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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B23B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23B
管理番号 1266563
審判番号 不服2012-7641  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-25 
確定日 2012-11-22 
事件の表示 特願2006-216582「材料棚、材料供給機及び材料供給方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月21日出願公開、特開2008- 36797〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成18年8月9日の特許出願であって、同23年5月23日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同23年7月13日に意見書とともに特許請求の範囲及び明細書について手続補正書が提出されたが、同24年1月30日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同24年4月25日に本件審判の請求がされるとともに特許請求の範囲及び明細書について再度手続補正書が提出されたものである。

第2 平成24年4月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年4月25日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容の概要
平成24年4月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をするとともにそれに関連して明細書の一部について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1)補正前
「搬送装置へ供給する棒材をストックする棚と、
棚から棒材を受け取って、基準位置に棒材を位置決めして棒材の長さを測定する測長装置とを含み、
前記測長装置は、
棒材の長手の一端を基準位置に位置決めするためのストッパと、
原点位置からストッパへ向けて直線移動可能であると共に前記棒材の長手の一端に対する反対端を押して前記棒材の長手の一端を前記ストッパまで移動させるスライダを有し、
前記原点位置から前記基準位置までの距離からスライダの前記原点位置から前記ストッパに位置決めされた棒材の反対端の位置までの移動距離を減算して前記棒材の長さを決定する
材料棚。」
(2)補正後
「搬送装置へ供給する棒材をストックする棚と、
棚から棒材を受け取って、基準位置に棒材を位置決めして棒材の長さを測定する測長装置とを含み、
前記測長装置は、
棒材の長手の一端を基準位置に位置決めするためのストッパと、
原点位置からストッパへ向けて直線移動可能であると共に前記棒材の長手の一端に対する反対端を押して前記棒材の長手の一端を前記ストッパまで移動させるスライダを有し、
前記原点位置から前記基準位置までの距離からスライダの前記原点位置から前記ストッパに位置決めされた棒材の反対端の位置までの移動距離を減算して前記棒材の長さを決定し、
加工装置が主軸の軸線上の棒材の加工を終える前に棚にあって次に主軸の軸線上に取り出される予定の棒材の長さを測定する
材料棚。」
2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、「加工装置が主軸の軸線上の棒材の加工を終える前に棚にあって次に主軸の軸線上に取り出される予定の棒材の長さを測定する」という事項を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかであるので、さらに、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて検討する。
(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「材料棚」であると認める。
(2)刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭56-95511号公報(以下「刊行物1」という。)及び原査定の際に周知例として挙げられた、同じく本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平10-291142号公報(以下「刊行物2」という。)の記載内容は、それぞれ以下のとおりである。
ア 刊行物1
(ア)刊行物1記載の事項
刊行物1には「旋盤における棒材供給装置」に関連して以下の事項が記載されている。
(ア)-1 第1ページ左下欄第11?13行
「本発明は棒材を旋盤後部から旋盤の棒材供給管を通じてチヤツク部へ供給する棒材供給装置に関する。」
(ア)-2 第2ページ左上欄第3?10行
「第1図、第2図において(1)は公知のタレツト旋盤(2)は旋盤(1)の後部に隣接して設けたバーフイーダ装置、(3)は棒材ストツク装置、(4)は上記バーフイーダ装置(2)と棒材ストツク装置(3)間に設けた棒材測長装置、(5)はアンローダ装置である。
(6)は旋盤機枠中を貫通する棒材供給管、(7)はチヤツク、(8)はタレツトである。」
(ア)-3 第2ページ右上欄第19行?左下欄第2行
「第3図、第4図において、支柱(22)にガイドローラ(23)によつて上下摺動自在に支持されたガイド板(24)に昇降枠(10)が固着されている。」
(ア)-4 第2ページ左下欄第6?12行
「上記昇降枠(10)には複数の断面V字形ローラ(11)が設けられている。第3図中後部3個のローラ(11)はフリー回転ローラで前部2個のローラ(11-1)(11-2)はマグネツトローラとされ、昇降枠(10)に支持したトルクリミタ付モータ(27)によりチエン(28)、スプロケツト(29)を介して積極回転される。」
(ア)-5 第2ページ右下欄第14行?第3ページ左上欄第2行
「第3図、第5図、第6図、第7図において・・・移動体(41)が第3図、第5図、左右方向移動自在にコ字形枠(38)上に支持されている。」
(ア)-6 第3ページ左上欄第11行?右上欄第6行
「(51)はスプロケツト(45)(50)間においてチエーン(48)に係合するスプロケツト、(52)はスプロケツト(51)と一体のギアで、該ギア(52)に対向して近接センサ(53)が枠(38)に固着支持され、チエーン(48)の走行によつてギア(52)が回転しギア(52)近接センサ(53)がギア(52)の歯の通過を検出し通過した歯数を図示しない公知の積算器で積算することにより移動体(41)の移動距離(l)を測定する。
(54)はブラケツト(55)によつて枠(38)に固着支持した原点リミツトスイツチで移動体(41)の第3図、第5図左端に固着したドツグ(56)がブラケツト(55)の端面(55a)に第7図の如く当接した時、即ち移動体の第3図、第5図左端位置において上記スイツチ(54)がオンし測長原点の確認が行われる。」
(ア)-7 第3ページ右上欄第10?18行
「第8図、第9図に第3図右側の支柱(22)上部に設けた棒材位置決め装置が詳細に示されている。支柱(22)間に固着した支板(57)の中央部にシリンダ(58)が固定されシリンダ(58)のピストンロツド(59)下端に昇降板(60)がアーム(61)を介して固着されている。(62)は昇降板(60)の中央部に固着した棒材当接片で昇降体(60)に螺入固定した近接スイツチ(63)が上記当接片(62)の中央孔(64)中に設けられている。」
(ア)-8 第3ページ右下欄第5,6行
「第1図において(82)(83)は棒材の有無を検出する光電スイツチである。」
(ア)-9 第3ページ右下欄第8行?第4ページ左上欄第18行
「サイクル開始時昇降枠(10)が第4図実線位置に下位置に下降し、移動体(41)が第3図左端の測長原点位置にあり、サイクル開始指令信号により第4図ピストンロツド(21)が進出しスライド板の矢印方向移動により棒ストツク装置(3)より1本の棒材(W)が測長装置(4)へ投入され支持ローラ(11)によつて支持される。
次いで昇降枠(10)が上昇し同時に第3図、第8図の昇降板(60)が下降し、昇降枠(10)が第4図上位置にあることを位置決め片(30)に設けたリミツトスイツチ(88)で確認し、昇降板(60)が下位置にあることを第8図リミツトスイツチ(89)で確認した後モータ(27)を駆動し、マグネツトローラ(11-1)(11-2)を回転して支持ローラ(11)上の棒材(W)を第3図右方へ移動し、第9図に示すように棒材(W)の先端が棒材当接片(62)に当つて近接スイツチ(68)がこれを感知することによりモータ(27)が停止する。
上記近接スイッチ(63)の感知によつてモータ(43)が駆動しチエーン(48)が走行して移動体(84)(当審注:移動体(41)の誤記である。)が第3図右行し感知ワイヤ(85)が第3図支持ローラ(11)上の棒材左端に当接してタツチスイツチ(84)がこれを感知してモータ(43)を停止し移動体(41)が第3図鎖線位置(41a)に停止する。
移動体(41)の上記移動距離(l)がギア(52)の歯数積算により関接的に算出される。第3図実線で示す測長原点における移動体(41)の感知ワイヤ(85)と第9図棒材当接片(62)端面(62a)間距離から上記距離(l)を減算することにより棒材長(L)を算出することができる。」
(ア)-10 第4ページ右上欄第2行?左下欄第4行
「昇降板(60)が第8図上位置(60a)に上昇したことをリミツトスイツチ(90)が確認することによりモータ(27)が駆動しマグネツトローラ(11-1)(11-2)が回転して測長装置(4)からバーフイーダ装置(2)へ測長の終つた捧材が送出される。
・・・バーフイーダ装置(2)へ送り込まれた捧材の先端が光電スイツチ(83)の光線を遮つてスイツチ(83)がオンすることによりモータ(27)が停止して棒材送り込みが停止され、次いで・・・フイードローラ(73)によつてバーフイーダ装置(2)に送り込まれた棒材が把持されモータ(76)の駆動によつてフイードローラ(73)によつて旋盤の棒材供給管(6)中へ棒材が供給される。
上記棒材はチヤツク(7)から突出してタレツト(8)上の位置決め装置(91)に当接して位置決めされてフイードローラ(73)による送り込みが停止し、チヤツク(7)に把持され・・・切削が行われる。」
(ア)-11 第4ページ左下欄第5行?右下欄第4行
「切削が終了して製品(Wa)がアンローダ(5)によつてコンベア(92)上へ搬出される毎にフイードローラ(73)による棒材供給が行われ第1図において棒材左端が光電スイツチ(82)より右方へ通過して光電スイツチ(82)がオフすることにより測長装置(4)の昇降枠(10)が下位置へ下降し昇降枠(10)の下降位置においてストツク装置(4)(当審注:ストツク装置(3)の誤記である。)から次の棒材が測長装置へ供給され次の棒材の測長動作が前記の如くして行われる。
この測長終了後、モータ(27)は停止のままでバーフイーダ装置(2)への棒材送り込みは行われずバーフイーダ装置(2)によつて旋盤へ供給される棒材左端が第1図の光電スイツチ(83)を通過してスイツチ(83)をオフすることにより、フイードローラ(73)が一旦停止し、・・・その後モータ(27)が駆動して測長装置(4)からバーフイーダ装置(2)へ捧材送り込みが行われ、該棒材右端がスイツチ(83)の光線を遮つてスイツチ(83)をオフ(当審注:オンの誤記である。)して次の棒材の送り込みが終了する。」
(ア)-12 第4ページ右下欄第5?19行
「このようにして前の棒材の端部に次の棒材の端部が突き合わされた状態でフイードローラ装置による棒材の旋盤への供給が再開され、棒材供給、切削が繰り返される。
この場合1本の棒材について1個の製品切削毎に残棒材長さを算出し、該残棒材長さが製品加工するに充分な長さを有する場合にはアンローダ(5)による製品搬出後、上記切削動作を繰り返し、残棒材長さが製品を加工するに充分な長さを有しない場合は残材として・・・排出した後、次の棒材がバーフイーダ装置によつて供給され、切削動作が再開される。」
(イ)刊行物1記載の発明
刊行物1記載の事項を技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認めることができる。
「バーフイーダ装置2へ供給する棒材Wをストツクする棒材ストツク装置3と、
棒材ストツク装置3から棒材Wを受け取って、基準位置となる棒材位置決め装置の棒材当接片62端面62aに棒材を位置決めして棒材Wの長さを測定する測長装置4とを含み、
前記測長装置4は、
棒材Wの長手の一端を基準位置に位置決めするための棒材当接片62と、
棒材Wの長手の一端を前記棒材当接片62まで移動させる手段と、
測定原点から棒材当接片62へ向けて直線移動可能である移動体41を有し、
前記測定原点から前記基準位置となる棒材当接片62端面62aまでの距離から移動体41の前記測定原点から前記棒材当接片62に位置決めされた棒材Wの反対端の位置までの移動距離lを減算して棒材長Lを算出し、
加工装置である旋盤1が主軸の軸線上の棒材Wの加工を行い、棒材Wの末端が光電スイツチ82を超えたとき棒材ストツク装置3にあって次に主軸の軸線上に取り出される予定の棒材Wの長さを測定し、加工後の残棒材の長さが製品を加工するに充分な長さを有しない長さになったとき前記長さを測定した取り出される予定の棒材Wの送り込みが行われる
棒材ストツク装置。」
イ 刊行物2
(ア)刊行物2には「長尺材搬送装置」に関連して以下の事項が記載されている。
(ア)-1 段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、例えば丸棒、角材のごとき適宜の長尺材の加工を行う加工機械に対して上記長尺材を搬送する装置に関する。」
(ア)-2 段落【0021】?【0024】
「ローラコンベア17の多数のみぞ付ローラ19におけるキャレッジ49とストッパ43の間に長尺材Wを支持せしめる(図4(a)参照)。このとき、キャレッジ49は前記初期位置に位置しており、また、ストッパ43は昇降シリンダ45の作動により搬送高さ位置に対して突出してある。
長尺材Wを多数のみぞ付ローラ19に支持せしめた後に、駆動モータ53を駆動させてキャレッジ49を長尺材Wに接近する前方向(図4、図5において左方向)へ移動させる。これによって、キャレッジ49を長尺材Wの後端部に当接せしめることができる。更に、駆動モータ53を駆動させてキャレッジ49を前方向へ移動させることにより、長尺材Wの後端部がキャレッジ49に当接した状態のもとで長尺材Wを前方向へ移動させることができ、予め搬送高さ位置に対して突出したストッパ43に長尺材Wの前端部を当接せしめることができる(図4(b)参照)。これによって、長尺材Wをローラコンベア17における前後方向の適宜位置に位置決めすることができる。なお、ストッパ43に長尺材Wの前端部が当接したことは、当接センサ59により検出されるものである。
したがって、当接センサ59の検出作動時には、長尺材Wの後端部はキャリッジ49に当接し、かつ長尺材Wの先端部はストッパ43に当接した状態となり、キャリッジ49と長尺材Wの後端部との位置的関係は常に一定の関係にあるものである。
初期位置から長尺材Wの前端部がストッパ43に当接するときまでのキャレッジ49の前後方向の移動位置(移動量)L_(4 )を、エンコーダ57により検出し、この検出信号は、制御部63を介して演算部65に送られる。これによって、演算部65により、まず、切断加工位置を基準としたキャレッジ49の前後方向の初期位置L_(1)と、初期位置を基準とした上記キャレッジ49の前後方向の移動位置L_(4)とに基づいて、切断加工位置を基準とした長尺材Wの後端部の前後方向の位置がL_(1) -L_(4) として演算され検出される。次に、予め判明している切断加工位置を基準としたストッパ43の前後方向の位置L_(2)、換言すればストッパ43に当接したときの前後方向における長尺材Wの前端部の前後方向の位置と、切断加工位置を基準とした長尺材Wの後端部の前後方向の位置L_(1) -L_(4) とに基づいて、演算部69によりL_(1) -L_(4)-L_(2) を演算する。これによって、長尺材Wの長さがL_(1) -L_(4)-L_(2) として測定されるものである。」
(イ)刊行物2記載の事項を整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認めることができる。
「長尺材搬送装置において、長尺材の長さを測定するために、移動量を検出することができるキャレッジ49により長尺材Wを移動してストッパ43に長尺材Wの前端部を当接せしめること。」
(3)対比
補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物1記載の発明の「バーフイーダ装置2」は、補正発明の「搬送装置」に相当し、同じく、「棒材当接片62」は、「ストッパ」に、「測定原点」は、「原点位置」に相当する。
刊行物1記載の発明の「棒材Wの長手の一端を基準位置に位置決めするための棒材当接片62」は、補正発明の「棒材の長手の一端を基準位置に位置決めするためのストッパ」に相当する。
また、刊行物1記載の発明の「棒材ストツク装置3」は、「棒材をストックする棚」ないし「材料棚」ということができるものである。
また、刊行物1記載の発明の「移動体41」は、原点位置からストッパへ向けて直線移動可能であり、前記原点位置から前記ストッパに位置決めされた棒材の反対端の位置までの移動距離を計測できるスライダであるという限りで、補正発明の「スライダ」と共通している。
さらに、刊行物1記載の発明において「加工装置である旋盤1が主軸の軸線上の棒材Wの加工を行い、棒材Wの末端が光電スイツチ82を超えたとき棒材ストツク装置3にあって次に主軸の軸線上に取り出される予定の棒材Wの長さを測定」することは、「1本の棒材について加工可能な複数の加工が全て終了する前に次の棒材の長さを測定」することを意味しているところ、補正発明における「棒材の加工を終える前」は、刊行物1記載の発明における上記「1本の棒材について加工可能な複数の加工が全て終了する前」を包含している。
そうしてみると、刊行物1記載の発明において上記「1本の棒材について加工可能な複数の加工が全て終了する前に次の棒材の長さを測定」をすることは、補正発明において「加工装置が主軸の軸線上の棒材の加工を終える前に棚にあって次に主軸の軸線上に取り出される予定の棒材の長さを測定」することと一致しているということができる。
したがって、補正発明と刊行物1記載の発明とは、以下の一致点と相違点とを有しているということができる。
[一致点]
「搬送装置へ供給する棒材をストックする棚と、
棚から棒材を受け取って、基準位置に棒材を位置決めして棒材の長さを測定する測長装置とを含み、
前記測長装置は、
棒材の長手の一端を基準位置に位置決めするためのストッパと、
原点位置からストッパへ向けて直線移動可能であるスライダを有し、
前記原点位置から前記基準位置までの距離からスライダの前記原点位置から前記ストッパに位置決めされた棒材の反対端の位置までの移動距離を減算して前記棒材の長さを決定し、
加工装置が主軸の軸線上の棒材の加工を終える前に棚にあって次に主軸の軸線上に取り出される予定の棒材の長さを測定する
材料棚。」
[相違点]
補正発明では、スライダは、棒材の長手の一端に対する反対端を押して前記棒材の長手の一端をストッパまで移動させるものであるのに対して、刊行物1記載の発明では、スライダは、原点位置からストッパへ向けて直線移動可能であるものの、棒材の長手の一端をストッパまで移動させるものではなく、棒材を前記のように移動させるためにスライダとは別の手段を備えている点。
(4)相違点の検討
ア 上記(2)のイ(イ)で認定したように、刊行物2には「長尺材搬送装置において、長尺材の長さを測定するために、移動量を検出することができるキャレッジ49により長尺材Wを移動してストッパ43に長尺材Wの前端部を当接せしめること。」が記載されている。刊行物2記載の事項における「キャレッジ49」は、スライダということができるものである。そして、長尺材の長さを測定するために、移動量を検出することができるスライダにより長尺材を移動させることは、刊行物2を例示するまでもなく従来周知の事項である。
してみると、刊行物1記載の発明において、刊行物2記載の周知の事項を適用して、棒材の長手の一端をストッパまで移動させるためにスライダとは別の手段を備えることなく、スライダによって棒材の長手の一端に対する反対端を押して前記棒材の長手の一端をストッパまで移動させるように構成することに格別の困難性は見当たらない。
イ 補正発明によってもたらされる効果も、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。
ウ したがって、補正発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件出願の発明について
1 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、平成23年7月13日付け手続補正書により補正された明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの「材料棚」である。
2 刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、原査定の際に周知例として挙げられた刊行物及びその記載内容は、上記第2の2(2)に示したとおりである。
3 対比・検討
本件出願の発明は、上記第2の2で検討した補正発明から「加工装置が主軸の軸線上の棒材の加工を終える前に棚にあって次に主軸の軸線上に取り出される予定の棒材の長さを測定する」という事項を削除したものである。
そうすると、本件出願の発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加する補正発明が上記第2の2(4)ウで示したとおり、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件出願の発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
したがって、本件出願の発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-19 
結審通知日 2012-09-25 
審決日 2012-10-09 
出願番号 特願2006-216582(P2006-216582)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B23B)
P 1 8・ 575- Z (B23B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 忠博  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 藤井 眞吾
長屋 陽二郎
発明の名称 材料棚、材料供給機及び材料供給方法  
代理人 石川 泰男  

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