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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23G
管理番号 1268016
審判番号 不服2010-18965  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-23 
確定日 2012-12-28 
事件の表示 特願2004-567728「圧縮チューインガムタブレット」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月19日国際公開、WO2004/068964、平成18年 4月27日国内公表、特表2006-513704〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2003年2月4日を国際出願日とする出願であって、平成18年1月19日付け(受付日)で手続補正書が提出され、平成20年3月4日付け(受付日)で誤訳訂正書が提出され、同年3月7日付け(受付日)で手続補正書が提出され、同年12月3日付けで拒絶理由が通知され、平成21年6月8日付け(受付日)で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年4月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月23日付け(受付日)で拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、当審において平成23年9月5日付けで審尋がなされ、平成24年3月6日付け(受付日)で回答書が提出されたものである。

第2 平成22年8月23日付け手続補正について
1.平成22年8月23日付け(受付日)の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正であり、平成21年6月8日付け(受付日)の手続補正書によって補正された(以下、「本件補正前」という。)下記(1)に示す特許請求の範囲の請求項1?20を、下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1及び2に補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1?20
「【請求項1】
少なくとも2つのそれぞれが合着したチューインガムモジュール(11、12;21、22、23;31、32;41、42;51、52)を有するチューインガムタブレット(10、20、30、40、50)であって、該各チューインガムモジュールの少なくとも1つがガムベースを含有する圧縮チューインガム顆粒を含んでおり、かつ該チューインガムタブレットが該タブレットの少なくとも5重量%のガムベース含有量を有しており、さらに該チューインガムタブレットが高度甘味料を含有していることを特徴とするチューインガムタブレット。
【請求項2】
・・・(略)・・・
【請求項4】
前記各チューインガムモジュール(11、21、31、41)の少なくとも1つがガムベースを含んでいない請求項1?3のいずれか一項に記載のチューインガムタブレット。
【請求項5】
・・・(略)・・・
【請求項20】
請求項1?17のいずれか一項に記載のチューインガムタブレットの製造方法であって、各チューインガムモジュールの少なくとも1つが活性成分を含むことでタブレットの各チューインガムモジュール間の物理的または化学的相互作用を回避することを特徴とする製造方法。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2
「【請求項1】
少なくとも2つのそれぞれが合着したチューインガムモジュール(11、12;21、22、23;31、32;41、42;51、52)を有するチューインガムタブレット(10、20、30、40、50)であって、該各チューインガムモジュールの少なくとも1つがガムベースを含有する圧縮チューインガム顆粒を含んでおり、かつ該チューインガムタブレットが該タブレットの少なくとも5重量%のガムベース含有量を有しており、さらに該チューインガムタブレットが高度甘味料を含有していることを特徴とするチューインガムタブレット。
【請求項2】
前記各チューインガムモジュール(11、21、31、41)の少なくとも1つがガムベースを含んでいない請求項1に記載のチューインガムタブレット。」

2.本件補正の目的
本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1と同一であり、本件補正後の請求項2は、本件補正前の請求項1を引用する請求項4と同一であるから、特許請求の範囲についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1?20のうち、請求項2及び3、請求項2及び3のいずれかを引用する請求項4並びに請求項5?20を削除するものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定される請求項の削除を目的とするものに該当する。

3.本件補正の適否
本件補正の目的については上記「2.」のとおりであり、また、本件補正は請求項の一部を削除するものであるから、新規事項を追加するものではないことは明らかである。
よって、本件補正は、適法な補正である。

以下、上記「1.(2)」において示した、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明を、「本願発明」という。

第3 刊行物等から認定される技術事項
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に日本国内で頒布された刊行物である特開昭51-110016号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(刊a)「第1図において1は非塑性錠練剤から圧縮した第1層を示し、2は塑性練剤の予め形成した円板より成る層を示し、3は非塑性錠練剤から圧縮した第2層を示す。第1層1には一方の製剤組成を混合し、第2層3には他方の製剤組成を混合する。これら両製剤組成は互に接触すると分解する化学的に両立し難い組成とする。錠剤の断面全体にわたつて延在する層2は分離層としても作用しこれにより2種類の製剤組成が接触し従つて分解するのを防止する。」(第3ページ右上欄第2?11行)

(刊b)「第10図に示す所では第1図の多層錠を製造するために層1に対する充分な量の錠練剤80を型81内に導入し(第10A図)次いでポンチダイ82により圧縮して層1を形成する(第10B図)。次いで充分な量の顆粒塑性練剤83を導入して層2を形成する。この顆粒塑性練剤を混合器84で混合して冷却装置85に導入し・・・(中略)・・・かように冷却された塑性練剤を粉砕装置86に導入して顆粒にする。・・・(中略)・・・
粉砕装置86からの練剤を加熱混合装置107に導入しここから新たな製剤用塑性練剤を流動顆粒状にして型81内に導入し(第10C図)、ここで圧縮を行つて層2を形成すると同時に加圧により層2と接合する(第10D図)。次いで層3の錠練剤89を導入する(第10E図)と共にこれを圧縮して(第10F図)層3を形成すると同時に層2に接着する。かくして最後に第10G図に示す3層錠を取出す。」(第5ページ右上欄第2行?左下欄第3行)

(刊c)「本発明による多層錠の化学組成を示す具体的な数例を以下に示す。これらの例の全部に対し錠剤製造中の圧力を1000kg/cm^(2)とし、完成した最終錠剤の重量を1.5gとする。以下の例の3層錠において各層の重量を0.5gとする。
・・・(中略)・・・
例 2
第1図の3層錠のうち塑性練剤の中間層は、チクルガム1.70重量部、蔗糖0.5重量部、パラフインワツクス0.5重量部、トルバルサム0.06重量部、吐根末0.03重量部、ユーカリ0.03重量部を含有する。
錠練剤の一方の外側硬化層1はぶどう糖50.0重量部、ソルビツト48.0重量部および有効成分の茴香油1.0重量部を含有する。
錠練剤の他方の外側層3はぶどう糖50.0重量部、ソルビツト48.0重量部、有効成分のユーカリ油1.0重量部および有効成分の茴香油1.0重量部を含有する。
この多層錠を鎮咳剤とし、これにより塑性層を口中で長時間にわたりチユーインガムとしてそしやくし得るようにする。この際、既知のように吐根末およびユーカリによつて咳をしずめるようにする。」(第6ページ左上欄第19行?左下欄第19行)

(刊d)「4.図面の簡単な説明
第1図は本発明多層錠の一例を示す側面図、・・・(略)・・・第7図は第1図の多層錠の製造方法の諸工程を示す断面図、・・・(略)・・・第10?12図は本発明多層錠の製造方法の他の変形例の諸工程を示す断面図である。」(第7ページ右上欄第7?19行)

(刊e)第7図として、第1図の多層錠の製造方法が示されている。一方、第10図には、多層錠の製造方法の他の変形例の諸工程が示されている。

(刊f)第1図には、層2を挟んで層1?3を積層した3層錠が示されている。

2.周知文献の記載事項
本願の出願日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である米国特許第5711961号明細書(以下、「周知文献1」という。)、特開昭60-164438号公報(以下、「周知文献2」という。)、特表2002-541123号公報(以下、「周知文献3」という。)及び特開平9-3071号公報(以下、「周知文献4」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されている(なお、下線は、当審で付したものである。)。

(1)周知文献1(米国特許第5711961号明細書。「()」内は当審による仮訳である。)
(周1a)「More specifically, the subject of the invention is the use of a particular lacquering system which enables the drug to be administered more effectively.」(第1欄第16?18行)
(より具体的には、発明の主題は、薬をより効果的に投与することを可能にする特定の塗りシステムの使用である。)

(周1b)「8. A method of preparing a tablet, comprising the steps of:
a) freezing chewing gum in pellet form to a temperature of between -20℃. and -25℃. to form frozen gum;
b) grinding said frozen gum to a particle size of between 60 and 190 mesh to form ground chewing gum;
c) adding to said ground chewing gum sugary microgranules having adsorbed onto a surface thereof a component selected from the group consisting of an additive agent and au active ingredient to form a granular mixture;
d) compressing said granular mixture to form tablets; and
e) coating said tablets with a lacquer comprising a pharmaceutically acceptable celluloses or a polyethylene glycol in a solvent.
9. A method according to claim 8, wherein said ground chewing gum is mixed with at least one natural or synthetic sweetener in a ratio of 0.3-0.8 parts of gum per 0.6-0.2 parts of sweetener phase.
・・・(略)・・・
13. A method according to claim 9, wherein said sweetener is selected from the group consisting of sugars, polyalcohols used as sweeteners, saccharin, acesulfame, aspartame and mixtures thereof.
14. A method according to claim 13, wherein the sugar is selected from the group consisting of dextrose, glucose, sucrose, invert sugar, fructose, mannose and maltose.
15. A method according to claim 13, wherein the polyalcohols are selected from the group consisting of sorbitol, mannitol, maltitol and xylitol.」(第6欄第27?65行)
(8. 以下のステップを含む錠剤の製造方法:
a)凍結ガムを形成するために-20℃?-25℃の温度でペレット状にチューインガムを凍結する
b)粉砕チューインガムを形成するために、60?190メッシュの粒の大きさに前記凍結ガムを粉砕する
c)顆粒状の混合物を形成するために、付加物及び活性成分からなるグループから選択される成分をその表面に吸着した糖マイクロ粒を、前記粉砕チューインガムに加える
d)錠剤を形成するために、前記顆粒状の混合物を圧縮する
e)医薬的に許容される溶剤セルロースもしくはポリエチレングリコールで構成されたラッカーで前記錠剤をコーティングする。
9. 請求項8の方法において、前記粉砕チューインガムが少なくとも一つの天然もしくは合成甘味料と混合され、0.3-0.8 がガムで0.6-0.2が甘味料の割合である。
・・・(略)・・・
13. 請求項9の方法において、前記甘味料が、糖、甘味料として使用されるポリアルコール、サッカリン、アセスルファム、アスパルテーム及びこれらの混合物からなるグループから選択される。
14. 請求項13の方法において、その糖が、デキストロース、グルコース、スクロース、転化糖、フラクトース、マンノース及びマルトースからなるグループから選択される。
15. 請求項13の方法において、そのポリアルコールが、ソルビトール、マニトール、マルチトール及びキシリトールからなるグループから選択される。)

(周1c)第3欄から第5欄に表示された各ガム組成の例(example)1.?10.のいずれにおいても、ソルビトール(sorbitol)及びアスパルテーム(aspartame)が含まれている。

(2)周知文献2(特開昭60-164438号公報)
(周2a)「本発明は・・・(中略)・・・詳細にはこの錠剤形チユーインガム組成物はチユーインガム顆粒と圧縮助剤との、錠剤形チユーインガム組成物の約2?約8重量%の水分含量を有する錠剤に成形されるブレンドを包含する。」(第4ページ右上欄第10?16行)

(周2b)「本発明のチユーインガム組成物は一般に甘味剤を包含している。甘味剤は広範な物質例えば水溶性甘味剤、水溶性人工甘味剤およびジペプチドに基づく甘味剤およびそれらの混合物を含むものから選ぶことができる。特定の甘味剤に限定されるわけではないが代表的例としては以下のものを包含する。
A.水溶性甘味剤例えば単糖類、二糖類、および多糖類例えばキシロース、リボース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、デキストロース、蔗糖、砂糖、マルトース、部分水解殿粉またはコーンシロツプ固体および糖アルコール例えばソルビトール、キシリトール、マンニトールおよびそれらの混合物
B.水溶性人工甘味剤、例えば可溶性サツカリン塩、すなわちサツカリンのナトリウム塩またはカルシウム塩、シクラメート塩、アセスルフアムKその他およびサツカリンの遊離酸形
C.ジペプチドベース甘味剤例えばL-アスパルチル-L-フエニルアラニンメチルエステルおよび米国特許第3,492,131号明細書その他に記載の物質」(第9ページ右下欄第12行?第10ページ右上欄第1行)

(周2c)「ここに本発明は慣用のチユーインガム組成物の錠剤化に関して記載されているけれども、医薬を包含させることも本発明の範囲内であつて、この場合の得られるガムは薬用チユーインガム錠剤である。」(第12ページ左上欄第10?14行)

(3)周知文献3(特表2002-541123号公報)
(周3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記の工程を含む、個体に医薬品を送達する方法。
ガムを中心及び実質的に該中心を取囲むコーティングを含むチューインガムを提供する工程であって、該コーティングがチューインガムの少なくとも50質量%を構成し、該コーティングが医薬品を含有する工程;
チューインガム組成物から個体の口腔へと医薬品の放出が生じるように、チューインガムを噛む工程;及び
チューインガムを噛み続け、これにより個体の口内粘膜を通じての医薬品の個体の全身システムへの侵入を引き起こす流体圧を生じる工程。
【請求項2】 コーティングが、高甘味度甘味剤を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】 高甘味度甘味剤が、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン及びアセスルフェーム-kからなる群より選択される、請求項1記載の方法。」

(周3b)「【0044】
コーティングの実施態様において、デキストロース又はスクロース又はそれらの組合せが、主成分として機能する。好ましい実施態様において、デキストロースが利用され、かつこのデキストロースは、コーティングの約50?約90%を構成している。コーティング中の活性成分又は医薬品は、コーティングの30%程度を構成し、投薬が有効である限りは非常に少量に減らすことができる。好ましい実施態様において、香味剤は粉末化された香味剤であり、かつ0.1%?約5%の範囲であることができる。アスパルテーム、スクラロース、及びアセスルフェーム-kのような高甘味度の甘味剤も、コーティング中に、コーティングの約0.5?約5%の範囲で使用することができる。前述のように、これらの高甘味度甘味剤は、優れたマスキング剤である。」

(周3c)「【0045】
医薬品又は物質を含有するコーティングは、様々な異なるガム中心組成物を取囲むことができる。ここでチューインガム中心と称される本発明のガム中心は、公知の様々な異なるチューインガムを基にすることができる。例えば、ガム中心は、低又は高水分であり、糖分入り又は無糖であり、ワックス含有又は非含有、低カロリー(高い基剤又は低カロリー増量物質による)であることができ、及び/又は歯科用物質を含有しても良い。
チューインガムは一般に、ガム基剤、水溶性部分、及び香味剤からなる。この水溶性部分は、噛む時に一定期間にわたってガムの香味剤の一部と共に放散される。ガム基剤部分は、噛む間を通じて口中に留められる。」

(周3d)「【0053】
水不溶性ガム基剤部分に加えて、典型的チューインガム組成物は、水溶性バルク部分及び1種以上の香味物質を含有する。水溶性部分は、バルク甘味剤、高甘味度甘味剤、香味物質、軟化剤、乳化剤、色素(colors)、酸味剤、充填剤、酸化防止剤、及び望ましい特質をもたらす他の成分を含むことができる。
・・・(中略)・・・
【0054】
バルク甘味剤は、糖質及び無糖の成分を両方含む。バルク甘味剤は典型的には、チューインガムの約5%?約95質量%、より典型的には約20%?約80質量%、及びより一般的にはガムの約30%?約60質量%を構成する。糖質甘味剤は、通常のチューインガム技術分野において一般に公知である、スクロース、デキストロース、マルトース、デキストリン、乾燥転化糖、果糖、レブロース、ガラクトース、固形コーンシロップなどの単独又は組合せを含むが、これらに限定されるものではないような、糖質-含有成分を含む。無糖の甘味剤は、糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、キシリトール、水素化されたデンプン水解物、マルチトールなどの単独又は組合せがあるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
高甘味度人工甘味剤も、単独又は前述のものと組合せて使用することができる。好ましい甘味剤は、スクラロース、アスパルテーム、アセスルフェーム塩、アルチターム(altitame)、サッカリン及びその塩、シクラミン酸及びその塩、グリセルヒジネート、ジヒドロカルコン、タウマチン、モネリンなどの、単独又は組合せがあるが、これらに限定されるものではない。より長時間持続する甘味剤及び香味剤の認知を提供するために、カプセル封入するか、さもなければ人工甘味剤の少なくとも一部の放出を制御することが望ましい。このような技術は、湿式造粒、ワックス造粒、噴霧乾燥、噴霧冷却、流動床コーティング、コアセルベーション、及び線維延伸を用いて、望ましい放出特性を達成することができる。
糖質及び/又は無糖の甘味剤の組合せをチューインガムにおいて使用することができる。更に、軟化剤も、水性糖質又はアルジトール溶液などと共に追加の甘味を提供することができる。」

(4)周知文献4(特開平9-3071号公報)
(周4a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 R(-)-1,8-ジエチル-1,3,4,9-テトラヒドロピラノ[3,4-b]インドール-1-酢酸を実質的に含有しないS(+)-1,8-ジエチル-1,3,4,9-テトラヒドロピラノ[3,4-b]インドール-1-酢酸からなることを特徴とする官能上許容される経口医薬組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項3】 さらに、官能上許容される医薬用担体を含有する請求項1記載の官能上許容される経口医薬組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項11】 チューインガム剤に製剤される請求項3記載の官能上許容される経口医薬組成物。」

(周4b)「【0018】本発明のエトドラク・ユートマーは、それが用いられる製剤に不快な味を与えないが、製剤に甘味剤または着香剤を含有させて製剤全体の香り、味および所望性を増大させてもよい。かかる甘味剤としては、いかなる医薬上許容される甘味剤であってもよく、例えば、糖蜜、グリシン、コーンシロップ、糖類(例えば、白糖、ブドウ糖、果糖および菓子製造用の砂糖)、ソルビトール、サッカリン、サッカロース、サッカリンナトリウム、サッカリンカルシウム、アスパルテーム(ニュートラスイート(Nutrasweet^(R))という商品名で、イリノイ州ディアフィールドのニュートラスイート・カンパニー(Nutrasweet Company)から入手可能)、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、カンゾウ、ペリルアルデヒド、キシリトール、デキストロース、マンニトールおよび乳糖が挙げられるが、これらに限定されない。」

3.引用刊行物に記載された発明
上記「1.」の記載事項(刊a)(以下、「摘記刊a」という。(刊b)?(刊f)についても同様。)?摘記刊fから、以下(1)?(5)のことが明らかである。
(1)摘記刊aの第1図自体の説明には、第1層である「1」と第2層である「3」との間に「予め形成した円板より成る層」である「2」が「1」、「3」の分離層である旨説明され、第1図自体には層「1」、層「3」の間に、層「2」を挟みこんだ3層の多層錠が示されている(摘記刊f参照。)。
そのような構造の第1図の多層錠の製造方法の工程(以下、「製造工程」という。)としては、「図面の簡単な説明」(摘記刊d)によれば、第7図は第1図の多層錠の製造工程であることが示されている一方で、第10?12図は、引用刊行物に記載された多層錠の製造方法の他の変形例の工程であることが示されており(摘記刊e参照。)、しかも、摘記刊bによれば、第10図は「第1図の多層錠を製造する」工程を説明するための図であることも明記されている。
したがって、第10図は、第1図の3層からなる多層錠の製造工程の一例であることは明らかである。
そして、摘記刊cの「例 2」は、摘記刊cに記載されているように「第1図の3層錠」の各層の成分の具体例を説明したものであり、当該成分により、第10図に示された製造工程を用い得ない特段の理由も無い。
よって、「例 2」の多層錠の製造工程として、第10図の製造工程を適用することは引用刊行物に開示されているものである。

(2)上記(1)のように、「例 2」の多層錠の製造工程として、第10図の製造工程を適用することが開示されており、「例 2」の「中間層」が、第10図の製造工程において示されている層「2」に相当するから、「例 2」の「中間層」の製造工程は、第10図の製造工程における「製剤用塑性練剤を流動顆粒状にして型81内に導入し(第10C図)、ここで圧縮を行つて層2を形成する」(摘記刊b)が適用されるものである。

(3)摘記刊bによると、「層1」と「層2」は互いに接合され、「層2」と「層3」は互いに接着されている。そして、上記(1)及び(2)のとおりであるから、摘記刊cの「例 2」の「第1図の3層錠」における「外側硬化層1」と「中間層」は互いに接合され、「中間層」と「外側層3」は互いに接着されている。

(4)摘記刊cによると、「例 2」の「第1図の3層錠」は、「チユーインガムとして」使用され、「咳をしずめる」ための「錠剤」である。

(5)摘記刊cの「例 2」は、「以下の例の3層錠において各層の重量を0.5gとする。」(摘記刊c)における「以下の例」の一つであるから、「例 2」の「第1図の3層錠」は、「各層の重量を0.5gとする」ものである。

摘記刊cの「例 2」の「第1図の3層錠」について、各層の含有成分及び含有量(摘記刊c参照。)並びに上記(1)?(5)で示した事項を整理すると、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「外側硬化層1、中間層2及び外側層3からなり、外側硬化層1と中間層2は互いに接合され、中間層2と外側層3は互いに接着される、錠剤であって、中間層2は製剤用塑性練剤を流動顆粒状にして型81内に導入して圧縮を行うことで形成し、各層の重量が0.5gであり、中間層2は、チクルガム1.70重量部、蔗糖0.5重量部、パラフインワツクス0.5重量部、トルバルサム0.06重量部、吐根末0.03重量部、ユーカリ0.03重量部を含有し、錠練剤の一方の外側硬化層1はぶどう糖50.0重量部、ソルビツト48.0重量部および有効成分の茴香油1.0重量部を含有し、錠練剤の他方の外側層3はぶどう糖50.0重量部、ソルビツト48.0重量部、有効成分のユーカリ油1.0重量部および有効成分の茴香油1.0重量部を含有し、咳をしずめるための、チューインガムとして使用される錠剤。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1.「タブレット」と「錠剤」とは同義語であり、また、薬剤についてよく用いられる英語表現の「tablet」の日本語訳は一般に「錠剤」であるから、引用発明における「チューインガムとして使用される錠剤」は、本願発明における「チューインガムタブレット」に相当する。

2.本願発明における「合着」について、本願明細書では、粉末を圧縮することに関しての「合着(結着)」(段落【0019】)との記載はあるが、層と層との「合着」についての明確な定義はない。そして、「合着」の通常の意味が「相合してぴったりくっつくこと」(株式会社岩波書店 広辞苑第五版)であることからすると、単にモジュール同士がぴったりとくっついていればよいものと解される。
一方、引用発明における「外側硬化層1」、「中間層2」及び「外側層3」は、互いに異なる組成を有し、互いに接合あるいは接着されるものである。そして、上記の各層がぴったりとくっついていなければ、錠剤として十分に利用することができないことは明らかであるから、「接合」と「接着」のいずれにしても、これらの層は互いにぴったりとくっついているものと解される。
したがって、引用発明における「外側硬化層1、中間層2及び外側層3からなり、外側硬化層1と中間層2は互いに接合され、中間層2と外側層3は互いに接着される」との事項は、本願発明における「少なくとも2つのそれぞれが合着したチューインガムモジュール」に相当する。

3.引用発明の中間層2を形成する成分としての「チクルガム」はガムベースとして普通に用いられるものであるから、引用発明の当該「チクルガム」は、本願発明の「ガムベース」に相当する。

4.本願発明においては、「各チューインガムモジュールの少なくとも1つがガムベースを含有する圧縮チューインガム顆粒を含んでおり」と特定されているところ、本願明細書では「圧縮チューインガム顆粒」に関して、「チューインガムタブレットは一般的には、適切な圧縮手段を用いて、ある量の粉末に圧力を加えることにより製造される。適切な圧縮手段については、以下に開示、説明される。粉末は次いで緻密な合着(結着)タブレットへと圧縮される。・・・(中略)・・・これら粒子が圧縮されると、粒子間または顆粒間に結合が形成され、それによりある種の機械的強度が圧縮タブレットに付与される。」(段落【0019】及び【0020】)、「2つの異なるモジュールを含む圧縮チューインガムタブレットを、実際に圧縮により製造することができることも分かった。それゆえ、例えばガムベースを含む(各)弾性モジュールが非常に低い弾性を示す他の(各)層の圧縮に影響を及ぼすことが予測される場合でも、最終チューインガムタブレットを、実際に、1以上の圧縮工程における1回の圧縮処理で製造することができることがここに確立された。」(段落【0029】)及び「本発明のガムベース含有チューインモジュールは、典型的には圧縮ガムベース顆粒を基に製造し得る。」(段落【0030】)等と記載されているのみで、上記特定事項における「圧縮チューインガム顆粒」の意味についての明確な説明はない。
そうすると、本願発明における上記特定事項は、「ガムベースを含有する」「顆粒」について、タブレットの製造工程において顆粒間を結合させる「圧縮」がなされていることを意味するものと解される。
なお、本願明細書に「ガムベース顆粒は、従来の方法により、または例えばPCT/DK02/00461およびPCT/DK02/00462(これらの記載内容は、参照により本明細書中に取り込まれる)に記載された方法により製造され得る。」(段落【0033】)との記載があるが、これらに記載された方法における「圧縮」は、ガムベース顆粒とチューインガム添加剤との混合物を圧縮してタブレットにするという意味で用いられている。
他方、引用発明においては、「中間層2は製剤用塑性練剤を流動顆粒状にして型81内に導入して圧縮を行うことで形成」しており、顆粒を「圧縮」することで中間層2を形成している。また、中間層2には、「チクルガム」(上記「3.」で示したとおり、本願発明の「ガムベース」に相当。)が含まれており、これが顆粒の圧縮後に添加されることはあり得ないから、これが「塑性練剤」から得られる顆粒に含まれていることは明らかである。
したがって、引用発明における「中間層2は製剤用塑性練剤を流動顆粒状にして型81内に導入して圧縮を行うことで形成」しているとの事項は、本願発明における「各チューインガムモジュールの少なくとも1つがガムベースを含有する圧縮チューインガム顆粒を含んでおり」との事項に相当する。

5.引用発明の「中間層2」の各成分は、「チクルガム1.70重量部、蔗糖0.5重量部、パラフインワツクス0.5重量部、トルバルサム0.06重量部、吐根末0.03重量部、ユーカリ0.03重量部」であるから、これらの合計は2.82重量部である。このうち「チクルガム」は「1.70重量部」を占めるから、「チクルガム」の「中間層2」における重量の割合は、1.70÷2.82×100(重量%)=約60.28重量%となる。
そして、引用発明においては、「各層の重量が0.5g」であって、「外側硬化層1」、「中間層2」及び「外側層3」は同じ重さであるから、「錠剤」全体における「中間層2」の重量の割合は三分の一である。
そうすると、引用発明において、「錠剤」全体における、「中間層2」に含まれる「チクルガム」の重量の割合は、約60.28(重量%)÷3=約20.09重量%となる。
本願発明では「該チューインガムタブレットが該タブレットの少なくとも5重量%のガムベース含有量を有している」と特定されているところ、引用発明における「チクルガム」(上記「3.」で示したとおり、本願発明の「ガムベース」に相当。)の「錠剤」(上記「1.」で示したとおり、本願発明の「タブレット」に相当。)における重量の割合である、上記の「20.09重量%」という数値は、本願発明における「タブレット」の「ガムベース含有量」である「少なくとも5重量%」という数値範囲に含まれるものである。

よって、両者は、次の点で一致する。
<一致点>
少なくとも2つのそれぞれが合着したチューインガムモジュールを有するチューインガムタブレットであって、該各チューインガムモジュールの少なくとも1つがガムベースを含有する圧縮チューインガム顆粒を含んでおり、かつ該チューインガムタブレットが該タブレットの少なくとも5重量%のガムベース含有量を有している、チューインガムタブレット。

そして、両者は、次の点で相違する。

<相違点>
本願発明では、「チューインガムタブレットが高度甘味料を含有している」のに対して、引用発明では、そのような特定がない点。

第5 相違点についての判断
1.引用発明は、「咳をしずめるため」のものであるから、薬用のチューインガムとして使用されるものである。
また、引用発明においては、「外側硬化層1」及び「外側層3」にぶどう糖及びソルビットすなわちソルビトールが含有されており、「中間層2」に蔗糖が含有されている。引用刊行物には当該ぶどう糖、ソルビットすなわちソルビトール及び蔗糖の機能や役割についての明示はないが、一般にぶどう糖、ソルビトール及び蔗糖はガムに甘味を付与するものとして普通に用いられているものであり、また、薬用のチューインガムに甘味を付与する目的でぶどう糖、ソルビトールあるいは蔗糖を含ませることは、周知文献1?4に記載されるように、周知の事項である。
すなわち、周知文献1には、薬を含むチューインガムに含有される甘味料として、デキストロースすなわちぶどう糖、スクロースすなわち蔗糖及びソルビトール等が示されている。
周知文献2には、薬用チューインガムに含有される甘味剤として、グルコースすなわちぶどう糖、蔗糖及びソルビトール等が示されている。
周知文献3には、医薬品を送達するチューインガムにおける、ガム中心を取囲むコーティングに含有される甘味剤として、デキストロースすなわちぶどう糖及びスクロースすなわち蔗糖が示されており、ガム中心に含有される甘味剤として、デキストロースすなわちぶどう糖、スクロースすなわち蔗糖及びソルビトールが示されている。
周知文献4には、特定の経口医薬組成物が含まれるチューインガム等の製剤に含有される、医薬上許容される甘味剤として、ブドウ糖及びソルビトール等が示されている。

そうしてみると、引用発明におけるぶどう糖、ソルビットすなわちソルビト-ル及び蔗糖は、甘味を付与する役割を持つ含有成分であると考えられる。

2.そして、薬用のチューインガムに甘味を付与するために、高度甘味料を、単独で、あるいは他の甘味料と共に、チューインガムに含有させることは、周知文献1?4に示されるように、本願出願日前に周知の技術(以下、単に「周知技術」という。)であって、当該高度甘味料が、糖分やソルビトールと比較して、より強い甘味を与えること、及び糖分と比較して、低カロリーであり、虫歯の危険性が低いことは、技術常識である。
すなわち、周知文献1には、糖質マイクロ顆粒とガムベースとの混合物を圧縮すること等により製造される、薬を含むチューインガムにおいて、当該チューインガムに含有される甘味料として、デキストロースすなわちぶどう糖、スクロースすなわち蔗糖及びソルビトール等のほかに、サッカリン、アセスルファム及びアスパルテームが示されており、これらの甘味料の混合物を用いることも示されている。
周知文献2には、チューインガム顆粒を錠剤化すること等により製造される、薬用チューインガムにおいて、チューインガムに含有される甘味剤として、グルコースすなわちぶどう糖、蔗糖及びソルビトール等のほかに、サッカリン塩及びアセスルファムKが示されており、これらの甘味剤の混合物を用いることも示されている。
周知文献3には、医薬品を送達するチューインガムにおいて、ガム中心を取囲むコーティングに含有される甘味剤として示された、デキストロースすなわちぶどう糖、スクロースすなわち蔗糖及びソルビトール等に加えて、アスパルテーム、スクラロース及びアセスルフェーム-k等の高甘味度甘味剤が含有される点、及びガム基剤が含まれるガム中心に、スクラロース、アスパルテーム、アセスルフェーム塩、サッカリン及びその塩、シクラミン酸及びその塩、ジヒドロカルコン、タウマチン及びモネリン等の高甘味度甘味剤が、単独もしくは他の甘味剤と組合せて含有される点が示されている。
周知文献4には、特定の経口医薬組成物が含まれるチューインガム等の製剤に含有される、医薬上許容される甘味剤として、ブドウ糖及びソルビトール等のほかに、サッカリン、サッカリン塩、アスパルテーム及びステビオサイドが示されている。

3.薬用のチューインガムにおいては、一般的なチューインガムと同様に、甘味の程度を調整すること、カロリーを抑えること、もしくは虫歯を防止することは、本願の出願日前において周知の課題であって、これらの課題は引用発明のチューインガムについても内在するものであるといえる。
したがって、引用発明において、甘味の程度の調整、カロリーの低減、もしくは虫歯の防止のいずれかの目的で、周知技術を考慮して、「外側硬化層1」あるいは「外側層3」のぶどう糖、ソルビットすなわちソルビトールもしくは「中間層2」の蔗糖のいずれかに代えて、もしくはこれらのいずれかと共に、高度甘味料を用いること、すなわち、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、本願発明を全体としてみても、本願発明により奏されるとされる効果は、引用発明及び周知技術からみて格別なものとはいえない。特に、「驚くべきことに、マルチモジュール圧縮チューインガムが製造される」(本願明細書段落【0016】)という効果は、引用刊行物に記載された製造方法自体から当業者が予測し得た程度の事項である。また、「許容し得る程度以上のテクスチャーやマウスフィールを受け継ぐ」(本願明細書段落【0016】)という効果は、本願明細書の記載の限りでは十分に確認できるものではない。

4.なお、請求人は、審判請求書において「引用例1には図10に示す製造方法を実施するに際して具体的にどのような材料を用いるかについて説明がなく、引用例1を読んだ当業者はさらに特別な知見に拠ることなしには図10に示す方法を用いて図1の多層錠を製造することは不可能であると思料します。・・・(中略)・・・引用例1には、切断した円板を使用する実施形態を支持するかかる明確な記載が存在すること、かつ本願発明者が見い出した、切断した円板を圧縮ガム層に切り替えたときにもたらされる上記の有利な効果を示唆するような記載の一切ないことに鑑みれば、当業者をして引用例1の記載を基に本願発明に想到する改変を行わせしめるような動機付けが全く存在しないことは明らかです。」(【請求の理由】(3) 本願発明が特許されるべき理由)と主張している(当該主張における「引用例1」は、本審決における「引用刊行物」のことである。)。
しかしながら、引用刊行物には第10図に示す製造工程について、摘記刊b及び摘記刊eに示されるように、具体的に記載されており、第1図の錠剤及び「例 2」としての「第1図の3層錠」に、第10図の製造工程を適用することが開示されているということも上記「第3 3.(1)」で適示したとおりである。また、具体的にどのような材料を用いるかについても、摘記刊cの「例 2」等における成分の例示や、一般的なチューインガムや薬用のチューインガムの組成及び製造方法についての技術常識を考慮すれば、当業者が特別の思考を有することなく選択し得る程度のことである。さらに、切断した円板を使用する実施形態が優れている旨の記載が引用刊行物に存在するとしても、第10図に示す製造方法は、好ましくない例ではなく、製造工程の変形例として示された実施例の一つであることは上記「第3 3.(1)」で適示したとおりであり、また、上記のとおり、当業者が特別の思考を有することなく実施し得る程度に記載されていないものでもないから、第10図に示された製造工程を「例 2」の「第1図の3層錠」の製造工程として組み入れて、引用発明とすることを妨げる程度の事情にはあたらない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
また、請求人は、審判請求書において「本発明者は驚くべきことに、高度甘味料を含有させることにより、フレーバーの知覚を延長させて圧縮ガム組成物の創出に伴うフレーバー放出速度の増大を補償することができることを見出したものです。」(【請求の理由】(3) 本願発明が特許されるべき理由)とも主張している。
しかしながら、本願明細書の段落【0039】には、「甘さと香味感がより長く持続するように、人工甘味料の少なくとも一部を封止することが、また封止しない場合でも放出を制御することが望ましい。」という記載はあるが、このような甘味料の封止や制御を行う具体的な手段が説明されておらず、また甘味料の封止及び制御自体については、本願発明において特定されている事項でもないので、当該主張は特許請求の範囲の記載に基づくものとはいえない(なお、甘味料の封止や制御によって甘味料を長時間持続させることは周知文献3に記載されるように本願出願前に周知の事項である。)。また、本願明細書段落【0039】及び【0040】をはじめとして、単に「高度甘味料」それ自体がフレーバー放出速度の増大を補償するとの請求人主張の上記作用効果を得ることについての機序や比較実験が示されておらず、当該作用効果を確認することはできない。そのような効果が「高度甘味料」それ自体の効果とするならば、糖質マイクロ顆粒とガムベースとの混合物を圧縮すること等により製造され、かつアスパルテーム等の高度甘味料を配合したチューインガムである、周知文献1に記載されたもの自体から自ずと奏されるものであり、本願発明はこれを確認した程度のものにすぎないともいえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-27 
結審通知日 2012-07-31 
審決日 2012-08-20 
出願番号 特願2004-567728(P2004-567728)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山中 隆幸冨永 みどり  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 田村 耕作
加藤 友也
発明の名称 圧縮チューインガムタブレット  
代理人 小林 恒夫  
代理人 臼井 伸一  
代理人 岡部 正夫  
代理人 岡部 讓  
代理人 高梨 憲通  

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