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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1268114
審判番号 不服2009-14681  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-13 
確定日 2013-01-04 
事件の表示 特願2006-500261「ポリマー及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月30日国際公開、WO2004/083277、平成18年 9月14日国内公表、特表2006-520827〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年3月19日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2003年3月20日、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国(GB))を国際出願日とする特許出願であって、平成17年10月17日に手続補正書が提出され、平成20年9月1日付けで拒絶理由が通知され、平成21年3月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月7日付けで拒絶査定された。これに対して、同年8月13日に拒絶査定不服審判が請求されると共に、手続補正書が提出され、同年9月24日付で前置報告がなされ、当審において平成23年10月26日付で審尋したところ、平成24年4月27日に回答書が提出されたものである。

第2.本願発明の認定
本願の請求項1?16に係る発明は、平成21年8月13日提出の手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに図面(以下、これらを合わせて「本願明細書等」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」ともいう。)は、以下のとおりである。

「次の一般式(II)を有する選択的に置換された第1の繰り返し単位、 【化1】

ここで、各Rは水素あるいはC_(1-10)アルキル又はC_(1-10)アルコキシから独立して選択され、一般式(II)の基は、10%以下のモル比において存在し、
かつ、1又は2以上の一般式(III)で示される選択的に置換された追加の繰り返し単位、
【化2】

ここで、各R^(1)は選択的に置換されたアルキル、アルコキシ、アリール及びヘテロアリールから独立して選択される、を含むポリマー。」

第3.原査定の拒絶の理由
原査定の理由とされた、平成20年9月1日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶の理由1の概要は以下のとおりである。

「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


(理由1)
・請求項 1-21
・引用文献等 1-3
・・・
引 用 文 献 等 一 覧
1.特表2002-539292号公報・・・」

第4.当審の判断
1.引用文献の記載事項
平成20年9月1日付け拒絶理由通知で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2002-539292号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。

a.「本発明は、有機重合体と、該有機重合体を例えば光デバイスにて使用するような使用方法に関する。」(段落 【0001】)

b.「一般に、発光デバイスにおいて、特に電荷輸送材料として重合体を使用することは、極めて魅力のあるものである。重合体を使用することによって優れたデバイス特性が得られるからである。これらのデバイス特性には、良好な効率、加工性、およびデバイスの寿命が含まれる。」(段落 【0010】)

c.「第1のサブグループは、負の電荷担体を輸送するとともに、第1のLUMO準位と第1のHOMO準位とで特定される第1のバンドギャップを有する第1の領域、正の電荷担体を輸送するとともに、第2のLUMO準位と第2のHOMO準位とで特定される第2のバンドギャップを有する第2の領域、ならびに、正および負の電荷担体を受容して結合させることによって光を発生するとともに、第3のLUMO準位と第3のHOMO準位とで特定される第3のバンドギャップを有する第3の領域を具備する有機重合体である。この有機重合体では、前記領域のそれぞれが単量体を1つ以上含み、当該有機重合体における前記単量体の量および配置は、第1、第2、および第3のバンドギャップが当該重合体中で互いに相違するように選択されている。」(段落 【0072】)

d.「さらに、このサブグループの特定の例を式XXXIに示す。
【化29】

式中、w+x+y=1、w≧0.5、0≦x+y≦0.5、かつn≧2である。」(段落 【0080】?【0082】)

e.「wは約0.80、xは約0.10、yは約0.10であることが好ましい。また、n≧5であることが好ましい。または、wは約0.85、xは約0.10、yは約0.05であることが好ましい。このような値であると、該有機重合体をエレクトロルミネッセンスデバイスにて使用する際に、デバイス効率および寿命に関して良好な性能が得られるからである。この重合体は、エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて使用される際に、『青色』の光を発する。」(段落 【0083】)

2.引用文献に記載された発明の認定
上記摘示事項a?dの記載からみて、引用文献には、
「下記式XXXIに示される

である有機重合体。式中、w+x+y=1、w≧0.5、0≦x+y≦0.5、かつn≧2である。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比・判断
(1)本願発明と引用発明との対比
引用発明における、「下記式XXXI中の下記の繰り返し単位

」は、本願発明の「一般式(II)を有する選択的に置換された第1の繰り返し単位、【化1】

ここで、各Rは水素あるいはC_(1-10)アルキル又はC_(1-10)アルコキシから独立して選択され」る、という繰り返し単位のRがC_(4)アルキルの場合に相当している。
また、引用発明における、上記式XXXI中の下記の繰り返し単位

は、本願発明の「一般式(III)で示される選択的に置換された追加の繰り返し単位、
【化2】

ここで、各R^(1)は選択的に置換されたアルキル、アルコキシ、アリール及びヘテロアリールから独立して選択され」という繰り返し単位のR^(1)がC_(8)H_(17)のアルキルの場合に相当している。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、

「次の一般式(II)を有する選択的に置換された第1の繰り返し単位、 【化1】

ここで、各Rは水素あるいはC_(1-10)アルキル又はC_(1-10)アルコキシから独立して選択され、
かつ、1又は2以上の一般式(III)で示される選択的に置換された追加の繰り返し単位、
【化2】

ここで、各R^(1)は選択的に置換されたアルキル、アルコキシ、アリール及びヘテロアリールから独立して選択される、を含むポリマー。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明は、第1の繰り返し単位が「10%以下のモル比において存在し」と特定されているのに対して、引用発明では、本願発明の第1の繰り返し単位に相当する単位部分の比率であるyについて、「式中、w+x+y=1、w≧0.5、0≦x+y≦0.5、かつn≧2である。」と規定されているのみである点。

<相違点2>
本願発明は、第1の繰り返し単位と追加の繰り返し単位とを含むポリマーであるのに対して、引用発明は、


を繰返し単位として含むポリマー」であり、上記繰返し単位を必須のものとして含む点。

(2)相違点についての検討
相違点1について
引用文献の上記摘示eには、上記第1の繰り返し単位に相当する繰り返し単位のモル比に相当するyの値について「yは約0.10であることが好ましい。・・・または、・・・yは約0.05であることが好ましい。このような値であると、該有機重合体をエレクトロルミネッセンスデバイスにて使用する際に、デバイス効率および寿命に関して良好な性能が得られるからである。」との記載があることから、引用発明の使用する用途に応じて、引用発明においての

の繰り返し単位(本願発明の第1の繰り返し単位に相当)を10%以下の比率とすることは、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易になし得たことである。
そして、そのことによる効果も、上記摘示箇所eに「デバイス効率および寿命に関して良好な性能が得られる」との記載があることから、当業者の予測の範囲内のものである。

相違点2について
本願発明は、第1の繰り返し単位と追加の繰り返し単位を「含むポリマー」であって、前記2つの繰返し単位以外の繰返し単位を全て排除する記載とはなっていないので、文言上、他の繰り返し単位も含むポリマーである。
実質的に見ると、「を含むポリマー」という記載に対応して、本願明細書等によれば、本願発明のポリマーは、ターポリマー又は高次ポリマーを含み(【0030】参照)、5%を超えないモル比において、一般式-Ar-N(Ar)-Arの主鎖に一つの窒素原子を有する選択的に置換された繰り返し単位を含むポリマー(【0014】参照)が示されている。そして、上記した、引用発明のポリマーの繰り返し単位である

は、本願明細書等に記載された上記一般式-Ar-N(Ar)-Arの主鎖に一つの窒素原子を有する選択的に置換された繰り返し単位に包含されるものである。
したがって、上記繰り返し単位は、本願発明でも、引用発明でも含まれるものであるから、相違点2は、形式的にも、実質的にも相違点とはならず、この点でポリマーに含まれる繰り返し単位が相違するものではない。

(3)まとめ
よって、本願発明は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許を受けることができない。

第5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明についての原査定の拒絶の理由1は妥当なものであり、他の請求項及び他の理由を検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-02 
結審通知日 2012-08-07 
審決日 2012-08-21 
出願番号 特願2006-500261(P2006-500261)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阪野 誠司  
特許庁審判長 渡辺 仁
特許庁審判官 大島 祥吾
藤本 保
発明の名称 ポリマー及びその製造方法  
代理人 森田 耕司  
代理人 北野 健  
代理人 伊藤 奈月  
代理人 大野 聖二  
代理人 松任谷 優子  
代理人 田中 玲子  

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