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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02B
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1267929
審判番号 不服2011-7528  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-11 
確定日 2012-12-26 
事件の表示 特願2006-526204「遊星ロータリー内燃エンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月17日国際公開、WO2005/024200、平成19年 8月 9日国内公表、特表2007-522369〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本件出願は、2004年(平成16年)9月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年9月4日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年3月6日付けで国内書面が提出され、同年4月10日付けで明細書、特許請求の範囲及び要約書の翻訳文が提出され、同年5月11日付けで手続補正書が提出され、平成22年1月4日付けの拒絶理由通知に対して、同年7月7日付けで意見書が提出されたが、同年12月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年4月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において同年11月7日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、平成24年5月8日付けで回答書が提出されたものである。


【2】平成23年4月11日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年4月11日付けの手続補正を却下する。


[理 由]
1.本件補正の内容
平成23年4月11日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成18年5月11日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(b)に示す請求項1を、下記の(a)に示す請求項1へと補正するものである。

(a)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
燃料を内部で燃焼するロータリーエンジンにおいて、
内側壁に三つのローブを有し、これらのローブのうちの隣接したローブがピークによって分けられている側壁を持つハウジング、
複数の排気ポート及び複数の入口ポートを持ち、前記ハウジングに固定された後プレート、
前記後プレートに面した後面及び反対側の前面を持つ前プレートであって、この前プレート、前記後プレート、及び前記側壁が前記ハウジング内にキャビティを形成する、前プレート、
シャフト及び少なくとも一つの円形切り欠き領域を持つロータであって、前記前プレートに取り付けられており、これによって前記前プレートは前記ロータとともに回転し、前記ロータは、前記ハウジング内で回転するとき、前記ピークの各々と断続的にシールを形成する外面を有する、ロータ、
回転部材歯車を持つ回転部材シャフトを各々有する少なくとも一つの回転部材であって、前記回転部材シャフトは前記前プレートの対応する開口部を通って延び、前記回転部材歯車は前記前プレートの前記前面と隣接しており、前記少なくとも一つの回転部材は前記前プレートの前記後面と隣接しており、前記少なくとも一つの回転部材の各々は、前記ロータの前記少なくとも一つの円形切り欠き領域のうちの対応する一つの領域内で回転自在であり、前記少なくとも一つの回転部材の各々は、前記回転部材の周囲に亘って等間隔に間隔が隔てられた三つのチップを有する、回転部材、
前記回転部材シャフトの各々を受け入れる、前記回転部材歯車と反対側の後リングマウントであって、前記後リングは前記後プレートのチャンネルに受け入れられる、後リングマウント、
前記ロータシャフトと同軸の、前記ハウジングに対して定置の太陽歯車、
各々が前記太陽歯車及び前記回転部材歯車のうちの対応する一つの回転部材歯車と係合する一組の3個のアイドラー歯車、
燃料を前記ハウジングに導入するための手段、
前記ハウジング内の前記燃料に点火するための手段、
燃焼ガスを前記複数の排気ポートから差し向けるための排気マニホールド、及び
空気を前記複数の入口ポートに差し向けるための吸気マニホールドを含み、
前記ロータの前後の表面に、ばね部材及びシーリング部材を受け入れるためのチャンネルが設けられ、前記シーリング部材の上面が前記前プレート又は前記後プレートと摺動接触するようになっている、ロータリーエンジン。」(下線部は審判請求人が補正箇所を示したものである。)

(b)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
燃料を内部で燃焼するロータリーエンジンにおいて、
内側壁に三つのローブを有し、これらのローブのうちの隣接したローブがピークによって分けられている側壁を持つハウジング、
複数の排気ポート及び複数の入口ポートを持ち、前記ハウジングに固定された後プレート、
前記後プレートに面した後面及び反対側の前面を持つ前プレートであって、この前プレート、前記後プレート、及び前記側壁が前記ハウジング内にキャビティを形成する、前プレート、
シャフト及び少なくとも一つの円形切り欠き領域を持つロータであって、前記前プレートに取り付けられており、これによって前記前プレートは前記ロータとともに回転し、前記ロータは、前記ハウジング内で回転するとき、前記ピークの各々と断続的にシールを形成する外面を有する、ロータ、
回転部材歯車を持つ回転部材シャフトを各々有する少なくとも一つの回転部材であって、前記回転部材シャフトは前記前プレートの対応する開口部を通って延び、前記回転部材歯車は前記前プレートの前記前面と隣接しており、前記少なくとも一つの回転部材は前記前プレートの前記後面と隣接しており、前記少なくとも一つの回転部材の各々は、前記ロータの前記少なくとも一つの円形切り欠き領域のうちの対応する一つの領域内で回転自在であり、前記少なくとも一つの回転部材の各々は、前記回転部材の周囲に亘って等間隔に間隔が隔てられた三つのチップを有する、回転部材、
前記回転部材シャフトの各々を受け入れる、前記回転部材歯車と反対側の後リングマウントであって、前記後リングは前記後プレートのチャンネルに受け入れられる、後リングマウント、
前記ロータシャフトと同軸の、前記ハウジングに対して定置の太陽歯車、
各々が前記太陽歯車及び前記回転部材歯車のうちの対応する一つの回転部材歯車と係合する一組の3個のアイドラー歯車、
燃料を前記ハウジングに導入するための手段、
前記ハウジング内の前記燃料に点火するための手段、
燃焼ガスを前記複数の排気ポートから差し向けるための排気マニホールド、及び
空気を前記複数の入口ポートに差し向けるための吸気マニホールドを含む、ロータリーエンジン。」


2.本件補正の適否について
2-1.目的要件違反
本件補正の目的が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号の掲げる事項に該当するか否かについて、以下に検討する。
本件補正後の請求項1には、「前記ロータの前後の表面に、ばね部材及びシーリング部材を受け入れるためのチャンネルが設けられ、前記シーリング部材の上面が前記前プレート又は前記後プレートと摺動接触するようになっている」事項(以下、「補正事項」という。)が新たに追加されている。
この補正事項は、本件補正前の請求項1に対して、新たな部材である「ばね部材及びシーリング部材」が加わり、さらに、当該「ばね部材及びシーリング部材」、及び「ロータの前後の表面」の「チャンネル」による作用として、「シーリング部材の上面が前記前プレート又は前記後プレートと摺動接触するようになっている」ことが新たに加わったものであり、このため、本件補正前の請求項1の何れかの発明特定事項を限定するものではなく、請求項1における前記補正事項を追加する本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものとは認められない。
また、請求項1における前記補正事項を追加する本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的としているものでもない。
したがって、請求項1における前記補正事項を追加する本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号のいずれにも該当しない。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


2-2.独立特許要件違反
本件補正は、上記2-1.に指摘したような特許請求の範囲の減縮を目的としたものではなく、さらに、請求項の削除、誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもないが、仮に、請求項1における前記補正事項を追加する本件補正が、「ロータ」を「前記ロータの前後の表面に、ばね部材及びシーリング部材を受け入れるためのチャンネルが設けられ、前記シーリング部材の上面が前記前プレート又は前記後プレートと摺動接触するようになっている」と限定したものとして、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、単に「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて、以下に検討する。


2-2-1.引用文献記載の発明及び技術
2-2-1-1.引用文献1記載の発明
(1)原査定の拒絶理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第2136066号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「Our invention relates to Internal combustion hydrocarbon engines of the rotary type.」(本文第1ページ左欄第1及び2行)

〈当審仮翻訳〉
「我々の発明は、ロータリー型内燃炭化水素エンジンに関する。」

(イ)「The invention is comprised primarily of a pair of end bearings and a central stator with the assembly being enclosed by cylinder heads that are secured to the stator by through-bolts. …(中略)… Exhaust and intake manifolds are secured to the central stator and spark plugs are also disposed therein.」(本文第1ページ左欄第3ないし25行)

〈当審仮翻訳〉
「本発明は、主として1対のエンド・ベアリングおよびセントラル・ステーターのほかスルーボルトによりステーターに固定されるシリンダー・ヘッドにより密閉されるアセンブリから構成される。スリーブ・シャフトがシリンダー・ヘッドを横切っており、プライマリー・ローターがそこにキー結合されている。セカンダリー・ローターがプライマリー・ローターとともに働き、エンド・ベアリングを通過するシャフト上で軸受けされる。スリーブ・シャフトおよびセカンダリー・ローターを載せているシャフトは、減摩ベアリング内で回転する。駆動ピニオンがスリーブ・シャフトに固定されており、パワー・テークオフ・シャフト上に配置されているギアとともに働く。パワー・テークオフ・シャフトは、1対の減摩ベアリング内に軸受けされているが、これらの一方はシリンダー・ヘッドの1つの中のくぼみに配置されており、他方はシリンダー・ヘッドに固定されているハウジングに置かれている。このハウジングは、ギアおよび減摩ベアリング(パワー・テークオフをスリーブ・シャフトに結合している)を収容するケーシングとなっている。エキゾースト・マニフォールドおよびインテーク・マニフォールドがセントラル・ステーターに固定されており、また、スパーク・プラグもそこに配置されている。」

(ウ)「The primary object of our invention is to provide an engine in which simplicity of construction and simplicity of operation are combined with practical construction design.
…(中略)…
And a still further object of our invention consists in so constructing the engine that reciprocating valves are eliminated.」(本文第1ページ左欄第26行ないし同ページ右欄第12行)
〈当審仮翻訳〉
「我々の発明の主な目的は、構造の単純性および動作の単純性を実用的な構造設計と組み合わせたエンジンを提供することである。
我々の発明の他の目的は、燃料消費において経済的であり、最小の部品から成るエンジンを提供することである。
我々の発明のもう1つの目的は、往復運動部分をもたず、かつ、現用されているエンジンより馬力当たり重量の小さいエンジンを構築することである。
我々の発明のさらにもう1つの目的は、運転に伴う不快感が最小であり、摩耗部品がより少なく、かつ、組立が簡単なエンジンを構築することである。
我々の発明のさらにもう1つの目的は、発生馬力あたりのコストが最小であり、かつ、軽重量であることからエンジン自身の軽量化のお陰でより大きい荷重を運搬できる航空機搭載用に使用できるエンジンを構築することである。
我々の発明のさらにもう1つの目的は、発生トルクが一様であり、かつ、単純なロータリー運動を行うエンジンを構築することである。
我々の発明のさらにもう1つの目的は、振動を最小にするエンジンを構築することである。
我々の発明のさらにもう1つの目的は、パワー・テークオフ・シャフトをプライマリー・ローター搭載シャフトのいずれの側にも配置でき、したがって重心が低く、かつ、航空機に搭載した場合に、パイロットの視界をさらに広範囲に遮らない程度の低いエンジンを構築することである。
我々の発明のさらにもう1つの目的は、シリンダー・ヘッドの一方を取り外すだけで可動部分の点検を行い得るエンジンを構築することである。
我々の発明のさらにもう1つの目的は、往復運動バルブを使用しないエンジンを構築することである。」

(エ)「In the construction of the engine we form a central stator I. …(中略)…A central sleeve shaft 8 passes longitudinally and centrally through the assembly and the end plates 3 and 4 are keyed thereupon by the use of Woodruff keys 9.」(本文第2ページ左欄第21ないし35行)

〈当審仮翻訳〉
「このエンジンの構築にあたり、我々は、セントラル・ステーター1を形成する。このステーターは円周的に除芯されており、2に示すように通路を構成する。そこを通って冷却媒体がポート2A経由で適切な循環手段により循環する。エンド・プレート3および4は、ステーター1およびエンド・ケーシング5と6により形成されるハウジング内に配置されている。これらのエンド・ケーシングはステーター1の対向端に配置され、そこに適切な固定ボルト (スルーボルト7の使用のような) により固定される。セントラル・スリーブ・シャフト8は長手方向にアセンブリの中心を通過し、また、その上にエンド・プレート3および4が半月キー9を使用してキー結合される。」

(オ)「A primary rotor 10 is fixedly positioned upon the sleeve shaft 8 through the use of a key II. …(中略)… Pinions 32 are mounted upon each of the sleeve shafts 24 of the secondary rotors and the same coact through idler gears 32A with a gear 33 that is fixedly secured to the end casing 5.」(本文第2ページ左欄第36行ないし同ページ右欄第32行)

〈当審仮翻訳〉
「プライマリー・ローター10は、スリーブ・シャフト8の上にキー11を使用して固定配置される。ステーターの中心部分の内周は、ほぼ円筒形の同様な凹状表面を複数もっている。対称交差するこれらの面は、番号12、13、14、15の位置に示されている。これらのほぼ円筒形の表面の隣接対は、点16、17、18、19の投影であるラインに沿って交差し、お互いに平行であり、また、スリーブ・シャフト8の軸から等距離にある。これから明らかにする構造的な理由のために、表面12?15 (両端を含む)のそれぞれは、円形円筒部分からその中央部に沿ってそれに対する円筒帯接線だけ離れ、かつ、その軸がシャフト8の軸と同軸であることに注意せよ。このような構造は、中央帯のそれぞれの側面に接する2つの円形円筒部分から生成される離隔された別々の軸を必要とする。
複数のセカンダリー・ローター(ここでは、20、21、22、23の番号の位置に4個として示されている)は、それぞれ、スリーブ・シャフト24の上に支持されている。スリーブ・シャフト24のそれぞれはセカンダリー・ローターの長手方向に走っており、また、それの長手方向中心線はセカンダリー・ローターの長手方向中心線のそれと共通である。ベアリング支えはエンド・プレート3および4のそれぞれに配置されており、そしてこれらのエンド・プレート中に減摩ベアリング25および26が置かれてスリーブ(その上に各セカンダリー・ローターが配置されている)を支えている。スリーブ・シャフト8は、エンド・ケーシング内でその中のボール・ベアリング27、28のような減摩ベアリングの配置により軸受けされている。プライマリー・ローター10は、その中に配置された複数の同様な円筒部分をもっており、それらのそれぞれの中でセカンダリー・ローターの1つが回転される。各セカンダリー・ローターは、プライマリー・ローター(この中に凹みがある)の円筒部分の軸に対して回転し、また、すべてのセカンダリー・ローターがプライマリー・ローターの回転軸の周りの共通軌道で回転する。
セカンダリー・ローターは、それぞれ、向かい合って配置されている凹面円周壁の対を複数備えている(ここでは、番号29および29Aの場所に2個示されている)。向かい合っている壁29の外壁29cは、同様な円筒部分であり、セカンダリー・ローターの回転軸に平行な軸の周りに形成されている。この円筒部分の半径は、凹面壁29の表面と頂点17および19の間に小さな間隙が維持される程度である。図5参照。凹面壁29Aの外部表面29dは、それらの側に同様に形成され、壁29および29aのために必要な半径より短い半径で形成される中央部分29bをもっており、したがって隣接頂点16および18にまたがったとき57および61に燃焼室を形成し、また、置かれた位置に応じてその周りにシングル・チャンバを形成する。セカンダリー・ローターを長手方向に除芯することにより、壁29および2Aがそれぞれ一様な厚さをもち、それにより長手方向にその中を通って伸びる中空スペース30を形成できる。プライマリー・ローターの構造を軽量化するために、我々は、図8の31に示すように、各ウィングを同量だけ除芯した。これは、プライマリー・ローターの構造を軽量化した。ピニオン32は、セカンダリー・ローターのスリーブ・シャフト24のそれぞれに搭載する。それは、アイドラ・ギア32Aを介してエンド・ケーシング5に固定されているギア33とともに働く。」

(カ)「The hub of the gear 33 is secured to the end casing 5 through the use of fastening bolts 34. …(中略)… Thus any set of parallel lines normal to and intercepting the axes of the secondary rotors maintains its parallel relationship and fifl also remains at a fixed angle with any stationary reference plane.」(本文第2ページ右欄第33ないし51行)

〈当審仮翻訳〉
「ギア33のハブは、固定ボルト34を使用してエンド・ケーシング5に固定されている。プライマリー・ローターは、11においてスリーブ・シャフト8にキー結合され、セカンダリー・ローターは、固定ピニオン33と噛み合うアイドラ・ギア32Aを介して共同動作するピニオン32によりプライマリー・ローターに対して回転される。駆動ピニオン35は、スリーブ・シャフト8とキー結合され、また、ピニオン35は、パワー・テークオフ・シャフト37にキー結合されるギア36と共同動作し、それを駆動する。
固定ギア33からアイドラ32A経由でピニオン32に至る歯車列の比率は、プライマリー・ローターの軸の周りの軌道上で回転している間、セカンダリー・ローターがすべて自分自身の軸の周りにゼロ角速度を維持するような値である。したがって、セカンダリー・ローターの軸に垂直であり、かつ、それと交差する平行直線の集まりは、その平行関係を維持し、かつ、静止基準平面との一定の角度も維持する。」

(キ)「Suitable fuel is delivered into the engine, as by carbureters 51 a, through the inlet ports 51 placed at the oppositely disposed sides o'f the engine and the exhaust gases are released through the exhaust ports 52. Spark plugs 63a are placed within the threaded receiving holes 53 that are disposed in the stator In spaced relation to the inlet and exhaust ports.」(本文第3ページ左欄第7ないし14行)

〈当審仮翻訳〉
「キャブレーター51aからエンジンの対向配置側部に配置されたインレット・ポート51経由で適切な燃料をエンジンに供給し、排気ガスをエキゾースト・ポート52経由で放出する。スパーク・プラグ53aは、ステーター中にインレット・ポートおよびエキゾースト・ポートから離隔した位置に配置されるねじみぞつき受け容れ穴53内に取り付けられる。」

(ク)「As shown in Fig. 5, a charge of carburetted fuel is being drawn into chambers 63 and 59 through inlet ports 51. …(中略)… With reference to the primary rotor 10, the secondary rotors do rotate. 」(本文第3ページ左欄第17ないし48行)
〈当審仮翻訳〉
「図5に示すように、必要量の気化された燃料をインレット・ポート51経由でチャンバ63および59に吹き込む。プライマリー・ローター10の連続回転により、これらのチャンバは、図7の56aおよび59aに示すように、容積が増加する。さらなる連続回転により容積はさらに増大するが、これは、図5の57および61に示すように、次のセカンダリー・ローターがインレット・ポートを閉じるまで続く。さらなる連続回転は容積を低減し、図7の57aおよび60aに示すように、ある程度の圧縮が行われる。圧縮は、容積が図5の58および61に示すように減少したときに最大に達する。ここでスパーク・プラグ53aによる点火が行われ、膨張した気体が図5の58aおよび61aに示すようにそれまでより大きい体積を占める。膨張は、図5の59bおよび62aに示す体積まで続く。この時点においてエキゾースト・ポート52は、膨張気体に対して全開直前となる。プライマリー・ローター10の連続回転により、図7の59aおよび62aに示すように、燃焼ガスの排出が行われ、チャンバが図5の59cおよび63に示す位置に来たときに排気はほぼ完了する。したがって、図5および7に示すように各スパーク・プラグがプライマリー・ローターの各回転ごとに新鮮な混合気を4回点火することが分かる。
さらに図5および7を参照する。セカンダリー・ローターは、ステーター1に対して回転しないことに注目するべきである。しかし、それは、ステーター内の円形軌道上で回転する。プライマリー・ローター10を基準として、セカンダリー・ローターは回転する。」

(ケ)「While the form of mechanism herein shown and described is admirably adapted to fulfill the objects primarily stated; it is to be understood that it is not intended to confine the invention to the embodiment herein shown and described, as it is susceptible of embodiment in various forms, all coming within the scope of the claims, which follow.」(本文第3ページ左欄第49ないし56行)

〈当審仮翻訳〉
「この文書において示し、記述した機構の形式は、最初に述べた目的を達成するために立派に適合される。当然のことながら、本発明をこの文書において示し、説明した実施態様に制限する意図はない。それにとって、すべて以下に記載するクレームの範囲内に属する種々の形態の実施態様が可能であるからである。」

(コ)「 1. In a device of the class described, the combination of a ported stator, said stator having its inner surface formed of a plurality of like and uniform cylindrical segments the axes of which being eccentric relative to the central axis of said stator, a shaft disposed transversely of the stator and journaled therein, a primary rotor fixedly disposed upon the shaft, said rotor having four wings, like in shape and equally spaced apart, and plates fixed to the shaft upon which the primary rotor is mounted and abutting the opposite ends of the primary rotor and secondary rotors journaled within the end plates and rotatable relative to the wings of the primary rotor and means for rotating the secondary rotors in timed relation with the primary rotor and with each other.
…(中略)…
15. A rotary internal combustion engine comprising a ported stator, said stator having its inner surface formed of a plurality of like and uniform cylindrical segments the axes of which being eccentric relative to the central axis of said stator, end casings disposed at the opposite ends of the stator, a sleeve shaft disposed longitudinally of the stator and passing through the end casings, a primary rotor secured to the sleeve shaft and rotatable relative to the stator, the end plates being fixed relative to the primary rotor by being removably secured thereto, a plurality of smaller rotors, a shaft for each rotor, each having a plurality of faces disposed between the end plates and the faces being disposed in pairs with the faces of each pair being similar and concave and of uniform curvature and the faces of the other pair being dissimilar to the first pair but being similar to each other and the curvature of the faces of the last mentioned pair being uniform and alike. 」(本文第3ページ左欄第58ないし第4ページ右欄第72行の特許請求の範囲の請求項1ないし15)

〈当審仮翻訳〉
「1. 記述した種類の装置における、ポート式ステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)、ステーターを横断して配置され、それに軸受けされているシャフト、前記シャフト上に固定配置されているプライマリー・ローター(このローターは、同様な形状をもち、等間隔で離隔されている4個のウィングを備えている)、プライマリー・ローターを載せている前記シャフトに固定され、かつ、プライマリー・ローターおよびセカンダリー・ローター(これらは、エンド・プレート内で軸受けされ、プライマリー・ローターのウィングに対して回転する)の対向端に隣接しているプレート、およびプライマリー・ローターとの時間的関係および相互間の時間的関係をもってセカンダリー・ローターを回転する手段の組み合わせ。

2. 記述した種類の装置における、スリーブ・シャフト、前記スリーブ・シャフトにキー結合されるエンド・プレート、前記スリーブ・シャフト上に固定搭載され、エンド・プレート間に配置されるポート式プライマリー・ローター(前記プライマリー・ローターは、同様な一様に離隔配置されているウィングから構成されている)、プライマリー・ローターの各ウィング間に1個ずつ配置され、エンド・プレート内で軸受けされているセカンダリー・ローター、プライマリー・ローターの回転との時間的関係をもってセカンダリー・ローターを回転する手段、およびポート式ステーター(このステーターは、同様かつ一様な円筒部分から形成されている内側表面をもっており、さらに、この円筒部分の軸は前記ステーターの中央軸に対して偏心しており、また、その中央部分の内側表面は円弧(その個数はプライマリー・ローターのウィングの個数またはセカンダリー・ローターの個数に等しい)から構成されている)。

3. 記述した種類のエンジンにおける、ステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)、前記ステーターのヘッド内において軸受けされているシャフト、前記シャフト上に搭載されている同様な等間隔配置ウィングをもつプライマリー・ローター、前記シャフトにキー接続され、プライマリー・ローターの端部、エンド・プレート内で軸受けされているセカンダリー・ローター(セカンダリー・ローターの個数はプライマリー・ローターのウィングの個数の個数に対応する)に隣接しているエンド・プレート、およびプライマリー・ローターとの時間的関係および相互間の時間的関係をもってセカンダリー・ローターを回転する手段の組み合わせ。

4. 記述した種類の装置における、組み合わせとしてのステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)、前記ステーターに対して回転できるように配置されるプライマリー・ローター、複数のセカンダリー・ローター、およびプライマリー・ローターとの時間的関係をもってセカンダリー・ローターを回転する手段。ただし、前記のセカンダリー・ローターは4個の凹面フェースをもち、これらの向かい合うフェースは同様な凹面をもち、かつ、隣接凹面のフェースは相異なるものとする。

5. 記述した種類の装置における、爆発エンジン・ステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)、ステーターを横断して配置されるスリーブ・シャフト、プライマリー・ローター、および複数の対向セカンダリー・ローター(これらは、前記ステーター内に配置され、お互いに時間的関係をもって駆動されるように仕組まれており、さらに、各セカンダリー・ローターのフェースは凹面をなしており、また、対向フェースは同様な輪郭をもっている)の組み合わせ。

6. 記述した種類の装置における、エンジン・ステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)、前記ステーター内に配置されるプライマリー・ローターとセカンダリー・ローター、およびこれらのローターを相互の時間的関係をもって駆動する手段の組み合わせ。ただし、セカンダリー・ローターは偶数個の凹面フェースをもっており、それらの対向フェースは同様であるが、隣接フェースは前述のフェースと異なるものとする。

7. 記述した種類の装置における、ポート式ステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)、前記セントラル・ステーター内に配置されるエンド・プレート、共通サポートにより前記セントラル・ステーターに脱着可能なように固定されるエンド・ケーシング(エンド・プレートを収容する)、前記エンド・ケーシングと同心のスリーブ・シャフト、スリーブ・シャフトに固定されるプライマリー・ローターおよび前記エンド・プレートに対して軸受けされるセカンダリー・ローター、パワー・テークオフ・シャフト、それを前記スリーブ・シャフトから駆動する手段、および燃料注入、圧縮、爆発、膨張および排気を行う手段の組み合わせ。

8. プライマリー・ローター、プライマリー・ローターと協力的に係合する複数のセカンダリー・ローター、セカンダリー・ローターを一定の1方向位置に維持する手段、プライマリー・ローターおよびセカンダリー・ローターを取り囲むポート式ステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)、および燃料注入、圧縮、爆発、膨張および排気を行う手段から構成されるロータリー内燃エンジン。

9. 複数の平行円筒凹面をもつプライマリー・ローター、前記円筒凹面により囲まれる複数のセカンダリー・ローター(それぞれ、複数の曲面表面をもっている)、プライマリー・ローターおよびセカンダリー・ローターを取り囲むステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)、プライマリー・ローター、セカンダリー・ローターおよびハウジングを時間調節作動関係に維持する手段、および燃料注入、圧縮、爆発、膨張および排気を行う手段から構成されるロータリー内燃エンジン。

10. ステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)を有するロータリー・エンジンにおける、前記ステーター内に配置されるプライマリー・ローターおよびプライマリー・ローターと協力する複数のセカンダリー・ローター、セカンダリー・ローターを個別に相互放射状単一方向位置に維持する手段。

11. ロータリー・エンジンにおける、ステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)、前記ステーター内に回転可能なように搭載されるプライマリー・ローターおよび前記プライマリー・ローターを基準として回転可能なように、かつ、前記ステーターに対し回転可能なように搭載される複数のセカンダリー・ローター。

12. セントラル・ステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)、前記ステーターの対向端に脱着可能なように取り付けられるエンド・プレート、2個のエンド・ケーシング(前記ステーターに取り付けられ、それに対して調整される)、前記のエンド・ケーシングおよびステーターを横断してキー結合されるスリーブ・シャフト、スリーブ・シャフトおよびエンド・プレートに固定されるプライマリー・ローター、プライマリー・ローター内に配置されてプライマリー・ローターと共同作動するセカンダリー・ローター(エンド・プレートを支えとしている)、冷却媒体をスリーブ・シャフトに注入し、セカンダリー・ローターからエンド・プレートおよび一方のエンド・ケーシング経由で循環させる手段、プライマリー・ローター、セカンダリー・ローター、ステーター間の同期関係を維持するためにセカンダリー・ローターの他方のエンド・ケーシングと係合する歯車装置、および燃料注入、圧縮、爆発、膨張および排気を行う手段から構成されるロータリー内燃エンジン。

13. セントラル・ステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)、エンド・ケーシング、前記エンド・ケーシングに固定されるギア支持シャフト、アセンブリを固定する手段、アセンブリの中央に配置され、エンド・ケーシング内に固定される減摩ベアリング内に軸受けされるスリーブ・シャフト、前記スリーブ・シャフトにキー結合されるプライマリー・ローター、前記プライマリー・ローターに固定されるエンド・プレート、エンド・プレート中で軸受けされ、前記プライマリー・ローターと共同作動するセカンダリー・ローター、エンド・ケーシングおよびセカンダリー・ローターのシャフト上に搭載される共同作動ギア(セカンダリー・ローターをスリーブ・シャフトとの一定関係に位置づける)、スリーブ・シャフトにより駆動されるパワー・テークオフ・シャフト、セントラル・ステーターに貫通配置されるインレット・ポートおよびエキゾースト・ポート、およびセントラル・ステーターに相互に離隔し、かつ、インレット・ポートから離隔して固定されるスパーク・プラグから構成されるロータリー・エンジン。

14. セントラル・ステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)、エンド・ケーシング、このエンド・ケーシングにより支持される複数のシャフト、アセンブリを固定する手段、アセンブリの中央に配置され、エンド・ケーシング内に固定される減摩ベアリング内に軸受けされるスリーブ・シャフト、前記スリーブ・シャフトにキー結合されるプライマリー・ローター、前記プライマリー・ローターに固定されるエンド・プレート、エンド・プレート中で軸受けされ、前記プライマリー・ローターと共同作動するセカンダリー・ローター、エンド・ケーシング上に搭載される共同作動ギア、セカンダリー・ローターをスリーブ・シャフトと一定の位置関係に維持するセカンダリー・ローターのシャフト、およびセントラル・ステーターに貫通配置されるインレット・ポートおよびエキゾースト・ポートから構成されるロータリー・エンジン。

15. ポート式ステーター(このステーターは、複数の同様かつ一様な円筒部分から形成される内部表面をもっており、また、これらの円筒部分の軸は前記ステーターの中心軸に対して偏心している)、前記ステーターの対向端に配置されるエンド・ケーシング、ステーターの長手方向に配置され、エンド・ケーシングを通過するスリーブ・シャフト、スリーブ・シャフトに固定され、ステーターに対して回転できるプライマリー・ローター、プライマリー・ローターに対して脱着可能なように固定することによりプライマリ・ローターに対して調整可能なエンド・プレート、複数の小さいローター、各ローターのシャフト(それぞれ、エンド・プレート間に配置される複数のフェースをもち、これらのフェースはそれぞれ対で配置され、各対のフェースは同様な凹面と一様な曲率をもつ一方、他の対のフェースは第1の対と異なっているが、お互いに同様であり、後述の対のフェースの曲率は一様かつ同様である)から構成されるロータリー内燃エンジン。」

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(コ)及び図面の記載からみて、次のことがわかる。

(サ)上記(1)の(ア)、(イ)、(エ)及び(コ)並びに図1ないし3、5、6及び7の記載からみて、ロータリー内燃エンジンは、炭化水素、すなわち燃料を内部で燃焼するエンジンであることがわかる。
また、ロータリー内燃エンジンは、内側壁に4つの表面12?15を有し、これらの表面12?15のうちの隣接した表面12?15が点16?19によって分けられている側壁を持つセントラル・ステーター1、前記セントラル・ステーター1に固定されたエンド・ケーシング6、及び前記エンド・ケーシング6に面した後面及び反対側の前面を持つエンド・プレート3を含んでおり、このエンド・プレート3、前記エンド・ケーシング6、及び前記側壁が前記セントラル・ステーター1内にキャビティを形成することがわかる。

(シ)上記(1)の(イ)、(エ)ないし(カ)、(ク)、(コ)及び上記(サ)並びに図1、3、5、7ないし9の記載からみて、ロータリー内燃エンジンは、プライマリー・ローター10を含んでおり、当該プライマリー・ローター10は、セントラル・スリーブ・シャフト8及び4つの円筒凹面の領域を持つものであり、また、エンド・プレート3に取り付けられており、これによって前記エンド・プレート3は前記プライマリー・ローター10とともに回転し、前記プライマリー・ローター10は、前記セントラル・ステーター1内で回転するとき、前記点16?19の各々と断続的にシールを形成する外面を有するものであることがわかる。
また、ロータリー内燃エンジンは、セカンダリー・ローター20?23を含んでおり、当該セカンダリー・ローター20?23は、ピニオン32を持つスリーブ・シャフト24を各々有するもので4個あり、スリーブ・シャフト24はエンド・プレート3の対応する開口部を通って延び、前記ピニオン32は前記エンド・プレート3の前面と隣接しており、前記4個のセカンダリー・ローター20?23は前記エンド・プレート3の後面と隣接しており、前記4個のセカンダリー・ローター20?23の各々は、プライマリー・ローター10の4つの円筒凹面の領域のうちの対応する一つの領域内で回転自在であり、前記4個のセカンダリー・ローター20?23の各々は、前記セカンダリー・ローター20?23の周囲に亘って等間隔に間隔が隔てられた4つの終端部を有するものであることがわかる。

(ス)上記(1)の(イ)、(エ)、(オ)、(コ)及び上記(サ)並びに図1及び2の記載からみて、ロータリー内燃エンジンは、エンド・プレート4を含んでおり、当該エンド・プレート4は、スリーブ・シャフト24の各々を受け入れる、ピニオン32と反対側のものであり、前記エンド・プレート4は、エンド・ケーシング6の凹部に受け入れられるものであることがわかる。

(セ)上記(1)の(オ)、(カ)、(コ)及び上記(シ)並びに図1及び3の記載からみて、ロータリー内燃エンジンは、固定ピニオン33を含んでおり、当該固定ピニオン33は、セントラル・スリーブ・シャフト8と同軸でセントラル・ステーター1に対して定置であることがわかる。
また、ロータリー内燃エンジンは、アイドラ・ギア32Aを含んでおり、当該アイドラ・ギア32Aは、各々が前記固定ピニオン33及びピニオン32のうちの対応する2つのピニオン32と係合する一組の2個のものであって、1つのアイドラ・ギア32Aで対応する2つのピニオン32に対し共用するものであることがわかる。

(ソ)上記(1)の(キ)、(ク)、(コ)及び上記(サ)並びに図5、6及び10ないし17の記載からみて、ロータリー内燃エンジンは、燃料をセントラル・ステーター1に導入するためのキャブレーター51a、及び前記セントラル・ステーター1内の前記燃料に点火するためのスパーク・プラグ53aを含んでいることがわかる。

(タ)上記(1)の(イ)、(キ)、(ク)、(コ)及び上記(サ)並びに図5及び10ないし17の記載からみて、ロータリー内燃エンジンは、エキゾースト・マニフォールド及びインテーク・マニフォールドを含んでおり、前者のエキゾースト・マニフォールドは、排気ガスを複数のエキゾースト・ポート52から差し向けるためのものであり、後者のインテーク・マニフォールドは、空気を複数のインレット・ポート51に差し向けるためのものであることがわかる。
また、前記複数のエキゾースト・ポート52及び前記複数のインレット・ポート51は、セントラル・ステーター1に設けられていることがわかる。

(3)上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「燃料を内部で燃焼するロータリー内燃エンジンにおいて、
内側壁に4つの表面12?15を有し、これらの表面12?15のうちの隣接した表面12?15が点16?19によって分けられている側壁を持つセントラル・ステーター1、
複数のエキゾースト・ポート52及び複数のインレット・ポート51を持つ前記セントラル・ステーター1、前記セントラル・ステーター1に固定されたエンド・ケーシング6、
前記エンド・ケーシング6に面した後面及び反対側の前面を持つエンド・プレート3であって、このエンド・プレート3、前記エンド・ケーシング6、及び前記側壁が前記セントラル・ステーター1内にキャビティを形成する、エンド・プレート3、
セントラル・スリーブ・シャフト8及び4つの円筒凹面の領域を持つプライマリー・ローター10であって、前記エンド・プレート3に取り付けられており、これによって前記エンド・プレート3は前記プライマリー・ローター10とともに回転し、前記プライマリー・ローター10は、前記セントラル・ステーター1内で回転するとき、前記点16?19の各々と断続的にシールを形成する外面を有する、プライマリー・ローター10、
ピニオン32を持つスリーブ・シャフト24を各々有する4個のセカンダリー・ローター20?23であって、前記スリーブ・シャフト24は前記エンド・プレート3の対応する開口部を通って延び、前記ピニオン32は前記エンド・プレート3の前記前面と隣接しており、前記4個のセカンダリー・ローター20?23は前記エンド・プレート3の前記後面と隣接しており、前記4個のセカンダリー・ローター20?23の各々は、前記プライマリー・ローター10の前記4つの円筒凹面の領域のうちの対応する一つの領域内で回転自在であり、前記4個のセカンダリー・ローター20?23の各々は、前記セカンダリー・ローター20?23の周囲に亘って等間隔に間隔が隔てられた4つの終端部を有する、セカンダリー・ローター20?23、
前記スリーブ・シャフト24の各々を受け入れる、前記ピニオン32と反対側のエンド・プレート4であって、前記エンド・プレート4は前記エンド・ケーシング6の凹部に受け入れられる、エンド・プレート4、
前記セントラル・スリーブ・シャフト8と同軸の、前記セントラル・ステーター1に対して定置の固定ピニオン33、
各々が前記固定ピニオン33及び前記ピニオン32のうちの対応する2つのピニオン32と係合する一組の2個のアイドラ・ギア32Aであって1つのアイドラ・ギア32Aで対応する2つのピニオン32に対し共用するアイドラ・ギア32A、
燃料を前記セントラル・ステーター1に導入するためのキャブレーター51a、
前記セントラル・ステーター1内の前記燃料に点火するためのスパーク・プラグ53a、
排気ガスを前記複数のエキゾースト・ポート52から差し向けるためのエキゾースト・マニフォールド、及び
空気を前記複数のインレット・ポート51に差し向けるためのインテーク・マニフォールドを含む、ロータリー内燃エンジン。」

2-2-1-2.引用文献2記載の技術
(1)原査定の拒絶理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第4481920号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「This invention is related to a Rotary engine/pump having utility as a combustion engine, fluid pump, fluid motor or the like.」(第1欄第8ないし10行)

〈当審仮翻訳〉
「本発明は、内燃エンジン、流体ポンプ、流体原動機等として有用性をもつロータリー・エンジン/ポンプに関する。」

(イ)「Each of these engines are unbalanced and yield a good degree of vibration during operation. …(中略)… In addition, cooling of these engines is also difficult since their principal working parts cannot be cooled directly by an external source of coolant. 」(第1欄第21ないし27行)

〈当審仮翻訳〉
「これらのエンジンのそれぞれは、不均衡であり、動作中に相当な程度の振動を発生する。さらに、吸入および排気のタイミング、およびこれらのエンジンの圧縮は容易に変更できず、特に動作中は不可能である。また、これらのエンジンの主要動作部品は外部冷却源により直接冷却できないので、それらのエンジンの冷却も困難である。」

(ウ)「The positive displacement engine/pump embodiment discussed herein is truly a rotary engine with all major components in complete equilibriium at all times resulting in minimal vibration during operation. …(中略)…
Additionally, nearly all engine/pump parts can be cooled directly by using hollow shafts for the rotating parts and pumping a cooling fluid therethrough, and using cooling fins on the reactor body. 」(第3欄第44行ないし第4欄第4行)
〈当審仮翻訳〉
「この出願において論ずる容積式エンジン/ポンプ実施態様は、真のロータリー・エンジンであり、すべての主要構成部品が常に完全に平衡し、動作中の振動は最小である。また、このエンジンは、恒長モーメント・アームをもっており、低速における高いトルク値および広い速度範囲にわたる比較的に定常値のトルク曲線を示す。
外部エンジン寸法の内部動作容積に対する比は他のいかなるエンジン設計よりかなり小さく、吸気事象の初めにほぼゼロのチャンバー容積の結果として容積効率は非常に高い。さらに、エンジン部品数が少なく、結果として、このエンジンの複雑さは最小である。
この設計は、内燃エンジンとしてまたは流体ポンプ/原動機として使用するのに役立つ。エンジンとして、それは、動作中の調整により在来のスパークまたは圧縮点火により任意の種類の流体燃料を燃焼できる。内部部品の大部分は、鋼、アルミニウム合金、またはセラミック材料等から鋳造、機械加工または押出成形により製造できる。エンジン/ポンプの排気量を増大するために、3つのこと(エンジン/ポンプを長くすること、タービンの直径を太くすること、またはセカンダリー・ローターおよび関連部品の個数を増やすこと)のいずれか1つまたはそれらの組み合わせを実行できる。
また、ほとんどすべてのエンジン/ポンプ部品は、回転部品の中空シャフトを使用し、それを通して冷却流体を圧送すること、リアクタ本体上の冷却フィンを使用することにより直接冷却できる。」

(エ)「Referring to FIG. 1 there is shown an exploded view of the positive displacement engine/pump 1 of the present invention. …(中略)…
In this view it can be seen that each of reactor lobes 460 accommodates a spark plug. 」(第4欄第5行ないし第5欄第10行)

〈当審仮翻訳〉
「図1を参照する。本発明の容積式エンジン/ポンプ1の分解図が示されている。エンジン/ポンプ1は、インテーク・マニフォールド20上に取り付けられているキャブレター10、インテーク・マニフォールドの隣りに示されているエキゾースト・マニフォールド30、それに取り付けられているマフラー40を含んでいる。インテーク・マニフォールド20とエキゾースト・マニフォールド30の間に示されているのは、点火システムおよびディストリビューター50であり、そこから伸びる標準的なスパーク・プラグ・ワイヤ60を伴っている。
次に示されているのは、インテーク・ポート325およびエキゾースト・ポート335を画定するフロント・ケース・カバー150である。これらのポートに、それぞれ、インテーク・マニフォールド20およびエキゾースト・マニフォールド30が結合されている。また、フロント・ケース・カバー150は上右側の象限が切り開かれてエキゾースト環状みぞ310およびインテーク環状みぞ320を示している。これらは、それぞれ、エキゾースト・ポート335およびインテーク・ポート325に結合している。次に、2つの静止バルブ・プレート、すなわち、インテーク静止バルブ・プレート230およびエキゾースト静止バルブ・プレート240が示されている。静止バルブ・プレートに続いて、回転バルブ・プレート330が示されている。
次に示されているエキゾースト/インテーク・ローター420は、3つのセカンダリー・ローター440により取り囲まれている。これらは、すべて、リアクタ・ローブ・アセンブリ640の中に入れ子になっている。バルブ・プレート330、230、240およびフロント・ケース・カバー150は、それぞれ、リアクタ・ローブ・アセンブリ640の前に実装されており、また、エキゾースト/インテーク・ローター420のシャフト430は、回転バルブ・プレート330、静止エキゾースト・バルブ・プレート240、フロント・ケース・カバー150の中心孔内で軸受けされている。シャフト430の一部は外に伸びてフロント・ケース・カバー150の前部表面を越えるが、そこに取り付けられているのはディストリビューター50である。セカンダリー・ローター・シャフト450は、回転バルブ・プレート330内のベアリング750の中に伸び、それにより軸受けされている。
図に示されているリアクタ・ローブ・アセンブリ640は、9個の内部リアクタ・ローブ460を備えており、これらのうちの1個を通って図示の標準的なスパーク・プラグ・アクセス・ホール195が伸びている。やはりリアクタ・ローブ・アセンブリ640内に実装されているがこの簡略化図では表示されていないのは、圧力シール550およびスプリング・アセンブリ650である。後者は、各リアクタ・ローブ460間に配置されている。リアクタ・ローブ460は、圧力シール・アセンブリのうちの1つの場所で切り開かれて示されている。リアクタ・ローブ・アセンブリ640の中に反対側から伸びているのは、ギア・プレート740に実装されているセグメント710である。セグメント710は、セカンダリー・ローター440の分離のための手段である。セカンダリー・ローター・シャフト450の他端は、ギア・プレート・ベアリング760の中に伸び、それにより軸受けされている。エキゾースト/インテーク・ローター・シャフト430の他端は、ギア・プレート740中の中心孔により軸受けされ、それを貫通している。エキゾースト/インテーク・ローター・シャフト430に圧入されているのは、エキゾースト/インテーク・ローター・サン・ギア860である。エキゾースト/インテーク・ローター・サン・ギア860を取り囲み、お互いに等間隔に配置されているのは、3個のセカンダリー・ローター遊星ギア850である。各セカンダリー・ローター遊星ギア850は、ベアリング・プレート740中のベアリング760により軸受けされているセカンダリー・ローター・シャフト450上に圧入される。シャフト450は、次に、ドライブ・プレート870中のベアリング880の中に伸び、それにより保持される。ドライブ・プレート870の反対側の表面にあるのは、出力シャフト920である。エンジン/ポンプ1の後端に配置され、上述の部分を取り囲んでいるのは、ギア・プレート740を取り囲んでいるスペーサー940である。セカンダリー・ローター遊星ギア850を取り囲んでいるのは、リア・ケース・カバー950である。このカバーは、それ自身により、各燃焼ローター遊星ギア850と噛み合うリング・ギア960を画定している。ドライブ・プレート870の出力シャフト920は、リア・ケース・カバー950中のセントラル・ベアリングにより軸受けされている。続いてそこに固定実装されているのはフライホイール145である。フライホイール145の周縁の周りのギャの歯は、エンジン/ポンプ1の始動段階中にスターター・モーター135上の出力ギアと噛み合う。次にアセンブリ全体がリアクタ・ローブ・アセンブリ640の領域においてエンジン・マウント205に任意の既知の手段により搭載される。図2において、図1のエンジン/ポンプ1の完全組立図が示されている。この図から分かるように、各リアクタ・ローブ460がスパーク・プラグを収容している。」

(オ)「FIG. 4 shows the reactor lobe assembly of turbine 1 from the gear plate 740 side. Items shown in FIG. 4 which have not been discussed before include a typical pressure seal spring reactor 225, affixed to the reactor lobe assembly 640 by means of screws 215. …(中略)…The three shafts 450 will rotate clockwise. 」(第5欄第36ないし56行)

〈当審仮翻訳〉
「図4は、タービン1のリアクタ・ローブ・アセンブリをギア・プレート740側から見た図である。図4に示したもののうち、まだ説明していないものは、ねじ215によりリアクタ・ローブ・アセンブリ640に取り付けられている標準的圧力シール・スプリング・リアクタ225を含んでいる。圧力シール・スプリング・リアクタ225は、その中を貫通するスパーク・プラグ・アクセス穴195を画定している。また、リアクタ・ローブ・アセンブリ640を通過する標準的組立穴830も示されている。さらに、ギア・プレート740の穴125も示されている。穴125は、セグメント領域710のギア・プレート740の中に伸びており、その中でボルト115を使用して並列位置の回転バルブ・プレート330をリアクタ・ローブ・アセンブリ640の反対側のセグメント710に固定する。前記で開始した始動説明を続ける。始動モーターによりギア850および860 (図3)に与えられた回転運動がシャフト430および450さらにギア・プレート740に回転運動を与えることが分かる。図4から分かるように、ギア・プレート740の回転は、シャフト430の回転と同様に、反時計回り方向である。3本のシャフト450は、時計回りに回転する。」

(カ)「FIG. 5 provides a view of the reactor portion of engine/pump 1 from the opposite side to that shown in FIG. 4. In this view it can be seen that segments 710, of drive plate 740, are rotating clockwise, as is exhaust/in- take rotor 420. …(中略)…The exhaust/intake rotor 420, its shaft 430 and exhaust/intake rotor planetary gear 860, are also machine pressed to become a married set. 」(第5欄第57行ないし第6欄第10行)

〈当審仮翻訳〉
「図5は、エンジン/ポンプ1のリアクタ部分を図4に示したものと反対側から見た図である。この図から、ドライブ・プレート740のセグメント710がエキゾースト/インテーク・ローター420と同様に時計回りに回転することが分かる。セカンダリー・ローター440はそれらの軸上で反時計回り回転を与えられ、それによりそれらの軸は静止リアクタ・ローブ460と連携しつつ時計回り環状運動で回転する。圧力シール550は往復運動を開始するが、それはセカンダリー・ローター440のアームとの接触により制御される。セカンダリー・ローター440のアームの1つと接触していないとき、圧力シール550は、圧力シール・スプリング650の手段によりセグメント710の外周表面にぴったりはまる。この時点において、セカンダリー・ローター440、燃焼ローター遊星ギア850およびセカンダリー・ローター・シャフト450が機械プレスされた組立品としての構成部品であること、その結果としてローター440、シャフト450およびセカンダリー・ローター遊星ギア850から1つずつ取り出したものが密接な組み合わせ部品になっていることに注意する必要がある。エキゾースト/インテーク・ローター420、そのシャフト430およびエキゾースト/インテーク・ローター遊星ギア860も機械プレスされて密接な組み合わせ部品となっている。」

(キ)「Referring now to FIG. 6 there is shown the forward portion of engine/pump 1 including front case cover 150, stationary valve plates 230 and 240, and rotating valve plate 330. …(中略)…
The engine/pump 1 is assembled by slipping bolts 235 through holes 210, 830, 840 and screwing said bolt into tapped holes 105. 」(第6欄第10ないし47行)

〈当審仮翻訳〉
「ここで図6を参照する。フロント・ケース・カバー150、静止バルブ・プレート230と240、および回転バルブ・プレート330を含むエンジン/ポンプ1の前部が示されている。図示された回転バルブ・プレート330は、インテーク・ポート340、エキゾースト・ポート350およびベアリング穴750を備えている。ねじみぞ付き穴125は、ギア・プレート740およびセグメント710を貫通してねじみぞ付き穴125にねじ留め固定するするボルト115のねじ立て端部を受ける。その結果、回転バルブ・プレート330は、ギア・プレート740と同じ方向に回転している。図6に示されているように、この回転は反時計回り方向である。回転バルブ・プレート330の前に実装されているのは、静止エキゾースト・バルブ・プレート240および静止エキゾースト・バルブ・プレート230である。静止バルブ・プレート240および230は、お互いに同心的に実装されている。図示の静止エキゾースト・バルブ・プレート240はその周縁の周りにエキゾースト・ポート300を備えており、また、図示の円周静止インテーク・バルブ・プレート230はその内側円周表面にインテーク・ポート290を備えている。各静止バルブ・プレートは、それぞれ、フロント・ケース・カバー150の内側表面のスロット220Aおよび220Bと係合するタブ250および260をもっている。タブ250および260はフロント・ケース・カバー150に伸び、既知の手段により所定の位置に固定される。インテークおよびエキゾーストのタイミングを調整するために、この固定手段をゆるめ、所望のタイミングが得られるまでタブをスロット220AおよびBの範囲内で動かす。エンジン/タービン1の動作中にタイミングを調整できることに注意せよ。
組み立てられたとき、インテーク・ポート290はフロント・カバー環状みぞ320と一線であり、エキゾースト・ポート300はフロント・カバー・エキゾースト環状みぞ310と一線である。やはりこの図に示されているのは、リアクタ・ローブ・アセンブリ640 (図4)中の穴830と一線になっている標準的フロント・ケース・カバー貫通ボルト210、スペーサー・リング貫通穴840およびリア・ケース・カバー950 (図3)中のねじみぞ付き穴105である。エンジン/ポンプ1は、ボルト235を穴210、830、840の中に滑り込ませ、そのボルトをねじみぞ付き穴105の中にねじ込むことにより組み立てる。」

(ク)「ENGINE OPERATION

Referring next to FIGS. 7 through 10 the operation of engine/pump 1 as an internal combustion engine having a four event combustion cycle is shown.
…(中略)…
This then allows for a clean and more positive subsequent induction event. 」(第6欄第57行ないし第8欄第17行)
〈当審仮翻訳〉
「エンジン運転

次に図7?10を参照する。4事象燃焼サイクルをもつ内燃エンジンとしてのエンジン/ポンプ1の動作が示されている。

吸入事象

フロント・ケース・カバー150のインテーク・ポート325に空気/燃料混合気団を与えるインテーク・マニフォールド20経由で空気/燃料混合気団を供給するキャブレター10経由の燃料吸入を開始するためには負圧が必要である。内部吸入事象は、図7に示されている。インテーク・ポート325に供給された空気/燃料混合気団は、次にフロント・カバー・インテーク環状みぞ320内に与えられる。そこで混合気団は、静止インテーク・バルブ・プレート230中のインテーク・ポート290と回転バルブ・プレート330のインテーク・ポート340との整列による供給を待つ。待機空気/燃料混合気団を吸引する負圧または真空は、エキゾースト/インテーク・ローター420の隣接ローブの運動(時計回り方向にレグxとy間のセカンダリー・ローター440の凹状表面から離れて行く)により生成される。燃焼ローター440は反時計回りに方向に回転し、それによりその間の領域の容積を増大する。この負圧は、エキゾースト/インテーク・ローター420、セカンダリー・ローター440、セグメント710、回転バルブ・プレート330およびギア・プレート740間の密閉によりこの領域に局限される。このチャンバーがその最大容積に達したとき、回転バルブ・プレート330の回転のためにインテーク・ポート290および340は、もはや一線を形成しない。回転の継続につれて、セカンダリー・ローター440のxレグが圧力シール550を押し始め、また、エキゾースト/インテーク・ローター420のローブがセグメント710と同様に下方に動くのにつれて、空気/燃料充満チャンバーは移動し、図8に示すように、リアクタ・ローブ460' に隣接するようになる。

圧縮

吸入が完了したとき、セカンダリー・ローター440のさらなる回転および環状運動(これらのそれぞれ120° 離隔された位置における)、静止バルブ・プレート・インテーク・ポート230、回転バルブ・プレート・インテーク・ポート340、および回転バルブ・プレート・インテーク・ポート340のさらなる回転および整列逸脱、セグメント710の運動は、回転バルブ・プレート330、ギア・プレート740、リアクタ・ローブ460'、セカンダリー・ローター440および圧力シール550'により密閉しつつ、吸入された燃料/空気混合気団を図8に示すように閉じ込める。ここで、リアクタ・ローブ460'、セグメント710およびポペットシール550'により形成されるチャンバーの容積を低減する回転バルブ・プレート330、セグメント710のさらなる回転運動およびセカンダリー・ローター440の回転および角運動により圧縮が始まる。

燃焼

圧縮は、図9に示すように、リアクタ・ローブ460'、回転バルブ・プレート330、ギア・プレート740、セグメント710、圧力シール550'およびセカンダリー・ローター440の接触および連携により始まっている。圧縮空気燃料混合気の点火は、当該システムにおいて使用される燃料の種類に応じて電気スパーク点火または圧縮点火を含む任意の既知技術により達成できる。燃焼が発生したとき、第2類のてこのモーメント・アーム効果がセカンダリー・ローター440により開始される。この力は、次にリング・ギア960の組み合わせ構成部品により伝達されるが、これは、好ましい実施態様の記述と正反対のことに関係する。その結果は、セカンダリー・ローター440の軸と出力シャフト920の軸の間の第1類のてこの二次モーメント・アーム効果である。
セカンダリー・ローター440がさらに回転し、最小チャンバー容積に達した後に、点火が発生する。このように発生した燃焼ガス圧力がセカンダリー・ローター440、リアクタ・ローブ460'、圧力シール550'、セグメント710、回転バルブ・プレート330およびギア・プレート740により形成されるチャンバー中で増大する。

排気

図10から分かるように、排気事象は、エキゾースト/インテーク・ローター420のローブおよびセグメント710とともにエキゾースト・キャビティを形成するセカンダリー・ローター440を含む種々の要素のさらなる回転および環状運動により開始される。さらに回転運動が進むにつれて、エキゾースト/インテーク・ローター420のローブがセカンダリー・ローター440の凹状表面とより密接に噛み合うようになる。エキゾースト・チャンバー容積の減少につれて、エキゾースト気体は、回転バルブ・プレート330中のポート350 (静止エキゾースト・プレート240中のエキゾースト・ポート300のうちの1つ)経由でフロント・カバー・エキゾースト環状みぞ310に追い出され、次にフロント・ケース・カバー150からエキゾースト・ポート335経由でエキゾースト・マニフォールド30に入り、続いてマフラー40を経て外気へ出て行く。完全に消費された空気/燃料混合気団は、エキゾースト/インテーク・ローター420の凸状ローブとセカンダリー・ローター440の凹状表面との噛み合いによりエンジンから排出される。それぞれの形状は、ほぼ相手を補完するからである。これは、次に清浄かつより確実な次の吸入事象を可能にする。」

(ケ)「MULTIPLE EVENTS

In FIGS. 7-10, the discussion traced the operation of engine/pump 1 with respect to the fuel/air mixture in conjunction with only one face of a single secondary rotor 440. …(中略)…
Finally, in FIG. 10, face x-z is in the intake event and face y-z has completed the compression event and is ready for the combustion event. 」(第8欄第18ないし40行)

〈当審仮翻訳〉
「複数事象

図7-10に関する説明は、単一のセカンダリー・ローター440の1つのフェースのみに着目して、燃料/空気混合物体に関するエンジン/ポンプ1の動作を追跡した。レグxおよびy間のフェース。同時に、同じ一連の事象が他のセカンダリー・ローター440のそれぞれの同様な対向フェースで発生している。
さらに、各セカンダリー・ローター440の他の各フェースは、図7-10に関して説明した事象から時間的に120°進相および遅相の同じ事象を経験している。換言すると、セカンダリー・ローター440のフェースx-zはフェースx-yより1ステップ進んでいるのに対し、フェースy-zはフェースx-yより1ステップ遅れている。図7において、セカンダリー・ローター440のフェースx-zは圧縮事象を完了しており、フェースy-zは排気事象中である。同様に図8において、フェースx-zは燃焼事象にあり、フェースy-zは吸気事象を開始する直前である。図9において、フェースx-zは排気事象をちょうど完了したところであり、吸気事象を開始する準備ができているが、フェースy-zは圧縮事象にある。最後に、図10において、フェースx-zは吸気事象にあり、フェースy-zは圧縮事象をすでに完了しており、燃焼事象の準備ができている。」

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(ケ)及び図面の記載からみて、次のことがわかる。

(コ)上記(1)の(ア)、(エ)、(オ)及び(キ)ないし(ケ)並びに図1ないし10の記載からみて、エンジン/ポンプ1は、燃料を内部で燃焼するロータリー・エンジン/ポンプであることがわかる。
また、エンジン/ポンプ1は、内側壁に燃焼事象のサイクルを生じさせるリアクタ・ローブ460,460',460''、圧力シール550, 550',550''及びスプリング・アセンブリ650から成る複数の側壁領域を持つリアクタ・ローブ・アセンブリ640を含んでおり、前記リアクタ・ローブ・アセンブリ640に固定されたフロント・ケース・カバー150、インテーク静止バルブ・プレート230及びエキゾースト静止バルブ・プレート240を含んでおり、さらに、前記フロント・ケース・カバー150、インテーク静止バルブ・プレート230及びエキゾースト静止バルブ・プレート240に面した後面及び反対側の前面を持つギア・プレート740を含んでおり、このギア・プレート740、前記フロント・ケース・カバー150、インテーク静止バルブ・プレート230及びエキゾースト静止バルブ・プレート240、及び前記側壁が前記リアクタ・ローブ・アセンブリ640内にキャビティを形成することがわかる。

(サ)上記(1)の(エ)、(カ)、(ク)及び上記(コ)並びに図1、5及び7ないし10の記載からみて、エンジン/ポンプ1は、エキゾースト/インテーク・ローター420を含んでおり、当該エキゾースト/インテーク・ローター420は、シャフト430及び複数のセカンダリー・ローター440の円形切り欠き領域と接触係合する曲面領域を持つものであり、ギア・プレート740は前記エキゾースト/インテーク・ローター420と同方向に回転し、前記エキゾースト/インテーク・ローター420は、外面を有するものであることがわかる。
また、エンジン/ポンプ1は、セカンダリー・ローター440を含んでおり、当該セカンダリー・ローター440は、セカンダリー・ローター遊星ギア850を持つセカンダリー・ローター・シャフト450を各々有する複数のものであり、前記セカンダリー・ローター・シャフト450はギア・プレート740の対応する開口部を通って延び、前記セカンダリー・ローター遊星ギア850は前記ギア・プレート740の前面と隣接しており、前記複数のセカンダリー・ローター440は、前記ギア・プレート740の後面と隣接しており、前記複数のセカンダリー・ローター440の各々は、前記セカンダリー・ローター440の周囲に亘って等間隔に間隔が隔てられた複数の終端部を有していることがわかる。

(シ)上記(1)の(エ)、(カ)、(ク)、上記(コ)及び(サ)並びに図1及び6の記載からみて、エンジン/ポンプ1は、回転バルブ・プレート330を含んでおり、当該回転バルブ・プレート330は、セカンダリー・ローター・シャフト450の各々を受け入れるものであり、前記セカンダリー・ローター遊星ギア850と反対側にあり、前記回転バルブ・プレート330は、フロント・ケース・カバー150、インテーク静止バルブ・プレート230及びエキゾースト静止バルブ・プレート240から成るカバー部材の凹部に受け入れられるものであることがわかる。

(ス)上記(1)の(エ)、(オ)、(カ)、上記(コ)ないし(ス)並びに図1、3及び4の記載からみて、エンジン/ポンプ1は、エキゾースト/インテーク・ローター・サン・ギア860を含んでおり、当該エキゾースト/インテーク・ローター・サン・ギア860は、シャフト430と同軸であることがわかる。

(セ)上記(1)の(エ)並びに図1及び2の記載からみて、エンジン/ポンプ1は、燃料をリアクタ・ローブ・アセンブリ640に導入するためのキャブレター10、及び前記リアクタ・ローブ・アセンブリ640内の前記燃料に点火するためのスパーク・プラグを含んでいることがわかる。

(ソ)上記(1)の(エ)、(キ)、(ク)及び上記(コ)並びに図1及び6ないし10の記載からみて、エンジン/ポンプ1は、エキゾースト・マニフォールド30及びインテーク・マニフォールド20を含んでおり、前者のエキゾースト・マニフォールド30は、燃焼ガスを複数のエキゾースト・ポート300から差し向けるためのものであり、後者のインテーク・マニフォールド20は、空気を複数のインテーク・ポート290に差し向けるためのものであることがわかる。
また、前記複数のエキゾースト・ポート300及び前記複数のインテーク・ポート290は、フロント・ケース・カバー150、インテーク静止バルブ・プレート230及びエキゾースト静止バルブ・プレート240から成るカバー部材に設けられていることがわかる。

(タ)上記(1)の(エ)、(カ)、(ク)、(ケ)、上記(コ)及び(サ)並びに図1、5及び7ないし10の記載からみて、リアクタ・ローブ・アセンブリ640の内側壁の燃焼事象のサイクルを生じさせるリアクタ・ローブ460,460',460''、圧力シール550, 550',550''及びスプリング・アセンブリ650から成る側壁領域の数は三つであり、エキゾースト/インテーク・ローター420のアームの数は三つであり、セカンダリー・ローター440の終端部の数は三つであり、いずれも同じ三つとした組合わせによって、内側壁に燃焼事象のサイクルを生じさせるリアクタ・ローブ460,460',460''、圧力シール550, 550',550''及びスプリング・アセンブリ650から成る三つの側壁領域を持つリアクタ・ローブ・アセンブリ640の一つの角度120°の側壁領域において、吸気事象のサイクル、圧縮事象のサイクル、燃焼事象のサイクル、及び排気事象のサイクルが順次加わるようにしていることがわかる。

(3)上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているものと認められる。

「燃料を内部で燃焼するエンジン/ポンプ1において、
内側壁に燃焼事象のサイクルを生じさせるリアクタ・ローブ460,460',460''、圧力シール550,550',550''及びスプリング・アセンブリ650から成る複数の側壁領域を持つリアクタ・ローブ・アセンブリ640、
複数のエキゾースト・ポート300及び複数のインテーク・ポート290を持ち、前記リアクタ・ローブ・アセンブリ640に固定されたフロント・ケース・カバー150、インテーク静止バルブ・プレート230及びエキゾースト静止バルブ・プレート240から成るカバー部材、
前記フロント・ケース・カバー150、インテーク静止バルブ・プレート230及びエキゾースト静止バルブ・プレート240から成るカバー部材に面した後面及び反対側の前面を持つギア・プレート740であって、このギア・プレート740、前記フロント・ケース・カバー150、インテーク静止バルブ・プレート230及びエキゾースト静止バルブ・プレート240から成るカバー部材、及び前記側壁が前記リアクタ・ローブ・アセンブリ640内にキャビティを形成する、ギア・プレート740、
シャフト430及び複数のセカンダリー・ローター440の円形切り欠き領域と接触係合する曲面領域を持つエキゾースト/インテーク・ローター420であって、前記ギア・プレート740は前記エキゾースト/インテーク・ローター420と同方向に回転し、前記エキゾースト/インテーク・ローター420は、外面を有する、エキゾースト/インテーク・ローター420、
セカンダリー・ローター遊星ギア850を持つセカンダリー・ローター・シャフト450を各々有する複数のセカンダリー・ローター440であって、前記セカンダリー・ローター・シャフト450は前記ギア・プレート740の対応する開口部を通って延び、前記セカンダリー・ローター遊星ギア850は前記ギア・プレート740の前記前面と隣接しており、前記複数のセカンダリー・ローター440は前記ギア・プレート740の前記後面と隣接しており、前記複数のセカンダリー・ローター440の各々は、前記セカンダリー・ローター440の周囲に亘って等間隔に間隔が隔てられた複数の終端部を有する、セカンダリー・ローター440、
前記セカンダリー・ローター・シャフト450の各々を受け入れる、前記セカンダリー・ローター遊星ギア850と反対側の回転バルブ・プレート330であって、前記回転バルブ・プレート330は前記フロント・ケース・カバー150、インテーク静止バルブ・プレート230及びエキゾースト静止バルブ・プレート240から成るカバー部材の凹部に受け入れられる、回転バルブ・プレート330、
前記シャフト430と同軸のエキゾースト/インテーク・ローター・サン・ギア860、
燃料を前記リアクタ・ローブ・アセンブリ640に導入するためのキャブレター10、
前記リアクタ・ローブ・アセンブリ640内の前記燃料に点火するためのスパーク・プラグ、
燃焼ガスを前記複数のエキゾースト・ポート300から差し向けるためのエキゾースト・マニフォールド30、及び
空気を前記複数のインテーク・ポート290に差し向けるためのインテーク・マニフォールド20を含む、エンジン/ポンプ1であって、
リアクタ・ローブ・アセンブリ640の内側壁の燃焼事象のサイクルを生じさせるリアクタ・ローブ460,460',460''、圧力シール550, 550',550''及びスプリング・アセンブリ650から成る側壁領域の数、エキゾースト/インテーク・ローター420のアームの数及びセカンダリー・ローター440の終端部の数をいずれも三つとした技術。」


2-2-2.対比
本件補正発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「ロータリー内燃エンジン」は、その機能、形状、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明における「ロータリーエンジン」に相当し、以下同様に、「表面12?15」は「ローブ」に、「点16?19」は「ピーク」に、「セントラル・ステーター1」は「ハウジング」に、「エキゾースト・ポート52」は「排気ポート」に、「インレット・ポート51」は「入口ポート」に、「エンド・ケーシング6」は「後プレート」に、「エンド・プレート3」は「前プレート」に、「セントラル・スリーブ・シャフト8」は「シャフト」及び「ロータシャフト」のそれぞれに、「円筒凹面の領域」は「円形切り欠き領域」に、「プライマリー・ローター10」は「ロータ」に、「ピニオン32」は「回転部材歯車」に、「スリーブ・シャフト24」は「回転部材シャフト」に、「セカンダリー・ローター20?23」は「回転部材」に、「エンド・プレート4」は「後リングマウント」及び「後リング」のそれぞれに、「固定ピニオン33」は「太陽歯車」に、「アイドラ・ギア32A」は「アイドラー歯車」に、燃料をセントラル・ステーター1に導入するための「キャブレーター51a」は、燃料をハウジングに導入するための「手段」に、セントラル・ステーター1内の燃料に点火するための「スパーク・プラグ53a」は、ハウジング内の燃料に点火するための「手段」に、「排気ガス」は「燃焼ガス」に、「エキゾースト・マニフォールド」は「排気マニホールド」に、「インテーク・マニフォールド」は「吸気マニホールド」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1記載の発明における「4つの円筒凹面の領域」は、その機能、形状、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明における「少なくとも一つの円形切り欠き領域」に包含され、以下同様に、「4個のセカンダリー・ローター20?23」は「少なくとも一つの回転部材」に、包含される。
さらに、引用文献1記載の発明における「4つの表面12?15」は、「複数のローブ」という限りにおいて、本件補正発明における「三つのローブ」に相当し、以下同様に、
「複数のエキゾースト・ポート52及び複数のインレット・ポート51を持つセントラル・ステーター1、前記セントラル・ステーター1に固定されたエンド・ケーシング6」は、複数の排気ポート及び複数の入口ポートを持つのが「後プレート又はハウジング」の何れかであり、後プレートがハウジングに固定されていること、すなわち、「複数の排気ポート及び複数の入口ポートを持つ後プレート又はハウジング、前記ハウジングに固定された後プレート」という限りにおいて、「複数の排気ポート及び複数の入口ポートを持ち、前記ハウジングに固定された後プレート」に、
「4つの終端部」は、「複数の終端部」という限りにおいて、「三つのチップ」に、
「エンド・ケーシング6の凹部」は、「後プレートの凹部」という限りにおいて、「後プレートのチャンネル」に、
「2個のアイドラ・ギア32A」は、「複数のアイドラー歯車」という限りにおいて、「3個のアイドラー歯車」に、
それぞれ相当する。

したがって、本件補正発明と引用文献1記載の発明は、次の一致点及び相違点を有するものである。

<一致点>
「燃料を内部で燃焼するロータリーエンジンにおいて、
内側壁に複数のローブを有し、これらのローブのうちの隣接したローブがピークによって分けられている側壁を持つハウジング、
複数の排気ポート及び複数の入口ポートを持つ後プレート又はハウジング、前記ハウジングに固定された後プレート、
前記後プレートに面した後面及び反対側の前面を持つ前プレートであって、この前プレート、前記後プレート、及び前記側壁が前記ハウジング内にキャビティを形成する、前プレート、
シャフト及び少なくとも一つの円形切り欠き領域を持つロータであって、前記前プレートに取り付けられており、これによって前記前プレートは前記ロータとともに回転し、前記ロータは、前記ハウジング内で回転するとき、前記ピークの各々と断続的にシールを形成する外面を有する、ロータ、
回転部材歯車を持つ回転部材シャフトを各々有する少なくとも一つの回転部材であって、前記回転部材シャフトは前記前プレートの対応する開口部を通って延び、前記回転部材歯車は前記前プレートの前記前面と隣接しており、前記少なくとも一つの回転部材は前記前プレートの前記後面と隣接しており、前記少なくとも一つの回転部材の各々は、前記ロータの前記少なくとも一つの円形切り欠き領域のうちの対応する一つの領域内で回転自在であり、前記少なくとも一つの回転部材の各々は、前記回転部材の周囲に亘って等間隔に間隔が隔てられた複数の終端部を有する、回転部材、
前記回転部材シャフトの各々を受け入れる、前記回転部材歯車と反対側の後リングマウントであって、前記後リングは前記後プレートの凹部に受け入れられる、後リングマウント、
前記ロータシャフトと同軸の、前記ハウジングに対して定置の太陽歯車、
各々が前記太陽歯車及び前記回転部材歯車のうちの対応する回転部材歯車と係合する一組の複数のアイドラー歯車、
燃料を前記ハウジングに導入するための手段、
前記ハウジング内の前記燃料に点火するための手段、
燃焼ガスを前記複数の排気ポートから差し向けるための排気マニホールド、及び
空気を前記複数の入口ポートに差し向けるための吸気マニホールドを含む、ロータリーエンジン。」

<相違点>
なお、( )内に、相当する本件補正発明における発明特定事項を示す。
(1)相違点1
ハウジングの内側壁のローブの数及び回転部材の終端部の数に関し、
本件補正発明においては、ハウジングの内側壁のローブの数は「三つ」であり、回転部材の終端部の数は「三つ」であって当該終端部が「チップ」であるのに対し、
引用文献1記載の発明においては、セントラル・ステーター1(ハウジング)の内側壁の表面12?15(ローブ)の数は「4つ」であり、セカンダリー・ローター20?23(回転部材)の終端部の数は「4つ」であって当該終端部が「チップ」であるか否か不明である点(以下、「相違点1」という。)。

(2)相違点2
複数の排気ポート及び複数の入口ポートを持つ部材及び後リングが受け入れられる後プレートの部分に関し、
本件補正発明においては、複数の排気ポート及び複数の入口ポートを持つ部材は「ハウジングに固定された後プレート」であり、後リングが受け入れられる後プレートの部分は「チャンネル」であるのに対し、
引用文献1記載の発明においては、複数のエキゾースト・ポート52(排気ポート)及び複数のインレット・ポート51(入口ポート)を持つ部材は「セントラル・ステーター1(ハウジング)」であり、エンド・プレート4(後リング)が受け入れられるエンド・ケーシング6(後プレート)の部分は「凹部」である点(以下、「相違点2」という。)。

(3)相違点3
アイドラー歯車に関し、
本件補正発明においては、「各々が太陽歯車及び回転部材歯車のうちの対応する一つの回転部材歯車と係合する一組の3個のアイドラー歯車」であって、対応する一つの回転部材歯車と係合するのが1個の専用のアイドラー歯車であるのに対し、
引用文献1記載の発明においては、「各々が固定ピニオン33(太陽歯車)及びピニオン32(回転部材歯車)のうちの対応する2つのピニオン32(回転部材歯車)と係合する一組の2個のアイドラ・ギア32A(アイドラー歯車)であって1つのアイドラ・ギア32A(アイドラー歯車)で対応する2つのピニオン32(回転部材歯車)に対し共用するアイドラ・ギア32A(アイドラー歯車)」である点(以下、「相違点3」という。)。

(4)相違点4
ロータの前後の表面のシール手段に関し、
本件補正発明においては、「ばね部材及びシーリング部材を受け入れるためのチャンネルが設けられ、前記シーリング部材の上面が前プレート又は後プレートと摺動接触するようになっている」のに対し、引用文献1記載の発明においては、このようなシール手段が設けられているか否か不明である点(以下、「相違点4」という。)。


2-2-3.判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
(ア)ハウジングの内側壁のローブの数及び回転部材の終端部の数について、本件補正発明は、実施例のロータのアームの数も含めて、全て「三つ」であり、引用文献1記載の発明は、実施例のロータのアームの数も含めて、全て「4つ」である。
このように、ハウジングの内側壁のローブの数、ロータのアームの数、及び回転部材の終端部の数を同じ数とすることは、軌道運動(公転運動)する各回転部材の終端部間の1つの円形切欠き面が1つのパワーサイクル、すなわち、1つの燃焼事象のサイクルを生じさせるのに必要であり、このことは、3つ、4つ、5つ、・・・というように幾何学的に検討すれば明らかなことである。

(イ)そこで、本件補正発明と引用文献2記載の技術とを対比すると、引用文献2記載の技術における「エンジン/ポンプ1」は、その機能、形状、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明における「ロータリーエンジン」に相当し、以下同様に、「リアクタ・ローブ・アセンブリ640」は「ハウジング」に、「エキゾースト・ポート300」は「排気ポート」に、「インテーク・ポート290」は「入口ポート」に、「フロント・ケース・カバー150、インテーク静止バルブ・プレート230及びエキゾースト静止バルブ・プレート240から成るカバー部材」は「後プレート」に、「ギア・プレート740」は「前プレート」に、「シャフト430」は「シャフト」に、「エキゾースト/インテーク・ローター420」は「ロータ」に、「セカンダリー・ローター遊星ギア850」は「回転部材歯車」に、「セカンダリー・ローター・シャフト450」は「回転部材シャフト」に、「セカンダリー・ローター440」は「回転部材」に、「回転バルブ・プレート330」は「後リングマウント」及び「後リング」のそれぞれに、「エキゾースト/インテーク・ローター・サン・ギア860」は「太陽歯車」に、燃料をリアクタ・ローブ・アセンブリ640に導入するための「キャブレター10」は、燃料をハウジングに導入するための「手段」に、リアクタ・ローブ・アセンブリ640内の燃料に点火するための「スパーク・プラグ」は、ハウジング内の燃料に点火するための「手段」に、「エキゾースト・マニフォールド30」は「排気マニホールド」に、「インテーク・マニフォールド20」は「吸気マニホールド」に、それぞれ相当する。
また、引用文献2記載の技術における「複数」は、その機能、形状、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明における「少なくとも一つ」に包含される。
さらに、引用文献2記載の技術における「燃焼事象のサイクルを生じさせるリアクタ・ローブ460,460',460''、圧力シール550, 550',550''及びスプリング・アセンブリ650から成る複数の側壁領域」は、「燃焼事象のサイクルを生じさせる複数の側壁領域」という限りにおいて、本件補正発明における「三つのローブを有し、これらのローブのうちの隣接したローブがピークによって分けられている側壁」に相当し、以下同様に、
「セカンダリー・ローター440の円形切り欠き領域と接触係合する曲面領域」は、「対応する部材と接触係合する曲面領域」という限りにおいて、「円形切り欠き領域」に、
「複数の終端部」は、「複数の終端部」という限りにおいて、「三つのチップ」に、
「フロント・ケース・カバー150、インテーク静止バルブ・プレート230及びエキゾースト静止バルブ・プレート240から成るカバー部材の凹部」は、「後プレートの凹部」という限りにおいて、「後プレートのチャンネル」に、
それぞれ相当する。

(ウ)したがって、引用文献2記載の技術を本件補正発明における用語及び本件補正発明と引用文献2記載の技術との共通する上位概念の用語を用いて記載すると、
「燃料を内部で燃焼するロータリーエンジンにおいて、
内側壁に燃焼事象のサイクルを生じさせる複数の側壁領域を持つハウジング、
複数の排気ポート及び複数の入口ポートを持ち、前記ハウジングに固定された後プレート、
前記後プレートに面した後面及び反対側の前面を持つ前プレートであって、この前プレート、前記後プレート、及び前記側壁が前記ハウジング内にキャビティを形成する、前プレート、
シャフト及び少なくとも一つの対応する部材と接触係合する曲面領域を持つロータであって、前記前プレートは前記ロータと同方向に回転し、前記ロータは、外面を有する、ロータ、
回転部材歯車を持つ回転部材シャフトを各々有する少なくとも一つの回転部材であって、前記回転部材シャフトは前記前プレートの対応する開口部を通って延び、前記回転部材歯車は前記前プレートの前記前面と隣接しており、前記少なくとも一つの回転部材は前記前プレートの前記後面と隣接しており、前記少なくとも一つの回転部材の各々は、前記回転部材の周囲に亘って等間隔に間隔が隔てられた複数の終端部を有する、回転部材、
前記回転部材シャフトの各々を受け入れる、前記回転部材歯車と反対側の後リングマウントであって、前記後リングは前記後プレートの凹部に受け入れられる、後リングマウント、
前記ロータシャフトと同軸の太陽歯車、
燃料を前記ハウジングに導入するための手段、
前記ハウジング内の前記燃料に点火するための手段、
燃焼ガスを前記複数の排気ポートから差し向けるための排気マニホールド、及び
空気を前記複数の入口ポートに差し向けるための吸気マニホールドを含む、ロータリーエンジンであって、
ハウジングの内側壁の燃焼事象のサイクルを生じさせる側壁領域の数、ロータのアームの数及び回転部材の終端部の数をいずれも三つとした技術。」
となる。

(エ)また、引用文献1記載の発明と引用文献2記載の技術とは、
「燃料を内部で燃焼するロータリーエンジンにおいて、
内側壁に燃焼事象のサイクルを生じさせる複数の側壁領域を持つハウジング、
複数の排気ポート及び複数の入口ポートを持ち、前記ハウジングに固定された後プレート、
前記後プレートに面した後面及び反対側の前面を持つ前プレートであって、この前プレート、前記後プレート、及び前記側壁が前記ハウジング内にキャビティを形成する、前プレート、
シャフト及び少なくとも一つの対応する部材と接触係合する曲面領域を持つロータであって、前記前プレートは前記ロータと同方向に回転し、前記ロータは、外面を有する、ロータ、
回転部材歯車を持つ回転部材シャフトを各々有する少なくとも一つの回転部材であって、前記回転部材シャフトは前記前プレートの対応する開口部を通って延び、前記回転部材歯車は前記前プレートの前記前面と隣接しており、前記少なくとも一つの回転部材は前記前プレートの前記後面と隣接しており、前記少なくとも一つの回転部材の各々は、前記回転部材の周囲に亘って等間隔に間隔が隔てられた複数の終端部を有する、回転部材、
前記回転部材シャフトの各々を受け入れる、前記回転部材歯車と反対側の後リングマウントであって、前記後リングは前記後プレートの凹部に受け入れられる、後リングマウント、
前記ロータシャフトと同軸の太陽歯車、
燃料を前記ハウジングに導入するための手段、
前記ハウジング内の前記燃料に点火するための手段、
燃焼ガスを前記複数の排気ポートから差し向けるための排気マニホールド、及び
空気を前記複数の入口ポートに差し向けるための吸気マニホールドを含む、ロータリーエンジン。」
という点で共通し、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術は、いずれも、エンジン構造の単純化を図り部品数を最小にすること、発生トルクを一様とすること、振動を最小とすること、という課題の点で軌を一にするものである。

(オ)ところで、本件補正発明における「回転部材」の「チップ」について検討する。
本件出願の明細書には、「例示の実施例では、回転部材1006は、ポイント即ちチップ1116で終端する三つのベーンを有し、これらのチップは、ハウジング102の内側面即ちローブ1112と接触する。」(段落【0033】参照。)、「チップ1106を形成する回転部材1006の外面1412は、回転部材シャフト316を中心とした円の一部を形成する。チップ1106の外面1412は、回転部材1006が切り欠き1302内で回転するとき、ロータ1002の切り欠き1302と接触する。」(段落【0039】参照。)、「例示の実施例では、各チップ1106は、スリット1404を備えた一対の側リップ1406によって形成されたシールを含む。」(段落【0040】参照。)、「回転部材1006の少なくとも一つのチップ1106をローブ1112の表面と接触させた状態に維持しながら回転部材1006をロータ1002を中心として軌道運動する」(段落【0070】参照。)、及び「回転部材1006の各チップ1106にはシール1404、1406がある。」(段落【0078】参照。)の記載があり、これらの記載及び図14を総合すると、「回転部材1006の各チップ1106は、シール機能を有する。」と理解できる。

(カ)しかしながら、ロータリーエンジンにおいて、摺動箇所のシールのために、ハウジング内で回転する部材であるロータの複数の終端部にシール機能を持たせることは、従来周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開昭53-1709号公報の特に、第3ページ右上欄第3ないし11行及び第1図、実願昭61-193139号(実開昭63-98401号)のマイクロフィルムの特に、明細書第2ページ第15ないし20行及び第5図、特開平8-151930号公報の特に、段落【0015】並びに図3及び4参照。)である。

(キ)そうすると、引用文献1記載の発明において、ハウジングの内側壁の燃焼事象のサイクルを生じさせる側壁領域であるローブの数、ロータのアームの数及び回転部材の終端部の数について、引用文献2記載の技術を適用し、その際、回転部材の終端部に関し上記周知技術1を参酌して、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
複数の排気ポート及び複数の入口ポートは、ハウジング内の適宜チャンバ領域に連通・遮断されるようにするものであるから、複数の排気ポート及び複数の入口ポートをハウジング内のチャンバの側面部材である「後プレート」に持たせることは、当業者が必要に応じて適宜選択する設計上の事項である(例えば、前記2-2-1-2.の(キ)及び引用文献2の図6参照。)。
また、後リングが受け入れられる後プレートの部分についても、後リングが後プレートに対して回動されるようにするものであるから、後リングが受け入れられる後プレートの部分を、後プレートの「チャンネル」又は「凹部」のいずれにするかは、当業者が必要に応じて適宜選択する設計上の事項にすぎない。
そうすると、引用文献1記載の発明において、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が必要に応じて適宜選択する設計上の事項である。

(3)相違点3について
本件補正発明も引用文献1記載の発明もいずれも太陽歯車及び各回転部材歯車とがアイドラー歯車を介して連結されている点で共通しており、さらに、それぞれの歯車の相対的な回転方向も共通している。
そうすると、引用文献1記載の発明において、アイドラー歯車を共用するものに代えて専用のものとして、上記相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が必要に応じて適宜選択する設計上の事項である。

(4)相違点4について
ロータリーエンジンにおいて、ロータの前後の表面のシールのために、ロータの前後の表面に、ばね部材及びシーリング部材を受け入れるためのチャンネルを設け、前記シーリング部材の上面が側面のプレートと摺動接触するようにすることは、従来周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開昭53-1709号公報の特に、第3ページ左下欄第2ないし7行並びに第1及び2図、実願昭61-193139号(実開昭63-98401号)のマイクロフィルムの特に、明細書第6ページ第9行ないし第7ページ第1行及び第3ないし5図、特開平8-151930号公報の特に、段落【0015】並びに図3及び4参照。)である。
そうすると、引用文献1記載の発明において、ロータの前後の表面のシールのために、上記周知技術2を採用して、上記相違点4に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、本件補正発明は、全体として検討してみても、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術並びに周知技術1及び2から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。


2-2-4.まとめ
したがって、本件補正発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に想到し得る程度のことであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3.むすび
したがって、上記2.の2-1.に記載したとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、仮に、この規定に違反しないとしても、上記2.の2-2.に記載したとおり、請求項1に係る本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


【3】本件発明について
1.本件発明の内容
平成23年4月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし44に係る発明は、平成18年5月11日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに国際出願の際の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし44に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、単に「本件発明」という。)は、前記【2】の[理 由]の1.(b)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。


2.引用文献記載の発明及び技術
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1(米国特許第2136066号明細書)の記載事項及び引用文献1記載の発明並びに引用文献2(米国特許第4481920号明細書)の記載事項及び引用文献2記載の技術は、前記【2】の[理 由]の2.の2-2.の2-2-1.の2-2-1-1.の(1)ないし(3)並びに2-2-1-2.の(1)ないし(3)のそれぞれに記載したとおりである。


3.対比・判断
本件発明は、本件補正発明のうち「前記ロータの前後の表面に、ばね部材及びシーリング部材を受け入れるためのチャンネルが設けられ、前記シーリング部材の上面が前記前プレート又は前記後プレートと摺動接触するようになっている」事項(以下、「補正事項」という。)を省いたものである。
そうすると、本件発明の発明特定事項を全て含んだものに上記補正事項をさらに付加した本件補正発明が、前記【2】の[理 由]の2.の2-2.の2-2-1.ないし2-2-4.に記載したとおり、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、上記補正事項に対応した周知技術2を省いたこと以外は同様の理由により、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明は、全体として検討してみても、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術1から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。


4.むすび
以上のとおり、本件発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、審判請求人は、平成24年5月8日付けの回答書において、請求項1ないし15までを削除し、請求項16ないし42を新請求項1ないし27とする補正案を提示し、特に、新請求項1(従前請求項16)の「前記少なくとも一つの回転部材には、前記ロータが第1上死点位置から第2上死点位置までの離間角度と等しい角度に亘って回転するとき、吸気サイクルの少なくとも一部、圧縮サイクル、パワーサイクル、及び排気サイクルの少なくとも一部が順次加わる」という点を主張している。
しかしながら、引用文献2には、内側壁に燃焼事象のサイクルを生じさせるリアクタ・ローブ460,460',460''、圧力シール550, 550',550''及びスプリング・アセンブリ650から成る三つの側壁領域を持つリアクタ・ローブ・アセンブリ640(ハウジング)の一つの角度120°の側壁領域において、吸気事象のサイクル、圧縮事象のサイクル、燃焼事象のサイクル、及び排気事象のサイクルが順次加わることが記載されており(特に、図7ないし10参照。)、上記の点に格別なる困難性は認められない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-27 
結審通知日 2012-07-30 
審決日 2012-08-16 
出願番号 特願2006-526204(P2006-526204)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02B)
P 1 8・ 57- Z (F02B)
P 1 8・ 121- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲葉 大紀  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 柳田 利夫
金澤 俊郎
発明の名称 遊星ロータリー内燃エンジン  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  
代理人 宮前 徹  
代理人 小林 泰  

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