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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1267964
審判番号 不服2011-8761  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-25 
確定日 2012-12-27 
事件の表示 特願2010-232972「電子ブック装置、および電子ブックプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月10日出願公開、特開2012- 88801〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成22年10月15日の出願であって、同年10月20日付けで審査請求がなされ、同年11月2日付けで拒絶理由通知(同年11月9日発送)がなされ、同年12月17日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、平成23年1月19日付けで拒絶査定(同年1月25日謄本送達)がなされ、これに対して、同年4月25日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成23年6月7日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成24年4月24日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年5月1日発送)がなされ、同年6月25日付けで回答書の提出があったものである。


第2 平成23年4月25日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年4月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成23年4月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成22年12月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8の記載

「 【請求項1】
表示装置の表示画面に電子化された書籍である電子書籍の内容を表示する電子ブック装置であって、
前記電子書籍を構成する各ページを表示するためのページ情報を含む電子書籍情報を記憶する電子書籍情報記憶手段と、
前記表示画面に前記電子書籍情報に基づいて表示された電子書籍のページの変更要求を受け付ける小口画像を表示する小口画像表示手段と、
該小口画像表示手段により表示された小口画像に対する所定の操作を受け付ける小口操作受付手段と、
該小口操作受付手段が受け付けた所定の操作に基づいて、前記表示画面に表示中のページを他のページに変更するための変更ページ情報を特定する変更ページ情報特定手段と、
該変更ページ情報特定手段により変更ページ情報が特定されたことに応じて前記表示画面に表示された電子書籍のページがめくられてページが変更されたようにページ変更の経過を表示するページ変更演出を実行するページ変更演出実行手段とを含み、
前記小口操作受付手段は、前記小口画像に対する押下位置のスライド操作を受け付け、
前記変更ページ情報特定手段は、前記小口操作受付手段が受け付けたスライド操作の位置と速度とに応じて変更ページ情報を特定する
ことを特徴とする電子ブック装置。
【請求項2】
前記電子書籍情報記憶手段に記憶された電子書籍情報毎に、前記ページ変更演出実行手段が実行するページ変更演出の際に表示されるページ変更演出用画像を作成して所定の記憶領域に保存するページ変更演出用画像保存手段を含み、
前記ページ変更演出実行手段は、ページ変更演出を実行する際、ページ変更の経過として表示する各ページの内容の一部として前記ページ変更演出用画像を表示する
請求項1記載の電子ブック装置。
【請求項3】
前記小口画像表示手段は、
前記表示画面における前記電子書籍の表示領域上の小口画像表示予定箇所に対する所定の操作を受け付けたことに応じて前記小口画像を表示する
請求項1または請求項2記載の電子ブック装置。
【請求項4】
前記小口画像表示手段は、
前記表示装置の表示画面に表示された電子書籍ページのページ数に応じて小口画像の表示態様を変更する表示態様変更手段を有する
請求項1から請求項3のうち何れかに記載の電子ブック装置。
【請求項5】
電子ブック装置自体の姿勢の変更を検出する姿勢変更検出手段を含み、
前記変更ページ情報特定手段は、前記姿勢変更検出手段により検出された姿勢変更の度合いに応じた変更ページ情報としてページの変更数を決定するページ変更数決定手段を有し、
前記ページ変更演出実行手段は、前記ページ変更数決定手段により決定されたページ変更数分まとめてページがめくられてページが変更するようにページ変更の経過を表示する
請求項1から請求項4のうち何れかに記載の電子ブック装置。
【請求項6】
前記姿勢変更検出手段は、基礎姿勢に対する電子ブック装置自体の傾き角度を検出し、
前記ページ変更数決定手段は、前記姿勢変更検出手段により検出された傾き角度に基づいて単位時間あたりのページ変更数を決定する
請求項5記載の電子ブック装置。
【請求項7】
前記変更ページ情報特定手段は、前記傾き角度が所定角度以上である場合に、前記表示画面に表示された電子書籍の表紙または裏表紙を表示することを示す変更ページ情報を特定し、
前記ページ変更演出実行手段は、前記変更ページ情報特定手段が前記表示画面に表示された電子書籍の表紙または裏表紙を表示することを示す変更ページ情報を特定したことに応じて、前記電子書籍の表紙または裏表紙を変更後のページとするページ変更演出を実行する
請求項5または請求項6記載の電子ブック装置。
【請求項8】
表示装置の表示画面に電子化された書籍である電子書籍の内容を表示するように電子ブック装置に動作制御させるための電子ブックプログラムであって、
前記電子ブック装置に、
前記表示画面に前記電子書籍を構成する各ページを表示するためのページ情報を含む電子書籍情報を記憶する電子書籍情報記憶手段に記憶された電子書籍情報に基づいて表示された電子書籍のページの変更要求を受け付ける小口画像を表示する小口画像表示処理と、
該小口画像表示処理にて表示された小口画像に対する所定の操作を受け付ける小口操作受付処理と、
該小口操作受付処理にて受け付けた所定の操作に基づいて、前記表示画面に表示中のページを他のページに変更するための変更ページ情報を特定する変更ページ情報特定処理と、
該変更ページ情報特定処理にて変更ページ情報が特定されたことに応じて前記表示画面に表示された電子書籍のページがめくられてページが変更されたようにページ変更の経過を表示するページ変更演出を実行するページ変更演出実行処理とを実行させ、
前記小口操作受付処理では、前記小口画像に対する押下位置のスライド操作を受け付ける処理を実行させ、
前記変更ページ情報特定処理では、前記小口操作受付処理にて受け付けたスライド操作の位置と速度とに応じて変更ページ情報を特定する処理を
実行させるための電子ブックプログラム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
表示装置の表示画面に電子化された書籍である電子書籍の内容を表示する電子ブック装置であって、
前記電子書籍を構成する各ページを表示するためのページ情報を含む電子書籍情報を記憶する電子書籍情報記憶手段と、
前記表示画面に前記電子書籍情報に基づいて表示された電子書籍のページの変更要求を受け付ける小口画像を表示する小口画像表示手段と、
該小口画像表示手段により表示された小口画像に対する所定の操作を受け付ける小口操作受付手段と、
該小口操作受付手段が受け付けた所定の操作に基づいて、前記表示画面に表示中のページを他のページに変更するための変更ページ情報を特定する変更ページ情報特定手段と、
該変更ページ情報特定手段により変更ページ情報が特定されたことに応じて前記表示画面に表示された電子書籍のページがめくられてページが変更されたようにページ変更の経過を表示するページ変更演出を実行するページ変更演出実行手段とを含み、
前記小口操作受付手段は、前記小口画像が表示された領域である操作領域に対する押下位置のスライド操作を受け付け、
前記変更ページ情報特定手段は、前記小口操作受付手段が受け付けた前記操作領域に対するスライド操作の位置と速度とに応じて変更ページ情報を特定する
ことを特徴とする電子ブック装置。
【請求項2】
前記電子書籍情報記憶手段に記憶された電子書籍情報毎に、前記ページ変更演出実行手段が実行するページ変更演出の際に表示されるページ変更演出用画像を作成して所定の記憶領域に保存するページ変更演出用画像保存手段を含み、
前記ページ変更演出実行手段は、ページ変更演出を実行する際、ページ変更の経過として表示する各ページの内容の一部として前記ページ変更演出用画像を表示する
請求項1記載の電子ブック装置。
【請求項3】
前記小口画像表示手段は、
前記表示画面における前記電子書籍の表示領域上の小口画像表示予定箇所に対する所定の操作を受け付けたことに応じて前記小口画像を表示する
請求項1または請求項2記載の電子ブック装置。
【請求項4】
前記小口画像表示手段は、
前記表示装置の表示画面に表示された電子書籍ページのページ数に応じて小口画像の表示態様を変更する表示態様変更手段を有する
請求項1から請求項3のうち何れかに記載の電子ブック装置。
【請求項5】
電子ブック装置自体の姿勢の変更を検出する姿勢変更検出手段を含み、
前記変更ページ情報特定手段は、前記姿勢変更検出手段により検出された姿勢変更の度合いに応じた変更ページ情報としてページの変更数を決定するページ変更数決定手段を有し、
前記ページ変更演出実行手段は、前記ページ変更数決定手段により決定されたページ変更数分まとめてページがめくられてページが変更するようにページ変更の経過を表示する
請求項1から請求項4のうち何れかに記載の電子ブック装置。
【請求項6】
前記姿勢変更検出手段は、基礎姿勢に対する電子ブック装置自体の傾き角度を検出し、
前記ページ変更数決定手段は、前記姿勢変更検出手段により検出された傾き角度に基づいて単位時間あたりのページ変更数を決定する
請求項5記載の電子ブック装置。
【請求項7】
前記変更ページ情報特定手段は、前記傾き角度が所定角度以上である場合に、前記表示画面に表示された電子書籍の表紙または裏表紙を表示することを示す変更ページ情報を特定し、
前記ページ変更演出実行手段は、前記変更ページ情報特定手段が前記表示画面に表示された電子書籍の表紙または裏表紙を表示することを示す変更ページ情報を特定したことに応じて、前記電子書籍の表紙または裏表紙を変更後のページとするページ変更演出を実行する
請求項5または請求項6記載の電子ブック装置。
【請求項8】
表示装置の表示画面に電子化された書籍である電子書籍の内容を表示するように電子ブック装置に動作制御させるための電子ブックプログラムであって、
前記電子ブック装置に、
前記表示画面に前記電子書籍を構成する各ページを表示するためのページ情報を含む電子書籍情報を記憶する電子書籍情報記憶手段に記憶された電子書籍情報に基づいて表示された電子書籍のページの変更要求を受け付ける小口画像を表示する小口画像表示処理と、
該小口画像表示処理にて表示された小口画像に対する所定の操作を受け付ける小口操作受付処理と、
該小口操作受付処理にて受け付けた所定の操作に基づいて、前記表示画面に表示中のページを他のページに変更するための変更ページ情報を特定する変更ページ情報特定処理と、
該変更ページ情報特定処理にて変更ページ情報が特定されたことに応じて前記表示画面に表示された電子書籍のページがめくられてページが変更されたようにページ変更の経過を表示するページ変更演出を実行するページ変更演出実行処理とを実行させ、
前記小口操作受付処理では、前記小口画像が表示された領域である操作領域に対する押下位置のスライド操作を受け付ける処理を実行させ、
前記変更ページ情報特定処理では、前記小口操作受付処理にて受け付けた前記操作領域に対するスライド操作の位置と速度とに応じて変更ページ情報を特定する処理を
実行させるための電子ブックプログラム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正することを含むものである。

そして、本件補正は、補正前の請求項1及び請求項8に記載した発明を特定するために必要な事項である「小口操作受付手段(処理)」及び「変更ページ情報特定手段(処理)」を限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件

以上のように、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、補正前の請求項1に対して、限定的減縮を行ったものと認められる。そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)補正後の発明

本件補正により、本願補正発明は、前記「1.補正の内容」の補正後の請求項1に記載されたとおりのものである。

(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

本願の出願前に頒布され、原審の拒絶の査定の理由である上記平成22年11月2日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2003-91343号公報(平成15年3月28日出願公開。以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ユーザがあたかも本で閲覧することが如く、コンピュータ上で、文書や画像や映像やアニメーションなどの電子情報を閲覧できるようにする書籍情報閲覧方法及びその装置と、その書籍情報閲覧方法の実現に用いられる書籍情報閲覧プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体とに関し、特に、その処理を簡単かつ少ない計算処理により実現できるようにする書籍情報閲覧方法及びその装置と、その書籍情報閲覧方法の実現に用いられる書籍情報閲覧プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体とに関する。」

B 「【0031】図1は、本の内容である書籍情報であり、これを3次元の本のモデルに貼り付けるために画像形式にしたものがテクスチャー画像である。
【0032】本発明では、本発明で実現される3次元の本のモデルに、このようなテクスチャー画像を適用することで、図2や図3で示されるリアルな3次元の本としての表示形態を実現する。ここで、図2は厚みのない本として書籍情報を表示した例であり、図3は厚みのある本として書籍情報を表示した例である。」

C 「【0084】本実施形態例でいう厚みめくり処理とは、本の厚み部分に対してマウスなどの入力装置を使って位置入力操作がされた場合に、その入力位置に該当するページを開く処理をさす。」

D 「【0127】上述した本発明の書籍情報閲覧方法を実現するための本発明の書籍情報閲覧装置は、図20に示すように、計算処理の少ないことを実現する3次元的な本のモデルデータ2206、モデル設定情報2205、書籍情報2207、テクスチャー画像2208、ハイパーリンク設定情報2211とを保持しておく記憶部2204と、上述した書籍情報を閲覧するための方法に従って処理を行なう書籍情報閲覧処理部2209、書籍情報2207をページのテクスチャー画像に変換する書籍情報変換部2210とを有する制御部2202と、各種の入力を行なう入力部2201と、3次元の本のモデルとして書籍情報を表示する表示部2203とで構成される。
【0128】本実施形態例では、書籍情報2207を予めテクスチャー画像として有しているが、テキストや画像で構成される書籍情報からテクスチャー画像を生成してもよい。
【0129】上述した書籍情報を閲覧するための方法に従って処理を行なう書籍情報閲覧処理部2209は、3次元的な本のモデルを生成し、また、そのモデルを構成する座標を変化させることでページめくりのアニメーションを行なう3次元の本のモデルの生成処理部2212と、作成された3次元の本のモデルに書籍情報をテキスチャー画像として組み込む処理を行なう書籍情報組み込み処理部2213と、ユーザの入力に対して厚みめくりを行なう厚みめくり処理部2214と、ユーザの入力に対してハイパーリンク処理を行なうハイパーリンク処理部2215とを有する。」

E 「【0138】次に、図22を用いて、厚みめくり処理部2214により実行される厚みめくり処理の一実施形態例について説明する。
【0139】厚みめくり処理を実行する場合には、ステップ2401の処理として、閲覧者が入力部より位置入力を行なうので、それを検出する。実際の手段としては、マウスを用いて画面上をクリックする作業が想定されるが、その他の入力デバイスを用いても良い。
【0140】続いて、ステップ2402の処理として、入力した位置がイベント処理の必要な領域かどうかを判断する。厚みめくり処理を必要とする厚みめくり領域であれば、ステップ2403の処理に進む。その他のイベント処理が必要な領域である場合は、ステップ2407の処理として、該当する処理を行なう。また、何もイベントがおこらない領域であった場合は、何も処理しない。
【0141】ステップ2403の処理に進む場合には、ステップ2403の処理として、その厚み領域がどの厚みめくり領域であるかを判断する。本実施形態例では、厚みめくり領域が6箇所存在する。つまり、図12で示す右側面における1401?1403の面と、左側面におけるそれらに対応する面の6箇所である。
…(中略)…
【0143】続いて、ステップ2404の処理として、図12?15を用いて説明した厚みめくり処理を行なうために、入力位置の表示系の座標(X,Y)を取得する。
【0144】続いて、ステップ2405の処理として、図12?15を用いて説明した厚みめくり処理で説明した計算方法により、その取得した座標(X,Y)をテクスチャー座標(u,v)に変換し、それを元にして該当ページを算出する。
…(中略)…
【0146】続いて、ステップ2406の処理として、上述したアニメーション処理の方法を用いて、ページめくりのアニメーション処理を行ない該当ページを表示する。」

(ア)上記Aの「本発明は、ユーザがあたかも本で閲覧することが如く、コンピュータ上で、文書や画像や映像やアニメーションなどの電子情報を閲覧できるようにする書籍情報閲覧方法及びその装置」との記載、上記Dの「本発明の書籍情報閲覧方法を実現するための本発明の書籍情報閲覧装置」、「3次元の本のモデルとして書籍情報を表示する表示部」との記載からすると、引用文献には、
表示部に電子化された書籍である電子書籍の内容を表示する書籍情報閲覧装置
が記載されていると解される。

(イ)上記Bの「図1は、本の内容である書籍情報であり、これを3次元の本のモデルに貼り付けるために画像形式にしたものがテクスチャー画像である。」との記載、上記Dの「書籍情報2207、テクスチャー画像2208、…(中略)…とを保持しておく記憶部2204」、「本実施形態例では、書籍情報2207を予めテクスチャー画像として有しているが、テキストや画像で構成される書籍情報からテクスチャー画像を生成してもよい。」との記載、及び関連する図1からすると、電子書籍を表示するための情報(以下、「電子書籍情報」という。)として、書籍情報、テクスチャー画像等が記憶部に格納されている。してみると、引用文献には、
電子書籍を構成する各ページを表示するための書籍情報やテクスチャー画像を含む電子書籍情報を記憶する記憶部
が記載されていると解される。

(ウ)上記Dの「書籍情報閲覧処理部2209は、3次元的な本のモデルを生成し、また、そのモデルを構成する座標を変化させることでページめくりのアニメーションを行なう3次元の本のモデルの生成処理部2212と、作成された3次元の本のモデルに書籍情報をテキスチャー画像として組み込む処理を行なう書籍情報組み込み処理部2213と、ユーザの入力に対して厚みめくりを行なう厚みめくり処理部2214と、…(中略)…とを有する。」との記載、上記Eの「厚みめくり処理を実行する場合には、ステップ2401の処理として、閲覧者が入力部より位置入力を行なうので、それを検出する。実際の手段としては、マウスを用いて画面上をクリックする作業が想定される」、「ステップ2402の処理として、入力した位置がイベント処理の必要な領域かどうかを判断する。厚みめくり処理を必要とする厚みめくり領域であれば、ステップ2403の処理に進む。」、「ステップ2403の処理として、その厚み領域がどの厚みめくり領域であるかを判断する。」、「ステップ2404の処理として、図12?15を用いて説明した厚みめくり処理を行なうために、入力位置の表示系の座標(X,Y)を取得する。」、「ステップ2405の処理として、図12?15を用いて説明した厚みめくり処理で説明した計算方法により、その取得した座標(X,Y)をテクスチャー座標(u,v)に変換し、それを元にして該当ページを算出する。」、「続いて、ステップ2406の処理として、上述したアニメーション処理の方法を用いて、ページめくりのアニメーション処理を行ない該当ページを表示する。」との記載からすると、引用文献には、
表示部に電子書籍情報に基づいて表示された電子書籍に対する厚みめくり処理要求を受け付ける厚みめくり領域を表示する手段(以下、「厚みめくり領域表示手段」という。)と、
該厚みめくり領域表示手段により表示された厚みめくり領域に対するマウス等による入力操作(以下、「所定の操作」という。)を受け付ける手段(以下、「厚みめくり処理受付手段」という。)と、
該厚みめくり処理受付手段が受け付けた所定の操作に基づいて、前記表示部に表示中のページを他のページに変更するための情報(以下、「変更ページ情報」という。)を算出する手段(以下、「変更ページ情報算出手段」という。)
該変更ページ情報算出手段により変更ページ情報が特定されたことに応じて前記表示部に表示された電子書籍のページがめくられてページが変更されたようにページ変更の経過を表示するアニメーション処理を実行する手段(以下、「アニメーション処理手段」という。)
とを含む書籍情報閲覧装置が記載されていると解される。

(エ)上記Eの「厚みめくり処理を実行する場合には、ステップ2401の処理として、閲覧者が入力部より位置入力を行なうので、それを検出する。実際の手段としては、マウスを用いて画面上をクリックする作業が想定される」、「ステップ2402の処理として、入力した位置がイベント処理の必要な領域かどうかを判断する。厚みめくり処理を必要とする厚みめくり領域であれば、ステップ2403の処理に進む。」との記載からすると、引用文献には、
厚みめくり処理受付手段は、厚みめくり領域に対するマウス等による位置入力操作を受け付ける
態様が記載されていると解される。

(オ)上記Eの「ステップ2404の処理として、図12?15を用いて説明した厚みめくり処理を行なうために、入力位置の表示系の座標(X,Y)を取得する。」、「ステップ2405の処理として、図12?15を用いて説明した厚みめくり処理で説明した計算方法により、その取得した座標(X,Y)をテクスチャー座標(u,v)に変換し、それを元にして該当ページを算出する。」、「続いて、ステップ2406の処理として、上述したアニメーション処理の方法を用いて、ページめくりのアニメーション処理を行ない該当ページを表示する。」との記載からすると、引用文献には、
変更ページ情報算出手段は、厚みめくり処理受付手段が受け付けたマウス等による位置入力操作の位置に応じて変更ページ情報を算出する
態様が記載されていると解される。

以上、(ア)ないし(オ)で指摘した事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

表示部に電子化された書籍である電子書籍の内容を表示する書籍情報閲覧装置であって、
前記電子書籍を構成する各ページを表示するための書籍情報やテクスチャー画像を含む電子書籍情報を記憶する記憶部と、
前記表示部に前記電子書籍情報に基づいて表示された電子書籍に対する厚みめくり処理要求を受け付ける厚みめくり領域を表示する厚みめくり領域表示手段と、
該厚みめくり領域表示手段により表示された厚みめくり領域に対する所定の操作を受け付ける厚みめくり処理受付手段と、
該厚みめくり処理受付手段が受け付けた所定の操作に基づいて、前記表示部に表示中のページを他のページに変更するための変更ページ情報を算出する変更ページ情報算出手段と、
該変更ページ情報算出手段により該当ページ情報が特定されたことに応じて前記表示部に表示された電子書籍のページがめくられてページが変更されたようにページ変更の経過を表示するアニメーション処理を実行するアニメーション処理手段とを含み、
前記厚みめくり処理受付手段は、前記厚みめくり領域に対するマウス等による位置入力操作を受け付け、
前記変更ページ情報算出手段は、前記厚みめくり処理受付手段が受け付けた前記マウス等による位置入力操作の位置に応じて変更ページ情報を算出する
ことを特徴とする書籍情報閲覧装置。

(3)参考文献に記載されている技術的事項

(3-1)参考文献1

本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-319899号公報(平成7年12月8日出願公開。以下、「参考文献1」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

F 「【0029】
【実施例】図1は本発明の一実施例に係るページめくり表示制御装置の外観と基本構成を表す。
…(中略)…
【0033】さらに、ページめくり表示部44は、アニメーションなどの動画及び静止画を表示する手段311と、ページ番号に応じて本の厚みを作成して表示する手段312と、ユーザが同時にめくりたいページ数に応じてページの厚みを作成して表示する手段313とを有することに特徴がある。ユーザは、当該本の厚みをペン32でポインティングまたはドラッグすることによってページめくりを操作する。」

G 「【0036】図4は本発明に係る一アプリケーションのページめくり表示制御を中心としたメイン処理50を表している。ステップ51では、図9(a)に示すような本の表紙と本の厚みボタン25及び他のボタンを生成して表示するなど、プログラムの初期化を行う。表紙から次々とページをめくることによって図9(b)に示すように各ページを参照することができる。まず、本の厚みボタン25をピックするとステップ60のページめくり処理を実行する。一方、本の厚みボタン25上をドラッグした場合にはステップ80のページジャンプ処理を実行する。
…(中略)…
【0042】本実施例では、ステップ67で押下時間とピック位置を検出し、上記方法に基づいてページめくり速度を計算している。また、ページめくり速度vを計算する他の方法として、押下時間を考慮せずピック位置のみ検出してページめくり速度を計算する方法も考えられるが、上記方法でT1=0とした場合と等価であるので詳細説明は省く。
…(中略)…
【0048】ページジャンプ処理80では図2(C)に示すアニメーションを制御する。以下、ページジャンプ処理80の流れを図6のフロー図と図11及び図12の操作例を用いて説明する。まず、図11で本の厚みボタン25上をドラッグすると、ステップ81では、ステップ61と同様にページめくり表示部の初期化を行う。次に、ステップ82ではページジャンプする向きを、本の厚みボタン25a上を左方向にドラッグした場合は順方向に設定し、本の厚みボタン25bを右方向にドラッグした場合は逆方向に設定する。ここでは、ユーザの直感に合わせるため、ドラッグした向きとページジャンプする向きを一致させる。ステップ83ではページ角速度αをデフォルト値に設定する。このページ角速度αはユーザの操作により変えることも可能だが、本実施例ではデフォルト値のまま変えないものとして説明する。ステップ84ではページジャンプする先のページ番号pを設定する。ここでは、本の厚みボタン25a内でドラッグを開始した横方向位置からページ番号pを計算する。
【0049】図11の操作例141では、残りページ数をPとした場合、p=P*r/Rで計算する。この場合、rはページと本の厚みボタン25aの境界線からドラッグ開始位置までの距離を表し、Rは本の厚みボタン25aの幅を表す。本の厚みボタン25b上をドラッグした場合は、rをページと本の厚みボタン25bの境界線からドラッグ開始位置までの距離として、上記と同じ方法でページジャンプ先のページ番号pを計算する。このことにより、ユーザはジャンプする先のページを本の厚みボタン内の空間的位置で指定できる。
【0050】次に、ステップ85では現ページからpページまでのページ数を計算し、幅がそのページ数に比例するようなページの厚みボタン26を生成する。このページの厚みボタン26は、飛ばすページ数をユーザが視覚的に確認するのに役立つ。ステップ86では、ジャンプ開始側の本の厚みボタン25aから(本の厚みボタン25b上をドラッグした場合は25bから)上記ページの厚みボタン26相当分の幅を削除する。ステップ87では、ページ角速度αをもとにページめくりアニメーションを生成し、ページの厚みボタンと合成して表示する。このページめくりアニメーションの生成方法と表示方法については後述する。」

(3-2)参考文献2

本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-355106号公報(平成16年12月16日出願公開。以下、「参考文献2」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

H 「【0011】
(具体例1:本の閲覧)
図4の本の閲覧の場合,タッチ操作領域スキーマクラスには,データ表示領域スキーマ,操作盤領域スキーマ,ページめくり領域スキーマ,しおり挟み領域スキーマが格納してあるとし,本の閲覧アプリケーションが起動したとき,タッチ操作制御機構が,本の電子化データと共に,これらスキーマに対するタッチ操作領域を画面に設定・表示する。
本の閲覧のためのGUI部品データベースには,これらスキーマを表示するための画像に加え,本の厚みを表現する画像やページ数を表示する数字等が格納されているとする。
1.インタフェース
…(中略)…
2.操作
本の閲覧に係わる操作には,操作盤の表示・非表示,1ページめくり,連続ページめくり,しおり挟み,閲覧終了等がある。どの操作も親指で行うため,正確さを要せず,操作に余裕を持たせた形にしている。以下にタッチ操作領域を使用したこれらの操作方法について述べる。
A) 操作盤の表示
本の閲覧アプリケーションが起動したときは,操作盤は表示された状態である。操作盤を非表示にする場合は,それが表示されている側の操作盤領域以外のデータ表示領域をクリックする。再び表示させたい場合は,データ表示領域の任意の場所をクリックすれば非表示となった場所に表示される。操作盤の表示位置変更する場合は,操作盤が表示されている反対側の任意の場所をクリックする。
B) 1ページめくり
本の1ページをめくる場合,ページめくり領域の左側小領域102をクリックした後,右側小領域103をクリックする(図5)。どの方向にページをめくるのかを分かりやすくするため矢印が表示される。102をクリックした後,再度クリックすると,ページめくりをキャンセルしたことになる。1ページ戻る場合は,上とは逆の順で103そして102をクリックする
C) 連続ページめくり
連続ページめくりは,パラパラとページを飛ばして読む場合に相当する(図6)。連続ページめくりでページを進める場合は,ページめくり領域102で右方向にドラッグする。斜め右でもよい。連続ページめくりでページを戻る場合は,ページめくり領域103で逆の操作をする。親指をドラッグさせるスピードとページをめくるスピードは連動している。
D) しおり挟み
本を読む際に途中で読むのをやめたり重要なページをチェックしたりしたい場合は,しおりを挟む。25ページにしおりを入れる場合を図7に示す。ページめくり領域102の左上を数秒間押すと,タッチ操作領域スキーマクラスからしおり挟み領域スキーマが呼び出され,そこにしおり挟み領域104が設定・表示される。そのままの状態で右下方向にドラッグすると,紙の角が折れたしおりを入れた状況となる。しおりが入ったページがある
と,連続ページめくりはそのページで止まる。しおりの削除は,104中の紙の角が折れた部分をクリックする。
E) 閲覧終了
閲覧の終了は,表示されているページが最初か最後の場合に行える。ページめくり領域の102(103)に表示されている表紙(裏表紙)を数秒間押しっぱなしにする。」

(4)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(4-1)引用発明の「表示部」及び「書籍情報閲覧装置」は、それぞれ、本願補正発明の「(表示装置の)表示画面」及び「電子ブック装置」に相当する。
したがって、引用発明の「表示部に電子化された書籍である電子書籍の内容を表示する書籍情報閲覧装置」は、本願補正発明の「表示装置の表示画面に電子化された書籍である電子書籍の内容を表示する電子ブック装置」に相当する。

(4-2)引用発明の「書籍情報やテクスチャー画像」及び「記憶部」は、それぞれ、本願補正発明の「ページ情報」及び「電子書籍情報記憶手段」に相当する。
したがって、引用発明の「前記電子書籍を構成する各ページを表示するための書籍情報やテクスチャー画像を含む電子書籍情報を記憶する記憶部」は、本願補正発明の「前記電子書籍を構成する各ページを表示するためのページ情報を含む電子書籍情報を記憶する電子書籍情報記憶手段」に相当する。

(4-3)上記Cに「本実施形態例でいう厚みめくり処理とは、本の厚み部分に対してマウスなどの入力装置を使って位置入力操作がされた場合に、その入力位置に該当するページを開く処理をさす。」と記載されるように、引用発明の「電子書籍に対する厚みめくり処理要求」とは、電子書籍のページの変更要求に他ならない。また、引用発明の「厚みめくり領域」とは、書籍の側面部分の領域を指すことから、本願補正発明の「小口画像」に相当する。そして、引用発明の「厚みめくり領域表示手段」は、本願補正発明の「小口画像表示手段」に相当する。
してみると、引用発明の「前記表示部に前記電子書籍情報に基づいて表示された電子書籍に対する厚みめくり処理要求を受け付ける厚みめくり領域を表示する厚みめくり領域表示手段」は、本願補正発明の「前記表示画面に前記電子書籍情報に基づいて表示された電子書籍のページの変更要求を受け付ける小口画像を表示する小口画像表示手段」に相当するといえる。

(4-4)引用発明の「厚みめくり処理受付手段」は、本願補正発明の「小口操作受付手段」に相当する。
したがって、引用発明の「該厚みめくり領域表示手段により表示された厚みめくり領域に対する所定の操作を受け付ける厚みめくり処理受付手段」は、本願補正発明の「該小口画像表示手段により表示された小口画像に対する所定の操作を受け付ける小口操作受付手段」に相当する。

(4-5)引用発明の「変更ページ情報を算出する」ことは、変更ページ情報を算出することで、変更ページ情報を特定することに他ならない。そして、引用発明の「変更ページ情報算出手段」は、本願補正発明の「変更ページ情報特定手段」に相当する。
したがって、引用発明の「該厚みめくり処理受付手段が受け付けた所定の操作に基づいて、前記表示部に表示中のページを他のページに変更するための変更ページ情報を算出する変更ページ情報算出手段」は、本願補正発明の「該小口操作受付手段が受け付けた所定の操作に基づいて、前記表示画面に表示中のページを他のページに変更するための変更ページ情報を特定する変更ページ情報特定手段」に相当するといえる。

(4-6) 引用発明の「アニメーション処理」及び「アニメーション処理手段」は、本願補正発明の「ページ変更演出」及び「ページ変更演出実行手段」に相当する。
したがって、引用発明の「該変更ページ情報算出手段により変更ページ情報が特定されたことに応じて前記表示部に表示された電子書籍のページがめくられてページが変更されたようにページ変更の経過を表示するアニメーション処理を実行するアニメーション処理手段」は、本願補正発明の「該変更ページ情報特定手段により変更ページ情報が特定されたことに応じて前記表示画面に表示された電子書籍のページがめくられてページが変更されたようにページ変更の経過を表示するページ変更演出を実行するページ変更演出実行手段」に相当する。

(4-7)引用発明の「厚みめくり領域」は、厚みめくり処理を受け付ける操作領域に他ならない。また、引用発明の「マウス等による位置入力操作」と、本願補正発明の「押下位置のスライド操作」とは、ともに、「所定の操作」に他ならない。
してみると、引用発明の「前記厚みめくり処理受付手段は、前記厚みめくり領域に対するマウス等による位置入力操作を受け付け」ることと、本願補正発明の「前記小口操作受付手段は、前記小口画像が表示された領域である操作領域に対する押下位置のスライド操作を受け付け」ることとは、ともに“前記小口操作受付手段は、前記小口画像が表示された領域である操作領域に対する所定の操作を受け付け”る点で共通する。

(4-8)引用発明の「前記マウス等による位置入力操作の位置」と、本願補正発明の「前記操作領域に対する所定の操作の位置と速度」とは、ともに、“前記操作領域に対する所定の操作による入力情報”である点で共通する。
してみると、引用発明の「前記変更ページ情報算出手段は、前記厚みめくり処理受付手段が受け付けた前記マウス等による位置入力操作の位置に応じて変更ページ情報を特定する」と、本願補正発明の「前記変更ページ情報特定手段は、前記小口操作受付手段が受け付けた前記操作領域に対するスライド操作の位置と速度とに応じて変更ページ情報を特定する」とは、ともに、“前記変更ページ情報特定手段は、前記小口操作受付手段が受け付けた前記操作領域に対する所定の操作による入力情報に応じて変更ページ情報を特定する”点で共通するといえる。

以上から、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

表示装置の表示画面に電子化された書籍である電子書籍の内容を表示する電子ブック装置であって、
前記電子書籍を構成する各ページを表示するためのページ情報を含む電子書籍情報を記憶する電子書籍情報記憶手段と、
前記表示画面に前記電子書籍情報に基づいて表示された電子書籍のページの変更要求を受け付ける小口画像を表示する小口画像表示手段と、
該小口画像表示手段により表示された小口画像に対する所定の操作を受け付ける小口操作受付手段と、
該小口操作受付手段が受け付けた所定の操作に基づいて、前記表示画面に表示中のページを他のページに変更するための変更ページ情報を特定する変更ページ情報特定手段と、
該変更ページ情報特定手段により変更ページ情報が特定されたことに応じて前記表示画面に表示された電子書籍のページがめくられてページが変更されたようにページ変更の経過を表示するページ変更演出を実行するページ変更演出実行手段とを含み、
前記小口操作受付手段は、前記小口画像が表示された領域である操作領域に対する所定の操作を受け付け、
前記変更ページ情報特定手段は、前記小口操作受付手段が受け付けた前記操作領域に対する所定の操作による入力情報に応じて変更ページ情報を特定する
ことを特徴とする電子ブック装置。

(相違点1)

小口操作受付手段における所定の操作として、本願補正発明が、「押下位置のスライド操作」であるのに対して、引用発明は、「マウス等による位置入力操作」である点。

(相違点2)

変更ページ情報特定手段における所定の操作による入力情報として、本願補正発明が、「スライド操作の位置と速度」であるのに対して、引用発明は、「位置入力操作の位置」である点。

(5)当審の判断

上記相違点1及び相違点2について検討する。

(5-1)相違点1について

厚みボタン(本願補正発明における「小口画像」に相当)上をポインティングまたはドラッグ(本願補正発明における「スライド操作」に相当)することによりページめくりを行う技術については、周知技術(上記F及びG参照)であり、当該周知技術を、同じ技術分野である引用発明に適用し、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点1は格別なものではない。

(5-2)相違点2について

ドラッグ操作(本願補正発明における「スライド操作」に相当)の開始位置により変更先ページを特定する技術や、ドラッグ操作の速度に応じてページ送りの速度を変更する技術については、周知技術(上記F、G、H参照)であり、当該周知技術を、同じ技術分野である引用発明に適用し、厚みめくり領域に対するマウス等による入力操作による変更ページ情報算出手段において、ドラッグ操作の開始位置により変更先のページを特定し、ドラッグ操作の速度に応じてページ送りの速度を決定するように構成すること、すなわち、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点2は格別なものではない。

(5-3)小括

上記で検討したごとく、相違点1及び相違点2は格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、上記引用文発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(6)請求人の主張等について

なお、請求人は、平成24年6月25日付けの回答書において、

『しかしながら、上記引用文献1と、上記周知の事項とには、本件補正後の請求項1に係る発明の構成のうち、表示された小口画像に対する所定の操作を受け付ける「小口操作受付手段」に相当する構成が記載されているとしても、小口操作受付手段が受け付けた操作領域に対するスライド操作の位置と速度とに応じて変更ページ情報を特定する「変更ページ情報特定手段」に相当する構成は何ら記載されておらず、示唆すらありません。よって、「ドラッグ操作の開始位置によりジャンプ先のページ(すなわち、変更後のページ)を特定し、ドラッグ操作の速度に応じてページ送りの速度を決定する」という公知発明の存在に基づいて、「スライド操作の位置と速度とに応じて表示中のページを他のページに変更するための変更ページ情報を特定する」という構成を備えた本件補正後の請求項1に係る発明に当業者が容易に想到することができたという上記前置報告書における認定は失当であり、係る誤った認定に基づく見解を承服することはできません。』(3頁4?15行目)

と主張している。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。以下同じ。)

この点に関して、本願発明の詳細な説明を参酌すると、本願補正発明の「スライド操作の位置と速度とに応じて変更ページ情報を特定する」ことに関して、

「【0077】
図9は、モード2画面における小口操作について説明するための説明図である。例えば、図9(A)に示すように、小口画像201Aと小口画像202Aの表示位置を含む操作領域203に対する左方向へのスライド操作を受け付けると、制御部10は、変更ページ情報特定部15により、変更後のページを特定するための変更ページ情報を特定する。すなわち、例えばユーザAの指Fにより、小口画像202Aの表示位置内における点Dの押下を受け付け、押下位置が画面左方向に移動したものと判定すると、制御部10は、変更ページ情報特定部15により、小口画像202Aに対する点Dの位置、押下位置の移動速度、および押下位置の移動距離などに基づいて、変更後のページ(または、変更後のページとページ変更速度)を特定するための変更ページ情報を特定する。」、

と記載されていることから、「スライド操作の位置と速度」とは、「押下位置の移動速度、および押下位置の移動距離」を意味するものと認定することができる。

しかしながら、指(マウス)によるドラッグ操作の移動距離や速度に応じて変更ページを特定する技術についても周知技術(必要ならば、特表2009-541875号公報(段落【0026】等)、特開2003-157134号公報(【請求項1】等)参照)にすぎず、引用発明においても、当該周知技術を適用し、厚みめくり領域に対するドラッグ操作の移動距離や速度に応じて変更ページ情報を特定するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、回答書における上記請求人の主張は、到底認め得るものではない。

3.むすび

以上のとおり、本件補正は、上記「2.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1.本願発明

平成23年4月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年12月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「表示装置の表示画面に電子化された書籍である電子書籍の内容を表示する電子ブック装置であって、
前記電子書籍を構成する各ページを表示するためのページ情報を含む電子書籍情報を記憶する電子書籍情報記憶手段と、
前記表示画面に前記電子書籍情報に基づいて表示された電子書籍のページの変更要求を受け付ける小口画像を表示する小口画像表示手段と、
該小口画像表示手段により表示された小口画像に対する所定の操作を受け付ける小口操作受付手段と、
該小口操作受付手段が受け付けた所定の操作に基づいて、前記表示画面に表示中のページを他のページに変更するための変更ページ情報を特定する変更ページ情報特定手段と、
該変更ページ情報特定手段により変更ページ情報が特定されたことに応じて前記表示画面に表示された電子書籍のページがめくられてページが変更されたようにページ変更の経過を表示するページ変更演出を実行するページ変更演出実行手段とを含み、
前記小口操作受付手段は、前記小口画像に対する押下位置のスライド操作を受け付け、
前記変更ページ情報特定手段は、前記小口操作受付手段が受け付けたスライド操作の位置と速度とに応じて変更ページ情報を特定する
ことを特徴とする電子ブック装置。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成23年4月25日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成23年4月25日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」で検討した本願補正発明の「小口操作受付手段」から「が表示された領域である操作領域」を削除し、「変更ページ情報特定手段」から「前記操作領域に対する」という限定を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記「第2 平成23年4月25日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(3)」ないし「(5)当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-25 
結審通知日 2012-10-30 
審決日 2012-11-12 
出願番号 特願2010-232972(P2010-232972)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久々宇 篤志野崎 大進  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 田中 秀人
原 秀人
発明の名称 電子ブック装置、および電子ブックプログラム  
代理人 須藤 浩  

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