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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41C
管理番号 1267355
審判番号 不服2011-10299  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-17 
確定日 2012-12-12 
事件の表示 特願2000-603882「電気光学変調器におけるピクセル輝度調節」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月14日国際公開、WO00/53422、平成15年 8月12日国内公表、特表2003-523841〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2000年3月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、1999年3月12日欧州特許庁、1999年3月12日欧州特許庁、1999年4月13日米国、1999年4月13日米国、1999年5月26日米国、1999年7月2日欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成22年4月8日に手続補正がなされ、平成23年1月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月17日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、当審において、平成23年5月17日付け手続補正が平成24年3月29日付けで却下され、同日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月14日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし27に係る発明は、平成24年6月14日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし27に記載の事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、平成24年6月14日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであると認める。

「電気光学変調器の少なくとも一つのゲート電極の電位を調整するステップを含む、イメージ面におけるピクセル若しくはピクセルのグループの輝度を調節する方法であって、
電気光学変調器を介してレーザービームを向けるステップと、
検出器にレーザービームの一部、およびイメージ面にレーザービームの一部をそらすステップと、
前記ピクセル若しくはピクセルのグループによって制御される光の輝度を検出するステップと、
前記検出された光の輝度から調整電位の値を得るステップとを更に含み、
対向電極を個々に若しくはグループ単位でバイアスすることにより、前記調整を行う方法。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
(1)当審拒絶理由で引用した「本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開平6-91935号公報(以下「引用例1」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
ア 「【請求項1】 複数の並列チャネルを有する光学イメージングシステムを等化するための方法において、前補正強度測定値及び後補正強度測定値を提供するため、等化補正の前及び後に前記チャネルの出力強度を反復測定することを前記チャネルに適用する段階を有し、前記測定はnチャネル/測定の解像度で行なわれ、ここに、n=1、2、...N/2であり、Nはイメージングシステムによって包含されるチャネル数であり、更に、平均の所定比率においてしきい値を確立するため、前記前補正強度測定値を平均する段階と、基準値を確立するため、前記前補正強度測定値のうちの一つを選択する段階とを有し、前記一つの強度測定値は、前記しきい値に等しいか、または他の前記前補正強度測定値のいずれよりも大きくない量だけ前記しきい値を越えており、更に、前記チャネルを1セットずつ等化するため、別々の等化係数をnチャネルの各セットに適用する段階と、全ての等化可能なチャネルのセットに対する補正係数を前記基準値に対するその出力強度に基づいて反復調整する段階とを有し、もって、チャネルの相隣るセット間に有意値の光学的クロストークが存在しておっても、前記チャネルのそれぞれの等化可能セットの出力強度が前記基準値と平衡させられることを特徴とする光学イメージングシステムの等化方法。」

イ「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はマルチチャネル光学イメージングシステムに関し、特に前記システムの光学チャネルを動的に等化するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】本明細書においていう「マルチチャネル光学イメージングシステム」とは、感光性記録媒体上に画像を書き込むため、複数の空間的に平行な光学チャネルを有し、同様数のほぼ独立に変調される光学的刺激を与えるようになっているシステムである。この定義に相応する光学イメージバー及びマルチポットレーザスキャナが従来から知られている。前記定義に相応するものとしては、また、複数の個別光学記録ビームを有するイメージングシステム、及び、単一ビームが空間的に変調されて複数のほぼ平行な光学的刺激を提供するという形式のシステムがある。
【0003】マルチチャネル光学イメージングシステムの平行度は、特に高速印書に対して、興味ある問題である。一般に、イメージバーは、ラインプリンティング及び類似の用途のため、その光学チャネルが画像平面において接線方向に(即ち、イメージングフィールドに対して横断方向に)互いに空間的に変位するように方向付けされる。他方、マルチスポットラスタ出力スキャナ(ROS)は、一般に、その光学チャネルが画像平面においてサジタル方向(「プロセス」方向と呼ばれる場合もある)に互いにずれるように方向付けされる。マルチスポットROSは、通例、少数のチャネルしか有していないが、光学イメージバーは多数のチャネルを有する場合が多い。
【0004】機能的及び構造的に異なっていても、大部分のマルチチャネル光学イメージングシステムは、そのチャネルが光学的に良好に平行しているときに最良にする。かかるイメージングシステムのチャネルの名目(即ち、未変調)光学的照度または光学的伝達特性間に意図しない有意の差異があると、これは、例えば縞のような、不所望なイメージング欠陥の発生源となる可能性がある。ところが、例えば、通例ある電気的及び光学的ドリフト、ならびに、塵埃及び他の環境的汚染物の通常の堆積のような種々の因子のために、イメージングシステムのチャネル平衡が時間の関数として乱されやすい。「マルチチャネル光学イメージングシステム」(Dynamic Equalization of Multichannel Optical Imaging Systems) なる係属中の米国特許出願第454,564 号(1989年出願)には、この問題に対する一般的解決法が記載されているが、かかるイメージングシステムの光学チャネル間に有意且つ不可避の光学的クロストークがある場合に生ずる付随問題に対処し、1つのチャネルまたは一群のチャネルの名目光学出力強度に対して行なう調節がその隣のものの名目光学出力強度に作用するようにする、ということについての説明はない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来の問題を解決するため、マルチチャネル光学イメージングシステムの光学チャネルを動的に等化するための補正係数(審決注:「補正計数」は「補正係数」の明らかな誤記であるので訂正して摘記した。以下同じ。)を、個別にまたは1群ずつ(以下、まとめて「1セットずつ」という)、イメージングシステムが作動していない間に(即ち、印字していないときに)、反復的に計算する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明方法は、チャネルのそれぞれのセットの出力強度を測定する段階と、前記測定されたチャネル強度をシステム更正済み基準強度値に対して順々に比較する段階と、前記基準強度値から偏っている強度値で動作していると認められるチャネルの各セットに対する補正係数を、その偏りの大きさを減少させるのに必要な方向に調節する(補正係数値が前記方向におけるダイナミックレンジの限界に既になっていない限り)段階とを有す、前記諸段階を反復する。好ましくは、前記補正係数の調節を、その最小有効値を加減することによって行ない、これにより、チャネルの相隣るセット間に生ずるクロストークの量に関し、直前の反復の状態に対する各反復の感度を最大にする。例えば、補正係数はマルチビット2進値であり、この値は、その最小有効ビット(LSB)を加減することによって調節される。前記基準強度値は、一般に、チャネルのそれぞれのセットの未補正出力強度を測定し、次いで、最低有効強度で動作していると測定されるチャネルのセットの強度を基準強度として用いるために選定することにより、更正される。この更正手順を、基準値を時折り再更正するための所定のスケジュールで繰り返し、イメージングシステムの光学特性の逐次的ドリフトを補正する。
【0007】本発明の他の特徴及び利点は、図面を参照して行なう以下の詳細な説明から明らかになる。」

ウ 「【0008】
【実施例】図面について説明すると、図1に示す光学イメージングシステム11は複数のほぼ平行な光学チャネル12a?12iを具備しており、前記チャネルは個別にアクセス可能な光学画素ジェネレータ13a?13iをそれぞれ有し、感光性記録媒体14上に画像を印字するようになっている。通例の方法に従い、印字は、入力データサンプルに従って画素ジェネレータ13a?13iの出力強度をほぼ独立に変調することによって行なわれる。電気的変調は若干の形式の画素ジェネレータ13a?13iに適しており、光学的変調は他の形式の画素ジェネレータに適している。若干のイメージングシステムはその画素ジェネレータ13a?13iをアナログ変調するようになっており、他のイメージングシステムはディジタル(「オン/オフ」)変調を行なうように設計されている。前述したように、画素ジェネレータ13a?13iは個別にアドレス可能な光学的変調器のアレイであり、前記変調器は、単一の放射源によって照明されるか、または該変調器が、発光ダイオード(LED)またはレーザのような、それぞれの放射線源となっており、該放射源は内部的または外部的に変調される。
【0009】図2に示すように、画素ジェネレータ13a?13iは、記録媒体14の横方向に(即ち、接線方向に)、ほぼ等しい中心間距離で分散配置された画像を印字するようになっており、記録媒体14は、図示してない手段により、矢印15で示すように、直交の「プロセス」方向に進ませられる。これは、例えば、光学的ラインプリンティングのための従来からある構成である。或いはまた、図3に示すように、画素ジェネレータ13a?13iは、プロセス方向に(即ち、記録媒体14に対してサジタル的に)互いに偏らせられる。例えば、マルチスポットレーザROSは、通例、回転式多角形体18のようなデフレクタを具備し、矢印20で示すように記録媒体14を横切ってダイオードレーザアレイ19の出力ビームを走査するようになっており、この間、記録媒体14は、矢印15で示すように、プロセス方向に直交的に進ませられる。このようにして、かかるスキャナはラスタ走査パターンに従って画像を印字する。
【0010】マルチスポットレーザスキャナは、その走査ビームの接線的及びサジタル的分離を包含するパターンを含むインタリーブド走査パターンを用いることがしばしばあるが、スキャナが使用する種々の走査パターンの詳細についての説明は省略する。イメージバー及びマルチスポットスキャナは、通例、1つまたは複数の映像レンズ21(図3)を有し、その画素ジェネレータ13a?13iを記録媒体14上に映像するようになっている。かかるイメージングシステムの入力及び出力光学サブシステムは、いずれも、通例いくつの光学要素を含んでいるが、その詳細についての説明は省略する。
【0011】図4に示すように、光検出器25が設けられ、イメージングシステム11が作動していないときに時折りイメージングシステム11の光学チャネル12a?12iの出力強度を量的に測定するようになっている。この強度測定は、nチャネル/測定(nは1、2、・・・N/2 の範囲から選択された整数、Nはイメージングシステム内のチャネルの総数である)の所定のサンプリング解像度または粒状度で次々に行なわれる。この強度測定の結果を用いて、更新された照明及び/又は減衰の補正係数を作る。この補正係数は、イメージングシステム11のチャネル平衡を、強度測定が行なわれる解像度によって定まる感度限界の値にリストアするのに役立つ。チャネル再平衡化処置は、イメージングシステム11が作動していないときに周期的にまたは非周期的に行なわれるが、チャネル平衡を通常の作動状態の下で許容範囲内に保持するように十分に頻繁に行なうのが好ましい。若干のイメージングシステムにおいては光学チャネルの出力強度を1つずつ(即ち、n=1)等化することが必要または望ましいが、他のイメージングシステムにおいては光学チャネルを、もっと粗く1群ずつ(即ち、1<n≦ N/2)等化すれば十分またはより実用的である。
【0012】ソレノイド作動モータ26等が光検出器25に接続され、該光検出器を、画素ジェネレータ13a?13iと記録媒体14との間の光学的サンプリング位置に対して機械的に差し入れまたは引き出しするようになっている。例えば、図示のように、モータ26は、光検出器25を、強度測定を行なうための映像レンズ21の出力側におけるサンプリング位置(図4に実線で示す)と、通常の印字のためのイメージングシステム11の光学チャネル12a?12iから光学的に遠い記憶位置(破線で示す)との間で、前後に移動させる。或いはまた、ビームスプリッタ(図示せず)を用い、映像レンズ21によって集められた光のうちの所定部分を光検出器25の方へ偏らせる。或いはまた、回転式ミラー(図示せず)を設け、映像レンズ21によって集められた光を、印字のために記録媒体14へ向けて、またはチャネル再平衡化のために光検出器25へ向けて、反射的に導く。
【0013】好ましくは、強度測定を行なうため、チャネル12a?12iまたはチャネルの群の一つずつを、先ず、「フルオン」(full-on)へ切り替えてその名目強度値で作動させ、次いで、「フルオフ」(full-off)へ切り替えてその「背景」(backfround) 強度値で作動させる。選択されたチャネルまたはチャネルの群のフルオン強度及び背景強度が測定されている間、他の全てのチャネルはそのフルオフ状態に保持される。この測定が行なわれるときの解像度nは、イメージングシステム11のN個の光学チャネル12a?12iをN/n 個の互いに排他的の「サンプルセット」(sample set) に効果的に再分割する。二重位相のフルオン/フルオス強度測定サイクルは好ましいものである。即ち、これにより、光検出器25は比較的速い交流モードで動作し、サンプリングが比較的高い速度で行なわれるときに、該光検出器の交流出力電圧値は、順次サンプリングされるチャネルまたはチャネルの群のフルオン/背景強度の揺れを信頼性をもって追跡するのである。しかし、チャネルのフルオンの未補正出力強度の単位相測定を用い、nチャネル/測定の任意の選択された解像度における前記チャネルの相対的最大の未補正出力強度を測定することもできるのであるが、このようにすると、各々の強度測定値を比較的直流電圧値として供給するためには、光検出器25の直流動作モードを遅くすることが必要となる。
【0014】アナログ/ディジタル(A/D)変換器27が光検出器25に接続され、測定されたチャネル強度を2進値の所定スケール上にマッピングするようになっている。例えば、A/D変換器27は、標準の8ビット語を採用し、0から255までの範囲の値を有する2進スケール上に強度測定値をマッピングする。これら2進強度値をマイクロプロセッサ31のI/Oポートに加え、適当なメモリ32内の所定のアドレスに記憶させる。これにより、イメージングシステム11の光学チャネル12a?12iの最も新しく測定された出力強度の特性を選択されたサンプリング解像度nで記述するための最新強度テーブル102(図11)を提供する。
【0015】以下に詳述するように、イメージングシステム11に対する強度テーブルが完全に更新された後、マイクロプロセッサ31はこのテーブルを走査して、最低有効出力強度値で動作しているnr セットのチャネルを識別し、及びこのセットのチャネルに対する2進強度値を測定する。要すれば、任意の2進強度値を「有効」として受容してもよいが、マイクロプロセッサ31は、好ましくは、最低有効強度値が、欠陥性の画素ジェネレータの存在を指示するのに十分に低い強度値を排除するように選択されたしきい値を越えている、ということを確認するための妥当性検査手続きを実行するようにプログラムされる。例えば、この妥当性検査手続きは、強度テーブル内の強度値の平均の所定の有効比率よりも下になる全ての強度値を無効化し、これにより、比較的少数の欠陥性画素ジェネレータがイメージングシステム11の非欠陥性チャネルの等化済み出力強度に悪影響を与えることを妨げる。
【0016】イメージングシステム11の光学チャネル12a?12iを光学的に平衡化または等化するため、マイクロプロセッサ31は更新済み補正係数を供給し、非欠陥性のチャネルのセットを、最低有効出力強度値で動作していると既に認められているnr チャネルとほぼ同じ名目出力強度値で動作させる。この補正係数は、二重ポートRAMのような二重ポートメモリ36内の所定のアドレスに記憶され、該補正係数は、イメージングシステム11がその印字モードで動作しているときに光学チャネル12a?12iを等化するため、必要に応じてアクセスされる。メモリ32及び36は、別々のメモリ装置であるか、または同じメモリ装置内の相異なるアドレスバンクである。
【0017】イメージングシステム11のnチャネル毎に別々の補正係数が提供される。後で詳述するように、これら補正係数の全ては、イメージングシステム11が先ずパワーアップされると、ナル値にリッセトされ、これにより、類似値の影響を受けることなしに前述の強度テーブルが構成される。補正係数の各々はxビット2進数で表され、2x までの相異なる補正値が利用可能となる。例えば、5ビット補正係数を用いて32の相異なる補正値を提供することができ、値ゼロ(00000)または値31(11111)はナル補正値となる。前述したように、最低有効出力強度値で動作していると認められるnr チャネルの強度値が、それ自体に対してまたはイメージングシステム11の他のチャネルに対して補正係数を調整するための基準として、マイクロプロセッサ31によって用いられる。チャネルの相隣るセット間の光学的クロストークは、これらに対して行なわれる等化補正値の関数として変化する。それで、等化過程の各反復中に補正係数の各々に対して適切な調整を行なうための装備をなす。
【0018】図5について説明すると、本発明は、例えば、EO TIR(電気光学全内反射)イメージバー41の光学チャネルを等化するために用いられる。例えば米国特許第 4,367,925号に詳細に記載されているように、イメージバー41は、一般に、ラインプリンタ42内に設けられ、記録媒体14が矢印15で示すプロセス方向に進ませられているときに、ゼログラフィ感光体のような感光性記録媒体14を、空間的に変調される放射強度プロフィール43に露光させるようになっている。図示のように、強度プロフィール43は記録媒体14上のイメージングフィールドの全幅を照明し、これを、画像の順次続く行に対するデータサンプルに従って所定のラインプリンティング速度で1行ずつ順次空間的に変調する。
【0019】図6及び図7に更に詳細に示すように、イメージバー41はEO TIR空間的光変調器44及びシュリーレンイメージングシステム45(図5)を含んでおり、変調器44を記録媒体14上に映像するようになっている。変調器44は、光学的に研磨された縦方向面48を有する LiNbO3 結晶のような光学的に透過性の電気光学素子47、及び研磨済みまたは反射性の面48に至近近接している電気光学素子47の縦方向に延びる複数の個別的アドレス可能な電極49a?49zを具備する。一般に、電極49a?49zはVLSI回路50上に作られ、該電極をそのアドレシング及びドライブ用の電子工学装置と統合させている。
【0020】作動においては、電気光学素子47のほぼ全幅を、シート状の接線方向平行な光ビーム51によって照明する。光ビーム51は、反射面48に対するほぼすれすれの入射角で電気光学素子47に入り込み、従って、該光ビームは本質的にそこから全内反射する。光ビーム51を、面48の上またはその近くで、好ましくは電極49a?49zの長さのほぼ中央で、くさび状に合焦させるための手段が講じられている。
【0021】図8について説明すると、生の入力データサンプルをクロック式制御器56の制御の下で1行ずつ差分エンコーダ55によって差分コード化する。作動中、制御器56は、高速マルチプレクサ57をして、前記差分コード化されたデータサンプルをイメージバー41(審決注:「イメージバー44」は「イメージバー41」の明らかな誤記であるので訂正して摘記した。)の電極49a?49z上にリップルさせ、これにより、画像の順次続く行に対する生のデータサンプルは、継続するラインプリンティング時間中、電極の相隣る対間の電圧降下によって表される。この電極間電位差により、比例した強さのフリンジ電界が作られ、この電界は電極49a?49zのほぼ全長に沿って電気光学素子47(図6)内に侵入する。前記電界が侵入する深さは、かなりの部分が、電気光学素子47の誘電率によって定まる。従って、前記フリンジ電界は、電気光学素子47の屈折率を、画像の順次続く行に対するデータサンプルに緊密に従って変調器44(審決注:「変調器46」は「変調器44」の明らかな誤記であるので訂正して摘記した。)の幅方向に局部的に変調する。これら局部的屈折率変化は、光ビーム51が伝播する相互作用領域内で、電気光学素子47の反射面48に対して接近及び隔離する途中で生ずる(図6を参照)。即ち、変調器44は、画像の順次続く行に対するデータサンプルに従って光ビーム51の同位相波面を連続的に空間的に変調する。なお、米国特許第 4,636,039号を参照されたい。
【0022】再び図5について説明すると、シュリーレンイメージングシステム45は、光ビーム51のゼロ次または高次のいずれかの回折成分を抑制し、残りまたは未抑制の回折成分を記録媒体14上に合焦させ、これにより、光ビーム51の空間的に変調された同位相面を、対応的に変調された強度プロフィール43に変換する。一般に、イメージングシステム45は「中央暗視野」(central dack field)シュリーレンシステムとして知られているものであるが、設計者によっては、いわゆる「中央明視野」(central bright field) シュリーレンイメージングシステムの方を好む。
【0023】イメージバー41は、通例、多数の光学チャネルを有す。その故に、図9に示すように、マルチプレクサ57(審決注:「マルチプレクサ56」は「マルチプレクサ57」の明らかな誤記であるので訂正して摘記した。)はM+1本のデータ出力線を有す。その内のM本の線を用い、差分エンコード済みデータを変調器44の電極49a?49z上にMビット幅データ語で直列にリップルさせる。順次続くデータ語はクロック式制御器56(審決注:「ロック式制御器56」は「クロック式制御器56」の明らかな誤記であるので訂正して摘記した。)の制御の下でM個の相隣る電極の順次続く群へ導かれる。この目的のため、アドレスデコーダ67a、67b、68a、68b、・・・は、制御器56によって供給されるアドレスをデコードしてパストランジスタまたはアドレスゲート71a?71mを選択的にイネーブルし、順次続くアドレス指定サイクル中に電極のそれぞれの群をデータ線に接続する。同時にアドレスされる電極の各群の最終または境界電極49mに対するアドレスゲートは、好ましくは、電極の次の隣の群がアドレスされているときに書換えデータ線72からの境界電極49m上にデータをリフレッシュするための重ね書きトランジスタ71mであり、これにより、電極がアドレスされている最中に電極の次の群から生ずるクロストークのために前記データが受けるひずみを減少させる。適当するデータ多重化及び電極アドレス指定方法の詳細については、SPIE会議(Proceedings of the SPIE)、第299巻(1982年)所載の、レーザ走査技術の進歩に関する8月27?29日SPIE協議会(Augaust 27-29 SPIE Conference on Advance in LaserScanning Technology)の、ダブリュー・ディー・ターナ(W. D. Turner) 等の論文「レーザプリンティングのための総合的全内反射(TIR)空間的光変調器」(Integrated Total Internal Reflection(TIR) Spacial Light Modulator)を参照されたい。この論文には、16ビット幅データ語書式を用いて差分コード化データサンプルを5376の個別的アドレス可能電極51a?51z上に多重化することについて記載されており、各々が16の隣接電極から成る336の相異なる電極群に順々にアドレスすることが企図されている。
【0024】図10について説明すると、電極49a?49zの1群ずつのアドレス指定が、対応の1群ずつのイメージバー41の光学チャネルの動的等化に好適する。イメージバー41の光学チャネルの出力強度をこのような基準で測定するため、高(1)及び低(0)の論理レベルビットが交番するビット幅テストパターンをマルチプレクサ57の出力データ線に加え、この間、制御器56は順次続く群の電極に直列にアドレスする。このテストパターンは、図示のように、例えばマイクロプロセッサ31のような適当する任意の手段によって供給され、差分エンコーダ55によってフォーマティングされる。
【0025】フォーマティングされた後、テストパターンは本質的に「フルオン」及び「フルオフ」ビット(イメージバー41のドライブ電圧限界によって定義される)から成り、従って、制御器56が任意の時にアドレスしている電極群内の電極の隣接対間の電極間電圧降下を最大にし、これらが制御する光学チャネル(即ち、これら電極間のチャネル)をその名目の未変調出力強度値で動作させる。光検出器25は、実線で示すその光学的サンプリング位置に保持され、この間、前のテストパターンが電極群に1つずつ適用され、これにより、1群ずつのイメージバー41の光学チャネルの最大の未補正出力強度値を測定することが可能になる。前に説明したように、前述の強度測定サイクルは好ましくは二重位相サイクルであり、このサイクルにおいては、フルオンテストパターンの後にフルオフテストパターン(全てが「0」または「1」の論理レベルビット)が続き、チャネルの各群のフルオン及び背景の強度値をそれぞれ測定する。
【0026】前述したように、光検出器25の量的強度測定により、マイクロプロセッサ31は、イメージバー41の光学チャネルを所望の粒状等で等化するための補正係数を計算することが可能になる。この補正係数は、プリンタ42が動作していないときに時折りに再計算され、これにより、該補正係数を再更正し、イメージバー41の光学チャネルの光学的照度または伝送特性の有意の動的変化を説明する。従って、プリンタ42が印字機能を行なうことを要求されると、制御器56はメモリ36にアドレスし、前記チャネルに対する電極のそのアドレス指定と調時的に同期して光学チャネルのセットまたは群の1つずつに対する補正係数を検索する。D/A変換器71は、光学チャネルの任意のセットに対するメモリから読み出された補正係数を、データ線電圧レギュレータ72に対する比例的アナログ制御電圧に変換する。この制御電圧は、電圧レギュレータ72をして、所定の光学チャネルに対する電極に加えられた差分コード化データの高(「1」)及び低(「0」)の論理レベルビット間の電位差を規制させ、これにより、前記チャネルを名目動作条件の下で(即ち、データ変調のない状態で)ほぼ基準強度値で動作させる。他の群の電極によって制御される光学チャネルの出力強度はその補正係数によって同様に制御され、従って、実質的に1群ずつの光学的等化が得られる。
【0027】図11(審決注:「図1」は「図11」の明らかな誤記であるので訂正して摘記した。)について説明すると、図はイメージングシステムを等化すべき基準強度値を更正するための更正ルーチン100を示すものである。このルーチン及び以下に記載する他のルーチンを、イメージングバー41(図5?10)の光学チャネルの1群ずつの等化について説明するが、所望の粒状度で等化を行なうために必要に応じてこれらを簡単に変形することができる。
【0028】図11に示すように、イメージバー41に対する強度テーブルを構築するためのビルド強度サブルーチン102を呼び出す前に、イメージングシステム11がパワーアップされるとメモリ36(図10)は初期設定され、参照番号101におけるように、全ての補正値はナル値にリセットされる。ここで図12について説明すると、ビルド強度テーブルサブルーチン102は、参照番号103におけるように、先ず第1の群の電極にアドレスすることによってイメージバー41に対する強度テーブルを構築し、参照番号104におけるように、二重位相テストパターンを前記電極に適用する。その結果、参照番号107におけるように、前記第1の群の電極の制御のための光学チャネルのフルオン強度値105と背景強度値106との間の差が測定されて対応の2進強度値が提供され、参照番号108におけるように、メモリ(図10)に記憶される。参照番号109におけるように、この手順が繰り返され、参照番号111におけるように、電極の他の群が1つずつアドレスされ、これにより、参照番号104?109におけるように、該電極が制御する光学チャネルの未補正出力強度値を表す2進強度値が決定され、そしてメモリ32にロードされ、これで強度テーブルの構築が完了する。
【0029】再び図11について説明すると、欠陥チャネルがイメージバー41の等化に対して重大な影響を与えることを防止するため、参照番号115におけるように、先ず強度テーブル内の値の平均を見付けることにより、イメージバー41が等化されるべき基準強度値を更正し、これにより、参照番号116におけるように、基準強度に対する最小しきい値(即ち、「最小ワーキングレベル」(mimimum working level))を平均強度値の所定の有意比率に適応的にセットする。その後、参照番号117におけるように、強度テーブルを走査し、動作していると認められるチャネルのセットの強度値(即ち、「最小有効値」(mimimum valid value))または前記ワーキングレベルしきい値の上の最小量を、イメージバー41に対する基準強度値(即ち、「最小有効値」)として選択する。
【0030】次に図13について説明すると、等化ルーチン121はイメージバー41の光学チャネルに対する補正係数を調整し、「等化可能」(equalizable)のチャネル群を、基準強度値でまたはその付近で動作させる。前述したように、欠陥画素ジェネレータは、1つまたは複数のチャネル群が等化されるのを阻止する可能性がある。従って、これらの「非等化可能」(non-equalizable)のチャネルに対する補正係数は、やがては、それらの調整の動的範囲の限界に到達し、その後はこの限界に留まる。
【0031】等化ルーチンを実行するため、ポインタをメモリ32及び36(図10)にセットし、参照番号122及び123におけるように、チャネルの第1のセットまたは群に対する最新に測定された強度値を強度テーブルから検索し、及びこれらチャネルに対する現在補正係数にアクセスする。これにより、参照番号124におけるように、その現在強度値をイメージバー41に対する現在の基準強度値に対して比較し、この第1のチャネル群が、基準強度値よりも上で、または下で、または該強度値で動作しているかどうかを測定する。この第1のチャネル群が「等化可能」であり、そして補正値レベル31(11111)がナル補正値であると仮定すると、その出力強度が基準値よりも下である場合には、参照番号125におけるように、前記第1のチャネル群に対する補正係数の値をインクリメントし、その出力強度値が基準強度値を越える場合には、参照番号126におけるように、デクリメントし、または、このチャネル群が基準強度値で動作している場合には、現在値に保持する。前記第1のチャネル群に対する補正係数に対して必要な全ての調整を行なったのち、参照番号127及び128におけるように、メモリポインタをインクリメントし、次の群のチャネルを基準強度値に等化するために該群に対する補正係数を更に調整することが必要であるかどうかを測定する。前記過程を参照番号129において反復し、それぞれのチャネル群の出力強度を基準強度値に対して順々に比較し、これにより、基準強度値に対してよく平衡していない等化可能チャネル群に対する補正係数を必要に応じてインクリメントまたはデクリメントしてその不平衡を減少させる。
【0032】各等化パスが完了したら、等化ルーチン121は、参照番号131において、基準強度値を再更正する時であるかどうかを測定する。基準強度値を再更正する時ではまだない場合には、等化ルーチン121はビルド強度テーブルサブルーチン102を呼び出して該強度テーブルを更新し、これにより、前記強度テーブルをしてイメージバー41の光学チャネルの補正済み出力強度値を追跡させる。前記強度テーブルを更新したのち、等化ルーチン121は、参照番号102、122?129及び131におけるように、他の比較/調整過程を開始し、それぞれのチャネルセットに対する補正係数のうちのどれかを更に調整することが必要であるかどうかを測定する。好ましくは、補正係数に対する必要な全ての調整を、そのLSBをインクリメントまたはデクリメントすることによって行ない、これにより、イメージバー41の光学的平衡の反復間変動を最小にする。これは、発生する可能性のある変化に対する等化過程の感度を最大にし、この間、補正係数は、相隣るチャネル群間の光学的クロストークの値に調整される。
【0033】好ましくは、イメージバー41に対する基準強度値を時折り再更正する。この理由のため、等化ルーチン121が、参照番号131において、基準強度が最後に更正されてから所定の時間が経過したということを測定する度ごとに、該ルーチンは基準値更新ルーチン141(図14)を呼び出す。図示のように、更新ルーチン141は、イメージバー41に対して前に計算された補正値を、参照番号142におけるように、一時的記憶場所へ転送し、次いで、補正メモリ36(図10)内の全てのアドレスをナル補正値にリセットする。次に、更新ルーチン141は、ビルド強度テーブルサブルーチン102(図11)を呼び出してイメージバー41に対する最新の未補正強度テーブルを構築し、次いで、参照番号144におけるように、前に計算された補正係数を補正メモリ36(図10)内の適当するアドレスに再ロードさせる。その後、基準値更新ルーチン(図11)は更正ルーチン100の計算ステップ115及び116を呼び出し、これにより、参照番号117において、イメージバー41に対する再更正済み基準強度値が確立される。
【0034】補正係数値は、好ましくは、そのLSBをインクリメント及びデクリメントすることによって調整されるから、提供される補正値の数は、イメージバー41を等化するのに必要な等化ルーチン121(図13)の反復数を決定する。例えば、補正係数が5ビット2進値であって32の相異なる補正値を提供する場合には、基準値を差更正する度ごとにイメージバー41を等化するために等化過程の32の反復が必要となる。しかし、所定の基準値に対して等化が一旦得られると、その後の等化過程の反復は、イメージングシステム11の光学的混乱を補償するだけであるので、互いに効果的に独立となる。」

エ 「【0035】
【発明の効果】以上の説明から解るように、本発明によれば種々の形式のマルチチャネル光学イメージングシステムの光学チャネルを動的に等化するための精密処理が提供される。更に、かかる等化は、差分コード化データによって駆動されるシステムを含む、種々の形式の入力データによって駆動されるマルチチャネル光学イメージングシステムを考慮したものである。」

オ 上記アないしエからみて、引用例1には、
「複数のほぼ平行な光学チャネル12a?12iを具備しており、該チャネルは個別にアクセス可能な光変調器のアレイであって、記録媒体14の横方向に、ほぼ等しい中心間距離で分散配置された画像を印字するようになっている光学画素ジェネレータ13a?13iをそれぞれ有し、
入力データサンプルに従って、単一の放射源によって照明される画素ジェネレータ13a?13iの出力強度をほぼ独立に所定のラインプリンティング速度で1行ずつ順次空間的にディジタル(「オン/オフ」)変調することによって、プロセス方向に進ませられる前記記録媒体14上に画像を印字するようになっている、
光学的ラインプリンティングのための光学イメージングシステム11であって、
前記画素ジェネレータ13a?13iは、例えば、EO TIR空間的光変調器44及びシュリーレンイメージングシステム45を含んでいるイメージバー41であり、
前記光変調器44は、光学的に研磨された縦方向面48を有するLiNbO_(3)結晶のような光学的に透過性の電気光学素子47、及び、VLSI回路50上に作られ、研磨済みまたは反射性の反射面48に至近近接している電気光学素子47の縦方向に延び、そのアドレシング及びドライブ用の電子工学装置と統合させている、複数の個別的アドレス可能な電極49a?49zを具備し、その全幅がシート状の光ビーム51によって照明され、該光ビーム51を、前記反射面48の上またはその近くで、好ましくは前記電極49a?49zの長さのほぼ中央で、くさび状に合焦させるための手段が講じられて、該光ビーム51が前記反射面48に対するほぼすれすれの入射角で前記電気光学素子47に入り込み、該光ビーム51が本質的にそこから全内反射する、レーザプリンティングのための総合的全内反射(TIR)空間的光変調器であり、
前記アドレシング及びドライブ用の電子工学装置は、クロック式制御器56によって供給されるアドレスをデコードしてパストランジスタまたはアドレスゲート71a?71mを選択的にイネーブルし、順次続くアドレス指定サイクル中に前記電極49a?49zのそれぞれの群をデータ線に接続するアドレスデコーダ67a、67b、68a、68b、・・・を備え、
生の入力データを前記制御器56の制御の下で1行ずつ差分エンコーダ55によって差分エンコードし、前記制御器56が、高速マルチプレクサ57をも用いて、前記差分エンコード済データを前記イメージバー41の前記電極49a?49z上にリップルさせ、これにより、画像の順次続く行に対する生の入力データを、継続するラインプリンティング時間中、前記電極49a?49zの相隣る対間の電圧降下によって表し、この電極間電位差により、比例した強さのフリンジ電界を作り、このフリンジ電界が、前記電極49a?49zのほぼ全長に沿って前記電気光学素子47内に侵入して、前記電気光学素子47の屈折率を、画像の順次続く行に対する前記データに緊密に従って局部的に変調し、これら局部的屈折率変化は、前記光ビーム51が伝播する相互作用領域内で、前記電気光学素子47の前記反射面48に対して接近及び隔離する途中で生じ、これにより、前記光変調器44が前記データに従って前記光ビーム51の同位相波面を連続的に空間的に変調し、前記シュリーレンイメージングシステム45が、該光ビーム51のゼロ次または高次のいずれかの回折成分を抑制し、残りまたは未抑制の回折成分を前記記録媒体14上に合焦させることにより、前記光ビーム51の空間的に変調された同位相面を対応的に変調された強度プロフィール43に変換し、前記マルチプレクサ57が有するM+1本のデータ出力線の内のM本の線を用い、前記差分エンコーダ55による差分エンコード済みの前記データを前記光変調器44の前記電極49a?49z上にMビット幅データ語で直列にリップルし、順次続くデータ語を前記制御器56の制御の下でM個の相隣る前記電極49a?49zの順次続く群へ導く、
光学イメージングシステム11において、
かかるイメージングシステムのチャネルの未変調の光学的照度または光学的伝達特性間に意図しない有意の差異があり、縞のような、不所望なイメージング欠陥の発生源となる可能性があり、電気的及び光学的ドリフト、ならびに、塵埃及び他の環境的汚染物の通常の堆積のような種々の因子のために、イメージングシステムのチャネル平衡が時間の関数として乱されやすいといった問題を解決するため、マルチチャネル光学イメージングシステムの光学チャネルを動的に等化するための補正係数を、個別にまたは1群ずつ(以下、まとめて「1セットずつ」という)、イメージングシステムが作動していない間に(即ち、印字していないときに)、反復的に計算し、前記チャネルのそれぞれの等化可能セットの出力強度を基準値と平衡させる、光学イメージングシステムの等化方法を提供することを目的として、
前記電極49a?49zの1群ずつのアドレス指定を、対応の1群ずつの前記イメージバー41の光学チャネルの動的等化に適用するために、光検出器25及びビームスプリッタを設けるとともに、前記イメージバー41の光学チャネルの出力強度を所定の基準で測定するため、高(1)及び低(0)の論理レベルビットが交番するビット幅テストパターンをマルチプレクサ57の出力データ線に加え、この間、前記制御器56が順次続く群の電極に直列にアドレスし、このテストパターンがマイクロプロセッサ31のような手段によって供給されると、前記差分エンコーダ55が、本質的に“フルオン”及び“フルオフ”ビットから成り、前記制御器56が任意の時にアドレスしている電極群内の電極の隣接対間の電極間電圧降下を最大にするようにフォーマティングして制御する光学チャネル(即ち、これら電極間のチャネル)をその未変調出力強度値で動作させ、その出力光のうちの所定部分を前記ビームスプリッタにより前記光検出器25の方へ偏らせ、これにより、1群ずつのイメージバー41の光学チャネルの最大の未補正出力強度値を、前記光検出器25により測定することを可能にし、該光検出器25の量的強度測定により、前記マイクロプロセッサ31が、前記イメージバー41の光学チャネルを等化するための補正係数を計算し、従って、プリンタ42が印字機能を行なうことを要求されると、前記制御器56は、メモリ36にアドレスし、前記チャネルに対する電極のそのアドレス指定と調時的に同期して光学チャネルのセットまたは群の1つずつに対する補正係数を検索し、D/A変換器71が、光学チャネルの任意のセットに対するメモリから読み出された補正係数を、データ線電圧レギュレータ72に対する比例的アナログ制御電圧に変換し、この制御電圧が、電圧レギュレータ72に、所定の光学チャネルに対する電極に加えられた差分コード化データの高(「1」)及び低(「0」)の論理レベルビット間の電位差を規制させ、これにより、前記チャネルをデータ変調のない状態でほぼ基準強度値で動作させ、他の群の電極によって制御される光学チャネルの出力強度もその補正係数によって同様に制御して、実質的に1群ずつの光学的等化を得られるようにした、
光学イメージングシステムの等化方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)当審拒絶理由で引用した「本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-307169号公報(以下「引用例2」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0008】
【実施例】図1は、本発明の一実施例の概略的な電気的構成を示す。液晶コントロール回路11からは、水平走査期間1H毎に極性が反転する矩形波として交流化信号Viが導出される。この交流化信号Viは演算増幅器12によって増幅され、その出力電圧はVoとなる。液晶パネル13の共通電極14には、調整器15からのバイアス電圧が与えられる。調整器15は、正の電源電圧VsHおよび負の電源電圧VsL間に接続される可変抵抗器VRの可動接点からの出力を共通電極14に与える。演算増幅器12からの出力Voは、容量Cを有するコンデンサ16によって直流カットされて共通電極14に与えられる。このようにして、共通電極14には、バイアス電圧に重畳して交流出力Voが与えられる。」

イ 「【0010】図2は、液晶パネル13に関連する概略的な電気的構成を示す。液晶パネル13には、薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と略称する)を、二次元マトリクス状に配置したTFTマトリクス100が含まれる。TFTマトリクス100は、n個の走査電極101および3m個の信号電極102によって駆動される。本実施例では、3つの絵素電極103によって1つの絵素を構成してカラー表示を行う。信号が与えられた走査電極101にゲートGが接続され、信号が与えられた信号電極102にソースSが接続される。TFT104は、絵素電極103を駆動する。絵素電極103は、対向電極105と間隔をあけて対向しており、これらの電極103,105の間隙には液晶が封入されている。TFT104が能動化されると、液晶の表示態様が変化し、その画素での表示を行うことができる。液晶パネル13は、マトリクス状に配置された各絵素による表示を組み合わせて全体としての画像表示を行う。対向電極105は、通常は全ての絵素電極103に共通に配設された1個の導電層であり、共通電極14として交流化信号を印加して駆動する。共通電極14に交流化信号を印加するのは絵素電極103と対向電極105の間の液晶層を直流駆動すると、液晶の特性が劣化するからである。」

ウ 上記ア及びイからみて、引用例2には、
「互いに対向する絵素電極及び対向電極と、走査電極及び信号電極によって駆動され、前記絵素電極を駆動するTFTマトリクスと、バイアス電圧が与えられる共通電極とを含み、前記対向電極は全ての前記絵素電極に共通に配設され前記共通電極として駆動されること。」(以下「引用例2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明において、単一の放射源によって照明される画素ジェネレータ13a?13iの光学チャネル12a?12iの出力のそれぞれが記録媒体14上に画像の対応する画素を印字することが当業者に自明であるから、各光学チャネルは記録媒体上に各画素に対応する画素といえる。
したがって、引用発明の「光学チャネル」は本願発明の「ピクセル」に相当し、引用発明の「光変調器」、「電極49a?49z」、「電位差を規制」、「記録媒体14」、「群」、「『光学的照度』、『光学的伝達特性』、『強度プロフィール43』、『出力強度』」、「『平衡させる』、『等化』、『制御』」、「イメージングシステムのチャネルの未変調の光学的照度または光学的伝達特性間に意図しない有意の差異があり、縞のような、不所望なイメージング欠陥の発生源となる可能性があり、電気的及び光学的ドリフト、ならびに、塵埃及び他の環境的汚染物の通常の堆積のような種々の因子のために、イメージングシステムのチャネル平衡が時間の関数として乱されやすいといった問題を解決するため、マルチチャネル光学イメージングシステムの光学チャネルを動的に等化するための補正係数を、個別にまたは1群ずつ(以下、まとめて「1セットずつ」という)、イメージングシステムが作動していない間に(即ち、印字していないときに)、反復的に計算し、前記チャネルのそれぞれの等化可能セットの出力強度を基準値と平衡させる、光学イメージングシステムの等化方法」、「『レーザプリンティングのための総合的全内反射(TIR)空間的光変調器』の『全幅』を『照明』する『光ビーム51』」、「光ビーム51を、前記反射面48の上またはその近くで、好ましくは前記電極49a?49zの長さのほぼ中央で、くさび状に合焦させる」、「光検出器25」、「出力光のうちの所定部分」、「『出力光のうちの所定部分』を『前記光検出器25の方へ偏らせ』」、「動作」、「『光学チャネルの出力強度を所定の基準で測定する』、『光学チャネルの最大の未補正出力強度値を、前記光検出器25により測定する』、『光検出器25の量的強度測定』」、「『プリンタ42が印字機能を行なうことを要求されると、前記制御器56は、メモリ36にアドレスし、前記チャネルに対する電極のそのアドレス指定と調時的に同期して光学チャネルのセットまたは群の1つずつに対する補正係数を検索し、D/A変換器71が、光学チャネルの任意のセットに対するメモリから読み出された補正係数を、データ線電圧レギュレータ72に対する比例的アナログ制御電圧に変換』して『この制御電圧』を得るための前記『補正係数』」、「『補正係数を計算』する」、「『制御電圧』が『高「1」及び低「0」の論理レベルビット間の電位差を規制』する」、「この制御電圧が、電圧レギュレータ72に、所定の光学チャネルに対する電極に加えられた差分コード化データの高『1』及び低『0』の論理レベルビット間の電位差を規制させ、他の群の電極によって制御される光学チャネルの出力強度もその補正係数によって同様に制御」及び「『チャネルのそれぞれの等化可能セットの出力強度を基準値と平衡させる、光学イメージングシステムの等化方法』、『実質的に1群ずつの光学的等化を得られるようにした、光学イメージングシステムの等化方法』」は、それぞれ、本願発明の「電気光学変調器」、「ゲート電極」、「電位を調整」、「イメージ面」、「グループ」、「輝度」、「調整する」、「イメージ面におけるピクセル若しくはピクセルのグループの輝度を調節する方法」、「レーザービーム」、「レーザービームを向ける」、「検出器」、「レーザービームの一部」、「『検出器にレーザービームの一部』を『そらす』」、「制御」、「光の輝度を検出する」、「調整電位の値」、「調整電位の値を得る」、「バイアスする」、「電極を個々に若しくはグループ単位でバイアスする」及び「『調節する方法』、『調整を行う方法』」に相当する。

(2)引用発明において、前記イメージバー41の「ピクセル(光学チャネル)」の「輝度(出力強度)」を所定の基準で「検出(測定)」するため、高(1)及び低(0)の論理レベルビットが交番するビット幅テストパターンをマルチプレクサ57の出力データ線に加え、この間、前記制御器56が順次続く「グループ(群)」の「電極」に直列にアドレスし、このテストパターンがマイクロプロセッサ31のような手段によって供給されると、前記差分エンコーダ55が、本質的に“フルオン”及び“フルオフ”ビットから成り、前記制御器56が任意の時にアドレスしている「電極グループ(電極群)」内の「電極」の隣接対間の「電極」間電圧降下を最大にするようにフォーマティングして制御する「ピクセル」(即ち、これら「ゲート電極(電極)」間の「ピクセル」)をその未変調「輝度(出力強度)」値「に制御し(で動作させ)」、その「レーザービーム(出力光)」のうちの「一部(所定部分)」を前記ビームスプリッタにより前記「検出器(光検出器25)」の方へ「そらせ(偏らせ)」ると、前記「イメージ面(記録媒体14)」上に合焦される「レーザービーム」は、前記シュリーレンイメージングシステム45が抑制したゼロ次または高次のいずれかの「レーザービーム(光ビーム51)」の回折成分の残りの「レーザービーム」の回折成分または未抑制の「レーザービーム」の回折成分のうちから、さらに前記ビームスプリッタにより前記「検出器」の方へ「そらせ」た「一部」を除いた残りである「レーザービーム」の「一部」となるから、引用発明の「イメージ面におけるピクセル若しくはピクセルのグループの輝度を調節する方法(光学イメージングシステムの等化方法)」と本願発明の「イメージ面におけるピクセル若しくはピクセルのグループの輝度を調節する方法」とは、「検出器にレーザービームの一部、およびイメージ面にレーザービームの一部をそらすステップ」を備える点で一致し、さらに、引用発明の光学チャネルは「電気光学変調器(光変調器)」に備わっているから、「電気光学変調器を介してレーザービームを向けるステップ」を備える点でも一致する。
そして、ビームスプリッタにより「検出器の方へそらせた一部」の前記「ゲート電極間のピクセルをその未変調輝度値に制御したレーザービーム」は、前記「検出器」により「検出」されるから、引用発明の「イメージ面におけるピクセル若しくはピクセルのグループの輝度を調節する方法」と本願発明の「イメージ面におけるピクセル若しくはピクセルのグループの輝度を調節する方法」とは、「前記ピクセル若しくはピクセルのグループによって制御される光の輝度を検出するステップ」を備えている点でも一致する。

(3)引用発明の「イメージ面におけるピクセル若しくはピクセルのグループの輝度を調節する方法(光学イメージングシステムの等化方法)」は、プリンタ42が印字機能を行なうことを要求されると、前記制御器56は、メモリ36にアドレスし、前記「ピクセル(光学チャネル)」に対する「ゲート電極(電極)」のそのアドレス指定と調時的に同期して「ピクセル」のセットまたは「グループ(群)」の1つずつに対する「調整電位の値(補正係数)」を検索し、D/A変換器71が、「ピクセル」の任意のセットに対するメモリから読み出された「調整電位の値」を、データ線電圧レギュレータ72に対する比例的アナログ制御電圧に変換し、この制御電圧が、電圧レギュレータ72に、所定の光学チャネルに対する「ゲート電極」に加えられた差分コード化データの高(「1」)及び低(「0」)の論理レベルビット間の「電位を調整(電位差を規制)」させ、これにより、前記「ピクセル」をデータ変調のない状態でほぼ基準「輝度(強度値)」で動作させ、他の「グループ」の「ゲート電極」によって制御される「ピクセル」の「輝度(出力強度)」もその「調整電位の値」によって同様に制御して、実質的に1「グループ」ずつの光学的「調整を行う(等化を得られる)」ようにするから、引用発明の「イメージ面におけるピクセル若しくはピクセルのグループの輝度を調節する方法」と本願発明の「イメージ面におけるピクセル若しくはピクセルのグループの輝度を調節する方法」とは「電気光学変調器の少なくとも一つのゲート電極の電位を調整するステップを含む」点で一致する。ここで、検索する「調整電位の値(補正係数)」は、上記(2)の「前記ピクセル若しくはピクセルのグループによって制御される光の輝度を検出するステップ」で「検出(測定)」されたものであるから、引用発明の「イメージ面におけるピクセル若しくはピクセルのグループの輝度を調節する方法」と本願発明の「イメージ面におけるピクセル若しくはピクセルのグループの輝度を調節する方法」とは「前記検出された光の輝度から調整電位の値を得るステップとを更に含」む点でも一致する。

(4)上記(1)ないし(3)からみて、本願発明と引用発明とは、
「電気光学変調器の少なくとも一つのゲート電極の電位を調整するステップを含む、イメージ面におけるピクセル若しくはピクセルのグループの輝度を調節する方法であって、
電気光学変調器を介してレーザービームを向けるステップと、
検出器にレーザービームの一部、およびイメージ面にレーザービームの一部をそらすステップと、
前記ピクセル若しくはピクセルのグループによって制御される光の輝度を検出するステップと、
前記検出された光の輝度から調整電位の値を得るステップとを更に含み、
電極を個々に若しくはグループ単位でバイアスすることにより、前記調整を行う方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
本願発明では、バイアスする前記電極が「対向電極」であるのに対して、引用発明では、「バイアス(制御電圧が、電位差を規制)」する電極が「ゲート電極(電極49a?49z)」の相隣る対、すなわち「ゲート電極」の隣接対である点。

5 判断
上記相違点について検討する。
(1)引用例2には、上記2(2)のとおり、引用例2記載事項(上記2(2)ウ参照。)が記載されているところ、引用例2記載事項の「液晶パネル」、「絵素電極及び対向電極」及び「バイアス電圧が与えられ」は、それぞれ、引用発明の「電気光学変調器(光変調器)」、「ゲート電極の隣接対(電極群内の電極の隣接対)」及び「バイアスする(制御電圧が高「1」及び低「0」の論理レベルビット間の電位差を規制する)」に相当する。
したがって、引用例2には、電気光学変調器において隣接する一対のゲート電極のうち一方の対向電極をバイアスすることが記載されているといえる。

(2)「個別電極と対向電極とで隣接する一対の電極を構成した電気光学変調器において、対向電極の電位を個々に若しくはグループ単位で設定するようになっているもの。」は、本願の最先の優先日前に周知である(以下「周知技術」という。例.特開昭63-189268号公報(第2図ないし第3図、第11図、第13図及び第14図参照。)、特開昭61-13771号公報(第3図参照。)、特開平3-183677号公報(FIG.3参照。)、特表昭62-500123号公報(FIG.1、FIG.2参照。))。

(3)上記(1)及び(2)からして、引用発明において、隣接する一対のゲート電極を、個別電極と対向電極とで構成するとともに、該対向電極に、個々に若しくはグループ単位で、バイアス電圧を印加するようになすこと、すなわち、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が引用例2記載事項及び周知技術に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(4)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、引用例2記載事項の奏する効果及び周知技術の奏する効果から、当業者が予測することができた程度のことである。

(5)したがって、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2記載事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、上記5のとおり、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2記載事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-10 
結審通知日 2012-07-17 
審決日 2012-07-30 
出願番号 特願2000-603882(P2000-603882)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹亀田 宏之藏田 敦之  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 菅野 芳男
鈴木 秀幹
発明の名称 電気光学変調器におけるピクセル輝度調節  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

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