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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1268980
審判番号 不服2011-19906  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-14 
確定日 2013-01-17 
事件の表示 特願2009- 85513「ガスセンサの製造方法、ガスセンサ、ガスセンサに備わる積層構造、およびNOxセンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月21日出願公開、特開2010-237044〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年3月31日を出願日とする出願であって、平成22年12月13日付けで拒絶理由が通知され、平成23年2月7日付けで手続補正がなされ、同年7月5日付けで拒絶査定がなされ、同年9月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?9に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されたものであって、その請求項8に係る発明は、平成23年2月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項8に記載された次のとおりのものであると認める。
「【請求項8】
電気化学的ポンプセルを流れる電流を測定することにより被測定ガス中の測定対象ガス成分の濃度を特定するガスセンサに備わる積層構造であって、
所定の基層上に設けられた、前記電気化学的ポンプセルを構成する電極と、
前記電極の上に設けられ、外部から前記電極へのガスの到達を、所定の拡散抵抗のもとに律速する多孔質層と、
を備え、
前記多孔質層が3以上の複数の層の積層構造を有してなり、
前記複数の層のうち、前記電極に接する最下層と、表面が露出する最上層との少なくとも一方の気孔率が、他の層の気孔率よりも大きい、
ことを特徴とするガスセンサに備わる積層構造。」(以下、「本願発明」という。)

第3 引用刊行物記載の発明 (下線は当審で付与した。)
(1)本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2008-164411号公報(以下「刊行物1」という。)には、「NOx分解電極及びNOxセンサの製造方法」について、図面とともに次の事項が記載されている。
(1-ア) 「【0001】
本発明は、NOxに対する分解/還元能力があるか、あるいは高い電極であって、NOxを分解し、その際に酸素を発生させるNOx分解電極と、例えば、車両の排出ガスや大気中に含まれるNOxを測定するNOxセンサに関する。」

(1-イ) 「【0023】
本実施の形態に係るNOxセンサ10は、図1に示すように、細長な長尺の板状体形状を有するセンサ素子12を具備する。」

(1-ウ) 「【0045】
さらに、本実施の形態では、測定室20内に検出電極54が形成され、該検出電極54の周りの雰囲気中における窒素酸化物(NOx)の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量を検出すべく、前記検出電極54と、外側ポンプ電極42と、第1固体電解質層14a?第3固体電解質層14cとから、電気化学的なポンプセル、すなわち、測定用ポンプセル56が構成されている。
【0046】
この測定室20内に配置される検出電極54には、同じく測定室20内に配設された補助ポンプ電極50から揮散する金属のような不活性成分等が付着することを防ぎ、検出電極54の触媒活性(NOx分解/還元能)を有効に保持し得るように、図1に示すように、検出電極54を覆うようにしてアルミナを含む多孔質セラミックス層からなる電極保護層58が形成されている。」

(1-エ) 「【0052】
さらに、検出電極54の周りの雰囲気中の酸素分圧を検知するための第3酸素分圧検出セル70が、検出電極54、基準電極60、第1固体電解質層14a?第4固体電解質層14dによって構成されている。
【0053】
そして、この第3酸素分圧検出セル70にて検出された起電力V2に基づいて制御される第3可変電源72によって、測定用ポンプセル56がポンプ作動させられて、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に対応したポンプ電流値Ip2が得られるようになっている。」

(1-オ) 「【0059】
さらに、測定室20内において、酸素分圧が制御された雰囲気は、電極保護層58を通じて、所定の拡散抵抗の下に、検出電極54に到達するようになるが、その導かれた雰囲気中のNOxは、検出電極54の周りにおいて、還元又は分解されて、酸素を発生する。」

(1-カ) 「【0063】
このように、検出電極54は、貴金属が第3固体電解質層14cの材料であるZrO2よりも多くなるように含有比率が設定されている。そのため、ZrO2から構成される第3固体電解質層14cと該検出電極54との付着力が強化される。しかも、本実施の形態では、シリカとアルミナを含む混合物を0.2?0.5重量%含む。そのため、700℃?800℃の高温でNOxを測定する、つまり、検出電極54に絶えず、膨張と収縮とが繰り返し発生するという環境にさらされたとしても、検出電極54での膨張と収縮とが抑制され、検出電極54を被覆する電極保護層58に亀裂や割れが入ったり、また、検出電極54が第3固体電解質層14cから剥離するという現象は発生しなくなる。 」

上記(1-ア)?(1-カ)の記載と図1?4を参照すると、上記引用刊行物1には、
「電気化学的なポンプセル、すなわち、測定用ポンプセル56がポンプ作動させられて、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に対応したポンプ電流値Ip2が得られるようになっているNOxセンサ10であって、
測定室20内に第3固体電解質層14cと付着して検出電極54が形成され、該検出電極54を覆うようにしてアルミナを含む多孔質セラミックス層からなる電極保護層58が形成されている測定室20内において、酸素分圧が制御された雰囲気は、電極保護層58を通じて、所定の拡散抵抗の下に、検出電極54に到達するNOxセンサ10。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

第4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
ア その構造・機能からみて、引用発明の「NOxセンサ10」「第3固体電解質層14c」、「検出電極54」、および「被測定ガス中の窒素酸化物の濃度」が、それぞれ本願発明の「ガスセンサ」、「所定の基層」、「電気化学的ポンプセルを構成する電極」、および「被測定ガス中の測定対象ガス成分の濃度」に相当することは明らかである。

イ 引用発明は「測定室20内において、酸素分圧が制御された雰囲気は、電極保護層58を通じて、所定の拡散抵抗の下に、検出電極54に到達する」のであるから、引用発明の「電極保護層58」は、本願発明の「前記電極の上に設けられ、外部から前記電極へのガスの到達を、所定の拡散抵抗のもとに律速する多孔質層」に相当する。

ウ 引用発明の「該検出電極54を覆うようにしてアルミナを含む多孔質セラミックス層からなる電極保護層58」と
本願発明の「前記電極の上に設けられ」「前記多孔質層が3以上の複数の層の積層構造を有してなり、
前記複数の層のうち、前記電極に接する最下層と、表面が露出する最上層との少なくとも一方の気孔率が、他の層の気孔率よりも大きい」「積層構造」とは
「前記電極の上に設けられ」「多孔質層からなる」「層構造」の点で共通する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「電気化学的ポンプセルを流れる電流を測定することにより被測定ガス中の測定対象ガス成分の濃度を特定するガスセンサに備わる層構造であって、
所定の基層上に設けられた、前記電気化学的ポンプセルを構成する電極と、
前記電極の上に設けられ、外部から前記電極へのガスの到達を、所定の拡散抵抗のもとに律速する多孔質層と、
を備える層構造。」である点で一致し、次の点で相違している。

(相違点)
多孔質層について、本願発明では「3以上の複数の層の積層構造を有してなり、
前記複数の層のうち、前記電極に接する最下層と、表面が露出する最上層との少なくとも一方の気孔率が、他の層の気孔率よりも大きい」のに対して、引用発明では、「アルミナを含む多孔質セラミックス層」である点。

(1)相違点についての検討
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-232252号公報には、「上記各保護層の作用を有効に発揮しつつ、被測定ガスの通過性及び応答性の劣化を防止するためには、・・・又、同様な見地で、気孔率については第1保護層20?60%、第2保護層5?40%、基保護層は第1保護層の20?90%にするとよい。」(第3頁左下欄6行?13行)と記載され、
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-276956号公報には、「例えば電極側から表面に向けて気孔率が増大する様に複数の保護層とすれば保護層の目詰まり防止効果が高くなる。」(第4頁左上欄16行?18行)と記載され、
本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-48758号公報には、「【0036】また,被測定ガス側電極2の表面は保護層11で覆われ,該保護層11の表面は第2保護層131,第3保護層132で覆われている。この第2保護層131は排ガス中の有害成分のトラップ効果を高めるために設けてある。第2保護層131は・・・気孔率は20?50%である。
【0037】第3保護層132は更に確実に被毒成分を捉えるために設けてあり,気孔率を第2保護層131よりも大きくしてある。これにより,より大きな被毒物をトラップし,第2保護層131での被毒による目詰まりを防ぐことができる。第3保護層132は・・・気孔率は60%である。」と記載されているように、
「多孔質層が3層の積層構造を有してなり、前記3層のうち、表面が露出する最上層の気孔率が、中央の層の気孔率よりも大きい構成」は、「目詰まりを防ぎ、被測定ガスの通過性及び応答性の劣化を防ぐ」という、ガスセンサの多孔質電極保護層の周知の課題を解決するための周知の技術事項である。
してみると、引用発明にガスセンサの保護層の点で共通する上記周知の技術事項を採用し、相違点における本願発明の構成とすることは、引用発明も、該周知の課題を有しているといえるから、十分動機付けがあり、当業者が容易に想到するものといえる。

そして、上記周知の技術事項は本願発明の積層構造であるから、上記周知の技術事項は、本願発明と同様に「電極保護層の拡散抵抗のばらつきが好適に抑制される」効果を自ずと奏することになるので、本願発明の作用効果は、引用発明、および周知の技術事項それぞれの作用効果の総和を超えるものではない。

したがって、本願発明は、引用発明、および周知の技術事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、および周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項について言及するまでもなく、本願出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-12 
結審通知日 2012-11-13 
審決日 2012-12-03 
出願番号 特願2009-85513(P2009-85513)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大竹 秀紀  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 信田 昌男
後藤 時男
発明の名称 ガスセンサの製造方法、ガスセンサ、ガスセンサに備わる積層構造、およびNOxセンサ  
代理人 有田 貴弘  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 吉竹 英俊  

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