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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1268970
審判番号 不服2011-10379  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-18 
確定日 2013-01-17 
事件の表示 特願2005- 13765「携帯コンピューティングシステムにおける低電力DVD再生」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月 6日出願公開、特開2005-276167〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成17年1月21日(パリ条約による優先権主張2004年1月23日 米国)の特許出願であって、同22年4月28日付けで拒絶の理由が通知され、同22年10月6日に意見書とともに特許請求の範囲について手続補正書が提出されたが、同23年1月19日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。これに対し、平成23年5月18日に本件審判の請求がなされたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし25のうち、請求項18に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、
「【請求項18】
バッテリ駆動コンピュータ上でDVDを再生する方法であって、
前記バッテリ駆動コンピュータがビデオ再生専用モードにあるかどうかを決定し、前記ビデオ再生専用モードにある場合に、
CPUの電源をオフする工程と、
前記CPUとは分離された別個のDVDユニットの電源をオンする工程と、
前記DVDユニットによってDVDメディアデータを生成する工程と、
前記DVDメディアデータを表示ユニットに送る工程と、
前記表示ユニット上に前記DVDメディアデータのビデオ部分を表示する工程と、
を備える方法。」にあるものと認められる(以下請求項18に係る発明を「本願発明」という。)。
なお、平成22年10月6日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項18には、「・・・(前略)バッテリ駆動コンピュータがビデオ再生専用モードにあるかどうかを決定し、前記ビデオ専用再生モードにある場合に・・・(後略)」と記載されているが、「ビデオ再生専用モード」の直後に「前記ビデオ専用再生モード」と表現が異なっているのは不自然であり、また請求人の審判請求書に「ビデオ再生専用モードであると決定されたときに」(審判請求書第3ページ第4行)と記載されていることから、(後ろの)「ビデオ専用再生モード」を(前の)「ビデオ再生専用モード」の誤記と認め、本願発明を上記のように認定した。

第3.引用刊行物記載の発明
これに対して、原審の平成22年4月28日付け拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である以下の文献には、以下の発明が記載されていると認められる。

刊行物1:特開2001-351309号公報(原審の引用文献1)

1.刊行物1記載の事項
刊行物1には、「可搬型記録媒体再生装置」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア.段落【0008】
「【0008】本発明の目的は、マルチメディアパソコンを可搬型メディア再生専用として機能させるときに、消費電力削減と立上げ時間短縮とを実現すると共に、処理時間の短縮もできる可搬型記録媒体再生装置を提供することにある。」

イ.段落【0013】
「【0013】本発明の可搬型記録媒体再生装置の一実施例を示す図1を参照すると、本装置はDVD再生機能を有するパソコンを示す。装置全体の電源を入れる為の電源スイッチ3と、ビデオを再生する為に装置の一部分の電源を入れる為のDVD再生スイッチ1とが設けられており、それぞれ電源回路2に接続する。電源スイッチ3とDVD再生スイッチ1は、いずれか一方のみが投入される。」

ウ.段落【0015】
「【0015】DVDドライブ11はDVDデータをビデオデータに変換し、グラフィックコントローラ9はビデオデータを映像データに変換する。グラフィックコントローラ9は、この処理をOSの介在なしに行うためのシーケンスを有する。ディスプレイ12は映像データを表示する。ROM10は、初期化設定データを格納しグラフィックコントローラ9に接続している。ストレージコントローラ7は、DVDドライブ11によって変換された映像データをバス13に導き、また、バス13上のデータをDVDドライブ11に導くための制御を行う。バス13は、周辺デバイス5,CPU6,ストレージコントローラ7およびグラフィックコントローラ9を相互に接続する。」

エ.段落【0016】?【0017】
「【0016】図2は、電源スイッチ3とDVD再生スイッチ1が投入されたときの電源供給内容を表示したものである。電源スイッチ3がオンのときには、主電源線15および副電源線14の両方に電源回路2から電源が供給される。この結果、本可搬型記録媒体再生装置を構成する全てのデバイス、すなわち、周辺デバイス5,CPU6,ストレージコントローラ7,信号切断器8,グラフィックコントローラ9,ROM10,DVDドライブ11およびディスプレイ12に電源が供給されることになる。
【0017】一方、DVD再生スイッチ1がオンのときには、副電源線14のみに電源回路2から電源が供給される。この結果、周辺デバイス5,CPU6およびストレージコントローラ7への電源供給は断たれ、信号切断器8,グラフィックコントローラ9,ROM10,DVDドライブ11およびディスプレイ12にのみ電源が供給されることになる。この結果、周辺デバイス5,CPU6,ストレージコントローラ7とグラフィックコントローラ9との電気的な接続は遮断される。」

オ.段落【0018】?【0022】
「【0018】次に、図1に示した本可搬型記録媒体再生装置の動作について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。本発明は、一般的にパーソナルコンピュータと呼ばれる機能を有している。
【0019】先ず、本装置をパーソナルコンピュータとして機能させるためには、電源スイッチ3を入れる。すると、電源回路2は、そのことを検出し(図3のステップS1)、主切断器4をオン状態にし(ステップS12)、全てのデバイスに電源を供給し(ステップS13)、全てのデバイスを動作させることができるようにする。このときには、副電源線のみの電源供給ではないので(ステップS4)、通常起動処理、すなわち全デバイスに対する初期診断と初期データの設定を待つことになり(ステップS5)、相応の時間を要する。
【0020】次に、ビデオ映像のみを再生し表示するとき、いわゆる「軽い」処理について説明する。使用者はDVD再生スイッチ1を入れ、電源スイッチ3は入れない。この場合には、電源回路2は、電源スイッチ3が押されたのではないことを検出し(ステップS1)、主切断器4を切断し(ステップS2)、主電源線15に電源を供給せず、副電源線14に電源を供給する(ステップS3)。信号切断器8は、副電源線14には電源が供給されたが、主電源線15には電源が供給されていない状態では、DVDドライブ11の信号をストレージコントローラ7には接続せず、信号はグラフィックコントローラのみに接続する。
【0021】グラフィックコントローラ9は、副電源線14には電源が供給されたが、主電源線15には電源が供給されていない状態では、信号切断器8からの指示によって、バス13のインターフェースを内部的に切り離し、グラフィックコントローラ9の動作に影響を及ぼさないようにする。グラフィックコントローラ9は、ROM10から初期化用のデータを読み出す(ステップS6)。グラフィックコントローラ9は、このデータでグラフィックコントローラ9のレジスタをDVDドライブ11からのデータを表示可能な状態に設定する(ステップS7)。
【0022】初期設定が完了すると、グラフィックコントローラ9は、DVDドライブ11にビデオデータの出力を開始させる(ステップS8)。DVDドライブ11は、DVDデータのデコードを実施しビデオデータをグラフィックコントローラ9へ出力する(ステップS9)。グラフィックコントローラ9は、ビデオデータを表示データに変換してディスプレイ12に表示データを転送し(ステップS11)、ディスプレイ12にビデオ映像を表示させる(ステップS11)。グラフィックコントローラ9は、以上の処理をOSの介在なくして行うためのシーケンスを内蔵している。」

2.刊行物1記載の発明
まず、摘記事項オ.に「【0018】・・・本発明は、一般的にパーソナルコンピュータと呼ばれる機能を有している。」とあり、また、「可搬型」の「パーソナルコンピュータ」はバッテリで駆動されることは技術常識であるので、刊行物1記載の「可搬型記録媒体再生装置」は、バッテリ駆動コンピュータ、ということができる。
そして、摘記事項オ.に「【0020】次に、ビデオ映像のみを再生し表示するとき、いわゆる「軽い」処理について説明する。使用者はDVD再生スイッチ1を入れ、電源スイッチ3は入れない。」とあり、摘記事項ア.に「本発明の目的は、マルチメディアパソコンを可搬型メディア再生専用として機能させるときに、」とあることから、これらの記載を合理的に解釈すれば、刊行物1のバッテリ駆動コンピュータは、電源スイッチ3がオフで択一式なDVD再生スイッチ1がオンのときには、可搬型メディア再生専用モードと決定するもの、と認められる。
また、摘記事項ウ.に「DVDドライブ11はDVDデータをビデオデータに変換し、グラフィックコントローラ9はビデオデータを映像データに変換する。」とあることから、DVDドライブ11とグラフィックコントローラ9をまとめてDVDユニット、ということができる。さらに、摘記事項ウ.に「グラフィックコントローラ9は、この処理をOSの介在なしに行うためのシーケンスを有する。」とあり、摘記事項エ.に「【0021】グラフィックコントローラ9は、・・・状態では、信号切断器8からの指示によって、バス13のインターフェースを内部的に切り離し、グラフィックコントローラ9の動作に影響を及ぼさないようにする。」とあることから、当該「DVDユニット」は、CPU6とは分離された別個のDVDユニット、といえる。

そこで、上記摘記事項ア.ないしオ.を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて本願発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「バッテリ駆動コンピュータ上でDVDを再生する方法であって、
前記バッテリ駆動コンピュータの電源スイッチ3がオフで択一式なDVD再生スイッチ1がオンのときには、可搬型メディア再生専用モードと決定し、前記可搬型メディア再生専用モードにある場合に、
CPU6への電源供給は絶たれ、
前記CPU6とは分離された別個のDVDユニットに副電源線14により電源を供給する工程と、
前記DVDユニットによって映像データを生成する工程と、
前記映像データをディスプレイ12に送る工程と、
前記ディスプレイ12上に前記映像データのビデオ映像を表示する工程と、
を備える方法。」(以下「刊行物1発明」という。)

第4.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
まず、刊行物1発明の「可搬型メディア再生専用モード」が本願発明の「ビデオ再生専用モード」に相当することは、技術常識に照らして明らかであり、同様に、「CPU6」は「CPU」に、「映像データ」は「DVDメディアデータ」に、「ディスプレイ12」は「表示ユニット」に、「ビデオ映像」は「ビデオ部分」に相当することも明らかである。
次に、刊行物1発明の「バッテリ駆動コンピュータの電源スイッチ3がオフで択一式なDVD再生スイッチ1がオンのときには、可搬型メディア再生専用モードと決定」することは、本願発明の「バッテリ駆動コンピュータがビデオ再生専用モードにあるかどうかを決定」することに相当する。
また、刊行物1発明の「CPU6への電源供給は絶たれ」ることと、本願発明の「CPUの電源をオフする工程」とは、CPUへ電源を供給しないこと、である限りにおいて共通する。
さらに、刊行物1発明の「DVDユニットに副電源線14により電源を供給する工程」は、本願発明の「DVDユニットの電源をオンする工程」に相当する。

したがって、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「バッテリ駆動コンピュータ上でDVDを再生する方法であって、
前記バッテリ駆動コンピュータがビデオ再生専用モードにあるかどうかを決定し、前記ビデオ再生専用モードにある場合に、
CPUへ電源を供給せず、
前記CPUとは分離された別個のDVDユニットの電源をオンする工程と、
前記DVDユニットによってDVDメディアデータを生成する工程と、
前記DVDメディアデータを表示ユニットに送る工程と、
前記表示ユニット上に前記DVDメディアデータのビデオ部分を表示する工程と、
を備える方法。」

そして、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
<相違点1>
ビデオ再生専用モードにある場合に、本願発明は、CPUの電源をオフする工程を行うのに対し、刊行物1発明は、CPU6への電源供給は絶たれたものである点。

第5.相違点の検討
1.<相違点1>について
相違点1は、刊行物1発明がバッテリ駆動コンピュータの電源スイッチ3がオフで択一式なDVD再生スイッチ1がオンのときという条件下でビデオ再生専用モードとすること起因して、もともとオンされていないCPU6を積極的にオフする工程が必要なく、CPU6への電源供給は絶たれた(ままの)状態にしておくことによるものである。

これにつき検討するに、まず、刊行物1発明における電源スイッチ3と択一式なDVD再生スイッチ1について、これらを必ずしも択一的とせず、電源スイッチ3投入後、DVD再生スイッチ1を入れることによって、DVD再生させるように構成することも、一般の電子機器のスイッチ構成の技術常識に鑑みれば当業者が適宜行い得ることである。

そして、そのように構成した場合、先行する電源スイッチ3の投入によって、DVD再生スイッチ1オン時に既にCPU6が起動されていることが想定されるところ、
(i)消費電力削減を実現するという刊行物1発明の目的(上記摘記事項第3.1.ア.)に鑑みれば、DVD再生に必ずしも必要のないCPU6の電源をオフする工程を行い、「CPU6への電源供給は絶たれた」のと同じ状態を実現するのが、消費電力削減のための自然な対処であり、
(ii)また、バッテリ駆動コンピュータ上でDVDを再生する方法において、電力を節約するために、DVDビデオ再生時には、DVDビデオの再生等に寄与しない機器に対する電源供給をオフすることは、例えば、原審の拒絶査定にて示した特開平11-175205号公報(段落【0064】?【0067】等参照)、原審の拒絶理由で引用した特開平11-134078号公報(段落【0072】等参照)に示されるように従来周知の事項であり、かかる周知技術を刊行物1発明に適用して、ビデオ再生専用モードにおいては、DVDビデオの再生に必ずしも必要ない機器たるCPU6に対する電源をオフする工程を付加することは、格別困難とはいえず、
(iii)さらに、一般にCPUを含むシステムにおいて、電力を節約するために、一定の条件下では、起動後のCPUの電源をオフして、他の(消費電力の少ない)回路のみを動作させることも、例えば、特開2003-152889号公報(段落【0015】?【0018】等参照)、特開2002-278378(段落【0008】?【0009】、段落【0033】等参照)に示されるように、従来周知の事項であり、かかる周知技術を刊行物1発明に適用して、DVD再生専用時という条件下では、起動後のCPUの電源をオフして他の(消費電力の少ない)回路のみを動作させることも、格別困難とはいえない。

そうしてみると、これらを併せ考え、刊行物1発明に従来周知の技術を適用して、CPU6の電源をオフする工程を行い、相違点1に係る発明特定事項を本願発明のものとすることは、当業者が容易に想到し得るところというべきである。

請求人は審判請求書にて、刊行物1記載のものが、「電源スイッチとDVD再生スイッチとのいずれか一方のみを投入可能な再生装置であ」る点を強調するが(審判請求書第3ページ第17?18行)、これについての当審の判断は上記のとおりであり、また、本願発明において操作者のいかなる操作によりビデオ再生専用モードとするのか特定されていないのみならず、そもそも本願明細書には、操作者のいかなる操作によりビデオ再生専用モードとするのか記載されていないのであるから、この点を強調するのは理由がない。

2.本願発明の効果について
本願発明によってもたらされる効果も、刊行物1発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。

3.したがって、本願発明は、刊行物1発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって本願はその余の請求項1ないし17及び19ないし25に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-22 
結審通知日 2012-08-23 
審決日 2012-09-06 
出願番号 特願2005-13765(P2005-13765)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 大志  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 長屋 陽二郎
菅澤 洋二
発明の名称 携帯コンピューティングシステムにおける低電力DVD再生  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
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