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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06T |
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管理番号 | 1268221 |
審判番号 | 不服2011-24937 |
総通号数 | 158 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-11-18 |
確定日 | 2013-01-04 |
事件の表示 | 特願2009- 7167「エッジ検出装置、エッジ検出方法およびエッジ検出プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月29日出願公開、特開2010-165194〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成21年1月16日の出願であって、平成23年4月19日付けの拒絶理由の通知に対し、平成23年6月8日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成23年9月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年11月18日に審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2.原査定の拒絶の理由 平成23年9月21日付けの拒絶査定の内容は次のとおりである。 『この出願については、平成23年4月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。 なお、意見書並びに手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 備考 ・・・(省略)・・・ したがって、請求項1-3記載の発明において、「エッジ検出に失敗したとき」とは具体的にどのような技術事項を意味しているのか、発明の詳細な説明を参照しても依然として明らかでなく、上記拒絶理由通知書に記載した理由1の「1.」に記載した理由を解消していない。』 平成23年4月19日付け拒絶理由通知の内容(理由1に関する部分のみ、一部省略)は次のとおりである。 『この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。 理 由 理由1 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 1.請求項に記載された「エッジ検出結果」とは、具体的にどのような技術事項を意味しているのか、発明の詳細な説明を参照しても明らかでない。 ・・・(省略)・・・ 』 第3.本願の請求項、明細書及び図面の記載 平成23年11月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載及び関連する明細書、図面の記載は次のとおりである。 1.「【請求項1】 動画像からのエッジ検出を補助する装置であって、 入力された動画像に対して、画像の外側から内側に向かってエッジ検出フィルタを連続走査し、フィルタ出力値が閾値を超える部分をエッジ探索開始点とし、その後ここまでのエッジ探索方向とは直交する方向に向かって同じエッジ検出フィルタを走査させることでエッジを検出するとともに、互いに異なる複数種類の画像成分を有したエッジを各々検出する複数のエッジ検出フィルタのうち、初期設定により定められたエッジ検出フィルタにより走査してエッジを検出するエッジ検出手段と、 前記エッジ検出手段のエッジ検出が失敗した場合に、前記エッジ検出フィルタの種類を切り替えるフィルタ切り替え手段とを備え、 前記エッジ検出手段は、前記複数のエッジ検出フィルタのうち初期設定の種類のエッジ検出フィルタによってNフレーム目(Nは正数)の画像に対してエッジ検出を行い、 前記フィルタ切り替え手段は、前記エッジ検出手段が初期設定の種類のエッジ検出フィルタによるNフレーム目の画像に対するエッジ検出に失敗したときに、前記エッジ検出フィルタの種類を切り替え、 前記エッジ検出手段は、前記切り替えられた種類のエッジ検出フィルタを用いてNフレーム目の画像に対して再度のエッジ検出を行い、前記Nフレーム目の画像に対するエッジ検出が成功した場合は、当該エッジ検出成功の種類のエッジ検出フィルタを優先して、N+1フレーム目の画像に対するエッジ検出を行い、前記Nフレーム目の画像に対する再度のエッジ検出が失敗した場合は、前記初期設定の種類のエッジ検出フィルタを優先してN+1フレーム目の画像に対するエッジ検出を行う、 ことを特徴とするエッジ検出装置。」 2.「【0030】 本実施形態例におけるエッジ検出方法としては、例えば微分フィルタを用い、特許文献1に記載の方法により、矩形領域を検出する場合を想定する。 【0031】 特許文献1では、画像の外側から内側に向かってエッジ検出フィルタを連続走査し、フィルタ出力値が閾値を超える部分をエッジ探索開始点とし、その後ここまでのエッジ探索方向とは直交する方向に向かって同じエッジ検出フィルタを走査させることでエッジを検出している。 【0032】 例えば、図3(a)の左辺からエッジ探索を行い黒のエッジを検出するためには、図3(c)に示す様な1×3マスで構成され、1,0,-1というフィルタ値を持つ微分フィルタを輝度値に対して適用し、フィルタの出力値がある閾値を超える必要がある。 【0033】 便宜上、図3(a)を白地黒矩形画像、図3(b)を黒地白矩形画像、図3(c)のフィルタを白黒フィルタ、図3(d)のフィルタを黒白フィルタと呼び、以下の実施例ではこの二種類のフィルタが用意されているものとする。 【実施例1】 【0034】 本実施例では、初期設定されたフィルタが、図3(d)の黒白フィルタであり、図3(a)の白地黒矩形画像が入力されたときに黒矩形画像を検出する場合について、図4とともに説明する。尚、図4はエッジ検出装置110の処理を図示しており、フィルタ切り替え装置120が行う処理は図示省略している。 【0035】 まずエッジ検出装置110が、入力画像に対し初期設定された黒白フィルタでエッジ検出を行う(ステップS11)。 【0036】 この時、黒白フィルタは白地黒矩形のエッジを検出できる極性ではないため、エッジを検出できない。エッジ検出できない場合(ステップS12の判定結果がNOの場合)、フィルタ切り替え装置120がフィルタを図3(c)の白黒フィルタに切り替える。 【0037】 そしてステップS13においてこの白黒フィルタで再度同一の画像に対してエッジ検出を行うと、エッジの極性が白地黒矩形を検出できる極性であるため、目的のエッジを検出することができ(ステップS14の判定結果がYESとなり)、白地黒矩形を検出することが出来る。 【0038】 上記のように、エッジ検出装置110がステップS11,S13のエッジ検出処理と、ステップS12,S14のエッジ検出成功か否かの判定処理を行い、フィルタ切り替え装置120がエッジ検出の不成功時に前記フィルタを切り替える処理を行っているので、最適なエッジの方向性や画像の成分を想定し、それに適したエッジ検出フィルタを設定しておかなくても、多様な入力画像へのエッジ検出に備えることができる。」 3.「【図3】 」 4.「【図4】 」 第4.当審の判断 請求項1において、「エッジ検出が失敗した場合」と記載されている。このときの「エッジ検出」とは、「エッジ検出手段」によってなされるエッジ検出であって、「入力された動画像に対して、画像の外側から内側に向かってエッジ検出フィルタを連続走査し、フィルタ出力値が閾値を超える部分をエッジ探索開始点とし、その後ここまでのエッジ探索方向とは直交する方向に向かって同じエッジ検出フィルタを走査させることでエッジを検出するとともに、互いに異なる複数種類の画像成分を有したエッジを各々検出する複数のエッジ検出フィルタのうち、初期設定により定められたエッジ検出フィルタにより走査してエッジを検出する」ことである。その検出が「失敗」するとは技術的にどのような事項を意味しているのか、すなわち、前記エッジ検出手段で検出した結果がどのようになった場合を失敗とするのか請求項1には定義がなく請求項1の記載のみでは不明である。 そこで、請求項1の「エッジ検出が失敗した場合」に関して、明細書および図面の記載を参酌して検討する。 【図3】の(a)?(d)には、「本発明のエッジ検出における説明図」として、「白地黒矩形画像」と「黒地矩形画像」、及び、「上記画像の左辺からエッジを検出する場合のフィルタの例」として、「白黒フィルタ」と「黒白フィルタ」が記載されている。 また、明細書の【0034】-【0036】には、「本実施例では、初期設定されたフィルタが、図3(d)の黒白フィルタであり、図3(a)の白地黒矩形画像が入力されたときに黒矩形画像を検出する場合について、図4とともに説明する。・・(中略)・・まずエッジ検出装置110が、入力画像に対し初期設定された黒白フィルタでエッジ検出を行う(ステップS11)。この時、黒白フィルタは白地黒矩形のエッジを検出できる極性ではないため、エッジを検出できない。エッジ検出できない場合(ステップS12の判定結果がNOの場合)、フィルタ切り替え装置120がフィルタを図3(c)の白黒フィルタに切り替える。」と記載されており、この説明の動作フロー図である【図4】のS11、S12には、「黒白フィルタでエッジ検出」→「エッジ検出成功」と記載され、その結果、YesとNoに分岐することが記載されている。 これらの記載から、明細書の実施例における、【図3】(a)の白地黒矩形画像に対し【図3】(d)の黒白フィルタでエッジ検出を行った時、黒白フィルタは白地黒矩形のエッジを検出できる極性ではないため、エッジを検出できない場合(ステップS12の判定結果がNOの場合)が、本願請求項1の「エッジ検出が失敗した場合」に対応する事項であることは理解できる。 明細書には、さらに、エッジ検出方法に関して、【0030】、【0031】に、「本実施形態例におけるエッジ検出方法としては、例えば微分フィルタを用い、特許文献1に記載の方法により、矩形領域を検出する場合を想定する。 特許文献1では、画像の外側から内側に向かってエッジ検出フィルタを連続走査し、フィルタ出力値が閾値を超える部分をエッジ探索開始点とし、その後ここまでのエッジ探索方向とは直交する方向に向かって同じエッジ検出フィルタを走査させることでエッジを検出している。」と記載されている(「画像の外側から内側に向かってエッジ検出フィルタを連続走査し、フィルタ出力値が閾値を超える部分をエッジ探索開始点とし、その後ここまでのエッジ探索方向とは直交する方向に向かって同じエッジ検出フィルタを走査させることでエッジを検出」については、上記したように請求項1にも記載されている)。 しかしながら、これらの記載からは、エッジ検出が実際にどのような行われるのかについて明確には理解できない。 「画像の外側から内側に向かってエッジ検出フィルタを連続走査し」との記載のみでは、エッジ検出フィルタが画像に対して実際にどのように走査されるのか特定できず、エッジ検出フィルタの走査の方法は不明である。 そうすると、明細書及び図面の記載を考慮しても、請求項1のエッジ検出手段における「入力された動画像に対して、画像の外側から内側に向かってエッジ検出フィルタを連続走査し、」は、如何なる走査がなされるのか不明であり、したがって、上記走査を特定事項とする請求項1の「入力された動画像に対して、画像の外側から内側に向かってエッジ検出フィルタを連続走査し、フィルタ出力値が閾値を超える部分をエッジ探索開始点とし、その後ここまでのエッジ探索方向とは直交する方向に向かって同じエッジ検出フィルタを走査させることでエッジを検出するとともに、互いに異なる複数種類の画像成分を有したエッジを各々検出する複数のエッジ検出フィルタのうち、初期設定により定められたエッジ検出フィルタにより走査してエッジを検出するエッジ検出手段」は、どのようにエッジを検出しているのか不明確といわざるをえない。 エッジ検出手段がどのようにエッジを検出しているのか、エッジ検出の方法自体が不明確であるから、エッジ検出ができない場合とはどのようなことを意味しているのかも理解できず、結局、請求項1における、前記エッジ検出手段の「エッジ検出が失敗した場合」とはどのような技術事項を意味しているのかは明確でない。 請求項1に係る発明は、「前記エッジ検出手段のエッジ検出が失敗した場合に、前記エッジ検出フィルタの種類を切り替えるフィルタ切り替え手段」を備えるエッジ検出装置であって、このフィルタ切り替え手段でエッジ検出フィルタの種類を切り替える「エッジ検出が失敗した場合」の意味が明確でないから、請求項1に係る発明は明確であるとはいえない。 この点について、請求人は、本願発明のエッジ検出処理は、特開2007-52670号公報(本願明細書において、先行技術文献として番号が記載されるとともに、上記したように、特許文献1として【0031】に説明されているもの)の技術を用いてエッジの検出を行うものであり、本願発明の「エッジ検出に失敗した場合」は、該公報の技術を用いてエッジの検出に失敗したという意味である旨主張しているが、特開2007-52670号公報の記載内容については、本願明細書においては、その番号と【0031】の記載が全てであり、この記載から請求項1に係る発明が明確であるとはいえないのは上記したとおりであるから、請求人のこの主張は当を得ないものである。 第5.むすび 以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-11-08 |
結審通知日 | 2012-11-09 |
審決日 | 2012-11-20 |
出願番号 | 特願2009-7167(P2009-7167) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(G06T)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松永 稔 |
特許庁審判長 |
藤内 光武 |
特許庁審判官 |
千葉 輝久 松尾 淳一 |
発明の名称 | エッジ検出装置、エッジ検出方法およびエッジ検出プログラム |
代理人 | 豊田 義元 |
代理人 | 本山 泰 |