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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B23Q
管理番号 1265694
審判番号 不服2012-1234  
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-23 
確定日 2012-11-08 
事件の表示 特願2006-231487「ワーク移載装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月13日出願公開、特開2008- 55515〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成18年8月29日の特許出願であって、同23年5月13日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同23年7月22日に意見書とともに特許請求の範囲及び明細書について手続補正書が提出されたが、同23年10月17日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同24年1月23日に本件審判の請求がされるとともに特許請求の範囲について再度手続補正書が提出されたものである。
その後、当審の平成24年3月16日付け審尋に対して、同24年5月28日付けで回答が提出されている。


第2 平成24年1月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年1月23日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容の概要
平成24年1月23日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(1)補正前
「鋳造によって成型されたワークの入れ替え用移載装置であって、走行台車と、この台車に保持されたワーク把持ハンドとを備えた装置において、前記把持ハンドは2軸リンク構成の垂直多関節機構方式であって、独立して2台持たせ、一方のハンドで図示しない加工装置に配置された加工完了ワークを取り出して走行台車を移動させ、他方のハンドに把持している未加工ワークを加工装置に配置させ、これにより小さいスペースでワークの供給、加工、取り出しを可能にしてワークの移動を行うことを特徴とするワーク移載装置。」

(2)補正後
「鋳造によって成型されたワークの入れ替え用移載装置であって、一台の走行台車と、この台車に保持されたワーク把持ハンドとを備えた装置において、前記把持ハンドは2軸リンク構成の垂直多関節機構方式であって、独立して2台持たせ、一方のハンドで図示しない加工装置に配置された加工完了ワークを取り出して走行台車を移動させ、他方のハンドに把持している未加工ワークを加工装置に配置させ、これにより小さいスペースでワークの供給、加工、取り出しを可能にしてワークの移動を行うことを特徴とするワーク移載装置。」

2 補正の適否
本件補正において特許請求の範囲の請求項1の補正は、補正前の「走行台車」を「一台の走行台車」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められるので、さらに、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「ワーク移載装置」であると認める。

(2)引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2003-260629号公報(以下「引用刊行物」という。)の記載内容は以下のとおりである。

ア 引用刊行物記載の事項
引用刊行物には「ワークの移載装置」に関連して以下の事項が記載されている。

(ア)第2ページ左欄第47行?右欄第8行
「【0002】
【従来の技術】自動車の各種部品、例えば、シリンダーヘッド、シリンダーブロック、インテークマニホールド等はアルミや鉄を鋳造加工して製造される。この鋳造によって得られる鋳造品(ワーク)は通常、堰、押湯、湯口等の不用物が付着しているため、この不用物を除去する必要がある。
【0003】このような不用物除去に際し、通常、自動機械が用いられ、このため、未加工ワークを処理個所にセットしたり、加工完了ワークを処理個所から取り出したり等の入れ替え操作も自動操作によるワーク移載装置が必要となる。」

(イ)第2ページ右欄第9行?第31行
「【0004】この種のワーク移載装置として、従来、図3に示される装置が知られている。図3において、100はガイドレールである。このガイドレール100には、走行台車102がレール100上を鉄製の走行ガイドローラ101によって走行自在に取りつけられる。さらに、走行台車102には、下端にワーククランプ103の装着された昇降駆動バー104、104が昇降ガイドローラ105を保持した支持体(ガイド部材)106、106に支持され、設置される。
【0005】昇降駆動バー104 、104はそれぞれ上端で連結バー107、107を介して昇降駆動レバー108、108と連結され、モータ等の駆動部材109、109の駆動力により、かつ昇降ガイドローラ105、105の滑動により、昇降駆動レバー108、108の回転とともに、連結バー107、107を介して昇降駆動バー104、104を上昇ないしは降下させる。
【0006】そして、昇降駆動バー104、104下端のワーククランプ103、103にはワーク110、110が挟持され、一方のワーククランプ103には処理済のワーク110が、他方のワーククランプ103には未処理のワーク110がそれぞれ挟持され、ワーク110の入れ替えが行われる。図3中、111は走行用モータ、112は走行駆動減速機、113は走行駆動ピニオンである。」

(ウ)第2ページ右欄第32行?第37行
「【0007】
【発明が解決すべき課題】図3の公知装置では、二台の昇降駆動バー104、104はそれぞれ別々の駆動部材109、109により間隔のあいた位置で独立して操作され、このため、駆動部材109は昇降駆動バー104の数だけ必要になる。」

イ 引用刊行物記載の発明
引用刊行物記載の事項は、ワークの移載装置に関して説明されており、上記ア(ア)の記載乃至ア(ウ)の記載より、引用刊行物記載の事項を補正発明に照らして整理すると引用刊行物には以下の発明が記載されていると認めることができる。
「鋳造によって成型されたワーク110の入れ替え用移載装置であって、一台の走行台車102と、前記走行台車102に保持されたワーククランプ103、昇降駆動バー104、昇降ガイドローラ105、支持体106、連結バー107、昇降駆動レバー108及び駆動部材109にて構成された機構とを備えた装置において、前記機構は独立して2台持たせ、一方の機構で処理箇所に配置された加工完了ワークを取り出して、他方の機構に把持している未加工ワークを処理箇所に配置させ、これによりワークの供給、加工、取り出しを可能にしてワークの移動を行うワーク移載装置。」(以下、「引用刊行物記載の発明」という。)

(3)周知刊行物
原査定の拒絶の理由に「周知例」として例示された刊行物である特開昭63-169276号公報(以下「周知刊行物」という。)の記載内容は以下の通りである。

ア 周知刊行物記載の事項
周知刊行物には「積上げ装置」に関連して以下の事項が記載されている。

(ア)第1ページ右下欄第2行?第5行
「この発明は袋詰めされたセメント、肥料、ペレット等の各種包装物を整然と一定高さ位置に順序良く、且つ自動的に積載することを可能にする積上げ装置に関する。」

(イ)第3ページ左上欄第12行?右上欄第18行
「26は前記支柱14から上下揺動のみ自在な状態に延伸させられた第一ロッドで、その下部27を支柱14の方形枠15を構成する各側の側板28・・に軸29・・を介して枢着されて成る。また、第一ロッド26の先部からはビーム30が軸31を介することにより上下揺動のみ自在な状態に枢着されており、且つこのビーム30の先端部には先端金具31が軸32を介して枢着されている。さらに、この先端金具31をこれの任意位置において一定姿勢に保持させるべく平行リンク機構33が形成されている。すなわち、本実施例におけるこの並行リンク機構33は、前記軸31に枢着された中間板34を境とする二つの並行リンク要素34、34から成っていて、その一つは中間板34、支柱14、第一ロッド26、及び第一ロッド26の軸29、31間距離と同一長さの軸35、36間距離を有し且つ第一ロッド26と並行するコネクチングロッド37からなっており、他の一つは中間板34、先端金具31、ビーム30、及びビーム30の軸31、32間距離と同一長さの軸38、39間距離を有し且つビーム30と並行するサブビーム40とから成っている。ここで、支柱14は縦軸廻りの回動を除けばその移動を固定されていることから、先端金具31は、それが並行リンク機構33に支配された状態下でどの位置に移動したとしても当初の姿勢を維持し続けることになるのである。」

(ウ)第4ページ右上欄第20行?左下欄第17行
「上記構成において、荷体7をパレット80上に積み上げる場合の作動の一例を説明する。最初、荷体把持解放手段73は搬送装置81の上方に位置させられ、基板76を所定方向に向けられた状態で、荷体7が搬送装置81により所定位置に搬送されてくるのを待っている。そして、荷体7が所定位置に到達すると、駆動装置47の上下駆動機構49が動作させられて軸46が下方向に変位させられる。これにより、荷体把持解放手段73は軸46の変位を拡大された態様で降下させられ、これが所定位置に達すると開放状態の把持杆77、77がシリンダ伸縮機構79の縮小作動により閉動作させられ、、荷体7は把持杆77、77の相互間に抱かれる。その後、駆動装置47の上下駆動機構49と水平駆動機構48が動作させられ、且つ支柱14が強制回動させられて、荷体把持解放手段73は荷体7を抱いた状態でパレット80上の所定位置まで移動させられる。」

イ 周知刊行物記載の事項
周知刊行物記載の事項は、積上げ装置に関して説明されており、上記ア(ア)の記載乃至ア(ウ)の記載からして、周知刊行物記載の事項を補正発明に照らして整理すると周知刊行物には以下の事項が記載されていると認めることができる。
「軸29、31、35、36及び軸31、32、38、39をそれぞれ有する平行リンク要素34、34により、把持杆77、77により把持された荷体7を当初の姿勢を維持し続け移動させる積上げ装置。」(以下、「従来周知の事項」という。)

(4)対比
補正発明と引用刊行物記載の発明とを対比すると以下のとおりである。
引用刊行物記載の発明の「鋳造によって成型されたワーク110」及び「走行台車102」は、それぞれ補正発明の「鋳造によって成型されたワーク」及び「一台の走行台車」に相当することは明らかである。
引用刊行物記載の発明の「処理箇所」は、そこでワークが加工装置により処理されることは明らかなので、補正発明の「(図示しない)加工装置」に相当する。
また、引用刊行物記載の発明の「ワーククランプ103、昇降駆動バー104、昇降ガイドローラ105、支持体106、連結バー107、昇降駆動レバー108及び駆動部材109にて構成された機構」は、走行台車に保持され、鋳造によって成型されたワークを把持するのであるから、「ワーク把持ハンド」と言えるものであることは明らかである。
したがって、補正発明と引用刊行物記載の発明とは、以下の点で一致しているということができる。

[一致点]
「鋳造によって成型されたワークの入れ替え用移載装置であって、一台の走行台車と、この台車に保持されたワーク把持ハンドとを備えた装置において、前記把持ハンドは独立して2台持たせ、一方のハンドで加工装置に配置された加工完了ワークを取り出して、他方のハンドに把持している未加工ワークを加工装置に配置させ、これによりワークの供給、加工、取り出しを可能にしてワークの移動を行うワーク移載装置。」

そして、補正発明と引用刊行物記載の発明とは、以下の2点で相違している。

ア <相違点1>
補正発明では、ワーク把持ハンドは2軸リンク構成の垂直多関節機構方式であって、小さいスペースでワークの供給、加工、取り出しを可能にしているのに対して、引用刊行物記載の発明では、ワーク把持ハンドはそのようなものではない点。

イ <相違点2>
一方のハンドで加工装置に配置された加工完了ワークを取り出して、他方のハンドに把持している未加工ワークを加工装置に配置させる際に、補正発明では、走行台車を移動させるのに対して、引用刊行物記載の発明では、走行台車を移動させるのか否か明らかではない点。

(5)相違点の検討
ア <相違点1> について
補正発明と前記(3)イに示す従来周知の事項とを対比すると以下のとおりである。
従来周知の事項である「軸29、31、35、36及び軸31、32、38、39をそれぞれ有する平行リンク要素34、34により、把持杆77、77により把持された荷体7を当初の姿勢を維持し続け移動させる積上げ装置」は、平行リンクを用いて、把持物を、その姿勢を変化させないように移動させるという限り、補正発明の「2軸リンク構成の垂直多関節方式であるワーク把持ハンド」と共通することは明らかである。すなわち、2軸リンク構成の垂直多関節機構方式を用いて、把持物を移動させることは、従来周知である。
そして、鋳造に限らず、成型されたワークの供給、加工、取り出しを、より小さなスペースにて行うべきことは、ワーク移載装置の技術分野において、一般的に知られている課題である。
そこで、一般的に知られている課題を解決すべく、引用刊行物記載の発明に上記従来周知の事項を適用して、2軸リンク構成の垂直多関節機構方式のワーク把持ハンドにて、小さいスペースでワークの供給、加工、取り出しを可能にしてワークの移動を行うことを試みることは、当業者であれば何ら格別に困難なことではない。

イ <相違点2> について
一方のハンドで加工装置に配置された加工完了ワークを取り出した後、他方のハンドに把持している未加工ワークを加工装置に配置させるために、走行台車を移動させることは、加工装置そのものが、特定の箇所に移動することなく配置されている限り、当業者であれば適宜行うことにすぎない。
したがって、一方のハンドで加工装置に配置された加工完了ワークを取り出して、他方のハンドに把持している未加工ワークを加工装置に配置させる際に、走行台車を移動させることに、何ら格別の困難性は見当たらない。

ウ <作用ないし効果>について
作用ないし効果についても、上記引用刊行物記載の発明及び従来周知の事項から予測可能なものでしかない。

エ まとめ
したがって、補正発明は、引用刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 回答書の発明について
平成24年5月28日に回答書が提出されたが、当該回答書にて補正案を示し、特許請求の範囲の請求項1についての補正の機会を与えるよう主張しているところ、補正案を検討するべき法的根拠はないが、念のため、当該補正案についての判断も述べる。

1 回答書の発明
平成24年5月28日付けの回答書における補正案は、特許請求の範囲について補正を求めるものであって、特許請求の範囲の請求項1(以下「回答書発明」という。)について以下のとおりである。
「鋳造によって成型されたワークの入れ替え用移載装置であって、一台の走行台車と、この台車に保持されたワーク把持ハンドとを備えた装置において、前記把持ハンドは2軸リンク構成の垂直多関節機構方式であって、独立して2台持たせ、一方のハンドで図示しない加工装置に配置された加工完了ワークを取り出して走行台車を移動させ、他方のハンドに把持している未加工ワークを加工装置に配置させ、平行リンク式にしてハンドの姿勢を変化しないようにし、これによりワークの移動を行うことを特徴とするワーク移載装置。」

2 引用刊行物との対比・検討
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、上記第2の2(2)に示したとおりである。
2軸リンク構成の垂直多関節機構方式であるワーク把持ハンドを用いて、把持物を移動させることは、上記周知刊行物記載の事項のとおり、従来周知であり、当該リンクが平行リンクであることは明らかである。
したがって、引用刊行物記載の発明に上記従来周知の事項を適用して、回答書発明とすることは、当業者であれば格別に困難なことではない。

3 むすび
回答書発明は、引用刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 本件出願の発明について
1 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、平成23年7月22日付け手続補正書により、上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「ワーク移載装置」であると認める。

2 引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、上記第2の2(2)に示したとおりである。

3 対比・検討
本件出願の発明は、実質上、上記第2の2で検討した補正発明の「一台の走行台車」を「走行台車」としたものである。
そうすると、本件出願の発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の限定を付加する補正発明が上記第2の2(5)ウで示したとおり、引用刊行物記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件出願の発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
したがって、本件出願の発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-30 
結審通知日 2012-09-04 
審決日 2012-09-18 
出願番号 特願2006-231487(P2006-231487)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B23Q)
P 1 8・ 121- Z (B23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 泰二郎  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 刈間 宏信
長屋 陽二郎
発明の名称 ワーク移載装置  
代理人 染谷 仁  

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