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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02M |
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管理番号 | 1268232 |
審判番号 | 不服2012-1135 |
総通号数 | 158 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-01-20 |
確定日 | 2013-01-04 |
事件の表示 | 特願2006-180821「電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月17日出願公開、特開2008- 11665〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成18年6月30日の出願であって、平成23年8月5日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成23年8月9日)、これに対し、平成23年10月7日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年10月21日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成23年10月25日)、これに対し、平成24年1月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に手続補正書が提出されたものである。 2.平成24年1月20日付の手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成24年1月20日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)本件補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「電源から供給される直流電流を第1のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第1端子対に供給する第1変換部と、 前記電源から前記第1変換部と並列に供給される直流電流を第2のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第2端子対に供給する第2変換部と、 前記第1端子対に接続された1次巻線を備えた第1トランス部と、 前記第2端子対に接続された1次巻線を備えた第2トランス部 とを具備し、 前記第1トランス部の2次巻線と前記第2トランス部の2次巻線とは直列に接続されて下段に出力電流を出力し、 更に、前記電源から前記電力変換装置に供給される電流を検出し、検出された前記電流を電流指令値に近づけるように前記第1変換部と前記第2変換部とのスイッチング動作を制御する制御部を具備する 更に、前記電源から前記電力変換装置に供給される電流を検出し、検出された前記電流を電流指令値に近づけるように前記第1変換部と前記第2変換部とのスイッチング動作を制御することにより、前記電力変換装置の入力側の電流を制御する制御部を具備する 電力変換装置。」 と補正された。 なお、 「更に、前記電源から前記電力変換装置に供給される電流を検出し、検出された前記電流を電流指令値に近づけるように前記第1変換部と前記第2変換部とのスイッチング動作を制御する制御部を具備する 更に、前記電源から前記電力変換装置に供給される電流を検出し、検出された前記電流を電流指令値に近づけるように前記第1変換部と前記第2変換部とのスイッチング動作を制御することにより、前記電力変換装置の入力側の電流を制御する制御部を具備する」は、 「更に、前記電源から前記電力変換装置に供給される電流を検出し、検出された前記電流を電流指令値に近づけるように前記第1変換部と前記第2変換部とのスイッチング動作を制御することにより、前記電力変換装置の入力側の電流を制御する制御部を具備する」の誤記と認める。 また、平成24年9月11日付FAXに基づけば、「前記電力変換装置」は請求項末尾の「電力変換装置」の意味であり、「前記電力変換装置に供給される電流」は図1にあるように、並列の第1及び第2変換部に分かれる前の電流を意味すると解する。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「制御部」を実質的に「電力変換装置の入力側の電流を制御する」と限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-73883号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 1-a「第1のPWM変換器の交流出力側に第1の変圧器の1次巻線(注:「2次巻線」は誤記。以下同様。)を接続し、第2のPWM変換器の交流出力側に第2の変圧器の1次巻線を接続し、第1の変圧器と第2の変圧器の2次巻線(注:「1次巻線」は誤記。以下同様。)を直列に接続される構成のPWM変換装置において、第1のPWM変換器の電流制御は、第1のPWM変換器と第2のPWM変換器の出力電流の平均値をフィードバックとした電流制御と、第1のPWM変換器の出力電流をフィードバック量とした電流制御の2重ループ構成とし、第2のPWM変換器の電流制御は第1のPWM変換器と第2のPWM変換器の出力電流の平均値をフィードバック量としたことを特徴とするPWM変換装置の制御方法。」(特許請求の範囲) 1-b「PWM変換装置の制御方法として従来、搬送波によるリプル電流を減少するために第2図に示すように直流電源6(注:「16」は誤記)をそれぞれ入力とし且つ、第1のPWM変換器1Aに接続された第1の変圧器4Aと第2のPWM変換器1Bに接続された第2の変圧器4Bの2次巻線を直列接続した構成とし、第1のPWM変換器1Aと第2のPWM変換器1BをPWM制御するための搬送波CAR1とCAR2の位相を90°ずらしている。第1のPWM変換器1Aと第2のPWM変換器1Bの出力電流i_(1)、i_(2)を各々電流検出器5A、5Bにて検出し、その平均値i_(1)+i_(2)/2をフィードバック量として電流基準i^(※)とつき合わせる。その差分を電流制御回路8に入力して増幅後、外乱と加えられ、その和である電圧基準e^(※)と搬送波CAR1とがコンパレータ9Aによって比較され、その出力が第1のPWM変換器1Aのトランジスタ2をON、OFF制御する。・・・第2のPWM変換器1Bについても同様に搬送波CAR2と電圧基準e^(※)がコンパレータ9Bによって比較されその出力が第2のPWM変換器1Bのトランジスタ2を制御する。」(第1頁右下欄4行?第2頁左上欄8行) 1-c「個別の電流制御回路8Bを追加したことにより、回路定数の違いによってPWM変換器1Aと1Bの出力電流i_(1)、i_(2)に不平衡が生じたとしても、電流i_(1)は基準電流i^(※)になるように制御される。一方PWM変換器1Bの出力電流i_(2)は、i_(1)+i_(2)/2になるように制御されるが、i_(1)が基準i^(※)になるように制御されるため、等価的にi_(2)も基準i^(※)になるように制御される。よって、i_(1)とi_(2)は共に基準i^(※)に等しくなるように制御される。」(第2頁左下欄4?13行) 上記記載及び図面を参照すると、直流電源に対し第1及び第2のPWM変換器は並列に接続され、第1のPWM変換器は直流電源を第1のフルブリッジ回路によりPWM制御して第1の交流出力側に供給し、第2のPWM変換器は直流電源を第2のフルブリッジ回路によりPWM制御して第2の交流出力側に供給している。 上記記載及び図面を参照すると、直列に接続された第1の変圧器と第2の変圧器の2次巻線から出力電流を出力する。 上記記載事項からみて、引用例1には、 「直流電源を第1のフルブリッジ回路によりPWM制御して第1の交流出力側に供給する第1のPWM変換器と、 前記直流電源に対し前記第1のPWM変換器と並列に接続される第2のフルブリッジ回路によりPWM制御して第2の交流出力側に供給する第2のPWM変換器と、 前記第1の交流出力側に接続された1次巻線を備えた第1の変圧器と、 前記第2の交流出力側に接続された1次巻線を備えた第2の変圧器 とを具備し、 前記第1の変圧器の2次巻線と前記第2の変圧器の2次巻線とは直列に接続されて出力電流を出力し、 更に、前記直流電源を入力とし前記第1のPWM変換器と前記第2のPWM変換器の出力電流i_(1)、i_(2)を各々電流検出器にて検出し、検出された前記出力電流i_(1)、i_(2)を電流基準になるように前記第1のPWM変換器と前記第2のPWM変換器とのトランジスタを制御することにより、前記出力電流i_(1)、i_(2)を制御する PWM変換装置。」 との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「直流電源」、「第1の交流出力側」、「第1のPWM変換器」、「第2の交流出力側」、「第2のPWM変換器」、「第1の変圧器」、「第2の変圧器」、「出力電流を出力」、「電流基準」、「PWM変換装置」は、それぞれ本願補正発明の「電源」、「第1端子対」、「第1変換部」、「第2端子対」、「第2変換部」、「第1トランス部」、「第2トランス部」、「下段に出力電流を出力」、「電流指令値」、「電力変換装置」に相当する。 その機能をも考慮すると、引用発明の「直流電源を第1のフルブリッジ回路によりPWM制御して第1の交流出力側に供給する第1のPWM変換器」は、本願補正発明の「電源から供給される直流電流を第1のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第1端子対に供給する第1変換部」に相当し、引用発明の「直流電源に対し第1のPWM変換器と並列に接続される第2のフルブリッジ回路によりPWM制御して第2の交流出力側に供給する第2のPWM変換器」は、本願補正発明の「電源から第1変換部と並列に供給される直流電流を第2のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第2端子対に供給する第2変換部」に相当する。 引用発明の「直流電源を入力とし第1のPWM変換器と第2のPWM変換器の出力電流i_(1)、i_(2)を各々電流検出器にて検出し、検出された前記出力電流i_(1)、i_(2)を電流基準になるように前記第1のPWM変換器と前記第2のPWM変換器とのトランジスタを制御することにより、前記出力電流i_(1)、i_(2)を制御する」と、本願補正発明の「電源から電力変換装置に供給される電流を検出し、検出された前記電流を電流指令値に近づけるように第1変換部と第2変換部とのスイッチング動作を制御することにより、前記電力変換装置の入力側の電流を制御する制御部を具備する」は、「電源からの電流を検出し、検出された前記電流を電流指令値に近づけるように第1変換部と第2変換部とのスイッチング動作を制御することにより、前記電流を制御する制御部を具備する」の概念で共通する。 したがって、両者は 「電源から供給される直流電流を第1のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第1端子対に供給する第1変換部と、 前記電源から前記第1変換部と並列に供給される直流電流を第2のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第2端子対に供給する第2変換部と、 前記第1端子対に接続された1次巻線を備えた第1トランス部と、 前記第2端子対に接続された1次巻線を備えた第2トランス部 とを具備し、 前記第1トランス部の2次巻線と前記第2トランス部の2次巻線とは直列に接続されて下段に出力電流を出力し、 更に、前記電源からの電流を検出し、検出された前記電流を電流指令値に近づけるように前記第1変換部と前記第2変換部とのスイッチング動作を制御することにより、前記電流を制御する制御部を具備する 電力変換装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点〕 電源からの電流を検出し、検出された前記電流を電流指令値に近づけるように第1変換部と第2変換部とのスイッチング動作を制御することにより、前記電流を制御する制御部を具備する点に関し、本願補正発明は、電源から電力変換装置に供給される電流を検出し、検出された前記電流を電流指令値に近づけるように第1変換部と第2変換部とのスイッチング動作を制御することにより、前記電力変換装置の入力側の電流を制御する制御部を具備するのに対し、引用発明は、直流電源を入力とし第1のPWM変換器と第2のPWM変換器の出力電流i_(1)、i_(2)を各々電流検出器にて検出し、検出された前記出力電流i_(1)、i_(2)を電流基準になるように前記第1のPWM変換器と前記第2のPWM変換器とのトランジスタを制御することにより、前記出力電流i_(1)、i_(2)を制御する点。 (4)判断 本願補正発明も引用発明も、電源から出力される電流は、第1トランス部の一次巻線の電流と第2トランス部の一次巻線の電流との合計に等しい。また、DC/DCコンバータの一次側において、どの部分の電流を検出して制御するかは必要に応じて適宜選択し得るものであり、第1及び第2トランス部の一次巻線の電流を検出して制御すれば、各トランス部に流れる電流を各々正確に制御できるが部品点数が増え、又、電源から出力される電流を検出して制御すれば、各トランス部に流れる電流を正確に制御できないが電流検出器等の簡略化が行える。しかも、電力変換器の手前即ち電源と電力変換器の間に電流検出器を設けて電力変換器を制御することは、例えば特開昭56-112073号公報にもみられるように周知の事項である。 そうであれば、引用発明においても、電流検出器を電源と電力変換装置の間に設け、前記電源から前記電力変換装置に供給される電流を検出し、検出された前記電流を電流指令値に近づけるように第1変換部と第2変換部とのスイッチング動作を制御することにより、前記電力変換装置の入力側の電流を制御する制御部を具備することは当業者であれば容易に考えられることと認められる。 なお、審判請求人は、平成24年8月14日付回答書において、 『本願発明は、燃料電池や太陽電池などの低電圧大容量の電源の電力を系統に連系する系統連係システムにおいて、入力電流(トランス1次側)を制御することを目的とする。』 と主張するが、請求項1には、電源と記載はあっても、当該電源を燃料電池や太陽電池とは特定しておらず、且つ、系統に連系することも特定されていないから、請求人の主張は採用できない。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び上記周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年10月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「電源から供給される直流電流を第1のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第1端子対に供給する第1変換部と、 前記電源から前記第1変換部と並列に供給される直流電流を第2のフルブリッジ回路により高周波電流に変換して第2端子対に供給する第2変換部と、 前記第1端子対に接続された1次巻線を備えた第1トランス部と、 前記第2端子対に接続された1次巻線を備えた第2トランス部 とを具備し、 前記第1トランス部の2次巻線と前記第2トランス部の2次巻線とは直列に接続されて下段に出力電流を出力し、 更に、前記電源から前記電力変換装置に供給される電流を検出し、検出された前記電流を電流指令値に近づけるように前記第1変換部と前記第2変換部とのスイッチング動作を制御する制御部を具備する 電力変換装置。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び、その記載事項は、上記「2.[理由](2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、本願補正発明から、制御部に関し「電力変換装置の入力側の電流を制御する」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.[理由](4)」に記載したとおり、引用発明及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-11-07 |
結審通知日 | 2012-11-08 |
審決日 | 2012-11-21 |
出願番号 | 特願2006-180821(P2006-180821) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02M)
P 1 8・ 575- Z (H02M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松本 泰典 |
特許庁審判長 |
堀川 一郎 |
特許庁審判官 |
大河原 裕 槙原 進 |
発明の名称 | 電力変換装置 |
代理人 | 工藤 実 |
代理人 | 工藤 実 |