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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1268127
審判番号 不服2010-6991  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-05 
確定日 2013-01-04 
事件の表示 特願2005-507127「プリオンタンパク質活性が低減されたトランスジェニック有蹄動物及びその用途」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月27日国際公開、WO2004/044156、平成18年 2月16日国内公表、特表2006-505291〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,2003(平成15)年11月10日(パリ条約による優先権主張2002年11月8日及び2003年9月26日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成21年10月13日に特許請求の範囲について手続補正がなされたが,平成21年12月16日付で拒絶査定がなされ,これに対して平成22年4月5日に審判請求がなされるとともに,特許請求の範囲について手続補正がなされたものである。

第2 平成22年4月5日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年4月5日の手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正により,請求項1は,
「【請求項1】
内因性プリオン遺伝子座の一方又は両方のアレルに非天然の突然変異を含むウシであって,
該突然変異が,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流への転写終結配列又はSTOPコドンの挿入を含み,
該突然変異は機能性プリオンタンパク質の発現を低減するものである,上記ウシ。」
から,
「【請求項1】
内因性プリオン遺伝子座の両方のアレルに非天然の突然変異を含むウシであって,
該突然変異が,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流への転写終結配列又はSTOPコドンの挿入を含み,
該突然変異は機能性プリオンタンパク質の発現を低減するものである,上記ウシ。」
に補正された。
また,請求項18は,
「【請求項18】
内因性プリオン遺伝子座の一方又は両方のアレルに非天然の突然変異を含むウシ細胞であって、
該突然変異が、プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流への転写終結配列又はSTOPコドンの挿入を含み、
該突然変異は機能性プリオンタンパク質の発現を低減するものである、上記ウシ細胞。」から
「【請求項17】
内因性プリオン遺伝子座の両方のアレルに非天然の突然変異を含むウシ細胞であって、
該突然変異が、プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流への転写終結配列又はSTOPコドンの挿入を含み、
該突然変異は機能性プリオンタンパク質の発現を低減するものである、上記ウシ細胞。」
に補正された。

2.当審の判断
上記補正は,補正前の任意に選択される事項である「一方又は両方のアレル」のうち,「一方」のアレルを削除して「両方のアレル」に限定することにより,請求項に記載された発明特定事項を限定するものであり,補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,この補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,単に「平成18年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮に相当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1及び17に係る発明(以下,「本願補正発明1」及び「本願補正発明17」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうか)について検討する。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第02/079416号(以下,「引用例」という。)は,「伝染性海綿状脳症に耐性のトランスジェニック動物」なる名称の特許公報であり,
「この発明により作られるトランスジェニックウシは,機能的野生型PrP遺伝子を欠くものとして,さらに定義されるだろう。この発明の一つの態様において,野生型PrP遺伝子は,相同組換えによりヌル対立遺伝子と置換される。用語「ヌル対立遺伝子」は,当業者に野生型対立遺伝子に関して,機能を欠く対立遺伝子の記述のことと理解される。」(5ページ4?8行)と記載され,
「C.ホモ接合のノックアウト動物の発生
ウシのPrP遺伝子は,細菌人工染色体(BAC)ラージインサートライブラリーから,プールされたクローンのPCRスクリーニングによって単離された(カイら,1995)。同一遺伝子のターゲット構築物を作り上げるため,ロングレンジPCRによってPrP遺伝子は増幅され(バーンズ,1994; ランドルフら,1996),エキソン3のオープンリーディングフレームの中へのプロモーターのないピューロマイシン-耐性遺伝子の挿入によって,遺伝子は壊された。PrP遺伝子は,非常に有効なプロモータートラップ遺伝子ターゲティングアプローチ(ヘイスティら,1999)を可能にするような,胎児の繊維芽細胞中で高レベルで発現する。PrPローカスのターゲッティングの成功は,従来の豊富化スキーム(プロモータートラップ,同一遺伝子的なDNA,広範囲な相同性)の組み合わせを使用して達成された。PrPノックアウトを作成するために使用される,ターゲッティングスキームは,図4で示される。
・・・・
その後,ターゲットされた細胞は,核ドナーとして体細胞核移植に使用された。改造された胚は,レシピエントの雌牛に現在移植されている。残るPrP対立遺伝子の不活性化を完成するために,上述されるように生成された50日齢のPrP+/-胎仔から細胞が集められ,選択マーカーとしてハイグロマイシンを使用していることを除き,同様のターゲッティング手順が利用される(参照,e.g.,ブラウンら,1997)。両者の場合において,いったん完全に削除されたPrPを保有する細胞を確認した後の選択マーカーの除去を可能にするため,選択マーカーは,LoxPサイトが両側に置かれる。バスケズら(1998)によって記載される培養システムを使って,核移植によるクローニングの前に2回選択されることにより,老化する前に十分な細胞分裂が得られた。このことは,胎児の繊維芽細胞を集める追加の操作の必要なしに,クローニングの前に選択マーカーの除去が可能であろうことを示している。」(39ページ1?末行)
と記載されている。

引用例の39ページには,PrP(プリオン)遺伝子のエキソン3のオープンリーディングフレームの中へプロモーターのないピューロマイシン-耐性遺伝子を挿入し,ホモ接合のPrPノックアウトウシを作成することが記載され,このホモ接合性PrPノックアウトウシは,内因性プリオン遺伝子座の両方のアレルに非天然の突然変異を含むウシに相当する。また,ウシのプリオン遺伝子のエキソン3のオープンリーディングフレームは,エキソン3における最初のATGコドンから始まるものであるから,引用例においては,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流へ,ピューロマイシン-耐性遺伝子を挿入したことになる。
すなわち,引用例1には,
「内因性プリオン遺伝子座の両方のアレルに非天然の突然変異を含むウシであって,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流に非天然の突然変異を含むウシ」の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
また,引用例には,このようなトランスジェニックウシを得るために用いられる,
「内因性プリオン遺伝子座の両方のアレルに非天然の突然変異を含むウシ細胞であって,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流に非天然の突然変異を含むウシ細胞」の発明(以下,「引用発明2」という。)も記載されているものと認められる。

(2)本願補正発明1について
ア 対比
本願補正発明1と引用発明1とを比較すると,両者は,「内因性プリオン遺伝子座の両方のアレルに非天然の突然変異を含むウシであって,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流に非天然の突然変異を含むウシ」である点で一致しているが,以下の点で相違している。

相違点1:
本願補正発明1が,「突然変異が,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流への転写終結配列又はSTOPコドンの挿入を含み,該突然変異は機能性プリオンタンパク質の発現を低減するものである」のに対し,引用例に記載されるピューロマイシン-耐性遺伝子はSTOPコドンを有しているか明記されておらず,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流への転写終結配列又はSTOPコドンの挿入を含むことになるか明らかでなく,そのことにより機能性プリオンタンパク質の発現が低減されたかも明らかでない点。

相違点2:
両方のアレルに非天然の突然変異を含むウシについて,引用例では,実際に,ヘテロ接合の胎仔をはじめとして,ホモ接合の胎仔や生きたウシを作成したことは記載されていない点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
そもそも,選択マーカーとして慣用されているピューロマイシン-耐性遺伝子やハイグロマイシン-耐性遺伝子は,普通にはSTOPコドンを有しているものであるし,ターゲッティングにより遺伝子をノックアウトさせようとするときに,STOPコドンを有するマーカー遺伝子を用いることは周知の事項であり(例えば,「ジーンターゲッティングの最新技術」,株式会社 羊土社,2000年,p.29-30),また,遺伝子ノックアウトの結果として該遺伝子によりコードされる機能性タンパク質の発現が低減することは自明の事項に過ぎない。したがって,引用例に記載されたピューロマイシン-耐性遺伝子として,STOPコドンを有するものを用い,その結果として,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流への転写終結配列又はSTOPコドンの挿入を含むようにし,機能性プリオンタンパク質の発現を低減する程度のことは当業者が容易になしえることにすぎない。

(イ)相違点2について
本願の明細書の段落0007には,両方のアレルに非天然の突然変異を含むウシの製造に関して,「本発明の方法は,いくつかの技術,例えば,(i)本明細書に記載するプリオン遺伝子ノックアウト細胞,(ii)PCT公報WO02/051997号に記載されている核移植法又はクロマチン移植法などの哺乳動物クローン化法,及び(iii)ヒト人工染色体(HAC)(例えばΔHAC)の有蹄動物への導入(PCT公報WO02/70648;Kuroiwa et al., Nature Biotechnol. 20:889-894, 2002)により達成される。プリオンノックアウト有蹄動物細胞を哺乳動物クローン化法のドナー遺伝物質の供与源として用いて,プリオンノックアウト(ヘミ又はホモ)子孫を得る。」と説明され,プリオン遺伝子ノックアウト細胞については,段落0016?0017に,トランスジェニック有蹄動物細胞の作製方法として,「本発明はまた,プリオン核酸の一方又は両方のアレルに突然変異を有する有蹄動物細胞(例えばウシ細胞)の作製方法に関する。これらの細胞は,トランスジェニック有蹄動物(例えばウシプリオンノックアウト有蹄動物)の作出のためのドナー細胞として用いることができる。好ましくは,上記突然変異により,機能性プリオンタンパク質の量が低減する,及び/又はプリオン関連感染症若しくは疾患(例えばBSE)の発生が低減する。
従って,そのような一態様において,本発明は,トランスジェニック有蹄動物(例えばウシ)の作製方法に関する。この方法は,第1プリオン遺伝子ターゲティングベクターを,第1ベクターと有蹄動物細胞における内因性プリオン核酸の第1アレルとの間で相同組換えが起こるような条件下で有蹄動物細胞に導入し,それにより該細胞にヘミ接合性突然変異を導入する。好ましくは,第1ベクターは,細胞の内因性プリオン核酸の第1領域と実質的な配列同一性を有する第1相同性領域,ポジティブセレクションマーカー,及びプリオン核酸の第2領域と実質的な配列同一性を有する第2相同性領域を含む。好ましい実施形態において,一方の相同性領域は,他方の相同性領域よりも少なくとも1,2,3,4,5,6又は8キロベース長い。好ましくは,本方法はまた,第1ベクターを,第1ベクターと該細胞における内因性プリオン核酸の第2アレルとの間の相同組換えが可能な条件下で,該細胞に再導入し,それにより該細胞にホモ接合性突然変異を導入することを含む。他の実施形態において,本方法はまた,第1ベクターとは異なる抗生物質耐性遺伝子を有する第2プリオン遺伝子ターゲティングベクターを,第2ベクターと該細胞における内因性プリオン核酸の第2アレルとの間で相同組換えが起こるような条件下で,該細胞に導入し,それにより該細胞にホモ接合性突然変異を導入することを含む。好ましくは,第1及び/又は第2ベクターは,1mMスペルミジンの存在下で細胞に導入する。好ましい細胞には,ウシ胎仔線維芽細胞が含まれる。」と説明されている。
この「第1ベクターとは異なる抗生物質耐性遺伝子を有する第2プリオン遺伝子ターゲティングベクターを,第2ベクターと該細胞における内因性プリオン核酸の第2アレルとの間で相同組換えが起こるような条件下で,該細胞に導入し,それにより該細胞にホモ接合性突然変異を導入する」という方法は,引用例の39ページに記載される,「ターゲットされた細胞は,核ドナーとして体細胞核移植に使用された。改造された胚は,レシピエントの雌牛に現在移植されている。残るPrP対立遺伝子の不活性化を完成するために,上述されるように生成された50日齢のPrP+/-胎仔から細胞が集められ,選択マーカーとしてハイグロマイシンを使用していることを除き,同様のターゲッティング手順が利用される(参照,e.g.,ブラウンら,1997)。」という方法と同様の方法であり,本願補正発明1のウシは,引用例に記載された方法と同様の方法により得られるものに過ぎない。
そうすると,引用例の記載と本願の優先日の技術常識を利用すれば,当業者は容易にホモ接合の胎仔や生きたウシを製造できるものであり,そのようなウシは容易に発明できたものである。

(3)本願補正発明17について
ア 対比
本願補正発明17と引用発明2とを比較すると,両者は,「内因性プリオン遺伝子座の両方のアレルに非天然の突然変異を含むウシ細胞であって,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流に非天然の突然変異を含むウシ細胞」である点で一致しているが,以下の点で相違している。

相違点1:
本願補正発明17が,「突然変異が,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流への転写終結配列又はSTOPコドンの挿入を含み,該突然変異は機能性プリオンタンパク質の発現を低減するものである」のに対し,引用例に記載されるピューロマイシン-耐性遺伝子はSTOPコドンを有しているか明記されておらず,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流への転写終結配列又はSTOPコドンの挿入を含むことになるか明らかでなく,そのことにより機能性プリオンタンパク質の発現が低減されたかも明らかでない点。

イ 相違点1についての判断
前記(2)イ(ア)に述べたと同様の理由により,引用例に記載されたピューロマイシン-耐性遺伝子として,STOPコドンを有するものを用い,その結果として,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流への転写終結配列又はSTOPコドンの挿入を含むようにし,機能性プリオンタンパク質の発現を低減する程度のことは当業者が容易になしえることにすぎない。

(4)請求人の主張について
請求人は,審判請求書において,以下のように主張する。
(a)「引用文献1(合議体注:「引用例」に相当する。以下同様。)では、プリオンタンパク質(PrP)が普遍的に発現されるタンパク質であり、トランスジェニックウシにおいてBSEに抵抗性であるが機能的なプリオン遺伝子は維持する重要性があると記載されています(引用文献1、第8頁第14?15行)。従って、引用文献1からは、プリオンタンパク質の所与の機能に対する影響を回避するために可能な限り少ない変異を有する全長タンパク質を維持することが重要であることがわかります。これは、引用文献1の実施例4において、「インタクトで機能的なPrPのコピーとなるようにし、それが発現される組織において未知であるが正常なPrP遺伝子の機能が発揮されるようにした」という記載からも明らかです(第36頁第7?9行)。従って、引用文献1からは、当業者であっても本願発明のような切断型タンパク質が産生される変異を容易には想到しえないと思料いたします。」
(b)「本願発明によって、プリオン遺伝子座のエクソン3における最初のATGコドンの下流への転写終結配列又はSTOPコドンの挿入によって、プリオン遺伝子座の両方のアレルがノックアウトされた細胞コロニーを得ることができ、そしてそれを用いたウシ体細胞クローニングを行って、両側アレルがノックアウトされたウシ胎仔を得ることができました(本願明細書の表1)。このようにウシ胎仔まで得られた結果は、引用文献1?4には記載されていません。また、本願発明者は、参考資料1(Richt, J.A. et al., Nature Biote
chnology vol.25, no.1, pp.132-138, 2007)として提出いたします論文において、本願明細書に記載の方法に従って実際にプリオン遺伝子座ノックアウトウシの出生に成功したこと、また得られたウシがPrP -/-表現型を示す(すなわちプリオン遺伝子座の両方のアレルにおいて機能性プリオンタンパク質の発現がノックアウトされている)ことを報告しています(参考資料1、第132頁左欄第1?14行及び第136頁左欄第31?58行)。このように、本願発明の特徴によって、初めて機能性プリオンタンパク質の発現が低減されたウシ胎仔及びウシの作出に成功することができました。従って、本願発明の効果は、引用文献1?4の記載内容からは予測できず、かつ達成することのできない優れた効果といえます。」

(a)について
平成21年8月3日付けの拒絶理由通知で指摘された引用例の39ページには,上述したように,機能的野生型PrP遺伝子を欠くトランスジェニックウシとして,本願補正発明と同様のホモ接合のノックアウトのウシが説明されているのであり,引用例に,請求人が指摘する発明のみが記載されているわけではないから,請求人の主張を採用することはできない。
また,請求人の引用例1における,機能的なプリオン遺伝子を維持する重要性についての主張は,本願補正発明1のトランスジェニックウシの容易想到性についての主張であり,ウシ細胞についての主張ではないから,本願補正発明17については,なおさら採用できない。
(b)について
上記のように,本願補正発明1のウシは,引用例に記載された方法と同様の方法により得られたものであり,その効果は,引用例の記載から予期できる程度のものに過ぎない。
また,請求人の主張は,本願補正発明1のトランスジェニックウシについての主張であり,ウシ細胞については関係のない主張であるから,本願補正発明17については,なおさら採用できない。

(5)小括
以上のことから,本願補正発明1及び17は,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際,独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成22年4月5日の手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1及び18に係る発明(以下,「本願発明1」及び「本願発明18」という。)は,平成21年10月13日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び18に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
内因性プリオン遺伝子座の一方又は両方のアレルに非天然の突然変異を含むウシであって,
該突然変異が,プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流への転写終結配列又はSTOPコドンの挿入を含み,
該突然変異は機能性プリオンタンパク質の発現を低減するものである,上記ウシ。」
「【請求項18】
内因性プリオン遺伝子座の一方又は両方のアレルに非天然の突然変異を含むウシ細胞であって、
該突然変異が、プリオン遺伝子座のエキソン3における最初のATGコドンの下流への転写終結配列又はSTOPコドンの挿入を含み、
該突然変異は機能性プリオンタンパク質の発現を低減するものである、上記ウシ細胞。」

第4 当審の判断
本願発明1及び18は,前記「第2」において特許法第29条第2項について検討した本願補正発明1または17を,その態様として含むものである。
したがって,前記「第2 2.当審の判断」におけると同様の理由により,本願発明1及び18は,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願に係るその他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-01 
結審通知日 2012-11-06 
審決日 2012-11-19 
出願番号 特願2005-507127(P2005-507127)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
P 1 8・ 121- Z (C12N)
P 1 8・ 575- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮岡 真衣上條 肇  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 冨永 みどり
田中 晴絵
発明の名称 プリオンタンパク質活性が低減されたトランスジェニック有蹄動物及びその用途  
代理人 藤田 節  
代理人 平木 祐輔  

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