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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1265532
審判番号 不服2010-29631  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-28 
確定日 2012-10-31 
事件の表示 特願2003-587542号「改善された分離」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 6日国際公開、WO03/90924、平成18年 3月16日国内公表、特表2006-508703号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成15年4月4日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2002年4月25日(SE)スウェーデン国)を国際出願日とする出願であって、平成22年8月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年12月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

II.平成22年12月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年12月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「以下の:
(1)ハウジング;
(2)入り口;
(3)出口;及び
(4)少なくとも1つの分離マトリックス(5a、5b、…)
を含む、体液から少なくとも1つの成分を選択的に結合させ、且つ除去するための装置であって、ここで、前記マトリックスは、そこを前記体液を通過させるために硬質且つ一体型であり、前記マトリックスは、5ミクロン?500ミクロンの範囲の孔サイズ、及び前記少なくとも1つの成分を結合可能な0.04m^(2)?10m^(2)の範囲の活性表面を有する、骨格のような多孔質構造を有し、但し、該多孔質構造は、前記装置に平行に配置された複数の流路を有するものではなく、さらにここで、前記分離マトリックスは焼結、型成形、又は発泡法からなる群から選ばれる方法によって得られる、前記装置。」(なお、下線は補正箇所を示すものである。)

2.補正の目的及び新規事項の追加の有無
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「骨格のような多孔質構造」の「0.5cm^(2)?10m^(2)の範囲の活性表面を有する」という限定事項を「0.04m^(2)?10m^(2)の範囲の活性表面を有する」と補正して、その数値限定の範囲をさらに限定し、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「骨格のような多孔質構造」に、「但し、該多孔質構造は、前記装置に平行に配置された複数の流路を有するものではなく」との限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。
なお、平成22年8月4日付け手続補正は却下された。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用刊行物の記載事項
(刊行物1)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-76004号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【発明の属する技術分野】本発明は、全血や血漿等の体液中の悪性物質を被吸着物として吸着除去するための体液処理用吸着材及び体液処理用吸着器に関する。」(段落【0001】)

(イ)「【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記に鑑み、優れた吸着容量と吸着速度とを有し、体外循環法に使用することができる体液処理用吸着材及び体液処理用吸着器を提供することを目的とするものである。」(段落【0009】)

(ウ)「【課題を解決するための手段】本発明は、体液を流すための独立した複数の貫通した流路を有する多孔質体からなる体液処理用吸着材であって、上記多孔質体は、被吸着物に親和性を有する物質、及び、被吸着物に親和性を有する物質を固定化してなる物質のうち少なくとも1つからなるものである体液処理用吸着材である。また、本発明は、体液が流入する入口及び体液が流出する出口を有する容器と、上記体液処理用吸着材とからなる体液処理用吸着器であって、上記体液処理用吸着材の流路の両端が、上記容器の入口及び出口に繋がっている体液処理用吸着器である。以下に本発明を詳述する。」(段落【0010】)

(エ)「本発明の体液処理用吸着材は、体液を流すための独立した複数の貫通した流路を有する多孔質体からなる。上記多孔質体は、被吸着物に親和性を有する物質、及び、被吸着物に親和性を有する物質を固定化してなる物質のうち少なくとも1つからなる。本明細書中、上記被吸着物とは、体液中に存在する悪性物質等の不要成分を意味し、例えば、血液中のビリルビン、クレアチニン、アミノ酸、その他の中分子量の物質、低分子量の物質、薬毒物、低比重リポ蛋白質、免疫複合体等を挙げることができる。」(段落【0011】)

(オ)「上記被吸着物に親和性を有する物質からなる多孔質体としては特に限定されず、例えば、ガラス、シリカゲル、活性炭等の無機物からなるもの;ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等の疎水性のもの;ポリアクリル酸等のイオン交換能を有するもの;疎水性モノマーと親水性モノマーとからなるランダム共重合体又はブロック共重合体等の合成高分子化合物からなるもの等を挙げることができる。これらは、単一の成分からなるものであってもよく、2種以上の成分からなるものであってもよい。・・・」(段落【0012】)

(カ)「上記多孔質体を形成することができる物質としては特に限定されず、例えば、ガラス、シリカゲル、活性炭等の無機物;架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリスチレン等の合成高分子化合物;結晶性セルロース、架橋セルロース、架橋アガロース、架橋デキストリン等の多糖類等の有機物等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。」(段落【0018】)

(キ)「本発明においては、上記多孔質体を形成することができる物質として例示されたもののうち、機械的強度が比較的大きく強靱であり、また、親水性であり、被吸着物に親和性を有する物質との結合に利用することができる水酸基が多数存在し、非特異吸着が少なく、血液適合性が合成高分子に比べて高い等の利点を有しているので、セルロース及びセルロース誘導体が好ましい。」(段落【0021】)

(ク)「上記被吸着物に親和性を有する物質を上記多孔質体を形成することができる物質に固定する方法としては特に限定されず、例えば、共有結合、イオン結合、物理吸着、包埋、多孔質体表面への沈殿不溶化等の公知の方法を挙げることができる。固定する被吸着物に親和性を有する物質の溶出性を考慮すると、共有結合が好ましい。上記共有結合において、多孔質体を形成することができる物質を予め活性化することにより、被吸着物に親和性を有する物質を固定することができる。
上記活性化の方法としては特に限定されず、例えば、エポキシド法、ハロゲン化シアン法、過ヨウ素酸法、架橋試薬法等を挙げることができる。上記活性化の方法は、使用する上記被吸着物に親和性を有する物質の種類に応じて選択することができる。
本発明においては、上記被吸着物に親和性を有する物質を固定する際に、必要に応じて、スペーサーを上記被吸着物に親和性を有する物質と上記多孔質体を形成することができる物質との間に導入していてもよい。上記スペーサーとしては特に限定されず、例えば、ポリアルキレンオキサイド、デキストラン等を挙げることができる。
上記固定は、多孔質体を成形した後に行ってもよく、上記多孔質体を形成することができる物質を活性化した後、多孔質体を成形する前に行ってもよい。
上記多孔質体の孔径は、被吸着物の大きさ、形状により自由に選択することができるが、通常0.005?2μmが好ましい。0.005μm未満であると、被吸着物が多孔質体の内部に入り込めないため吸着性能が低下し、2μmを超えると、多孔質体に被吸着物を吸着することができる場所が少なくなって、単位体積当たりの吸着量が減少してしまう。上記多孔質体の孔径は、BET式表面積測定装置、水銀圧入法、SEM観察等の上記多孔質体の性質に応じた測定方法を用いることにより測定することができる。
上記多孔質体は、体液が接触する部分の孔径を上述の範囲としているので、被吸着物が入り込むのに充分な大きさを有しており、中分子量物質や低分子量物質だけでなく、低比重リポ蛋白質や免疫複合体等の高分子量物質も吸着することができる。」(段落【0022】?【0027】)

(ケ)「上記多孔質体は、体液を流すための独立した複数の貫通した流路を有している。上記独立した複数の流路は、上記多孔質体内を貫通していればよく、配置も特に限定されない。上記独立した複数の流路は、体液中の不要成分の吸着効率を高めるために、互いに平行に配置されていることが好ましい。・・・」(段落【0029】)

(コ)「上記独立した複数の流路の径は、断面形状が円形である場合、直径20?500μmが好ましい。20μm未満であると、吸着速度の点では、体液と接触する流路の面積が大きくなって好ましいが、通液時の圧損が上昇したり、体液中に含まれる各種の蛋白質が流路内に付着したり、凝固したりするため、目詰まりが起こりやすくなる。目詰まりが生じると、体液として全血を流した場合には、赤血球の破壊である溶血が起こりやすくなってしまう。」(段落【0034】)

(サ)「500μmを超えると、通液時の圧損は低くなり、目詰まりも生じないが、体液と接触する流路の面積が小さくなるため、吸着速度が低下する。・・・」(段落【0035】)

(シ)「【発明の実施の形態】本発明の体液処理用吸着材の一実施形態を図1に示す。体液処理用吸着材aは、体液を流すための複数の流路2を有した多孔質体1からなるものである。上記流路2は、図1中の破線で示すように、多孔質体1の内部を貫通するように設けられている。」(段落【0045】)

(ス)「本発明の体液処理用吸着器の一実施形態を図2に示す。体液処理用吸着器bは、体液処理用吸着材aの流路の両端が、容器3の体液の入口4及び出口5に繋がるように接合されている。上記体液処理用吸着器bは、導入された体液を効率よく体液処理用吸着材aに流すためのポート部6と呼ばれる体液の入口4及び出口5付近の空間を有している。」(段落【0046】)

(セ)「【発明の効果】本発明の体液処理用吸着材及び体液処理用吸着器は上述の構成よりなるので、体液から不要成分である被吸着物を効率よく吸着除去することができ、特に全血中の不要成分を吸着除去する体外循環法に好適に使用することができる。」(段落【0047】)

(ソ)「【図1】本発明の体液処理用吸着材の一実施形態を表す概念図である。図中、破線は、流路が貫通していることを示す。
【図2】本発明の体液処理用吸着器の一実施形態を表す概念図である。図中、矢印は、体液の流れる方向を示す。」(【図面の簡単な説明】)

【図1】、【図2】には、それぞれ以下の事項が示されている。

(タ)「多孔質体が、貫通した流路を有するとともに一体型に構成された」点(【図1】)

(チ)「体液処理用吸着器が、容器と、体液入口と、体液出口と、多孔質体と含む」点(【図2】)

以上の記載事項及び図面の記載からみて、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
「容器、体液入口、体液出口、多孔質体を含む、体液から被吸着物を吸着除去するための体液処理用吸着器であって、多孔質体は、そこを体液を通過させるために一体型であり、多孔質体は、直径20ミクロン?500ミクロンの範囲の貫通した流路を有し、被吸着物に親和性を有する物質を固定した多孔質構造を有する、体液処理用吸着器。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「容器」は、本願補正発明の「ハウジング」に相当し、以下同様に、「体液入口」は「入り口」に、「体液出口」は「出口」に、「多孔質体」は「少なくとも1つの分離マトリックス」に、「体液から被吸着物を吸着除去するための体液処理用吸着器」は「体液から少なくとも1つの成分を選択的に結合させ、且つ除去するための装置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「被吸着物に親和性を有する物質を固定した」ことは、本願補正発明の「活性表面を有する」ことに相当する。
また、引用発明の「貫通した流路」は、そこを体液成分が通過するものであり、その内部でも被吸着物が流路面に吸着されることは明らかであり、また、「貫通した流路」も「孔」に包含されるものであることは明らかである。
さらに、引用発明の「直径20ミクロン?500ミクロンの貫通した流路」と、本願補正発明の「5ミクロン?500ミクロンの範囲の孔サイズ」とは、上記「貫通した流路」と「孔」との構成や機能、その寸法範囲から、「20ミクロン?500ミクロンの範囲の孔サイズ」という限りにおいて一致する。

そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「ハウジング;入り口;出口;及び少なくとも1つの分離マトリックスを含む、体液から少なくとも1つの成分を選択的に結合させ、且つ除去するための装置であって、前記マトリックスは、そこを前記体液を通過させるために一体型であり、前記マトリックスは、20ミクロン?500ミクロンの範囲の孔サイズ、及び前記少なくとも1つの成分を結合可能な活性表面を有する、多孔質構造を有する、前記装置。」

そして、両者は次の相違点1?3で相違する。
(相違点1)
本願補正発明は、マトリックスが硬質であるのに対し、引用発明の多孔質体は硬質か否か不明である点。

(相違点2)
活性表面が、本願補正発明は、0.04m^(2)?10m^(2)の範囲であるのに対し、引用発明はその面積が不明である点。

(相違点3)
孔サイズが、本願補正発明は、「5ミクロン?500ミクロンの範囲」であるのに対し、引用発明は、「20ミクロン?500ミクロンの範囲」である点。

(相違点4)
マトリックスが、本願補正発明は、「骨格のような多孔質構造を有し、但し、該多孔質構造は、前記装置に平行に配置された複数の流路を有するものではない」という構造を有するのに対し、引用発明は、多孔質の構造を有する多孔質体が、「骨格のような多孔質構造を有し、但し、該多孔質構造は、前記装置に平行に配置された複数の流路を有するものではない」ものか否か不明である点。

(相違点5)
本願補正発明は、マトリックスが、「焼結、型成形、又は発泡法からなる群から選ばれる方法によって得られる」ものであるのに対し、引用発明は、多孔質体がどのような製法で得られるものか特定されていない点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
刊行物1にも、多孔質体が機械的強度が比較的大きく強靱である材料を採用することが記載されている点を考慮すると(上記(キ)参照)、マトリックスに必要な強度を与えるため、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
引用発明も多孔質体表面に被吸着物を吸着させて除去するものであり、その表面に活性表面を有することは明らかであり、また、その表面積を本願補正発明の数値限定の範囲である「0.04m^(2)?10m^(2)の範囲」としたことに格別顕著な作用効果の差異が存在するとも認められず、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点3について)
引用発明の孔サイズは「20ミクロン?500ミクロンの範囲」であり、本願補正発明の孔サイズである「5ミクロン?500ミクロンの範囲」に包含されるものである。そして、孔サイズを本願補正発明の数値限定の範囲である「5ミクロン?500ミクロンの範囲」としたことに格別顕著な作用効果の差異が存在するとも認められず、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点4について)
骨格が多孔質構造であることは自明であり、引用発明の多孔質体も、当然多孔質であり、その多孔質構造をどのような構造とするかは、多孔質体の製法や、所望の孔の大きさ等を考慮して当業者が適宜選択する設計的事項にすぎず、また、本願補正発明が、その多孔質構造を「骨格のような多孔質構造」に限定した点に格別顕著な作用効果は認められない。
また、引用発明も、上記(ケ)の記載から「装置に平行に配置された複数の流路」以外の流路を有することも想定しているところ、本願補正発明も、そのマトリックスに全血などの体液を通過させるものであるから、血球等の細胞が通過するための貫通孔を有するものであって、そのような貫通孔を「装置に平行に配置された複数の流路」とせずに、相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。また「多孔質構造は、装置に平行に配置された複数の流路を有するものではない」という点に格別顕著な作用効果は認められない。

(相違点5について)
引用発明のような体液処理に用いる多孔質体を、焼結、型成形、発泡から形成することは周知の技術的事項にすぎず(例えば、特開平11-313887号公報 段落【0007】、特開昭57-14357号公報 第3頁左上欄第2?9行、特開2001-276212号公報 段落【0017】等参照)、相違点5に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、引用発明の多孔質体の成形に、上記周知の技術的事項を適用して当業者が容易に想到し得たことである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成22年1月13日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「以下の:
(1)ハウジング;
(2)入り口;
(3)出口;及び
(4)少なくとも1つの分離マトリックス(5a、5b、…)
を含む、体液から少なくとも1つの成分を選択的に結合させ、且つ除去するための装置であって、ここで、前記マトリックスは、そこを前記体液を通過させるために硬質且つ一体型であり、前記マトリックスは、5ミクロン?500ミクロンの範囲の孔サイズ、及び前記少なくとも1つの成分を結合可能な0.5cm^(2)?10m^(2)の範囲の活性表面を有する、骨格のような多孔質構造を有し、さらにここで、前記分離マトリックスは焼結、型成形、又は発泡法からなる群から選ばれる方法によって得られる、前記装置。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「骨格のような多孔質構造」の限定事項である「0.04m^(2)?10m^(2)の範囲の活性表面を有する」という数値限定の範囲を拡張した「0.5cm^(2)?10m^(2)」とし、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「骨格のような多孔質構造」の限定事項である「但し、該多孔質構造は、前記装置に平行に配置された複数の流路を有するものではなく」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3に記載したとおり、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2?9に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-31 
結審通知日 2012-06-05 
審決日 2012-06-18 
出願番号 特願2003-587542(P2003-587542)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
P 1 8・ 575- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 龍平  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 松下 聡
田合 弘幸
発明の名称 改善された分離  
代理人 石田 敬  
代理人 青木 篤  
代理人 武居 良太郎  
代理人 福本 積  
代理人 古賀 哲次  
代理人 中島 勝  
代理人 渡辺 陽一  

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