、
前記複数の突起のそれぞれが括れた形状の突起であること、
前記複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されていること、
前記シリンダライナの外周面かつ前記複数の突起が形成された部分において、シリンダライナ軸方向の上端部から中間部までの範囲に前記皮膜が形成されていること、
ならびに、」と補正する事項を含むものであって、当該補正事項も特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当しない。
さらに、当該補正事項は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶理由に示す事項についてするものに限る。)のいずれを目的とするものでもない。

(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由2]
2.-2 独立特許要件違反
上記2.-1で検討したように、本件補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものでないところ、仮に特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとして、本件補正後の請求項1ないし3に係る発明(以下、各々対応して「本願補正発明1」ないし「本願補正発明3」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

(1) 引用文献
(1)-1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-326353号公報(以下、「引用文献1」という。)には、例えば、以下の記載がある。

(1)-1-1 引用文献1の記載
ア.「【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る鋳鉄製鋳ぐるみ部材では、鋳造時に他の金属の溶湯と接触する鋳ぐるみ表面に、外方に向かって拡開する略円錐状のアンダーカット部を有する複数の突起が設けられている。
【0012】これにより、鋳鉄製鋳ぐるみ部材には、鋳ぐるみ表面に種々の方向に向かって拡開する略円錐状のアンダーカット部が設けられるため、例えば、アルミニウム合金等の他の金属との密着性が有効に向上する。さらに、各突起の表面積は、従来の針状突起に比べて増加するため、実際に鋳ぐるみ製品が使用される際に、摺動等によって鋳鉄製鋳ぐるみ部材に発生する熱をアルミニウム合金に良好に伝達することができ、放熱性が有効に向上する。
【0013】また、各突起の先端には、外方に向かって拡開するアンダーカット部の先端に対応して平坦部が設けられている。このため、鋳鉄製鋳ぐるみ部材の外周面をクランプするクランプ面との接触面積が、従来の針状突起に比べて大幅に増加する。点接触から面接触となるからである。従って、鋳鉄製鋳ぐるみ部材のクランプ位置決め精度が向上し、前記鋳鉄製鋳ぐるみ部材の加工が高精度にかつ良好に遂行可能になる。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施形態に係るシリンダライナ(鋳鉄製鋳ぐるみ部材)10を鋳ぐるむシリンダブロック(鋳ぐるみ製品)12の一部分解斜視説明図である。
【0015】シリンダブロック12は、軽量化を図るため、例えば、アルミニウム合金製ブロック14を備える。鋳鉄製のシリンダライナ10を鋳ぐるんでアルミニウム合金製ブロック14が鋳造されることにより、シリンダブロック12が製造されている。
【0016】シリンダライナ10は、後述するように、遠心鋳造法により鋳鉄を用いて製造されている。図2に模式的に示すように、シリンダライナ10の外周面に設けられている鋳ぐるみ表面16には、外方に向かって拡開する略円錐状のアンダーカット部18を有する複数の突起20が設けられている。各突起20の先端には、外方に向かって拡開するアンダーカット部18の先端に対応して平坦部21が設けられている。
【0017】シリンダライナ10は、例えば、外周直径が60mm?100mmに設定される際、各突起20の鋳ぐるみ表面16からの高さが0.5mm?1.2mmの範囲内に設定されている。シリンダライナ10の内面10aは、摺動面を構成しており、鋳造成形後にこの内面10aに機械加工が施される。
【0018】図3に示すように、シリンダブロック12では、シリンダライナ10の各突起20の間隙に、アルミニウム合金製ブロック14が充填されて球状接合部22が形成されている。
」(段落【0011】ないし【0018】)

イ.「【0027】内面10aの加工を含む所定の加工が施されたシリンダライナ10は、図示しないシリンダブロック鋳造用鋳型内に配置される。次いで、他の金属、例えば、アルミニウム合金の溶湯が鋳型内に注湯されて、前記シリンダライナ10をアルミニウム合金製ブロック14により鋳ぐるんでシリンダブロック12が製造される。
【0028】この場合、本実施形態では、図2に模式的に示すように、各突起20のアンダーカット部18が略円錐形状であり、シリンダライナ10の周方向(矢印X方向)および軸方向(矢印Y方向)に対してもアンダーカット形状を有している。従って、図3に示すように、シリンダライナ10の突起20とアルミニウム合金製ブロック14の球状接合部22とが互いに密着している。
【0029】これにより、シリンダライナ10とアルミニウム合金製ブロック14とは、矢印A方向の変位、すなわち、ずれを防止してシリンダブロック12の軸間部15(図1参照)に発生する残留応力の低減を図るとともに、矢印B方向のずれ、すなわち、剥がれを阻止して相互の密着強度が低下することを可及的に回避することができる。
【0030】しかも、シリンダライナ10とアルミニウム合金製ブロック14との密着表面積が増大する。このため、摺動等によってシリンダライナ10に発生する熱を、アルミニウム合金製ブロック14に効率よく伝えることが可能になり、放熱性を向上させることができる。」(段落【0027】ないし【0030】)

ウ.「【0034】
【発明の効果】本発明に係る鋳鉄製鋳ぐるみ部材では、鋳ぐるみ表面に種々の方向に向かって拡開する略円錐状のアンダーカット部が設けられるため、例えば、アルミニウム合金等の他の金属との密着性が有効に向上する。さらに、各突起の表面積は、従来の針状突起に比べて増加するため、鋳ぐるみ製品を使用する際に、鋳鉄製鋳ぐるみ部材に発生する熱をアルミニウム合金に良好に伝達することができ、放熱性が有効に向上する。
【0035】また、各突起の先端には、外方に向かって拡開するアンダーカット部の先端に対応して平坦部が設けられている。このため、鋳鉄製鋳ぐるみ部材の外周面をクランプするクランプ面との接触面積が、従来の針状突起に比べて大幅に増加する。従って、鋳鉄製鋳ぐるみ部材のクランプ位置決め精度が向上し、前記鋳鉄製鋳ぐるみ部材の加工が高精度にかつ良好に遂行可能になる。」(段落【0034】及び【0035】)

(1)-1-2 引用文献1に記載された事項
上記(1)-1-1 ア.ないし、ウ.及び図面の記載を参酌すると、引用文献1には、以下の事項が記載されていることが分かる。

エ.シリンダブロック14に適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナ10であって、シリンダライナ10の外周面上に複数の突起20が形成されていることが分かる。

オ.複数の突起20のそれぞれが外方に向かって拡開するアンダーカット部18を有する突起であることが、分かる。

(1)-1-3 引用文献1に記載された発明
上記(1)-1-1 ア.ないしウ.、(1)-1-2 エ.及びオ.の記載並びに図面の記載を参酌すると、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。
「シリンダブロック14に適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナ10において、
当該シリンダライナ10の外周面上に複数の突起20が形成されていること、
前記複数の突起20のそれぞれが外方に向かって拡開するアンダーカット部18を有する突起であるシリンダライナ10。」(以下、「引用文献1に記載された発明A」という。)

また、同様に、以下の発明も記載されているといえる。
「シリンダブロック14に適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナ10において、
外方に向かって拡開するアンダーカット部18を有する突起20が当該シリンダライナ10の外周面上に複数形成されるシリンダライナ10。」(以下、「引用文献1に記載された発明B」という。)

(1)-2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-25058号公報(以下、「引用文献2」という。)には、例えば、以下の記載がある。

(1)-2-1 引用文献2の記載
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Al合金製鋳込み部材とこのAl合金製鋳込み部材の鋳込み方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鋳込み部材を鋳込んで製造される製品の一つに、エンジンブロックがある。エンジンブロックは、スリーブ(鋳込み部材)とエンジンケース(鋳包み部材)とを別々に製造し、エンジンケースにスリーブを鋳込んで製造される。このとき、スリーブとエンジンケースとの密着性が必要であり、これらの密着性を向上させるために従来から様々な方法が試みられている。」(段落【0001】及び【0002】)

イ.「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のAl合金製鋳込み部材は、押出加工で外表面に押出肌を形成した押出部材と、この押出肌が形成されている押出部材の外表面に、1回の溶射で金属材料を付着させた溶射層とからなる。これにより、鋳包み部材との密着性が高いAl合金製鋳込み部材を得ることができる。
【0010】また、本発明のAl合金製鋳込み部材の鋳込み方法は、大きく分けて以下の3つの工程からなる。まず、アトマイズされた急冷凝固Al合金粉末、またはアトマイズされた急冷凝固Al合金粉末と硬質粒子または固形潤滑剤粒子の少なくともいずれか一方との混合物からなる粉末、あるいはスプレーフォーミングされた急冷凝固Al合金を使用して熱間押出加工し、外表面に押出肌を有する押出部材を作製する。次に、この押出部材の外表面に金属材料を1回だけ溶射して溶射層を有するAl合金製鋳込み部材を作製する。そして、この鋳込み部材をダイカスト方式で鋳包み部材に鋳込む。このような方法とすることで、鋳込み部材と鋳包み部材との密着性を向上させることができる。」(段落【0009】及び【0010】)

ウ.「【0013】溶射に使用される金属材料の材質は、Znを50%以上含有するか、Alを50%以上含有するか、またはCuを50%以上含有するものであることが好ましい。Zn、Alを含有するものは融点が低く、Cuを含有するものに関しては融点は高いが低温においてもAl合金との反応性が高いため、Al合金製鋳包み部材との密着性を向上させることができる。
【0014】また、さらに好ましくは、鋳込み部材よりも融点が低い材料である、Al-Cu共晶(融点:548℃)やAl-Si共晶(融点:577℃)や低融点Zn(融点:419℃)等のコーティングがよい。このような異種金属の溶射層を設けることで、鋳込み部材が硬質粒子や固体潤滑成分を含んでいても、十分な密着性を得ることができる。特にZnの場合は、Al合金との反応性も良く、Al合金に比べて融点が低くてよい。
【0015】また、CuはAlと反応して高融点の化合物を形成し、高温に晒されても密着性が劣化しないため、熱処理を施すものなどに適する。
【0016】溶射層の厚みは5μm以上200μm以下であることが好ましい。溶射層の厚みを5μm以上とすれば、鋳込み部材の外表面に金属材料を隙間無く付着させ、溶射層の無い箇所をなくすことができる。また、溶射層の厚みを200μm以下とすれば、1回の溶射で溶射層を形成することができ、経済的にも優れている。
【0017】鋳込み部材の外表面の面粗度は、Rzで1以上50以下であることが好ましい。Rzを1以上とすれば、面を荒らすことの効果が得られ、密着性を向上する。また、Rzを50以下とすれば、信頼性を低下させる程の亀裂の発生を防止することができ、1回の溶射で隙間無く溶射層を形成することができる。」(段落【0013】ないし【0017】)

エ.「【0021】
【実施例】表1に今回の実験で使用した鋳込み部材の材料組成および製造方法の一覧を示す。
【0022】
【表1】(省略)
【0023】まず、Al合金の溶湯を約3MPaの圧力で空気アトマイズした急冷凝固Al合金粉末と、スプレーフォーミングしたAl-25Si-2024合金のビレットをそれぞれ作製した。このとき、急冷凝固Al合金粉末の組成は、Al?25Si-1Fe-2024、Al-25Si-2Fe-2024およびAl-25Si-2024の3種類とした。
【0024】次に、Al?25Si-1Fe-2024の急冷凝固Al合金粉末について、アルミナ粒子を5重量%とグラファイト粒子を1重量%添加し、V型混合ミキサーで均一に分散するように混合した。このとき、Al-25Si-2Fe-2024、およびAl-25Si-2024粉末は、硬質粒子や固体潤滑材を何も混合しなかった。
【0025】この粉末をCIP(Cold Isostatic Pressing)したもの、またはスプレーフォーミングしたビレットを熱間押出加工し、外径φ85mm,内径φ75mmの円筒状の押出部材を作製した。このとき、ダイスのデザインを変え、外表面の面粗度をRz=0.5、3、20、40、70と変化させた。また、比較のために、円筒部材にコランダム製の粒子でショットし、その外表面の面粗度をRz=25にしたものと、円筒部材に切削加工でRz=31にしたものも準備した。
【0026】このようにして作製した押出部材または円筒部材の外表面に、アーク溶射で金属材料を付着させて溶射層を形成し、鋳込み部材を作製した。金属材料には、Zn、Al、Al-12Si合金、Zn-2Al合金、Cuの線材を使用した。また、金属材料の一方をAl、他方をZnとしてZn-30Al配合となるようにアーク溶射し、溶射層を形成したものも作製した。
【0027】このとき、長さ100mm、表面粗さRz=20の押出部材を、1回転を3秒間として溶射すると、溶射層の厚みは20μmとなった。これを標準とし、回転速度を変化させて、溶射層の厚みが7、40、180μmのものも作製した。」(段落【0021】ないし【0027】)

(1)-2-2 引用文献2に記載された事項
上記(1)-2-1 ア.ないし、エ.及び図面の記載を参酌すると、引用文献2には、以下の事項が記載されていることが分かる。

オ.エンジンケースに適用される鋳ぐるみ用のスリーブ、であることが分かる。

カ.スリーブの外周面上に、異種金属の溶射層が形成されていることが分かる。

(1)-2-3 引用文献2に記載された発明
上記(1)-2-1 ア.ないしエ.及び(1)-2-2 オ.及びカ.の記載並びに図面の記載を参酌すると引用文献2には、以下の発明が記載されているといえる。
「エンジンケースに適用される鋳ぐるみ用のスリーブにおいて、
当該スリーブの外周面上に異種金属の溶射層が形成されている、
スリーブ。」(以下、「引用文献2に記載された発明」という。)

(1)-3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-123259号公報(以下、「引用文献3」という。)には、例えば、以下の記載がある。

(1)-3-1 引用文献3の記載
ア.「この鋳込みの技術に関しては、如何にライナ2を、異なる材質で成るシリンダブロック1に強固に結合させるか、言い換えると、如何にライナ2に拘束を与えるかがポイントになっており、既に種々の提案がなされている。」(第1ページ右欄第15ないし19行)

イ.「このシリンダは、シリンダブロック1に鋳込まれたライナ部材11を有して成り、そのライナ部材11の外周面12に、本発明の特長となる平滑部13と結合部14とが形成されている。本実施例にあっては、シリンダブロック1はアルミ合金にて、またライナ部材11は鋳鉄にて成形されている。
平滑部13は、シリンダブロック1に対して、軸方向に摺動可能なように、滑らかな面に仕上げられて成る。本実施例にあっては、外表面がグラファイトによりコーティングされている。
結合部14は、ピストンの上死点側となるシリンダ上部のうち、ライナ部材11の全長L(当審注:公報中では、小文字筆記体)の約30%の区間に形成されている。従って、平滑部13はその下方の残りの部分全体に亘って形成されていることになる。
第2図に示すように、結合部14は、断面半円状の環状突起15が、軸方向に並設され、シリンダブロック1の内側に止着されるようになっている。本実施例にあっては、ライナ部材11の鋳造成形時に、同時に成形され、一体的に設けられている。」(第2ページ右下欄第5行ないし第3ページ左上欄第6行)

ウ.「本発明は、シリンダブロック1とライナ部材11との結合力を維持しつつ、その変形を防止することを主眼としている。特に、結合部14を設ける区間については、固定のための強度が得られる範囲(ライナ長さL(当審注:公報中では、小文字筆記体)の30%以下、或いはボア径dの45%以下)の内で、出来るだけ短くして、平滑部13の区間を長くするほうが変形防止上、望ましい。しかしながら、結合部14の区間は、ライナ部材11の放熱の状態から見て、機関のピストン上死点時のピストン上面の位置から上方に、或いはその位置を中心に上下に、ボア径dの15%に相当する長さは最低限、必要と判断される。これは、ライナ部材11のうち、ピストンの上死点位置から上方の、ピストンリングが摺動しない部分は、内側が燃焼ガスに晒されると共に、油膜等の保護のない部分である。従って、この部分が最も熱を受け易く、熱応力が大になると考えられる。従って結合部14を形成する区間としては、この部分をカバーする、ライナ長さL(当審注:公報中では、小文字筆記体)の10?30%、ボア径dで言えばその15?45%とするのが適当である。
なお、結合部14の構成については種々考えられ、第3図に示すような断面鋸歯状の突起21を機械加工によって設ける、あるいは第4図に示すようにシエル等の自硬性鋳砂の鋳ハダ面若しくは鋳砂中に、発泡材を混入して凹凸22を形成するようにしてもよい、また、第5図に示すように、突起15,21あるいは凹凸22に、溶融メッキを施して結合力を強め、結合部23としてもよい。これは、フラックスを塗布した後、ドブ付法等によりアルミメッキを施したものである。さらに、突起21や凹凸22のない外周面12に、このメッキを施すようにしてもよい。
また、平滑部13のコーティング材としでは、グラファイトの他、アルミパウダ等を用いてもよい。コーティング材を用いない場合は、精密な機械加工によってもよい。」(第3ページ右上欄第15行ないし右下欄第11行)

(1)-3-2 引用文献3に記載された事項
上記(1)-3-1 ア.ないしウ.の記載及び図面を参酌すると、引用文献3には以下の事項が記載されていることが分かる。

エ.シリンダブロック1に適用される鋳ぐるみ用のライナ部材11において、
当該ライナ部材11の外周面上に複数の突起15、21が形成されていることが分かる。

オ.複数の突起15,21の表面及びライナ部材11の外周面上に、溶融メッキが形成されていることが分かる。

カ.ライナー部材は、軸方向に上から結合部14を形成する上端部A、平滑部を形成する中間部B及び下端部Cがあり、
ライナ部材11の外周面かつ前記複数の突起15,21が形成された部分において、ライナ部材11軸方向の上端部Aから中間部Bまでの範囲に溶融メッキが形成されていることが分かる。

キ.ライナ部材11軸方向の中間部Bから下端部Cまでの範囲には、溶融メッキが形成されていないライナ部材11であることが分かる。

(1)-3-3 引用文献3に記載された発明
上記(1)-3-1 ア.ないしウ.及び(1)-3-2 エ.ないしキ.並びに図面の記載を参酌すると、引用文献3には以下の発明が記載されているといえる。
「シリンダブロック1に適用される鋳ぐるみ用のライナ部材11において、
当該ライナ部材11の外周面上に複数の突起15、21が形成されていること、
前記複数の突起15,21の表面及び当該ライナ部材11の外周面上に溶融メッキが形成されていること、
前記ライナ部材11の外周面かつ前記複数の突起15,21が形成された部分において、ライナ部材11軸方向の上端部Aから中間部Bまでの範囲に前記溶融メッキが形成されていること、ならびに、ライナ部材11軸方向の前記中間部Bから下端部Cまでの範囲には前記溶融メッキが形成されていないライナ部材11。」(以下、「引用文献3に記載された発明」という。)

(4)対比
(4)-1 本願補正発明1
本願補正発明1と引用文献1に記載された発明Aとを対比すると、引用文献1に記載された発明Aにおける「シリンダブロック14」は、その構成及び技術的意義からみて本願補正発明1における「シリンダブロック」に相当し、以下同様に、「シリンダライナ10」は「シリンダライナ」に、「突起20」は「突起」に、「外方に向かって拡開するアンダーカット部18を有する突起」は「括れた形状の突起」に各々相当する。
よって、本願補正発明1と引用文献1に記載された発明Aとは、
「シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
当該シリンダライナの外周面上に複数の突起が形成されていること、
前記複数の突起のそれぞれが括れた形状の突起であるシリンダライナ。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点〉
本願補正発明1においては、複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成され、前記皮膜の熱伝導率が当該シリンダライナの熱伝導率以上の大きさであるのに対して、引用文献1に記載された発明Aにおいては、そのように特定されていない点(以下、「相違点1」という。)。

(4)-2 本願補正発明2
本願補正発明2と引用文献1に記載された発明Aとを対比すると、引用文献1に記載された発明Aにおける「シリンダブロック14」は、その構成及び技術的意義からみて本願補正発明2における「シリンダブロック」に相当し、以下同様に、「シリンダライナ10」は「シリンダライナ」に、「突起20」は「突起」に、「外方に向かって拡開するアンダーカット部18を有する突起」は「括れた形状の突起」に各々相当する。
よって、本願補正発明2と引用文献1に記載された発明Aとは、
「シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
当該シリンダライナの外周面上に複数の突起が形成されていること、
前記複数の突起のそれぞれが括れた形状の突起であるシリンダライナ。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点〉
本願補正発明2においては、複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成され、前記皮膜の熱伝導率が当該シリンダブロックの熱伝導率以上の大きさであるのに対して、引用文献1に記載された発明Aにおいては、そのように特定されていない点(以下、「相違点2」という。)。

(4)-3 本願補正発明3
本願補正発明3と引用文献1に記載された発明Aとを対比すると、引用文献1に記載された発明Aにおける「シリンダブロック14」は、その構成及び技術的意義からみて本願補正発明3における「シリンダブロック」に相当し、以下同様に、「シリンダライナ10」は「シリンダライナ」に、「突起20」は「突起」に、「外方に向かって拡開するアンダーカット部18を有する突起」は「括れた形状の突起」に各々相当する。
よって、本願補正発明3と引用文献1に記載された発明Aとは、
「シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
当該シリンダライナの外周面上に複数の突起が形成されていること、
前記複数の突起のそれぞれが括れた形状の突起であるシリンダライナ。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点〉
本願補正発明3においては、複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成され、前記シリンダライナの外周面かつ前記複数の突起が形成された部分において、シリンダライナ軸方向の上端部から中間部までの範囲に前記皮膜が形成されていること、
ならびに、前記シリンダライナの外周面かつ前記複数の突起が形成された部分において、シリンダライナ軸方向の前記中間部から下端部までの範囲には前記皮膜が形成されていないのに対して、引用文献1に記載された発明Aにおいては、そのように特定されていない点(以下、「相違点3」という。)。

(5)判断
(5)-1 本願補正発明1について
相違点1について検討する。
本願補正発明1と引用文献2に記載された発明とを対比すると、引用文献2に記載された発明における「エンジンケース」は、その構成及び技術的意義からみて本願補正発明1における「シリンダブロック」に相当し、以下同様に、「スリーブ」は「シリンダライナ」に、「異種金属の溶射層」は「金属材料の皮膜」に各々相当することから、引用文献2に記載された発明を本願補正発明1の用語を用いて表現すると
「シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されているシリンダライナ」となる。そして、皮膜に関して、本願補正発明1の明細書の段落【0062】、【0080】、【0128】、【表3】及び【表7】の実施例からすれば、皮膜はAl-Si合金の溶射層で0.5mm以下とすることで、密着性が向上する旨の記載、さらに、シリンダライナとシリンダブロックの熱伝導性を十分に確保するため及び剥離防止するために、皮膜の熱伝導率をシリンダライナの熱伝導率以上としていること分かる。
一方、引用文献2に記載された発明においては、引用文献2の段落【0013】ないし【0015】、【表1】の記載からすれば、皮膜はAl-Si合金の溶射層で0.5mm以下とすることで、シリンダライナとシリンダブロックとの密着性が向上する旨の記載があり、高温に晒されても密着性が劣化しない旨の記載もあること、さらに引用文献1に記載された発明Aも引用文献2に記載された発明も共に、本願補正発明1と同様にシリンダブロックとシリンダライナとの密着性の確保に係る共通の技術であることから、引用文献1に記載された発明Aに引用文献2記載の発明を適用して、相違点1に係る本願補正発明1のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。

しかも、本願補正発明1の作用効果も、引用文献1に記載された発明A及び引用文献2に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明1は、引用文献1に記載された発明A及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)-2 本願補正発明2について
相違点2について検討する。
本願補正発明2と引用文献2に記載された発明とを対比すると、引用文献2に記載された発明における「エンジンケース」は、その構成及び技術的意義からみて本願補正発明2における「シリンダブロック」に相当し、以下同様に、「スリーブ」は「シリンダライナ」に、「異種金属の溶射層」は「金属材料の皮膜」に各々相当することから、引用文献2に記載された発明を本願補正発明2の用語を用いて表現すると
「シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されているシリンダライナ」となる。そして、皮膜に関して、本願補正発明2の明細書の段落【0062】、【0080】、【0128】、【表3】及び【表7】の実施例からすれば、皮膜はAl-Si合金の溶射層で0.5mm以下とすることで、密着性が向上する旨の記載、さらに、シリンダライナとシリンダブロックの熱伝導性を十分に確保するため及び剥離防止するために、皮膜の熱伝導率をシリンダブロックの熱伝導率以上としていること分かる。
一方、引用文献2に記載された発明においては、引用文献2の段落【0013】ないし【0015】、【表1】の記載からすれば、皮膜はAl-Si合金の溶射層で0.5mm以下とすることで、シリンダライナとシリンダブロックとの密着性が向上する旨の記載があり、高温に晒されても密着性が劣化しない旨の記載もあること、さらに引用文献1に記載された発明Aも引用文献2に記載された発明も共に、本願補正発明2と同様にシリンダブロックとシリンダライナとの密着性の確保に係る共通の技術であることから、引用文献1に記載された発明Aに引用文献2に記載された発明を適用して、相違点2に係る本願補正発明2のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。

しかも、本願補正発明2の作用効果も、引用文献1に記載された発明A及び引用文献2に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明2は、引用文献1に記載された発明A及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)-3 本願補正発明3について
相違点3について検討する。
本願補正発明3と引用文献3に記載された発明とを対比すると、引用文献3に記載された発明における「シリンダブロック1」は、その構成及び技術的意義から、本願補正発明3における「シリンダブロック」に相当し、以下同様に、「ライナ部材11」は「シリンダライナ」に、「突起15,21」は「突起」に、「溶融メッキ」は「金属皮膜」に、「上端部A」は「上端部」に、「中間部B」は「中間部」に、「下端部C」は「下端部」に各々相当することから、引用文献3に記載された発明を、本願補正発明3の用語を用いて表現すると、
「シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
当該シリンダライナの外周面上に複数の突起が形成されていること、
前記複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属皮膜が形成されていること、
前記シリンダライナの外周面かつ前記複数の突起が形成された部分において、シリンダライナ軸方向の上端部から中間部までの範囲に前記金属皮膜が形成されていること、ならびに、シリンダライナ軸方向の前記中間部から下端部までの範囲には前記金属皮膜が形成されていないシリンダライナ。」となる。
そして、本願補正発明3はその明細書の段落【0091】ないし【0093】に記載されるように、シリンダブロックとシリンダライナ高温部との密着性の低下を考慮していることが分かる。
一方、引用文献3に記載された発明においては、引用文献3に「シリンダブロック1とライナ部材11との結合力を維持しつつ、その変形を防止する」(第3ページ右上欄第15ないし17行)と記載されるように、本願補正発明3及び引用文献1に記載された発明Aと技術分野及び解決しようとする課題において軌を一にするものであって、引用文献1に記載された発明Aに引用文献2に記載された発明を適用する際に、皮膜と突起とを相違点3に係る本願補正発明3のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。

しかも、本願補正発明3の作用効果も、引用文献1に記載された発明A及び引用文献3に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明3は、引用文献1に記載された発明A及び引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由1]又は[理由2]によって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明1ないし3
平成23年9月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成22年12月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち請求項1ないし3に係る発明(以下、各々対応して「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、前記「第2.1.(1)本件補正前の特許請求の範囲」の請求項1ないし3に記載されたとおりのものである。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1ないし3、その記載事項及び引用文献に記載された発明は、前記「第2.[理由2] 2.-2 独立特許要件違反(1) 引用文献」に記載されたとおりである。

3.対比
3.-1 本願発明1
本願発明1と引用文献1に記載された発明Bとを対比すると、引用文献1に記載された発明Bにおける「シリンダブロック14」は、その構成及び技術的意義からみて本願発明1における「シリンダブロック」に相当し、以下同様に、「シリンダライナ10」は「シリンダライナ」に、「突起20」は「突起」に、「外方に向かって拡開するアンダーカット部18を有する突起」は「括れた形状の突起」に各々相当する。
よって、本願発明1と引用文献1に記載された発明Bとは、
「シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
括れた形状の突起が当該シリンダライナの外周面上に複数形成されるシリンダライナ。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点〉
本願発明1においては、この複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されるものであり、
この皮膜の熱伝導率が当該シリンダライナの熱伝導率以上の大きさであるのに対して、引用文献1に記載された発明Bにおいては、そのように特定されていない点(以下、「相違点1B」という。)。

3.-2 本願発明2
本願発明2と引用文献1に記載された発明Bとを対比すると、引用文献1に記載された発明Bにおける「シリンダブロック14」は、その構成及び技術的意義からみて本願発明2における「シリンダブロック」に相当し、以下同様に、「シリンダライナ10」は「シリンダライナ」に、「突起20」は「突起」に、「外方に向かって拡開するアンダーカット部18を有する突起」は「括れた形状の突起」に各々相当する。
よって、本願発明2と引用文献1に記載された発明Bとは、
「シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
括れた形状の突起が当該シリンダライナの外周面上に複数形成されるシリンダライナ。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点〉
本願発明2においては、この複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されるものであり、
この皮膜の熱伝導率が前記シリンダブロックの熱伝導率以上の大きさであるのに対して、引用文献1に記載された発明Bにおいては、そのように特定されていない点(以下、「相違点2B」という。)。

3.-3 本願発明3
本願発明3と引用文献1に記載された発明Bとを対比すると、引用文献1に記載された発明Bにおける「シリンダブロック14」は、その構成及び技術的意義からみて本願発明3における「シリンダブロック」に相当し、以下同様に、「シリンダライナ10」は「シリンダライナ」に、「突起20」は「突起」に、「外方に向かって拡開するアンダーカット部18を有する突起」は「括れた形状の突起」に各々相当する。
よって、本願発明3と引用文献1に記載された発明Bとは、
「シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
括れた形状の突起が当該シリンダライナの外周面上に複数形成されるシリンダライナ。」の点で、一致し以下の点で相違する。
〈相違点〉
本願発明3においては、この複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成され、前記シリンダライナの外周面かつ前記複数の突起が形成された部分において、シリンダライナ軸方向の上端部から中間部までの範囲に前記皮膜が形成され、前記シリンダライナの外周面かつ前記複数の突起が形成された部分において、シリンダライナ軸方向の前記中間部から下端部までの範囲には前記皮膜が形成されていないのに対して、引用文献1に記載された発明Bにおいては、そのように特定されていない点(以下、「相違点3B」という。)。

4.判断
4.-1 本願発明1について
相違点1Bについて検討する。
本願発明1と引用文献2に記載された発明とを対比すると、引用文献2に記載された発明における「エンジンケース」は、その構成及び技術的意義からみて本願発明1における「シリンダブロック」に相当し、以下同様に、「スリーブ」は「シリンダライナ」に、「異種金属の溶射層」は「金属材料の皮膜」に各々相当することから、引用文献2に記載された発明を本願発明1の用語を用いて表現すると
「シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されているシリンダライナ。」となる。そして、皮膜に関して、本願発明1の明細書の段落【0062】、【0080】、【0128】、【表3】及び【表7】の実施例からすれば、皮膜はAl-Si合金の溶射層で0.5mm以下とすることで、密着性が向上する旨の記載、さらに、シリンダライナとシリンダブロックの熱伝導性を十分に確保するため及び剥離防止するために、皮膜の熱伝導率をシリンダライナの熱伝導率以上としていることが分かる。
一方、引用文献2に記載された発明においては、引用文献2の段落【0013】ないし【0015】及び【表1】の記載からすれば、皮膜はAl-Si合金の溶射層で0.5mm以下とすることで、シリンダライナとシリンダブロックとの密着性が向上する旨の記載があり、高温に晒されても密着性が劣化しない旨の記載もあること、さらに引用文献1に記載された発明Bも引用文献2に記載された発明も共に、本願発明1と同様にシリンダブロックとシリンダライナとの密着性の確保に係る共通の技術であることから、引用文献1記載の発明Bに引用文献2に記載された発明を適用して、相違点1Bに係る本願発明1のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。

しかも、本願発明1の作用効果も、引用文献1に記載された発明B及び引用文献2に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明B及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.-2 本願発明2について
相違点2Bについて検討する。
本願発明2と引用文献2に記載された発明とを対比すると、引用文献2に記載された発明における「エンジンケース」は、その構成及び技術的意義からみて本願発明2における「シリンダブロック」に相当し、以下同様に、「スリーブ」は「シリンダライナ」に、「異種金属の溶射層」は「金属材料の皮膜」に各々相当することから、引用文献2に記載された発明を本願発明2の用語を用いて表現すると
「シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
シリンダライナの外周面上に金属材料の皮膜が形成されているシリンダライナ。」となる。そして、皮膜に関して、本願発明2の明細書の段落【0062】、【0080】、【0128】、【表3】及び【表7】の実施例からすれば、皮膜はAl-Si合金の溶射層で0.5mm以下とすることで、密着性が向上する旨の記載、さらに、シリンダライナとシリンダブロックの熱伝導性を十分に確保するため及び剥離防止するために、皮膜の熱伝導率をシリンダブロックの熱伝導率以上としていることが分かる。
一方、引用文献2に記載された発明においては、引用文献2の段落【0013】ないし【0015】及び【表1】の記載からすれば、皮膜はAl-Si合金の溶射層で0.5mm以下とすることで、シリンダライナとシリンダブロックとの密着性が向上する旨の記載があり、高温に晒されても密着性が劣化しない旨の記載もあること、さらに引用文献1に記載された発明Bも引用文献2に記載された発明も共に、本願発明2と同様にシリンダブロックとシリンダライナとの密着性の確保に係る共通の技術であることから、引用文献1記載の発明Bに引用文献2に記載された発明を適用して、相違点2に係る本願発明2のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。

しかも、本願発明2の作用効果も、引用文献1に記載された発明B及び引用文献2に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明2は、引用文献1に記載された発明B及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.-3 本願発明3について
本願補明3と引用文献3に記載され発明とを対比すると、引用文献3に記載された発明における「シリンダブロック1」は、その構成及び技術的意義から、本願発明3における「シリンダブロック」に相当し、以下同様に、「ライナ部材11」は「シリンダライナ」に、「突起15,21」は「突起」に、「溶融メッキ」は「金属皮膜」に、「上端部A」は「上端部」に、「中間部B」は「中間部」に、「下端部C」は「下端部」に各々相当することから、引用文献3に記載された発明を、本願発明3の用語を用いて表現すると、
「シリンダブロックに適用される鋳ぐるみ用のシリンダライナにおいて、
当該シリンダライナの外周面上に複数の突起が形成されていること、
前記複数の突起の表面及び当該シリンダライナの外周面上に金属皮膜が形成されていること、
前記シリンダライナの外周面かつ前記複数の突起が形成された部分において、シリンダライナ軸方向の上端部から中間部までの範囲に前記金属メッキが形成されていること、ならびに、シリンダライナ軸方向の前記中間部から下端部までの範囲には前記金属皮膜が形成されていないシリンダライナ。」となる。そして、本願発明3はその明細書の段落【0091】ないし【0093】に記載されるように、シリンダブロックとシリンダライナ高温部との密着性の低下を考慮していることが分かる。
一方、引用文献3に記載された発明においては、引用文献3に「シリンダブロック1とライナ部材11との結合力を維持しつつ、その変形を防止する」(第3ページ右上欄第15ないし17行)と記載されるように、本願発明3及び引用文献1に記載された発明Bと技術分野及び解決しようとする課題において軌を一にするものであって、引用文献1に記載された発明Bに引用文献3に記載された発明を適用する際に、皮膜と突起とを相違点3に係る発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。

しかも、本願発明3の作用効果も、引用文献1に記載された発明B及び引用文献3に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、引用文献1に記載された発明B及び引用文献2に記載された発明に基づいて、また、本願発明3は引用文献1に記載された発明B及び引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-23 
結審通知日 2012-08-28 
審決日 2012-09-11 
出願番号 特願2005-200998(P2005-200998)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02F)
P 1 8・ 57- Z (F02F)
P 1 8・ 575- Z (F02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二之湯 正俊山中 なお  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 中川 隆司
金澤 俊郎
発明の名称 シリンダライナ及びエンジン  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  
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