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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1269208 |
審判番号 | 不服2011-11003 |
総通号数 | 159 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-05-25 |
確定日 | 2013-01-23 |
事件の表示 | 特願2006-518398「電話回線ネットワークにおけるサービス及びトランザクション」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月20日国際公開、WO2005/006725、平成19年10月 4日国内公表、特表2007-528141〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2004年7月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年7月10日、南アフリカ共和国)を国際出願日とする出願であって、原審において平成23年1月19日付けで拒絶査定となり、これに対し同年5月25日に審判請求がなされるとともに手続補正書の提出があったものである。 なお、平成24年3月2日付けの当審よりの審尋に対し、同年6月5日に回答書の提出があった。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年5月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、以下のように補正前の平成22年5月10日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。 (本願発明) 「 【請求項1】 電話回線ネットワーク上の電話サービスの運営方法であって、 発呼者と被呼者との間で、電話接続又は呼を確立すること又は要求することと、 前記発呼者と被呼者との間で呼が確立される前であって前記呼処理の呼設定段階の間に、電話番号と共に発呼者の電話機から送信され、データ信号又は音声を含むコマンド信号を受信することと、 前記発呼者又は被呼者にサービスを開始すること、又は、前記コマンド信号を受信することに対応して発呼者と被呼者との間でトランザクションを開始すること を含む電話サービスの運営方法。」 (補正後の発明) 「 【請求項1】 電話回線ネットワーク上の電話サービスの運営方法であって、 発呼者と被呼者から離れた電話サービス場所において、 前記発呼者を介して前記被呼者の電話番号がダイヤルされることにより開始され、前記被呼者への接続を確立する要求を発呼者から受信し、 前記発呼者と被呼者との間で呼が確立される前であって、少なくともダイヤル段階、発呼段階、論理結合段階及び呼接続段階を含む呼接続処理の間に、前記電話番号の入力時に入力されるコマンド信号を受信し、 前記コマンド信号は前記発呼者の通信装置から受信され、コマンド信号の受信に応答して、標準的な呼接続トランズアクション以外のサービスを開始する電話サービスの運営方法。」 2.補正の適否 (1)新規事項の有無、補正の目的要件 上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1の、 「発呼者と被呼者との間で」という記載を、「発呼者と被呼者から離れた電話サービス場所において」と限定し、 同じく「電話接続又は呼を確立すること又は要求することと」という記載を、「前記発呼者を介して前記被呼者の電話番号がダイヤルされることにより開始され、前記被呼者への接続を確立する要求を発呼者から受信し」と限定し、 同じく「前記発呼者と被呼者との間で呼が確立される前であって前記呼処理の呼設定段階の間に、電話番号と共に発呼者の電話機から送信され、データ信号又は音声を含むコマンド信号を受信する」という記載を、「前記発呼者と被呼者との間で呼が確立される前であって、少なくともダイヤル段階、発呼段階、論理結合段階及び呼接続段階を含む呼接続処理の間に、前記電話番号の入力時に入力されるコマンド信号を受信し」と限定し、 同じく「前記発呼者又は被呼者にサービスを開始すること、又は、前記コマンド信号を受信することに対応して発呼者と被呼者との間でトランザクションを開始する」という記載を、「前記コマンド信号は前記発呼者の通信装置から受信され、コマンド信号の受信に応答して、標準的な呼接続トランズアクション以外のサービスを開始する」と限定することにより特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 (2)独立特許要件 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 [補正後の発明] 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。 [引用発明] A.原審の拒絶理由に引用された特開平04-265050号公報(以下、「引用例」という。)には、「電話取扱者補助コール取扱方法及び装置」として図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、取扱者、すなわち交換手、の補助を受ける種類の電話通信の通話の処理を自動化するための方法及び装置に関する。 【0002】 【従来の技術】過去数十年の間に、かつては取扱者によって取り扱われていた有料電話通信通話呼数(トラフィック)の内の膨大な部分が自動化された。本来、「取扱者の補助サービスを受ける種類の通話」(以下、取扱者補助コール)のトラフィックだった電話通信通話の自動化の最初の段階は、顧客が自分でダイヤルする種類の長距離電話サービスを提供することであった。それから、顧客が初めにダイヤルする種類の取扱者補助コールサービスが導入された。そこでは取扱者は、番号が既に顧客によってダイヤルされた後の部分のコールを処理するのである。電話料金の自動記録もやはりそのころ導入された。 【0003】今日では、完全又は一部自動化された取扱者補助コールの種類としては、硬貨投入コール、電話カードコール、ホテル宿泊客発信コールの料金の自動引用、及びコレクトコール(料金受信人払い通話)と指名通話との部分的自動化が含まれる。しかし、取扱者補助コールの自動化について集中的に努力がなされているにもかかわらず、電話会社が取扱者賃金やこれに伴う管理コストとして費やす金額は、米国を例にとれば年間一千億円を超えている。 【0004】取扱者補助コールは、取扱者補助交換システム、又は交換機、に付随する「取扱者の配置された位置端末」(取扱者位置)から処理される。これらの交換システムの動作は、概して総体プログラムと呼ばれる複合プログラムによって制御される。このプログラムは、十分注意してテストし、システムが衝突を起こしたり機能しなくなったりする原因となる欠陥がないようにする必要がある。 【0005】取扱者補助交換システムは、データメッセージによって取扱者と通信を行う。このデータメッセージは、取扱者位置におけるディスプレイを操作するためと、「通話発信者又は呼び出す側の顧客」(以下、呼者)からの指令に応答して取扱者が入力した情報を取扱者補助交換システムに伝送するためと、に用いられる。 総体プログラムは、取扱者補助交換システムから受信した劣質のデータが1つのコール以外に影響を与えることのないように十分注意して設計されている。尚、呼者に対応して、「通話受信者又は呼び出される側の顧客」を以下、被呼者という。」(7頁12欄?8頁13欄) ロ.「【0057】本発明の基本原理を説明するために、呼者端末42から被呼者端末46への簡単なコレクトコールを例として取り上げる。尚、前にも述べたように、ここにおいて、「呼者」はコール(通話)についての、発信側端末にいる「発信者又は呼び出す側の顧客」、「被呼者」は、受信側端末にいる「受信者又は呼び出される側の顧客」を意味する。 【0058】本例では、被呼者端末46の被呼者は、コレクトコールの受諾に、事前に同意しているが、入来コールがコレクトコールであることの通知を望んでいる。 まず、呼者端末42の呼者が、「ゼロ」(0)をダイヤルし(又はボタンで入力し)、その後に被呼者端末の電話番号を続ける。ダイヤルされたこの番号は、顧客ライン44を経て音声・データ交換ネットワーク12に受信され、制御アクセス線11を経て制御装置10に送られる。 【0059】制御装置10は、このダイヤルされた(ダイヤル式端末の場合)又はボタン入力された(DTMF端末の場合)番号を解析し、呼者端末42が何らかの種類の取扱者補助コールを発信したことを認識する。これが、電話カード、第3番号、指名、コレクト、スペイン語、会議、料金請求、又はその他の種類の取扱者補助コールのどれであるかを判断するためには、呼者端末42の呼者を自動化位置グループ50のどれか1つのポートに接続する必要がある。 【0060】コールの接続が行われた後、自動化位置グループは、応答を促す「トーン」を呼者端末42に返す。コールのトーンに応答して、もし呼者端末42の呼者がDTMF通信端末を有している場合には、呼者は、コレクトコールに該当するコールの種類を意味する2桁の指令コードをボタン入力する。もし呼者端末42の呼者がDTMF通信端末を有していないか、又は音声入力を選ぶ場合には、呼者は、コールの種類を示す指定された語句、例えば、コレクト、電話カード、指名、第3番号、オペレータ(取扱者、又は交換手)、エスパニョール(スペイン語で「スペイン語」を意味し、スペイン語を話す取扱者を求める語句)、会議、又は請求、の内の1つ、本例の場合は、「コレクト」と、音声で言う。 【0061】もし呼者が指令コードの入力又は音声入力を行うことができなかった場合には、呼者は、例えば、[「コレクト、電話カード、指名、第3番号、エスパニョール、会議、請求、又はオペレータ」と、今、言って下さい]というような告知によって応答を促される。ボタン入力された指令コード、又は音声入力された指令は、自動化位置グループ50によって解析され、コレクトコールがセットアップされるべきものと判断される。 【0062】求められる応答を呼者が行うようにと呼者を促すためには、トーン又は告知が用いられる。少し時間が経つと、トーンが応答を促す信号であることが呼者に判るようになるので、トーンだけを用いればよい。呼者を安心させるために、コールのセットアップ中に、「呼者から被呼者宛にコレクトコールをセットアップ中である」旨の告知が、自動化位置グループ50の音声処理装置1405(図14)から呼者に流される。 【0063】そして、相互接続ネットワーク32を経て被呼者端末46へのコール接続がセットアップされる。 どのような種類のコレクトコールを被呼者が受諾するかについての、被呼者の特性が、被呼者端末46のデータを包含する遠隔データベースシステムのような地域データベースシステムに記憶されている。呼者及び被呼者のその他の種類のデータは、便利さに合わせてローカル又は遠隔データベースシステムに記憶されている。 【0064】被呼者への接続が行われる前に、遠隔データベースシステム20において調査が行われる。本例の場合、調査結果として、「被呼者は全てのコレクトコールを受諾するが、入来するコールがコレクトコールであることを通知してほしいと望んでいる」ことが判っている。 【0065】被呼者端末46が応答すると、応答信号は、音声・データ交換ネットワーク12に伝送され、更に、制御アクセス線11を経て制御装置10に送られる。 制御装置10がこの応答信号を受信すると、被呼者にこのコールがコレクトコールであることを告知するために、音声・データ交換ネットワーク12内において、自動化位置グループ50から相互接続ネットワーク32を経て被呼者端末46への接続がセットアップされる。 【0066】被呼者46は全てのコレクトコールを受諾することに事前同意しているので、呼者端末42と被呼者端末46との間のコールは、上記の告知が被呼者によって受信された後に、音声・データ交換ネットワーク12を経てセットアップされる。以上述べたように、本例のコールは、取扱者のサービスを必要とせずに接続された。」 (12頁22欄?13頁24欄) 上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 まず、引用例記載の「電話取扱者補助コール取扱方法」は、上記ロ.【0057】及び引用例図1にあるように、発呼者側の「呼者端末42」から、「顧客ライン44」、「音声・データ交換ネットワーク12」、「相互接続ネットワーク32」等で構成される『電話回線ネットワーク』を介して、「被呼者端末46」側の被呼者に宛てた、「コレクトコール」などの「電話取扱者補助コール」を取扱う方法であって、 当該方法を実施する主体である「取扱者補助交換システム1」ほかは、前記『電話回線ネットワーク』上にあるということができるから、『電話回線ネットワーク上の取扱者補助交換システムによる電話取扱者補助コール取扱方法』である。 ここで、引用例図1からも明らかなように、前記「取扱者補助交換システム1」ほかは、発呼者、被呼者のいる「呼者端末42」、「被呼者端末46」から「顧客ライン44」、「相互接続ネットワーク32」等で接続される(少なくとも論理的に)離れた場所に存在しており、引用例記載の方法は『発呼者と被呼者から離れた場所』において実行される方法である。 また、上記ロ.【0058】には、「まず、呼者端末42の呼者が、「ゼロ」(0)をダイヤルし(又はボタンで入力し)、その後に被呼者端末の電話番号を続ける。ダイヤルされたこの番号は、顧客ライン44を経て音声・データ交換ネットワーク12に受信され、制御アクセス線11を経て制御装置10に送られる。」とあり、「呼者」とは『発呼者』であるから、 引用例記載の方法は、『発呼者端末の発呼者が、ゼロをダイヤルし、その後に被呼者端末の電話番号を続ける』ことにより開始されており、この操作は発呼者が被呼者との通話のための接続を要求して行うものであるから、この操作により発せられるダイヤル信号は『被呼者への接続を確立する要求』ということができるものであり、 「呼者端末42」から発せられたダイヤル信号が、「取扱者補助交換システム1」内の「音声・データ交換ネットワーク12」において受信されるのであるから『発呼者から受信』しているものである。 また、上記ロ.【0059】?【0066】の記載によれば、最終的に発呼者と被呼者との間でコレクトコールとしての電話接続の「コール」(呼)が確立されるのは、上記ロ.【0066】の被呼者への告知後であって、その前の、少なくとも被呼者端末の電話番号をダイヤルする段階(上記ロ.【0058】)において、「ゼロ」(0)が入力されており、この被呼者端末の電話番号の入力時に入力される『ゼロダイヤルの信号』が、後続の呼接続の処理の間に「取扱者補助交換システム1」内の「音声・データ交換ネットワーク12」に受信されるのも前述の通りであるから、引用例には『前記発呼者と被呼者との間で呼が確立される前であって、少なくともダイヤル段階を含む呼接続処理の間に、前記電話番号の入力時に入力されるゼロダイヤルの信号を受信』することも開示されている。 そして、前記『ゼロダイヤルの信号』が、『発呼者側の通信装置』である「呼者端末42」から受信されるのも前述の通りであり、上記ロ.【0059】以下の記載によれば、該『ゼロダイヤルの信号』の受信に応答して、「電話カード、第3番号、指名、コレクト、スペイン語、会議、料金請求、又はその他の種類の取扱者補助コール」等のサービスが開始されるものである。 したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 (引用発明) 「 電話回線ネットワーク上の取扱者補助交換システムによる電話取扱者補助コール取扱方法であって、 発呼者と被呼者から離れた場所において、 発呼者端末の発呼者が、ゼロをダイヤルし、その後に被呼者端末の電話番号を続けることにより開始され、前記被呼者への接続を確立する要求を発呼者から受信し、 前記発呼者と被呼者との間で呼が確立される前であって、少なくともダイヤル段階を含む呼接続処理の間に、前記電話番号の入力時に入力されるゼロダイヤルの信号を受信し、 前記ゼロダイヤルの信号が、発呼者側の通信装置から受信され、ゼロダイヤルの信号の受信に応答して、電話カード、第3番号、指名、コレクト、スペイン語、会議、料金請求、又はその他の種類の取扱者補助コール等のサービスを開始する電話取扱者補助コール取扱方法。」 [対比・判断] 補正後の発明と引用発明を対比すると、 まず、引用発明の「電話取扱者補助コール」とは、引用発明後段に「電話カード、第3番号、指名、コレクト、スペイン語、会議、料金請求、又はその他の種類の取扱者補助コール等のサービス」とあるように「電話サービス」であり、 このような「電話取扱者補助コール」(電話サービス)の「取扱方法」とは、電話サービスを取り扱うことにより事業者が該電話サービスを運営する方法と言えるから、補正後の発明の「電話サービスの運営方法」に相当する。 また、引用発明の「発呼者と被呼者から離れた場所」には、「電話取扱者補助コール」(電話サービス)を実施する主体として「取扱者補助交換システム」が存在するから電話サービスを提供する場所であり、補正後の発明の「発呼者と被呼者から離れた電話サービス場所」にあたる。 また、引用発明の「発呼者端末の発呼者が、ゼロをダイヤルし、その後に被呼者端末の電話番号を続けることにより開始され」の構成において、発呼者は被呼者の電話番号をもダイヤルしているのは明らかであるから、補正後の発明の「前記発呼者を介して前記被呼者の電話番号がダイヤルされることにより開始され」と一致する。 また、引用発明の「少なくともダイヤル段階を含む呼接続処理」と、補正後の発明の「少なくともダイヤル段階、発呼段階、論理結合段階及び呼接続段階を含む呼接続処理」は、「少なくともダイヤル段階を含む呼接続処理」の点で一致している。 また、引用発明の「ゼロダイヤルの信号」と、補正後の発明の「コマンド信号」は、「信号」の点で一致している。 そして、引用発明の「電話カード、第3番号、指名、コレクト、スペイン語、会議、料金請求、又はその他の種類の取扱者補助コール等のサービス」と、補正後の発明の「標準的な呼接続トランズアクション以外のサービス」は、「サービス」の点で一致する。 したがって、両者は以下の点で一致し、また相違している。 (一致点) 「 電話回線ネットワーク上の電話サービスの運営方法であって、 発呼者と被呼者から離れた電話サービス場所において、 前記発呼者を介して前記被呼者の電話番号がダイヤルされることにより開始され、前記被呼者への接続を確立する要求を発呼者から受信し、 前記発呼者と被呼者との間で呼が確立される前であって、少なくともダイヤル段階を含む呼接続処理の間に、前記電話番号の入力時に入力される信号を受信し、 前記信号は前記発呼者の通信装置から受信され、信号の受信に応答して、サービスを開始する電話サービスの運営方法。」 (相違点1) 「呼接続処理」が、補正後の発明では「少なくともダイヤル段階、発呼段階、論理結合段階及び呼接続段階を含む呼接続処理」であるのに対し、引用発明では「少なくともダイヤル段階を含む呼接続処理」である点。 (相違点2) 「信号」が、補正後の発明では「コマンド信号」であるのに対し、引用発明では「ゼロダイヤルの信号」である点。 (相違点3) 「サービス」が、補正後の発明では「標準的な呼接続トランズアクション以外のサービス」のに対し、引用発明は「電話カード、第3番号、指名、コレクト、スペイン語、会議、料金請求、又はその他の種類の取扱者補助コール等のサービス」である点。 そこで、まず、上記相違点1の「呼接続処理」について検討する。 補正後の発明の「呼接続処理」に含まれる各段階は「少なくとも」とあるように択一的な要件であるから、引用発明が「ダイヤル段階」を含むことにより要件は充足しており、本相違点1は形式上のものであって実質的な相違点ではない。 念のため検討すると、電話における呼接続の処理は、発呼側の「ダイヤル」、「発呼」、(交換機などを介した相手先端末との)「論理的結合」、実質的な「呼接続」などの各段階を経由して実行されることは技術常識である。 補正後の発明が「少なくともダイヤル段階、発呼段階、論理結合段階及び呼接続段階を含む呼接続処理」としたのは、このような各段階を列挙したに過ぎず、この点からしても相違点1は格別のことではない。 ついで、上記相違点2の「信号」(コマンド信号/ゼロダイヤルの信号)について検討する。 引用発明の「ゼロダイヤルの信号」は、引用例の上記ロ.【0059】に「制御装置10は、このダイヤルされた(ダイヤル式端末の場合)又はボタン入力された(DTMF端末の場合)番号を解析し、呼者端末42が何らかの種類の取扱者補助コールを発信したことを認識する。」とあるように、通常の電話番号のみのダイヤル信号とは別の扱いを受けるものであり、この「ゼロダイヤルの信号」が「取扱者補助コール」などのサービスを開始するための命令(コマンド)であると捉えることができるものである。 したがって、引用発明の「ゼロダイヤルの信号」は、これを「コマンド信号」ということができるものであって、相違点2も格別のことではない。 なお、本願明細書には「コマンド信号」を与えるキーとして「0」キーも例示されており(本願明細書【0017】)、この点においても引用発明と符合するものである。 さいごに、上記相違点3の「サービス」について検討する。 引用発明の「電話カード、第3番号、指名、コレクト、スペイン語、会議、料金請求、又はその他の種類の取扱者補助コール等のサービス」は、引用例の上記イ.の記載などを参照すれば、従来「取扱者の補助サービスを受ける種類の通話」(取扱者補助コール)として扱われていた付加的な電話サービスであるから、通常の電話の通話のような「標準的」な「呼接続」の「トランズアクション」(transaction:処理、取扱い)以外のサービスであり、特に「コレクト」と例示があるように、いわゆる「コレクトコール」も含む点においても、本願明細書の記載(【0065】ほか)とも符合するものである。 したがって、引用発明のサービスを、「標準的な呼接続トランズアクション以外のサービス」とした相違点3も格別のことではない。 また、補正後の発明が奏する効果も前記引用発明及び技術常識から容易に予測出来る範囲内のものである。 そして、当審の審尋に対する回答書を参酌しても、上記認定を覆すに足りるものは見あたらない。 よって、補正後の発明は引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、 平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の[引用発明]で認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用発明及び技術常識に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-08-08 |
結審通知日 | 2012-08-21 |
審決日 | 2012-09-07 |
出願番号 | 特願2006-518398(P2006-518398) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石澤 義奈生、田中 庸介、仲間 晃 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
神谷 健一 藤井 浩 |
発明の名称 | 電話回線ネットワークにおけるサービス及びトランザクション |
代理人 | 山中 郁生 |