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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B21B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21B
管理番号 1268557
審判番号 不服2011-12058  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-07 
確定日 2012-08-24 
事件の表示 特願2010-534699「マンドレルミル、および継目無管の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月 7日国際公開、WO2011/039941〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2010年 9月 1日(特許法第41条に基づく優先権主張平成21年 9月29日)を国際出願日とする出願であって、平成23年2月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年 6月 7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。


2 本願発明
本願の各請求項に係る発明は、平成23年 6月 7日付け(受付日)手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
3個の孔型ロールを備えた圧延スタンドを複数備えたマンドレルミルを用いて管材を延伸圧延する際に、
前記3個の孔型ロールが圧延面によって孔型を構成し、
前記孔型ロールの溝底の直径をD_(R)、前記孔型の中心から前記孔型ロールの溝底までの距離をD_(C)/2とし、ロール径比をD_(R)/D_(C)で定義した場合に、
前記ロール径比D_(R)/D_(C)を3.7以下に設定することにより、オーバーフィルの発生を抑制することを特徴とする継目無管の製造方法。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

なお、上記特許請求の範囲の補正は、審判請求人が主張するように、平成23年 6月 7日付け(受付日)手続補正書により補正される前の請求項3に限定したものであり、請求項1、2の規定ぶりに修正があるものの、実質的にその内容を変更するものでも無いことから、独立特許要件についての判断は行わない。

3 原査定の拒絶の理由と引用刊行物及びその摘記事項
(1)原査定の拒絶の理由
拒絶理由通知書において「引用文献1の図2(b)には、3つの孔型ロールがそれぞれ配設された複数の圧延スタンドを備えるマンドレルミルであって、ロール径比D_(R)/D_(C)が本願を満足するグラフのプロットが開示されている(請求項2,図2,【0023】参照)。」と指摘し、拒絶査定において「引用文献1の図2(b)にも本願発明を満足するロール径比D_(R)/D_(C)がプロットされているから、引用文献1に記載のものについても、オーバーフィルの発生を抑制するものと認められる。また、上記補正は、マンドレルミルによる機能・効果を特定するものの、マンドレルミルの構造自体に新たな限定を加えるものではないから、引用文献1に記載の発明との相違点とはなり得ない。」と付記して、理由1(この出願の下記の請求項に係る発明は、・・・特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。)、理由2(この出願の下記の請求項に係る発明は、・・・特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。)によって、拒絶をすべきものであるとした。

(2)原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の優先権主張の日前に公開された特開2008-296250号公報(以下「刊行物1」という)には、「マンドレルミル及び継目無管の製造方法」(発明の名称)に係る発明に関し、図面と共に次の事項が記載されている。

(刊ア)「特許請求の範囲
・・・略・・・
【請求項2】
3つの孔型ロールがそれぞれ配設された複数の圧延スタンドを備えるマンドレルミルであって、
第1圧延スタンド及び第2圧延スタンドのロール径比が2.8以上に設定されていることを特徴とするマンドレルミル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマンドレルミルによって管を延伸圧延する工程を含むことを特徴とする継目無管の製造方法。」

(刊イ)「【0001】
本発明は、マンドレルミル及びこれを用いた継目無管の製造方法に関し、特に管の延伸比を高めることができると同時に穴あき欠陥の発生を抑止可能なマンドレルミル及びこれを用いた継目無管の製造方法に関する。」

(刊ウ)「【0018】
<第2実施形態>
図2(a)は、本発明の第2実施形態に係る3ロール式のマンドレルミルを構成する圧延スタンドの概略構成を示す縦断面図である。図2(a)に示すように、本実施形態に係るマンドレルミルは、3つの孔型ロールR21、R22、R23が配設された複数の圧延スタンドを備える。そして、第1圧延スタンド及び第2圧延スタンドのロール径比D_(R)/D_(C)が2.8以上に設定されていることを特徴とする。
【0019】
すなわち、図2(a)に示すように、第1圧延スタンドに配置された各孔型ロールR21?R23の溝底Bの最小ロール径をD_(R)、各孔型ロールR21?R23の溝底Bと孔型中心(被圧延材である管のパスライン中心)Oとの距離をD_(C)/2としたときに、D_(R)/D_(C)で表されるロール径比が2.8以上に設定されている。第2圧延スタンドについても同様である。なお、他の圧延スタンド(例えば、本実施形態に係るマンドレルミルが合計5基の圧延スタンドを備える場合には、第3圧延スタンド?第5圧延スタンド)については、上記のロール径比に設定する必要はなく、従来より一般的に用いられているロール径比(例えば、3以下の値)に設定することが可能である。以下、図2(b)を参照しつつ、第1圧延スタンド及び第2圧延スタンドのロール径比D_(R)/D_(C)を2.8以上に設定する理由について説明する。
【0020】
図2(b)は、本実施形態に係るマンドレルミルの第1圧延スタンド及び第2圧延スタンドでの管の肉厚圧下率及びロール径比を種々の値に設定して延伸圧延を行ったときに、管に穴あき欠陥が発生しなかったロール径比の下限値をプロットしたグラフである。換言すれば、図2(b)に示すグラフは、図2(b)に示す近似直線Lよりも下方の領域で肉厚圧下率及びロール径比を設定すれば管に穴あき欠陥が発生する一方、近似直線Lよりも上方の領域で肉厚圧下率及びロール径比を設定すれば管に穴あき欠陥が発生しなかったことを意味する。なお、図2(b)の横軸である肉厚圧下率は、前述した第1実施形態と同様に、前述した式(1)で定義される値である。
【0021】
図2(b)から明らかなように、肉厚圧下率=0.75のとき、ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8以上に設定すれば、穴あき欠陥の発生を抑止することが可能である。すなわち、ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8以上に設定すれば、第1圧延スタンド及び第2圧延スタンドでの管の延伸比を4に(従って、マンドレルミル全体での管の延伸比を従来よりも大きな4以上の値に)高めることができると同時に、穴あき欠陥の発生を抑止可能である。
【0022】
以上に説明した理由により、本実施形態に係るマンドレルミルの第1圧延スタンド及び第2圧延スタンドのロール径比D_(R)/D_(C)は2.8以上に設定される。これにより、本実施形態に係るマンドレルミルによれば、管の延伸比を高めることができると同時に穴あき欠陥の発生を抑止可能である。なお、ロール径比D_(R)/D_(C)を大きくする(ロール径D_(R)を大きくする)と、延伸圧延中の管と孔型ロールR11、R12との接触長さ(管の軸方向に沿った長さ)が長くなる。このため、延伸比(肉厚圧下率)を高く設定したとしても、延伸圧延の過程において、管材の流れ(メタルフロー)が孔型ロールR11、R12のフランジ側に十分に伝わる結果、穴あき欠陥の発生を抑止できるのだと考えられる。
【0023】
なお、以上に説明した第1実施形態及び第2実施形態に係るマンドレルミルにおいて、第1圧延スタンド及び第2圧延スタンドのロール径比D_(R)/D_(C)を過度に大きく設定し過ぎる(ロール径D_(R)を大きく設定し過ぎる)と、大径の孔型ロールが必要となるために設備コストが増大する。また、圧延スタンド間の距離(第1圧延スタンド?第2圧延スタンド間の距離、及び、第2圧延スタンド?第3圧延スタンド間の距離)が長くなるため、管端の非定常部(孔型ロールによって両端が拘束されない状態で延伸圧延される管端の部位)が長くなり、管の品質が低下する虞もある。さらに、圧延スタンド間の距離が長くなるに伴い、長尺のマンドレルバーが必要となるために設備コストが増大する。以上のような弊害を防止するには、第1圧延スタンド及び第2圧延スタンドのロール径比D_(R)/D_(C)をできるだけ下限値に近い値に設定することが好ましい。」


4 当審の判断
(1)刊行物1に記載の発明
上記摘記事項(刊ア)?(刊ウ)を整理すると、刊行物1には、
「3つの孔型ロールがそれぞれ配設された複数の圧延スタンドを備えたマンドレルミルによって管を延伸圧延する際に、
第1圧延スタンド及び第2圧延スタンドに配置された各孔型ロールは、
前記孔型ロールの溝底の最小ロール径をD_(R)、前記孔型ロールの溝底と孔型中心との距離をD_(C)/2とし、ロール径比をD_(R)/D_(C)で定義した場合に、
前記ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8以上に設定した継目無管の製造方法。」
に関する発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。

(2)対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると
ア 刊行物1発明の「3つの孔型ロール」、「管」及び「溝底の最小ロール径」は、それぞれ本願発明の「3個の孔型ロール」、「管材」及び「溝底の直径」に相当する。
イ 孔型ロールを用いるマンドレルミルにおいては、孔型ロールの溝を向かい合わせることで、管の圧延面を形成するのが通常であり、刊行物1発明は、3つの孔型ロールによって、管を延伸圧延するマンドレルミルであり、加えて、刊行物1の図2には、3つの孔型ロールの溝を向かい合わせることによって、管状の圧延面を形成していることが看取できるから、刊行物1発明は、3つの孔型ロールが当該圧延面によって管を延伸させるための孔型を構成していることは明らかである。
ウ 刊行物1発明のロール径比は「2.8以上」である。そして、刊行物1の【0021】には、「図2(b)から明らかなように、肉厚圧下率=0.75のとき、ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8以上に設定すれば、穴あき欠陥の発生を抑止することが可能である。」と説明されているように、ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8以上の何れかの値に設定しさえすればその効果を奏する製造方法であるから、刊行物1発明は、「ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8」に設定して、「穴あき欠陥の発生を抑止する」との効果を奏することも含まれており、これは、「ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8」として、継目無管を製造する方法であり、ロール径比D_(R)/D_(C)に関して両発明は、2.8である点で一致しているものである。また、上記の点から、刊行物1発明は、ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8から3.7の範囲の何れかの値で継目無管を製造する方法も含んでおり、この数値範囲は、本願発明の数値範囲「3.7以下」に含まれるから、ロール径比に関して両発明はこの数値範囲においても一致する。

そうすると両発明は、
「3個の孔型ロールを備えた圧延スタンドを複数備えたマンドレルミルを用いて管材を延伸圧延する際に、
前記3個の孔型ロールが圧延面によって孔型を構成し、
前記孔型ロールの溝底の直径をD_(R)、前記孔型の中心から前記孔型ロールの溝底までの距離をD_(C)/2とし、ロール径比をD_(R)/D_(C)で定義した場合に、
前記ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8と設定するか或いは2.8以上3.7以下に設定する継目無管の製造方法。」
の点で一致し、以下の点で一応相違する。

一応の相違点:本願発明では、「ロール径比D_(R)/D_(C)を3.7以下に設定することにより、オーバーフィルの発生を抑制する」のに対して、刊行物1発明では、この点が特定されていない点

(3)一応の相違点についての判断
刊行物1発明においては、「ロール径比D_(R)/D_(C)が2.8以上に設定」されており、これは、ロール径比D_(R)/D_(C)が2.8以上の何れかの値に設定することであり、ロール径比D_(R)/D_(C)を3.7以下とする設定を排除するものではない。そして、上記「(2)ウ」で指摘したように、「ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8」に設定しさえすれば、「穴あき欠陥の発生を抑止する」との効果を奏するものであるから、ロール径比D_(R)/D_(C)を「2.8」或いは「2.8以上3.7以下に設定」して、継目無管の製造を行うことを含むものである。
そして、本願発明と刊行物1発明とが「ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8と設定するか或いは2.8以上3.7以下に設定」して継目無管を製造する点において一致していることは、上記「(2)対比」で検討したとおりである。
一方、本願発明は、その請求項1の発明特定事項をみると、「ロール径比D_(R)/D_(C)を3.7以下に設定することにより、オーバーフィルの発生を抑制する」ものであり、その他の制御パラメータについては特定されておらず、単に「ロール径比D_(R)/D_(C)を3.7以下に設定」しさえすれば、「オーバーフィルの発生を抑制する」としたものである。
したがって、本願発明において「オーバーフィルの発生を抑制する」ことは、「ロール径比D_(R)/D_(C)を3.7以下に設定」して継目無管を製造する際に生じる付随的な効果にすぎず、「オーバーフィルの発生を抑制する」こと自体は、継目無管の製造方法自体の構成とはならない。
加えて、本願発明は、「ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8未満」で継目無管を製造する事のみに限定されるものでもない。
してみると、上記のように、刊行物1発明は、「ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8と設定するか或いは2.8以上3.7以下に設定」する点で、本願発明と一致しているのであるから、一応の相違点とした上記の点については、相違点とはならず、本願発明は、刊行物1に記載された発明である。

(4)本件審判請求人の主張について
ところで、本件審判請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。
ア 「・・・3ロール式のマンドレルミルの場合に、許容限界としての管材のフランジ半径rは78mmとするのが望ましく、このときロール径比を3.4以下とすれば、望ましいオーバーフィル発生の許容限界を満足することができます(本願明細書、段落[0042])。」
イ 「また、引用文献1に記載の発明のロール径比D_(R)/D_(C)の設定値が2.8以上という数値範囲のうち、D_(R)/D_(C)の設定値が3.7以下でない範囲では、オーバーフィルが発生します(本願明細書、段落[0012]、[0041])。 ・・・引用文献1に記載の発明は、その数値範囲の一部においてオーバーフィルが発生しますが、その防止について何ら検討されておらず、本願発明はD_(R)/D_(C)の設定値を3.7以下とすることで、オーバーフィルの発生を防止することが可能である点において両者は明確に相違いたします。・・・」
ウ 「引用文献1の図2(b)には、例えば、肉厚圧下率が0.75であって、ロール径比が2.8である点がプロットされており、これは本願発明におけるロール径比3.7以下という条件を満たします。
しかし、引用文献1に記載の発明は、前述のとおり本願発明と全く異質の効果を奏するものです。
また、引用文献1の図2(b)には、本願発明が課題とするオーバーフィルが発生する3.7以上のロール径比もプロットされており、本願発明におけるロール径比3.7以下という数値限定は、引用文献1の図2(b)に開示されている数値限定の一部を成すものであります。
そうであれば、引用文献1の図2(b)のプロットのみから、その一部であるロール径比3.7以下という数値範囲を発明特定事項とし、引用文献1に記載された発明と全く異質であるオーバーフィルの発生を抑制するという効果を得る本願発明を、当業者が把握することは到底できません。
従って、前記審査基準を勘案すれば、引用文献1の図2(b)のプロットは、「刊行物に記載された発明」とはいえず、「引用発明」とすることができないものです。
そうであれば、引用文献1に記載の発明が引用発明とはできない以上、本願発明は引用文献1に記載の発明に基づいて新規性を否定されるものではありません。 」(下線は、当審で引いたものである)

しかしながら、
エ 本件審判請求人の主張である「ア」については、本願発明は、「許容限界としての管材のフランジ半径r」について何らの限定もせずに、「ロール径比D_(R)/D_(C)を3.7以下に設定することにより、オーバーフィルの発生を抑制する」ものであるから、「フランジ半径r」に基づく主張は、請求項1の記載に基づくものではない。
因みに、本願発明において直接的な発明特定事項となされていないものの、フランジ半径rの許容限界を設定している実施例についてみると、本願明細書の【0033】【表1】によれば、本願発明の実施例では、加工前の管材の肉厚が14.5mmであり、第2スタンドでの肉厚が5mmであるから、刊行物1の【0015】で定義された計算式(1)
肉厚圧下率=(t_(i1)-t_(o2))/t_(i1)
t_(i1):第1スタンドの入側の管の肉厚
t_(o2):第2スタンドの出側の管の肉厚
に当てはめて計算すると、フランジ半径rの許容限界を設定するため行っている本願発明の実施例でのこの肉厚圧下率は
(14.5-5)/14.5
となり、その値はおよそ「0.655」である。
刊行物1発明は、刊行物1の【図2】(b)のグラフによって、肉厚圧下率を「0.75」としたときに適したロール径比D_(R)/D_(C)を設定したものであるから、本願発明と同様の肉厚圧下率は、【図2】(b)のグラフによれば、そのロール径比D_(R)/D_(C)はおよそ「1.5」前後の値と読み取れる。
してみると、上記主張のように、本願発明が、フランジ半径rを設定することを前提とした発明であったとしても、刊行物1の【図2】(b)のグラフによれば、本願明細書において、フランジ半径rを設定することを前提とした実施例における肉厚圧下率の場合に、刊行物1発明を適用した場合には、肉厚圧下率を「0.75」とした時の「ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8以上」とするよりも、より小さい「1.5前後以上」とする事は明らかであり、この値も本願発明の数値範囲内の値であるから、本願明細書に記載されたフランジ半径rの許容限界を設定している実施例を考慮したとしても、上記の(3)の判断は変わらない。

オ 本件審判請求人は上記主張「イ」で、「引用文献1に記載の発明のロール径比D_(R)/D_(C)の設定値が2.8以上という数値範囲のうち、D_(R)/D_(C)の設定値が3.7以下でない範囲では、オーバーフィルが発生します(本願明細書、段落[0012]、[0041])。 ・・・引用文献1に記載の発明は、その数値範囲の一部においてオーバーフィルが発生します」としているが、刊行物1発明は、「D_(R)/D_(C)の設定値が3.7以下でない範囲」でのみ製造を行う方法ではなく、「D_(R)/D_(C)の設定値を2.8と設定するか或いは2.8以上3.7以下」で製造することを含むものであることは、上記で指摘したとおりであり、本願発明によれば、「ロール径比D_(R)/D_(C)を3.7以下に設定することにより、オーバーフィルの発生を抑制する」のであるから、刊行物1発明に本願発明の効果が認識されていなくとも、上記設定値の範囲においては、刊行物1発明においても、「オーバーフィルの発生を抑制」しているのは明らかである。
ところで、刊行物1発明の「ロール径比D_(R)/D_(C)の設定値」については、
(ア)刊行物1の【0021】には、「図2(b)から明らかなように、肉厚圧下率=0.75のとき、ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8以上に設定すれば、穴あき欠陥の発生を抑止することが可能である。」と記載されているように、このロール径比の設定は、肉厚圧下率を0.75としたときのものであり、
(イ)同【0019】の「・・・従来より一般的に用いられているロール径比(例えば、3以下の値)に設定することが可能・・・」によれば、従来一般に用いられているロール径比D_(R)/D_(C)は3以下であり、当該従来技術については、具体的には、第3圧延スタンドから第5圧延スタンドについて設定する場合をいっているが、「従来より一般的に用いられている」と表現していることから、この値は、従来は、第1,第2圧延スタンドについても用いられていた値であるといえ、
(ウ)刊行物1発明は、「ロール径比が2,8以上に設定され」るとはいうものの、刊行物1の【0023】には、「・・・設備コストが増大する。以上のような弊害を防止するには、第1圧延スタンド及び第2圧延スタンドのロール径比D_(R)/D_(C)をできるだけ下限値に近い値に設定することが好ましい。」と記載されており、設備コスト等の関係から、下限値、即ち「2.8」あるいはそれに近い値に設定するものとされており、
(エ)オーバーフィル発生の抑制については、例えば、特開2006-272340号公報、特開平5-123730号公報などにあるように、この種のマンドレルミルを用いた継目無管の製造において、周知の課題であって、オーバーフィルの発生を抑制するように製造を行うこと自体は、刊行物1発明においても、内在する課題であることは明らかである。
したがって、上記(ア)?(エ)の点を踏まえれば、刊行物1発明の「ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8以上に設定」するとの構成は、積極的に「ロール径比D_(R)/D_(C)を3.7」よりも大きい値とすることは意味しておらず、むしろ「ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8に設定」或いは「D_(R)/D_(C)の設定値を2.8」近傍で製造することであり、刊行物1発明において、「ロール径比D_(R)/D_(C)を2.8と設定するか或いは2.8以上3.7以下に設定する」製造方法を含むとしたことに誤りはなく、上記本件審判請求人の主張を参酌しても、上記判断が変わるものではない。

カ 本件審判請求人の主張「ウ」には、「引用文献1の図2(b)には、例えば、肉厚圧下率が0.75であって、ロール径比が2.8である点がプロットされており、これは本願発明におけるロール径比3.7以下という条件を満たします。
しかし、引用文献1に記載の発明は、前述のとおり本願発明と全く異質の効果を奏するものです。」とあり、刊行物1発明においても「本願発明におけるロール径比3.7以下という条件を満た」す事は認めている。
そして、刊行物1に記載された効果は、「本願発明と全く異質の効果」ではあるものの、本願発明においては、「ロール径比3.7以下という条件」を満たせば、オーバーフィルの発生を抑制するとの効果を奏するものであるから、刊行物1発明においても、同様の効果が発生していることは明らかであり、上記本件審判請求人の主張「イ」の「D_(R)/D_(C)の設定値が3.7以下でない範囲では、オーバーフィルが発生します(本願明細書、段落[0012]、[0041])。 ・・・引用文献1に記載の発明は、その数値範囲の一部においてオーバーフィルが発生」するとの記載は、刊行物1発明においても、オーバーフィルの発生しない数値設定をしていることを認めているものでもある。
したがって、上記本件審判請求人の主張を参酌しても、上記判断を変えるものではない。


5 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明、即ち本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-14 
結審通知日 2012-06-05 
審決日 2012-06-18 
出願番号 特願2010-534699(P2010-534699)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21B)
P 1 8・ 113- Z (B21B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀧澤 佳世  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 田村 耕作
川端 修
発明の名称 マンドレルミル、および継目無管の製造方法  
代理人 森 道雄  
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