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審決分類 審判 訂正 5項独立特許用件 訂正しない C02F
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない C02F
審判 訂正 4号2号請求項の限定的減縮 訂正しない C02F
管理番号 1268628
審判番号 訂正2012-390059  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2012-05-07 
確定日 2013-01-07 
事件の表示 特許第4552327号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第4552327号は、栗田工業株式会社を出願人とし、平成13年1月18日を出願日とする出願であって、平成22年7月23日に設定登録がなされ、平成23年4月18日にオルガノ株式会社を請求人として無効審判の請求がなされ、平成23年12月26日付けで「特許第4552327号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との審決がなされ、平成24年5月7日に当該訂正審判の請求がなされ、同年8月9日付けの訂正拒絶理理由を通知し、これに対して、同年9月12日付けで意見書が提出されたものである。

II.訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は,特許第4552327号の明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を審判請求書に添付された明細書(以下、「訂正特許明細書」という。)のとおり訂正することを求めるものであって、以下の訂正事項1ないし3からなる。
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「触媒式酸化性物質分解装置」とあるのを、「酸化還元触媒式酸化性物質分解装置」に訂正する。

(イ)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「この順に通水可能とした超純水製造装置」とあるのを、「この順に通水可能とした、溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が著しく低い高純度超純水を製造する超純水製造装置」に訂正する。

(ウ)特許請求の範囲の請求項1に「パラジウム触媒又は白金触媒である」とあるのを、「パラジウム触媒である」に訂正する。

III.訂正の当否
(ア)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の「触媒式酸化性物質分解装置」について、触媒の機能に関する「酸化還元」という限定を付与するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書には、「【0018】
UV酸化装置の処理水は、次いで触媒式酸化性物質分解装置14に通水される。触媒式酸化性物質分解装置14の酸化性物質分解触媒としては、酸化還元触媒として知られる貴金属触媒、例えば、金属パラジウム、酸化パラジウム、水酸化パラジウム等のパラジウム(Pd)化合物又は白金(Pt)、なかでも還元作用の強力なパラジウム触媒を好適に使用することができる。このような貴金属触媒は、二酸化チタン、アルミナ、活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂の担体に担持させて用いる。触媒の担持量は通常担体に対する触媒の担持重量で0.1?10重量%とすることが好ましい。」との記載があり、
これには、訂正事項1に係る事項が開示されているということができることから、訂正事項1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同条第3項、第4項の規定に適合するものである。

(イ)訂正事項2について
訂正前の「超純水製造装置」について、製造される超純水の特性に関する「溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が著しく低い高純度超純水を製造する」という限定を付与するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書には、「【0040】
これに対して、実施例1では、触媒式酸化性物質分解装置14でH_(2)O_(2)等の酸化性物質を除去し、この酸化性物質の除去に当たりTOCの溶出の問題がないため、H_(2)O_(2)、DO、TOCがいずれも極低濃度にまで低減された超純水を得ることができる。特に、TOCは比較例1に比べ著しく低減されており、また、触媒式酸化性物質分解装置で酸素の生成が殆どないため、DOも比較例1に比べ一層低減されている。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の超純水製造装置によれば、DO、TOC、H_(2)O_(2)等の酸化性物質濃度が著しく低い高純度超純水を製造することができる。」との記載があり、
これには、訂正事項1に係る事項が開示されているということができることから、訂正事項1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同条第3項、第4項の規定に適合するものである。

(ウ)訂正事項3について
訂正前の「パラジウム触媒又は白金触媒」について、一方の「パラジウム触媒」のみに限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書には、「【0018】
UV酸化装置の処理水は、次いで触媒式酸化性物質分解装置14に通水される。触媒式酸化性物質分解装置14の酸化性物質分解触媒としては、酸化還元触媒として知られる貴金属触媒、例えば、金属パラジウム、酸化パラジウム、水酸化パラジウム等のパラジウム(Pd)化合物又は白金(Pt)、なかでも還元作用の強力なパラジウム触媒を好適に使用することができる。このような貴金属触媒は、二酸化チタン、アルミナ、活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂の担体に担持させて用いる。触媒の担持量は通常担体に対する触媒の担持重量で0.1?10重量%とすることが好ましい。」との記載があり、
これには、訂正事項1に係る事項が開示されているということができることから、訂正事項1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第126条第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同条第3項、第4項の規定に適合するものである。

以上のとおりであるから、本件訂正は、上記の訂正要件を満たすものである。(独立特許要件については、以下、検討する。)

IV.独立特許要件について
本件特許の請求項1に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置と、
酸化還元触媒式酸化性物質分解装置と、
脱気装置と、
混床式イオン交換装置と、
微粒子分離膜装置と
を有し、この順に通水可能とした、溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が著しく低い高純度超純水を製造する超純水製造装置であって、
該酸化還元触媒式酸化性物質分解装置の酸化性物質分解触媒が、二酸化チタン、アルミナ、活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂に担持された、パラジウム触媒であることを特徴とする超純水製造装置。」(以下、「本件訂正発明」という。)

V.引用例記載の発明
(V-1)特開平11-77091号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
(1)「【請求項1】 一次純水を、少なくとも185nm付近の波長を照射可能な紫外線酸化装置、合成炭素系粒状吸着剤を充填した酸化性物質分解装置、膜式脱気装置、非再生型イオン交換装置の順に通水して超純水を得るように設置したことを特徴とする超純水製造装置。」

(2)「【0018】次に、本発明の超純水製造装置を用いて超純水を製造する手順を図1を参照して説明する。図1は本発明に実施の形態における超純水製造装置を示す系統図である。各種前処理工程により得られた、例えば、TOC濃度2ppb 以下の一次純水は、二次系システム10の純水貯槽24に供給される。純水貯槽24に蓄えられる一次純水の抵抗率は、通常、10MΩ・cm以上である。純水貯槽24を出た純水は、紫外線酸化装置26で処理される。紫外線酸化装置26は、高い有機物分解能力がある185nm付近の紫外線も強く照射可能な低圧水銀ランプを備えた紫外線酸化装置であり、水中の有機物を炭酸や有機酸に分解するために設置されている。紫外線酸化装置26の前後の溶存酸素濃度を測定したところ、該溶存酸素濃度が22ppb から6ppb へと激変する現象が認められる。この現象は、紫外線酸化装置26の被処理水中の溶存酸素が有機物の酸化のための酸素源として消費されたり、紫外線と水との相互作用によるラジカル、オゾン及び過酸化水素等の生成によって消費されたりするためと考えられる。従って、紫外線酸化装置26の前後の過酸化水素濃度は数ppb から50ppb へと増加する。」

(3)「【0019】次に、紫外線酸化装置26で処理された水を、酸化性物質分解装置27に通水し、該装置に充填された合成炭素系粒状吸着剤に接触させることにより、処理水中の過酸化水素を分解する。この場合、合成炭素系粒状吸着剤への被処理水の接触は充填方式で行うことが過酸化水素の除去効率の点で好ましい。このような充填方式で被処理水を合成炭素系粒状吸着剤に接触させる場合、通水条件は線流速100m/h 以下、特に20?50m/h とすることが好ましい。線流速が100m/h を超えると過酸化水素が十分に除去されないことがある。」

(4)「【0020】次に、酸化性物質分解装置27で処理された水を膜式脱気装置50に通水して、処理水中の溶存酸素を1ppb 以下、全溶存ガス濃度を3000ppb 以下に低減する。」

(5)「【0021】次に、この処理水を非再生型イオン交換装置であるカートリッジポリッシャ28に通水して、前記膜式脱気装置50から発生する溶出イオンを含む一次純水中のイオンを更に除去する。このように、処理水を酸化性物質分解装置27→膜式脱気装置50→カートリッジポリッシャ28の順に通水することにより、膜式脱気装置50からの溶出イオンを有効に除去できるが、処理水を酸化性物質分解装置27→カートリッジポリッシャ28→膜式脱気装置50の順に通水したのでは、膜式脱気装置50からの溶出イオンを除去できないばかりか溶存酸素や過酸化水素によるカートリッジポリッシャ28の酸化劣化を有効に防止できない。」

(6)「【0022】また、限外濾過膜分離装置30は、水中の残存微粒子等を除去して超純水を製造し、この超純水は使用場所32に供給される。該超純水は使用している時及び使用していない時のいずれの場合でも二次純水循環配管34を通って純水貯槽24に戻り、純水貯槽24→紫外線酸化装置26→酸化性物質分解装置27→膜式脱気装置50→カートリッジポリッシャ28→限外濾過膜分離装置30→純水貯槽24からなる閉ループを常時循環している。」

(7)「【0027】(各装置の仕様等)
紫外線酸化装置; 低圧型TDFL-4(千代田工販社製)紫外線照射量0.3kW・h/m^(3)
酸化性物質分解装置;合成炭化系粒状吸着剤(アンバーソーブ572、ローム&ハース社製)を充填した円筒状の充填塔(高さ90cm、内径30cm)
膜式脱気装置; MJ-520p(大日本インキ化学工業社製)真空度18Torr
カートリッジポリッシャ;カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合充填した混床式イオン交換装置、SV70?80h^(-1)限外濾過膜分離装置;FIT-3016型(旭化成工業社製)」

(8)「【0030】
【発明の効果】本発明によれば、紫外線酸化装置で生成した過酸化水素は、後段の合成炭素系粒状吸着剤を充填した酸化性物質分解装置及び膜式脱気装置で除去して、過酸化水素濃度が極めて低い超純水を得ることができる。また、溶存酸素は膜式脱気装置で除去されるため、過酸化水素濃度及び溶存酸素濃度が共に極めて低い超純水を得ることができ、シリコンウエハ上の自然酸化膜の形成を抑制できる。」

(9)上記(2)の「【0018】・・・ 紫外線酸化装置26は、高い有機物分解能力がある185nm付近の紫外線も強く照射可能な低圧水銀ランプを備えた紫外線酸化装置であり、水中の有機物を炭酸や有機酸に分解するために設置されている。・・・」との記載、および、一般的に、超純水におけるTOC濃度を極めて少なくすること自体、普通に行われている事項であることから、
引用例1には、「超純水におけるTOC濃度を極めて少なくする(TOC濃度が極めて少ない超純水を得る)」ことが記載されているということができる。

(10)上記(5)の「【0021】・・・このように、処理水を酸化性物質分解装置27→膜式脱気装置50→カートリッジポリッシャ28の順に通水することにより、膜式脱気装置50からの溶出イオンを有効に除去できるが、処理水を酸化性物質分解装置27→カートリッジポリッシャ28→膜式脱気装置50の順に通水したのでは、膜式脱気装置50からの溶出イオンを除去できないばかりか溶存酸素や過酸化水素によるカートリッジポリッシャ28の酸化劣化を有効に防止できない。」との記載からして、
引用例1には、「過酸化水素と溶存酸素(DO)によるカートリッジポリッシャ28の酸化劣化を防止する」ことが記載されているということができる。

上記(1)?(8)の記載事項および上記(9)(10)の検討事項より、引用例1には、
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置26と、
酸化性物質分解装置27と、
膜式脱気装置50と、
カートリッジポリッシャ(混床式イオン交換装置)28と、
限外濾過膜分離装置30と
を有し、この順に通水可能とした、過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて低い超純水を得る超純水製造装置であって、
該酸化性物質分解装置27の吸着剤が、合成炭素系粒状吸着剤である、超純水製造装置。」の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が開示されている。

(V-2)特開平9-192658号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
(11)「【0002】
【従来の技術】従来から、液晶や半導体素子(LSI)、あるいは医薬品の製造工程においては、イオン状物質、微粒子、有機物、溶存ガスおよび生菌等の含有量の極めて少ない超純水が用いられている。特に、電子工業においては、LSIの集積度の増加に伴って超純水の純度に対する要求は益々厳しくなってきており、特に、超純水中のΤOCおよび溶存酸素の低減が大きな課題である。」

(12)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の問題を解決すべくなされたもので、超純水中のTOC濃度および溶存酸素濃度の増加と機器の劣化とをほぼ防止する超純水製造装置を提供することを目的とする。」

(13)「【0009】これらの問題について、本発明者らが鋭意研究した結果、有機物濃度を極めて低濃度にまで減少させた一次純水に対し、180?190nmの波長を有する紫外線、特に、184.9nmに波長のピークを有する紫外線を紫外線照射装置により照射した場合、当該紫外線照射装置出口において微量の過酸化水素(H_(2)O_(2))がリークすることを見いだした。微量の過酸化水素が生成する機構としては次式に示すように、水の紫外線分解により生成したOΗラジカル(ヒドロキシラジカル)が一次純水中の微量な有機物と反応できず、OHラジカル同士が反応して生成する機構が提示される。」

(14)「【0010】H_(2)O+hν→・OH
・OH+・OH→H_(2)O_(2)
そして、リークした過酸化水素が後段に設置されたポリッシャー装置(イオン交換装置)内部のイオン交換樹脂を酸化劣化させることによりイオン交換樹脂から微細な樹脂の破片や有機物等が発生し、ポリッシャー装置(イオン交換装置)を通過した被処理水中のTOC濃度が、二次系システムにおいて処理する以前の一次純水に比べて上昇したと推測することができるのである。また、リークした過酸化水素がポリッシャー装置(イオン交換装置)内部のイオン交換樹脂を酸化劣化させる際、一部の過酸化水素が酸素と水とに分解されることにより、ポリッシャー装置(イオン交換装置)を通過した被処理水中の溶存酸素濃度が、二次系システムにおいて処理する以前の一次純水に比べて上昇したと推測される。さらに、180?190nmの波長を有する紫外線を発生する紫外線照射装置の後段に膜脱気装置を配置した場合には、リークした過酸化水素により膜脱気装置の脱気膜が急速に酸化劣化したと推測することができるのである。」

(15)「【0015】また、本発明においては、被処理水である一次純水は、アニオン交換樹脂、特に好ましくは強塩基性アニオン交換樹脂を充填した単床式イオン交換装置に導入され、被処理水中のアニオン成分が除去されるとともに、被処理水中のpHはアルカリサイドにシフトされる。次に、被処理水は、180?190nmの波長を有する紫外線を発生する紫外線照射装置に導入され、被処理水中に溶存する有機物がほぼ完全に有機酸あるいは二酸化炭素にまで分解される。また同時に、OΗラジカル同士の反応により生成した過酸化水素は、被処理水のpΗがアルカリサイドにシフトしているために自己分解し、酸素と水に変化する。次いで、被処理水は、気体透過膜を装備した膜脱気装置に導入され、紫外線照射装置により発生した酸素と二酸化炭素が除去される。最後に、膜脱気装置において脱ガスされた被処理水は、ポリッシャー装置に導入され、被処理水中のイオン成分が除去される。」

(16)「【0016】さらに、本発明においては、被処理水である一次純水は、180?190nmの波長を有する紫外線を発生する紫外線照射装置に導入され、被処理水中に溶存する有機物がほぼ完全に有機酸あるいは二酸化炭素にまで分解される。次に、被処理水はパラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置に導入され、被処理水中の過酸化水素がパラジウムを担持した触媒樹脂媒表面上で紫外線照射装置において生成した水素と反応して水に変化する。」

(17)「【0017】H_(2)O_(2)+H_(2)+Pd→2H_(2)O+Pd
最後に、被処理水はポリッシャー装置に導入され、被処理水中のイオン成分が除去される。」

(18)「【0022】(5)H_(2)O_(2)+hν→O_(2)+H_(2)O
また、紫外線照射装置により紫外線を照射した後に、被処理水中からイオン成分を除去する場合、通常、ポリッシャー装置に被処理水を導入する。このとき使用されるポリッシャー装置としては、被処理水中の二酸化炭素、有機酸あるいは他のイオン成分を除去するために強塩基性アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂を充填した非再生型の混床式イオン交換装置を好ましく用いることができる。イオン交換装置に用いるイオン交換樹脂としては、新品もしくはそれに類する破砕が無く、イオン交換性能が高く、また溶出のないものが望ましい。イオン交換樹脂に要求される性能は、本発明で用いられる再生型あるいは非再生型の単床式イオン交換装置に充填して用いられる強塩基性アニオン交換樹脂についても同様である。」

(19)「【0038】図2において、符号13は、単床式イオン交換装置であり、アニオン交換樹脂として強塩基性アニオン交換樹脂デュオライトA-113plus(ローム&ハース社)56lを予め再生し、OH型に変換した後に充填したものである。符号9、11および12は、それぞれ低圧紫外線ランプ酸化装置、膜脱気装置およびポリッシャー装置であり、図1と全く同一のものである。」

(20)「【0042】表2に、本実施例および本比較例における、ポリッシャー装置12の入口および出口での被処理水の水質測定結果を示す。」

(21)「【0044】表2から明らかなように、実施例2においては、ポリッシャー装置12の入口および出口での被処理水中の過酸化水素濃度は0.00ppmであり、一方、比較例1においては、ポリッシャー装置12の入口での被処理水中の過酸化水素濃度は、低圧紫外線ランプ酸化装置9の出口における被処理水中の過酸化水素濃度0.02ppmと同値であった。これは、実施例2では、単床式イオン交換装置13に被処理水を通過させたために被処理水のpHがアルカリ側にシフト(本実施例におけるpHは8.7、pHの測定は純水用pH計、東亜電波工業(株)、FAR-101による)することから、低圧紫外線ランプ酸化装置9で発生した過酸化水素が自己分解したのに対し、比較例2では単床式イオン交換装置13をバイパスしたために、低圧紫外線ランプ酸化装置9に供給される被処理水のpHが中性付近であり、このため低圧紫外練ランプ酸化装置9内で発生した過酸化水素が自己分解しないために低圧紫外線ランプ酸化装置9より過酸化水素がリークしてポリッシャー装置12の入口まで到達したものと推測される。」

(22)「【0047】(実施例3および比較例3)図3は、本発明の他の実施例である超純水製造装置(二次系システム)の構成を示した図である。」

(23)「【0054】表3から明らかなように、実施例3においては、ポリッシャー装置12の入口および出口での被処理水中の過酸化水素濃度は0.00ppmであり、一方、比較例3においては、ポリッシャー装置12の入口での被処理水中の過酸化水素濃度は、低圧紫外線ランプ酸化装置9の出口における被処理水中の過酸化水素濃度0.02ppmと同値であった。これは、実施例3では、パラジウム触媒樹脂装置14に被処理水を通過させたために低圧紫外線ランプ酸化装置9内で発生した過酸化水素が分解されたのに対し、比較例3では、パラジウム触媒樹脂装置14をバイパスしたために低圧紫外線ランプ酸化装置9内で発生した過酸化水素が分解されず、低圧紫外線ランプ酸化装置9よりリークした過酸化水素がポリッシャー装置12の入口まで到達したものと推測される。」

(24)【0043】【表2】には、「実施例2の入口の溶存酸素が0.5ppbであり、同H_(2)O_(2)が0.00ppmである」ことの表示がある。

(25)【0053】【表3】には、「実施例3の入口の溶存酸素が0.8ppbであり、同H_(2)O_(2)が0.00ppmである」ことの表示がある。

(26)【図2】には、「ポリッシャー装置12のすぐ上流に膜脱気装置11が配置されている」ことの図示がある。

(27)【図3】には、「パラジウム触媒樹脂装置14のすぐ下流にポリッシャー装置12が配置されている」ことの図示がある。

(28)上記(11)の「【0002】
【従来の技術】従来から・・・特に、超純水中のΤOCおよび溶存酸素の低減が大きな課題である。」との記載、上記(12)の「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の問題を解決すべくなされたもので、超純水中のTOC濃度および溶存酸素濃度の増加と機器の劣化とをほぼ防止する超純水製造装置を提供することを目的とする。」との記載、および、一般的に、超純水におけるTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度を極めて少なくすること自体、普通に行われている事項であることから、
引用例2には、「超純水におけるTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度を極めて少なくする(TOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて少ない超純水を得る)」ことが記載されているということができる。

(29)上記(14)の「【0010】・・・リークした過酸化水素が後段に設置されたポリッシャー装置(イオン交換装置)内部のイオン交換樹脂を酸化劣化させることによりイオン交換樹脂から微細な樹脂の破片や有機物等が発生し、ポリッシャー装置(イオン交換装置)を通過した被処理水中のTOC濃度が、二次系システムにおいて処理する以前の一次純水に比べて上昇したと推測することができるのである。また、リークした過酸化水素がポリッシャー装置(イオン交換装置)内部のイオン交換樹脂を酸化劣化させる際、一部の過酸化水素が酸素と水とに分解されることにより、ポリッシャー装置(イオン交換装置)を通過した被処理水中の溶存酸素濃度が、二次系システムにおいて処理する以前の一次純水に比べて上昇したと推測される。さらに、180?190nmの波長を有する紫外線を発生する紫外線照射装置の後段に膜脱気装置を配置した場合には、リークした過酸化水素により膜脱気装置の脱気膜が急速に酸化劣化したと推測することができるのである。」との記載、上記(16)の「【0016】さらに、本発明においては、被処理水である一次純水は、180?190nmの波長を有する紫外線を発生する紫外線照射装置に導入され、被処理水中に溶存する有機物がほぼ完全に有機酸あるいは二酸化炭素にまで分解される。次に、被処理水はパラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置に導入され、被処理水中の過酸化水素がパラジウムを担持した触媒樹脂媒表面上で紫外線照射装置において生成した水素と反応して水に変化する。」との記載、上記(17)の「【0017】H_(2)O_(2)+H_(2)+Pd→2H_(2)O+Pd・・・」との記載、上記(22)の「【0047】(実施例3および比較例3)図3は、本発明の他の実施例である超純水製造装置(二次系システム)の構成を示した図である。」との記載、上記(23)の「【0054】表3から明らかなように、実施例3においては、ポリッシャー装置12の入口および出口での被処理水中の過酸化水素濃度は0.00ppmであり・・・」との記載、上記(25)の「実施例3の入口の溶存酸素が0.8ppbであり、同H_(2)O_(2)が0.00ppmである」との表示内容、および、一般的に、超純水における過酸化水素濃度を極めて少なくすること自体、普通に行われている事項であることから、
引用例2には、「酸素を発生させずに過酸化水素を完全に除去する、パラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置14」、「触媒樹脂装置14の触媒が、イオン交換樹脂に担持されたパラジウム触媒である」こと、および「過酸化水素によるイオン交換樹脂と脱気膜の酸化劣化を防止すると共に、超純水における過酸化水素濃度を極めて少なくする(過酸化水素濃度が極めて少ない超純水を得る)」ことが記載されているということができる。

(30)上記(11)の「【0002】・・・従来から・・・微粒子・・・の含有量の極めて少ない超純水が用いられている。・・・超純水の純度に対する要求は益々厳しくなってきており・・・」との記載からして、超純水製造装置において、微粒子を除去(分離)する装置を設けること自体、普通に行われている事項であるということができるので、甲第2号証には、「微粒子分離装置を有する」ことが記載されているということができる。

(31)上記(17)の「【0017】H_(2)O_(2)+H_(2)+Pd→2H_(2)O+Pd
最後に、被処理水はポリッシャー装置に導入され、被処理水中のイオン成分が除去される。」との記載からして、触媒のパラジウムは、過酸化水素と水素を反応させて水にするものである。つまり、過酸化水素を還元すると共に水素を酸化する「酸化還元触媒」であるということができるので、引用例2には、「酸化還元触媒としてのパラジウム」が記載されているということができる。

上記(11)?(27)の記載事項および上記(28)?(31)の検討事項より、引用例2(実施例3)には、
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置と、
酸素を発生させずに過酸化水素を完全に除去する、パラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置(「酸化還元触媒式」酸化性物質分解装置)と、
ポリッシャー装置(混床式イオン交換装置)と、
微粒子分離装置と
を有する超純水製造装置であって、
該触媒樹脂装置の触媒(酸化性物質分解触媒)が、イオン交換樹脂に担持されたパラジウム触媒であり、
過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて低い超純水を得る超純水製造装置。」の発明(以下、「引用例2記載の発明」という。)が開示されている。

VI.対比・判断
本件訂正発明と引用例1記載の発明とを対比する。
引用例1記載の発明の「過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて低い超純水を得る」超純水製造装置と、本件訂正発明の「溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が著しく低い高純度超純水を製造する」超純水製造装置とは、「溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が極めて低い超純水を製造する」超純水製造装置という点で共通している。

上記より、引用例1記載の発明は、
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置26と、
酸化性物質分解装置27と、
膜式脱気装置50と、
カートリッジポリッシャ(混床式イオン交換装置)28と、
限外濾過膜分離装置30と
を有し、この順に通水可能とした、溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が極めて低い超純水を製造する超純水製造装置であって、
該酸化性物質分解装置27の吸着剤が、合成炭素系粒状吸着剤である、超純水製造装置。」であるということができ、
本件訂正発明と引用例1記載の発明とは、
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置と、
酸化性物質分解装置と、
脱気装置と、
混床式イオン交換装置と、
微粒子分離膜装置と
を有し、この順に通水可能とした、溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が極めて低い超純水を製造する超純水製造装置。」という点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
本件訂正発明では、「酸化性物質分解触媒が、二酸化チタン、アルミナ、活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂に担持された、パラジウム触媒である」「酸化還元触媒式」酸化性物質分解装置であるのに対して、
引用例1記載の発明では、「吸着剤が、合成炭素系粒状吸着剤である」酸化性物質分解装置である点。

<相違点2>
本件訂正発明では、「溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が著しく低い高純度超純水を製造する」超純水製造装置であるのに対して、
引用例1記載の発明では、「溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が極めて低い超純水を製造する」超純水製造装置である点。

両相違点について検討する。
<相違点1>について
上記「本件訂正発明と引用例1記載の発明との対比」で示したように、引用例1記載の発明は、
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置26と、
酸化性物質分解装置27と、
膜式脱気装置50と、
カートリッジポリッシャ(混床式イオン交換装置)28と、
限外濾過膜分離装置30と
を有し、この順に通水可能とした、溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が極めて低い超純水を製造する超純水製造装置であって、
該酸化性物質分解装置27の吸着剤が、合成炭素系粒状吸着剤である、超純水製造装置。」であるということができ、
一方、上記(V-2)で示したように、引用例2記載の発明は、
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置と、
酸素を発生させずに過酸化水素を完全に除去する、パラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置(「酸化還元触媒式」酸化性物質分解装置)と、
ポリッシャー装置(混床式イオン交換装置)と、
微粒子分離装置と
を有する超純水製造装置であって、
該触媒樹脂装置の触媒(酸化性物質分解触媒)が、イオン交換樹脂に担持されたパラジウム触媒であり、
過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて低い超純水を得る超純水製造装置。」であり、これは、
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置と、
・・・
溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が極めて低い超純水を製造する超純水製造装置。」であるということができる。

ここで、引用例1、2記載の発明を対比すると、両者は、
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置と、
酸化性物質分解装置と、
混床式イオン交換装置と、
微粒子分離装置と
を有する超純水製造装置であって、
溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が極めて低い超純水を製造する超純水製造装置。」という点で共通している。
さらに、引用例1には、上記(V-1)(10)で示したように、「過酸化水素と溶存酸素(DO)によるカートリッジポリッシャ28の酸化劣化を防止する」こと、つまり、「過酸化水素と溶存酸素(DO)によるイオン交換樹脂の酸化劣化を防止する」ことが記載されているということができ、
一方、引用例2には、上記(V-2)(29)で示したように、「過酸化水素によるイオン交換樹脂と脱気膜の酸化劣化を防止する・・・」ことが記載されているということができることから、
両者は、「酸化性物質(過酸化水素、溶存酸素(DO))による部材(イオン交換樹脂、脱気膜)の酸化劣化を防止する」という点でも共通している。
そうすると、引用例1記載の発明の「酸化性物質分解装置27と、膜式脱気装置(脱気装置)50」および「酸化性物質分解装置27の吸着材が、合成炭素系粒状吸着材であ」ることについて、上記の点で共通する引用例2記載の発明の「酸素を発生させずに過酸化水素を完全に除去する、パラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置(「酸化還元触媒式」酸化性物質分解装置)14」および「触媒樹脂装置14の触媒(酸化性物質分解触媒)が、イオン交換樹脂に担持されたパラジウム触媒であ」ることを適用してこれに代えることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、上記(V-2)によれば、
引用例2記載の発明の実施例3(【表3】【図3】等)では、「酸素を発生させずに過酸化水素を完全に除去する、パラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置(「酸化還元触媒式」酸化性物質分解装置)14」から出た、溶存酸素(DO)濃度が0.8ppbであると共にH_(2)O_(2)濃度が0.00ppmである被処理水をポリッシャー装置(混床式イオン交換装置)12に送り、
同実施例2(【表2】【図2】等)では、「膜脱気装置11」から出た、溶存酸素(DO)濃度が0.5ppbであると共にH_(2)O_(2)濃度が0.00ppmである被処理水をポリッシャー装置12に送っており、
また、引用例1、2記載の発明は、「溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が極めて低い超純水を製造する」超純水製造装置であることから、溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度を(必要に応じて)さらに低くしたいとの技術的思想を内包するものであるとみるのが妥当である。
そうすると、引用例1記載の発明について、上記で示したように、「酸素を発生させずに過酸化水素を完全に除去する、パラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置(「酸化還元触媒式」酸化性物質分解装置)14」および「触媒樹脂装置14の触媒(酸化性物質分解触媒)が、イオン交換樹脂に担持されたパラジウム触媒であ」ることに代えたとき、
「酸化還元触媒式」酸化性物質分解装置から出た、溶存酸素(DO)濃度が0.8ppbであると共にH_(2)O_(2)濃度が(H_(2)O_(2)による脱気膜の酸化劣化を生じさせない)0.00ppmであるとみることができる被処理水について、これの溶存酸素(DO)濃度をさらに低くするために、上記被処理水を膜脱気装置(脱気装置)11に送って処理して、溶存酸素(DO)濃度が0.5ppbであると共にH_(2)O_(2)濃度が0.00ppmである被処理水にする、つまり、「酸化還元触媒式」酸化性物質分解装置のすぐ下流に「脱気装置」を配置し、「脱気装置」から出た被処理水をカートリッジポリッシャ(ポリッシャー装置)28に送ることは、当業者であれば適宜決定する設計的事項であるということができる。
したがって、相違点1に係る本件訂正発明の発明特定事項とすることは、引用例1、2記載の発明に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

<相違点2>について
引用例1記載の発明において、上記「<相違点1>について」で検討したように、「酸化還元触媒式」酸化性物質分解装置のすぐ下流に「脱気装置」を配置し、「脱気装置」から出た被処理水をカートリッジポリッシャ(ポリッシャー装置)28に送るようにする際、脱気装置から出た「溶存酸素(DO)濃度が0.5ppbであると共にH_(2)O_(2)濃度が0.00ppmである被処理水」がカートリッジポリッシャ(混床式イオン交換装置)28と限外濾過膜分離装置30を通過した後のTOC濃度は、上記(V-1)(5)の「【0021】・・・溶存酸素や過酸化水素によるカートリッジポリッシャ28の酸化劣化・・・」との記載があるとしても、上記(V-1)(2)の「【0018】・・・例えば、TOC濃度2ppb 以下の一次純水は、二次系システム10の純水貯槽24に供給される。・・・純水貯槽24を出た純水は、紫外線酸化装置26で処理される。紫外線酸化装置26は、高い有機物分解能力がある185nm付近の紫外線も強く照射可能な低圧水銀ランプを備えた紫外線酸化装置であり、水中の有機物を炭酸や有機酸に分解するために設置されている。・・・」(システムの最初の「高い有機物分解能力がある紫外線酸化装置」において有機物は炭酸や有機酸に分解されている)、上記(V-1)(5)の「【0021】次に、この処理水を非再生型イオン交換装置であるカートリッジポリッシャ28に通水して、前記膜式脱気装置50から発生する溶出イオンを含む一次純水中のイオンを更に除去する。・・・」(有機系のイオンを除去する)、上記(V-1)(6)の「【0022】また、限外濾過膜分離装置30は、水中の残存微粒子等を除去して超純水を製造し、この超純水は使用場所32に供給される。・・・」(イオン交換樹脂の酸化劣化等による有機系の微粒子等を除去する)、上記(V-2)(14)の「【0010】・・・リークした過酸化水素が後段に設置されたポリッシャー装置(イオン交換装置)内部のイオン交換樹脂を酸化劣化させることによりイオン交換樹脂から微細な樹脂の破片や有機物等が発生し、ポリッシャー装置(イオン交換装置)を通過した被処理水中のTOC濃度が、二次系システムにおいて処理する以前の一次純水に比べて上昇し・・・」(H_(2)O_(2)濃度が小さければこれによるイオン交換樹脂の酸化劣化に基づくTOC濃度の上昇も小さい)との記載からして、極めて低い濃度(ゼロに近い濃度)であるとみるのが妥当であり、
同じく、脱気装置から出た「溶存酸素(DO)濃度が0.5ppbであると共にH_(2)O_(2)濃度が0.00ppmである被処理水」がカートリッジポリッシャ(混床式イオン交換装置)28と限外濾過膜分離装置30を通過した後の溶存酸素(DO)濃度およびH_(2)O_(2)濃度は、上記(V-1)(5)の「【0021】・・・溶存酸素や過酸化水素によるカートリッジポリッシャ28の酸化劣化・・・」との記載があるとしても、(V-2)(14)の「【0010】・・・リークした過酸化水素がポリッシャー装置(イオン交換装置)内部のイオン交換樹脂を酸化劣化させる際、一部の過酸化水素が酸素と水とに分解されることにより、ポリッシャー装置(イオン交換装置)を通過した被処理水中の溶存酸素濃度が、二次系システムにおいて処理する以前の一次純水に比べて上昇し・・・」(H_(2)O_(2)濃度が小さければこれによるイオン交換樹脂の酸化劣化に基づく溶存酸素濃度の上昇も小さい)との記載からして、脱気装置から出た被処理水の溶存酸素(DO)濃度およびH_(2)O_(2)濃度(0.5ppbおよび0.00ppm)と同等であるとみるのが妥当である。
一方、訂正特許明細書の【0037】【表1】には、実施例1の超純水の水質について、TOCが0.28(μg/L)(ppb)、DOが0.5(μg/L)(ppb)、H_(2)O_(2)が2.5(μg/L)(ppb)であるとの表示がある。
そうすると、引用例1記載の発明において、「酸化還元触媒式」酸化性物質分解装置のすぐ下流に配置した脱気装置から出た被処理水がカートリッジポリッシャ(混床式イオン交換装置)28と限外濾過膜分離装置30を通過した※後の「溶存酸素(DO)」、「全有機態酸素(TOC)」および「過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度」と、本件訂正発明(実施例1)の超純水の「溶存酸素(DO)」、「全有機態酸素(TOC)」および「過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度」とが近似していると想定されるので、引用例1記載の発明において、上記のように通過させることで、「溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が極めて低い超純水」を「溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が著しく低い高純度超純水」にできることは、当業者であれば容易に想起し得ることであるということができる。
したがって、相違点2に係る本件訂正発明の発明特定事項とすることは、引用例1、2記載の発明に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

次に、平成24年9月12日付け意見書における請求人の主張(2-1)、(2-2)、(3-2)及び(3-3)について検討する。
(2-1)について
◆請求人の主張(概要)
引用例1記載の発明には、紫外線照射装置26よりも後段に、TOC濃度の上昇要因となる酸化性物質分解装置物27があるにもかかわらず、引用例1は、上昇後のTOCについて何ら言及していない。
そうすると、訂正拒絶理由において、このような引用例1をもって「引用例1には、『超純水におけるTOC濃度を極めて少なくする(TOC濃度が極めて少ない超純水を得る)』ことが記載されている」という認定をすることは誤りである。
したがって、上記認定に基づく、引用例1記載の発明が「過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて低い超純水を得る超純水製造装置」との認定も誤りである。
◇当審の判断
引用例1記載の発明において、上記(V-1)(9)で示した「『【0018】・・・ 紫外線酸化装置26は、高い有機物分解能力がある185nm付近の紫外線も強く照射可能な低圧水銀ランプを備えた紫外線酸化装置であり、水中の有機物を炭酸や有機酸に分解するために設置されている。・・・』との記載、および、一般的に、超純水におけるTOC濃度を極めて少なくすること自体、普通に行われている事項である」こと、
さらに、(V-1)(8)で示した「【0030】
【発明の効果】本発明によれば、紫外線酸化装置で生成した過酸化水素は、後段の合成炭素系粒状吸着剤を充填した酸化性物質分解装置及び膜式脱気装置で除去して、過酸化水素濃度が極めて低い超純水を得ることができる。また、溶存酸素は膜式脱気装置で除去されるため、過酸化水素濃度及び溶存酸素濃度が共に極めて低い超純水を得ることができ、シリコンウエハ上の自然酸化膜の形成を抑制できる。」ことからして、
全ての処理を経た後の超純水におけるTOC濃度は、著しく少なくなったものではないものの、超純水における濃度である以上、紫外線照射装置26よりも後段にTOCを上昇させる酸化性物質分解装置物27があるとしても、過酸化水素濃度及び溶存酸素濃度と同じく極めて低く(少なく)なったものであるとみるべきである。
そうすると、「引用例1には、『超純水におけるTOC濃度を極めて少なくする(TOC濃度が極めて少ない超純水を得る)』ことが記載されている」ということができ、この認定に誤りはない。
したがって、上記認定に基づく、引用例1記載の発明が「過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて低い超純水を得る超純水製造装置」であるとの認定にも誤りはない。

(2-2)について
◆請求人の主張(概要)
引用例2記載の発明は、明細書段落【0007】に記載されているように、「超純水中のTOC濃度および溶存酸素濃度の増加と機器の劣化とをほぼ防止する」ことを解決課題(目的)とするものであって、TOC濃度および溶存酸素濃度を極めて小さくすることを目的にするものではなく、あるレベルからの増加を防止することと、あるレベルからさらに低減させることとは明らかに異なるのであり、引用例2には、DO濃度を低減させることについての開示はない。
また、引用例2記載の発明(第3発明)は、パラジウム触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置の後段に脱気膜を設けるものではない。つまり、それ以上の溶存酸素の低減を図る必要がないことを開示するものである。
そうすると、訂正拒絶理由において、「引用例2には、『超純水におけるTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度を極めて少なくする(TOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて少ない超純水を得る)』ことが記載されている」という認定をすることは誤りである。
したがって、上記認定に基づく、引用例2記載の発明が「過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて低い超純水を得る超純水製造装置」であるとの認定も誤りである。
◇当審の判断
引用例2記載の発明(第3発明)において、上記(V-1)(28)で示した「上記(11)の『【0002】
【従来の技術】従来から・・・特に、超純水中のΤOCおよび溶存酸素の低減が大きな課題である。』との記載、上記(12)の『【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の問題を解決すべくなされたもので、超純水中のTOC濃度および溶存酸素濃度の増加と機器の劣化とをほぼ防止する超純水製造装置を提供することを目的とする。』との記載、および、一般的に、超純水におけるTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度を極めて少なくすること自体、普通に行われている事項である」こと、
さらに、(V-2)(29)で示した「・・・上記(16)の『【0016】さらに、本発明においては、被処理水である一次純水は、180?190nmの波長を有する紫外線を発生する紫外線照射装置に導入され、被処理水中に溶存する有機物がほぼ完全に有機酸あるいは二酸化炭素にまで分解される。次に、被処理水はパラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置に導入され、被処理水中の過酸化水素がパラジウムを担持した触媒樹脂媒表面上で紫外線照射装置において生成した水素と反応して水に変化する。』との記載、上記(17)の『【0017】H_(2)O_(2)+H_(2)+Pd→2H_(2)O+Pd・・・』との記載、上記(22)の『【0047】(実施例3および比較例3)図3は、本発明の他の実施例である超純水製造装置(二次系システム)の構成を示した図である。』との記載、上記(23)の『【0054】表3から明らかなように、実施例3においては、ポリッシャー装置12の入口および出口での被処理水中の過酸化水素濃度は0.00ppmであり・・・』との記載、上記(25)の『実施例3の入口の溶存酸素が0.8ppbであり、同H_(2)O_(2)が0.00ppmである』との表示内容、および、一般的に、超純水における過酸化水素濃度を極めて少なくすること自体、普通に行われている事項であることから、引用例2には、・・・『・・・超純水における過酸化水素濃度を極めて少なくする(過酸化水素濃度が極めて少ない超純水を得る)ことが記載されているということができる」ことからして、
全ての処理を経た後の超純水におけるTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度は、著しく少なくなったものではないものの、超純水における濃度である以上、パラジウム触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置(「酸化還元触媒式」酸化性物質分解装置)の後段に脱気膜を新たに設けるまでもなく、過酸化水素濃度と同じく極めて低く(少なく)なり、機器の劣化を防止するものであるとみるべきである。
そうすると、「引用例2には、『超純水におけるTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度を極めて少なくする(TOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて少ない超純水を得る)』ことが記載されている」ということができ、この認定に誤りはない。
したがって、上記認定に基づく、引用例2記載の発明が「過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて低い超純水を得る超純水製造装置」であるとの認定にも誤りはない。

なお、請求人の上記「引用例2記載の発明(第3発明)は、・・・それ以上の溶存酸素の低減を図る必要がないことを開示するものである。」との主張については、下記「(3-2)及び(3-3)について」内で検討する。

(3-2)及び(3-3)について
◆請求人の主張(概要)
引用例1、2記載の発明は、「過酸化水素濃度」、「TOC濃度」、「溶存酸素(DO)濃度」の三つの成分全てを高度に減少させるという新規な課題を解決しうる構成を採用したものではなく、一方、本件訂正発明は、三つの成分全てを高度に減少させるという新規な課題を解決しうる構成を採用したものである。
また、訂正拒絶理由は、「DO」、「TOC」、「H_(2)O_(2)」の濃度が極めて低い超純水を製造する超純水製造装置である点で本件発明と共通しているという誤った認定をし、この誤った認定に基いて引用例2との組み合わせを容易であるとまで判断しており、この前提が成り立たない以上、引用例1、2記載の発明を組み合わせる合理的理由は存在しない。
さらに、引用例1の出願時、引用例2が公知になっているにもかかわらず、引用例1記載の発明の「合成炭素系粒状吸着材を充填した酸化性物質分解装置」の代わりに、本件訂正発明(引用例2記載の発明)の「触媒式の酸化性物質分解装置(酸素が発生しない『パラジウム触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置』)」を用いるかどうかの検討が行われておらず(これを示す文献もなく)、これは、三つの成分全てを高度に減少させるという技術的課題が存在してなかったことを意味している。
そうすると、本件訂正発明の解決しようとする課題は引用例1、2においては認識されておらず、本件訂正発明の技術的課題を内包していない従前の公知技術を組み合わせるのであれば、少なくとも各引用例において、H_(2)O_(2)を分解するために「触媒(パラジウム)式の酸化性物質分解装置」を採用した場合においても後段に「脱気装置」を設けることが示唆等されている必要がある(しかしながら、示唆等はない)。
したがって、各引用例において本件訂正発明の技術的課題の示唆や組み合わせの動機づけとなる記載がない以上、本件訂正発明が引用例1、2記載の発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであると結論づけるのは事後分析的な思考によるものであると言わざるをえない。
◇当審の判断
引用例1の出願時(引用例2は公知であるとき)に、引用例1記載の発明の「合成炭素系粒状吸着材を充填した酸化性物質分解装置」の代わりに、引用例2記載の発明の「パラジウム触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置(触媒式の酸化性物質分解装置)」を用いるかどうかを検討することについて、検討が行われていたとしても、例えばコスト上の観点から実現化の検討にまで至らなかった(文献に顕れない)場合があることは充分に想起できることから、検討を示す証拠等が存在しないことを以て、「過酸化水素濃度」、「TOC濃度」、「溶存酸素(DO)濃度」の三つの全てを低減させるという課題が存在していなかったと断ずることはできない。
また、上記で示したように、引用例1、2記載の発明は、「過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて低い超純水を得る超純水製造装置」であるということができ、これ自体、溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度を(必要に応じて)さらに低くしたいとの技術的思想(技術的課題)を内包するものであるとみるのが妥当である。つまり、引用例1、2には、「溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が極めて低い」超純水を「溶存酸素(DO)、全有機態酸素(TOC)および過酸化水素(H_(2)O_(2))の濃度が著しく(さらに)低い」超純水にしようとの動機付けがあるというべきである。
そうすると、引用例1、2において、上記の技術的課題及び動機付けがある以上、上記「<相違点1>について」で示した「引用例1記載の発明について、・・・『酸素を発生させずに過酸化水素を完全に除去する、パラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置(「酸化還元触媒式」酸化性物質分解装置)14』および『触媒樹脂装置14の触媒(酸化性物質分解触媒)が、イオン交換樹脂に担持されたパラジウム触媒であ』ることに代えたとき、
『酸化還元触媒式』酸化性物質分解装置から出た、溶存酸素(DO)濃度が0.8ppbであると共にH_(2)O_(2)濃度が(H_(2)O_(2)による脱気膜の酸化劣化を生じさせない)0.00ppmであるとみることができる被処理水について、これの溶存酸素(DO)濃度をさらに低くするために、上記被処理水を膜脱気装置(脱気装置)11に送って処理して、溶存酸素(DO)濃度が0.5ppbであると共にH_(2)O_(2)濃度が0.00ppmである被処理水にする、つまり、『酸化還元触媒式』酸化性物質分解装置のすぐ下流に『脱気装置』を配置し、『脱気装置』から出た被処理水をカートリッジポリッシャ(ポリッシャー装置)28に送ることは、当業者であれば適宜決定する設計的事項であるということができる。」との判断を行うことは極めて妥当であり、この判断に誤りはない。
したがって、「各引用例において本件訂正発明の技術的課題の示唆や組み合わせの動機づけとなる記載がない以上、本件訂正発明が引用例1、2記載の発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであると結論づけるのは事後分析的な思考によるものであると言わざるをえない。」ということはできない。

上記より、意見書における請求人の主張を採用することはできない。

よって、本件訂正発明は、引用例1、2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

VII.まとめ
以上のとおり、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第5項の規定に適合しないものであるから、本件訂正は認めることができない。
 
審理終結日 2012-11-09 
結審通知日 2012-11-13 
審決日 2012-11-28 
出願番号 特願2001-10433(P2001-10433)
審決分類 P 1 41・ 121- Z (C02F)
P 1 41・ 575- Z (C02F)
P 1 41・ 572- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富永 正史  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 中澤 登
斉藤 信人
登録日 2010-07-23 
登録番号 特許第4552327号(P4552327)
発明の名称 超純水製造装置  
代理人 早川 裕司  
代理人 村雨 圭介  
代理人 大窪 克之  
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