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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B05D
管理番号 1268723
審判番号 不服2009-11637  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-25 
確定日 2013-01-09 
事件の表示 特願2002-591166「コーティングされたプラスチック物体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月28日国際公開、WO02/94458、平成17年 4月 7日国内公表、特表2005-508728〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成14年3月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年3月29日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成21年3月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月25日に拒絶査定を不服として審判請求がなされると同時に手続補正がなされたが、平成24年3月22日付けで当審から拒絶理由が通知され、平成24年6月27日に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成24年6月27日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「少なくとも1つの機能層と、前記機能層と基材との間にある少なくとも1つの中間層と、を有するプラスチック基材のコーティング方法であって、
前記プラスチック基材はポリメタクリル酸メチル(PMMA)またはその誘導体を含み、
少なくとも1種類の金属酸化物を含む少なくとも1つの中間層が前記基材に適用され、
前記金属酸化物が金属Si、Ti、TaまたはNbの酸化物であり、
PICVD法によって前記中間層および/または前記少なくとも1つの機能層を前記基材に適用し、コーティング作業中に基材温度は室温?40℃に維持し、プラズマ作用時に10nm/分を超えるコーティング速度が使用される工程を含むプラスチック基材のコーティング方法。」

3 引用発明
これに対して、平成24年3月22日付けの当審の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-304903号公報(以下、「引用例1」という。)、特開平8-225948号公報(以下、「引用例2」という。)、特開2001-42101号公報(公開日:平成13年2月16日)(以下、「引用例3」という。)及び特開平5-273427号公報(以下、「引用例4」という。)には、それぞれ以下の事項が記載されている。

[引用例1]
(1)「【請求項1】 樹脂製基材と、該樹脂基材表面に形成された反射防止膜とを有する反射防止膜付き光学素子において、
前記樹脂製基材と前記反射防止膜との間に気相成膜法により形成された密着力強化層を介在させることを特徴とする反射防止膜付き光学素子。
・・・
【請求項4】 前記気相成膜法はプラズマCVD法である請求項1ないし3のいずれかに記載の反射防止膜付き光学素子。
・・・
【請求項8】 前記密着力強化層はSiO_(2)を主成分とする請求項1ないし7のいずれかに記載の反射防止膜付き光学素子。
・・・
【請求項12】 前記樹脂製基材はアクリル系樹脂からなる基材である請求項1ないし11のいずれかに記載の反射防止膜付き光学素子。」

(2)「【0025】気相成膜法としては、物理的気相成長法(PVD法)および化学的気相成長法(CVD法)が挙げられる。・・・。
【0026】CVD法としては、常圧CVD法、LP-CVD法(減圧条件下で行うCVD法)、プラズマCVD法、熱CVD法、光CVD法(光を反応促進に用いるCVD法)等が挙げられるが、なかでもプラズマCVD法が好ましい。プラズマCVD法によれば密着力強化層の形成を迅速に行うことができ、大面積においても均一な薄膜を堆積することができる。」

(3)「【0041】本発明の反射防止膜付き光学素子1において、樹脂製基材2としては、透明度が高く、硬質であって光学用途に好適に使用され得るものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂などが挙げられるが、なかでもアクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂はとくに透明性、耐光性に優れ、また屈折率の温度変化が小さくメガネ用レンズ、カメラ用レンズ等の光学部材の素材として広く好適に用いられている。さらに、熱変形温度が高く、薄膜形成の際の高温条件等にも良好に耐えることができる。」

(4)「【0043】
【実施例】次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.反射防止膜付き光学素子の作製
(実施例)まず、図2に示すプラズマCVD装置100を用いて、アクリル系樹脂製基材2(PMMA製ファインダーレンズ)表面に、SiO_(2)を主成分とする密着力強化層(膜厚50nm)を形成した。成膜原料としてTEOS(テトラエトキシシラン)を用い、雰囲気ガス(TEOS/O_(2)=1/20(体積比))を反応室11に導入しながら、下部電極13に高周波電力(500W)を投入し、圧力39.9Paの条件下で密着力強化層を形成した。次に、密着力強化層3の上に通常の真空蒸着法により、表1に示す層構成の反射防止膜4を設け、図1に示すような反射防止膜付き光学素子1を作製した。」

以上の記載事項によると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「樹脂製基材と、該樹脂製基材表面に形成された反射防止膜とを有し、前記樹脂製基材と前記反射防止膜との間に気相成膜法により形成された密着力強化層を介在させた反射防止膜付き光学素子の作製方法であって、
前記樹脂製基材はPMMA(ポリメチルメタクリレート)からなり、
前記密着力強化層はSiO_(2)を主成分とし、
前記気相成膜法はプラズマCVD法である反射防止膜付き光学素子の作製方法。」

[引用例2]
(1)「【0028】
【発明の実施の形態】プラズマパルスCVD法は公知であり、例えば、ケルステンら(Kersten et al)の文献に記載されている("Thick Coatings of Doped Synthetic Silica Glass by Plasma Impulse CVD" published in the journal of the Ceramic Societyof Japan 99(10) pages 894 to 902(1991))。これらの方法において、プラズマを励起する電磁放射線は、被覆ガスを連続的に流すパルス法で施される。それぞれのパルスを用いると、薄層(代表的には、約1nm)が生地の上に沈着する。温度に安定でない生地でも高出力パルス中に沈着できる、というのは、パルス間隔がそれぞれの出力パルスのあとに続くからである。この方法では、特に高被覆速度が、生地に顕著な温度負荷をかけることなく可能である。
【0029】・・・プラズマパルス法用の平均供給出力は、次のようにコンピューターで計算される:
=(パルス振幅×パルス幅)/(パルス間隔+パルス幅)。
【0030】この平均出力は、本発明方法において、従来の連続法でセットされる出力と強度が同じオーダーである。この出力は弱くても良い。このことは、熱鋭敏性プラスチックの被覆、または生地温度により硬度または水媒(hydrophily) などの層特性が影響を受ける場合に、特に重要である。」

(2)「【0045】本発明の方法は、したがって、特に、プラスチック生地上の引っ掻き傷保護被覆物(例えば、眼鏡レンズなどの光学用)を製造することに適している。かかる引っ掻き傷被覆物は、層の成長方向において転移(有機→無機)が提供されるけれども、生地側の有機物質の含有量を高める。例えば、眼鏡レンズ用の、かかる引っ掻き傷保護被覆物は、とりわけ、ヨーロッパ特許公開0,177,517に記載されている。」

(3)「【0053】・・・層形成物質として、例えば、HMDSOを用いる代表的なマイクロ波プラズマ パルスCVD法では、厚さ0.1?1.0nmの層が沈着できる。ここで、例えば、20msのパルス間隔に対して3,000nm/分までの被覆速度が得られるので、高被覆速度に対して薄層(例えば、光学的にλ/4層)とともに傾斜形で炭化水素を含有する厚い層が、層成長方向に極めて高い精度で製造できる(単一層領域)。」

(4)「【0066】実施例3
パルス出力とパルス間隔とを変化させて、硬度傾斜を有する層を製造する。
【0067】生地板CR39は、酸素80sccmとHMDSO12sccmとからなる被覆ガスを用いて、マイクロ波プラズマパルスCVD法で5分間被覆した。
【0068】
酸素物質流量 80 sccm
HMDSO物質流量 12 sccm
パルス振幅 時間の関数としてリニアに増加する6
kWマグネトロンの最大値の20%?
50%
パルス間隔 時間の関数としてリニアに増加する2
0msから75ms
パルス期間 1 ms
プロセス圧力 0.5 mbar
生地温度 40 ℃
・・・
実施例4
光学センサー用プライマー層を製造する。
【0069】ポリカーボネート製の生地板は、ここに引用例として組み込まれている米国特許5,369,722のプラズマパルスCVD法に従って、200nm厚の波導通性(wave-conducting)TiO_(2)層で被覆した。・・・層の接着性を増加させるため、プライマー層としての中間層を、生地と波導通層との間に設ける。プライマー被覆物の製造パラメーターは次の通りである:
全物質流量:酸素+HMDSO: 100 sccm
HMDSO部分 40 sccm
パルス振幅 6kWマグネトロンの最大値
の40%
パルス間隔 30 ms
パルス期間 0.3から0.7msへ時間
の関数としてリニアに増加す

被覆期間 4 秒
層の厚さ 50 nm
プロセス圧力 0.5 mbar
生地温度 70 ℃」

[引用例3]
(1)「【0091】本発明の、少なくとも一つの界面層および脂肪成分保護層を持つレンズの被膜は、上述の必要性を満たしている限り、当業界に周知の方法によって形成されうる。
【0092】特に適切なのは、いわゆるCVD(化学蒸着法)であり、その中で好ましくはいわゆるプラズマ工程である。それらにおいて、一般的に減圧下で、被膜は分解性ガスを照射して形成される。該照射は、連続的に、またはパルスでなされ、後者はPPCVD(プラズマパルスCVD)と呼ばれており、特に好ましい。
【0093】該PPCVD工程は、例えばJounal of the CeramicSociety of Japan(99(10)、894?902頁)で説明されており、カーブした表面のコーティングは、WO95/26427に開示されている。
【0094】該PPCVD工程において、一般的に被膜ガスは連続的に流動するが、プラズマを励起する電磁放射線がパルス方式で供給され、各パルスにおいて薄膜(典型的に約1nmの単層)が基板上に析出する。各々の稼働パルスの後にパルスの休止があり、それにより基板上に顕著な温度ストレスを与えることなく被膜形成速度を高くすることができる。」

(2)「【0115】
【実施例】<実施例1>トパス5013(ティコナ株式会社製、フランクフルト)から押し出し鋳込み成形によりレンズを製造した。このレンズを基板としてにPPCVD工程により二つの層を形成した。その際、以下のパラメータが使用された。
【0116】
頻度: 2.54GHz
パルス休止: 90msec
パルス継続時間: 1msec
パルス波高: 6kWマグネトロンの最高値の45%
工程圧力: 0.3mbar
レンズ温度: 30℃
第一の層(界面層)は、100標準-cm^(3)/minのO_(2)流量および30標準-cm^(3)/minのHMDSO流量で得られた。その層厚さは600nmで製造された。」

[引用例4]
(1)「【請求項42】 合成樹脂基板または有機物割合の高い物質が基板として使用され;そして合成樹脂基板はT<Tgの温度に加熱されそして有機物割合の高い基板はT<300℃の温度に加熱され;そして非有機導波体層がPCVD処理法によって基板に付着されることで特徴づけられる、非有機導波体層が実質的に平坦な基板に付着される光導波体の製作のための処理法。
・・・
【請求項48】 基板表面をスムースにするためにまたは光回折格子の回折効率の程度を調節するために導波体層の付着に先行して少なくとも一つの中間層が基板表面に付着されることで特徴づけられる、請求項42-47の少なくとも一つによる処理法。
・・・
【請求項50】 中間層がPCVD処理法、特にPICVD処理法によって付着されることで特徴づけられる、請求項48による処理法。」

(2)「【0018】好ましくは、熱可塑化方法によって処理され得る合成樹脂は、特に熱可塑的に機能性のポリカーボネート、PMMA、ポリイミドまたはポリエステルは、基板材料として利用され得る。
・・・
【0021】PMMAは引っかきに対して非常に抵抗力があり、低い水吸収容量だが、ポリカーボネートのような温度安定性がない。PMMAの最大長期使用温度は60-90℃にすぎず、そこでは導波体の被覆温度は非常に制限される。一般に、高い屈折率は非有機導波体層の製作中の高い基板温度で得られる。これに反してPMMAは、ちょうどポリカーボネートのように、容易にスタンプされるばかりでなく光構造化することができる。」

(3)「【0062】この発明による導波体を製作するための処理法は、基板、合成樹脂基板または有機物割合の高い基板が使用されるということ;合成樹脂の場合には基板はT<Tgに加熱されることで、そして有機物割合の高い基板の場合には基板はT<300℃に加熱されることで特徴づけられる。Tgは合成樹脂のガラス転移温度である;しかも非有機導波体層はPCVD処理法によって、好ましくはPICVD処理法によって基板に付着される。好ましくは、この被覆方法のプラズマはマイクロ波によって励起される。
【0063】この処理法において、微細柱を避けた構造の層を設けるためには約60°の基板温度で既に充分であることがわかっている。・・・。低い基板温度は低損失非有機導波体層の形成のために必要なので、非有機材料の光導波体層のための基板として合成樹脂または有機物割合の高い材料を、まず、利用することがこの処理法によって可能になった。
【0064】例えば、マイクロ波プラズマの被覆のパラメータ領域では、たった数eVでしかない電子温度とそしてプラズマと基板との間の自己バイアスポテンシャルは低レベルである。このことは基板表面と非有機層とがプラズマによる輻射ダメージを受けいなという有利さを与えている。」

(4)「【0073】・・・プラズマ強化CVD処理法、特にマイクロ波プラズマパルスCVD処理法、中でもイオンスパッタ処理法、は中間層を作るのに適している。PCVD方法は、この場合に中間層と導波体層が一つの真空処理法で付着されるので、SiO_(2 )の中間層を作るのに好ましい。」

(5)「【0077】
【実施例1】
1.ポリカーボネート上にTiO_(2 )からの単一モード導波体の製作、その表面は部分的領域で浮き出しによって構造化されまたはスムースにされている。このように浮き出された構造は364nmの線間隔と10nmの変調深さとを備えた格子である。
処理パラメータ
・・・
(b)被覆
圧力 :0.8mbar
流量TiCl_(4 ) :100ml/min
パルス幅 :1ms
パルス間隔 :90ms
被覆速度 :40nm/min
層厚さ :140nm
基板 :ポリカーボネート
厚さ1.5mm
直径100mm
基板温度 :60℃」

4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「樹脂製基材」、「反射防止膜」及び「密着力強化層」は、それぞれ本願発明における「プラスチック基材」、「機能層」及び「中間層」に相当し、
引用発明における「反射防止膜付き光学素子」は、上記「3[引用例1](4)」のとおり、樹脂製基材をコーティングすることにより作製されるものであるから、引用発明における「反射防止膜付き光学素子の作製方法」は、本願発明における「プラスチック基材のコーティング方法」に相当し、
引用発明における「樹脂製基材はPMMA(ポリメチルメタクリレート)からな」ることは、本願発明における「プラスチック基材はポリメタクリル酸メチル(PMMA)」を含むことに相当し、
引用発明における「密着力強化層」が「SiO_(2)を主成分」とすることは、本願発明における「1つの中間層」が「金属Si」の「酸化物」を含むことに相当し、
本願発明における「PICVD法」とは、「プラズマCVD法」の一つであることは技術常識より明らかであるから、引用発明における「密着力強化層」を形成する「気相成膜法」が「プラズマCVD法である」ことと、本願発明における「PICVD法によって前記中間層および/または前記少なくとも1つの機能層を前記基材に適用」することとは、「プラズマCVD法によって中間層を基材に適用する」限りにおいて一致する。
したがって、両者は

「少なくとも1つの機能層と、前記機能層と基材との間にある少なくとも1つの中間層と、を有するプラスチック基材のコーティング方法であって、
前記プラスチック基材はポリメタクリル酸メチル(PMMA)またはその誘導体を含み、
少なくとも1種類の金属酸化物を含む少なくとも1つの中間層が前記基材に適用され、
前記金属酸化物が金属Si、Ti、TaまたはNbの酸化物であり、
プラズマCVD法によって前記中間層および/または前記少なくとも1つの機能層を前記基材に適用するプラスチック基材のコーティング方法。」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願発明では、プラズマCVD法がPICVD法であり、また、コーティング作業中に基材温度は室温?40℃に維持し、プラズマ作用時に10nm/分を超えるコーティング速度が使用される工程を含むのに対し、引用発明では、プラズマCVD法の種類の特定はなく、また、コーティング作業における基材温度及びコーティング速度は特定されていない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
レンズ等の樹脂基材にプラズマCVD法等の気相成膜法を用いて薄膜を形成する際に、樹脂基材に過度な温度負荷がかからぬよう、コーティング作業中の基材温度を一定温度以下に維持しなければならないことは、技術常識である。
そして、PICVD法が、プラズマCVD法の一つであって、連続的にプラズマを発生するプラズマCVD法よりも基材に顕著な温度負荷をかけることなく、高被覆速度が得られる方法であることは、引用例2、引用例3及び引用例4にそれぞれ上記「3」の「[引用例2](1)」、「[引用例3](1)」及び「[引用例4](3)」のとおり記載があるように、よく知られたことである。また、ポリカーボネートについて、PICVD法によるコーティング作業中の基材温度を60℃や70℃とする例(上記「3」の「[引用例2](4)」及び「[引用例4](5)」参照。)があるし、基材の種類は異なるものの、コーティング作業中の基材温度を40℃(基材:CR39)や30℃(基材:トパス5013(ティコナ株式会社製、フランクフルト))とする例(上記「3」の「[引用例2](4)」及び「[引用例3](2)」参照。)もある。したがって、PMMAは、ガラス転移点がポリカーボネートよりも低いなど耐熱性に劣ることを考慮すれば、PMMAにPICVD法によってコーティングを行う際に、コーティング作業中の基材温度を「室温?40℃」の範囲内に維持することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、PICVD法によってコーティングを行う際のコーティング速度についても、「50nm/4秒」(750nm/分)や「40nm/min」とする例(上記「3」の「[引用例2](4)」及び「[引用例4](5)」参照。)があることから、コーティング速度を「10nm/分を超える」速度とすることも、当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、引用発明における「プラズマCVD法」として、「PICVD法」を採用し、コーティング中の基材温度を「室温?40℃」の範囲内に維持し、「10nm/分を超えるコーティング速度」を使用してコーティングを行うことは、当業者にとって容易に想到し得たことであり、格別の効果を奏するものでもない。

6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-07 
結審通知日 2012-08-14 
審決日 2012-08-28 
出願番号 特願2002-591166(P2002-591166)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 昌広加藤 浩  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 紀本 孝
一ノ瀬 薫
発明の名称 コーティングされたプラスチック物体の製造方法  
代理人 木村 高久  

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