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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1268959
審判番号 無効2012-800041  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-04-02 
確定日 2013-01-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第4803030号発明「画像処理方法、プログラム、記録媒体及びゲーム装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4803030号の請求項に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件の手続の経緯は以下のとおりである。

平成17年 3月10日 本件国際出願(特願2006-512921)
(優先権主張2004年5月10日,日本国)
平成23年 8月19日 設定登録(特許第4803030号)
平成24年 4月 2日 本件無効審判請求
平成24年 4月24日 被請求人へ請求書副本の送達通知を送付
平成24年 6月 4日 被請求人より上申書提出(答弁書を提出しない。)
平成24年 8月31日 審決の予告


第2 請求人の主張及び提出した証拠方法,被請求人の主張
1 請求人の主張の概要
請求人は,特許第4803030号発明の特許請求の範囲の請求項1乃至14に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,甲第1?6号証を提出して,次の無効理由を主張した。

2 無効審判請求の根拠
(1)無効理由1(特許法36条4項,6項)
本件の請求項2及び6に係る各特許発明は,特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,同法第123条第1項4号に該当し,無効とすべきである。
(2)無効理由2(特許法29条の2)
本件の請求項1乃至5,7乃至14に係る各特許発明は,本件特許出願の日前の他の特許出願であって当該特許出願後に出願公開されたものである甲第1号証の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,出願人又は発明者が同一であるとはいえないから,特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。
(3)無効理由3(特許法29条2項)
本件の請求項1乃至14に係る各特許発明は,甲第2号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

3 証拠方法
甲第1号証:特開2005-211132号(特願2004-18527号)公報
甲第2号証:特許第3342393号公報
甲第3号証:「立体忍者活劇 天誅 弐 公式攻略ガイド」,初版,株式会社メディアワークス,2000年12月30日,8?13頁
甲第4号証:「天誅 参 公式コンプリートガイド?忍者皆伝?」,初版,ソフトバンク パブリッシング株式会社,2003年4月30日,24?29頁
甲第5号証:「天誅 参 オフィシャルコンプリートガイド」,初版,株式会社角川書店,2003年4月24日,16?19頁
甲第6号証:特許第3111174号公報

4 被請求人の主張
当審より,平成24年4月24日付け請求書副本の送達通知と同時に審判請求書を送付し,同通知において,「この審判請求に対して答弁がありましたら,答弁書の正本1通及びその副本2通を,この請求書副本発送の日から60日以内に提出して下さい。」と通知したところ,被請求人からは平成24年6月4日付けで上申書が提出され,「上記審判事件の審判請求書に関し,被請求人は答弁書を提出いたしません。」との上申が行われ,その後に答弁書提出期間を過ぎても答弁書の提出はない。


第3 本件特許発明
本件特許の請求項1?14に係る発明は,特許第4803030号の特許請求の範囲における請求項1?14に記載された,次のとおりのものである。

「【請求項1】
CPUの制御によりデータ処理を実行するデータ処理部と,遊戯者によって操作される操作手段とを備え,前記遊戯者の操作に応じて進行するゲームの画面を表示手段に表示するように構成されたコンピュータ装置により実行されるゲームの画像処理方法であって, 前記コンピュータ装置の動作時に,
(a)仮想空間内に,前記操作手段からの操作信号に基づいて移動するプレイヤキャラクタとゲームの進行に応じて移動するエネミキャラクタとを配置し,前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタとの間の位置関係に基づきゲームの進行を制御する処理と,
(b)前記(a)のゲームの進行に応じたゲームの画面を主画面として前記表示手段に表示する処理と,
(c)前記ゲームの進行とともに変化する,前記プレイヤキャラクタの挙動と,前記プレイヤキャラクタの仮想空間内における現在位置と,前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタとの間の位置関係とに少なくとも基づき前記エネミキャラクタに対する前記プレイヤキャラクタの目立ち度を演算する処理と,
(d)前記(c)の演算で得られた目立ち度の変化に対応して変化するインジケータ画像を生成する処理と,
(e)前記インジケータ画像を前記主画面から区別して前記表示手段に表示する処理と,
を含む処理が実行され,
前記遊戯者が前記操作手段を操作して前記主画面に表示された前記プレイヤキャラクタの挙動及び位置の制御の実行中において,前記エネミキャラクタから見た前記プレイヤキャラクタの目立ち度の変化を前記インジケータ画像における映像表示の変化によって表示することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
請求項1記載のゲームの画像処理方法において,
前記(c)は,
前記プレイヤキャラクタの挙動に係わる第1の係数を決定する処理と,
前記プレイヤキャラクタの仮想空間内における現在位置に対応する環境に係わる第2の係数を決定する処理と,
前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタと間の位置関係に関するパラメータを含む所定のパラメータに基づいて,前記エネミキャラクタに係わる第3の係数を決定する処理とを含み,前記第1乃至第3の係数に基づき前記目立ち度を演算することを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
請求項2記載のゲームの画像処理方法において,
前記仮想空間内に複数のエネミキャラクタが配置されているとき,前記複数のエネミキャラクタごとに第3の係数を決定し,前記複数の前記第3の係数を平均化する処理を行うことで得られた係数を用いて前記目立ち度を演算する処理を行うことを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
請求項2記載のゲームの画像処理方法において,
前記(c)において,前記エネミキャラクタに設定された視野範囲に前記プレイヤキャラクタが入っているか否かを判定し,入っていると判定されたときに前記エネミキャラクタの視界の向きを前記目立ち度の演算に反映させる処理を行うことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゲームの画像処理方法において,
前記エネミキャラクタに設定された視野範囲に前記プレイヤキャラクタが入っていると判定されたとき,演算された前記目立ち度の値に応じて前記エネミキャラクタの行動を決定することを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のゲームの画像処理方法において,
前記エネミキャラクタが前記プレイヤキャラクタを発見したと判定したとき,演算された目立ち度の値に応じて前記エネミキャラクタの行動を決定することを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
前記インジケータ画像は,前記主画面に表示された前記プレイヤキャラクタの動作に対応して挙動するキャラクタシンボルを含み,前記(c)の演算で得られた前記目立ち度の変化に対応して当該キャラクタシンボル及び背景の少なくともいずれかの映像表示が変化するように構成されてなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項8】
CPUの制御によりデータ処理を実行するデータ処理部と,遊戯者によって操作される操作手段とを備え,前記遊戯者の操作に応じて進行するゲームの画面を表示手段に表示するように構成されたコンピュータ装置に,前記遊戯者による操作に応じて請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像処理方法を実行させるように構成されたプログラム。
【請求項9】
請求項8のプログラムが前記コンピュータ装置によって読み取り可能に記録された記録媒体。
【請求項10】
CPUの制御によりデータ処理を実行するデータ処理部と,遊戯者によって操作される操作手段とを備え,前記遊戯者の操作に応じて進行するゲームの画面を表示手段に表示するように構成されたゲーム装置であって,
前記ゲーム装置の動作時に,
(a)仮想空間内に,前記操作手段からの操作信号に基づいて移動するプレイヤキャラクタとゲームの進行に応じて移動するエネミキャラクタとを配置し,前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタとの間の位置関係に基づきゲームの進行を制御する処理手段と,
(b)前記(a)のゲームの進行に応じたゲームの画面を主画面として前記表示手段に表示する表示処理手段と,
(c)前記ゲームの進行とともに変化する,前記プレイヤキャラクタの挙動と,前記プレイヤキャラクタの仮想空間内における現在位置と,前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタとの間の位置関係とに少なくとも基づき前記エネミキャラクタに対する前記プレイヤキャラクタの目立ち度を演算する目立ち度決定手段と,
(d)前記(c)の演算で得られた目立ち度の変化に対応して変化するインジケータ画像を生成するインジケータ画像生成手段と,
(e)前記インジケータ画像を前記主画面から区別して前記表示手段に表示する表示処理手段と,
を備えるように構成されてなり,
前記遊戯者が前記操作手段を操作して前記主画面に表示されたプレイヤキャラクタの挙動及び位置の制御の実行中において,前記エネミキャラクタから見た前記プレイヤキャラクタの目立ち度の変化を前記インジケータ画像における映像表示の変化によって表示するように構成されてなることを特徴とするゲーム装置。
【請求項11】
CPUの制御によりデータ処理を実行するデータ処理部と,遊戯者によって操作される操作手段とを備え,前記遊戯者の操作に応じて進行するゲームの画面を表示手段に表示するように構成されたコンピュータ装置により実行されるゲームの画像処理方法であって,
前記コンピュータ装置の動作時に,
(a)仮想空間内に,前記操作手段からの操作信号に基づいて移動するプレイヤキャラクタとゲームの進行に応じて移動するエネミキャラクタとを配置し,前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタとの間の位置関係に基づきゲームの進行を制御する処理と,
(b)前記(a)のゲームの進行に応じたゲームの画面を前記表示手段に表示する処理と,
(c)前記ゲームの進行とともに変化する,前記プレイヤキャラクタの挙動と,前記プレイヤキャラクタの仮想空間内における現在位置と,前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタとの間の位置関係とに少なくとも基づき前記エネミキャラクタから見た前記プレイヤキャラクタの目立ち度を演算する処理と,
(d)前記(c)の演算で得られた目立ち度の変化に対応して変化するインジケータを前記表示手段に表示される前記ゲームの画面に表示する処理と,
を含む処理が実行され,
前記遊戯者が前記操作手段を操作して前記ゲームの画面に表示された前記プレイヤキャラクタの挙動及び位置の制御の実行中において,前記エネミキャラクタから見た前記プレイヤキャラクタの目立ち度の変化を前記インジケータによって表示することを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
CPUの制御によりデータ処理を実行するデータ処理部と,遊戯者によって操作される操作手段とを備え,前記遊戯者の操作に応じて進行するゲームの画面を表示手段に表示するように構成されたコンピュータ装置に,前記遊戯者による操作に応じて請求項11に記載の画像処理方法を実行させるように構成されたプログラム。
【請求項13】
請求項12のプログラムが前記コンピュータ装置によって読み取り可能に記録された記録媒体。
【請求項14】
CPUの制御によりデータ処理を実行するデータ処理部と,遊戯者によって操作される操作手段とを備え,前記遊戯者の操作に応じて進行するゲームの画面を表示手段に表示するように構成されたゲーム装置であって,
前記ゲーム装置の動作時に,
(a)仮想空間内に,前記操作手段からの操作信号に基づいて移動するプレイヤキャラクタとゲームの進行に応じて移動するエネミキャラクタとを配置し,前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタとの間の位置関係に基づきゲームの進行を制御する処理手段と,
(b)前記(a)のゲームの進行に応じたゲームの画面を前記表示手段に表示する処理手段と,
(c)前記ゲームの進行とともに変化する,前記プレイヤキャラクタの挙動と,前記プレイヤキャラクタの仮想空間内における現在位置と,前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタとの間の位置関係とに少なくとも基づき前記エネミキャラクタに対する前記プレイヤキャラクタの目立ち度を演算する処理手段と,
(d)前記(c)の演算で得られた目立ち度の変化に対応して変化するインジケータを前記表示手段に表示される前記ゲームの画面に表示する処理手段と,
を備えるように構成されてなり,
前記遊戯者が前記操作手段を操作して前記ゲームの画面に表示されたプレイヤキャラクタの挙動及び位置の制御の実行中において,前記エネミキャラクタから見た前記プレイヤキャラクタの目立ち度の変化を前記インジケータの変化によって表示するように構成されてなることを特徴とするゲーム装置。」(以下,「本件特許発明1」等という。)


第4 無効理由に対する当審の判断
無効理由3(特許法29条2項)について判断する。
1 甲号証の記載事項
(1)甲第2号証
本件の優先日前に頒布された甲第2号証には,次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与。)
(1a)「【0014】
【発明の実施の形態】以下,本発明のビデオゲーム装置の実施の形態を説明する。本実施形態では,敵地に潜入して所要の目的を達成するプレイヤキャラクタと,敵地に配設される各種施設,設備,施設内でプレイヤキャラクタを見つけたときに素手あるいは武器を用いて対戦を行う複数の相手キャラクタとが登場する三次元CGゲーム装置の例を示す。このビデオゲーム装置は,本発明の記録媒体の一例となるCD-ROMが,コンピュータであるゲーム装置本体に読み取られることによって実現される。CD-ROMには,ゲーム装置本体に後述の各種処理を実行させるためのプログラムコード(以下,ゲームプログラムと称する。なお,ゲームプログラムという場合は,プログラム実行に必要なデータや制御パラメータをも含むものとする)がコンピュータ読み取り可能な形態で記録されているものである。
【0015】まず,ゲーム装置本体について説明する。ゲーム装置本体は,交換自在の上記CD-ROMからゲームプログラムや三次元画像要素データを読み出して実行することにより,各種キャラクタや情景画像を表す三次元CG画像の生成,ディスプレイ装置25への表示並びにその制御を行うもので,例えば,特開平8-212377号公報に記載されたものを用いることができる。すなわち,図1に示すように,主制御部10,画像処理部20,音響制御部30,ディスク制御部40,通信制御部50,及び上記各機能ブロック10?50を双方向通信可能に接続するためのメインバスBを具備してゲーム装置本体1を構成している。
【0016】主制御部10は,CPU11と,割り込み制御やDMA(ダイレクトメモリアクセス)転送制御等を行う周辺デバイスコントローラ12と,ゲームプログラムや画像要素データ等を一時的に記録するメインメモリ13と,画像処理部20,音響制御部30等の管理を行うオペレーティングシステム(OS)等が格納されたROM14とを備えている。CPU11は,RISC(reduced instruction setcomputor)CPUであり,ROM14に記録されているOSを実行することによって装置全体の基本的な動作の制御を行うとともに,メインメモリ13内のゲームプログラムを実行することにより,後述する複数の機能ブロックを実現するものである。
【0017】画像処理部20は,メインメモリ13内の画像要素データ等に対する座標変換等を高速に行うジオメトリトランスファエンジン(GTE)21と,CPU11からの描画指示に基づいてポリゴンやスプライト(三角形,四角形等の多角形)等の組み合わせから成る三次元CG画像の描画処理を行うグラフィックスプロセッシングユニット(GPU)22と,GPU22により描画処理された三次元CG画像を一時的に記録するフレームバッファ23と,必要に応じて圧縮画像データを復号化する画像デコーダ(MDEC)24とを備えている。ディスプレイ装置25は,ゲーム装置本体に直接,あるいは外部インタフェースを通じて接続されるもので,フレームバッファ23に記録されている三次元CG画像を読み出して表示するものである。GPU22による上記描画処理及びフレームバッファ23への記録を連続的に行うことにより,動画要素を含む三次元CG画像をディスプレイ装置25に表示できるようになる。」
(1b)「【0020】通信制御部50は,メインバスBを介してCPU11との通信の制御を行う通信制御デバイス51,コントローラ52,ゲームの設定等を記録するメモリカード53を備えている。コントローラ52は,プレイヤによる操作内容を入力するためのインタフェース部品であって,ゲーム開始を指示するスタートキー,ゲームリセットを指示するリセットキー,キャラクタの上下左右の移動を指示するとともに表示される種々のメニューやアイテムにカーソルを一致させる選択キー,及びキャラクタの詳細動作指示と選択メニューの指示を行う指示キー等を備え,これらの各キーの状態を同期式通信によって通信制御デバイス51に送信する。キャラクタの上下左右の移動の指示は,例えばハンドへルドの筐体に形成された十字キー,あるいはジョイスティックによって入力することができる。通信制御デバイス51は,コントローラ52の各キーの状態をCPU11に送信する。これにより,プレイヤからの指示がCPU11に伝えられ,CPU11は,実行しているゲームプログラムに基づいてプレイヤからの指示に従った画像表示及びゲーム展開処理を行う。」
(1c)「【0028】図3は,画面インタフェース制御部215によって生成されるインタフェース画面の一例となるレーダ画像である。このレーダ画像Rは,例えば画面右上に緑色で透かし表示されるもので,プレイヤキャラクタ311の相対的な位置及び視野312,相手キャラクタ313の相対的な位置及び視野314をプレイヤが視認できるようにしたものである。相手キャラクタの位置313及び視野314は,その方向がランダムに切り替えられる。プレイヤキャラクタが,この相手キャラクタの視野に入った場合は,危険度に応じてレーダ画像の色を,例えば赤から黄色のように段階的に変化させ,併せて危険度の変化やその色の残時間等をレーダ画像内に表示させるようにする。残時間が表示された場合,プレイヤは,その時間内に必要な措置をとるようにコントローラ52を操作することになる。」
(1d)「【0035】(6)「危険モード処理」プレイヤの意図に関わらず,ビデオゲーム装置側からプレイヤキャラクタに対してアクションをかけ,さらに出力中の効果音を危険状態を表す固有のものに変化させる処理である。この処理は,通常モード処理中に,例えばプレイヤキャラクタが相手キャラクタの視野に入った場合,あるいはディスプレイ装置25には表示されていない相手キャラクタに見つかった場合に自動的に移行する。危険モード処理中は,画面インタフェース制御部215を通じてレーダ画像を赤色に変化させる。また,危険度を状況及びその変化に応じて定量化するとともに,危険モード処理を回避するための残時間(制限時間)の計算を行い,定量化結果及び計算結果が随時レーダ画像内に表示されるようにする。また,図4に示した画面インタフェースによってアイテムを選択できるようにし,戦闘のための便宜を図っている。この危険モード処理によって表示される画像の例を示したのが図9である。」
そうすると,上記記載事項(1a)?(1d)と図1?12からみて,甲第2号証には,次の発明(以下,「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「敵地に潜入して所要の目的を達成するプレイヤキャラクタと,敵地に配設される各種施設,設備,施設内でプレイヤキャラクタを見つけたときに素手あるいは武器を用いて対戦を行う複数の相手キャラクタとが登場する三次元CGゲーム装置により実行される方法であって,
ゲーム装置本体1は,主制御部10,画像処理部20,音響制御部30,ディスク制御部40,通信制御部50等から構成され,
前記主制御部10は,装置全体の基本的な動作の制御を行うCPUl1を備え,
前記画像処理部20は,GPU22による上記描画処理及びフレームバッファ23への記録を連続的に行うことにより,動画要素を含む三次元CG画像をディスプレイ装置25に表示し,
前記通信制御部50は,プレイヤによる操作内容を入力するためのインタフェース部品であるコントローラ52を備え,
通信制御デバイス51は,コントローラ52の各キーの状態をCPUl1に送信することにより,プレイヤからの指示がCPU11に伝えられ,CPUl1は,実行しているゲームプログラムに基づいてプレイヤからの指示に従った画像表示及びゲーム展開処理を行う処理と,
通常モード処理中に,プレイヤキャラクタが相手キャラクタの視野に入った場合あるいは相手キャラクタに見つかった場合に危険モード処理に移行し,危険モード処理中は,画面インタフェース制御部315を通じてレーダ画像を赤色に変化させ,また,危険度を状況及びその変化に応じて定量化するとともに,危険モード処理を回避するための残時間(制限時間)の計算を行い,定量化結果及び計算結果が随時レーダ画像内に表示されるようにする処理と,
レーダ画像Rを画面右上に緑色で透かし表示する処理と,
プレイヤキャラクタが,この相手キャラクタの視野に入った場合は,危険度に応じてレーダ画像の色を,例えば赤から黄色のように段階的に変化させ,併せて危険度の変化やその色の残時間等をレーダ画像内に表示させるようにする処理と,
を含む処理が実行されることを特徴とする方法。」

(2)甲第3号証
本件の優先日前に頒布された甲第3号証には,次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与。)
(2a)「戦闘画面の見方
気配メーター
敵がプレイヤ一に対して感じている気配をアイコンで表示。
○気 敵の気配のみ感じていて,プレイヤーは発見されていない。
○視 敵の視界に入ってしまった状態。身を隠せば気に戻る。
○殺(赤)敵がプレイヤーを発見し,殺気を持って攻撃してくる状態。
○殺(青)敵が警戒態勢に入った状態。まだ発見はされていない。」
(11頁上,「戦闘画面の見方」の欄。なお,「○気」は丸の中に気が記載されたものを示す。他も同様。)
(2b)「“敵に存在を知られず速やかに任務を遂行”
忍の行動の基本はこの一言に尽きる。これを実行するための,もっとも重要な要素を解説。」(12頁最上段)
(2c)「敵の気配
敵の気配には気→視→殺(赤)→殺(青)の4つの段階があり,それぞれ敵の状態を示すアイコンが用意されている。特に気は,敵との距離を表す機能がついており,隠密行動の指針となる。マップ移動中は常にアイコンに気をくばり,適切な行動を取るように心掛けよう。」,及び,
「気配メーターの数値
気状態でアイコンのそばに表示される数値は敵との距離を示していて,距離が縮まるにつれ大きくなり100に近づく。アイコンの大きさも同様で,小さいほど距離は遠い。」
(12頁「敵の気配」と題するボックス)
(2d)「メーターの数値とプレイヤーの姿勢
敵の視界範囲や気配の限界値は,マップの明暗や敵の持つ視力の優劣によって微妙に異なる。共通するのはプレイヤーの姿勢による変化で,しゃがみ状態のほうが発見率は低い。
<例>練習マップ忍びの里
“試練を越えよ”の黒忍者の場合
例えば黒忍者は視力が優秀なので,暗い地下でも目がきく。キャラクターの姿勢によって,気配メーター数値が一定以上だと発見されてしまう。」,及び,「(「立ち」と表示された忍者の説明として)視界メーター数値33以下なら発見されない」,及び,「(「しゃがみ」と表示された忍者の説明として」視界メーター数値が46以下なら発見されない」(13頁「メーターの数値とプレイヤーの姿勢」と題するボックス)
(2e)「敵の視界角度
どの敵も共通に持っているのが視界角度で,正面を向いた状態で左右60度(合計120度),上下30度(合計60度)の範囲が見えている。ただし弓を持つ敵はこの条件に当てはまらないので,注意が必要。」(13頁,「敵の視界角度」と題するボックス)
(2f)「見つかりにくい位置
右に掲載した状態や高い場所からの落下中は,見つかりにくい設定になっている。敵に発見されるのを避ける方法として頭に入れておき,地形や敵の配置など諸状況を見ながら使用してほしい。
◆ぶら下がり状態
↑高低差のある場所に手をかけ,ぶら下がる状態
◆鉤縄の使用中
↑鉤縄を使って他の場所へ飛びうつっている最中
◆水遁の術
↑立ち泳ぎ中に水面で,水遁の術を使った状態」(13頁,「見つかりにくい位置」と題するボックス)

(3)甲第4号証
本件の優先日前に頒布された甲第4号証には,次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与。)
(3a)「○視が点灯したときの対処法
いくら警戒しながら移動していても,思わぬ場所に敵が潜んでいたり,敵のフェイントやイレギュラーな行動に不意を突かれ,○視が点灯してしまうこともあるだろう。○視は発覚の一歩手前の危険な状態で,ここで速やかに対処しないと○殺が点灯し,たちまち発覚扱いとなってしまう。
○視が点灯した場合の対処法は2つ。1つはしゃがむ。下の例からもわかるように,ただしゃがむだけで敵の視野から逃れられる状況は多い。
もう1つは,通路の角などの物陰に隠れ,敵の視界を遮ることだ。近くに身を隠せそうな場所があるならこちらを試してみよう。」(027頁,「○視が点灯したときの対処法」の欄)

(4)甲第5号証
本件の優先日前に頒布された甲第5号証には,次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与。)
(4a)「■敵の視界
敵にはそれぞれ視野と視力が設定されている。無防備に敵の視界に飛び込むと,即座に発見され,反撃を受けることになるだろう。しゃがんでいる方が敵に発見されにくいので,近くに敵の気配を感じたらしゃがみ移動で気配を発している敵の発見に努める。遮蔽物の陰に隠れるのも有効な手段だが,攻撃のタイミングが敵の行動に左右されるため,敵の行動をじっくり観察して,いつ敵の視界から外れるかを見極めるしかない。」,及び,表中には侍,弓,下忍,上忍,町人の行ごとに「縦方向の視野」,「横方向の視野」及び「距離・気配 立ち/しゃがみ」がそれぞれ数値により記載されている。
(19頁,「■敵の視界」とする欄と表)

(5)甲第6号証
本件の優先日前に頒布された甲第6号証には,次の事項が記載されている。
(5a)「【0030】このゲームシステムはスキーのジャンプ競技を模したゲームを行うもので、ジャンプ競技の選手を模したキャラクタが画面に表示される。図2?図4に示すように、画面のほぼ中央に選手31が、左上隅に最高得点が、その下方に現在の風向及び風速が、その下方に選手31の水平線に対する角度(アングル)が、中央上部に選手31の飛距離が、中央右方に選手31の高度が、それぞれ表示されている。」
(5b)「【0032】図3は助走開始直後の画面で、視点位置は選手31の後方にあり、前方にアプローチ33が延びており、選手31のアングルはアプローチ33に沿って前傾姿勢になっている。」
(5c)【図2】?【図4】においては,円で囲まれた「Angle」の表示部は,主画面とは別に表示されており,主画面のジャンプ競技の選手の動作による選手の角度(アングル)を選手のキャラクタを用いて表示している。

2 対比・判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明を対比すると,以下のとおりである。

ア 本件特許発明1の最初の段落の構成要件について
甲2発明における「主制御部10」は,装置全体の基本的な動作の制御を行うCPUl1を備えていることから,本件特許における「CPUの制御によりデータ処理を実行するデータ処理部」に相当している。
また,甲2発明における「プレイヤによる操作内容を入力するためのインタフェース部品であるコントローラ52」は,本件特許における「遊戯者によって操作される操作手段」に相当し,甲2発明における「画像処理部20」は,GPU22による上記描画処理及びフレームバッフア23への記録を連続的に行うことにより,動画要素を含む三次元CG画像をディスプレイ装置25に表示しており,そのことは本件特許発明1における「遊戯者の操作に応じて進行するゲームの画面を表示手段に表示する」との事項に相当している。
さらに,甲2発明における「ゲーム装置本体1」は,主制御部10,画像処理部20,音響制御部30,ディスク制御部40,通信制御部50等から構成されていることから,本件特許発明1における「コンピュータ装置」に相当している。そして,甲2発明の「三次元CGゲーム装置により実行させる方法」は,本件特許発明1における「ゲームの画像処理方法」に相当する。
そうすると,甲2発明における「ゲーム装置本体1は,主制御部10,画像処理部20,音響制御部30,ディスク制御部40,通信制御部50等から構成され,前記主制御部10は,装置全体の基本的な動作の制御を行うCPU11を備え,前記画像処理部20は,GPU22による上記描画処理及びフレームバッファ23への記録を連続的に行うことにより,動画要素を含む三次元CG画像をディスプレイ装置25に表示し,前記通信制御部50は,プレイヤによる操作内容を入力するためのインタフェース部品であるコントローラ52を備え」との事項は,本件特許発明1における「CPUの制御によりデータ処理を実行するデータ処理部と,遊戯者によって操作される操作手段とを備え,前記遊戯者の操作に応じて進行するゲームの画面を表示手段に表示するように構成されたコンピュータ装置」に相当している。

イ 構成要件(a),(b)について
甲2発明は,「敵地に潜入して所要の目的を達成するプレイヤキャラクタと,敵地に配設される各種施設,設備,施設内でプレイヤキャラクタを見つけたときに素手あるいは武器を用いて対戦を行う複数の相手キャラクタとが登場する三次元CGゲーム装置」に関するものであり,「通信制御デバイス51は,コントローラ52の各キーの状態をCPUl1に送信することにより,プレイヤからの指示がCPU11に伝えられ,CPU11は,実行しているゲームプログラムに基づいてプレイヤからの指示に従った画像表示及びゲーム展開処理を行う処理」を行っている。
すなわち,甲2発明における「プレイヤからの指示に従った画像表示及びゲーム展開処理を行う処理」とは,敵地に潜入して所要の目的を達成するプレイヤキャラクタと,プレイヤキャラクタを見つけたときに素手あるいは武器を用いて対戦を行う複数の相手キャラクタを画像表示してゲーム展開処理を行うことである。
そうすると,甲2発明における「通信制御デバイス51は,コントローラ52の各キーの状態をCPU11に送信することにより,プレイヤからの指示がCPU11に伝えられ,CPU11は,実行しているゲームプログラムに基づいてプレイヤからの指示に従った画像表示及びゲーム展開処理を行う処理」は,本件特許発明1における「(a)仮想空間内に,前記操作手段からの操作信号に基づいて移動するプレイヤキャラクタとゲームの進行に応じて移動するエネミキャラクタとを配置し,前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタとの間の位置関係に基づきゲームの進行を制御する処理」,及び,「(b)前記(a)のゲームの進行に応じたゲームの画面を主画面として前記表示手段に表示する処理」に相当している。

ウ 構成要件(c)について
甲2発明では,「通常モード処理中に,プレイヤキャラクタが相手キャラクタの視野に入った場合あるいは相手キャラクタに見つかったりした場合に危険モード処理に移行し,危険モード処理中は,画面インタフェース制御部215を通じてレーダ画像を赤色に変化させ,また,危険度を状況及びその変化に応じて定量化」している。そして,甲2発明では,「敵地に配設される各種施設,設備,施設内でプレイヤキャラクタを見つけたときに素手あるいは武器を用いて対戦を行う複数の相手キャラクタ」が存在していることを考慮すると,上記「危険度」は,少なくとも,相手キャラクタから攻撃を受ける危険度を意味しているということができる。
一方,本件特許発明1における「目立ち度」は,本件特許明細書における「従来の電子遊戯装置では,プレイヤキャラクタが相手側キャラクタに発見され易いか否かの程度は遊戯者等には何等分からないために・・・」(【0005】段落),及び,「この発明は,遊戯者によって操作される対象が,ゲームアプリケーションプログラム上相手となる対象から発見され易い状態にあるか否かを遊戯者に分かりやすく伝達するためのデータ処理手段を備えた電子遊戯技術を提供することを目的とするものである。」(【0007】ユ段落)との記載を参酌すれば,「プレイヤキャラクタが相手側キャラクタに発見され易いか否かの程度」を意味しているということができる。さらに,本件特許明細書【0029】段落には,「目立ち度が高い場合には,敵キャラクタはプレイヤキャラクタに対してゲームプログラム上の攻撃を仕掛けてくるが,目立ち度が低い場合には,敵キャラクタは何等反応を示さない」と記載されていることから,本件特許発明1の「目立ち度」は,敵キャラクタから攻撃を受ける危険度を意味しているということができる。
そうすると,甲2発明における「危険度」と本件特許発明1における「エネミキャラクタに対するプレイヤキャラクタの目立ち度」とは,いずれも相手キャラクタから「攻撃を受ける危険度」を意味している点で共通している。

エ 構成要件(d)について
甲2発明では,「プレイヤキャラクタが,この相手キャラクタの視野に入った場合は,危険度に応じてレーダ画像の色を,例えば赤から黄色のように段階的に変化させ,併せて危険度の変化やその色の残時間等をレーダ画像内に表示」させていることから,危険度の変化に対応して変化するインジケータ画像を生成しているということができる。
そうすると,甲2発明における「プレイヤキャラクタが,この相手キャラクタの視野に入った場合は,危険度に応じてレーダ画像の色を,例えば赤から黄色のように段階的に変化させ,併せて危険度の変化やその色の残時間等をレーダ画像内に表示」との事項は,「前記(c)の演算で得られた攻撃を受ける危険度の変化に対応して変化するインジケータ画像を生成する処理」である点で,本件特許発明1と共通している。

オ 構成要件(e)について
甲2発明では,「レーダ画像Rを画面右上に緑色で透かし表示」していることから,「レーダ画像R」は主画面から区別して表示手段に表示されているということができる。
そうすると,甲2発明における「レーダ画像Rを画面右上に緑色で透かし表示する処理」は,本件特許発明1における「(e)前記インジケータ画像を前記主画面から区別して前記表示手段に表示する処理」に相当している。

カ 本件特許発明1の最後の段落の構成要件について
甲2発明における「通信制御デバイス51は,コントローラ52の各キーの状態をCPU11に送信することにより,プレイヤからの指示がCPU11に伝えられ,CPUl1は,実行しているゲームプログラムに基づいてプレイヤからの指示に従った画像表示及びゲーム展開処理を行う処理」,及び,「プレイヤキャラクタが,この相手キャラクタの視野に入った場合は,危険度に応じてレーダ画像の色を,例えば赤から黄色のように段階的に変化させ,併せて危険度の変化やその色の残時間等をレーダ画像内に表示させるようにする処理」との事項は,「遊戯者が前記操作手段を操作して前記主画面に表示された前記プレイヤキャラクタの挙動及び位置の制御の実行中において,前記エネミキャラクタから見た前記プレイヤキャラクタの攻撃を受ける危険度の変化を前記インジケータ画像における映像表示の変化によって表示する」点で本件特許発明1と共通している。

以上のことから,本件特許発明1と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
「CPUの制御によりデータ処理を実行するデータ処理部と,遊戯者によって操作される操作手段とを備え,前記遊戯者の操作に応じて進行するゲームの画面を表示手段に表示するように構成されたコンピュータ装置により実行されるゲームの画像処理方法であって,前記コンピュータ装置の動作時に,
(a)仮想空間内に,前記操作手段からの操作信号に基づいて移動するプレイヤキャラクタとゲームの進行に応じて移動するエネミキャラクタとを配置し,前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタとの間の位置関係に基づきゲームの進行を制御する処理と,
(b)前記(a)のゲームの進行に応じたゲームの画面を主画面として前記表示手段に表示する処理と,
(c)前記エネミキャラクタに対する前記プレイヤキャラクタの攻撃を受ける危険度を演算する処理と,
(d)前記(c)の演算で得られた攻撃を受ける危険度の変化に対応して変化するインジケータ画像を生成する処理と,
(e)前記インジケータ画像を前記主画面から区別して前記表示手段に表示する処理と,を含む処理が実行され,
前記遊戯者が前記操作手段を操作して前記主画面に表示された前記プレイヤキャラクタの挙動及び位置の制御の実行中において,前記エネミキャラクタから見た前記プレイヤキャラクタの「攻撃を受ける危険度」の変化を前記インジケータ画像における映像表示の変化によって表示することを特徴とする画像処理方法。」

<相違点1> 「攻撃を受ける危険度」が,本件特許発明1では「目立ち度」であって,プレイヤキャラクタが相手側キャラクタに発見され易いか否かの程度を意味していると認められるのに対し,甲第2号証では「危険度」であって,プレイヤキャラクタが相手側キャラクタに発見され易いか否かの程度である「目立ち度」を意味していることについては明らかではない点。
<相違点2> 本件特許発明1では,プレイヤキャラクタが相手側キャラクタに発見され易いか否かの程度である「目立ち度」の変化に対応して変化するインジケータ画像を生成しているのに対し,甲第1号証に記載された発明では,相手キャラクタの視野に入った場合や見つかった場合に「危険モード」に移行して,「レーダ画像を赤色に変化させ」る点。
<相違点3> 本件特許発明1では,「ゲームの進行とともに変化する,前記プレイヤキャラクタの挙動と,前記プレイヤキャラクタの仮想空間内における現在位置と,前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタとの間の位置関係とに少なくとも基づき」目立ち度を演算しているのに対し,甲2発明では,そのような演算をしていない点。

次に,上記相違点について検討する。

<相違点1,2について>
甲第3号証には,敵キャラクタとプレイヤキャラクタとが登場し,“敵に存在を知られず速やかに任務を遂行”するというゲームにおいて,敵がプレイヤ一に対して感じている気配を気配メーター○気,○視,○殺(赤),○殺(青)というアイコンにより表示することが記載されている。この気配メーターにおいて,○気は敵の気配のみ感じていてプレイヤーは発見されていない状態であり,気配メーターの数値に関しては,気状態でアイコンのそばに表示される数値は敵との距離を示していて,距離が縮まるにつれ大きくなり100に近づき,アイコンの大きさも同様で,小さいほど距離は遠いものである。また,キャラクタの姿勢によって,気配メーター数値が一定以上だと発見されてしまうことも記載されている。さらに,○視は敵の視界に入ってしまった状態,○殺(赤)は敵がプレイヤーを発見し,殺気を持って攻撃してくる状態,○殺(青)は敵が警戒態勢に入った状態を表している。
そうすると,「気配メーター」はプレイヤキャラクタが相手側キャラクタに発見され易いか否かの程度である「目立ち度」によるインジケータ画像に相当するものであって当業者に周知な技術である。
そして,甲2発明においてインジケータ画像に表示する内容は,当業者が適宜工夫するものであるから,甲2発明のインジケータ画像であるレーダ画像に上記周知な技術を適用して,「目立ち度」によるインジケータ画像とし,本件特許発明1の相違点1,2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到したことである。

<相違点3について>
甲第3号証における記載事項(2d)の「メーターの数値とプレイヤーの姿勢」,記載事項(2f)の「見つかりにくい位置」の項には,プレイヤーの姿勢(立ち/しゃがみ)により発見率が異なったり,敵の視力の優劣,敵キャラクタとプレイヤキャラクタとの距離により発見されない状態が異なったり,ぶら下がり状態,鉤縄の使用中,水道の術等では見つかりにくい設定になっていることが示されており,さらに,甲第4号証の記載事項(3a)には,甲第3号証と同様のゲームにおいて,○視が点灯した場合の対処法として,しゃがむことと物陰に隠れ敵の視界を遮ることが示されている。すなわち,攻撃を受ける危険度は,「プレ-ヤーの姿勢」,「見つかりにくい位置,物陰などの身を隠せそうな場所」等の複数の要因によって決まるものであって,このようなものは当業者に周知な技術である。
そうすると,甲2発明において,甲第3号証の周知な技術を適用するに際して,甲第3,4号証の,「プレ-ヤーの姿勢」,「見つかりにくい位置,物陰などの身を隠せそうな場所」,「敵の視力の優劣,敵の視界角度や敵キャラクタとプレイヤキャラクタとの距離」に基づいて攻撃を受ける危険度を演算しようとし,本件特許発明1の相違点3に係る構成とすることは,当業者であれば容易に想到できることである。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は本件特許発明1に,
「前記(c)は,
前記プレイヤキャラクタの挙動に係わる第1の係数を決定する処理と,
前記プレイヤキャラクタの仮想空間内における現在位置に対応する環境に係わる第2の係数を決定する処理と,
前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタと間の位置関係に関するパラメータを含む所定のパラメータに基づいて,前記エネミキャラクタに係わる第3の係数を決定する処理とを含み,前記第1乃至第3の係数に基づき前記目立ち度を演算する」との構成を付加したものである。

そうすると,本件特許発明2と甲2発明とは,上記(1)の<一致点>において一致し,<相違点1>?<相違点3>に加えて次の点で相違している。

<相違点4>
本件特許発明2では,「前記(c)は,
前記プレイヤキャラクタの挙動に係わる第1の係数を決定する処理と,
前記プレイヤキャラクタの仮想空間内における現在位置に対応する環境に係わる第2の係数を決定する処理と,
前記プレイヤキャラクタと前記エネミキャラクタと間の位置関係に関するパラメータを含む所定のパラメータに基づいて,前記エネミキャラクタに係わる第3の係数を決定する処理とを含み,前記第1乃至第3の係数に基づき前記目立ち度を演算する」のに対し,甲2発明では,相手キャラクタの視野に入った場合,あるいはディスプレイ装置25には表示されていない相手キャラクタに見つかった場合の危険モードにおいて,危険度を状況及びその変化に応じて定量化しているものの,どのような状況及びその変化に基づいて危険度を定量化しているのかは明らかではない点。

<相違点4について>
甲第3号証における記載事項(2d)には,プレイヤの姿勢(立ち/しゃがみ)により発見率が異なったり,敵の視力の優劣,敵キャラクタとプレイヤキャラクタとの距離により発見されない状態が異なることが示されており,特に,敵キャラクタとプレイヤーとの距離と,しゃがみ/立ちといったプレイヤーの姿勢に対して数値を割り当てたものが例示されている。さらに,甲第5号証における記載事項(4a)には,甲第3号証と同様のゲームにおいて,敵ごとの視野と,それぞれの敵(侍,弓など)に対応した気配(立ち/しゃがみ)に数値を割り当てたものが例示されている。また,甲第3号証における記載事項(2f)の「見つかりにくい位置」や甲第4号証における記載事項(3a)の「物陰」のように,プレイヤキャラクタの現在位置に関する環境についても,ゲーム装置で処理されている以上,何らかの数値が割り当てられていることは明らかである。
そうすると,甲2発明において,プレイヤキャラクタの姿勢の数値化,エネミキャラクタの視力やプレイヤキャラクタとエネミキャラクタと間の距離の数値化,及び,プレイヤキャラクタの現在位置に対応する環境の数値化を行って目立ち度を演算し,本件特許発明2の相違点4に係る構成とすることは,当業者が容易に想到したことである。

また,他の相違点についでは,上記(1)で述べたとおりである。

(3)本件特許発明3について
本件特許発明3は本件特許発明2に,「前記仮想空間内に複数のエネミキャラクタが配置されているとき,前記複数のエネミキャラクタごとに第3の係数を決定し,前記複数の前記第3の係数を平均化する処理を行うことで得られた係数を用いて前記目立ち度を演算する処理を行う」との構成を付加したものである。
そうすると,本件特許発明3と甲2発明は,上記(1)<一致点>で一致し,上記(1)<相違点1>?<相違点3>及び上記(2)<相違点4>に加えて次の点で相違している。

<相違点5>
本件特許発明3では,「前記仮想空間内に複数のエネミキャラクタが配置されているとき,前記複数のエネミキャラクタごとに第3の係数を決定し,前記複数の前記第3の係数を平均化する処理を行うことで得られた係数を用いて前記目立ち度を演算する処理を行う」のに対し,甲2発明では,複数のエネミキャラクタをどのように定量化して処理しているのかは明記されていない点。

<相違点5について>
甲2発明は,「敵地に潜入して所要の目的を達成するプレイヤキャラクタと,敵地に配設される各種施設,設備,施設内でプレイヤキャラクタを見つけたときに素手あるいは武器を用いて対戦を行う複数の相手キャラクタとが登場する三次元CGゲーム装置」に関するものであることから,甲2発明においても「仮想空間内に複数のエネミキャラクタが配置されているとき」が存在している。
このようなものにおいて,プレイヤキャラクタと複数の相手キャラクタのおのおのとの位置関係に何らかの演算手法を適用することによって,危険度を定量化しようとすることは当業者が普通に着想することであり,その定量化手法として平均という周知の演算を用い,「複数の第3の係数を平均化する処理を行う」という構成を採用することは,当業者が適宜採択しうる設計的事項にすぎないから,甲2発明において,本件特許発明3の相違点5に係る構成とすることは当業者が容易に想到したことである。

また,他の相違点については,上述したとおりである。

(4)本件特許発明4について
本件特許発明4は本件特許発明2に,「前記(c)において,前記エネミキャラクタに設定された視野範囲に前記プレイヤキャラクタが入っているか否かを判定し,入っていると判定されたときに前記エネミキャラクタの視界の向きを前記目立ち度の演算に反映させる処理を行う」との構成を付加したものである。
そうすると,本件特許発明4と甲2発明は,上記(1)<一致点>において一致し,上記(1)<相違点1>?<相違点3>及び上記(2)<相違点4>に加えて次の点で相違している。

<相違点6>
本願特許発明4では,「前記エネミキャラクタに設定された視野範囲に前記プレイヤキャラクタが入っているか否かを判定し,入っていると判定されたときに前記エネミキャラクタの視界の向きを前記目立ち度の演算に反映させる処理を行う」のに対して,甲2発明では,この点については明らかではない点。

<相違点6について>
敵が視野に入った場合に視線の向きにより目立ち度が異なることは明らかであって,これを,対戦を行う複数の相手キャラクタが登場する三次元CGゲーム装置により実行される方法である甲2発明に取り込むことは,当業者が容易に想到したことである。
そうすると,甲2発明において本件特許発明4の相違点6に係る構成とすることは,当業者が容易に想到したことである。

また,他の相違点については,上述したとおりである。

(5)本件特許発明5について
本件特許発明5は本件特許発明1?4のいずれかに,「前記エネミキャラクタに設定された視野範囲に前記プレイヤキャラクタが入っていると判定されたとき,演算された前記目立ち度の値に応じて前記エネミキャラクタの行動を決定する」との構成を付加したものである。
そうすると,本件特許発明5と甲2発明は,上記(1)<一致点>において一致し,上記(1)<相違点1>?<相違点3>及び上記(2)<相違点4>?(4)<相違点6>に加えて次の点で相違している。

<相違点7>
本件特許発明5では「前記エネミキャラクタに設定された視野範囲に前記プレイヤキャラクタが入っていると判定されたとき,演算された前記目立ち度の値に応じて前記エネミキャラクタの行動を決定する」のに対して,甲2発明では,この点については明らかではない点。
点。

<相違点7について>
甲2発明では,「プレイヤキャラクタが相手キャラクタの視野に入った場合,・・・危険度を状況及びその変化に応じて定量化」している。そうすると,「敵地に配設される各種施設,設備,施設内でプレイヤキャラクタを見つけたときに素手あるいは武器を用いて対戦を行う複数の相手キャラクタとが登場する三次元CGゲーム装置により実行される方法」である甲2発明において,上記危険度に応じて,「キャラクタを見つけた」ときの相手キャラクタの行動を決定し,本件特許発明5の相違点7に係る構成とすることは,当業者が容易に想到したことである。

また,他の相違点については,上述したとおりである。

(6)本件特許発明6について
本件特許発明6は本件特許発明1?5のいずれかに,「前記エネミキャラクタが前記プレイヤキャラクタを発見したと判定したとき,演算された目立ち度の値に応じて前記エネミキャラクタの行動を決定する」との構成を付加したものである。
そうすると,本件特許発明6と甲2発明は,上記(1)<一致点>において一致し,上記(1)<相違点1>?<相違点3>及び上記(2)<相違点4>?(5)<相違点7>に加えて次の点で相違している。

<相違点8>
本件特許発明6では「前記エネミキャラクタが前記プレイヤキャラクタを発見したと判定したとき,演算された目立ち度の値に応じて前記エネミキャラクタの行動を決定する」のに対して,甲2発明では,この点については明らかではない点。

<相違点8について>
甲2発明では,「プレイヤキャラクタが相手キャラクタの視野に入った場合,・・・危険度を状況及びその変化に応じて定量化」している。そうすると,相違点7と同じく,「敵地に配設される各種施設,設備,施設内でプレイヤキャラクタを見つけたときに素手あるいは武器を用いて対戦を行う複数の相手キャラクタとが登場する三次元CGゲーム装置により実行される方法」である甲2発明において,上記危険度に応じて,「キャラクタを見つけた」ときの相手キャラクタの行動を決定し,本件特許発明6の相違点8に係る構成とすることは,当業者が容易に想到したことである。

また,他の相違点については,上述したとおりである。

(7)本件特許発明7について
本件特許発明7は本件特許発明1から6のいずれかに,「前記インジケータ画像は,前記主画面に表示された前記プレイヤキャラクタの動作に対応して挙動するキャラクタシンボルを含み,前記(c)の演算で得られた前記目立ち度の変化に対応して当該キャラクタシンボル及び背景の少なくともいずれかの映像表示が変化するように構成されてなる」との構成を付加したものである。
甲2発明では,「プレイヤキャラクタが,この相手キャラクタの視野に入った場合は,危険度に応じてレーダ画像の色を,例えば赤から黄色のように段階的に変化させ,併せて危険度の変化やその色の残時間等をレーダ画像内に表示させるようにする処理」を行なっているから,甲2発明のレーダ画像の色は,本件特許発明7における「背景」に相当している。
そうすると,本件特許発明7と甲2発明とは,上述した<一致点>に加えて,「前記(c)の演算で得られた「攻撃を受ける危険度」の変化に対応して背景の映像表示が変化するように構成」されている点で一致し,上記(1)<相違点1>?<相違点3>及び上記(2)<相違点4>?(5)<相違点8>に加えて次の点で相違している。

<相違点9>
本件特許発明7は,「前記インジケータ画像は,前記主画面に表示された前記プレイヤキャラクタの動作に対応して挙動するキャラクタシンボルを含」むのに対して,甲2発明は,そのようなものでない点。

<相違点9について>
「プレイヤキャラクタの動作に対応して挙動するキャラクタシンボル」を表示することは,例えば,甲第6号証の記載事項(5c)にも開示されているように,ゲーム機においては周知の技術である。
そうすると,甲2発明のレーダ画面に,「前記主画面に表示された前記プレイヤキャラクタの動作に対応して挙動するキャラクタシンボル」を含ませることは,当業者が必要に応じてなし得る設計的事項にすぎない。

また,他の相違点については,上述したとおりである。


そして,上記各相違点に係る構成を採用することによる作用・効果も,甲2発明及び周知技術からみて格別なものということはできないから,本件特許発明1?7は,甲2発明,及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


(8)本件特許発明8について
本件特許発明8は,ソフトウェア関連発明であって方法の発明として記載した本件特許発明1?7を,「物の発明」である「プログラム」として請求項に記載したものである。そして,本件特許発明1?7は,甲2発明,及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許発明8も甲2発明,及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(9)本件特許発明9について
本件特許発明9は,ソフトウェア関連発明であって方法の発明として記載した本件特許発明1?7を,「物の発明」である「プログラムがコンピュータ装置によって読み取り可能に記録された記録媒体」として請求項に記載したものである。そして,本件特許発明1?7は,甲2発明,及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許発明8も甲2発明,及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(10)本件特許発明10について
本件特許発明10は,画像処理方法の発明である本件特許発明1を「ゲーム装置」として特許請求するものであって,本件特許発明1と同様の理由により,甲2発明,及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(11)本件特許発明11について
本件特許発明11は,本件特許発明1からゲームの画面を「主画面として」表示手段に表示する点,「インジケータ画像を主画面から区別して」表示手段に表示する点等を除いたものである。
そうすると,上記本件特許発明1と同様の理由により,甲2発明,及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(12)本件特許発明12について
本件特許発明12は,画像処理方法の発明である本件特許発明11を引用し,その「画像処理方法を実行させるように構成されたプログラム」として特許請求したものであり,上記本件特許発明11と同様の理由により,甲2発明,及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(13)本件特許発明13について
本件特許発明13は,プログラム発明である本件特許発明12を記録した記録媒体を特許請求するものであって,上記本件特許発明12と同様の理由により,甲2発明,及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(14)本件特許発明14
本件特許発明14は,画像処理方法の発明である本件特許発明11を「ゲーム装置」として特許請求するものであって,上記本件特許発明11と同様の理由により,甲2発明,及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 まとめ
以上のとおり,本件特許発明1?14はいずれも,甲2発明,及び周知の技術に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 結び
したがって,本件特許発明1?14は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,特許法第123条第1項第2号に該当するから,他の無効理由を検討するまでもなく,本件特許発明1?14は無効とすべきものである。
審判に関する費用については,特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-20 
結審通知日 2012-11-22 
審決日 2012-12-04 
出願番号 特願2006-512921(P2006-512921)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 荒井 隆一  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 高橋 三成
中川 真一
登録日 2011-08-19 
登録番号 特許第4803030号(P4803030)
発明の名称 画像処理方法、プログラム、記録媒体及びゲーム装置  
代理人 綾 聡平  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 塩谷 英明  
代理人 朝倉 傑  
代理人 井上 正  
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