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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07K
管理番号 1269179
審判番号 不服2010-4469  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-01 
確定日 2013-01-23 
事件の表示 特願2003-536266「Gタンパク質結合受容体アンタゴニストとしての環状ペプチド」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月24日国際公開、WO03/33528、平成17年 6月 2日国内公表、特表2005-515973〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年10月17日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年10月17日 オーストラリア)とする出願であって、平成20年9月30日付で特許請求の範囲について手続補正がなされたが、平成21年10月19日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成22年3月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で特許請求の範囲について手続補正がなされたものである。

2.平成22年3月1日付手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年3月1日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正により特許請求の範囲の請求項10、15が削除され、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】Gタンパク質結合受容体のアンタゴニストであり、アゴニスト活性を有さない化合物であって、下記の一般式:
【化1】 (以下、「化合物1の構造式」という。)


[式中、Aは、H、アルキル、アリール、NH-アルキル、N(アルキル)_(2)、NH-アリール、NH-ベンゾイル、NHSO_(3)、NHSO_(2)-アルキル、NHSO_(2)-アリール、OH、O-アルキルまたはO-アリールであり;
Bは、アルキル、アリール、ベンジル、ナフチルもしくはインドール基、またはL-フェニルアラニンもしくはL-フェニルグリシンの側鎖であり;
Cは、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、プロリン、ヒドロキシプロリンまたはチオプロリンの側鎖であり;
Dは、D-ロイシン、D-ホモロイシン、D-シクロヘキシルアラニン、D-ホモシクロヘキシルアラニン、D-バリン、D-ノルロイシン、D-ホモノルロイシン、D-フェニルアラニン、D-テトラヒドロイソキノリン、D-グルタミン、D-グルタメートまたはD-チロシンの側鎖であり;
Eは、L-1-ナフチルもしくはL-3-ベンゾチエニルアラニンであり、またはL-フェニルアラニン、L-トリプトファンおよびL-ホモトリプトファンよりなる群から選ばれるアミノ酸の側鎖であり;
Fは、L-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリンまたはL-カナバニンの側鎖、あるいはこれらのバイオ同配体であり;
Xは、-(CH_(2))_(n)NH-または-(CH_(2))_(n)S-、nが1?4の整数;-(CH_(2))_(2)O-;-(CH_(2))_(3)O-;-(CH_(2))_(3)-;-(CH_(2))_(4)-;-CH_(2)COCHRNH-;あるいは-CH_(2)CHCOCHRNH-、Rが普通のまたは稀なアミノ酸の側鎖である]
を有する環状ペプチドまたはペプチド様化合物である化合物。」
。」から、
「【請求項1】Gタンパク質結合受容体のアンタゴニストであり、アゴニスト活性を有さない化合物であって、下記の一般式:
【化1】 (構造式は省略。化合物1の構造式)

[式中、Aは、H、アルキル、アリール、NH-アルキル、N(アルキル)_(2)、NH-アリール、NH-ベンゾイル、NHSO_(3)、NHSO_(2)-アルキル、NHSO_(2)-アリール、OH、O-アルキルまたはO-アリールであり;
Bは、アルキル、アリール、ベンジル、ナフチルもしくはインドール基、またはL-フェニルアラニンもしくはL-フェニルグリシンの側鎖であり;
Cは、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、プロリン、ヒドロキシプロリンまたはチオプロリンの側鎖であり;
Dは、D-ロイシン、D-ホモロイシン、D-シクロヘキシルアラニン、D-ホモシクロヘキシルアラニン、D-バリン、D-ノルロイシン、D-ホモノルロイシン、D-フェニルアラニン、D-テトラヒドロイソキノリン、D-グルタミン、D-グルタメートまたはD-チロシンの側鎖であり;
Eは、L-1-ナフチルもしくはL-3-ベンゾチエニルアラニンであり、またはL-フェニルアラニン、L-トリプトファンおよびL-ホモトリプトファンよりなる群から選ばれるアミノ酸の側鎖であり;
Fは、L-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリンまたはL-カナバニンの側鎖、あるいはこれらのバイオ同配体であり;
Xは、-(CH_(2))_(n)NH-または-(CH_(2))_(n)S-、nが1?4の整数;-(CH_(2))_(2)O-;-(CH_(2))_(3)O-;-(CH_(2))_(3)-;-(CH_(2))_(4)-;-CH_(2)COCHRNH-;あるいは-CH_(2)CHCOCHRNH-、Rが普通のまたは稀なアミノ酸の側鎖である、
但し、DがD-フェニルアラニン以外である場合は、EはL-1-ナフチルアラニンであり、EがL-1-ナフチルアラニン以外である場合には、DはD-フェニルアラニンである]
を有する環状ペプチドまたはペプチド様化合物である化合物。」へと補正された。
上記補正は、上記補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である化合物1の構造式におけるD、Eの置換基について、さらに「DがD-フェニルアラニン以外である場合は、EはL-1-ナフチルアラニンであり、EがL-1-ナフチルアラニン以外である場合には、DはD-フェニルアラニンである」という限定を付加するものであり、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された本願優先日前の1999年1月7日に頒布された刊行物である国際公開99/00406号(以下、「引用例」という。)には、
(i)「一つの好ましい実施態様において、化合物はC5aRに対するアンタゴニスト活性を有し、C5aアゴニスト活性はなく、次の一般式を有する。
構造II (以下、「構造式II」という。)


式中、Aは、H、アルキル、アリール、NH_(2),NHアルキル、N(アルキル)_(2)、NHアリール、又はNHアシル;OH、Oアルキル又はOアリールである;
Bは、アルキル、アリール、フェニル、ベンジル、ナフチル若しくはインドール基、又はフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、トリプトファン、ホモトリプトファン、チロシン、及びホモチロシンよりなる群から選ばれるD-又はL-アミノ酸の側鎖である;
Cは、プロリン、アラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、チロシン、フェニルアラニン、シクロヘキシルアラニン、ノルロイシン、トリプトファン、システイン、及びメチオニンよりなる群から選ばれるD-又はL-、又はホモ-アミノ酸の側鎖である;
Dは、シクロヘキシルアラニン、ホモシクロヘキシルアラニン、ロイシン、ノルロイシン、ホモロイシン、及びトリプトファンよりなる群から選ばれるD-又はL-アミノ酸の側鎖である;
Eは、トリプトファン及びホモトリプトファンよりなる群から選ばれるD-又はL-アミノ酸の側鎖である;
Fは、アルギニン、ホモアルギニン、リシン、及びホモリシンよりなる群から選ばれるD-又はL-アミノ酸の側鎖である;
Xは、-(CH_(2))_(n)NH-又は-(CH_(2))_(n)S-、ここでnは1?4の整数、好ましくは2又は3、-(CH_(2))_(2)O-、-(CH_(2))_(3)O-、-(CH_(2))_(3)-、-(CH_(2))_(4)-、又は-CH_(2)COCHRNH-、ここでRは普通のまたは稀なアミノ酸の側鎖、である。」(第15頁第4行?第16頁第10行)、
(ii)「表4 ヒトPMNsにおける受容体結合親和性とアンタゴニスト活性

化合物 受容体親和性 アンタゴニスト効力 アゴニスト活性
IC_(50)(μM) IC_(50)(μM)
7 MeFKP(dCha)Wr 1.8(15) 0.085(9) なし
(化合物8?10の結果は省略)
11 Ac-F-[KPdCha)Wr]3.2(40)0.090(5) なし
12 Ac-F-[OPdCha)Wr]0.28(6)0.012(4) なし
(化合物4、1の結果は省略)
括弧内は実験回数。アミノ酸含量につき修正した。角括弧は環状部分を示す。」(第37頁)、
(iii)「実施例5 アンタゴニスト構造のコンピューターモデル
第7図で、環状アンタゴニスト12のコンピューターモデル化構造と非環状アンタゴニスト7のNMR溶液構造との比較をしている。これら骨格構造は極めて類似しており、これら分子の受容体結合配座が同じ回転構造を有することを強く示唆する。化合物12(11よりも更に強力なアンタゴニスト)が、より短いリンカーを有し、回転を固定し、Phe、dCha、Trp、及びArgの主要側鎖に影響する配座空間を僅かに変化させる。」(第44頁第7行?第17行)、と記載されている。

(3)対比
上記引用例記載事項(ii)の表4にある、C5aRに対するアンタゴニスト活性を有し、C5aアゴニスト活性を有しない化合物12、Ac-F-[OPdCha)Wr]をそのアミノ酸配列に代えて、上記引用例記載事項(i)にある構造式IIにおける置換基A?E、Xで表わすと、化合物12の置換基Aは、NHアシル(NHアセチル)、BはL-フェニルアラニンの側鎖、Cはプロリンの側鎖、DはD-シクロヘキシルアラニンの側鎖、EはL-トリプトファンの側鎖、FはL-アルギニンの側鎖、Xは-(CH_(2))_(2)NH-となる。
また、本願補正発明の「化合物1の構造式」と上記引用例記載事項(i)の構造式IIは、同一の基本骨格を有する同一の構造式であり、両者の置換基A?E、Xも同じ位置にあるから、本願補正発明の形式上の多数の選択肢で記載された化合物のうち、置換基AとしてNH-アルキルを、BとしてL-フェニルアラニンの側鎖、Cとしてプロリンの側鎖、DとしてD-シクロヘキシルアラニンの側鎖、EとしてL-1-ナフチルアラニンの側鎖、FとしてL-アルギニンの側鎖、Xとして-(CH_(2))_(2)NH-を選択した場合の本願補正発明(以下、「本願補正発明’」という。)の化合物と上記引用例記載の化合物12とを比較する。
引用例に記載のC5aRは、Gタンパク質結合受容体であるから、本願補正発明’の化合物と上記引用例の化合物12は、「Gタンパク質結合受容体のアンタゴニストであり、アゴニスト活性を有さない化合物であって、化合物1の構造式の置換基A?F、Xのうち、置換基B?D、F、Xがそれぞれ、BがL-フェニルアラニンの側鎖、Cがプロリンの側鎖、DがD-シクロヘキシルアラニンの側鎖、FがL-アルギニンの側鎖、Xが-(CH_(2))_(2)NH-である環状ペプチド化合物」である点で一致し、両者は、(イ)置換基Aが、前者ではNHアルキルであるのに対して、後者ではNHアシルである点、及び(ロ)置換基Eが、前者ではL-1-ナフチルアラニンの側鎖であるのに対して、後者ではL-トリプトファンの側鎖である点、の2点で相違する。

(4)当審の判断
受容体に結合するペプチドリガンドの技術分野において、基本骨格構造を決定した後、さらに受容体への結合性、アンタゴニスト活性等を向上させるため、基本骨格以外の置換基を置換して誘導体を作製し、より結合性、活性に優れたものを得ようとすることは、上記引用例にも記載のように、本願優先日前既に自明の技術的課題であり、かつ周知の手段(必要であれば、特開平10-72363号公報参照)でもあった。
このような本願優先日前の技術水準の下、引用例に記載の優れたアンタゴニスト活性を有する化合物12を基にして、より優れた誘導体を得るために、各置換基を置換することは当業者が容易に想到し得ることであり、その際、引用例の化合物12の置換基AのNHアセチル基をNHアルキル基に置換することは、上記引用例記載事項(ii)にあるアンタゴニスト活性の高い表4の化合物7の置換基AがNHメチル基であり、上記引用例記載事項(i)にも置換基Aの選択肢としてNHアルキルが記載されているから、当業者であれば容易になし得ることである。
また、上記引用例記載事項(iii)には、化合物12が環状であり、Phe、dCha、Trp、及びArgの主要側鎖の配座空間が受容体との結合に影響することが示唆されているから、主要側鎖の構造と類似した置換基に置換すること、それがL-Trpの側鎖であれば、同じく芳香族アミノ酸であり、同じような嵩高さのL-1-ナフチルアラニンの側鎖に置換しようとすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。このことは、上記特開平10-72363号公報の請求項7にも、Trpと1-ナフチルアラニンが、置換基の選択肢として記載されており、芳香族アミノ酸間の置換として本願優先日前既に広く行われていた技術的事項であり、相違点(ロ)にも格別な技術的特徴は見出せない。
そして、本願明細書の表13の番号52の置換基EのTrpの側鎖に代え1-ナフチルアラニンの側鎖を用いた化合物は、表12の番号1の置換基EがTrpの側鎖である化合物(注、引用例の化合物12と同じ化合物)に比べ、受容体への結合親和性、アンタゴニスト活性の両方とも劣っていることが示されており、本願補正発明’の化合物において奏される効果が、引用例に記載の化合物に比べ有利なものであるとはいえない。
したがって、本願補正発明’は、引用例の記載および上記周知事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明’を選択肢として包含する本願補正発明も同様であり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)審判請求人の主張
審判請求人は、平成22年4月22日付審判請求書の手続補正書において、「本願効果をもたらす置換基が引用文献1に開示されていない以上、本願新規化合物を作成すには当業者の試行錯誤を要する事は明らかであります。ここで、本願補正後の請求項1に記載した化合物において、DがD-フェニルアラニンであるものとしては化合物33(明細書[0013]および[0104]に支持されております)、そしてE:L-1-ナフチルアラニン(明細書[0014]に支持されております)であるものとしては化合物52(明細書実施例3の[0097]の表13に支持されております)に対応致します。…(途中省略)…
化合物52においては、0.71μMの結合親和性および46.6nmのアンタゴニスト活性を示しますが、このE位置がL-1-ナフチルアラニンからFluに置換された場合には(化合物54に対応致します)、結合親和性28.9μMとなり、本願化合物52は化合物54の約40倍良好な結合親和性を示すことが判ります。本発明の化合物の一般式(I)のA-FおよびXの基により作成される化合物が予測し得ない変形であり、構造中における些細な構造変化、例えば一つの置換基の違いにより、大きな機能特異性に関する変化をもたらす点は予測不可能であって、引用文献1には本願化合物を作成するに至る具体的な置換基が明示されていない以上、引用文献1により容易想到として、本願のような高い結合親和性かつ強力なアンタゴニスト活性を有する本願発明は拒絶されるべきでなく、本願の進歩性は否定されないものと思料致します。」と主張している。
しかしながら、上記(4)に記載したように、Trpから同じく芳香族アミノ酸である1-ナフチルアラニンに置換することは、本願優先日前既に周知の技術的事項であり、しかも、引用例には既に化合物12として、本願の化合物52より結合親和性、及びアンタゴニスト活性において優れた化合物が記載されており、本願の化合物52は、引用例の記載と比べて有利な効果を奏するものではないから、審判請求人の上記主張は採用できない。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成22年3月1日付手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年9月13日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】Gタンパク質結合受容体のアンタゴニストであり、アゴニスト活性を有さない化合物であって、下記の一般式:
【化1】 (構造式は省略。化合物1の構造式)

[式中、Aは、H、アルキル、アリール、NH-アルキル、N(アルキル)_(2)、NH-アリール、NH-ベンゾイル、NHSO_(3)、NHSO_(2)-アルキル、NHSO_(2)-アリール、OH、O-アルキルまたはO-アリールであり;
Bは、アルキル、アリール、ベンジル、ナフチルもしくはインドール基、またはL-フェニルアラニンもしくはL-フェニルグリシンの側鎖であり;
Cは、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン、プロリン、ヒドロキシプロリンまたはチオプロリンの側鎖であり;
Dは、D-ロイシン、D-ホモロイシン、D-シクロヘキシルアラニン、D-ホモシクロヘキシルアラニン、D-バリン、D-ノルロイシン、D-ホモノルロイシン、D-フェニルアラニン、D-テトラヒドロイソキノリン、D-グルタミン、D-グルタメートまたはD-チロシンの側鎖であり;
Eは、L-1-ナフチルもしくはL-3-ベンゾチエニルアラニンであり、またはL-フェニルアラニン、L-トリプトファンおよびL-ホモトリプトファンよりなる群から選ばれるアミノ酸の側鎖であり;
Fは、L-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリンまたはL-カナバニンの側鎖、あるいはこれらのバイオ同配体であり;
Xは、-(CH_(2))_(n)NH-または-(CH_(2))_(n)S-、nが1?4の整数;-(CH_(2))_(2)O-;-(CH_(2))_(3)O-;-(CH_(2))_(3)-;-(CH_(2))_(4)-;-CH_(2)COCHRNH-;あるいは-CH_(2)CHCOCHRNH-、Rが普通のまたは稀なアミノ酸の側鎖である]
を有する環状ペプチドまたはペプチド様化合物である化合物。」

(1)引用例
引用例の記載は、上記2.(2)に記載のとおりである。

(2)対比・判断
本願発明の形式上の多数の選択肢で記載された化合物のうち、置換基AとしてNHアルキルを、BとしてL-フェニルアラニンの側鎖、Cとしてプロリンの側鎖、DとしてD-シクロヘキシルアラニンの側鎖、EとしてL-トリプトファンの側鎖、FとしてL-アルギニンの側鎖、Xとして-(CH_(2))_(2)NH-を選択した場合の本願発明(以下、「本願発明’」という。)の化合物と、上記引用例記載の化合物12とを比較すると、両者は、「Gタンパク質結合受容体のアンタゴニストであり、アゴニスト活性を有さない化合物であって、化合物1の構造式の置換基A?F、Xのうち、置換基B?F、Xがそれぞれ、BがL-フェニルアラニンの側鎖、Cがプロリンの側鎖、DがD-シクロヘキシルアラニンの側鎖、EがL-トリプトファン、FがL-アルギニンの側鎖、Xが-(CH_(2))_(2)NH-である環状ペプチド化合物」である点で一致し、両者は、置換基Aが、前者ではNHアルキルであるのに対して、後者ではNHアセチルである点で相違する。
しかしながら、引用例に記載の優れたアンタゴニスト活性を有する化合物12を基にして、より優れた誘導体を得るために、各置換基を置換することは当業者が容易に想到し得ることであり、その際、引用例の化合物12の置換基AのNHアセチル基をNHアルキル基に置換することは、上記引用例記載事項(i)にも置換基Aの選択肢としてNHアルキルが記載されており、当業者であれば容易になし得ることである。
そして、本願発明’の化合物において奏される効果が、引用例に記載の化合物に比べ有利なものであることは本願明細書には示されておらず、その効果が格別なものとはいえない。
したがって、本願発明’は、引用例の記載から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明’を選択肢として包含する本願発明も同様であり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-27 
結審通知日 2012-08-28 
審決日 2012-09-10 
出願番号 特願2003-536266(P2003-536266)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07K)
P 1 8・ 575- Z (C07K)
P 1 8・ 121- Z (C07K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水落 登希子  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 新留 豊
鵜飼 健
発明の名称 Gタンパク質結合受容体アンタゴニストとしての環状ペプチド  
代理人 橋本 諭志  
代理人 松谷 道子  
代理人 山田 卓二  
代理人 青山 葆  

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