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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04Q
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1265274
審判番号 不服2010-27086  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-30 
確定日 2012-10-24 
事件の表示 特願2006-539914「異なる種類のアクセス技術ネットワーク全体に対するアプリケーションサーバ自律アクセスのためのシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月26日国際公開、WO2005/048081、平成19年 7月26日国内公表、特表2007-520917〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年11月12日(パリ条約に基づく優先権主張 2003年11月12日 米国、 2004年10月28日 米国)の出願であって、平成22年7月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成22年11月30日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。


第2.平成22年11月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年11月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正内容
本願については、平成21年11月30日付けの手続補正が、平成22年7月27日付けで既に却下されている。
本件補正は、補正前の特許請求の範囲(平成21年3月26日付けで補正)の請求項1:
「【請求項1】
少なくとも1つのWTRU(Wireless Transmit/Receive Unit:無線送受信ユニット)に無線通信サービスを提供する方法であって、該方法はサーバで実現され、
第1の種類の技術の第1のアクセスネットワークを経由して、WTRUへのIP(Internet Protocol:インターネットプロトコル)接続を確立することと、
前記WTRUへのIP接続を確立され得る、2またはそれ以上の種類の技術のアクセスネットワークのリストを保持することと、
モビリティポリシーを保持することと、
前記モビリティポリシーに基づいて、モビリティに関連した情報を前記WTRUに提供することと、
前記第1のアクセスネットワークから第2のアクセスネットワークへのWTRUの移行に応答して、前記第2のアクセスネットワークを経由した前記WTRUへのIP接続を確立することと
を含むことを特徴とする方法。」を、

「【請求項1】
少なくとも1つのネットワークノードで実現される無線通信サービスを提供する方法であって、
モビリティポリシーと、WTRU(Wireless Transmit/Receive Unit:無線送受信ユニット)に接続可能な複数のアクセスネットワークのリストとを保持することであって、前記複数のアクセスネットワークは第1のアクセス技術に基づく第1のアクセスネットワークと第2のアクセス技術に基づく第1のアクセスネットワークを含む、保持することと、
前記モビリティポリシーに基づいて、第2のアクセスネットワークに関連するモビリティに関連した情報を前記WTRUに提供することと、
インターネットプロトコル(IP)を使用して第1のアクセスネットワークを経由してWTRUと通信することと、
第1のアクセスネットワークから第2のアクセスネットワークへのWTRUの移行に応答して、前記IPを使用して前記第2のアクセスネットワークを経由した前記WTRUとの通信をすることと
を含むことを特徴とする方法。」

と補正することを含むものである。ただし、下線は当審が付した。
なお、補正後の「第2のアクセス技術に基づく第1のアクセスネットワーク」は「第2のアクセス技術に基づく第2のアクセスネットワーク」の誤記と認められる。

すなわち、本件補正は、請求項1において、

a.「該方法はサーバで実現され、」を削除し、

b.「無線通信サービス」を、「ネットワークノードで実現される無線通信サービス」と補正し、

c.「モビリティに関連した情報」を「第2のアクセスネットワークに関連するモビリティに関連した情報」と補正することを含むものである。


2.補正の目的
上記補正事項a.は、「発明の方法がサーバで実現される。」という内容を削除するものであるから、特許請求の範囲の拡張を目的としたものである。
上記補正事項b.は、発明特定事項である「無線通信サービス」を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
上記補正事項c.は、発明特定事項である「モビリティに関連した情報」を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。

上記したように、補正事項a.は、特許請求の範囲の拡張を目的としたものであり、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでもないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

仮に、上記補正事項a.が、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるとして、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。


3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特表2003-522490号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。ただし、下線は当審が付した。

(a)段落番号【0003】-【0004】
「【0003】
多数の異なる無線アクセス技術は将来的に採用されるべく提案されており、それは、ユーザがいくらかの特定時間を要求とするようなアクセスのタイプに係るサービスについて適切なレベルを与えている。このユーザの要求は、通信セッションから通信セッション、又はシングル通信セッションの間において、変化する場合がある。ユーザに、シングル通信セッションの間、異なるタイプのアクセスを許容するために、異なる無線アクセス技術間のハンドオーバには価値がある場合がある。例えば、ユーザがビデオ会議リンクを要求すると、第3世代無線アクセス技術が使用される。これに反して、音声コールが要求された場合には、第2世代無線アクセス技術で十分であろう。将来における異種遺伝子型の移動体環境では、ユーザの遊動及び移動の双方がサポートされるべきである。従って、ユーザは異なる無線アクセス技術を用いて通信セッションを開始することができ、無線アクセス技術(遊動)間のローミングにわたるサービスの送出を行い得るべきである。更には、無線アクセス技術間のハンドオーバは、ユーザが通信セッション(移動)に積極的に従事している間、サポートされるべきである。そのようなハンドオーバの例は、第2世代公衆GSMネットワーク、第3世代公衆ワイドバンド符号分割多元接続(W-CDMA)ネットワーク、そして無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)間にある。
【0004】
本発明に従えば、移動体通信ネットワークの通信セッションを管理する移動局のハンドオーバを制御する方法であって、当該ネットワークは多数の無線アクセスドメインを含み、ハンドオーバの要求を示すトリガを受信し、前記ネットワークポリシに対する前記要求を満たす少なくとも1つの利用可能なハンドオーバをテストし、前記要求及び前記ネットワークポリシに従ってハンドオーバを制御する、ことを含む方法が提供される。」

(b)段落番号【0010】
「【0010】
ハンドオーバマネージャ10は、ハンドオーバポリシサーバ12からのネットワークポリシデータを受信する。シングルノード又は複数のノードの形式で実施されるハンドオーバマネージャ10の場合には、データはシグナリングメッセージの形式となり、ハンドオーバポリシサーバ12とハンドオーバマネージャ10間で送信される。割り当てられた処理環境にて実施されるハンドオーバマネージャ10の場合には、ネットワークポリシデータは、ハンドオーバポリシサーバ12とハンドオーバマネージャ10と間で送信されるハンドオーバポリシオブジェクトの形式となる。」

(c)段落番号【0012】-【0018】
「【0012】
ネットワークポリシは以下を含む。
【0013】
A)異なる無線アクセスドメイン間に引き渡すことでコールコストを最小限にし、適当であると判断されるときには、最小限の可能なコストドメインの通信を維持することを試みる。
【0014】
B)第3世代無線アクセスネットワークリソースの使用を最小限にする。このポリシは、そのようなリソースが不足しているときに特に効果的である。ハンドオーバは、使用時はいつでも第3世代ドメインから実行される。
【0015】
C)適当であると判断されるときには、高い品質の不使用リソースに引き渡すことでユーザの期待値を上回る。
【0016】
D)適当であると判断されるときはいつでも、コールを費用比率を操作する上で最良の獲得(earning)の無線アクセスドメインに引き渡すことにより、ネットワーク効率を最大化する。
【0017】
E)特定のタイプのユーザに優先度を与え、或いはそのようなユーザに引き渡すことでコールを行い、或いは高い品質のリソースへ優先的にコールを行い、そして、他のユーザに引き渡しを行い、或いはそのようなリソースより呼び出す(call away)。
【0018】
以上は、実行されるネットワークポリシの多くの異なるタイプの例である。そして、いくつかのポリシは、相互に排他的である(例えば、上記B及びC)ことは、高く評価され得る。しかしながら、ポリシサーバの中のそのようなポリシを実行することにより、及びポリシサーバにストアされているポリシにハンドオーバアルゴリズムのインターフェースを提供することにより、異なる内部ネットワークハンドオーバポリシは、異なる時間にて実行される。」

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「異なる無線アクセス技術間でハンドオーバする方法であって、そのようなハンドオーバの例は、第2世代公衆GSMネットワーク、第3世代公衆ワイドバンド符号分割多元接続(W-CDMA)ネットワーク、そして無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)間のハンドオーバであり、
ハンドオーバマネージャ10は、ハンドオーバポリシサーバ12からのネットワークポリシデータを受信し、
ネットワークポリシは以下のA)ないしE)を含み、
A)異なる無線アクセスドメイン間に引き渡すことでコールコストを最小限にし、適当であると判断されるときには、最小限の可能なコストドメインの通信を維持することを試みる。
B)第3世代無線アクセスネットワークリソースの使用を最小限にする。このポリシは、そのようなリソースが不足しているときに特に効果的である。ハンドオーバは、使用時はいつでも第3世代ドメインから実行される。
C)適当であると判断されるときには、高い品質の不使用リソースに引き渡すことでユーザの期待値を上回る。
D)適当であると判断されるときはいつでも、コールを費用比率を操作する上で最良の獲得(earning)の無線アクセスドメインに引き渡すことにより、ネットワーク効率を最大化する。
E)特定のタイプのユーザに優先度を与え、或いはそのようなユーザに引き渡すことでコールを行い、或いは高い品質のリソースへ優先的にコールを行い、そして、他のユーザに引き渡しを行い、或いはそのようなリソースより呼び出す(call away)。
以上のA)ないしE)は、実行されるネットワークポリシの多くの異なるタイプの例であり、そして、いくつかのポリシは、相互に排他的であり(例えば、上記B及びC)、
ポリシサーバの中のそのようなポリシを実行することにより、及びポリシサーバにストアされているポリシにハンドオーバアルゴリズムのインターフェースを提供することにより、
異なる無線アクセス技術間でハンドオーバする方法。」


4.本願補正発明と引用発明の一致点・相違点

引用発明の異なる無線アクセス技術間のハンドオーバは、ハンドオーバマネージャ10で実現されており、引用発明のハンドオーバマネージャ10はネットワークノードであり、引用発明の異なる無線アクセス技術間のハンドオーバは、無線通信サービスであるから、引用発明の異なる無線アクセス技術間でハンドオーバする方法と本願補正発明とは、「少なくとも1つのネットワークノードで実現される無線通信サービスを提供する方法」である点で一致している。

本願明細書に「モビリティポリシー」という用語は、記載されていない。その代わり、段落番号【0007】、【0023】及び【0026】に「ポリシー」という用語が記載されているので、本願補正発明の「モビリティポリシー」は、本願明細書の「ポリシー」を指すものと解される。しかし、本願明細書にも「ポリシー」の定義は記載されていないので、「ポリシー」及び「モビリティポリシー」の意味は、本願明細書の段落番号【0007】、【0023】及び【0026】の記載から推量されることになる。なお、以下の記載における下線は、当審が付したものである。

(A)本願明細書の段落番号【0007】に、
「ASAAサーバはまた、ポリシープロファイルに基づき、ユーザに適切に対応するネットワークに向けて呼およびプッシュ型サービスを経路指定する。これらのプロファイルには、例えば、位置、技術、ネットワーク能力、行動要素、および料金基準が含まれる。」と記載されている。

(B)本願明細書の段落番号【0023】に、
「ASAAサーバ83は、媒体装置に利用可能なサブネットワークの一覧表を維持するであろうし、かつセッションが生きている間、自律的に、またはASAAシステムプロンプトに続く何らかのユーザコマンドがあった際に、これらのサブネットワークに媒体装置をプッシュすることができる。このプッシュ動作はポリシー(policy)に基づく。一例として、サーバポリシーは、ユーザ位置、行動プロファイル、および最適な料金方式(tariffing)を含むことができる。」と記載されている。

(C)本願明細書の段落番号【0026】に、
「本ASAAシステムは、申込みユーザについての位置、サービス、および経路指定の情報をASAAサーバ83で統合する。これにより、共通的なIP準拠の方式を使用して、異なる技術のネットワーク間における継ぎ目のないモビリティの継ぎ目のない通信を提供することが可能となる。本システムは、ポリシープロファイルに基づき、適切な技術のネットワークに対して、呼およびプッシュ型サービスを経路指定する。本システムはまた、ユーザの位置および技術ネットワークの選択に基づき、柔軟な料金計画を支援する。」と記載されている。

上記摘記事項(C)に「異なる技術のネットワーク間における継ぎ目のないモビリティの継ぎ目のない通信」と記載されている。異なる技術のネットワーク間を媒体装置が移動する際に問題となるのは、移動先において媒体装置が使用するネットワークである。上記摘記事項(B)に「媒体装置に利用可能なサブネットワークの一覧表」と記載されているから、移動先において媒体装置が利用可能なサブネットワークは、一般に単数でなく複数であることが分かる。また、上記摘記事項(B)に「セッションが生きている間、自律的に、またはASAAシステムプロンプトに続く何らかのユーザコマンドがあった際に、これらのサブネットワークに媒体装置をプッシュすることができる。このプッシュ動作はポリシー(policy)に基づく。」と記載されているから、「ポリシー」は、「一覧表に記載されている複数の利用可能なサブネットワークの中から、どのサブネットワークを使用するかを決める際の指針となるもの。」であると解される。また、上記摘記事項(A)に、「これらのプロファイルには、例えば、位置、技術、ネットワーク能力、行動要素、および料金基準が含まれる。」と記載され、上記摘記事項(C)に、「本システムはまた、ユーザの位置および技術ネットワークの選択に基づき、柔軟な料金計画を支援する。」と記載されているから、「ポリシー」には、例えば「ユーザの位置、技術ネットワーク能力、行動要素、および料金基準」が含まれると解される。

以上をまとめれば、「モビリティポリシーとは、移動先において、一覧表に記載されている複数の利用可能なサブネットワークの中から、どのサブネットワークを使用するかを決める際の指針となるものであって、具体的には、例えば、ユーザの位置、技術ネットワーク能力、行動要素、および料金基準が含まれる。」といえる。

次に、引用発明の「ネットワークポリシ」について検討する。
引用発明のA)に「異なる無線アクセスドメイン間に引き渡すことでコールコストを最小限にし、」と記載されている。最小とは、複数のものの中で最も小さいという意味であるから、引き渡される先の無線アクセスドメインは複数であって、どの無線アクセスドメインに引き渡されるかによって、コールコストが異なるということが分かる。
引用発明のC)に「高い品質の不使用リソースに引き渡す」と記載されている。したがって、不使用リソースの品質には、種々のものがあり、高い品質の不使用リソースがあれば、低い品質の不使用リソースもあるということが分かる。
引用発明のD)に「コールを費用比率を操作する上で最良の獲得の無線アクセスドメインに引き渡す」と記載されている。最良とは、複数のものの中で最も良いという意味であるから、引き渡される可能性のある無線アクセスドメインは複数であり、このD)の場合は、引き渡される可能性のある複数の無線アクセスドメインの内、費用比率を操作する上で最も良い獲得の無線アクセスドメインにコールを引き渡すことが分かる。

以上の事項を考慮すれば、引用発明の「ネットワークポリシ」は、「移動無線端末を、移動先において、引き渡される可能性のある複数の無線アクセスドメインの内、どの無線アクセスドメインに引き渡すかを決める際の指針となるもの。」であるといえる。引用発明において、「引き渡される可能性のある複数の無線アクセスドメイン」が何であるかは、当然把握されているわけであるから、「引き渡される可能性のある複数の無線アクセスドメインの一覧表」が作成済みであるといえる。

してみると、引用発明の「ネットワークポリシ」は、上記した、本願補正発明の「モビリティポリシーとは、移動先において、一覧表に記載されている複数の利用可能なサブネットワークの中から、どのサブネットワークを使用するかを決める際の指針となるもの。」を満たしているから、本願補正発明の「モビリティポリシー」に相当するといえる。なお、本願補正発明において、「ユーザの位置、技術ネットワーク能力、行動要素、および料金基準」は、「モビリティポリシー」の例示であるから、引用発明に「ユーザの位置、技術ネットワーク能力、行動要素、および料金基準」のすべてが開示されていないということが、引用発明の「ネットワークポリシ」が、本願補正発明の「モビリティポリシー」に相当しないという理由にはならない。

引用発明において存在することが明らかな移動無線端末が、本願発明のWTRU(Wireless Transmit/Receive Unit:無線送受信ユニット)に相当する。そして、上記した、引用発明において存在することが明らかな「引き渡される可能性のある複数の無線アクセスドメインの一覧表」が、本願補正発明の「WTRU(Wireless Transmit/Receive Unit:無線送受信ユニット)に接続可能な複数のアクセスネットワークのリスト」に相当する。

引用発明は、異なる無線アクセス技術間でハンドオーバする方法であるから、引用発明の移動元の、ある無線アクセス技術の無線アクセスドメインが、本願補正発明の「第1のアクセス技術に基づく第1のアクセスネットワーク」に相当し、引用発明の移動先の、異なる無線アクセス技術の無線アクセスドメインが、本願補正発明の「第2のアクセス技術に基づく第2のアクセスネットワーク」に相当する。
そして、引用発明の移動元の、ある無線アクセス技術の無線アクセスドメインと、引用発明の移動先の、異なる無線アクセス技術の無線アクセスドメインとは、移動無線端末の近くの無線アクセスドメインであるから、引用発明において存在することが明らかな「引き渡される可能性のある複数の無線アクセスドメインの一覧表」に含まれていることも明らかである。

引用発明において、ハンドオーバ前は、移動無線端末が、ある無線アクセス技術の無線アクセスドメインを経由して通信していたことは明らかであるから、引用発明と本願補正発明とは、「第1のアクセスネットワークを経由してWTRUと通信する」点で一致している。
引用発明において、ハンドオーバ後は、移動無線端末が、異なる無線アクセス技術の無線アクセスドメインを経由して通信することは明らかであるから、引用発明と本願補正発明とは、「第1のアクセスネットワークから第2のアクセスネットワークへのWTRUの移行に応答して、前記第2のアクセスネットワークを経由した前記WTRUとの通信をする」点で一致している。

したがって、本願補正発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「少なくとも1つのネットワークノードで実現される無線通信サービスを提供する方法であって、
モビリティポリシーと、WTRU(Wireless Transmit/Receive Unit:無線送受信ユニット)に接続可能な複数のアクセスネットワークのリストとを保持することであって、前記複数のアクセスネットワークは第1のアクセス技術に基づく第1のアクセスネットワークと第2のアクセス技術に基づく第2のアクセスネットワークを含む、保持することと、
第1のアクセスネットワークを経由してWTRUと通信することと、
第1のアクセスネットワークから第2のアクセスネットワークへのWTRUの移行に応答して、前記第2のアクセスネットワークを経由した前記WTRUとの通信をすることと
を含むことを特徴とする方法。」である点。

[相違点1]
本願補正発明は、第1のアクセスネットワークを経由してWTRUと通信するに際し、インターネットプロトコル(IP)を使用しており、また前記第2のアクセスネットワークを経由して前記WTRUとの通信をするに際し、前記IPを使用するのに対して、引用発明では、第1のアクセスネットワークを経由してWTRUと通信するに際し、インターネットプロトコル(IP)を使用するのか否か不明であり、また前記第2のアクセスネットワークを経由して前記WTRUとの通信をするに際し、前記IPを使用するのか否か不明である点。

[相違点2]
本願補正発明では、前記モビリティポリシーに基づいて、第2のアクセスネットワークに関連するモビリティに関連した情報を前記WTRUに提供するのに対して、引用発明では、前記モビリティポリシーに基づいて、第2のアクセスネットワークに関連するモビリティに関連した情報を前記WTRUに提供するのか否か不明である点。


5.相違点についての検討

[相違点1について]
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2(国際公開第03/003639号)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。ただし、下線は当審が付した。

(d)段落番号[04]
[04] FIG. 1 shows a conventional mobile IP network that covers three service areas SA1, SA2, and SA3. For the sake of simplicity, only IP services are shown, although as explained above, separate transmission networks can be provided for voice services.
(当審訳:図1は、3つのサービス・エリアSA1、SA2、SA3をカバーする従来のモバイルIPネットワークを示している。上述のように音声サービス用に独立した伝送網を設けることができるが、簡単のため、IPサービスだけを図示してある。)

(e)段落番号[06]
[06] A second service area SA2 is served by a separate base station BS2, which is in turn connected to a different access router AR2. Due to the network topology, access routers AR1 and AR2 use different blocks of IP addresses for communicating with mobile terminals roaming within their associated service areas. If mobile terminal MT moves from service area SAl to service area SA2, some mechanism is needed to hand off the Internet connection from access router AR1 to access router AR2. Similarly, if service areas SAl and SA2 are separated by a large logical distance (e.g., AR1 and AR2 are connected to different ISPs), some coordination mechanism is needed to permit data transmitted to a terminal previously operating in service area SAl to be forwarded to service area SA2 if that terminal moves into area SA2.
(当審訳:第2のサービス・エリアSA2は、別の基地局BS2のサービスを受ける。この基地局BS2はさらに、異なるアクセス・ルータAR2に接続されている。このネットワークのトポロジーのため、アクセス・ルータAR1とAR2は、関係するサービス・エリアの内部を動き回っているモバイル端末と通信するのに、IPアドレスの異なるブロックを使用する。モバイル端末MTがサービス・エリアSA1からサービス・エリアSA2に移動するとき、インターネット接続をアクセス・ルータAR1からアクセス・ルータAR2にハンドオフするのに何らかのメカニズムが必要とされる。同様に、サービス・エリアSA1とSA2が大きな論理距離によって隔てられている場合(例えばアクセス・ルータAR1とAR2が異なるISPに接続されている場合)には、モバイル端末がサービス・エリアSA2に入ったとすると、サービス・エリアSA1で以前に動作していたモバイル端末に送信されたデータをサービス・エリアSA2に転送できるようにするのに何らかの調整メカニズムが必要とされる。)

上記摘記事項(d)、(e)は、従来技術に関するものであり、したがって、次の技術が周知技術であると認められる。

「3つのサービス・エリアSA1、SA2、SA3をカバーする従来のモバイルIPネットワークにおいて、
モバイル端末MTがサービス・エリアSA1からサービス・エリアSA2に移動するとき、インターネット接続をアクセス・ルータAR1からアクセス・ルータAR2にハンドオフする方法。」

上記周知技術は、同一の無線アクセス技術のサービス・エリア間でハンドオフするものであるが、引用発明と周知技術とは、移動無線端末が移動する際のハンドオーバーに関する技術である点で共通しているから、引用発明において、無線アクセスドメインを経由して移動無線端末と通信するに際し、移動元及び移動先の双方において、インターネットプロトコル(IP)を使用することにより、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

[相違点2について]
引用発明において、引き渡される可能性のある複数の無線アクセスドメインの内のどの無線アクセスドメインに引き渡されるかは、移動無線端末に当然知らせるべき事項であるから、引き渡される可能性のある複数の無線アクセスドメインの内のどの無線アクセスドメインに引き渡されるかの情報を、移動無線端末に提供することにより、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


6.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
平成22年11月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年3月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである。

1.刊行物及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び引用発明は、前記「第2.3.」に記載したとおりである。


2.対比・判断
本願発明は、前記「第2.」で検討した本願補正発明から補正事項b.及びc.の構成を省き、補正事項a.の構成を追加したものである。
引用発明の方法は、 ハンドオーバマネージャ10が、ハンドオーバポリシサーバ12からのネットワークポリシデータを受信して実行されるものであるが、ハンドオーバマネージャ10とハンドオーバポリシサーバ12とで一つの大きなサーバを構成していると見ることができ、その一つの大きなサーバが、ネットワークポリシデータを保持し、引き渡される可能性のある複数の無線アクセスドメインの一覧表を保持し、引用発明の方法を実行しているといえるので、引用発明の方法は、本願発明の前記補正事項a.を含むものである。
そうすると、本願発明も、前記「第2.5.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


3.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-23 
結審通知日 2012-05-29 
審決日 2012-06-12 
出願番号 特願2006-539914(P2006-539914)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H04Q)
P 1 8・ 575- Z (H04Q)
P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石原 由晴丹治 彰山中 実  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 吉村 博之
飯田 清司
発明の名称 異なる種類のアクセス技術ネットワーク全体に対するアプリケーションサーバ自律アクセスのためのシステム  
復代理人 濱中 淳宏  
復代理人 市原 政喜  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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