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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03C
管理番号 1267635
審判番号 不服2011-16520  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-01 
確定日 2012-12-20 
事件の表示 特願2007-557409「衛生設備用の構成ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月 8日国際公開、WO2006/092276、平成20年 8月14日国内公表、特表2008-531884〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,2006年2月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年3月4日,独国)を国際出願日とする出願であって,平成23年3月23日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年8月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1?9に係る発明は,平成22年11月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち,請求項1に係る発明は,以下のとおりのものである。
「【請求項1】衛生設備用の構成ユニットであって,該構成ユニットは挿入カートリッジ(2)として衛生設備用の出口栓(4)の流体案内路(3)内に挿入されるようになっていて,ケーシング(5)及び水流調整器を備えており,ケーシング(5)は外周に雄ねじ(10)を有しており,該雄ねじは出口栓(4)の雌ねじ(13)内にねじ込まれるようになっている形式のものにおいて,ケーシング(5)の長さは,該ケーシングに雄ねじ(10)と該雄ねじの下流側に直接に隣接するリングシール(12)とが配置できるように規定されており,前記ケーシングは前記雄ねじ(10)の上流側に直接に続く縁部を有しており,上流側に水流分割部分(7)を配置してあり,該水流分割部分は前記ケーシング(5)に結合されるようになっており,水流分割部分(7)とケーシング(5)とは,流体流過方向で所定の長さにわたって互いに嵌め合わされており,水流分割部分(7)若しくはケーシング(5)の外周若しくは内周に環状段部(40)を設けてあり,該環状段部はケーシング(5)若しくは水流分割部分(7)の端面領域(41)に当接するようになっており,ケーシング(5)において,リングシール(2[12の誤記と認められる])及び該リングシールと隣接する雄ねじ(10)の上流側にケーシング縁部(17)を接続してあることを特徴とする,衛生設備用の構成ユニット。」(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

3 引用刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,国際公開第2004/38112号(以下「刊行物1」という。)には,図面とともに以下の記載がある(原文のウムラウト表記は対応する欧文表記の後に「#」を付記したものに改めて表記。邦訳は,刊行物1に対応する国内公表である特表2006-504017号公報による翻訳文。)

(1a)「In den Figuren 1 und 2 ist eine sanita#re Auslaufarmatur in zwei unterschiedlichen Ausfu#hrungen 1, 2 dargestellt. Die Auslaufarmaturen 1 , 2 weisen eine Flu#ssigkeitsfu#hrung 3 auf, die in einen Armaturen-Auslauf 4 mu#ndet. Im Bereich dieses Armaturen- Auslaufs 4 ist jeweils eine sanita#re Funktionseinheit 5 vorgesehen, die hier als Strahlregler dient. Die als Strahlregler dienende Funktionseinheit 5 ist als Einsetzpatrone ausgestaltet, in deren Inneren zumindest eine Strahlzerlegeeinrichtung und eine Strahlreguliereinrichtung vorgesehen sind.」(明細書第12頁第17行?同頁第25行)

(邦訳:図1及び図2には,2つの異なる実施例による衛生的な水栓(水栓金具)が示されている。これらの水栓1,2は,液体ガイド3を有しており,この液体ガイド3は水栓吐水口4内に開口している。この水栓吐水口4の領域内にそれぞれ1つの衛生的な機能ユニット5が設けられており,この機能ユニット5は噴流調整器として用いられる。噴流調整器として用いられる機能ユニット5は挿入カートリッジとして構成されており,この挿入カートリッジの内部に少なくとも1つの噴流分散装置と1つの噴流調整装置とが設けられている。)

(1b)「In Figur 3 ist eine sanita#re Auslaufarmatur 2 im Bereich des Armaturen-Auslaufs 4 ihrer Flu#ssigkeitsfu#hrung 3 dargestellt. Im Bereich des Armaturen-Auslaufs 4 ist eine als Einsetzpatrone 5 ausgestattete sanita#re Funktionseinheit vorgesehen, die u#ber einen hu#lsenfo#rmigen Zwischenhalter 6 im Armaturen-Auslauf 4 gehalten ist. Die Einsetzpatrone 5 ist von der Zustro#mseite des Zwischenhalters 6 aus bis zu einem Halteabsatz 7 in den Zwischenhalter 6 einsetzbar. Der Zwischenhalter 6 weist an seinem abstro#mseitigen Umfangsrandbereich ein AuBengewinde 8 auf, wel- ches AuBengewinde 8 in ein komplementa#res Innengewinde im Armaturen-Auslauf 4 derart einschraubbar ist, daB der Zwischenhalter 6 und die darin befindliche Einsetzpatrone 5 mit ihrer gesamten La#ngserstreckung vollsta#ndig im Armaturen-Auslauf 4 angeordnet sind.

Auf der in Stro#mungsrichtung abgewandten Seite des AuBengewindes 8 ist am Zwischenhalter-Umfang eine in einer Ringnut 10 gehaltene Ringdichtung 11 vorgesehen, die in radialer Richtung zwischen dem Zwischenhalter 6 und dem Innenumfang der Auslauf- armatur 1 abdichtet. Die Einsetzpatrone 5 ist hier aus einem abstro#mseitigen Strahlregler 12 gebildet, der zustro#mseitig mit einem Durchflussmengenregler 13 sowie mit einem vorgeschalteten Vorsatzsieb 14 vorzugsweise lo#sbar verbunden ist.
Auf der Zustro#mseite des Zwischenhalters 6 ist ein weiteres Vorsatzsieb 15 vorgesehen, das sich im Inneren der Flu#ssigkeitsfu#hrung 3 der Auslaufarmatur 2 u#ber einen vergleichsweise groBen Querschnitt erstrecken kann. Das Vorsatzsieb 15 ist mit dem Zwischenhalter 6 lo#sbar verbunden und weist dazu an seinem Umfangsrand einen umlaufenden Rastvorsprung 16 auf, der in eine Ringnut am zustro#mseitigen Innenumfang des Zwischenhalters 6 eingreift. Zwischen dem Vorsatzsieb 15 und einer zustro#mseiti- gen Stirnfla#che des Strahlreglers 12 der Einsetzpatrone 5 ist eine in axialer Richtung abdichtende Ringdichtung 17 vorgesehen, wobei der Strahlregler 12 mit einem Ringflansch 18 zwischen dem Halteabsatz 7 und dem Vorsatzsieb 15 gehalten ist. In den Zwischenhalter 6 sind Funktionseinheiten u#blicher Bauart einsetzbar, die beispielsweise als Strahlregler, Durchflussmen- genregler, Ru#ckfluBverhinderer und/oder Vorsatzsieb ausgestaltet sein k#nnen.」(明細書第15頁第11行?第16頁第17行)

(邦訳:図3には,衛生的な水栓2の,液体ガイド3の吐水口4の領域が示されている。水栓2の吐水口4の領域に,挿入カートリッジ5として構成された衛生的な機能ユニットが設けられている。この機能ユニットは,スリーブ状の中間ホルダ6を介して水栓吐水口4内で保持されている。挿入カートリッジ5は,中間ホルダ6内に,流入側から保持段部7まで挿入可能である。中間ホルダ6は,その流出側の外周縁部領域で雄ねじ山8を有しており,この雄ねじ山8は,中間ホルダ6と,この中間ホルダ6内に存在する挿入カートリッジ5とが,その縦方向の延在長さ全体に亘って水栓吐水口4内に配置される程度に,水栓吐水口4に形成された相補的な(対応する)雌ねじ山に螺合可能である。
雄ねじ山8の,流入側とは反対側において,中間ホルダ6の外周部に,環状溝10内で保持されたリングシール11が設けられており,このリングシール11は半径方向において,中間ホルダ6と水栓1の内周面との間でシールされている。挿入カートリッジ5は,流出側の噴流調整器12より形成されており,この噴流調整器12は,流入側で貫流量調整器13と,及びこの貫流量調整器13の前方に接続された前置フィルタ14と解除可能に結合されている。
中間ホルダ6の流入側に別の前置フィルタ15が設けられており,この前置フィルタ15は,水栓2の液体ガイド3の内部で比較的大きい横断面に亘って延在している。前置フィルタ15は,中間ホルダ16(6の誤記と認められる。)に解除可能に結合されていて,そのために前置フィルタ15は外周縁部で環状の係止突起16を有しており,この係止突起16は,中間ホルダ6の流入側の内周面に形成された環状溝に係合する。前置フィルタ15と,挿入カートリッジ5の噴流調整器12の流入側の端面との間に,軸方向でシールされたリングシール17が設けられており,この場合,噴流調整器12は,環状フランジ18によって,保持段部7と前置フィルタ15との間で保持されている。中間ホルダ6内に,一般的な構造の機能ユニットが挿入可能であって,この機能ユニットは,例えば噴流調整器,貫流量調整器,逆流防止部材及び/又は前置フィルタとして構成されていてよい。)

(1c)「In Figur 4 ist eine sanita#re Auslaufarmatur 1 gezeigt, in deren Auslaufende eine als Einsetzpatrone 5 ausgestaltete sanita#re Funktionseinheit auch ohne einen Zwischenhalter einsetzbar ist. Die Einsetzpatrone 5 hat dazu ein mehrteiliges und hier zweiteilig ausgestaltetes Patronengeha#use 19, das an einem abstro#mseitigen Geha#useteil 20 ein AuBengewinde 21 tra#gt. Die Einsetzpatrone 5 ist mit diesem AuBengewinde 21 mit einem Innengewinde verschraubbar , das am Innenumfang der am Auslaufende der Auslaufarmatur 1 vorgesehenen Flu#ssigkeitsfu#hrung 3 angeordnet ist. Auch am Geha#useteil 20 ist auf der in Stro#mungsrichtung abgewandten Seite des AuBengewindes 21 eine Ring- dichtung 11 vorgesehen, die sich in einer Ringnut am AuBenumfang des Patronengeha#uses 19 befindet.」(明細書第16頁第19行?同頁第31行)

(邦訳:図4には,衛生的な水栓1が図示されており,この水栓1の流出側端部に,挿入カートリッジ5として構成された衛生的な機能ユニットが,中間ホルダなしで挿入可能である。このために,挿入カートリッジ5は,複数の部分,図示の実施例では2つの部分より構成されたカートリッジケーシング19を有しており,このカートリッジケーシング19は,流出側のケーシング部分20で雄ねじ山21を有している。挿入カートリッジ5は雌ねじ山によって,雄ねじ山21に螺合せしめられる。この雄ねじ山21は,水栓1の吐水口側端部に設けられた液体ガイド3の内周面に配置されている。ケーシング部分20にも,雄ねじ山21の,流入側とは反対側にリングシール11が設けられており,このリングシール11は,カートリッジケーシング19の外周縁部に配置されている。)

(1d)Fig.3には,中間ホルダ6の外周部において,雄ねじ山8の流入側とは反対側に,雄ねじ山8に直接隣接するように,環状溝10内で保持されたリングシール11が設けられており,
さらに,雄ねじ山8の流入側,かつ,内周側には保持段部7と係止突起16を有する部分を有する中間ホルダと挿入カートリッジの嵌合について,環状フランジ18を,保持段部7に当接しつつ,中間ホルダ6に流体流過方向で所定の長さにわたって嵌め合わすことで行っている様子が記載されている。

ここで,記載(1b)の「水栓2の吐水口4の領域に,挿入カートリッジ5として構成された衛生的な機能ユニットが設けられている。この機能ユニットは,スリーブ状の中間ホルダ6を介して水栓吐水口4内で保持されている。挿入カートリッジ5は,中間ホルダ6内に,流入側から保持段部7まで挿入可能である。」からみて,「挿入カートリッジ5として構成された衛生的な機能ユニット」が「中間ホルダ6」を介して保持されており,「挿入カートリッジ5」は,「中間ホルダ6」内に挿入可能であるといえることから,「中間ホルダ6」と「挿入カートリッジ5」はそれぞれ独立した部材であるものと認められる。

以上を総合すると,上記記載(1a)?(1d)からみて,刊行物1には,以下の発明が記載されていると認められる(以下,「刊行物1記載の発明」という。)。
「水栓2は,液体ガイド3を有し,
この水栓吐水口4の領域内にそれぞれ1つの衛生的な機能ユニット5が設けられ,
この機能ユニット5は噴流調整器として用いられ,
噴流調整器として用いられる機能ユニット5は挿入カートリッジとして構成されており,
この挿入カートリッジの内部に少なくとも1つの噴流分散装置と1つの噴流調整装置とが設けられており,
衛生的な水栓2の,液体ガイド3の吐水口4の領域に,挿入カートリッジ5として構成された衛生的な機能ユニットが設けられ,
この機能ユニットは,スリーブ状の中間ホルダ6を介して水栓吐水口4内で保持されており,
挿入カートリッジ5は,中間ホルダ6内に,流入側から保持段部7まで挿入可能で,
中間ホルダ6は,その流出側の外周縁部領域で雄ねじ山8を有しており,
この雄ねじ山8は,中間ホルダ6と,この中間ホルダ6内に存在する挿入カートリッジ5とが,その縦方向の延在長さ全体に亘って水栓吐水口4内に配置される程度に,水栓吐水口4に形成された相補的な(対応する)雌ねじ山に螺合可能で,
中間ホルダ6の外周部において,雄ねじ山8の,流入側とは反対側に,雄ねじ山8に直接隣接するように,環状溝10内で保持されたリングシール11が設けられ,
雄ねじ山8の流入側,かつ,内周側には保持段部7と係止突起16を有する部分を有しており,
中間ホルダ6の流入側に別の前置フィルタ15が設けられており,この前置フィルタ15は,水栓2の液体ガイド3の内部で比較的大きい横断面に亘って延在し,
前置フィルタ15は,中間ホルダ6に解除可能に結合されていて,そのために前置フィルタ15は外周縁部で環状の係止突起16を有しており,この係止突起16は,中間ホルダ6の流入側の内周面に形成された環状溝に係合し,
前置フィルタ15と,挿入カートリッジ5の噴流調整器12の流入側の端面との間に,軸方向でシールされたリングシール17が設けられ,噴流調整器12は,環状フランジ18によって,保持段部7と前置フィルタ15との間で保持されており,
環状フランジ18は,保持段部7に当接しつつ,中間ホルダ6に流体流過方向で所定の長さにわたって嵌め合わされている,
機能ユニットと中間ホルダ」

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特表2003-536000号公報(以下「刊行物2」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
(2a)「【請求項14】噴流調整装置(4)の前方に噴流分解装置が接続されており,該噴流分解装置は少なくとも噴流調整器ケーシング(2)と解除可能に係止可能な孔付きプレート(3)を有している,請求項1から13までのいずれか1項記載の噴流調整器。」

(2b)「【0033】 図1に示した噴流調整器1は,心地良く柔軟な(perlend-weichen)飛び散らない均一な噴射水流を生ぜしめるために,詳しく図示していない衛生設備の流出水栓に組み込まれる。
【0034】噴流調整器1は,スリーブ状の噴流調整器ケーシング2を有しており,そのケーシング内部に流過方向Pf1に,孔付き円板3として構成された噴流分解装置と,流出側に整流装置5とが設けられている。噴流調整器1のケーシング内部から汚れ粒子を遠ざけて,噴流調整器1の自由な流れが保証される運転が得られるようにするために,噴流調整器1に補助フィルタ6が前置接続されている。
【0035】 孔付きプレート3のプレート面は,貫流方向Pf1に対して横方向に配列されている。この孔付きプレート3は,互いに間隔を保って配置された多数の貫流孔7を有しており,これらの貫流孔7は,流入側でそれぞれ1つの丸味を付けられた漏斗状の流入開口8を有している(図3b,図3c)。
【0036】噴流調整器1に流入する液体流は,孔付き円板3として構成された噴流分解装置内で,多数の個別噴流に分割される。次いで個別噴流は,後続の噴流調整装置4内で,心地良く柔軟で均一な全噴流に成形される。」

(2c)「【0042】 図1により明らかなように,組込部分は流入側のケーシング端面側から一緒に組込ストッパ16まで噴流調整器ケーシング2内に解除可能に組込ことができる。このために,組込部分9,10の支持リング12の外周面は,噴流調整器ケーシング2の内径の内法寸法に合致されている。組込部分9,10を噴流調整器ケーシング2内に挿入した後で,孔付きプレート3も噴流調整器ケーシング2内に組み込まれ,ここで解除可能に係止される。」

(2d)図1には,噴流調整器ケーシング(2)の上流側に孔付きプレート(3)を配置しており,孔付きプレート(3)の外周と噴流調整器ケーシング(2)の内周にそれぞれ環状段部を設け,該環状段部で孔付きプレート(3)と噴流調整器ケーシング(2)とが当接するようになっている様子が記載されている。

(3)刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特表2001-502025号公報(以下「刊行物3」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
(3a)「 図1と図2に記載の噴流調整器1は,スリーブ状のケーシング2を有している。ケーシング2は,2つのスリーブ部分からなっている。噴流調整器1は,衛生排出装置に取り付けることが出来る,図1と図2に示されていない排出口に挿入可能である。
噴流調整器1は,噴流分割プレート6を有する噴流調整装置5を有している。」(第17頁第22行?同頁第26行)

(3b)「図1と図2との比較から明らかな様に,噴流分割装置5の噴流分割プレート6は,保持部3として役立つスリーブ部分のケーシング壁と一体的に結合されている。保持部3に一体的に成形された噴流分割プレート6は,従って,噴流調整器1の正確に成形された流入側の終端部を形成している。終端部には,水を節約する噴流調整器1の機能にとって適切な運転を支えかつ安定させるために,流れ方向でみて,前接続された貫流スクリーン15および/またはここでは図示されていない貫流制限器および貫流流量制御器を有利には,解離可能に固定することが出来る。」(第19頁第10行?同頁第17行)

(3c)図1,2において,噴流分割プレート6の環状段部に,ケーシング2の端面領域が当接している様子が記載されている。

4 本願発明と刊行物1記載の発明との対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,
刊行物1記載の発明の「水栓2」は,本願発明の「出口栓」に相当し,以下同様に,
「流体ガイド3」は,「流体案内路」に,
「中間ホルダ6」は,「ケーシング」に,
「雄ねじ山8」は,「雄ねじ」に,
「雌ねじ山」は,「雌ねじ」に,
中間ホルダの「保持段部7と係止突起16を有する部分」は,「縁部」に,
「保持段部7」は,「環状段部」に,
それぞれ相当する。

刊行物1記載の発明の「挿入カートリッジ」は,「内部に少なくとも1つの噴流分散装置と1つの噴流調整装置とが設けられて」いることからみて,噴流調整装置と噴流分散装置を備えているものと認められることから,本願発明の「水流調整器」及び「水流分割部分」に相当する。

本願発明の「構成ユニット」は,「ケーシング(5)及び水流調整器を備え」たものであることからみて,刊行物1記載の発明の「中間ホルダ」と「挿入カートリッジ」を合わせたものは,本願発明の「構成ユニット」に相当する。
また,刊行物1記載の発明の「水栓2」は,衛生設備の一部をなすものであることは明らかであることから,刊行物1に記載の発明の「中間ホルダ」と「挿入カートリッジ」を合わせたものは,衛生設備用のものであると認められる。

刊行物1記載の発明の「中間ホルダ6」と「挿入カートリッジ」は,「衛生的な水栓2の,液体ガイド3の吐水口4の領域に,挿入カートリッジ5として構成された衛生的な機能ユニットが設けられ,」「中間ホルダ6は,その流出側の外周縁部領域で雄ねじ山8を有しており,この雄ねじ山8は,中間ホルダ6と,この中間ホルダ6内に存在する挿入カートリッジ5とが,その縦方向の延在長さ全体に亘って水栓吐水口4内に配置される程度に,水栓吐水口4に形成された相補的な(対応する)雌ねじ山に螺合可能で」あることからみて,「水栓2」の「流体ガイド3」内に挿入されているものと言える。

刊行物1記載の発明の「リングシール」は,「雄ねじ山8の,流入側とは反対側において,中間ホルダ6の外周部において,雄ねじ山8に直接隣接するように,環状溝10内で保持されたリングシール11が設けられて」いることからみて,「雄ねじ山」の下流側に直接隣接するように配置されているものと認められる。そして,刊行物1記載の発明の「中間ホルダ」がその外周に「雄ねじ山」と「リングシール」を直接隣接するように設けていることからみて,「中間ホルダ」の長さは,「雄ねじ山」と「リングシール」を配置できる長さに規定されていることは明らかである。

刊行物1記載の発明の「環状フランジ18」は,「挿入カートリッジ」の一部をなすものであり,「環状フランジ18は,中間ホルダ6に所定の長さにわたって嵌め合わされている」ことからみて,「挿入カートリッジ」と「中間ホルダ」は互いに所定の長さにわたって嵌め合わされているものと言える。

刊行物1記載の発明において,「前置フィルタ15・・・の係止突起16は,中間ホルダ6の流入側の内周面に形成された環状溝に係合し」ていること,「挿入カートリッジ5は,中間ホルダ6内に,流入側から保持段部7まで挿入可能」こと,「挿入カートリッジ5の噴流調整器12」であることからみて,刊行物1記載の発明の「噴流調整器12は,環状フランジ18によって,保持段部7と前置フィルタ15との間で保持されており,環状フランジ18は,保持段部7に当接しつつ,中間ホルダ6に流体流過方向で所定の長さにわたって嵌め合わされている」と本願発明の「該水流分割部分は前記ケーシング(5)に結合されるようになっており」は,水流分割部分はケーシングに保持されるようになっている点で共通している。

刊行物1記載の発明において,「噴流調整器12は,環状フランジ18によって,保持段部7と前置フィルタ15との間で保持されて」いること,「挿入カートリッジ5は,中間ホルダ6内に,流入側から保持段部7まで挿入可能」こと,「挿入カートリッジ5の噴流調整器12」であることからみて,刊行物1記載の発明の「雄ねじ山8の流入側,かつ,内周側には保持段部7と係止突起16を有する部分を有しており,」「噴流調整器12は,環状フランジ18によって,保持段部7と前置フィルタ15との間で保持されており,環状フランジ18は,保持段部7に当接しつつ,中間ホルダ6に流体流過方向で所定の長さにわたって嵌め合わされている」と本願発明の「水流分割部分(7)若しくはケーシング(5)の外周若しくは内周に環状段部(40)を設けてあり,該環状段部はケーシング(5)若しくは水流分割部分(7)の端面領域(41)に当接するようになっており」は,ケーシングの内周に環状段部を設け,該環状段部はケーシングに当接している点で共通している。

したがって,両者は以下の点で一致している。
「衛生設備用の構成ユニットであって,該構成ユニットは挿入カートリッジとして衛生設備用の出口栓の流体案内路内に挿入されるようになっていて,ケーシング及び水流調整器を備えており,ケーシングは外周に雄ねじを有しており,該雄ねじは出口栓の雌ねじ内にねじ込まれるようになっている形式のものにおいて,ケーシングの長さは,該ケーシングに雄ねじと該雄ねじの下流側に直接に隣接するリングシールとが配置できるように規定されており,前記ケーシングは前記雄ねじの上流側に直接に続く縁部を有しており,水流分割部分は前記ケーシングに保持されるようになっており,水流分割部分とケーシングとは,流体流過方向で所定の長さにわたって互いに嵌め合わされており,ケーシングの内周に環状段部を設けてあり,該環状段部は水流分割部分に当接するようになっており,ケーシングにおいて,リングシール及び該リングシールと隣接する雄ねじの上流側にケーシング縁部を接続してある,衛生設備用の構成ユニット。」

そして,以下に示す点で相違している。
<相違点>
(相違点1)
水流分割部分とケーシングについて,
本願発明は,ケーシングの上流側に水流分割部分を配置し,水流分割部分はケーシングに相互に結合されているのに対して,
刊行物1記載の発明は,「挿入カートリッジ」を「中間ホルダ」の上流側に配置しておらず,さらに両者を相互に結合してもいない点。

(相違点2)
本願発明は,「環状段部はケーシング若しくは水流分割部分の端面領域に当接」しているのに対して,
刊行物1記載の発明は,「保持段部7」と「挿入カートリッジ」の当接は,「挿入カートリッジ」の「環状フランジ18」で行われているのであって,「挿入カートリッジ」の端面領域で行われてはいない点。

5 判断
(相違点1について)
刊行物2記載の「孔付きプレート」,「噴流調整器ケーシング」,「噴流調整器」,「流出水栓」は,それぞれ本願発明の「水流分割部分」,「ケーシング」,「構成ユニット」,「出口栓」に相当する。

そして,刊行物2には,衛生設備の流出水栓に組み込まれる噴流調整器において,「孔付きプレート」を「噴流調整器ケーシング」の上流側に配置し,「孔付きプレート」の外周と「噴流調整器ケーシング」の内周にそれぞれ環状段部を設け,該環状段部で「孔付きプレート」と「噴流調整器ケーシング」とが当接するように配置し,「孔付きプレート」と「噴流調整器ケーシング」を解除可能に係止する点が記載されている。

ここで,刊行物1に記載の発明と,刊行物2に記載の噴流調整器は,いずれも衛生設備の出口栓に組みこまれる構成ユニットに関する発明で,水中分割部分とケーシングとを備えたものである点で共通しており,水中分割部分とケーシングの配置構造をどのような構造とするかは当業者が適宜決定することであることから,刊行物1記載の発明の水中分割部分とケーシングの配置構造として,刊行物2に記載の構造を採用して,相違点1に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
刊行物3記載の発明の「噴流調整器」,「ケーシング」,「噴流分割プレート」,「衛生排出装置」は,それぞれ本願発明の「構成ユニット」,「ケーシング」,「水流分割部分」,「出口栓」に相当する。

そして,刊行物3には,衛生設備の衛生排出装置に組み込まれる噴流調整器において,「ケーシング」とその上流に配置した「噴流分割プレート」を解離可能に固定する際に,「噴流分割プレート」の外周に環状段部を設け,該環状段部を「ケーシング」の端面領域に当接させる係止構造が記載されている。

さらに,刊行物1の記載事項(1c),図4からみて,刊行物1にも上述の刊行物3に記載されている事項と同様の点が記載されている。

これらのことからみて,衛生設備の出口栓に組み込まれる構成ユニットにおいて,ケーシングと水流分割部分を固定する際に,水流分割部分の外周に環状段部を設け,該環状段部をケーシングの端面領域に当接させることは当該技術分野に於いて周知の技術である。

刊行物1に記載の発明と,刊行物3や1に例示される周知の技術の構成ユニットは,いずれも衛生設備の出口栓に組みこまれる構成ユニットに関する発明で,水中分割部分とケーシングとを備えたものである点で共通していることから,刊行物1記載の発明の水中分割部分とケーシングの配置構造として,刊行物2に記載の構造を採用して,相違点1に係る発明特定事項とする際に,当該周知の技術を考慮して,水流分割部分の環状段部をケーシングの端面領域に当接させて,相違点2に係る発明特定事項とすることは当業者が適宜行う設計的事項である。

そして,本願発明の作用効果は,刊行物1記載の発明,刊行物2,3の記載事項,及び,周知の技術から予測できる程度のものである。

したがって,本願発明は,刊行物1記載の発明,刊行物2,3の記載事項,及び,周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6 むすび
以上のとおり,本願発明は特許を受けることができないものであることから,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-20 
結審通知日 2012-07-25 
審決日 2012-08-09 
出願番号 特願2007-557409(P2007-557409)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渋谷 知子  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 横井 巨人
中川 真一
発明の名称 衛生設備用の構成ユニット  
代理人 星 公弘  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  
代理人 高橋 佳大  

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