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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1268616
審判番号 不服2011-650  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-12 
確定日 2013-01-29 
事件の表示 特願2005- 17096「X線コンピュータ断層撮影装置及び画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月29日出願公開,特開2005-261932,請求項の数(12)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成17年1月25日(優先権主張 平成16年2月16日 日本)の特許出願であって,平成22年6月17日付けの拒絶理由通知に対し同年8月23日付けで意見書および手続補正書が提出されたが,同年10月1日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成23年1月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同日付けで手続補正(以下「本件補正」という)がなされたものである。さらに,当審において平成23年5月6日付けの審尋がなされ,同年6月24日に回答書が提出された。

第2 本件補正について
1 本件補正の内容
本件補正は,補正前の特許請求の範囲を
「【請求項1】
被検体の3次元領域をX線で走査する走査部と、
前記走査により収集された投影データを記憶する記憶部と、
前記記憶された投影データに基づいて前記3次元領域に対応するボリュームデータを再構成するボリュームデータ再構成部と、
前記ボリュームデータから、複数方位の断面に関する断面画像データを発生する断面画像データ発生部と、
前記断面画像データを、再構成範囲を表すグラフィック要素とともに表示する表示部と、
前記グラフィック要素を操作するための操作部と、
前記記憶された投影データに基づいて、前記グラフィック要素で表された再構成範囲に対応する断層画像データを再構成する断層画像再構成部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記断面画像各々には、他の断面に対応する断面線が表示されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記断面線の移動により前記断面各々の位置が移動操作されることを特徴とする請求項2記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記操作部はホイールマウスを含み、前記ホイールマウスのホイールの回転操作により前記断面各々の位置が移動操作されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記複数方位の断面は、アキシャル、サジタル、コロナルに設定されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記複数方位の断面に関する断面画像とともに、オブリーク断面に関する断面画像が前記記憶されたボリュームデータから発生されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記グラフィック要素は、矩形形状を有することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記断層画像再構成部は、前記グラフィック要素で表された再構成範囲に対応する断層画像データを拡大再構成により生成することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記断層画像データの再構成条件は、前記ボリュームデータの再構成条件とは独立して設定されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記断層画像データの再構成条件は、前記ボリュームデータの再構成条件とは相違することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記表示部は、前記断面画像データを、前記走査される3次元領域を表す他のグラフィック要素とともに表示することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
被検体の3次元領域をX線で走査する走査部と、
前記走査により収集された投影データを記憶する記憶部と、
前記3次元領域に対応する複数方位の画像データを、再構成範囲を表すグラフィック要素とともに表示する表示部と、
前記グラフィック要素を操作するための操作部と、
前記記憶された投影データに基づいて、前記グラフィック要素で表された再構成範囲に対応する断層画像データを再構成する再構成部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項13】
被検体の3次元領域に関する投影データを記憶する記憶部と、
前記記憶された投影データに基づいて前記3次元領域に対応するボリュームデータを再構成するボリュームデータ再構成部と、
前記ボリュームデータから、複数方位の断面に関する断面画像データを発生する断面画像データ発生部と、
前記断面画像データを、再構成範囲を表すグラフィック要素とともに表示する表示部と、
前記グラフィック要素を操作するための操作部と、
前記記憶された投影データに基づいて、前記グラフィック要素で表された再構成範囲に対応する断層画像データを再構成する断層画像再構成部とを具備することを特徴とする画像処理装置。」
を,
「【請求項1】
被検体の3次元領域をX線で走査する走査部と、
前記走査により収集された投影データを記憶する記憶部と、
前記記憶された投影データに基づいて前記3次元領域に対応するボリュームデータを再構成するボリュームデータ再構成部と、
前記ボリュームデータから、直交する断面に関する断面画像のデータと1つのオブリーク断面に関するオブリーク画像のデータとを発生する断面画像データ発生部と、
操作者指示に従って、前記直交する断面画像と前記オブリーク画像とを拡大再構成範囲を表すグラフィック要素とともに含む画面を表示する表示部と、
前記拡大再構成範囲を設定するために前記グラフィック要素を操作する操作部と、
前記記憶された投影データに基づいて、前記拡大再構成範囲に対応する断層画像データを再構成する断層画像再構成部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記断面画像各々には、他の断面に対応する断面線が表示されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記断面線の移動により前記断面各々の位置が移動操作されることを特徴とする請求項2記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記操作部はホイールマウスを含み、前記ホイールマウスのホイールの回転操作により前記断面各々の位置が移動操作されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記複数方位の断面は、アキシャル、サジタル、コロナルに設定されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記複数方位の断面に関する断面画像とともに、オブリーク断面に関する断面画像が前記記憶されたボリュームデータから発生されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記グラフィック要素は、矩形形状を有することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記断層画像再構成部は、前記グラフィック要素で表された拡大再構成範囲に対応する断層画像データを拡大再構成により生成することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記断層画像データの再構成条件は、前記ボリュームデータの再構成条件とは独立して設定されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記断層画像データの再構成条件は、前記ボリュームデータの再構成条件とは相違することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記表示部は、前記断面画像データを、前記走査される3次元領域を表す他のグラフィック要素とともに表示することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
被検体の3次元領域に関する投影データを記憶する記憶部と、
前記記憶された投影データに基づいて前記3次元領域に対応するボリュームデータを再構成するボリュームデータ再構成部と、
前記ボリュームデータから、直交3断面に関する3つの断面画像のデータと1つのオブリーク断面に関するオブリーク画像のデータとを発生する断面画像データ発生部と、
操作者指示に従って、前記直交3断面に関する3つの断面画像を拡大再構成範囲を表すグラフィック要素とともに含む画面と、前記直交3断面に関する断面画像と前記オブリーク画像とを前記グラフィック要素とともに含む画面とを切り替えて表示する表示部と、
前記拡大再構成範囲を設定するために前記グラフィック要素を操作する操作部と、
前記記憶された投影データに基づいて、前記拡大再構成範囲に対応する断層画像データを再構成する断層画像再構成部とを具備することを特徴とする画像処理装置。」
と補正するものである。(下線は補正箇所を示す)

上記補正は,
(1)補正前の請求項1に係る発明の特定事項である「複数方位の断面に関する断面画像データを発生する断面画像データ発生部」を「直交する断面に関する断面画像のデータと1つのオブリーク断面に関するオブリーク画像のデータとを発生する断面画像データ発生部」と補正し,
(2)同特定事項である「前記断面画像データを、再構成範囲を表すグラフィック要素とともに表示する表示部」を「操作者指示に従って、前記直交する断面画像と前記オブリーク画像とを拡大再構成範囲を表すグラフィック要素とともに含む画面を表示する表示部」と補正し,
(3)同特定事項である「前記グラフィック要素を操作するための操作部」を「前記拡大再構成範囲を設定するために前記グラフィック要素を操作する操作部」と補正し,
(4)同特定事項である「前記グラフィック要素で表された再構成範囲に対応する断層画像データを再構成する断層画像再構成部」を「前記拡大再構成範囲に対応する断層画像データを再構成する断層画像再構成部」と補正し,
(5)補正前の請求項8に係る発明の特定事項である「前記断層画像再構成部は、前記グラフィック要素で表された再構成範囲に対応する断層画像データを拡大再構成により生成する」を「前記断層画像再構成部は、前記グラフィック要素で表された拡大再構成範囲に対応する断層画像データを拡大再構成により生成する」と補正し,
(6)補正前の請求項12を削除して補正前の請求項13を繰り上げて請求項12とするとともに,
(7)補正前の請求項13に係る発明の特定事項である「複数方位の断面に関する断面画像データを発生する断面画像データ発生部」を「直交3断面に関する3つの断面画像のデータと1つのオブリーク断面に関するオブリーク画像のデータとを発生する断面画像データ発生部」と補正し,
(8)同特定事項である「前記断面画像データを、再構成範囲を表すグラフィック要素とともに表示する表示部」を「操作者指示に従って、前記直交3断面に関する3つの断面画像を拡大再構成範囲を表すグラフィック要素とともに含む画面と、前記直交3断面に関する断面画像と前記オブリーク画像とを前記グラフィック要素とともに含む画面とを切り替えて表示する表示部」と補正し,
(9)同特定事項である「前記グラフィック要素を操作するための操作部」を「前記拡大再構成範囲を設定するために前記グラフィック要素を操作する操作部」と補正し,
(10)同特定事項である「前記グラフィック要素で表された再構成範囲に対応する断層画像データを再構成する断層画像再構成部」を「前記拡大再構成範囲に対応する断層画像データを再構成する断層画像再構成部」と補正するものである。

2 補正の適否
(1)「直交する断面」とは「互いに直交する複数の断面」を意味するから,「直交する断面」は「複数方位の断面」の下位概念であるいえる。また,「1つのオブリーク断面に関するオブリーク画像のデータとを発生する」を追加することも「断面画像データ発生部」を限定するものであるから,上記補正事項(1)は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)本願の願書に最初に添付された明細書(以下「当初明細書」という。)には,断面画像データ発生部の発生する断面画像と拡大再構成範囲を表すグラフィック要素とをともに含む画面について,以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】
被検体の3次元領域をX線で走査する走査部と、
前記走査により収集された投影データを記憶する記憶部と、
前記記憶された投影データに基づいて前記3次元領域に対応するボリュームデータを発生するボリュームデータ発生部と、
前記ボリュームデータから、少なくとも3方位の断面に関する断面画像データを発生する断面画像データ発生部と、
前記断面画像データを、再構成範囲を表すグラフィック要素とともに表示する表示部と、
前記グラフィック要素を操作するための操作部と、
前記記憶された投影データに基づいて、前記グラフィック要素で表された再構成範囲に対応する断層画像データを再構成する再構成部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
(中略)
【請求項5】
前記3方位の断面は、アキシャル、サジタル、コロナルに設定されることを特徴とする
請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記3方位の断面に関する断面画像とともに、オブリーク断面に関する断面画像が前記記憶されたボリュームデータから発生されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
(中略)
【請求項12】
被検体の3次元領域をX線で走査する走査部と、
前記走査により収集された投影データを記憶する記憶部と、
前記3次元領域に対応する少なくとも3方位の画像データを、再構成範囲を表すグラフィック要素とともに表示する表示部と、
前記グラフィック要素を操作するための操作部と、
前記記憶された投影データに基づいて、前記グラフィック要素で表された再構成範囲に対応する断層画像データを再構成する再構成部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
(中略)
【請求項14】
被検体の3次元領域に関する投影データを記憶する記憶部と、
前記記憶された投影データに基づいて前記3次元領域に対応するボリュームデータを発生するボリュームデータ発生部と、
前記ボリュームデータから、少なくとも3方位の断面に関する断面画像データを発生する断面画像データ発生部と、
前記断面画像データを、再構成範囲を表すグラフィック要素とともに表示する表示部と、
前記グラフィック要素を操作するための操作部と、
前記記憶された投影データに基づいて、前記グラフィック要素で表された再構成範囲に対応する断層画像データを再構成する再構成部とを具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項15】
被検体の3次元領域に関する投影データを記憶する記憶部と、
前記3次元領域に対応する少なくとも3方位の画像データを、再構成範囲を表すグラフィック要素とともに表示する表示部と、
前記グラフィック要素を操作するための操作部と、
前記記憶された投影データに基づいて、前記グラフィック要素で表された再構成範囲に対応する断層画像データを再構成する再構成部とを具備することを特徴とする画像処理装置。」

イ「【0023】
本実施形態では、図3に示すように、再構成条件として例えば拡大再構成範囲を設定するために、ボリュームデータからアキシャル像、サジタル像、コロナル像の直交3軸画像、更に必要に応じて傾斜画像(オブリーク像)を生成して、表示し、しかも各画像の断面位置を任意に移動するいわゆる画像めくりを可能としたことを特徴としており、それにより3次元情報を一目で見ることができるので、広範囲の拡大再構成範囲を正確に、細かく、しかも迅速に設定することができるものである。
【0024】
図4に図2のS3の拡大再構成範囲設定の処理手順を示している。入力部10を介してバッチ処理としてここでは拡大再構成処理が要求されたとき、システム制御部11は、まず被検体30の3次元領域に対応するボリュームデータから、初期的に当該3次元領域の中心で直交する3方向の断面画像としてアキシャル像、サジタル像、コロナル像を生成することをMPR処理回路24に命令をする。なお、ボリュームデータから生成(再構成)する断面の画像を「断面画像」と称し、投影データから再構成する断面の画像を「断層画像」と称して両者の区別を容易にする。システム制御部11からの命令に従って、MPR処理回路24は、ボリュームデータから3方位の断面に関する断面画像を生成する(S11)。異なる3方位の断面に関する断面画像は、典型的には、当該3次元領域の中心で直交するアキシャル像、サジタル像、コロナル像である。断面画像は、例えば512×512のピクセルサイズを有する。
【0025】
GUI画面生成回路26は、システム制御部11の制御のもとで、図5に示すように、S11で生成されたアキシャル像(XY面)、サジタル像(XZ面)、コロナル像(YZ面)を、拡大再構成範囲を表すグラフィック要素(マークという)R1、R2、R3、断面位置を相互に表す断面線(Inter Section Line)ISL1,ISL2,ISL3、投影データを収集したスキャン範囲を表すフレームSR及び画面右下欄の再構成条件とともに含むGUI画面を生成する。」

ウ「【0027】
拡大再構成範囲を設定するために、アキシャル像、サジタル像、コロナル像それぞれの断面をそれぞれ対応する断面線ISL3,ISL2,ISL1を移動することにより移動することができる(S13)。断面線ISL3,ISL2,ISL1の移動は、入力器10に含まれるマウスのホイール回転操作と、断面線ISL3,ISL2,ISL1のドラッグ・アンド・ドロップとの択一的な操作で行われる。マウスのホイール回転操作であれば、移動対象の画像上にポインタを配置した状態でホイールが回転操作される。
【0028】
断面線が移動されたとき、MPR処理回路24により、移動後の断面線ISL1,ISL2又はISL3を通過する断面に応じた断面画像がボリュームデータから生成され、切換え表示される(S14)。“オブリーク表示”ボタンがクリックされたとき(S15)、アキシャル像、サジタル像又はコロナル像上に任意に指定されたオブリーク断面線ISL4の位置及び方向に応じたオブリーク断面の断面画像がボリュームデータから生成され(S16)、図6に示すように、右下欄に再構成条件から切換え表示される(S17)。
【0029】
操作者は、マウスを操作して、アキシャル像、サジタル像、コロナル像それぞれの断面位置を移動しながら、またオブリーク断面画像を任意の位置及び方向で表示させながら、断面画像上で拡大再構成の対象部位を確認し、その拡大再構成の対象部位を適当に含むように拡大再構成範囲を表すマークR1、R2、R3を拡大、縮小、回転、移動する(S18)。システム制御部11の制御のもとで、マークR1、R2、R3は相互に関連して拡大、縮小、回転、移動する。」

そして,上記記載事項イの「・・・・・拡大再構成範囲を設定するために、ボリュームデータからアキシャル像、サジタル像、コロナル像の直交3軸画像、更に必要に応じて傾斜画像(オブリーク像)を生成して、表示し、しかも各画像の断面位置を任意に移動するいわゆる画像めくりを可能としたことを特徴としており、それにより3次元情報を一目で見ることができるので、広範囲の拡大再構成範囲を正確に、細かく、しかも迅速に設定することができるものである。」および記載事項ウの「操作者は、マウスを操作して、アキシャル像、サジタル像、コロナル像それぞれの断面位置を移動しながら、またオブリーク断面画像を任意の位置及び方向で表示させながら、断面画像上で拡大再構成の対象部位を確認し、その拡大再構成の対象部位を適当に含むように拡大再構成範囲を表すマークR1、R2、R3を拡大、縮小、回転、移動する(S18)。システム制御部11の制御のもとで、マークR1、R2、R3は相互に関連して拡大、縮小、回転、移動する。」からみて,また,図3における「オブリーク上で範囲指定(画像めくり)」との記載を考慮すると,当初明細書には,「オブリーク断面画像」を「アキシャル像、サジタル像、コロナル像の直交3軸画像」と同様に利用して,拡大再構成範囲を正確に,細かく,しかも迅速に設定することが記載されているといえる。そして,拡大再構成範囲を正確に,細かく,しかも迅速に設定するために「アキシャル像、サジタル像、コロナル像の直交3軸画像」には「拡大再構成範囲を表すグラフィック要素R1,R2,R3」を表示することが明記されているのであるから,同じ目的で利用される「オブリーク断面画像」にも「拡大再構成範囲を表すグラフィック要素」が表示されると解するのが相当であり,「オブリーク断面画像」に「拡大再構成範囲を表すグラフィック要素」が表示されることにより,新たな技術的意義が追加することにはならないといえる。
そうすると,図6の「オブリーク断面画像」には「拡大再構成範囲を表すグラフィック要素」が記載されていないものの,上記記載事項ア?ウを総合すれば,「前記直交する断面画像と前記オブリーク断面画像とを拡大再構成範囲を表すグラフィック要素とともに含む画面を表示する」という特定事項が当初明細書に記載されていないものである,といえず,上記補正事項(2)は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。そして,上記補正事項(2)は,補正前の特定事項である「表示部」を限定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)「前記拡大再構成範囲を設定するために」を追加する上記補正事項(3)は,補正前の特定事項である「操作部」を限定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(4)「前記グラフィック要素で表された再構成範囲」を「前記拡大再構成範囲」とする上記補正事項(4)は,上記補正事項(2)および(3)に整合させる補正であって,明りょうでない記載の釈明を目的するものに該当する。

(5)「前記グラフィック要素で表された再構成範囲」を「前記グラフィック要素で表された拡大再構成範囲」とする上記補正事項(5)は,他の記載に整合させる補正であって,明りょうでない記載の釈明を目的するものに該当する。

(6)上記補正事項(6)は,請求項の削除を目的とするものに該当する。

(7)「直交3断面」は「複数方位の断面」の下位概念であるいえる。また,「1つのオブリーク断面に関するオブリーク画像のデータとを発生する」を追加することも「断面画像データ発生部」を限定するものであるから,上記補正事項(7)は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(8)上記補正事項(2)ついて検討したと同様に,「直交3断面に関する断面画像と前記オブリーク画像とを前記グラフィック要素とともに含む画面」を表示するという特定事項が当初明細書に記載されていないものである,といえず,上記補正事項(8)は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。そして,上記補正事項(8)は,補正前の特定事項である「表示部」を限定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(9)「前記拡大再構成範囲を設定するために」を追加する上記補正事項(9)は,補正前の特定事項である「操作部」を限定するものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(10)「前記グラフィック要素で表された再構成範囲」を「前記拡大再構成範囲」とする上記補正事項(10)は,上記補正事項(8)および(9)に整合させる補正であって,明りょうでない記載の釈明を目的するものに該当する。

(11)以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第1,2および4号の特許請求の範囲の削除,減縮および明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

そこで,補正後の請求項1?12に係る発明(以下「補正発明1」?「補正発明12」という)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされている同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。

3 引用刊行物の記載事項
(1)本願優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2001-137231号公報(以下「刊行物1」という)には,図面とともに次の事項が記載されている。

(1-ア)
「【請求項1】 3次元原画像中の互いに直交する3種類の断面画像を表示する表示手段と、前記表示手段に表示させる3つの断面画像を選択する断面画像選択手段と、前記表示手段に表示された3つの断面画像の1つ又は複数の断面画像を用いて3次元の拡大したい拡大領域を設定する拡大領域設定手段と、前記拡大領域設定手段によって設定された3次元の拡大領域を拡大再演算処理する拡大再演算処理手段と、を備え、前記表示手段は前記拡大再演算処理手段によって拡大再演算処理された3種類の断面画像を表示することを特徴とする画像処理装置。」

(1-イ)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】例えばコーンビームCTでは二次元のセンサにより取得した投影画像を基に画像再構成を行い、三次元の再構成データを得る。この三次元の再構成データに対して 任意断面方向の断面画像を選択する装置において拡大再演算を行うためには、拡大再演算を行う領域を三次元で指定しなければならないが、これまでそのような画像処理装置がなかった。
【0004】本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、三次元の再構成データに対して拡大領域指定を三次元で行うことができ、拡大再演算することによって3種類の断層画像全てを拡大表示し、オペレーターがより細やかな診断を行うことのできる画像処理装置を提供することを目的とする。」

(1-ウ)
「【0008】先ず、本発明の画像処理装置の原理について説明する。コーンビームCTにおいて、再構成によって三次元データが得られ、この三次元のデータは図1に示すように一辺が512pixelの立方体である。このため、図2に示すように、三次元のデータをy-z平面方向に切り出したコロナル画像、x-y平面方向に切り出したアキシャル画像、x-z平面方向に切り出したサジタル画像はそれぞれ512枚である。これらのアキシャル画像、コロナル画像、サジタル画像がメモリに読み込まれる。読み込まれたアキシャル画像2、コロナル画像4、サジタル画像6は、図3に示すように表示装置10に出力表示される。
【0009】図4に示すように、マウスで3軸断面画像それぞれに設置されたスピンボタン12a、12b、12cを押すことによってエディットボックス14a、14b、14c内の画像番号を変化させ、診断したい断面画像を3軸断面画像2、4、6それぞれについて選択する。」

(1-エ)
「【0010】図8に示すように、表示された3枚の断面画像2、4、6のうちいずれか1枚(図8ではアキシャル画像2)に対して、マウスで拡大させたい患部を含むようにドラッグし拡大領域を入力する。拡大領域はトラッカー表示される。
【0011】図9に示すように、他2枚の断面画像(図9ではコロナル画像4、サジタル画像6)に対して自動的に領域が指定される。指定された拡大領域の頂点の座標及びx軸、y軸、z軸の長さの情報を基に、拡大再演算処理が行われる。拡大再演算処理された画像データは図1に示すように一辺が512pixelの立方体であり、表示装置10に出力され、図11に示すように、拡大されたアキシャル画像22、コロナル画像24、サジタル画像26が表示装置10に表示される。」

(1-オ)図1?4,8,9,11には上記記載に対応した事項が図示され,特に図9には3枚の断面画像を拡大再演算処理する領域を示すトラッカー表示とともに表示されている図が示されている。

そうすると,上記記載事項(1-ア)?(1-オ)および図面からみて,刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。(以下「引用発明」という)

「3次元原画像中の互いに直交する3種類の断面画像を表示する表示手段と、前記表示手段に表示させる3つの断面画像を選択する断面画像選択手段と、前記表示手段に表示された3つの断面画像の1つ又は複数の断面画像を用いて3次元の拡大したい拡大領域をトラッカー表示にて設定する拡大領域設定手段と、前記拡大領域設定手段によって設定された3次元の拡大領域を拡大再演算処理する拡大再演算処理手段と、を備え、前記表示手段は前記拡大再演算処理手段によって拡大再演算処理された3種類の断面画像を表示するコーンビームCTの画像処理装置。」

(2)同様に,原査定の拒絶の理由に周知技術の例示として引用された刊行物である特開2002-143150号公報(以下「刊行物2」という)には,「画像表示方法及び装置」について,図面とともに次の事項が記載されている。

(2-ア)
「【請求項1】 被検体に円錐状のX線を照射するX線照射手段と、前記被検体を挟んで前記X線照射手段と対向する位置に配置され前記被検体の2次元の透過X線を検出する2次元X線検出手段を含む2次元撮像手段と、前記X線照射手段と前記2次元撮像手段を前記被検体の周りに回転させる回転手段と、この回転手段を回転させて前記2次元撮像手段により撮像した前記被検体の投影データを入力しこれを記憶して各種の画像処理を行う画像処理装置と、この画像処理装置で処理された画像データを画像信号に変換しこれを表示する表示装置と、この表示装置に表示された画像の関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記各構成要素に各種の指令信号を入力する操作器とを備え、前記関心領域設定手段で設定した領域について拡大又は縮小処理を前記画像処理装置で行い、この処理した拡大又は縮小した画像データを画像信号に変換してこれを表示する画像表示方法において、
前記2次元の投影データを記憶するステップと、この記憶した2次元の投影データを画像信号に変換しこれを表示するステップと、この表示された投影画像の拡大又は縮小する領域を設定するステップと、該拡大又は縮小領域に対応する2次元の投影データを読み出すステップと、この読み出した2次元の投影データから拡大又は縮小した2次元画像データを3次元再構成するステップと、この再構成された3次元の画像データを画像信号に変換しこれを表示するステップと、より成る画像表示方法。」

(2-イ)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像表示方法及び装置に係り、特に、2次元のX線検出器と円錐状のX線ビームを用いたコーンビーム3次元X線CT装置で生成される3次元画像の拡大、縮小演算時間の短縮に好適な画像表示方法及び装置に関する。」

(3)同様に,原査定の拒絶の理由に周知技術の例示として引用された刊行物である特開平8-131403号公報(以下「刊行物3」という)には,画像拡大における関心領域の拡大再構成について,次の事項が記載されている。

「【0030】なお、歯髄の重心、眼球中心を抽出する際に、画像の拡大、高域強調フィルタ処理を行なうことは、探索開始点の指定の精度を高める点で有効である。なお、3次元画像データと共に、再構成前の生データ(CTプロジェクションデータ)がある場合には、画像拡大の代わりに生データから再度歯、眼球を含む関心領域の拡大再構成をおこなって3次元画像データをつくり、それに対して特徴点の抽出処理をおこなうことも、同様に探索開始点の指定の精度を高める点で有効である。」

4 補正発明1について
(1)対比
補正発明1と引用発明とを対比すると,その機能からみて,引用発明の「アキシャル画像、コロナル画像及びサジタル画像の断面画像データ」,「トラッカー表示」,「前記トラッカー表示を操作するためのマウス」および「前記拡大領域設定手段によって設定された3次元の拡大領域を拡大再演算処理する拡大再演算処理手段」は,それぞれ,補正発明1の「直交する断面に関する断面画像データ」,「拡大再構成範囲を表すグラフィック要素」,「前記拡大再構成範囲を設定するために前記グラフィック要素を操作するための操作部」および「前記拡大再構成範囲に対応する画像データを再構成する画像再構成部」に相当するといえる。
また,「コーンビームCT」が,本願明細書の【背景技術】の【0002】に記載されているコーンビームスキャンを行うX線コンピュータ断層撮影装置を意味することは医療用画像処理装置における技術常識である。そして,X線コンピュータ断層撮影装置の分野における技術常識を勘案すれば,コーンビームスキャンを行うX線コンピュータ断層撮影装置には,被検体の3次元領域をX線で走査する走査部が当然備えられ,上記記載事項(1-イ)にあるように,「コーンビームCTでは二次元のセンサにより取得した投影画像を基に画像再構成を行い、三次元の再構成データを得る」ために,前記走査により収集された投影データを記憶する記憶部と,前記記憶された投影データに基づいて前記3次元領域に対応するボリュームデータを再構成するボリュームデータ再構成部とが備えられているといえる。

そうすると,両者は,
(一致点)
「被検体の3次元領域をX線で走査する走査部と,
前記走査により収集された投影データを記憶する記憶部と,
前記記憶された投影データに基づいて前記3次元領域に対応するボリュームデータを再構成するボリュームデータ再構成部と,
前記ボリュームデータから,直交する断面に関する断面画像データを発生する断面画像データ発生部と,
操作者指示に従って,前記直交する断面画像を拡大再構成範囲を表すグラフィック要素とともに含む画面を表示する表示部と,
前記拡大再構成範囲を設定するために前記グラフィック要素を操作するための操作部と,
前記拡大再構成範囲に対応する画像データを再構成する画像再構成部とを具備するX線コンピュータ断層撮影装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
「断面画像データ発生部」が,補正発明1では「1つのオブリーク断面に関するオブリーク画像のデータとを発生する」ものであるのに対し,引用発明ではそのような構成ではない点。

(相違点2)
「表示部」が,補正発明1では「オブリーク画像を拡大再構成範囲を表すグラフィック要素とともに含む画面を表示する」のものであるのに対し,引用発明ではそのような構成ではない点。

(相違点3)
「画像再構成部」が,補正発明1では「前記記憶された投影データに基づいて、前記グラフィック要素で表された再構成範囲に対応する断層画像データを」再構成するものであるのに対し,引用発明では不明である点。

(2)相違点についての検討
ア 相違点1について
「ボリュームデータから、直交3断面に関する断面画像のデータと1つのオブリーク断面に関するオブリーク画像のデータとを発生する断面画像データ発生部と、前記直交する断面画像と前記オブリーク画像とを表示する表示部とを備えたX線コンピュータ断層撮影装置」は,本願優先日前周知であるといえる。例えば,特開平11-9590号公報の段落【0009】には「図3において示したA面、B面、C面の画像は、それぞれが互いに直交する断面の画像として設定されたものである。そして、これら断面の画像を用いて領域の抽出を行なえるが、特に本実施形態においては関心領域の抽出のために斜め方向(オブリーク方向)で切り出された画像を使用することも可能となっている。例えば図4に示す様に関心領域が体軸に対して斜め方向に伸びている場合、図5のA面に示す様にC面の断面位置を示す線Aを回転移動する(線A)ことで、関心領域に沿った断面方向の画像を使用する事ができる。ちなみに線Bから線Cによって挟まれる範囲が領域抽出に使用される断面画像の範囲である。このように斜め方向で切り出された断面画像は、A?C面のいずれかの表示エリアに表示させても良いし、新たに別の表示エリアを設けてこれに表示するようにしても良い。」,同段落【0014】には「以上説明したように本実施形態によれば、CTやMRなどの撮影装置から得られた断層画像データをボリュームデータとして取り扱い、このボリュームデータに対してMPR処理を行い、任意の方向(領域抽出のしやすい断面方向)にてボリュームデータと同じ幅分だけ断面画像を作成し、この画像に対して領域抽出処理を行う。」と記載され,特開平6-337920号公報の段落【0010】には「【実施例】以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の画像処理装置のハードウェア構成の一例を示すものである。図1において、基本的には画像を格納するための画像データメモリ1と、画像データを用いてオブリーク画像を作成するなどのMPR処理等を行うための演算装置2と、作成したオブリーク画像などを表示するためのモニタ3と、ガイド線や断面位置を指定するための入力装置4と、これらの各機器を制御するためのCPU5で構成されている。そして、演算装置2には、画像データを用いてオブリーク画像を作成するための断面変換部6が備えられており、この断面変換部6には画像データメモリ1から読み出した断面画像のうち所定の断面画像を選択可能な断面画像選択部7と、選択された断面画像上の任意の注目部位を通る回転中心線を設定可能な回転中心線設定部8と、回転中心線を含む断面がこの回転中心線を軸として回転する角度を算定する角度算定部9とが接続している。MPR処理のための演算をCPU5を用いて行ってもよいが高速化のためには専用の演算装置2を設けた方がよい。また、入力装置4としては、マウスやトラックボールやキーボードなどがある。」と記載され,また,特開平1-218434号公報の2頁左上欄11行?同頁右上欄8行には「この種の画像診断装置は、X線CTスキャナ装置や磁気共鳴イメージング装置等の断層像映像化装置によって得た生体のマルチスライス画像データ又は3次元ボリューム画像データから術者が所望する任意の任意のサジタル像、アキシャル像,コロナル像,オブリーク像を生成し、これを表示することを可能とした高速MPR(Malti P1anar Reformat)機能を備えている。この高速MPR機能を備えた画像診断装置によれば、第6図(a)に示すように、先ず、例えば頭部のある位置のアキシャル像を1画面の上左部分に表示して、次に、このアキシャル像上に十字にトラックボールによってカーソルの線ロイ(ROI:関心領域)を設定して、該十字ロイに対応する同サジタル像を1画面の上右部分に、同コロナル像を1画面の下左部分に表示することができ、さらに、同オブリーク像を1画面の下右部分に表示することができる。」と記載されている。
してみると,引用発明に該周知の技術を適用して,相違点1における補正発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得る事項であるといえる。

イ 相違点2について
上述したように「ボリュームデータから、直交3断面に関する断面画像のデータと1つのオブリーク断面に関するオブリーク画像のデータとを発生する断面画像データ発生部と、前記直交する断面画像と前記オブリーク画像とを表示する表示部とを備えたX線コンピュータ断層撮影装置」は,本願優先日前周知であるといえる。しかしながら,オブリーク画像を利用して拡大再構成範囲を正確に,細かく,しかも迅速に設定すること,すなわち,「オブリーク画像を拡大再構成範囲を表すグラフィック要素とともに含む画面を表示する」ことは,原査定において引用された特許文献に記載さてたおらず,また,上記周知例を参照しても本願優先日前周知であるといえないし,自明な事項ともいえない。
してみると,引用発明に上記周知の技術を適用しても,相違点2における補正発明1の構成になり得ず,相違点2は,当業者が容易に想到し得る事項であるとは到底いえない。

ウ 相違点3について
刊行物1において,前記グラフィック要素で表された再構成範囲(拡大領域)に対応する画像データの再構成を,どのデータから再構成するか具体的な記載はないが,アキシャル画像,コロナル画像およびサジタル画像の一部領域である再構成範囲(拡大領域)を,それらの画像データを発生する前記ボリュームデータの一部を単に表示部で拡大表示しただけでは,被検体の3次元領域についての画像情報が粗く表示されるだけで,細やかな診断に資するところが少ないことは,当業者において容易に予測される事項であるといえる。
そして,X線コンピュータ断層撮影装置の画像の拡大再構成に際し,被検体の3次元領域のX線での走査により収集され,記憶された投影データに基づいて,画像上にグラフィック要素で表された再構成範囲に対応する断層画像データを再構成することも,刊行物2,3に記載されているように,本願優先権主張日前から周知の事項であるといえる。
してみると,X線走査された被検体の3次元領域の一部の前記グラフィック要素で表された再構成範囲で指定される,より拡大された状態での画像情報を再構成して得ようとするとき,前記記憶された投影データに基づいての3次元領域に対応するボリュームデータの再構成と同様に,断層画像再構成部において,前記記憶された投影データに基づいて前記グラフィック要素で表された再構成するようなことは,当業者であれば,容易に想到し得る範囲内の事項であるといえる。

(3)効果について
本願明細書の記載からみて,補正発明1は,相違点2により「拡大再構成範囲を正確に,細かく,しかも迅速に設定する」という格別顕著な効果を奏するといえる。

(4)まとめ
補正発明1は,相違点2の点において,引用発明および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない,というべきである。

5 補正発明2?11について
補正発明5および6の特定事項である「複数方位の断面」が補正発明1の「直交する断面」を意味することは明らかであるから,補正発明2?11は,補正発明1をさらに技術的に限定したものである。
そして,該限定のない補正発明1が引用発明及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をできたものではないのであるから,補正発明2?11も,引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をできたものではないこととなる。

6 補正発明12について
補正発明12と引用発明とを比較すると,補正発明1の場合と同様に,両者が相違点2の点にて相違することは明らかである。
そうすると,補正発明1について検討したと同じ理由により,引用発明及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をできたものではないというべきである。

7 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされている同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たし,認められることとなる。

第3 むすび
本願の請求項1?12に係る発明は,本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものであると認める。
そして,本願については,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-06 
結審通知日 2011-10-11 
審決日 2013-01-15 
出願番号 特願2005-17096(P2005-17096)
審決分類 P 1 8・ 561- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安田 明央小島 寛史  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 小野寺 麻美子
信田 昌男
発明の名称 X線コンピュータ断層撮影装置及び画像処理装置  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 村松 貞男  
代理人 中村 誠  
代理人 中村 誠  
代理人 村松 貞男  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 哲  

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