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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09J
管理番号 1269186
審判番号 不服2010-18863  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-20 
確定日 2013-01-23 
事件の表示 特願2006-500118「改善されたダイス切断性能を有するラベルストック」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月 2日国際公開、WO2004/074392、平成18年 9月14日国内公表、特表2006-520826〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、特許法第184条の3第1項の規定により、2004年 2月19日(パリ条約による優先権主張 2003年 2月21日 (EP)欧州特許庁)の国際出願日にされたものとみなされる特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成17年10月12日 翻訳文(条約34条補正書を含む)提出
同日 出願審査請求
同日 手続補正書
平成17年12月 9日 手続補正書
平成21年 7月27日付け 拒絶理由通知
平成21年12月 3日 意見書・手続補正書
平成22年 4月15日付け 拒絶査定
平成22年 8月20日 本件審判請求
同日 手続補正書
平成22年 8月30日付け 審査前置移管
平成22年10月 6日付け 前置報告書
平成22年10月 8日付け 審査前置解除
平成23年10月28日付け 審尋
平成24年 4月25日 回答書

第2 平成22年8月20日付け手続補正の却下の決定

<結論>
平成22年8月20日付け手続補正を却下する。

<却下の理由>
I.補正の内容
上記手続補正(以下「本件補正」という。)では、特許請求の範囲につき下記の補正がされているものであって、請求項2につき読点が1個追加されているのみであり、その余につき変更はないものと認められる。

1.本件補正前
「【請求項1】
フェイスストック、感圧接着剤層および剥離裏地の積層体を含み、
前記感圧接着剤層は、
(a)少なくとも1種のブロックコポリマー(前記ブロックコポリマーは、少なくとも2つのポリ(ビニル芳香族化合物)の末端ブロック、ならびにイソプレン(I)とブタジエン(B)を35:65から80:20の(I):(B)の重量比で使用した混合物をランダム共重合させた少なくとも1つの中間ブロックを含み、10から35重量%の範囲内のポリ(ビニル芳香族化合物)含有量を有し、および180,000から400,000g/モルの範囲内の見かけ分子量を有する。)と、
(b)少なくとも1種のジブロックコポリマー(前記ジブロックコポリマーは、1つのポリ(ビニル芳香族化合物)ブロックと、およびブタジエン、イソプレンまたはこれらの混合物を重合させた1つのブロックとを含み、(I):(B)の重量比が10:90から80:20の範囲内である。)と、および
(c)1種の粘着性付与樹脂と、
を含み、
成分(a)は、熱可塑性エラストマーであり、成分(b)は、成分(a)と(b)の混合物の30から85重量%を占め、成分(a)と(b)の混合物100重量部に対して成分(c)が20から450重量部使用される
ラベルストック。
【請求項2】
(a)少なくとも1種のブロックコポリマー(前記ブロックコポリマーは、少なくとも2つのポリ(ビニル芳香族化合物)の末端ブロック、ならびにイソプレン(I)とブタジエン(B)を35:65から80:20の(I):(B)の重量比で使用した混合物をランダム共重合させた少なくとも1つの中間ブロックを含み、10から35重量%の範囲内のポリ(ビニル芳香族化合物)含有量を有し、および180,000から400,000g/モルの範囲内の見かけ分子量を有する。)と、および
(b)少なくとも1種のジブロックコポリマー(前記ジブロックコポリマーは、1つのポリ(ビニル芳香族化合物)ブロックと、およびブタジエン、イソプレンまたはこれらの混合物を重合させた1つのブロックとを含み、(I):(B)の重量比が10:90から80:20の範囲内である。)と
を含み
成分(b)は、成分(a)および(b)の混合物の30から85重量%の量で存在する、
ブロックコポリマー。」
(以下、「旧請求項1」及び「旧請求項2」という。)

2.本件補正後
「【請求項1】
フェイスストック、感圧接着剤層および剥離裏地の積層体を含み、
前記感圧接着剤層は、
(a)少なくとも1種のブロックコポリマー(前記ブロックコポリマーは、少なくとも2つのポリ(ビニル芳香族化合物)の末端ブロック、ならびにイソプレン(I)とブタジエン(B)を35:65から80:20の(I):(B)の重量比で使用した混合物をランダム共重合させた少なくとも1つの中間ブロックを含み、10から35重量%の範囲内のポリ(ビニル芳香族化合物)含有量を有し、および180,000から400,000g/モルの範囲内の見かけ分子量を有する。)と、
(b)少なくとも1種のジブロックコポリマー(前記ジブロックコポリマーは、1つのポリ(ビニル芳香族化合物)ブロックと、およびブタジエン、イソプレンまたはこれらの混合物を重合させた1つのブロックとを含み、(I):(B)の重量比が10:90から80:20の範囲内である。)と、および
(c)1種の粘着性付与樹脂と、
を含み、
成分(a)は、熱可塑性エラストマーであり、成分(b)は、成分(a)と(b)の混合物の30から85重量%を占め、成分(a)と(b)の混合物100重量部に対して成分(c)が20から450重量部使用される
ラベルストック。
【請求項2】
(a)少なくとも1種のブロックコポリマー(前記ブロックコポリマーは、少なくとも2つのポリ(ビニル芳香族化合物)の末端ブロック、ならびにイソプレン(I)とブタジエン(B)を35:65から80:20の(I):(B)の重量比で使用した混合物をランダム共重合させた少なくとも1つの中間ブロックを含み、10から35重量%の範囲内のポリ(ビニル芳香族化合物)含有量を有し、および180,000から400,000g/モルの範囲内の見かけ分子量を有する。)と、および
(b)少なくとも1種のジブロックコポリマー(前記ジブロックコポリマーは、1つのポリ(ビニル芳香族化合物)ブロックと、およびブタジエン、イソプレンまたはこれらの混合物を重合させた1つのブロックとを含み、(I):(B)の重量比が10:90から80:20の範囲内である。)と
を含み、
成分(b)は、成分(a)および(b)の混合物の30から85重量%の量で存在する、
ブロックコポリマー。」
(以下、「新請求項1」及び「新請求項2」という。)

II.補正事項に係る検討

1.新規事項の追加の有無
まず、本件補正に係る各事項が、本願の基礎となる国際特許出願の国際出願日における明細書、特許請求の範囲及び図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文若しくは国際特許出願の国際出願日における図面(図面の中の説明を除く。)又は条約第34条の規定に基づく補正の翻訳文による補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面(以下「本願当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内のものかにつき検討すると、本件補正に係る事項は、本願当初明細書に記載しているか、本願当初明細書に記載した事項に基づき当業者に一応自明な事項のみである。
したがって、本件補正は、本願当初明細書に記載した事項の範囲内で行われたものと認められる。

2.補正の目的の適否
次に、本件補正は、上記I.のとおり、特許請求の範囲に係る補正事項を含むので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の(以下「平成18年改正前」という。)特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものか否かにつき検討する。
本件補正では、上記I.で指摘したとおり、旧請求項2において、読点を1個追加して新請求項2としたのみであって、その余の事項に変更はなく、さらに、当該読点の追加により、実質的に請求項に記載された事項の文意が変化しているものとも認められない。
そして、旧請求項1と新請求項1とは、本件補正により変化するところがない。
してみると、本件補正は、各旧請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものということができず、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものということができない。
さらに、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に掲げる「請求項の削除」、「誤記の訂正」又は「明りょうでない記載の釈明」のいずれかを目的とするものということもできない。
したがって、特許請求の範囲の補正を含む本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものではない。

III.補正の却下の決定のまとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものでないから、同法同条同項に規定する要件を満たしていない。
よって、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願についての当審の判断

I.本願に係る発明
平成22年8月20日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成21年12月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によりそれぞれ特定されるとおりのものであり、請求項1及び2に係る各発明(以下それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」というとともに、まとめて「本願発明」ということがある。)は以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
フェイスストック、感圧接着剤層および剥離裏地の積層体を含み、
前記感圧接着剤層は、
(a)少なくとも1種のブロックコポリマー(前記ブロックコポリマーは、少なくとも2つのポリ(ビニル芳香族化合物)の末端ブロック、ならびにイソプレン(I)とブタジエン(B)を35:65から80:20の(I):(B)の重量比で使用した混合物をランダム共重合させた少なくとも1つの中間ブロックを含み、10から35重量%の範囲内のポリ(ビニル芳香族化合物)含有量を有し、および180,000から400,000g/モルの範囲内の見かけ分子量を有する。)と、
(b)少なくとも1種のジブロックコポリマー(前記ジブロックコポリマーは、1つのポリ(ビニル芳香族化合物)ブロックと、およびブタジエン、イソプレンまたはこれらの混合物を重合させた1つのブロックとを含み、(I):(B)の重量比が10:90から80:20の範囲内である。)と、および
(c)1種の粘着性付与樹脂と、
を含み、
成分(a)は、熱可塑性エラストマーであり、成分(b)は、成分(a)と(b)の混合物の30から85重量%を占め、成分(a)と(b)の混合物100重量部に対して成分(c)が20から450重量部使用される
ラベルストック。
【請求項2】
(a)少なくとも1種のブロックコポリマー(前記ブロックコポリマーは、少なくとも2つのポリ(ビニル芳香族化合物)の末端ブロック、ならびにイソプレン(I)とブタジエン(B)を35:65から80:20の(I):(B)の重量比で使用した混合物をランダム共重合させた少なくとも1つの中間ブロックを含み、10から35重量%の範囲内のポリ(ビニル芳香族化合物)含有量を有し、および180,000から400,000g/モルの範囲内の見かけ分子量を有する。)と、および
(b)少なくとも1種のジブロックコポリマー(前記ジブロックコポリマーは、1つのポリ(ビニル芳香族化合物)ブロックと、およびブタジエン、イソプレンまたはこれらの混合物を重合させた1つのブロックとを含み、(I):(B)の重量比が10:90から80:20の範囲内である。)と
を含み
成分(b)は、成分(a)および(b)の混合物の30から85重量%の量で存在する、
ブロックコポリマー。」

II.原審の拒絶査定の概要
原審において、平成21年7月27日付け拒絶理由通知書で以下の内容を含む拒絶理由が通知され、当該拒絶理由が解消されていない点をもって下記の拒絶査定がなされた。

<拒絶理由通知>
「理由1
・・(中略)・・
理由2
この出願の請求項1?2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物A?Hに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由3
・・(中略)・・

A.国際公開第02/057386号
・・(中略)・・
D.特開平7-238131号公報
E.特開平7-238207号公報
・・(中略)・・
1 理由1及び2について
刊行物A?Hには、(ポリスチレン等の)ポリビニル芳香族化合物の少なくとも2個の末端ブロックと、イソプレンとブタジエンの混合物がランダムに共重合した少なくとも1つの中間ブロックとを含む(S-I/B-S等の)ブロックポリマーが記載されている。また、該ブロックポリマー、粘着付与性付与樹脂及び可塑剤をそれぞれ所定量比で含む感圧接着剤層、フェイスストック(に相当する層)及び剥離裏地の積層体を含むラベルストックが記載されている。
そして、ラベルストックにおいて、剥離裏地を設けることは、習知慣用(審決注:「周知慣用」の誤記と認める。)の技術であるし、感圧接着剤層における各成分の好適化及び各成分の配合量比の好適化は、当業者が適宜なし得ることである。
・・(後略)」

<拒絶査定>
「この出願については、平成21年7月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由1及び2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書並びに手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
刊行物A(これは、この出願と同一の出願人により、この出願より先になされた出願の公開公報である。)、D及びEには、(a)少なくとも2つのポリビニル芳香族化合物の末端ブロックと、イソプレンとブタジエンを所定の重量比で使用した混合物をランダム共重合させた少なくとも1つの中間ブロックとを含み、ポリ(ビニル芳香族化合物)含有量が所定の範囲内にあり、所定の見かけ分子量を有する、少なくとも1種のブロックコポリマーと、(b)1つのポリビニル芳香族化合物ブロックと、ブタジエン、イソプレン又はこれらの混合物を重合させた1つのブロックとを含み、イソプレン:ブタジエンの重量比が所定の範囲内である少なくとも1種のジブロックコポリマーとを、所定の範囲内の量比で含むブロックコポリマー(組成物)、当該ブロックコポリマー(組成物)と粘着付与樹脂とを含むラベルストックが記載されている。
また、上記(a)成分と(b)成分の配合量比の好適化(カップリング率の好適化)や、ラベルストックの用途とすることは、いずれも当業者が適宜なし得ることである。
したがって、請求項1及び2に係る発明は、依然として先の拒絶理由1及び2が解消していない。
・・(後略)」

III.当審の判断
当審は、
本願は、下記の理由により、特許法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである、
と判断する。

理由:本願発明1及び2は、いずれも本願の優先日前に当業者が日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物:
1.国際公開第02/057386号(原審における「刊行物A」)
2.特開平7-238131号公報(原審における「刊行物D」)
3.特開平7-238207号公報(原審における「刊行物E」)
(以下、それぞれを「引用例1」ないし「引用例3」という。)

1.各引用例に記載された事項
以下、上記各引用例につき、その記載事項を摘示するが、引用例1については、翻訳文としての引用例1の国際出願に係る公表公報(特表2004-520465号公報)の記載箇所及び記載内容により摘示を行う。

(1)引用例1
上記引用例1には、以下の事項が記載されている。

(1a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1つまたは複数のスチレン系ブロックコポリマー、(ii)1つの粘着付与剤樹脂、および(iii)1つまたは複数の可塑剤を含み、スチレン系ブロックコポリマー、またはスチレン系ブロックコポリマーの1つが、一般式
A-C-A (1)、または(A-C)_(n)-X (2)
(上式において、各Aは独立に、芳香族ビニル化合物のポリマーブロックであり、かつCは、ブタジエン(B)とイソプレン(I)とが、30:70から70:30の範囲のB:I重量比率で混合されたポリマーブロック(B/I)であり、また前記ポリマーブロックCは、-50℃以下のガラス転移温度(Tg)(ASTM E-1356-98に従って決定される)を有し、nは2以上の整数であり、またXは、カップリング剤の残基である)のブロックコポリマーであり、粘着付与剤樹脂が、3から18%の範囲にある芳香族水素百分率(H-NMRにより決定した芳香族プロトンの相対百分率)を有する接着剤組成物。
・・(中略)・・
【請求項3】
芳香族ビニル化合物がスチレンである請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
結合している芳香族ビニル化合物の比率が、10から50重量%の範囲にある請求項1から3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
・・(中略)・・
【請求項7】
各Aポリマーブロックが、9,500から25,000の範囲にある真の分子量を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
・・(中略)・・
【請求項9】
ポリマーブロックが、100,000から500,000(GPCにより決定される)の範囲にある重量平均分子量(ポリスチレンによって表して)を有する請求項1から8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
成分(i)が、一般式(1)または(2)のブロックコポリマーと、ブロックコポリマー:ジブロックの重量比率が100/0から30/70の範囲にあるジブロックコポリマーA-Bとを含む請求項1から9のいずれか一項に記載の接着剤組成物。」

(1b)
「【技術分野】
【0001】
接着剤組成物であって、(i)1つまたは複数のスチレン系ブロックコポリマー、(ii)1つまたは複数の粘着付与剤樹脂、および(iii)場合によっては1つまたは複数の可塑剤を含む組成物。」(原文第1頁第1行?第4行)

(1c)
「【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマー成分としてのスチレン系ブロックコポリマーに基づく接着剤組成物は、当技術分野においてよく知られている。これらの組成物は、例えば、工業用テープ、包装テープおよびラベル向けの感圧型接着剤(粘着剤)(PSA)として使用され、また、おむつ、女性用ケア物品、外科用ドレープなどの使い捨てソフト商品の製造において、物品を結合、または構成するのに使用できる多目的ホットメルト接着剤組成物中に使用される。
【0003】
スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(「S-I-S」)、およびスチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(「S-B-S」)は、これらの接着剤組成物に広く使用される。いずれの種類のブロックコポリマーによっても、これらのブロックコポリマーのそれぞれに特有の特性に関連した、接着剤組成物の特定の性状が得られる。例えば、S-I-Sの軟らかさにより、このポリマーは、テープおよびラベルの感圧用途向けに特に選択された材料となっている。また、S-B-Sの高められた凝集力により、この材料は、使い捨てソフト商品の構成用接着剤として魅力的なものとなっている。
【0004】
ホットメルト接着剤に配合した場合、S-I-Sポリマーは分子鎖切断機構により分解して、分子量が減少し、接着剤の凝集力が低下する。これに反して、S-B-Sポリマーは、さらなる化学架橋により分解して、接着剤の凝集力が増加するだけでなく、弾性率も増加して、硬すぎ、かつ非タック性の接着剤を形成する傾向がある。S-I-S系接着剤とS-B-S系接着剤はともに、その熱分解が、接着剤製品の有用性を台無しにする恐れがある。ばらばらに壊れる(切断)傾向も、または架橋する傾向もいずれも少ないポリマーが開発されれば、ホットメルト接着剤業界にとって利点となるであろう。欧州特許第669350号および米国特許第5583182号には、スチレン系ブロックコポリマーが、S-B-I-S型、(S-B-I)n-X型、または(S-I-B)n-X型ブロックコポリマーである接着剤組成物が記載されている。ただし、Sはポリスチレンブロックを表し、Bはポリブタジエンブロックを表し、またIはイソプレンブロックを表す。ブロックコポリマーの中間ブロック「B-I」を有するこれらのコポリマーでは、S-I-SポリマーとS-B-Sポリマーのいくつかの特性が組み合わされている。しかし、中間ブロックにおいて、ポリジエンのブロックを作るプロセスは、より複雑性を要求しており、かつ長い重合時間を要する。中間ブロックにおける塊状構造のため、それらの熱安定性性能が未だ不十分であり、配合された接着剤のホットメルト粘度が、業界の用途向けに、それぞれS-I-S系またはS-B-S系配合物と比較して、高すぎることも示されている。
【0005】
・・(中略)・・
【0006】
ドイツ特許2942128号に、接着剤組成物であって、100部の非水素化ブロックコポリマーA-B-A(ただし、Aはポリスチレンであり、Bはブタジエンおよびイソプレンの混合物で作ったブロックである)と、25から300部の粘着付与剤樹脂と、5から200部の可塑剤と、いくつかの他の添加剤とに基づく組成物が記載されている。実際に、粘着付与剤樹脂は、実施例(50部のグリセリンロジンエステル(商標、「FLORAL」85)と、50部の合成ポリテルペン樹脂(商標、「WINGTACK」95))に例示されるように、樹脂の混合物である。この混合物は、接着剤の主ポリマーと、適度に相容性であることを要求されるものと思われる。」(原文第1頁第5行?第3頁第14行)

(1d)
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
S-B-SおよびS-I-S型コポリマーの混合物はいずれも、当技術分野において示唆されるように、受入れ可能な代替物を提供するものではない。したがって、S-I-Sに基づくものと少なくとも同等であり、かつ、S-I-S、S-B-S、および/またはS-I-B-S型ブロックコポリマーに基づくものよりも熱安定性において実際優れた感圧型接着剤組成物であり、粘着付与剤樹脂としての、単一の炭化水素樹脂に基づくことができる、感圧型接着剤組成物への必要性が、依然として存在する。」(原文第3頁第15行?第22行)

(1e)
「【0011】
混合されたポリマーの中間ブロック(B)は、共重合可能なモノマーとしてのブタジエンおよびイソプレンから作られるが少量のコモノマー、例えば最高5重量%まで(ブロック全体の重量に対して)のスチレンなどの共重合可能なモノマーを含有できる。
・・(中略)・・
【0013】
本発明によるブロックコポリマーはそれぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC、本明細書において下記に記述している方法を用いる)により決定して、100,000から500,000、好ましくは150,000から250,000の範囲にある重量平均分子量(Mw、ポリスチレンによって表している)を有するのが好ましい。」(原文第5頁第1行?第26行)

(1f)
「【0022】
成分(ii)
粘着付与剤として適切な芳香族炭化水素樹脂は、3から18%の範囲にある、好ましくは4から14%の範囲にある、相対百分率による芳香族水素百分率(H-NMRにより測定される、分子中のプロトン全数に対する芳香族プロトンに対して)を有するものとする。
【0023】
適切な粘着付与剤樹脂は、混合された脂肪族/芳香族樹脂、またはいわゆる熱反応性炭化水素樹脂と一般にいわれる種類のものから選択できる。これらの炭化水素樹脂は、混合された芳香族および脂肪族組成を有する。これらの樹脂を生成するのに用いられる流れは、C-9成分(インデンおよびスチレン)、および種々の他のC-5モノマーまたはC-5ダイマーを含む。
【0024】
適切な混合された脂肪族/芳香族樹脂、または熱反応性炭化水素の例には、「EXCOREZ」2101(Exxon Chemicals社)、「Wingtack EF、および「Wingtack」86(Goodyear Chemicals社)、「Piccotac」MBG222、223およびHERCOTAC」205(Eastman社)(商標)が含まれる。
【0025】
好ましい粘着付与剤樹脂は、具体的にはその色がごく淡い青白色である、Wingtack EFである。
【0026】
本発明による組成物は、50から400重量部、より好ましくは100から300重量部粘着付与剤を含むのが好ましい。」(原文第8頁第8行?第31行)

(1g)
「【0032】
組成物の調製
接着剤組成物の調製プロセスにはなんら特定の制限を課していない。したがって、ロール、Banbury社ミキサ、またはDalton社ニーダを利用する機械的混合プロセス;加熱および混合を、高せん断力Z形翼ミキサ、または単軸もしくは2軸押出機などの攪拌機を備えた溶融ケトルを使用して行うことを特徴とするホットメルトプロセス;あるいは、配合成分を適切な溶剤に注入し、かつ攪拌し、それにより感圧型接着剤組成物の完全な溶液が得られる溶剤プロセスなどの、どんなプロセスも使用できる。
【0033】
組成物の使用
本発明によるPSA組成物は、どんな溶剤も使用することなく(例えば、ホットメルト)、または組成物溶液の形で、紙やプラスチックフィルムなどの支持体に、適正なコータによって塗布でき、それによりいろいろな種類の粘着テープまたはシートを作り出す。組成物は、支持体に塗布することなく、接着剤またはシーリング材として使用することもできる。
【0034】
実際、本発明によるブロックコポリマーは、熱安定性において卓越しており、したがって、それらを加熱し、溶融する場合、時間による溶融粘度の変化をほとんど受けない。したがって、本接着剤組成物は、高温における良好な流動性により、ホットメルト型粘着剤組成物として特に有用である。
【0035】
ラベルの製造中、支持体、粘着剤層、およびはく離ライナをはり合わせたものは、商業的に有用なラベルおよびラベル材に変換する装置を通す。このプロセスは、なかんずく、ラベルをはく離ライナ上に残すための、打抜き、およびマトリックス除去を伴う。米国特許第5663228号から、S-I-SおよびS-B、またはS-B-Sブロックコポリマーのブレンドを使用すると、良好な変換可能性が達成できることが知られている。本発明のブロックコポリマーによって、同様な変換可能性が達成できる。」(原文第10頁第15行?第11頁第19行)

(1h)
「【0054】
(実施例)
ブロックコポリマーB-Fの合成
シクロヘキサン、スチレン、ブタジエン、およびイソプレンを、活性酸化アルミニウムで精製し、窒素雰囲気下において4℃で保管した。Aldrich社から入手したジブロモエタン(EDB)を、カップリング剤として使用した。合成に先立って、ブタジエンおよびイソプレンのモノマー混合物(第1表に示す重量/重量比率で)を調製し、窒素下において4℃で保管した。この混合物を、そのまま使用した。
【0055】
ヘリカル攪拌器を取り付けたオートクレーブにシクロヘキサンを装入し、内容物を50?60℃まで加熱した。開始剤として第二級ブチルリチウムを配合し、続いて直ちにスチレンモノマーを配合し、完了するまで重合させた。反応温度が70℃まで上昇させ、その温度でブタジエン/イソプレンモノマー混合物(B/I)を配合し、反応させた。得られたジブロックに、過剰のEDBをカップリングさせた。この過剰は、場合によっては、sec-BuLiで捕そくし、続いてターミネータとしてエタノールを添加した。反応混合物を40℃まで冷却し、ブレンド容器に移し、安定化剤一式を添加し(シクロヘキサン溶液として、IRGANOX565およびトリス(ノニルフェノール)亜リン酸塩を、0.08/0.35 部phr含む)、室温で攪拌した。スチーム凝固仕上げに引続き、オーブン内における乾燥により、乾燥したゴムが得られた。
【0056】
ポリマーは、J.R.Runyon,et al,J.Polym.Sci.,13,2359(1969)、により記述される方法によって、GPCにより分析した。第1表には、使用した成分の量を掲げる。GPC分析の結果は、第2表にある。第2表はまた、欧州特許第0669350号に記載されるように調製した、I/B重量比率50/50を有するI-Bブロックコポリマーの中間ブロックを含むS-I-B-Sブロックコポリマーである比較ポリマーAの対応する性状をも含む。
【0057】
実施例に使用したさらなる成分を、第3表に掲げる。
【0058】
【表3】


【0059】
【表4】


【0060】
【表5】
第3表
・・(中略)・・
【実施例1】
【0061】
第4表は、ポリマー29%を含有する、種々の接着剤配合物についての結果を示す。比較配合物1(CF1)は、ポリマーA(欧州特許第0669350号)に基づく。配合物2(F2)は、ポリマーBに基づく。比較配合物3(CF3)は、D-1161NSに基づく。
【0062】
結果は、F2はCF1と比べ、クロム処理ステンレス鋼上で良好な保持力値(凝集力)、クラフト紙上で良好なフラップ試験値、また、低いホットメルト粘度を有することを示している。
【0063】
【表6】


【実施例2】
【0064】
第5表は、包装テープ接着剤の用途に使用されるポリマー45%を含有する接着剤配合物についての結果を示す。配合物CF4およびF5におけるポリマーは、前実施例中に記載した配合物CF1およびF2におけるポリマーと等しい。
【0065】
結果は、本発明のF5はCF4と比べ、クロム処理したステンレス鋼上で良好な保持力値(凝集力)、クラフト紙上で良好なフラップ試験値、また良好なループタック値を有することを示している。このことは、本発明のポリマーBが、ポリマーA(欧州特許第0669350号)よりも良好な接着性状を有することを示している。ポリマーBは、より良好なローリングボールタック値を有しながら、D-1107(CF 6)に近い接着性状を有する。
【0066】
【表7】


・・(中略)・・
【実施例4】
【0072】
第7表は、異なるB/I重量比率を有する、スチレン-ブタジエン/イソプレン-スチレンブロックコポリマーに基づく配合物の接着性状を示している。ポリマーB、C、D、およびKRATON D-1161NSは、同一の分子パラメータ、すなわち、ポリスチレン含量%、全体分子量、およびカップリング効率を有することを目指している。
【0073】
中間ブロックにおけるブタジエンの増加は、ポリマーのガラス転移温度Tgを低下させ、このことは接着性状に顕著な影響を有する。中間ブロックにおけるブタジエンレベルが増加すると、ローリングボールタックが低下し(より低い値となるため、改良され);クロム処理したステンレス鋼上の保持力が低下し、ホットメルト粘度が増加し、また、配合物のガラス温度Tgが低下する。
【0074】
【表9】


・・(中略)・・
【実施例7】
【0081】
第10表は、イソプレン相容性の炭化水素樹脂(HCR)を有するS-I-Sおよび本発明のポリマーの接着性能の比較を提供する。
【0082】
P-95およびMBG212を有する配合物CF22およびCF24において観察される低いタック値は、中間ブロックとの強い非相容性を示す。これらの樹脂は、実際に、ブタジエン部分と非相容性である。
【0083】
【表12】


・・(中略)・・
【実施例9】
【0088】
驚くべきことに、混合された(B/I)中間ブロックを有するブロックコポリマーを、特定の芳香族改質脂肪族HCRと配合すると、高性能の接着剤を得ることができることが見出された。
【0089】
配合物F28?F31は、中程度レベルの芳香族構造を有するMBG223、E-2101、W ET、およびW86が、全て高性能の接着性を呈していることを示す。
【0090】
E-2303およびW Extraを有する配合物CF32およびCF33は両者とも、より少ない芳香族構造を含有するが、タックを示さない。このことは、非相容性の現れである。
【0091】
最後に、H-205を有する配合物F34は、分子中に高いレベルの芳香族を含有するが、まだ受入れ可能としても、より低い性能の接着性を呈している。
【0092】
【表14】


」(原文第17頁第33行?第31頁第9行)

(2)引用例2について
上記引用例2には、以下の事項が記載されている。

(2a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(S-B-I)_(2)-Xまたは(S-I-B)_(2)-Xで表されるブロツク共重合体(1)と、一般式(S-B-I)または(S-I-B)で表されるブロツク共重合体(2)とを含有し、(1)および(2)の重量が、(1)/(2)=20/80?90/10(重量比)であることを特徴とするブロツク共重合体組成物。
(式中、Sは芳香族ビニル化合物の重合体ブロックである。Bはブタジエン重合体ブロックである。Iはイソプレン重合体ブロックである。Xは2官能カップリング剤の残基である。)
【請求項2】 請求項1のブロック共重合体組成物100重量部と粘着付与剤50?300重量部とを配合してなる粘着剤組成物。」

(2b)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、粘着剤用途に適したブロック共重合体組成物および粘着剤組成物に関し、さらに詳しくは、熱安定性に優れたブロック共重合体組成物およびタツキネスと高温加熱後の溶融粘度の変化が少ない粘着剤組成物に関する。」

(2c)
「【0021】本発明のブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体(1)および(2)を、それぞれ別個に合成した後、これらを任意の方法により上記重量比率で混合することによって得てもよく、また、ブタジエンまたはイソプレンの重合体ブロツクの重合活性末端を有する(S-B-I)型または(S-I-B)型のブロック共重合体をカップリングさせるときに、2官能性カップリング剤の種類および量を制御し、さらに、必要ならば公知のカップリング促進剤を併用することによって、本発明のブロック共重合体組成物を一時に得ることも可能である。」

(2d)
「【0023】本発明のブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体(1)および(2)の重量の間に、(1)/(2)=20/80?90/10(重量比)、好ましくは、(1)/(2)=25/75?85/15(重量比)の関係が成立することが必要である。(1)/(2)が20/80(重量比)未満では粘着剤としての保持力が低下し、また、高温加熱時の溶融粘度の低下が大きく、さらに、色調が大幅に不良となるので好ましくない。(1)/(2)が90/10(重量比)を超えると粘着剤としての粘着力が低下し、また、高温加熱すると透明性が低下するので好ましくない。」

(2e)
「【0024】本発明のブロック共重合体組成物は、粘着剤のベースポリマーとして使用することができ、特に、熱可塑性エラストマーとしての特性と熱安定性を利用して、熱溶融型粘着剤組成物のベースポリマーとして好適に使用することができる。かかる粘着剤組成物は、前記ブロック共重合体組成物100重量部と、粘着付与剤50?300重量部を含有する。また、軟化剤を0?100重量部の割合で配合してもよい。」

(3)引用例3について
上記引用例3には、以下の事項が記載されている。

(3a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(S-B-I)_(n)-Xで表されるブロツク共重合体(1)と、一般式(S-B-I)で表されるブロツク共重合体(2)とを含有し、(1)および(2)の重量が、(1)/(2)=20/80?90/10(重量比)、であることを特徴とするブロツク共重合体組成物。(式中、Sは芳香族ビニル化合物の重合体ブロックである。Bはブタジエン重合体ブロックである。Iはイソプレン重合体ブロックである。nは3または4である。Xは3官能または4官能カップリング剤の残基である。)
【請求項2】 請求項1のブロック共重合体組成物100重量部と粘着付与剤50?300重量部とを配合してなる粘着剤組成物。」

(3b)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、粘着剤用途に適したブロック共重合体組成物および粘着剤組成物に関し、さらに詳しくは、溶融加工時の低粘度性と耐熱性に優れたブロック共重合体組成物および高保持力と耐熱性に優れた粘着剤組成物に関する。」

(3c)
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、熱可塑性エラストマーとしての特性を有すると共に、溶融加工時に低粘度性を示し、耐熱性に優れたブロック共重合体組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、加工性が良好で、かつ、高保持力を示し、耐熱性に優れた粘着剤組成物を提供することにある。本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、3官能性カツプリング剤を使用して合成した(S-B-I)_(3)-X型のブロック共重合体と(S-B-I)型のブロック共重合体との特定の比率の混合物が優れた低粘度性を示すことを見いだし、この知見に基づいて完成するに至った。」

(3d)
「【0023】本発明のブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体(1)および(2)を、それぞれ別個に合成した後、これらを任意の方法により上記重量比率で混合することによって得てもよく、また、ブタジエンまたはイソプレンの重合体ブロツクの重合活性末端を有する(S-B-I)型のブロック共重合体をカップリングさせるときに、3官能性または4官能性カップリング剤の種類および量を制御し、さらに、必要ならば公知のカップリング促進剤を併用することによって、本発明のブロック共重合体組成物を一時に得ることも可能である。」

(3e)
「【0025】本発明のブロック共重合体組成物は、ブロック共重合体(1)および(2)の重量の間に、(1)/(2)=20/80?90/10(重量比)、好ましくは、(1)/(2)=25/75?85/15(重量比)の関係が成立することが必要である。(1)/(2)が20/80(重量比)未満では粘着剤としての保持力が低下するので好ましくない。(1)/(2)が90/10(重量比)を超えると粘着剤としての粘着力、保持力および耐熱性が低下するので好ましくない。」

(3f)
「【0026】本発明のブロック共重合体組成物は、粘着剤のベースポリマーとして使用することができ、特に、熱可塑性エラストマーとしての特性と耐熱性を利用して、熱溶融型粘着剤組成物のベースポリマーとして好適に使用することができる。かかる粘着剤組成物は、前記ブロック共重合体組成物100重量部と、粘着付与剤50?300重量部を含有する。また、軟化剤を0?100重量部の割合で配合してもよい。」

2.上記理由についての当審の判断

(1)引用例1に記載された発明
上記引用例1には、請求項1において
「(i)1つまたは複数のスチレン系ブロックコポリマー、(ii)1つの粘着付与剤樹脂、および(iii)1つまたは複数の可塑剤を含み、スチレン系ブロックコポリマー、またはスチレン系ブロックコポリマーの1つが、一般式
A-C-A (1)、または(A-C)_(n)-X (2)
(上式において、各Aは独立に、芳香族ビニル化合物のポリマーブロックであり、かつCは、ブタジエン(B)とイソプレン(I)とが、30:70から70:30の範囲のB:I重量比率で混合されたポリマーブロック(B/I)であり、また前記ポリマーブロックCは、-50℃以下のガラス転移温度(Tg)(ASTM E-1356-98に従って決定される)を有し、nは2以上の整数であり、またXは、カップリング剤の残基である)のブロックコポリマーであり、粘着付与剤樹脂が、3から18%の範囲にある芳香族水素百分率(H-NMRにより決定した芳香族プロトンの相対百分率)を有する接着剤組成物。」
が記載され、請求項10には、
「成分(i)が、一般式(1)または(2)のブロックコポリマーと、ブロックコポリマー:ジブロックの重量比率が100/0から30/70の範囲にあるジブロックコポリマーA-Bとを含む請求項1から9のいずれか一項に記載の接着剤組成物。」
が記載されているから、書き下すと、
「(i)1つまたは複数のスチレン系ブロックコポリマー、(ii)1つの粘着付与剤樹脂、および(iii)1つまたは複数の可塑剤を含み、スチレン系ブロックコポリマー、またはスチレン系ブロックコポリマーの1つが、一般式
A-C-A (1)、または(A-C)_(n)-X (2)
(上式において、各Aは独立に、芳香族ビニル化合物のポリマーブロックであり、かつCは、ブタジエン(B)とイソプレン(I)とが、30:70から70:30の範囲のB:I重量比率で混合されたポリマーブロック(B/I)であり、また前記ポリマーブロックCは、-50℃以下のガラス転移温度(Tg)(ASTM E-1356-98に従って決定される)を有し、nは2以上の整数であり、またXは、カップリング剤の残基である)のブロックコポリマー:ジブロックの重量比率が100/0から30/70の範囲にあるジブロックコポリマーA-Bとを含むブロックコポリマーであり、粘着付与剤樹脂が、3から18%の範囲にある芳香族水素百分率(H-NMRにより決定した芳香族プロトンの相対百分率)を有する接着剤組成物。」
が記載されている(摘示(1a)の請求項1及び10参照)。
なお、ここで上記「ジブロックコポリマーA-B」の「B」は、「混合されたポリマーの中間ブロック(B)」なる記載(摘示(1e)の【0011】参照)及び実施例に係る記載(摘示(1h)の【0054】ないし【0059】参照)からみて、「ブタジエン(B)とイソプレン(I)とが、・・混合されたポリマーブロック(B/I)」、すなわち、上記「C」のブロックを意味するものと理解するのが自然である。
また、上記引用例1には、上記「ブロックコポリマー」につき「結合している芳香族ビニル化合物の比率が、10から50重量%の範囲にある」こと(摘示(1a)の請求項4参照)及び「100,000から500,000(GPCにより決定される)の範囲にある重量平均分子量(ポリスチレンによって表して)を有する」こと(摘示(1a)の請求項9及び摘示(1e)の【0013】参照)が記載され、上記「粘着付与剤樹脂」につき、「本発明による組成物は、50から400重量部、より好ましくは100から300重量部粘着付与剤を含むのが好ましい」ことが記載されている(摘示(1f)の【0026】参照)ところ、当該「重量部」は、実施例に係る記載(摘示(1h)の【表7】「第5表」及び【表14】「第12表」参照)からみて、(i)のジブロックコポリマーを含むブロックコポリマー100重量部に対してのものと理解するのが自然である。
そして、上記引用例1には、「ラベルの製造中、支持体、粘着剤層、およびはく離ライナをはり合わせたものは、商業的に有用なラベルおよびラベル材に変換する装置を通す。このプロセスは、なかんずく、ラベルをはく離ライナ上に残すための、打抜き、およびマトリックス除去を伴う。米国特許第5663228号から、S-I-SおよびS-B、またはS-B-Sブロックコポリマーのブレンドを使用すると、良好な変換可能性が達成できることが知られている。本発明のブロックコポリマーによって、同様な変換可能性が達成できる」ことが記載されており(摘示(1g)の【0035】参照)、これは、支持体、上記ブロックコポリマーを含む接着剤からなる粘着剤層及びはく離ライナをはり合わせたものが、ラベルを構成できるラベル材として使用できることを意味するものと理解するのが自然である。
してみると、上記引用例1には、上記(1a)?(1h)の記載事項からみて、本願発明に倣い表現すると、
「支持体、粘着剤層、およびはく離ライナをはり合わせたものを含み、
前記粘着剤層は、
(a)少なくとも1種のスチレン系ブロックコポリマー(前記ブロックコポリマーは、 一般式
A-C-A (1)、または(A-C)_(n)-X (2)
(上式において、各Aは独立に、結合している芳香族ビニル化合物の比率が、10から50重量%の範囲にある芳香族ビニル化合物のポリマーブロックであり、かつCは、ブタジエン(B)とイソプレン(I)とが、30:70から70:30の範囲のB:I重量比率で混合されたポリマーブロック(B/I)であり、nは2以上の整数であり、またXは、カップリング剤の残基である)の100,000から500,000(GPCにより決定される)の範囲にある重量平均分子量(ポリスチレンによって表して)を有するブロックコポリマーである。)と、
(b)少なくとも1種の一般式A-Cで表されるジブロックコポリマー(前記ジブロックコポリマーにおけるA及びCは、上記(a)におけるA及びCと同様である。)と、および
(c)1種の粘着付与剤樹脂と、
を含み、
上記成分(a)と(b)の重量比率が100/0から30/70の範囲にあり、成分(a)と(b)の混合物100重量部に対して成分(c)が50から400重量部使用される
ラベル材。」
に係る発明(以下「引用発明1」という。)及び
「(a)少なくとも1種のスチレン系ブロックコポリマー(前記ブロックコポリマーは、 一般式
A-C-A (1)、または(A-C)_(n)-X (2)
(上式において、各Aは独立に、結合している芳香族ビニル化合物の比率が、10から50重量%の範囲にある芳香族ビニル化合物のポリマーブロックであり、かつCは、ブタジエン(B)とイソプレン(I)とが、30:70から70:30の範囲のB:I重量比率で混合されたポリマーブロック(B/I)であり、nは2以上の整数であり、またXは、カップリング剤の残基である)の100,000から500,000(GPCにより決定される)の範囲にある重量平均分子量(ポリスチレンによって表して)を有するブロックコポリマーである。)と、
(b)少なくとも1種の一般式A-Cで表されるジブロックコポリマー(前記ジブロックコポリマーにおけるA及びCは、上記(a)におけるA及びCと同様である。)と
を含み
上記成分(a)と(b)の重量比率が100/0から30/70の範囲にある、
ブロックコポリマー。」
に係る発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

(2)本願発明に係る対比・検討

ア.本願発明1について

(ア)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1における「支持体」、「粘着剤層」及び「はく離ライナ」は、本願発明1における「フェイスストック」、「感圧接着剤層」及び「剥離裏地」に相当し、引用発明1における「支持体、粘着剤層、およびはく離ライナをはり合わせたもの」は、本願発明1における「フェイスストック、感圧接着剤層および剥離裏地の積層体」に相当することが明らかであって、さらに、引用発明1における「支持体、粘着剤層、およびはく離ライナをはり合わせたものを含」む「ラベル材」は、本願発明1における「フェイスストック、感圧接着剤層および剥離裏地の積層体を含」む「ラベルストック」に相当するものといえる。
また、引用発明1における「前記粘着剤層は、(a)少なくとも1種のスチレン系ブロックコポリマー・・と、(b)少なくとも1種の一般式A-Cで表されるジブロックコポリマー・・と、および(c)1種の粘着付与剤樹脂と、を含み、」は、本願発明1における「前記感圧接着剤層は、(a)少なくとも1種のブロックコポリマー・・と、(b)少なくとも1種のジブロックコポリマー・・と、および(c)1種の粘着性付与樹脂と、を含み、」に相当することが明らかであり、さらに引用発明1における
「(前記ブロックコポリマーは、
一般式・・(A-C)_(n)-X (2)
(上式において、各Aは独立に、結合している芳香族ビニル化合物の比率が、10から50重量%の範囲にある芳香族ビニル化合物のポリマーブロックであり、かつCは、ブタジエン(B)とイソプレン(I)とが、30:70から70:30の範囲のB:I重量比率で混合されたポリマーブロック(B/I)であり、nは2以上の整数であり、またXは、カップリング剤の残基である)の100,000から500,000(GPCにより決定される)の範囲にある重量平均分子量(ポリスチレンによって表して)を有するブロックコポリマーである。)」
及び
「(前記ジブロックコポリマーにおけるA及びCは、上記(a)におけるA及びCと同様である。)」は、それぞれ、結合している芳香族ビニル化合物の(重量)比率の範囲、ブタジエン(B)とイソプレン(I)との重量比率の範囲及びブロックコポリマーの(重量平均)分子量の範囲の各数値範囲において大部分重複しているから、本願発明1における「(前記ブロックコポリマーは、少なくとも2つのポリ(ビニル芳香族化合物)の末端ブロック、ならびにイソプレン(I)とブタジエン(B)を35:65から80:20の(I):(B)の重量比で使用した混合物をランダム共重合させた少なくとも1つの中間ブロックを含み、10から35重量%の範囲内のポリ(ビニル芳香族化合物)含有量を有し、および180,000から400,000g/モルの範囲内の見かけ分子量を有する。)」及び「(前記ジブロックコポリマーは、1つのポリ(ビニル芳香族化合物)ブロックと、およびブタジエン、イソプレン・・の混合物を重合させた1つのブロックとを含み、(I):(B)の重量比が10:90から80:20の範囲内である。)」に相当するものといえる。
さらに、引用発明1における「成分(a)と(b)の混合物100重量部に対して成分(c)が50から400重量部使用される」は、本願発明1における「成分(a)と(b)の混合物100重量部に対して成分(c)が20から450重量部使用される」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明1とは、
「フェイスストック、感圧接着剤層および剥離裏地の積層体を含み、
前記感圧接着剤層は、
(a)少なくとも1種のブロックコポリマー(前記ブロックコポリマーは、少なくとも2つのポリ(ビニル芳香族化合物)の末端ブロック、ならびにイソプレン(I)とブタジエン(B)を35:65から70:30の(I):(B)の重量比で使用した混合物をランダム共重合させた少なくとも1つの中間ブロックを含み、10から35重量%の範囲内のポリ(ビニル芳香族化合物)含有量を有し、および180,000から400,000g/モルの範囲内の見かけ分子量を有する。)と、
(b)少なくとも1種のジブロックコポリマー(前記ジブロックコポリマーは、1つのポリ(ビニル芳香族化合物)ブロックと、およびブタジエン、イソプレンまたはこれらの混合物を重合させた1つのブロックとを含み、(I):(B)の重量比が30:70から70:30の範囲内である。)と、および
(c)1種の粘着性付与樹脂と、
を含み、
成分(a)と(b)の混合物100重量部に対して成分(c)が50から400重量部使用される
ラベルストック。」
の点で一致し、下記の2点でのみ相違するものと認められる。

<相違点1>:本願発明1では、「成分(a)は、熱可塑性エラストマーであ」るのに対して、引用発明1では、「(a)少なくとも1種のスチレン系ブロックコポリマー」につき熱可塑性エラストマーである旨特定されていない点
<相違点2>:本願発明1では、「成分(b)は、成分(a)と(b)の混合物の30から85重量%を占め」るのに対し、引用発明1では「成分(a)と(b)の重量比率が100/0から30/70の範囲にあ」るものの、具体的に「成分(b)」が30重量%以上を占めているか不明である点

(イ)各相違点に係る検討

(イ-1)相違点1について
上記相違点1につき検討すると、当業界において、芳香族ビニル化合物含有量が50重量%以下の芳香族ビニル化合物-(水添)ジエン化合物-芳香族ビニル化合物のトリブロックコポリマーが代表的な熱可塑性エラストマーであることが当業者に周知である(必要ならば「クレイトン」、「セプトン」、「タフプレン」などの各製品情報を参照されたい。)。
してみると、引用発明1において、成分(a)のブロックコポリマーにつき「熱可塑性エラストマー」であると具体的に表現した点は、実質的な相違点でないか、当業者が適宜なし得ることというほかはない。

(イ-2)相違点2について
上記相違点2につき検討すると、上記引用例2及び3にもそれぞれ記載されている(摘示(2a)、(2d)、(3a)及び(3e)参照)とおり、芳香族ビニル化合物-ジエン化合物-芳香族ビニル化合物のトリブロックコポリマー、芳香族ビニル化合物-ジエン化合物のジブロックコポリマー及び粘着付与剤を含有する粘着剤組成物において、トリブロックコポリマーとジブロックコポリマーとの重量比につきトリブロックコポリマーの比率を高くジブロックコポリマーの比率を低くすると、粘着性が低下し、逆に、トリブロックコポリマーの比率を低くジブロックコポリマーの比率を高くすると、保持性が低下する傾向にあることは、当業者の周知技術であるものと認められる。
してみると、引用発明1において、粘着性及び保持性のバランスに優れた粘着剤層を有するラベル材を得ることを意図し、上記当業者の周知技術に基づき、「成分(a)と(b)の重量比率が100/0から30/70の範囲にあ」るものの中で、例えば70/30?30/70のもの、すなわち「成分(b)は、成分(a)と(b)の混合物の30から70重量%を占め」るものに規定することは、当業者が適宜なし得ることである。

(ウ)本願発明の効果について
本願発明の効果につき検討すると、上記(イ)(イ-2)でも説示したとおり、芳香族ビニル化合物-ジエン化合物-芳香族ビニル化合物のトリブロックコポリマー、芳香族ビニル化合物-ジエン化合物のジブロックコポリマー及び粘着付与剤を含有する粘着剤組成物において、トリブロックコポリマーとジブロックコポリマーとの重量比につきトリブロックコポリマーの比率を高くジブロックコポリマーの比率を低くすると、粘着性が低下し、逆に、トリブロックコポリマーの比率を低くジブロックコポリマーの比率を高くすると、保持性が低下する傾向にあることは、当業者の周知技術であるから、引用発明1において、「成分(a)と(b)の重量比率が100/0から30/70の範囲にあ」るものの中で、例えば70/30?30/70のもの、すなわち「成分(b)は、成分(a)と(b)の混合物の30から70重量%を占め」るものとした場合に、所望に応じた粘着性と保持性とのバランスに優れたラベルストックが得られるであろうことは、当業者において予期し得ることである。
してみると、本願発明の効果は、引用発明1のものから、当業者が予期し得ない程度の格別顕著なものということができない。

(エ)小括
したがって、本願発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ.本願発明2について

(ア)対比
本願発明2と引用発明2とを対比すると、引用発明2における「(a)少なくとも1種のスチレン系ブロックコポリマー・・と、(b)少なくとも1種の一般式A-Cで表されるジブロックコポリマー・・と、を含み・・ブロックコポリマー。」は、本願発明2における「(a)少なくとも1種のブロックコポリマー・・と、および(b)少なくとも1種のジブロックコポリマー・・と、を含み・・ブロックコポリマー」に相当することが明らかであり、さらに引用発明2における
「(前記ブロックコポリマーは、
一般式・・(A-C)_(n)-X (2)
(上式において、各Aは独立に、結合している芳香族ビニル化合物の比率が、10から50重量%の範囲にある芳香族ビニル化合物のポリマーブロックであり、かつCは、ブタジエン(B)とイソプレン(I)とが、30:70から70:30の範囲のB:I重量比率で混合されたポリマーブロック(B/I)であり、nは2以上の整数であり、またXは、カップリング剤の残基である)の100,000から500,000(GPCにより決定される)の範囲にある重量平均分子量(ポリスチレンによって表して)を有するブロックコポリマーである。)」
及び
「(前記ジブロックコポリマーにおけるA及びCは、上記(a)におけるA及びCと同様である。)」は、それぞれ、結合している芳香族ビニル化合物の(重量)比率の範囲、ブタジエン(B)とイソプレン(I)との重量比率の範囲及びブロックコポリマーの(重量平均)分子量の範囲の各数値範囲において大部分重複しているから、本願発明2における「(前記ブロックコポリマーは、少なくとも2つのポリ(ビニル芳香族化合物)の末端ブロック、ならびにイソプレン(I)とブタジエン(B)を35:65から80:20の(I):(B)の重量比で使用した混合物をランダム共重合させた少なくとも1つの中間ブロックを含み、10から35重量%の範囲内のポリ(ビニル芳香族化合物)含有量を有し、および180,000から400,000g/モルの範囲内の見かけ分子量を有する。)」及び「(前記ジブロックコポリマーは、1つのポリ(ビニル芳香族化合物)ブロックと、およびブタジエン、イソプレン・・の混合物を重合させた1つのブロックとを含み、(I):(B)の重量比が10:90から80:20の範囲内である。)」に相当するものといえる。
したがって、本願発明2と引用発明2とは、
「(a)少なくとも1種のブロックコポリマー(前記ブロックコポリマーは、少なくとも2つのポリ(ビニル芳香族化合物)の末端ブロック、ならびにイソプレン(I)とブタジエン(B)を35:65から70:30の(I):(B)の重量比で使用した混合物をランダム共重合させた少なくとも1つの中間ブロックを含み、10から35重量%の範囲内のポリ(ビニル芳香族化合物)含有量を有し、および180,000から400,000g/モルの範囲内の見かけ分子量を有する。)と、および
(b)少なくとも1種のジブロックコポリマー(前記ジブロックコポリマーは、1つのポリ(ビニル芳香族化合物)ブロックと、およびブタジエン、イソプレンまたはこれらの混合物を重合させた1つのブロックとを含み、(I):(B)の重量比が30:70から70:30の範囲内である。)と、を含むブロックコポリマー。」
の点で一致し、下記の点でのみ相違するものと認められる。

<相違点A>:本願発明2では、「成分(b)は、成分(a)と(b)の混合物の30から85重量%を占め」るのに対し、引用発明2では「成分(a)と(b)の重量比率が100/0から30/70の範囲にあ」るものの、具体的に「成分(b)」が30重量%以上を占めているか不明である点

(イ)検討
上記相違点Aにつき検討すると、相違点Aは、上記ア.(ア)で指摘した相違点2と実質的に同一の事項であるから、相違点2につき上記ア.(イ)(イ-2)で説示した理由と同一の理由により、引用発明2において、ラベル材の粘着剤層を形成するブロックコポリマー(組成物)とすることを意図し、「成分(a)と(b)の重量比率が100/0から30/70の範囲にあ」るものの中で、例えば70/30?30/70のもの、すなわち「成分(b)は、成分(a)と(b)の混合物の30から70重量%を占め」るものに規定することは、当業者が適宜なし得ることである。
そして、本願発明の効果についても、上記ア.(ウ)で説示した理由と同一の理由により、引用発明2のものに比して、当業者が予期し得ない程度の格別顕著なものということができない。

(ウ)小括
してみると、本願発明は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ.本願発明に係る検討のまとめ
したがって、本願発明1及び2は、いずれも、その出願前に当業者が日本国内又は外国において頒布された上記引用例1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 審判請求人の主張について
審判請求人は、平成24年4月25日付け回答書において、補正案を提示し、本件審判請求時の補正に加えて、当該補正案のとおり特許請求の範囲を補正することを希望するとした上で、補正された本願発明の特許性などにつき縷々主張している。
しかるに、本件審判請求時の補正は、上記第2に示したとおり、決定をもって却下されている。
また、上記補正案の内容につき検討すると、当該補正では、補正前の「ラベルストック」に係る発明及び「ブロックコポリマー」に係る発明が記載された特許請求の範囲を、補正後には、「製造基材を、前記刃の切断角を少なくとも60°としてダイス切断することで、前記製造基材から前記ラベルストックを得るステップ」などの発明特定事項を有する「ラベルストックを刃の切断角を少なくとも60°としたダイス切断により作成するための方法」に係る発明が記載された特許請求の範囲に補正しようとするものと認められる。
しかしながら、本願の請求項に記載された事項で特定される特許を受けようとする発明は、原審の審査過程及び前置審査(並びに国際調査)の過程において、一貫して「ラベルストック」又は「ブロックコポリマー」に係るもののみであり、その発明特定事項が大きく異なる「ラベルストックを刃の切断角を少なくとも60°としたダイス切断により作成するための方法」に係る発明については、未だ審査されていない。
してみると、仮に、当該補正案のとおりの補正を認容したとすると、原審及び前置審査(並びに国際調査)の結果を利用することができず、先行技術調査(特に上記「製造基材を、・・ダイス切断することで、前記製造基材から前記ラベルストックを得るステップ」の点など)を含めた審査を本件審判の審理において再度当初から行う必要があるものと認められる。
したがって、上記補正案は、他者との衡平性及び手続の適時性などの観点からみて、適性を欠くものであり、採用することができないから、当該補正案のとおり補正されたことに基づく上記回答書における審判請求人の主張についても、採用することができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許法第49条第2号の規定に該当するから、その余について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-22 
結審通知日 2012-08-28 
審決日 2012-09-10 
出願番号 特願2006-500118(P2006-500118)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09J)
P 1 8・ 113- Z (C09J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 達也  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 橋本 栄和
小出 直也
発明の名称 改善されたダイス切断性能を有するラベルストック  
代理人 川口 義雄  
代理人 大崎 勝真  
代理人 渡邉 千尋  
代理人 坪倉 道明  

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