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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1268239
審判番号 不服2012-4701  
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-12 
確定日 2013-01-04 
事件の表示 特願2007-121659「燃料電池用マフラ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月11日出願公開,特開2007-265999〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成14年7月4日に出願した特願2002-195411号の一部を平成19年5月2日に新たな特許出願としたものであって,平成23年12月9日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成24年3月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.平成24年3月12日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項1は,
「燃料電池からの排気系統に設けられる燃料電池用マフラであって,
排気管と,
前記排気管を覆うマフラシェルとを備え,
少なくとも前記マフラシェルは樹脂製である燃料電池用マフラ。」と補正された。

上記補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「排気管またはマフラシェルの少なくとも一方が樹脂製である」を,「少なくともマフラシェルは樹脂製である」に限定するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-315840号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,ハイブリット車両用の固体重合体電解質型の燃料電池の供給装置に関する。」

・「【0024】負極出口は,一次冷却回路を加圧するためのライン31に接続され,加圧空気溜めとそれを通って,負極排気のための排気ライン134に供給される。タンク36はオーバーフロー37と最低レベル指示計38を有し,相当する信号を装置15に伝達する。本質的に大気窒素及び残留酸素を含む負極排気を運搬する排気ライン134は,オンオフ弁39と圧力調整弁139によってそれぞれ制御される二本のアームによって構成される平行装置を通って,大気に開放される排気消音器40へと接続される。」

・図1には,燃料電池からの排気ライン134に排気消音器40が設けられた態様が示されている。

上記記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には,次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「燃料電池からの排気ライン134に設けられる燃料電池用の排気消音器40。」

同じく拒絶の理由に引用された特開平3-149309号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「2.特許請求の範囲
内燃機関から発生する排気ガスを,マフラー本体に付随する入口管から出口管へ通過させて,内燃機関の爆発にともなう排気騒音を消音させる消音器において,該マフラー本体がマツト状の繊維補強材および熱可塑性樹脂から構成されていることを特徴とする消音器。」

・「〔産業上の利用分野〕
本発明は自動車,農業用機械,船舶などの内燃機関に装着されて,該内燃機関の発生する排気ガスを通過させながら排気音を減衰させる消音器,特に軽自動車,はん用二輪車,船外機などの排気量の小さい内燃機関用に好適な消音器に関するものである。」(第1頁左下欄第12?18行)

・「したがつて,本発明の目的はマフラ一本体に耐熱性および耐衝撃性に優れたプラスチツクを使用して,大容量化,軽量化された消音器を提供することにある。」(第2頁左上欄第6?9行)

・「実施例1
繊維長50mmのガラスチヨツプドストランドマツト40重量%とポリエチレンテレフタレート60重量%とからなる成形材料を所定の大きさに裁断し,300℃に保った加熱炉の中に入れ,ボリエチレンテレフタレートを充分溶融せしめたのち溶融した成形材料をすみやかに160℃に保たれたマフラー本体の金型へ供給し,スタンピング成形を行うことにより重さが220g,肉厚2mmの二輪車用のマフラー本体を得た。」(第3頁左上欄第16行?右上欄第5行)

・「実施例3
実施例1で得られたマフラー本体lに入口管2,出口管3を取り付けて第1図に示す消音器を製作した。この消音器を排気量が125ccの二輪車に装着して,24時間連続運転したが,マフラー本体の外観の変化は全く認められなかつた。また,従来の金属製の消音器に比べて,騒音が低減していることが確認された。
〔発明の効果〕
以上,詳細に説明したように,本発明の消音器は,マフラー本体にマツト状の繊維補強材および熱可塑性樹脂からなるスタンピング成形材料を用いていることから,耐熱性および耐衝撃性に優れており,かつマフラー本体の重量を軽減することができる。また消音器自体が極めて軽量化されることから,二輪車,四輪車などの自動車等に搭載する際に有利であり,マフラー内部の構造を簡略化することができ,コストの低減化にも寄与することができる。」(第3頁右下欄第5行?第4頁左上欄第3行)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると,その作用・機能からみて,後者における「排気ライン134」は前者における「排気系統」に相当し,後者の「燃料電池用の排気消音器40」は前者の「燃料電池用マフラ」に相当している。

したがって,両者は,
「燃料電池からの排気系統に設けられる燃料電池用マフラ。」である点で一致し,以下の点で相違する。
[相違点]
燃料電池用マフラに関し,本願補正発明では,「排気管と,排気管を覆うマフラシェルとを備え,少なくともマフラシェルは樹脂製である」のに対し,引用発明では,そのような特定はなされていない点。

(4)判断
そこで,上記相違点につき検討する。
引用例2にも記載されるように,車両等に設けるマフラを,排気管(「入口管2」が相当)と,排気管を覆うマフラシェル(「入口管2を取り付けたマフラー本体1」が相当)とから構成すること,及び軽量化等のためにマフラシェルを樹脂製とする(「マフラー本体をマット状の繊維補強材および熱可塑性樹脂から構成する」ことにより,マフラー本体の重量を軽減する態様が相当)は,周知技術である。
また,排気管を覆うマフラシェルを軽量化等のために樹脂製とする点は,引用例2の外にも,例えば,実公平7-16019号公報(排気管1及び樹脂製消音ケース5を参照),実願平5-10435号(実開平6-69313号)のCD-ROM(排気管1及び樹脂製サイレンサー4を参照),特開昭60-261917号公報(成形吸音材から構成された消音器1を参照)等にも開示されているので参照されたい。
そして,一般に,車両等に搭載される部材の軽量化は普通に求められる課題であり,(車両等に用いられる)引用発明においても,燃料電池の排気系統を構成する部材の軽量化は内在する課題といえるから,かかる課題の下,マフラの軽量化を図るために上記周知技術を適用して,相違点に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
なお,請求人は,回答書において,いずれの引用例にも,本願発明の「燃料電池用のマフラに固有の課題である水分の凝縮」という課題が開示されておらず,引用発明に引用例2を組み合わせる動機付けがない旨を主張する。
しかし,引用発明と引用例2に開示された周知技術とは,上記のとおりマフラの軽量化という課題の点で共通するものであるから,これらを組み合わせる動機付けがないとはいえない。
また,燃料電池の排気ガスに多量の水分が含まれ,この水分がマフラー等に障害を発生させることは,例えば,特開2002-143617号公報にも記載されるように,普通に知られた事項に過ぎない。
そして,本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も,引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって,本願補正発明は,引用発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,平成23年4月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「燃料電池からの排気系統に設けられる燃料電池用マフラであって,
排気管と,
前記排気管を覆うマフラシェルとを備え,
前記排気管またはマフラシェルの少なくとも一方が樹脂製である燃料電池用マフラ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及び,その記載事項は,前記「2.[理由](2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記「2.[理由](1)」で検討した本願補正発明における,燃料電池用マフラの「少なくともマフラシェルは樹脂製である」との限定した態様から「排気管またはマフラシェルの少なくとも一方が樹脂製である」態様へと構成要件の一部を拡張したものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「2.[理由](3)及び(4)」に記載したとおり,引用発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び上記周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-10-31 
結審通知日 2012-11-06 
審決日 2012-11-19 
出願番号 特願2007-121659(P2007-121659)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
P 1 8・ 575- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原 賢一  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 槙原 進
藤井 昇
発明の名称 燃料電池用マフラ  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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