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審決分類 |
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 F02M 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M |
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管理番号 | 1267304 |
審判番号 | 不服2011-23682 |
総通号数 | 158 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-11-02 |
確定日 | 2012-12-06 |
事件の表示 | 特願2008-552058「EGRバルブ制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月10日国際公開、WO2008/081643〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2007年10月25日(優先権主張、2006年12月28日、日本)を国際出願日とする出願であって、平成21年3月13日付けで特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出された後、平成22年10月13日付けの拒絶理由通知に対し、平成22年12月10日付けで意見書が提出され、平成23年2月3日付けの拒絶理由通知に対し、平成23年4月5日付けで意見書が提出されたが、平成23年8月1日付けで拒絶査定がなされ、平成23年11月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成24年5月29日付けで書面による審尋がなされ、平成24年8月2日付けで回答書が提出されたものである。 2.平成23年11月2日付けの手続補正について 平成23年11月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、国際出願日における)請求項1を削除し、同請求項2を新たに請求項1とするものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に規定された請求項の削除を目的とするものに該当し、また、国際出願日における明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件も満たすものであるから、適法になされたものである。 3.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、上記平成23年11月2日付けの手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲並びに国際出願日における図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「 【請求項1】 排気系から排気ガスの一部を取り出し吸気系に還流させる排気再循環装置におけるEGRバルブ制御装置であって、 EGRバルブの開閉制御を行うモータと、 前記EGRバルブの実位置を検出するセンサと、 前記EGRバルブの目標位置と、前記センサにより検出される実位置とにより前記モータの駆動デューティの算出を行うモータ制御装置と、を備え、 前記モータ制御装置は、 前記EGRバルブの開側におけるフィードフォワード定数と閉側におけるフィードフォワード定数とを等しい値に設定し、 前記EGRバルブの目標位置が設定されたとき、前記EGRバルブの目標位置と実位置との偏差に基づき積分項を、前記EGRバルブの実位置の変化に基づき比例項と微分項を、前記目標位置の変化に基づきフィードフォワード項をそれぞれ演算し、前記演算された積分項と、比例項と、微分項と、フィードフォワード項とを加算減して前記モータの駆動デューティを算出し、前記EGRバルブの開閉制御を行うことを特徴とするEGRバルブ制御装置。」 2.引用文献 2.1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2002-235606号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。 (ア)「【請求項1】 内燃機関の排気系と吸気系とを連通するEGR通路と、前記EGR通路を開閉するEGR制御バルブと、前記EGR制御バルブを駆動するアクチュエータを備えると共に、前記アクチュエータに出力すべき操作量を周期的に算出する操作量算出手段を備えた内燃機関のEGR制御装置において、前記操作量算出手段が、 a.少なくとも要求トルクに応じて前記EGR制御バルブの要求開度を算出する要求開度算出手段、 b.前記EGR制御バルブの実開度を検出する実開度検出手段、 c.前記算出された要求開度が所定時間にわたって零であるとき、前記EGR制御バルブが零開度位置にあるとみなして前記検出された実開度を学習補正し、前記学習補正された実開度に基づいて有効実開度を算出する有効実開度算出手段、 d.前記要求開度と前記有効実開度の偏差を算出する偏差算出手段、 e.前記算出された偏差と、前記有効実開度の経時的変化量に基づき、前記操作量の補正量を算出する補正操作量算出手段、 f.前記操作量の前回の出力値に前記補正量を加算して前記操作量の今回の出力値を算出する操作量出力値算出手段、 および g.前記出力値を前記アクチュエータに出力する操作量出力手段、を備えることを特徴とする内燃機関のEGR制御装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】) (イ)「【0021】排気マニホルド40の下流において、排気管42はEGR管(EGR通路)48を介してスロットルバルブ18の下流で吸気管12に接続される。EGR管48にはEGR制御バルブ50が設けられてEGR管48を開閉する。即ち、EGR制御バルブ50は、所定の運転状態において開放させられて流量(EGR量)を調節しつつ排気ガスの一部を吸気系に還流させる。 【0022】より詳しくは、EGR制御バルブ50はバルブ体50aを備え、バルブ体50aは、EGR制御バルブ50に隣接して配置されたリニアソレノイド(アクチュエータ)52のプランジャにステムを介して取り付けられる。EGR管48の延長部48aには開口が形成され、リニアソレノイド52への通電によってコア52aが励磁されてプランジャが吸引されると、バルブ体50aは図1において上方に駆動(リフト)されて図示位置に移動して開口を開放し、排気ガスの一部をEGR管48を介して吸気系に還流(導入)させる。 【0023】他方、リニアソレノイド52への通電停止によってコア52aが消磁されると、プランジャはリターンスプリング52bを介して下降して開口を閉鎖し、排気ガスが吸気系に還流(導入)されるのを阻止する。リニアソレノイド52への通電は後述の如くデューティ比(出力デューティ比DOUT)を介してデューティ制御(PWM制御)され、デューティ比に応じて全開開度と全閉開度の間の目標開度に制御される。 【0024】EGR制御バルブ50の付近にはリフトセンサ50bが配置され、バルブ体50aのリフト量、より詳しくはEGR制御バルブ50の実開度LIFTに応じた信号を出力する。」(段落【0021】ないし【0024) (ウ)「【0046】図3はその動作を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは10msecごとの所定周期で実行される。 【0047】以下説明すると、先ずS10においてEGR制御バルブ50の要求開度LCMDの値が0ではないか否か判断する。尚、要求開度LCMDは、上で述べたように、エンジン回転数NEなどから決定(算出)される値であり、より詳しくは、図示しない別ルーチンにおいて、検出されたエンジン回転数NEと要求トルクPMCMDから予め設定された特性(マップ)を検索して決定(算出)される。 (中略) 【0052】次いでS22に進み、要求開度LCMDから有効実開度今回値lact.0を減算して偏差d1を算出し、S24に進み、図示の手法に従ってPID補正項を算出する。 【0053】即ち、先ず、有効実開度今回値lact.0から有効実開度前回値lact.1を減算し、よって得た差(換言すれば有効実開度変化量)に適宜設定された比例ゲインKBPE1を乗じて比例補正項dbpを算出する。さらに、前記した偏差d1に適宜設定された積分ゲインKBIE1を乗じて積分補正項dbiを算出する。 【0054】さらに、有効実開度今回値lact.0から、有効実開度前回値lact.1を2倍した値に有効実開度前々回値lact.2を加算して得た積を減算し、よって得た差(換言すれば有効実開度変化量)に適宜設定された微分ゲインKBDE1を乗じて微分補正項dbdを算出する。 【0055】そして、図示の如く、算出した3種の補正項からPID補正項ddbを算出する。このように、PID補正項ddbは要求開度LCMDと有効実開度(今回値lact.0)の偏差と有効実開度変化量に基づいて算出すると共に、積分補正項から比例補正項と微分補正項を減算するI-PD制御則から算出する。 【0056】次いでS26に進み、算出したPID補正項ddbを出力デューティ比基本値前回値db1に加算し、よって得た和を出力デューティ比基本値今回値dbとし、S28以降に進み、出力デューティ比基本値今回値dbのリミットチェックを行う。 (中略) 【0061】尚、前記運転パラメータ決定部104は、かく算出された出力デューティ比今回値DOUTを操作量として図示しない駆動回路を通じてリニアソレノイド52に出力(通電)し、EGR制御バルブ50を開弁方向に駆動する。」(段落【0046】ないし【0061】) (2)引用文献1記載の事項 上記(1)(ア)ないし(ウ)並びに図1ないし3から、以下の事項が分かる。 (エ)上記(1)(ア)から、引用文献1には、EGR制御バルブ50の制御装置が記載されていることが分かる。 (オ)上記(1)(ア)及び(イ)並びに図1から、引用文献1に記載されたEGR制御バルブ50の制御装置は、排気管42から排気ガスの一部を取り出して吸気系に環流させる排気環流装置におけるEGR制御バルブの制御装置であることが分かる。 (カ)上記(1)(ア)及び(イ)並びに図1及び2から、引用文献1に記載されたEGR制御バルブ50の制御装置は、EGR制御バルブ50を駆動するリニアソレノイド52と、EGR制御バルブ50の備えるバルブ体50aのリフト量に応じた信号を出力するリフトセンサ50bとを備えるものであることが分かる。 (キ)上記(1)(ア)ないし(ウ)並びに図1ないし3から、引用文献1に記載されたEGR制御バルブ50の制御装置は、エンジン回転数NEと要求トルクPMCMDからマップを用いて決定されたEGR制御バルブ50の要求開度LCMDと、リフトセンサ50bにより検出される有効実開度今回値lct.0とにより、前記リニアソレノイド52の操作量である出力デューティー比今回値DOUTを算出する運転パラメータ決定部104を備えるものであることが分かる。 (ク)上記(1)(ア)ないし(ウ)並びに図1ないし3から、引用文献1に記載されたEGR制御バルブの制御装置において、上記運転パラメータ決定部104は、EGR制御バルブ50の要求開度LCMDに対して、EGR制御バルブ50の要求開度LCMDから有効実開度今回値lact.0を減算して得た差に基づいて積分補正項dpiを算出し、有効実開度変化量に基づき比例補正項dbpと微分補正項dbdを算出し、前記算出された積分補正項dpiから比例補正項dbpと微分補正項dbdを減算してPID補正項ddbを算出し、これをもとに出力デューティー比今回値DOUTを算出し、駆動回路を通じてリニアソレノイド52に出力(通電)し、EGR制御バルブ50を駆動するものであることが分かる。 (3)引用発明1 上記(1)及び(2)並びに図1ないし3を参酌すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。 「排気管42から排気ガスの一部を取り出して吸気系に環流させる排気環流装置におけるEGR制御バルブ50の制御装置であって、 EGR制御バルブ50を駆動するリニアソレノイド52と、 EGR制御バルブ50の備えるバルブ体50aのリフト量に応じた信号を出力するリフトセンサ50bと、 EGR制御バルブ50の要求開度LCMDと、前記リフトセンサ50bにより検出される有効実開度今回値lct.0とにより前記リニアソレノイド52の操作量である出力デューティー比今回値DOUTを算出する運転パラメータ決定部104とを備え、 上記運転パラメータ決定部104は、 前記要求開度LCMDに対して、前記EGR制御バルブ50の要求開度LCMDと有効実開度今回値lact.0との偏差に基づき積分補正項dpiを、有効実開度変化量に基づき比例補正項dbpと微分補正項dbdを算出し、前記算出された積分補正項dpiと、比例補正項dbp、微分補正項dbdとを加減算して出力デューティー比今回値DOUTを算出し、EGR制御バルブ50の開閉制御を行うEGR制御バルブ50の制御装置。」 2.2 引用文献2 (1)引用文献2の記載 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2000-234564号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 (ア)「【0005】 【課題を解決するための手段】請求項1に記載の本発明のEGRバルブの制御装置は、付勢手段によってEGRバルブの開閉方向の一方向に所定のリターントルクが付与され、かつ直流モータの一方向の通電によってEGRバルブの開閉方向の他方向に可変のモータトルクが付与され、それらのトルクバランスにより開閉されるEGRバルブの制御装置であって、前記EGRバルブの開閉位置と前記リターントルクとの相関に基づいて、前記EGRバルブの目標開閉位置に応じたモータトルクを発生させるように前記直流モータをオープンループにより制御するフィードフォワード制御系と、前記EGRバルブの目標開閉位置に対応する入力データと前記EGRバルブの現開閉位置の検出データとの偏差に基づいて、前記直流モータをフィードバック制御するフィードバック制御系と、前記EGRバルブの開閉位置の定常偏差に応じて、前記フィードフォワード制御系または前記フィードバック制御系の少なくとも一方による前記直流モータの操作量を補正する補正手段とを備えたことを特徴とする。」(段落【0005】) (イ)「【0015】モータシャフト31の下端は、下端にバルブ11が取り付けられたバルブシャフト14の上端と対向する。そのバルブシャフト14の中間部は、ガイドシール15とガイドプレート16によってバルブボディ1に上下動自在にガイドされている。17はガイドシールカバーである。モータシャフト14の上端に取り付けられたスプリングシート18とバルブボディ1との間には、シャフト14を上方つまりバルブ11の閉動方向に付勢するためのコイルスプリング19が介在されている。」(段落【0015】) (ウ)「【0019】このような構成のEGRバルブの作動特性は、図5(a)のようなフリクションによるヒステリシスをもつことになる。図5(a)において、横軸は直流モータ20の駆動デューティー、縦軸は、ロータ21の回動位置に対応するポジションセンサ40のセンサ出力(電圧)であり、モータトルクを増大させてEGRバルブを開くときはラインAのような作動特性を示し、一方、モータトルクを減少させてEGRバルブを閉じるときはのラインBのような作動特性を示す。図5(b)は、説明の便宜上、図5(a)の縦軸と横軸を逆にした作動特性図である。この図5(b)においては、A、Bを傾きKSの直線とし、DAをラインAの立ち上がり時点の駆動デューティー、DBを直線Bの立ち上がり時点の駆動デューティー、BSを駆動デューティーDA、DBの中間点の駆動デューティーつまりBS={(DA+DB)/2}、CをDAから立ち上がる傾きKSの仮想の直線とする。」(段落【0019】) (エ)「【0025】このようにして、目標値と現在値との偏差ERに基づいて直流モータ20をPID制御するフィードバック制御系が構成されている。そのPID制御系からの駆動デューティーは、後述するフィードフォワード制御系からの駆動デューティーを補うように加算されて直流モータ20の駆動デューティーとなるため、それのみで直流モータ20を制御するフィードバック制御の場合に比して、小さい値として出力される。 【0026】65はオープンループ制御部であり、前述した図5(a)中のラインA、Bのような目標値と駆動デューティーとの関係から、目標値に応じて、リターントルクによる反力成分に相当する直流モータ20の駆動デューティー(オフセット制御用駆動デューティー)を演算して出力する。本例の制御部65は、前述した図5(b)中の直線Cのような目標値と直流モータ20の駆動デューティーとの関係から、目標値に対応するオフセット制御用駆動デューティーを直流モータ20の回動方向の如何に拘わらず演算する。つまり、ラインA、Bの中間に位置する直線Cをバルブ11の開動時と閉動時のオフセット制御用駆動デューティー演算用として共通に利用する。具体的には、直線Cの立ち上がり時点の駆動デューティーBSと傾きをKSを用い、演算式(目標値×KS+BS)によって、開動時と閉動時のオフセット制御用駆動デューティーを演算する。このようにして、現在値に応じて直流モータ20を制御するフィードフォワード制御系が構成されている。 【0027】フィードバック制御系とフィードフォワード制御系のそれぞれからの駆動デューティーは加算されて、モータ駆動デューティーとして出力される。したがって、フィードフォワード制御系によって、リターントルク分のモータトルク発生用の駆動電圧がバルブ11の開閉方向に応じて常に加えられ、それによる現在値と目標値との偏差分(フィードフォワード制御の過不足分)を補うように、フィードバック制御系がPID制御することになる。」(段落【0025】ないし【0027】) (オ)「【0034】D.「制御動作」 図4は、制御部50の動作を説明するためのフローチャートである。 【0035】まず、目標値と現在値を読み込んで偏差ERを求める(ステップS1、S2)。そして、前述したように、制御部100の第1、第2制御部が定常偏差に応じてフォワード制御系およびフィードバック制御系の制御ゲインを補正する(ステップS9、S10)。これらの制御ゲインに基づいて、前述したように演算部63がPID制御量を演算し(ステップS3)、そのPID制御量をデューティー演算部64がPID制御用駆動デューティーに変換する(ステップS4)。一方、フィードフォワード制御系においては、前述したように制御部65がオフセット制御用駆動デューティーを算出する(ステップS5)。そして、PID制御用駆動デューティーとオフセット制御用駆動デューティーとを加算してモータ駆動デューティーとし(ステップS6)、その駆動デューティーによって直流モータ20を駆動する(ステップS8)。 【0036】これらの結果、フィードフォワード制御系によって、リターントルク分のモータトルク発生用の駆動電圧がバルブ11の開閉方向に応じて常に加えられ、それによる現在値と目標値との偏差分(フィードフォワード制御の過不足分)を補うように、フィードバック制御系がPID制御することになる。したがって、バルブ11の開閉方向の如何に拘わらずフィードバック制御量を比較的小さくして、振動の発生が抑制できることになる。」(段落【0034】ないし【0036】) (2)引用文献2記載の技術 上記(1)(ア)ないし(オ)並びに図1ないし5を参酌すると、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているといえる。 「EGRバルブの開閉制御をフィードフォワード制御により行うに際し、開動時と閉動時で共通の駆動デューティーを用いる技術。」 3.対比 本願発明と引用発明1とを比較すると、引用発明1における「EGR制御バルブ50」は、その機能及び構成からみて、本願発明における「EGRバルブ」に相当し、同様に、「EGR制御バルブ50の制御装置」は「EGRバルブ制御装置」に相当する。 また、引用発明1における「排気管42から排気ガスの一部を取り出して吸気系に環流させる排気環流装置」は、その技術的意義からみて、本願発明における「排気系から排気ガスの一部を取り出し吸気系に還流させる排気再循環装置」に相当する。 そして、「EGRバルブの開閉制御を行うアクチュエータ」という限りにおいて、引用発明1における「EGR制御バルブ50を駆動するリニアソレノイド52」は、本願発明における「EGRバルブの開閉制御を行うのモータ」に相当する。 さらに、引用発明1における「EGR制御バルブ50の備えるバルブ体50aのリフト量」は、その技術的意義からみて、本願発明における「EGRバルブの実位置」に相当し、同様に「EGR制御バルブ50の備えるバルブ体50aのリフト量に応じた信号を出力するリフトセンサ50b」は「EGRバルブの実位置を検出するセンサ」に、「EGR制御バルブ50の要求開度LCMD」は「EGRバルブの目標位置」に、それぞれ相当する。 そして、「EGRバルブの目標位置と、前記センサにより検出される実位置とにより前記アクチュエータの駆動デューティの算出を行うアクチュエータ制御装置」という限りにおいて、引用発明1における「EGR制御バルブ50の要求開度LCMDと、前記リフトセンサ50bにより検出される有効実開度今回値lct.0とにより前記リニアソレノイド52の操作量である出力デューティー比今回値DOUTを算出する運転パラメータ決定部104」は本願発明における「前記EGRバルブの目標位置と、前記センサにより検出される実位置とにより前記モータの駆動デューティの算出を行うモータ制御装置」に相当する。 またさらに、引用発明1において、積分補正項dpi、比例補正項dbp及び微分補正項dbdが、要求開度LCMDに対して算出されるということは、要求開度LCMDが設定されたとき、積分補正項dpi、比例補正項dbp及び微分補正項dbdが算出されるということができるから、引用発明1において「前記要求開度LCMDに対して、前記EGR制御バルブ50の要求開度LCMDと有効実開度今回値lact.0との偏差に基づき積分補正項dpiを、有効実開度変化量に基づき比例補正項dbpと微分補正項dbdを算出」することは、本願発明において、「前記EGRバルブの目標位置が設定されたとき、前記EGRバルブの目標位置と実位置との偏差に基づき積分項を、前記EGRバルブの実位置の変化に基づき比例項と微分項を」それぞれ演算することに相当し、「演算された積分項と、比例項と、微分項とを加算減して前記アクチュエータの駆動デューティを算出し、前記EGRバルブの開閉制御を行う」という限りにおいて、引用発明1において「算出された積分補正項dpiと、比例補正項dbp、微分補正項dbdとを加減算して出力デューティー比今回値DOUTを算出し、EGR制御バルブ50の開閉制御を行う」ことは、本願発明において「演算された積分項と、比例項と、微分項と、フィードフォワード項とを加算減して前記モータの駆動デューティを算出し、前記EGRバルブの開閉制御を行う」ことに相当する。 したがって両者は、 「 排気系から排気ガスの一部を取り出し吸気系に還流させる排気再循環装置におけるEGRバルブ制御装置であって、 EGRバルブの開閉制御を行うアクチュエータと、 前記EGRバルブの実位置を検出するセンサと、 前記EGRバルブの目標位置と、前記センサにより検出される実位置とにより前記アクチュエータの駆動デューティの算出を行うアクチュエータ制御装置と、を備え、 前記アクチュエータ制御装置は、 前記EGRバルブの目標位置が設定されたとき、前記EGRバルブの目標位置と実位置との偏差に基づき積分項を、前記EGRバルブの実位置の変化に基づき比例項と微分項をそれぞれ演算し、前記演算された積分項と、比例項と、微分項とを加算減して前記アクチュエータの駆動デューティを算出し、前記EGRバルブの開閉制御を行うことを特徴とするEGRバルブ制御装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) (1)「EGRバルブの開閉制御を行うアクチュエータ」及び「アクチュエータ制御装置」に関し、本願発明においては「モータ」及び「モータ制御装置」を用いるのに対し、引用発明1においては「リニアソレノイド52」及び「運転パラメータ決定部104」を用いる点(以下、「相違点1」という。)。 (2)本願発明においては、EGRバルブの開閉制御を積分項、比例項及び微分項の加減算に係る、いわゆるフィードバックのみならず、フィードフォワードも用い、EGRバルブの開側におけるフィードフォワード定数と閉側におけるフィードフォワード定数とを等しい値に設定し、制御目標の変化に基づき定めるフィードフォワード項を、積分項、比例項及び微分項と加算減して、モータの駆動デューティを算出するのに対し、引用発明1においては、EGR制御バルブ50の開閉制御を、積分補正項、比例補正項及び微分補正項の加減算に係る、いわゆるフィードバックのみを用いて行い、フィードフォワードを用いない点(以下、「相違点2」という。)。 4.判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 「EGRバルブの開閉制御を行うアクチュエータ」及び「アクチュエータ制御手段」に関し、モータ及びモータ制御装置を用いることは周知技術(以下、「周知技術1」という。例えば、上記引用文献2(特開2000-234564号公報)の上記2.2(1)の記載等参照)である。 そして、引用発明1において、上記周知技術1を適用して、EGRバルブの開閉制御にリニアソレノイドに代えてモータを用いることにより、相違点1に係る本願発明の特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点2について 一般に、PID制御等のフィードバック制御の出力と目標値の変化に基づいて算出したフィードフォワード制御の出力を加減算し、制御応答性の改善等を行うことは周知技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開2006-161627号公報(2006年6月22日出願公開、段落【0040】ないし【0064】)、特開2006-317372号公報(2006年11月24日出願公開、段落【0025】ないし【0027】)、特開2005-146883号公報(図7)等参照。)である。 また、上記2.2に示したように、「EGRバルブの開閉制御をフィードフォワード制御により行うに際し、開動時と閉動時で共通の駆動デューティーを用いる技術。」は、引用文献2記載の技術である。 そして、引用発明1において、EGRバルブの開閉制御にフィードバックに加えてフィードフォワードを用いるに際し、EGRバルブの開側におけるフィードフォワード定数と閉側におけるフィードフォワード定数とを等しい値に設定することにより、相違点2に係る本願発明の特定事項のようにすることは、引用発明1並びに周知技術2及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明を全体としてみても、本願発明の奏する効果は、引用発明1及び引用文献2記載の技術並びに周知技術1及び2から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用文献2記載の技術並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-10-02 |
結審通知日 | 2012-10-09 |
審決日 | 2012-10-23 |
出願番号 | 特願2008-552058(P2008-552058) |
審決分類 |
P
1
8・
571-
Z
(F02M)
P 1 8・ 121- Z (F02M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石黒 雄一 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
岡崎 克彦 藤原 直欣 |
発明の名称 | EGRバルブ制御装置 |
代理人 | 河村 秀央 |
代理人 | 田澤 英昭 |
代理人 | 濱田 初音 |
代理人 | 久米 輝代 |