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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1267598
審判番号 不服2011-11852  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-03 
確定日 2012-12-18 
事件の表示 特願2007-548181「携帯無線装置用キーパッド」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月 6日国際公開、WO2006/071266、平成20年 7月17日国内公表、特表2008-525885〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2005年6月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年12月28日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年7月7日付けで拒絶理由が通知され、同年12月28日付けで手続補正がなされたが、平成23年2月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月3日に審判請求がなされるとともに、手続補正がなされた。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年6月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、
「携帯無線装置用のキーパッドであって、
前記携帯無線装置に入力されるキャラクタに相当する電気信号を生成するためにプリント回路基板に選択的に電気的接続することができる複数のキーと、
各キーに関する複数の接点であって、各接点が、該接点に関連するキャラクタを入力するために前記プリント回路基板に個別に電気的に接続することができる複数の接点と、を含み、
前記各キーは、正方形形状であり且つ5つの接点を有しており、
前記接点のうちの1つは前記キーの中央に設けられ、前記接点のうちの残りはそれぞれ前記キーの各コーナーに設けられ、
複数の機能のうちの少なくとも1つが、前記キー上の前記中央に予め割り当てられ、前記機能の残りが、前記キー上の前記コーナーにそれぞれプログラム可能に割り当てられるキーパッド。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.補正の目的要件について
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「複数の接点」、「キー上の第1の位置」、「キー上の他の位置」及び「複数の機能のうちの少なくとも1つが、前記キー上の前記第1の位置に予め割り当てられ、前記機能の残りが、前記キー上の前記他の位置にプログラム可能に割り当てられるキーパッド」を
「正方形状であり且つ5つの接点」、「キーの中央」、「キーの各コーナー」及び「複数の機能のうちの少なくとも1つが、前記キー上の前記中央に予め割り当てられ、前記機能の残りが、前記キー上の前記コーナーにそれぞれプログラム可能に割り当てられるキーパッド」と限定して特許請求の範囲を減縮するものである。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

(2)引用発明及び公知技術

A.原査定の拒絶理由で引用した特表2002-543485号公報(平成14年12月17日出願公表。以下、「引用文献」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「(発明の開示)
本発明は、クラスタキー配列に関する。クラスタキー配列は、機械的に構成されるかまたは電子的に構成されてもよい。クラスタキー配列は、標準の電話機に従来存在していたような、横4列×縦3列の配列に構成される12個のクラスタキーを含んでもよい。クラスタキー配列は、携帯/移動電話、テレビのリモートコントローラ、他の把持型/データ入力装置、自動車のコントローラ、卓上型/壁掛け型/コードレス電話、一体型電話レコーダ、パーソナル・デジタル・アシスタント(PDAs)および他の電子機器に使用するために、構成されてもよい。機械的または電子的に構成されたクラスタキーは、互いに排他的な方法で、数字、文字、記号、機能などを表す複数のキー素子の1つを選択する能力をユーザに提供する。
機械的なクラスタキーは、各々、一次キーと、少なくとも1つの二次キーを含んでいる。二次キーの数は、4から8の範囲であることが好適である。機械的なクラスタキーは、好適には、ユーザに、強い触覚を与えるために必要とされる硬度範囲の広い材料から構成される。一次キーは、好適には、ドーム型、あるいは、凸面形状のボタンの輪郭をした部分を含む。この凸面は、上方から見た場合、さらに、環状、楕円形、五角形などの形状をしている。ドーム型、あるいは、凸面形状の一次キーの輪郭は、二次キーに隣接するに従って、凹面形状の輪郭を取るようになる。凹面形状の輪郭は、ドーム型に置き替えられてもよく、また、上部から見た場合の他のボタン形状は、六角形、七角形、あるいは八角形などの形状のものに置き換えられてもよい。好適には、二次キーは、各々が、一次キーの周辺の、盛り上がった一次キーのいくぶん下部から、凹面形状の輪郭を取り始める。その輪郭は、凹面形状でアーチ形の輪郭を取って上昇することによって、ワンタッチ操作できる接触可能な表面積を増大させ、より良い圧力分布が得られるようになる。その上昇は、台形の幅の終端によって得られるような、より大きい幅を持って終了し、指が動ける幅をより大きくさせる。その後、二次キーは、それが結合している一次キーのドームの上部の高さより、わずかに低い高さで終了する。上方から見た場合の他の二次キーの輪郭は、長方形、台形、半円形、あるいは、指がより広範囲で接触するように細長い形状を取ってもよい。」(段落【0032】の記載。下線は当審で付与、以下同様。)

b.「キーの押圧状態を検出する1つの技術は、キー回路素子が、2つの離間した金属の領域を形成し、錫、ニッケル、銅のような金属から形成されたメッキパッドを有するような、容量性のキーを用いることである。これによって、そのキーの終端が、電流素子にかなり隣接したときに、容量性の電荷が、回路板によって感知され、キーの押圧状態が、対応するキーボードのマイクロプロセッサや、論理ユニットによって、認知される。別の構造は、硬質な接点を有するキーボードを組み込んでいる。ここで、キーは、それらの間を、電気的に通信可能な関係にする回路素子からなる一対の接点と非常に隣接して、凹面と直接、係合する脚部を有している。関連して用いるこのような構成は、金属の接点を含む回路基板から離間した、柔軟な板上に、物理的に貝殻状のキャップを含んでもよい。この貝殻状のキャップは、各々、そのキャップ内に、金属素子を含んでいる。ユーザが、選択されたクラスタキーのうち、1つのボタンを押し込むと、キーの低部が、貝殻状のキャップを押し、関連する金属素子を、金属の接点と接触させるときに、信号が生成される。」(段落【0034】の記載。)

c.「図1に示されているクラスタキーは、各々、4つの二次キー14に囲まれた一次キー12を含んでいる。しかしながら、本発明による、クラスタキー配列は、明らかに、一次キーと、任意の数の二次キー、すなわち、1、2、3などのキーを含んでもよい。二次キーの数は、4から8の範囲であることが好適である。クラスタキーは、好適には、ユーザに、強い触覚を与えるために必要とされる硬度範囲の広い材料から構成される。各クラスターの一次キー12は、好適には、ドーム型、あるいは、凸面形状のボタンの輪郭をした部分を含む。この凸面は、上方から見た場合、さらに、環状、楕円形、五角形などの形状をしている。ドーム型、あるいは、凸面形状の一次キーの輪郭は、二次キー14に隣接するに従って、凹面形状の輪郭を取るようになる。凹面形状の輪郭は、ドーム型に置き替えられてもよく、また、上方から見た場合の他のボタン形状は、六角形、七角形、あるいは八角形などの形状のものに置き換えられてもよい。好適には、二次キー14は、各々が、一次キー12の周辺の、盛り上がった一次キー12のいくぶん下部から、凹面形状の輪郭を取り始める。その輪郭は、凹面形状でアーチ形の輪郭を取って上昇することによって、ワンタッチ操作できる接触可能な表面積を増大させ、より良い圧力分布が得られるようになる。その上昇は、台形の幅の終端によって得られるような、より大きい幅を持って終了し、指が動ける幅をより大きくさせる。その後、二次キーは、それが結合している一次キー12のドームの上部の高さより、わずかに低い高さで終了する。上部から見た場合の他の二次キーの輪郭は、長方形、台形、半円形、あるいは、指がより広範囲で接触するように細長い形状を取ってもよい。一次キー12は、各々が、数字、アスタリスク(*)、あるいは、ポンド記号(#)というラベルを貼付されている。 二次キー14は、好適には、関連する一次キー12に関して、文字通り、小さく、空間的な制限に順応している。二次キーは、各々が、機能表示、文字、あるいは、二次キー14は、好適には、各々が、ユーザの指先で、より良い圧力分布に関する、接触区域の表面を増加させる、アーチ形の凹面状の表面を含んでいる。好適には、二次キー14の外部の端部が広がって、指が動けるような大きな幅を供給する。二次キー14は、各々が、機能設計、文字、あるいは文字記号を貼付されている。」(段落【0057】の記載。)

d.「【0065】
本発明による、別の機械的なクラスタキー配列60は、図3に示されている。このクラスタキー配列60におけるクラスタキーは、各々、6個の二次キーに囲まれた一次キー62を含んでいる。上述のように、クラスタキーは、明らかに、一次キーと、任意の数の二次キー、すなわち、1,2,3などのキーを含んでいる。二次キーの数は、好適には、4から8のあいだである。クラスタキーは、好適には、ユーザに、強い触覚を与えるために必要とされる硬度範囲の広い材料から構成される。特定のクラスタキーにおける一次キーは、好適には、ドーム型、あるいは、凸面形状のボタンの輪郭をした部分を含む。この凸面は、上方から見た場合、さらに、環状、楕円形、五角形などの形状をしている。ドーム型、あるいは、凸面形状の一次キーの輪郭は、二次キーに隣接するに従って、凹面形状の輪郭を取るようになる。凹面形状の輪郭は、ドーム型に置き替えられてもよく、また、上方から見た場合の他のボタン形状は、六角形、七角形、あるいは八角形などの形状のものに置き換えられてもよい。好適には、二次キーは、各々が、一次キーの周辺の、盛り上がった一次キーのいくぶん下部から、凹面形状の輪郭を取り始める。その輪郭は、凹面形状でアーチ形の輪郭を取って上昇することによって、ワンタッチ操作できる接触可能な表面積を増大させ、より良い圧力分布が得られるようになる。その上昇は、台形の幅の終端によって得られるような、より大きい幅を持って終了し、指が動ける幅をより大きくさせる。その後、二次キーは、それが結合している一次キーにおけるドームの上部の高さより、わずかに低い高さで終了する。上方から見た場合の他の二次キーの輪郭は、長方形、台形、半円形、あるいは、指がより広範囲で接触するように細長い形状を取ってもよい。一次キー62は、各々が、数字、アスタリスク(*)、あるいは、ポンド記号(#)を貼付されている。
【0066】
二次キーは、各々が、機能表示、文字、あるいは、文字記号を貼付されている。各キーは、ハウジング内に設けられている。このクラスタキー配列において、「1」というラベルを貼付された一次キー62は、記号などが何も貼付されていない二次キー64,66によって包囲されている。二次キー64,66が、明らかに、ユーザの要望に従って貼付されてもいい一方、好適には、二次キー64は、「NO/END」というラベルを貼付され、二次キー66は、「YES/SEND」というラベルを貼付される。「2」というラベルが貼付された一次キーは、「MODE」というラベルを貼付された、二次キー68を含んでいる。「3」というラベルを貼付された一次キーは、「ENTER」というラベルを貼付されることが好適である、記号などが何も貼付されていない二次キー70を含んでいる。「8」というラベルを貼付された一次キーは、「ALT」というラベルを貼付されることが好適である、記号などが何も貼付されていない二次キー72を含んでいる。「*」というラベルを貼付された一次キーは、「F10」というラベルを貼付されることが好適である、記号などが何も貼付されていない二次キー74を含んでいる。「*」というラベルを貼付された一次キーもまた、「CTRL」というラベルを貼付されることが好適である、記号などが何も貼付されていない二次キー76を含んでいる。「0」というラベルを貼付された一次キーは、「F11」というラベルを貼付されることが好適である、記号などが何も貼付されていない二次キー78を含んでいる。「#」というラベルを貼付された一次キーは、「F12」というラベルを貼付されることが好適である、記号などが何も貼付されていない二次キー80を含んでいる。「#」というラベルを貼付された一次キーはまた、「SPACE BAR」というラベルを貼付されることが好適である、記号などが何も貼付されていない二次キー82を含んでいる。「#」というラベルを貼付された一次キーはまた、「MODE」というラベルを貼付されることが好適である、記号や数字などが何も貼付されていない二次キーを含んでいる。各キーは、ハウジングの第一の側面に露出したキーの第一の部分と、ハウジングの第二の側面で露出したキーの第二の部分と[FMV-USER1]を有している。キーの第一の部分が、ユーザによって押圧されると、キーの第二の部分[FMV-USER2]は、基板に接触するようになり、機械的に、相互に、その特定のキークラスタが、基板と接触することが避けられる。これらのクラスタキーの機能は、図4および図5に示されるクラスタキーと同じような方法で機能する。ここで、一次キーは、各々が、旋回軸を中心にして旋回する二次キーによって包囲されている。一次キー62が押圧された場合、その特定のキークラスタに関連する二次キーのうち、基板に接触するものが、1つもなくてもかまわない。二次キーが押圧された場合、一次キーも、二次キーも、基板に接触しなくてもかまわない。」(段落【0065】?【0066】の記載。)

(イ)記載aによれば、携帯電話に使用する横4列×縦3列の12個のクラスタキーを含むクラスタキー配列であって、各クラスタキーは、一次キーと4つの二次キーとからなり、二次キーは一次キーの周辺に配置される。
(ロ)記載bによれば、キーの押圧によって、キー低部の関連する金属素子と、回路基板の金属の接点との接触により信号を生成する。
(ハ)記載cによれば、クラスタキーは、各々4つの二次キーに囲まれた一次キーを含み、一次キーは、各々が数字、アスタリスク、あるいはポンド記号というラベルが貼付され、二次キーは、各々機能表示、文字、あるいは文字記号が貼付される。
(ニ)記載dによれば、別の実施例として、二次キーは、ユーザの要望に従ってラベルが貼付されるが、好適には「NO/END」、「MODE」等のラベルが貼付されたり、[F10]」、「F11」、「F12」等のラベルが貼付される。

(イ)乃至(ハ)によれば、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

〈引用発明〉
「携帯電話に使用する横4列×縦3列の12個のクラスターキーを含むクラスタキー配列であって、
各クラスタキーは、一次キーと4つの二次キーとからなり、
二次キーは一次キーの周辺に配置され、各キーは、キーの押圧によって、キー低部の関連する金属素子と、回路基板の金属の接点との接触により信号を生成し、
各クラスタキーは、各々4つの二次キーに囲まれた一次キーを含み、
一次キーは、各々が数字、アスタリスク、あるいはポンド記号というラベルが貼付され、
二次キーは、各々機能表示、文字、あるいは文字記号が貼付される、
クラスタキー配列。」

B.同じく原査定の拒絶理由に引用された米国特許第5,861,823号明細書(平成11年1月19日特許。以下、「公知文献」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、原文と当審においてした翻訳文とを併記する。

e.「A data entry device is provided, having as its primary function the entry of numeric data. A secondary function is the entry of alphabetic characters. The device is operated with a single hand and requires no shift or function keys. The number of keys of the device is kept to a minimum to avoid visual clutter and to facilitate its use with one hand. The keys are designed to be easy to access and to be operated while wearing a glove.」(ABSTRACT)
(当審訳)データ・エントリー装置は、その第1の機能が数値データの入力である。第2の機能は、英字の入力である。装置は、片手で操作され、シフトキーやファンクションキーを用いない。視覚的な混乱を回避し、かつ片手で操作するために、装置のキーの数は、最小限に抑える。キーは、操作が簡単で、かつ手袋をしていても操作できるようにデザインされる。(要約)

f.「A data entry device as recited in claim 7, wherein said plurality of multifunction keys are rectangle shaped, and each of said plurality of multifunction keys displays said primary character at a center of said rectangle shaped key and said four secondary characters on corners of said rectangle shaped key.」(What is claimed is:8 )
(当審訳)多機能のキーは四角形状で、四角形状の中心の位置に第1の文字が、4隅に第2の文字が配置される請求項7記載のデータ・エントリー装置。(請求項8の記載。)

したがって、上記公知文献には、以下の技術(以下、「公知技術」という。)が記載されている。
〈公知技術〉
四角形状の中心の位置に数値データの入力のための第1の文字が、4隅に英字入力のための第2の文字が配置された多機能のキーにおいて、操作が簡単なデータ・エントリー装置。

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「携帯電話」は、補正後の発明の「携帯無線装置」に相当し、引用発明の「12個のクラスタキー」は、補正後の発明の「複数のキー」に相当する。
そして、引用発明の各クラスタキーは、「一次キーと4つの二次キー」から構成され、「各キーは、キーの押圧によって、キー低部の関連する金属素子と、回路基板の金属の接点との接触により信号を生成し」ており、このことは、補正後の発明の「各キーに関する複数の接点であって、各接点が、該接点に関連するキャラクタを入力するために前記プリント回路基板に個別に電気的に接続することができる複数の接点」を備えるとともに、「各キーは、5つの接点」を備えていることに相当する。
そして、引用発明の各クラスタキーは、「各々4つの二次キーに囲まれた一次キー」を有していることから、一次キーの接点は、クラスタキーの中央にあり、二次キーの接点は、クラスタキーのコーナーに設けられていることは、明らかである。
また、引用発明は、「一次キーは、各々が数字、アスタリスク、あるいはポンド記号というラベルが貼付され、二次キーは、各々機能表示、文字、あるいは文字記号が貼付され」ており、このことは、補正後の発明の「複数の機能のうちの少なくとも1つが、前記キー上の前記中央に予め割り当てられ、前記機能の残りが、前記キー上のコーナーにそれぞれ割り当て」ることに相当する。

以上のことから、補正後の発明と引用発明は、以下の一致点と相違点とを有する。

〈一致点〉
「携帯無線装置用のキーパッドであって、
前記携帯無線装置に入力されるキャラクタに相当する電気信号を生成するためにプリント回路基板に選択的に電気的接続することができる複数のキーと、
各キーに関する複数の接点であって、各接点が、該接点に関連するキャラクタを入力するために前記プリント回路基板に個別に電気的に接続することができる複数の接点と、を含み、
前記各キーは、5つの接点を有しており、
前記接点のうちの1つは前記キーの中央に設けられ、前記接点のうちの残りはそれぞれ前記キーの各コーナーに設けられ、
複数の機能のうちの少なくとも1つが、前記キー上の前記中央に予め割り当てられ、前記機能の残りが、前記キー上の前記コーナーにそれぞれ割り当てられるキーパッド。」

〈相違点1〉
補正後の発明では、「複数の機能のうちの少なくとも1つが、前記キー上の前記中央に予め割り当てられ、前記機能の残りが、前記キー上の前記コーナーにそれぞれプログラム可能に割り当てられる」にの対し、引用発明では、「前記機能の残りが、前記キー上の前記コーナーにそれぞれプログラム可能に割り当てられる」かどうか、不明である点。

〈相違点2〉
各キーが、補正後の発明では「正方形状」であるのに対し、引用発明では「各々4つの二次キーに囲まれた一次キー」で構成される点。

相違点につき検討する。
〈相違点1について〉
引用文献の前記d.に記載されているように、6個の二次キーに囲まれた一次キー62を含んでいる実施例において、 二次キーには、ユーザの要望に従ってラベルが貼付されるが、好適には「NO/END」、「MODE」等のラベルが貼付されたり、[F10]」、「F11」、「F12」等のラベルが貼付されることも、示されている。特にこの「F10」、「F11」、「F12]等は、当該技術分野において、ファンクションキーを示すものであり、ユーザの要望により、その割り当てられる機能を変更出来るように構成されるものであり、すなわち「プログラム可能に割り当てられる」ものである。
そして、上記構成は、6個の二次キーの実施例として、示されているものではあるが、引用発明の4個の二次キーに囲まれた一次キーのケースにおいても、適用できない理由はなく、むしろ、ユーザの要望に答えてより使いやすいように、キーに機能を割り当てることは、当業者にとって当然のことであることから、引用発明において、当該二次キーをユーザの要望により、その割り当てられる機能を変更出来るように構成し、すなわち「プログラム可能に割り当てられる」ようにし、相違点1に係る構成とすることは、当業者が格別の創意を要することなく構成し得たものである。

〈相違点2について〉
前掲の公知文献に示されているように「四角形状の中心の位置に数値データの入力のための第1の文字が、4隅に英字入力のための第2の文字が配置された多機能のキー」との構成は、公知の技術であり、また、各キーの形をどのようにするかは、キーを配列する機器のスペース、ユーザの使いやすさ等を考慮し、適宜採用する設計的事項であることから、5つの接点を持つ補正後の発明の「クラスタキー」を、同様に5つの接点を持つ、公知技術である「四角形状の多機能のキー」に替え、このとき、四角形状として正方形状を採用することで、相違点2に係る構成とすることは、当業者が格別の創意を要することなく構成し得たものである。

また、補正後の発明の構成を採用することによって生じる作用効果も、引用発明及び公知技術からなる構成により生じる作用効果と比べて格別のものであるともいえない。

以上のとおり、補正後の発明は引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明できた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明である。

4.結語
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成23年6月3日付けの手続補正を上記のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年12月28日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「携帯無線装置用のキーパッドであって、
前記携帯無線装置に入力されるキャラクタに相当する電気信号を生成するために、プリント回路基板に、選択的に電気的接続することができる複数のキーと、
各キーに関する複数の接点であって、各接点が、該接点に関連するキャラクタを入力するために、前記プリント回路基板に個別に電気的に接続することができる、複数の接点と、を含み、
各キーに対する前記複数の接点はプログラム可能であり、
前記接点のうちの1つは、前記キー上の第1の位置に提供され、前記接点のうちの残りは、それぞれ前記キー上の他の位置に提供され、
複数の機能のうちの少なくとも1つが、前記キー上の前記第1の位置に予
め割り当てられ、前記機能の残りが、前記キー上の前記他の位置にプログラム可能に割り当てられるキーパッド。」

2.引用発明及び公知技術
引用発明及び公知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び公知技術」の項に示したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明できた発明であるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明できた発明である。

<付記:回答書に記載された補正案について>
なお、平成23年11月14日に提出された補正案を含む回答の内容についても予備的に検討したが、補正案の要点である「単一モードとマルチモードとの切り替え」を行う点は、既に原査定の拒絶の理由で提示した米国特許第5,861,823号明細書(第3欄58行?67行)及び国際公開第2003/107632号明細書(第8頁13行?16行、図2)にも開示された技術であり、補正案の内容を勘案しても、当業者が容易に発明できた発明であるとの結論に変わりはない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-20 
結審通知日 2012-07-23 
審決日 2012-08-07 
出願番号 特願2007-548181(P2007-548181)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 慎一  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 稲葉 和生
甲斐 哲雄
発明の名称 携帯無線装置用キーパッド  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  
代理人 木村 秀二  

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