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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04J
管理番号 1267383
審判番号 不服2011-22039  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-12 
確定日 2012-12-13 
事件の表示 特願2006-126537「送信機」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月15日出願公開、特開2007-300383〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成18年4月28日の出願であって、原審において平成23年7月6日付けで拒絶査定され、同年10月12日に審判請求がなされたものであるところ、
本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年6月20日付けで補正された特許請求の範囲、明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)

(本願発明)
「【請求項1】
OFDM信号を受信機へ送信する複数の送信アンテナと、
前記複数の送信アンテナから送信されるOFDM信号を前記受信機で復調するためのパイロットデータが直接拡散コードで拡散された直接拡散パイロット信号を生成し、前記複数の送信アンテナから送信する生成部とを含み、
前記生成部は、1つのOFDMシンボル長より短い前記送信アンテナ毎の直接拡散パイロット信号を生成し、これらの直接拡散パイロット信号を時分割で前記複数の送信アンテナから送信する送信機。」


2.引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2005-065242号公報(以下、「引用例」という。)には、「無線通信装置および無線通信方法」として図面と共に次の記載がある。

イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチキャリア方式を適用したディジタル無線通信システムに用いられる無線通信装置および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信の大容量化や高速化への要求が高まりを見せており、有限な周波数資源の有効利用率を向上させる方法に関する研究が盛んである。その方法の一つとして空間領域を利用する技術が注目を集めている。代表的なものとしては、伝搬路における空間的な直交性を利用することで、同一時刻に、同一周波数で、同一符号の物理チャネルを用いて、異なるデータ系列を伝送する技術が挙げられる。この伝送技術には、異なるデータ系列を異なる移動局に対して伝送する空間多元接続(SDMA:Space Division Multiple Access)技術(例えば、非特許文献1参照)および異なるデータを同一の移動局に伝送する空間多重(SDM:Space Division Multiplexing)技術(例えば、非特許文献2参照)という技術がある。
【0003】
上記SDM技術において、送信側装置では、送信側装置に備えられた複数のアンテナから、アンテナ毎に、同一時刻に、同一周波数で、同一符号の物理チャネルを用いて、異なるデータ系列を送信する一方、受信側装置では、送受信アンテナ間の伝搬路特性を示すチャネル行列に基づいて、受信側装置に備えられた複数のアンテナでの受信信号から、異なるデータ系列を分離受信する(以下、「BLAST型」と言う)ことで、周波数利用効率の向上を可能にしている。SDM伝送を行う場合、十分なS/N(信号電力対雑音電力比)条件下の送受信側装置間に多数の散乱体が存在する環境下では、送信側装置および受信側装置が同数のアンテナを備えている場合に、アンテナ数に比例して通信容量を拡大することができる。
【0004】
また、無線通信の大容量化や高速化を実現する上で、マルチパスやフェージングに対する耐性を向上することが重要となっている。マルチキャリア伝送方式はこれらを実現するための一つのアプローチであり、特に直交周波数分割多重(OFDM)伝送方式は地上波ディジタル放送や広帯域無線アクセスシステムに採用されている。
【0005】
このOFDM伝送にSDM伝送を適用した伝送方式に関しては、例えば非特許文献3に記載されたものがある。この伝送方式では、各サブキャリアは、ガードインターバル長を超過するマルチパスが存在しないとき、狭帯域伝送、すなわちフラットフェージング伝送とみなすことができる。このため、サブキャリア毎にチャネル行列を算出し、算出したチャネル行列Hに基づいてSDM伝送を行う例が多く報告されている。
(・・・以下略・・・)」(5?6頁)


ロ.「【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下全ての実施の形態では、基地局装置から移動局装置への送信(以下「ダウンリンク」と言う)信号における伝送フォーマットの設定を行う場合について説明を行う。
【0062】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態では、TDD(Time Division Duplex)方式の無線通信システムの場合について説明する。また、本実施の形態では、移動局装置から基地局装置への送信(以下「アップリンク」と言う)信号の基地局装置での受信結果を基に空間多重適合度の検出を行う場合を例にとって説明する。
【0063】
図1に示す基地局装置100は、Na本のアンテナ102-1?102-Na、Na個の共用部104-1?104-Na、Na個の受信系アンテナ素子部106-1?106-Na、空間多重適合度検出部108、伝送フォーマット設定部110、伝送フォーマット形成部112、Na個のシリアルパラレル変換(S/P)部114-1?114-Na、およびNa個の送信系アンテナ素子部116-1?116-Naを有する。」(11頁)


ハ.「【0104】
また、本実施の形態において、マルチキャリア信号として伝送されるサブキャリア信号は、直交周波数分割多重されたサブキャリア信号でも良い。この場合、各サブキャリア信号がOFDMシンボル区間内で直交する周波数が選択され使用される。また、送信信号を周波数軸方向に符号分割多重するMC-CDMA(MultiCarrier - Code Division Multiple Access)方式への適用も可能である。この場合、サブキャリア信号に埋め込まれ個別ユーザ毎に多重されたパイロット信号を用いてユーザ毎に各サブキャリア信号の相関値を算出することで、上記と同様の作用効果を実現することができる。」(18頁)


ニ.「【0118】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態に係る基地局装置は、実施の形態1で説明した基地局装置100と同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。また、本実施の形態では、FDD(Frequency Division Duplex)方式の無線通信システムの場合について説明する。」(19?20頁)


ホ.「【0125】
次いで、上記構成を有する基地局装置300が移動局装置350と無線通信を行うときの動作について説明する。図7は、基地局装置300が移動局装置350と無線通信を行うときの動作の一例を説明するための図である。ここでは、空間多重伝送用の伝送フォーマットを使用しない通常伝送モードから空間多重伝送用の伝送フォーマットを使用する空間多重伝送モードに移行するときの、空間多重伝送モードの手順について説明する。
【0126】
まず、基地局装置300は、フレーム同期およびシンボル同期の確立後に、アンテナ102-1?02-Naの各々から、空間多重伝送用のアンテナ個別パイロット信号を送信する(S3100)。アンテナ個別パイロット信号は、所定シンボル数Npからなる。
【0127】
ここで、送信されるアンテナ個別パイロット信号に関して、図8を参照しながら説明する。図8は、アンテナ個別パイロット信号のフレーム構成を示す図である。例えば、図8(A)に示すように、同一のパターンまたは互いに直交するパターン(例えば、PN信号等)を有するアンテナ個別パイロット信号APkが、アンテナ毎に送信タイミングをシフトする時分割多重によって送信されても良い。また、図8(B)に示すように、アンテナ個別パイロット信号APkは、符号分割多重送信されても良い。この場合、アンテナ個別パイロット信号APkはアンテナ毎に互い直交するパターンを有する。
【0128】
また、図8(C)に示すように、アンテナ個別パイロット信号APkは、時分割多重および符号分割多重の組み合わせによって送信されても良い。すなわち、この場合は、同一時刻の時分割スロットを共有するアンテナ個別パイロット信号(例えば、図8(C)ではAP1およびAP2)は、互いに直交するパターンが使用される。時分割多重および符号分割多重の組み合わせによってアンテナ個別パイロット信号を送信することで、基地局装置300のアンテナ数Naが多い場合の時分割送信のオーバヘッドを低減することができ、符号分割多重時の伝搬路における直交性低減を緩和することができる。
【0129】
なお、アンテナ数Naが十分多い場合、または、SDMにおける空間多重数がアンテナ数Naよりも小さく制限されている場合、Na個の全ての送信系を用いる必要はない。例えば、アンテナ102-1?102-Naのいくつかのアンテナからアンテナ個別パイロット信号を送信しても良い。
【0130】
そして、移動局装置350は、アンテナ個別パイロット信号APkに含まれるアンテナ個別パイロットシンボルAPk(t)をアンテナ350-1?350-Nrを通じて分離受信する(ただし、t=1?Np)。そして、分離受信したアンテナ個別パイロットシンボルAPk(t)を用いてチャネル推定を行う(S3200)。」(20?21頁)


上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
まず、上記引用例記載の「無線通信装置」は、上記イ.、ロ.引用例図1、ニ.引用例図6にあるような「送信側装置」としての「基地局装置100,300」であって、「受信側装置」としての「移動局装置150,350」に向けて無線信号を送信するための「Na本のアンテナ102-1?102-Na」すなわち『複数の送信アンテナ』を有するものである。

また、上記イ.【0004】、ハ.【0104】にあるように、該「基地局装置」は、「直交周波数分割多重(OFDM)伝送方式」を前提としたものであり、「直交周波数分割多重されたサブキャリア信号」すなわち『OFDM信号』を送信するものである。

また、上記ホ.【0126】、引用例図7,8によれば、引用例記載の「基地局装置」は、「アンテナ102-1?02-Naの各々から、空間多重伝送用のアンテナ個別パイロット信号を送信する」ものであり、
上記ホ.【0130】によれば、「移動局装置350」は、「アンテナ個別パイロット信号APkに含まれるアンテナ個別パイロットシンボルAPk(t)」を受信し、「分離受信したアンテナ個別パイロットシンボルAPk(t)を用いてチャネル推定を行う(S3200)」とあって、該「チャネル推定」は受信信号の復調のために行われることは技術常識であるから、
前記「アンテナ個別パイロット信号」は、『前記複数の送信アンテナから送信されるOFDM信号を前記移動局装置で復調するためのアンテナ個別パイロットシンボルが含まれたアンテナ個別パイロット信号』であるということができ、
引用例に明記はないが、このような「アンテナ個別パイロット信号」を生成、送信する『生成部』が「基地局装置」に含まれていることも当然である。

また、上記ホ.【0128】および引用例図8(C)にあるように、該「アンテナ個別パイロット信号」は、「時分割多重および符号分割多重の組み合わせ」によって送信されても良いものであり、
「この場合は、同一時刻の時分割スロットを共有するアンテナ個別パイロット信号(例えば、図8(C)ではAP1およびAP2)は、互いに直交するパターンが使用される」ともあるから、
前記「アンテナ個別パイロット信号」は符号分割多重として「互いに直交するパターンが使用されたアンテナ個別パイロット信号」が「時分割多重」で送信されるものである。

そして、「アンテナ個別パイロット信号」とはアンテナ個別のパイロット信号であるから、「送信アンテナ毎のアンテナ個別パイロット信号」ということができる。

したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「OFDM信号を移動局装置へ送信する複数の送信アンテナと、
前記複数の送信アンテナから送信されるOFDM信号を前記移動局装置で復調するためのアンテナ個別パイロットシンボルが含まれた互いに直交するパターンが使用されたアンテナ個別パイロット信号を生成し、前記複数の送信アンテナから送信する生成部とを含み、
前記生成部は、前記送信アンテナ毎のアンテナ個別パイロット信号を生成し、これらのアンテナ個別パイロット信号を時分割多重で前記複数の送信アンテナから送信する基地局装置」


3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、
まず、引用発明の「基地局装置」、「移動局装置」は、それぞれ「OFDM信号」を送信、受信するから、本願発明の「送信機」、「受信機」に相当する。
また、引用発明の「アンテナ個別パイロットシンボル」において、「シンボル」とは通信される情報、データの1つの単位であるから、本願発明の「パイロットデータ」にあたる。
また、引用発明の「互いに直交するパターンが使用されたアンテナ個別パイロット信号」と、本願発明の「直接拡散コードで拡散された直接拡散パイロット信号」を対比すると、両者はともに「パイロット信号」の点で一致し、
本願発明の「直接拡散パイロット信号」も、直接拡散コードで拡散されたパイロットデータが「含まれた」点において引用発明と同様である。
そして、引用発明の「時分割多重で」とは、「時分割で」ということである。
したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「 OFDM信号を受信機へ送信する複数の送信アンテナと、
前記複数の送信アンテナから送信されるOFDM信号を前記受信機で復調するためのパイロットデータが含まれたパイロット信号を生成し、前記複数の送信アンテナから送信する生成部とを含み、
前記生成部は、前記送信アンテナ毎のパイロット信号を生成し、これらのパイロット信号を時分割で前記複数の送信アンテナから送信する送信機。」

(相違点)
(1)「パイロット信号」に関し、本願発明は「直接拡散コードで拡散された直接拡散パイロット信号」、「直接拡散パイロット信号」であるのに対し、引用発明は「互いに直交するパターンが使用されたアンテナ個別パイロット信号」、「アンテナ個別パイロット信号」である点。

(2)「パイロット信号」の長さに関し、本願発明は「1つのOFDMシンボル長より短い」のに対し、引用発明では不明な点。


まず、上記相違点(1)の「パイロット信号」に関し検討するに、
引用発明の「互いに直交するパターンが使用されたアンテナ個別パイロット信号」は、引用例の上記ホ.【0128】および引用例図8(C)にあるように、符号分割多重のために「互いに直交するパターン」を使用するものであるが、
符号分割多重の通信方式において、互いに直交するパターン(直交シーケンス)を拡散符号(コード)としてデータを直接拡散することは周知(例えば、特表2003-503934号公報【0003】、特表2002-528958号公報【0004】、特開2000-138974号公報【0004】【0008】等参照)であるから、
引用発明の「互いに直交するパターンが使用されたアンテナ個別パイロット信号」、「アンテナ個別パイロット信号」を、「直接拡散コードで拡散された直接拡散パイロット信号」、「直接拡散パイロット信号」とした相違点(1)は格別のことではない。

ついで、上記相違点(2)の「パイロット信号」の長さについて検討する。
引用発明1のような「OFDM」(直交周波数分割多重)の通信方式においては、通常の情報、データは送信単位である「OFDMシンボル」を基本単位として通信が実行されるのが前提であって、その「OFDMシンボル」の長さが基本周期となるものであるが、パイロット信号やプリアンブルなどの特殊な信号、シンボルはより短い長さで構成され得ることも、原査定の周知例に挙げられた特開2000-332725号公報(【0056】、図4)のほか、例えば特開2000-349736号公報(【0006】、【0007】、図4,6)、特開2004-179615号公報(図3)などにもあるように周知のことである。
したがって、「パイロット信号」の長さを「1つのOFDMシンボル長より短い」ものとした相違点(2)も、当業者が引用発明に周知技術を適用することによって容易に想到し得た事であって格別のことではない。

そして、本願発明の効果も引用発明および周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-10 
結審通知日 2012-10-16 
審決日 2012-10-29 
出願番号 特願2006-126537(P2006-126537)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 洋  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 矢島 伸一
新川 圭二
発明の名称 送信機  
代理人 松倉 秀実  
代理人 平川 明  
代理人 高田 大輔  
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