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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1265092 |
審判番号 | 不服2011-25354 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-11-24 |
確定日 | 2012-10-25 |
事件の表示 | 特願2004-306054「露光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月11日出願公開、特開2006-120798〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成16年(2004年)10月20日の出願(特願2004-306054号)であって、平成22年12月27日付けで拒絶理由が通知され、平成23年3月7日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年8月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願の請求項1に係る発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年3月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおり次のように特定されるものである。 「原版のパターンを基板に投影する投影光学系に対して前記原版と前記基板を走査移動することにより前記原版のパターンを前記基板に露光する走査露光方式の露光装置において、 前記原版の面と共役な面に設けられ、前記原版のための遮光手段を構成する板状部材と、 固定子に対し可動子を動かすことにより前記板状部材を移動させる駆動手段と、 前記板状部材が移動したときに前記固定子が移動してカウンタとして機能するように前記固定子を非接触状態で支持する手段と、を有することを特徴とする露光装置。」 第3 引用例 1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-353108号公報(以下「引用例1」という。)には図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は当審において付した。) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、半導体集積回路、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド、その他のマイクロデバイス、又はフォトマスク等をフォトリソグラフィ技術を用いて製造する際に使用される露光方法及び露光装置、該露光方法を用いて製造されたフォトマスク、該フォトマスクを用いるデバイス製造方法、並びに該露光装置を用いるフォトマスク製造方法に関する。」 「【0020】2.本発明の第2の観点によると、マスク(Ri)と感応物体(4)とを第1方向(Y方向)に沿って同期移動しつつスリット状のエネルギービーム(IL)を照射して該マスクに形成されたパターンの像を該感応物体上に逐次転写するようにした露光装置であって、前記エネルギービームに対して前記第1方向(Y方向)に進退可能な遮光部材(111Y1、111Y2)を有するブラインド装置(110)と、前記エネルギービームの照射開始直後の所定期間及び照射終了直前の所定期間のうちの少なくとも一方の期間中に、前記感応物体上の積算エネルギー分布が傾斜的となるように、前記ブラインド装置の前記遮光部材の移動を制御する制御装置(9)とを備えた露光装置が提供される(請求項9参照)。」 「【0042】レチクルブラインド機構110は、4枚の可動式のブラインド(遮光板)111(111X1,111X2,111Y1,111Y2)及びその駆動機構を備えて構成されている。図3に示されているように、ブラインド111X1,111X2は、X方向ブラインドガイド131Xに沿ってX方向に移動できるようにそれぞれ支持されている。これらのブラインド111X1,111X2は、主制御系9の制御の下、駆動機能(例えばリニアモータなど)132Xによりそれぞれ独立的に駆動されるようになっており、主制御系9の制御の下、X方向の任意の位置に位置決めできるようになっている。また、ブラインド111X1,111X2は、その姿勢の微調整もできるようになっている。 【0043】ブラインド111Y1,111Y2は、Y方向ブラインドガイド131Yに沿ってY方向に移動できるようにそれぞれ支持されている。尚、本実施形態ではブラインド111Y1,111Y2の移動量が大きいため、ブラインド111Y1,111Y2がY方向ブラインドガイド131Yに沿って大きく移動可能となるように構成されている。これらのブラインド111Y1,111Y2は、主制御系9の制御の下、駆動機構(例えばリニアモータなど)132Y,132Yによりそれぞれ独立的に駆動されるようになっており、Y方向の任意の位置に位置決めできるようになっている。また、ブラインド111Y1,111Y2は、その姿勢の微調整もできるようになっている。加えて、ブラインド111Y1,111Y2は、互いの相対位置関係を保った状態で後述するレチクルRi、濃度フィルタFj及び基板4のスキャン動作に同期してY方向に移動できるようになって いる。 【0044】ブラインド111Y1,111Y2を駆動する駆動機構132Y,132Yは、相互に独立して設けられており、姿勢調整、位置決め、移動はそれぞれ独立して行うことができるようになっている。これらの駆動機構132Y,132Yとしては、姿勢や位置の調整を精密に行うための微動機構(ボイスコイルモータ又はEIコアなど)及び高速移動を実現する粗動機構(リニアモータなど)を組み合わせたものを採用することが望ましい。」 「【0048】図2に示されているように、レチクルブラインド機構110のブラインド111、濃度フィルタFjの減光部123を構成するドットパターン(詳細後述)が形成された面、及び固定スリット板SBは、後述するレチクルRiのパターン形成面と共役な面PL1の近傍に配置されている。なお、レチクルブラインド機構110のブラインド111の少なくとも一部、例えば前述の走査方向(Y方向)に関する照明領域(及び投影領域)の幅を制限するブラインド111Y1,111Y2をその共役面PL1に配置してもよい。ここで、濃度フィルタFj及び固定スリット板SBは、レチクル共役面PL1から僅かにデフォーカスするように積極的に設定されている。」 「【0139】ところで、上述した実施形態では、重ね継ぎ部における露光量分布を傾斜的に変化させるために、ブラインド111Y1,111Y2を別々に独立して移動させていたが、予めブラインド111Y1とブラインド11Y2とのY方向の間隔を調整しておき、レチクルRi及び基板4の移動に同期させてブラインド111X1,111Y2を一体として移動させてもよい。このように移動させることにより、レチクルRi及び基板4の移動に対する同期精度を向上させることができるとともに、レチクルブラインド機構110の振動を低減することができるため、重ね継ぎ精度を向上させる上で好適である。」 「【0173】尚、基板ステージ6、レチクルステージ2、フィルタステージFj、及びブラインド111の駆動装置としては、例えばリニアモータを採用することができ、そのようなリニアモータを採用した場合におけるステージ(可動部)の支持機構としては、エアベアリングを用いたエア浮上型、又はローレンツ力やリアクタンス力を用いた磁気浮上型のものを採用することができる。また、ステージは、図3に示したようなガイド131X、131Yに沿って移動するタイプでもよいし、そのようなガイドを設けないガイドレスタイプでもよい。 【0174】リニアモータは、ベース部材に固定される固定子(ステータ)と、そのベース部材に対して移動するステージに固定される可動子(スライダ)とからなり、固定子がコイルを含むときは、可動子は磁石等の発磁体を含み、固定子が発磁体を含むときは、可動子はコイルを含む。尚、発磁体が可動子に含まれ、コイルが固定子に含まれているものをムービング・マグネット型のリニアモータといい、コイルが可動子に含まれ、発磁体が固定子に含まれるものをムービング・コイル型のリニアモータという。 【0175】かかるステージの移動に伴う反力により露光装置本体に発生する振動を防止するためには、例えば、電気制御式のリアクションフレーム機構(アクティブ型)を採用することができる。このリアクションフレーム機構は、リニアモータの固定子をもベース部材上にエアベアリング等の非接触手段によって浮かせた構造とする。そして、露光装置本体とは別に設けられたリアクション架台と該固定子との間を、制御装置による制御に基づき電気制御可能なボイスコイルモータ等のアクチュエータを備えたリアクションフレームで連結し、ステージの駆動に応じて、該アクチュエータの作動を制御して、固定子に作用する反力Fを相殺するような力-Fを作用させることにより、該反力をリアクション架台を介して床面(大地)に逃がすようにした機構である。尚、リニアモータの固定子とリアクション架台との間をリアクションフレーム(剛体棒)で単に連結する機械式のリアクションフレーム機構(パッシブ型)を採用することもできる。 【0176】また、ステージの移動時に該ステージを含む可動部全体の質量と実質的に同じ物体を逆方向に同じ加速度で移動するように構成して、互いの反力を相殺するようにしたものを採用してもよい。 【0177】フィルタステージFS、ブラインド111及び固定スリット板SBを含む部分は、ミラー112からレンズ116までの光学部品等を支持する構造体やレチクルステージ2、投影光学系3及び基板ステージ2等を支持する構造体とは別の構造体に支持することが望ましい。これらの移動に伴う反力による影響をなるべく少なくするためである。なお、照明光学系1内で最もレチクル側に配置される可動部(図1ではフィルタステージFS)まではその別の構造体に設け、それよりもレチクル側に配置される光学要素は、例えば投影光学系3などを支持する構造体に設けてもよい。」 「【図1】 」 「【図3】 」 2 引用例1に記載された発明の認定 上記記載(図面の記載も含む)を総合すれば、引用例1には、 「マスク(Ri)と感応物体(4)とを走査方向(Y方向)に沿って同期移動しつつスリット状のエネルギービーム(IL)を照射して該マスク(Ri)に形成されたパターンの像を該感応物体(4)上に逐次転写するようにした露光装置であって、 前記エネルギービームに対して前記走査方向(Y方向)に進退可能なブラインド(111Y1,111Y2)を有するブラインド装置(110)を備え、 ブラインド装置(110)の、前述の走査方向(Y方向)に関する照明領域(及び投影領域)の幅を制限するブラインド(111Y1,111Y2)をマスク(Ri)のパターン形成面と共役な面(PL1)に配置し、 これらのブラインド(111Y1,111Y2)は、リニアモータによりそれぞれ独立的に駆動されるようになっており、 リニアモータは、ベース部材に固定される固定子と、そのベース部材に対して移動するステージに固定される可動子とからなる露光装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 第4 本願発明と引用発明の対比 1 ここで、本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「マスク(Ri)に形成されたパターン」及び「感応物体(4)」が、それぞれ、本願発明の「原版のパターン」及び「基板」に相当し、引用発明の「マスク(Ri)と感応物体(4)とを走査方向(Y方向)に沿って同期移動しつつスリット状のエネルギービーム(IL)を照射して該マスク(Ri)に形成されたパターンの像を該感応物体(4)上に逐次転写するようにした露光装置」が、本願発明の「原版のパターンを基板に投影する投影光学系に対して前記原版と前記基板を走査移動することにより前記原版のパターンを前記基板に露光する走査露光方式の露光装置」に相当する。 (2)引用発明の「前記エネルギービームに対して前記走査方向(Y方向)に進退可能なブラインド(111Y1,111Y2)」であって「前述の走査方向(Y方向)に関する照明領域(及び投影領域)の幅を制限するブラインド(111Y1,111Y2)」が、本願発明の「前記原版のための遮光手段を構成する板状部材」に相当するから、引用発明の「マスク(Ri)のパターン形成面と共役な面(PL1)に配置し」た「ブラインド(111Y1,111Y2)」が、本願発明の「前記原版の面と共役な面に設けられ、前記原版のための遮光手段を構成する板状部材」に相当する。 (3)引用発明の「これらのブラインド(111Y1,111Y2)」を「それぞれ独立的に駆動する」「リニアモータ」であって、「ベース部材に固定される固定子と、そのベース部材に対して移動するステージに固定される可動子とからなる」「リニアモータ」が、本願発明の「固定子に対し可動子を動かすことにより前記板状部材を移動させる駆動手段」に相当する。 2 一致点 したがって、本願発明と引用発明とは、 「原版のパターンを基板に投影する投影光学系に対して前記原版と前記基板を走査移動することにより前記原版のパターンを前記基板に露光する走査露光方式の露光装置において、 前記原版の面と共役な面に設けられ、前記原版のための遮光手段を構成する板状部材と、 固定子に対し可動子を動かすことにより前記板状部材を移動させる駆動手段と、を有する露光装置。」の発明である点で一致し、次の点で相違する。 3 相違点 板状部材駆動手段(引用発明におけるリニアモータ)の固定子の支持手段の構成が、本願発明においては「板状部材が移動したときに固定子が移動してカウンタとして機能するように固定子を非接触状態で支持する手段」であるのに対し、引用発明においては、明確でない点。 第5 当審の判断 1 相違点の検討 引用例1の【0175】には「かかるステージの移動に伴う反力により露光装置本体に発生する振動を防止するためには、例えば、電気制御式のリアクションフレーム機構(アクティブ型)を採用することができる。このリアクションフレーム機構は、リニアモータの固定子をもベース部材上にエアベアリング等の非接触手段によって浮かせた構造とする。そして、露光装置本体とは別に設けられたリアクション架台と該固定子との間を、制御装置による制御に基づき電気制御可能なボイスコイルモータ等のアクチュエータを備えたリアクションフレームで連結し、ステージの駆動に応じて、該アクチュエータの作動を制御して、固定子に作用する反力Fを相殺するような力-Fを作用させることにより、該反力をリアクション架台を介して床面(大地)に逃がすようにした機構である。」と記載されており,引用例1には、基板ステージやレチクル(マスク)ステージ等のステージの駆動機構における固定子の支持構造を、ステージの移動に伴う反力により露光装置本体に発生する振動を防止するために、「(ステージが移動したときに)固定子が移動してカウンタとして機能するように固定子を非接触状態で支持する」ものとしたことが記載されている。 一方で、引用例1の【0139】には「上述した実施形態では、重ね継ぎ部における露光量分布を傾斜的に変化させるために、ブラインド111Y1,111Y2を別々に独立して移動させていたが、予めブラインド111Y1とブラインド111Y2とのY方向の間隔を調整しておき、レチクルRi及び基板4の移動に同期させてブラインド111X1,111Y2を一体として移動させてもよい。このように移動させることにより、レチクルRi及び基板4の移動に対する同期精度を向上させることができるとともに、レチクルブラインド機構110の振動を低減することができるため、重ね継ぎ精度を向上させる上で好適である。」と記載されており、レチクルブラインド機構(ブラインド装置)において、振動を低減する要請があることは、引用例1において技術課題として認識されていたといえる。 そうすると、引用発明において、ブラインド装置における技術課題である振動低減を目的として、振動を一層低減させるために、ブラインド装置の駆動機構の固定子の支持構造として、上記のステージにおける駆動機構の固定子の支持構造を適用することは、当業者が適宜なし得たことである。 2 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例1に記載された事項から当業者が予測し得る程度のものである。 3 まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び引用例1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 結言 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-08-08 |
結審通知日 | 2012-08-21 |
審決日 | 2012-09-06 |
出願番号 | 特願2004-306054(P2004-306054) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久保田 創 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
北川 清伸 川俣 洋史 |
発明の名称 | 露光装置 |
代理人 | 阿部 琢磨 |
代理人 | 黒岩 創吾 |