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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1267342
審判番号 不服2010-26257  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-22 
確定日 2012-12-13 
事件の表示 特願2005- 16641「海藻の乾燥方法及び化粧料、食料、肥料又は飼料の原料並びにその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月10日出願公開、特開2006-204114〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成17年1月25日の出願であって、平成22年8月25日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成22年11月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正がされたものである。
本願の各請求項に係る発明は、平成22年11月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1には、次のとおり記載されている。

「【請求項1】
乾燥装置内の圧力を大気圧よりも減圧するとともに、乾燥装置内をその圧力における水の沸点以上かつ100℃以下の温度とし、その温度及び圧力条件下で海藻を乾燥することを特徴とする海藻の乾燥方法。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

なお、上記請求項1に係る平成22年11月22日付け手続補正書による補正は、補正前の請求項1に記載された発明の海藻を乾燥する条件が特定の温度だけでなく圧力も含まれることを明りょうにするためにされた補正であって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

2.刊行物
(1)原査定で引用例1として示された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭64-79191号公報(以下「刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。
・「(1) 大量栽培コンブ目原料を、その製造する目的脂溶性成分が高含有となっている時期に収穫したのち、これを乾燥し、裁断又は破砕し、その原料に溶剤を加えて脂溶性成分を抽出することを特徴とするコンブ目大量栽培による脂溶性成分の製造方法。」(第5頁右上欄、特許請求の範囲)
・「大量栽培によるコンブ目原料を、例えばその脂溶性成分を抽出して医薬品、食品、健康食品、飼餌料及び有機肥料などの製造原料として利用することが検討されつつある。」(第5頁左下欄第13行?第16行)
・「製造する目的成分についてそれぞれ最適な時期に収穫した大量栽培コンブを陸揚げ直後に水通しして夾雑物をのぞき、そのまま、または含水率15-20%まで乾燥処理を行う。それ以上の乾燥度にするのは経費の点で無駄になり、20%以上の含水率では貯蔵中の藻体内での成分変動が予想され、貯蔵中に原料としての品質に問題が生じる恐れがある。乾燥を行う場合は、その目的成分構成単位が、例えば不飽和度の高い脂肪酸のように熱、酸化により変成する可能性を持つ場合には熱を加えない乾燥方法を、また酸化の起きにくい状態での貯蔵方法を行うなど十分注意する必要がある。
そのまま、または乾燥処理を行い貯蔵してあった原料海藻について、次にそのままの場合裁断、または乾燥処理した海藻については粉砕器等を用いて破砕処理を行い、原料藻体の表面積を大きくする。
破砕した海藻藻体を、有機溶剤を用いる場合、抽出する目的成分により溶剤を選択して脂溶性成分を抽出する。」(第6頁左上欄第1行?末行)
・「実施例1:コンブ含有ステロール類を目的成分とする脂溶性成分の製造方法
11月に種苗を海中移植した大量栽培コンブを5月に収穫し、陸揚げ直後に水洗いして夾雑物を除き、80℃、0-5mmHgの条件下で減圧乾燥して水分を17.97%とした。これを420μm以下に粉砕して100g取り、水を6L加えて膨潤後余分な水分を圧搾してクロロホルム:メタノール混合液(2:1)を約20L加えて約2日間加熱環流を行いながら脂溶性成分を抽出する。得られた抽出物のうちの抽出溶剤を留去したところ、脂溶性成分として1.52g得た。」(第7頁左上欄第5行?第16行)
・「実施例2:脂肪酸を目的成分とする脂溶性成分の製造方法
7月末に収穫した大量栽培コンブを陸上げ直後に水洗いして夾雑物を除き、室温、0-5mmHgの条件下で減圧乾燥して水分を約7?10%とした。これを420μm以下に粉砕して100g取り、水を6L加えて膨潤後余分な水分を圧搾して除き、クロロホルム:メタノール混合液(2:1)を約20L加えて約2日間加熱環流を行いながら脂溶性成分を抽出する。得られた抽出物の抽出溶剤分を留去したところ、脂溶性成分として2.29g得た。」(第7頁右上欄第8行?第18行)

上記した事項、特に「実施例1」として記載された事項を中心にみると、大量栽培コンブを80℃、0-5mmHgの条件下で減圧乾燥して水分を17.97%とすることが理解できる。

ここで「0-5mmHg」とは、絶対圧で0から5mmHgの範囲の圧力を表現したものであることは、当業者に明らかと言うべきである。
すなわち、食品一般の乾燥について、真空乾燥とも称されることがある減圧乾燥を行うことがあること自体は、技術常識に属する事項であるし、また、その際の圧力の大きさとして、5mmHg以下という値も、当業者が適宜採用するものである(要すれば、藤巻正生、外4名編「食料工業」(初版、(株)恒星社厚生閣、1985年9月25日発行)の「食品保蔵技術 2.乾燥 §2.食品の乾燥方法 2-3 真空乾燥 1)食品の真空乾燥」の項において「食品の真空乾燥において使用される真空度は4?50mmHgの範囲で、乾燥中の品温は常温?70℃以下である.」(第970頁左欄第38行?第40行)と記載されていることを参照されたい。)。
そして、上記記載事項では「0-5mmHg」と「0」が見かけ上含まれる表記となっているが、文字通りの「0mmHg」が実現できるものでないことは、技術常識に属する事項と言うべきであるから、これは、実際的な意味として、「5mmHg以下」と解するのが妥当である。
また、大量栽培コンブを80℃、0-5mmHgの条件下で減圧乾燥した結果、水分が17.97%となったということであるが、当該コンブの水分とは、その表面に付着した水分のみでなく、その多くが植物としてのコンブの細胞の内部に存在するものであることから、このような条件下で減圧乾燥することで大量栽培コンブの水分量が17.97%になるということが技術的に誤まっているということにはならない。

したがって、刊行物には、次の発明が記載されていると認める(以下、この発明を「刊行物記載発明」という。)
「80℃、0-5mmHgの条件下で大量栽培コンブを減圧乾燥する大量栽培コンブの乾燥方法。」

3.本願発明と刊行物記載発明との対比・判断
刊行物記載発明の「大量栽培コンブ」、「減圧乾燥」は、それぞれ、本願発明の「海藻」、「減圧」に相当する。
刊行物記載発明の「0-5mmHg」という条件は、本願発明の「圧力を大気圧よりも減圧する」ことに相当する。また、そのような条件は、「乾燥装置」内で実現されるものであることは、当業者にとり自明の事項である。
また、刊行物記載発明の「80℃」という条件は、前述した圧力の条件を考慮すれば、「その圧力における水の沸点以上かつ100℃以下の温度」であることは、当業者にとって自明の事項である。
そうしてみると、本願発明と刊行物記載発明とで、実質的に相違する点はなく、両発明は、同一である。

4.むすび
以上、本願発明は、刊行物記載発明と同一、すなわち、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-11 
結審通知日 2012-10-16 
審決日 2012-10-29 
出願番号 特願2005-16641(P2005-16641)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木原 啓一郎小暮 道明  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 松岡 美和
加藤 友也
発明の名称 海藻の乾燥方法及び化粧料、食料、肥料又は飼料の原料並びにその製造方法  
代理人 内野 美洋  

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