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審決分類 |
審判 査定不服 その他 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L |
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管理番号 | 1267277 |
審判番号 | 不服2010-11046 |
総通号数 | 158 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-05-24 |
確定日 | 2012-12-06 |
事件の表示 | 特願2004- 47051「封止用エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月 3日出願公開、特開2004-156053〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 本願は,平成12年4月10日(先の出願に基づく優先権主張 平成11年9月17日及び平成12年3月21日)を出願日とする特許出願(特願2000-108057号)の一部を新たに特許出願したものであって,平成21年7月31日付けで拒絶理由が通知され,同年10月5日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲の補正がされ,平成22年2月19日付けで拒絶査定がされたところ,これに対して,同年5月24日に拒絶査定不服審判が請求され,平成24年6月26日付けで拒絶理由(以下「本件拒絶理由」という。)が通知されたものである。 なお,本件拒絶理由に対して,指定期間内に,特許法50条所定の意見書は提出されていない。 第2 本願発明 本願の請求項1?5に係る発明(以下,順に「本願発明1」?「本願発明5」という。)は,平成21年10月5日付けで補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 (A)エポキシ樹脂,(B)硬化剤,(C)非導電性カーボン及び(D)無機充填材を必須成分とし,硬化後の表面の色差計による黒色度が26.4?29.5である封止用エポキシ樹脂組成物。 【請求項2】 非導電性カーボンの電気抵抗が10^(7)Ω以上である請求項1記載の封止用エポキシ樹脂組成物。 【請求項3】 非導電性カーボンの含有量が,樹脂組成物全体の0.1?10重量%である請求項1または請求項2記載の封止用エポキシ樹脂組成物。 【請求項4】 非導電性カーボンは、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の少なくともいずれかにより表面が覆われている請求項1?3のいずれか記載の封止用エポキシ樹脂組成物。 【請求項5】 請求項1?4のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置。」 第3 本件拒絶理由 本件拒絶理由は,要するに,本願発明1?3及び5は本願と同日の出願(特願2000-108057号。以下「親出願」という。)に係る発明と同一と認められ,特許法39条2項所定の協議をすることができないから,本願発明1?3及び5は,同条同項の規定により特許を受けることができない,というものである。 第4 本願が拒絶されるべき理由 1 親出願に係る発明(特許第3632558号。平成17年1月7日設定登録) 親出願に係る発明の内容は,次のとおりである。 「【請求項1】 (A)エポキシ樹脂,(B)硬化剤,(C)非導電性カーボン及び(D)無機充填材を必須成分とし,前記(C)非導電性カーボンは,(c1)ポリマー焼成カーボン,(c2)カーボンブラックの表面を絶縁無機物で覆うことによって得られるカーボン内包フィラー,(c3)酸化処理またはシランカップリング剤を用いた処理で表面処理を施したカーボンブラックから選ばれ,含有量が,樹脂組成物全体の0.1?10重量%であり,電気抵抗が10^(7)Ω以上である封止用エポキシ樹脂組成物。 【請求項2】 請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置。」 2 本願発明が特許を受けることができない具体的理由(本願発明1?3及び5と親出願に係る発明との対比・判断。なお,ここで説示する理由は,本件拒絶理由の内容と同旨である。) (1) 本願発明1について ア 親出願の請求項1に係る発明(親出願発明1)と本願発明1とを対比すると,以下の点で一応の相違が認められる。 ・ 相違点1 非導電性カーボンについて,親出願発明1は『(c1)ポリマー焼成カーボン,(c2)カーボンブラックの表面を絶縁無機物で覆うことによって得られるカーボン内包フィラー,(c3)酸化処理またはシランカップリング剤を用いた処理で表面処理を施したカーボンブラックから選ばれ,含有量が,樹脂組成物全体の0.1?10重量%であり,電気抵抗が10^(7)Ω以上である』と特定するのに対し,本願発明1はそのような特定がない点 ・ 相違点2 本願発明1は『硬化後の表面の色差計による黒色度が26.4?29.5である』と特定するのに対し,親出願発明1はそのような特定がない点 イ まず,上記相違点1について検討する。 (ア) ポリマー焼成カーボンなどの特定について 本願明細書の【0014】には,次の記載がある。なお,下線は審決による。 「(C)非導電性カーボンとしては特に制限はないが,例えば,ポリマーを焼成させて得られる非導電性ポリマー焼成カーボン,カーボンブラックの表面にポリマーをグラフトさせて得られるグラフトカーボン,カーボンブラックの表面をシリカ等の絶縁無機物で覆うことによって得られるカーボン内包フィラー,酸化処理等の表面処理を施したカーボンブラックなどが挙げられ,これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。」 そうすると,本願発明1は,発明特定事項である非導電性カーボンとして,ポリマーを焼成させて得られる非導電性ポリマー焼成カーボン,カーボンブラックの表面をシリカ等の絶縁無機物で覆うことによって得られるカーボン内包フィラー,あるいは,酸化処理等の表面処理を施したカーボンブラックから選ばれた場合のものを包含するものと解される。しかも,本願発明1は,非導電性カーボンが上記ポリマー焼成カーボンなどである場合を何ら排除していない。 よって,本願発明1は,非導電性カーボンが「ポリマー焼成カーボン,カーボンブラックの表面を絶縁無機物で覆うことによって得られるカーボン内包フィラー,酸化処理またはシランカップリング剤を用いた処理で表面処理を施したカーボンブラックから選ばれ」る部分で,親出願発明1と同一である。 (イ) 含有量について 親出願発明1は,非導電性カーボンを樹脂組成物全体の0.1?10重量%含有するものである。 ところで,本願発明1は,黒色度を26.4?29.5と特定するものであるところ,本願明細書には,本願発明1の実施例1?9(いずれの実施例もその黒色度は26.4?29.5の範囲内にある。)として,非導電性カーボンが樹脂組成物全体の0.1?10重量%の範囲で含有されたものが記載されている(【表3】。因みに,実施例4及び実施例9以外の実施例は着色剤を別途含有していない,すなわち,その黒色は非導電性カーボンのみによると解される。さらにいえば,本願発明1を引用する本願発明3は,非導電性カーボンを樹脂組成物全体の0.1?10重量%含有することを発明特定事項としている。)。 そうすると,本願発明1は,非導電性カーボンが樹脂組成物全体の0.1?10重量%の範囲で含有してなる点を包含するといえるから,本願発明1と親出願発明1とは,非導電性カーボンの含有量の点で実質的に相違しない。 (ウ) 電気抵抗について 本願明細書には,本願発明1の非導電性カーボンの電気抵抗は10^(7)Ω以上が好ましい旨の記載がある(【0015】)。しかも,本願発明1を引用する本願発明2は,非導電性カーボンの電気抵抗が10^(7)Ω以上であることを発明特定事項としている。 よって,本願発明1は,非導電性カーボンの電気抵抗が10^(7)Ω以上となる部分で,親出願発明1と同一である。 ウ 次に,相違点2について検討するに,上記イ(イ)で述べたことと同様の理由により,親出願発明1の黒色度は26.4?29.5の範囲を呈するといえるから,相違点2は実質的な相違とはいえない。 (2) 本願発明2,3及び5について 上記(1)イ(イ)及び(ウ)で検討のとおり,本願発明2?3は,親出願発明1と同一である。 また,本願発明5の電子部品装置は,親出願の請求項2に係る発明(親出願発明2)である電子部品装置と同一である。 第5 むすび 請求人は,本件拒絶理由に対して,意見書を提出するなどの反論を何らしていない。そして,以上のとおり,本件拒絶理由は妥当なものであって,これを覆すに足りる根拠が見いだせないから,本願の請求項4に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-10-04 |
結審通知日 | 2012-10-09 |
審決日 | 2012-10-22 |
出願番号 | 特願2004-47051(P2004-47051) |
審決分類 |
P
1
8・
5-
WZ
(C08L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久保 道弘 |
特許庁審判長 |
渡辺 仁 |
特許庁審判官 |
須藤 康洋 加賀 直人 |
発明の名称 | 封止用エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置 |
代理人 | 三好 秀和 |