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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1269232
審判番号 不服2012-8981  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-16 
確定日 2013-01-23 
事件の表示 特願2007-524835「エッチングされたウエハからフォトレジストを剥離するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月23日国際公開、WO2006/020344、平成20年 3月21日国内公表、特表2008-508743〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、2005年7月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理
2004年8月2日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年4月2日付けで手続補正書が提出され、平成23年4月12日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月18日付けで意見書および手続補正書が提出され、平成24年1月10日付けで拒絶査定がなされ、同年5月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

[2]本願発明
本願の請求項1-14に係る発明は、平成19年4月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、以下のとおりである。

「多孔質有機ケイ酸塩ガラスの低誘電体層に形状を形成するための方法であって、
多孔質有機ケイ酸塩ガラスの低誘電体層を基板の上に配置する工程と、
パターニングされたフォトレジストマスクを前記低誘電体層の上に配置する工程と、
前記低誘電体層に少なくとも1つの形状をエッチングする工程と、
CO_(2)を含む剥離ガスを供給する工程であって、前記剥離ガスは、全流速を有し、前記CO_(2)の流速は、前記全流速の少なくとも25%である工程と、
CO_(2)を含む前記剥離ガスからプラズマを形成する工程と、
CO_(2)を含む前記剥離ガスから形成された前記プラズマからの生成物を用いて、前記パターニングされたフォトレジストマスクを剥離する工程と、を備える方法。」(以下、「本願発明」という。)

なお、「流速」とは、「流量」の誤訳であるとして、以下、検討を行う。(国際公開WO2006/020344の第10頁「CLAIMS」の欄には「flow rate」とあり、「「マグローヒル 化学技術用語大辞典 改訂第3版」株式会社日刊工業新聞社、2001年5月31日発行、第1933頁左欄下から第15行-第17行」には、「流量 flow rate、rate of flow……」とある。)

[3]引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された特開2001-189302号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。
(a)「【従来の技術】……
……一方、半導体装置の高速化のために配線寄生容量の低下が要求され、層間絶縁膜の低誘電率化(これをLow-k膜という)が検討されている。
この低誘電率化された層間絶縁膜としては、……無機シリコン酸化膜等のポーラスで比較的脆い無機膜や無機膜中に炭素原子を含む有機成分を有する有機シリコン酸化膜があげられる。従来の酸化膜の比誘電率が約4であるのに対して、これらの絶縁膜は、比誘電率が3以下の値を有している。この層間絶縁膜上にフォトレジストをパターニングした後に配線溝やコンタクトホールのエッチング加工を行なった場合、その後の工程で配線材料等を埋め込む場合に備えてフォトレジストを剥離しておく必要がある。」(第3頁第3欄第30行-第50行)

(b)「【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のフォトレジスト剥離法では、下地膜として炭素原子を含む組成からなる膜を有する構造の多層膜がある場合に、活性ガス中の酸素原子と反応して下地膜中の炭素原子を脱離させてしまう。
……
また、下地膜が無機膜に炭素原子を含有させた膜(有機シリコン酸化膜)の場合には、下地膜表面から炭素原子の脱離層が形成されてしまい、下地膜の比誘電率値が変化するという問題が生じている。また、この時、膜中の炭素原子が脱離した後の下地膜は、収縮するため寸法変換差が変化するだけでなく、応力がかかり、クラック発生の原因となるという問題も生じている。」(第3頁第4欄第12行-第26行)

(c)「【0011】本発明は、前述した従来技術の問題を解決するものでり(審決注:「あり」の誤記)、活性化された反応ガスを用いて被膜をドライエッチングする方法において、炭素原子と、酸素原子、窒素原子及び水素原子の少なくとも1つを含むガスを用いて絶縁膜上、金属膜上もしくは炭素原子を含む組成からなる膜上などの前記被膜上に形成されたフォトレジストなどの炭素原子を含む膜をアッシングする方法に関するものである。シリコン半導体等の半導体基板11上に層間絶縁膜として膜厚500nmの低誘電率化された絶縁膜(以下、これをLKD膜という)12を塗布形成する。このLKD膜12に、例えば、アルミニウムなどの金属配線12´を埋め込み形成する。このLKD膜12上に、層間絶縁膜として膜厚400nmのLKD膜13を塗布形成する。このLKD膜13は、無機系膜中に炭素原子が含まれている構造のベンゾシクロブテン(Benzocyclobutene(BCB))、フロロポリマー(Fluoropolymer(Cytop))などの有機シリコン酸化膜からなるものである。
……
……この半導体基板(ウエハー)に酸素プラズマ処理を行い、酸化膜である表面改質層14を形成する。この上に膜厚60nmの反射防止膜15及び0.6μmのフォトレジスト16を塗布形成する。その後周知技術のリソグラフィー法によりフォトレジスト16をパターニングする(図1(a))、そして、このパターニングされたフォトレジスト16をマスクにして反射防止膜を加工する(図1(b))。その後、表面改質層14及びLKD膜13を…RIEエッチングを行い、深さ400nmでパターンの大きさは0.2μmのコンタクトホールを形成する。
……
【0013】さらに、LKD膜13上に残ったフォトレジスト16及び反射防止膜15を剥離する(図2(b))。……」(第5頁第7欄第8行-第49行)

(d)「LKD膜13加工後のフォトレジスト剥離は、従来の方法では酸素ガスによるプラズマアッシングで行なっていたが、LKD膜13の側壁から炭素原子が脱離してしまい変質層(側壁炭素離脱層)が形成されるという問題があった。これは低圧の酸素アッシングでは酸素イオンと酸素ラヂカルによるフォトレジストのイオンアシストエッチングが起きるが、等方的な酸素ラジカル成分がコンタクトホール内に進入し、このラジカルに触れる部分から炭素原子を脱離させることによるものである。また、膜中から炭素原子が抜けることによる寸法変換差の広がりもあった。
【0018】このため、この実施例では、フォトレジスト16及び反射防止膜15の剥離は、酸素原子及び炭素原子を含むガスを用いるプラズマプロセスで行なった。アッシング装置は図6に示す平行平板型であり、アッシング条件は、O_(2)/CO=30/270ccm、100mTorr、500W、30℃である。図3に示すように、この条件ではフォトレジストの剥離は進行するが、LKD膜側壁からの炭素原子の脱離は無くすことが出来るため側壁変質層を形成することが極めて少なくすることが可能になる(図2(c))。
……
……また、この実施例では、アッシングガスとしてCOガスを説明したが、本発明では、炭素原子を含むガスは、圧力、温度、パワー等を制御することにより以下の材料を用いることもできる。すなわち、CO_(2)、……等があり、」(第6頁第9欄第45行-同頁第10欄第48行)

[4]引用刊行物記載の発明
上記記載事項(a)、(b)によれば、半導体装置の層間絶縁膜において、低誘電率化が求められており、有機シリコン酸化膜等が用いられること、また、該層間絶縁膜にコンタクトホール等のエッチング加工を行った後、フォトレジストを剥離する際、従来の剥離方法によれば、下地膜表面から炭素原子が脱離し、比誘電率値の変化、収縮によるクラック発生等の問題が生じることが記載されている。
そして、同記載事項(c)、(d)によれば、上記問題を解決すべく、有機シリコン酸化膜等からなる低誘電率化された絶縁膜(LKD膜)にコンタクトホールを形成する方法であって、前記低誘電率化された絶縁膜をシリコン半導体等の半導体基板上に形成する工程と、パターニングされたフォトレジストを前記低誘電率化された絶縁膜の上に形成する工程と、前記低誘電率化された絶縁膜にコンタクトホールをエッチングする工程と、CO_(2)を含むアッシングガスを供給する工程と、CO_(2)を含む前記アッシングガスからプラズマを形成する工程と、CO_(2)を含む前記アッシングガスから形成された前記プラズマからの生成物を用いて、前記パターニングされたフォトレジストを剥離する工程と、を備える方法では、従来法である酸素ガスプラズマアッシングによるフォトレジスト剥離に比べ、低誘電率化された絶縁膜側壁からの炭素原子の脱離を無くすことが出来る旨、記載されている。

したがって、引用刊行物には、
「有機シリコン酸化膜等からなる低誘電率化された絶縁膜(LKD膜)にコンタクトホールを形成する方法であって、
前記低誘電率化された絶縁膜をシリコン半導体等の半導体基板上に形成する工程と、
パターニングされたフォトレジストを前記低誘電率化された絶縁膜の上に形成する工程と、
前記低誘電率化された絶縁膜にコンタクトホールをエッチングする工程と、
CO_(2)を含むアッシングガスを供給する工程と、
CO_(2)を含む前記アッシングガスからプラズマを形成する工程と、
CO_(2)を含む前記アッシングガスから形成された前記プラズマからの生成物を用いて、前記パターニングされたフォトレジストを剥離する工程とを備える方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

[5]対比・判断
引用発明における「低誘電率化された絶縁膜(LKD膜)」、「コンタクトホールを形成」、「シリコン半導体等の半導体基板上に形成」、「パターニングされたフォトレジスト」、「前記低誘電率化された絶縁膜の上に形成」、「コンタクトホールをエッチングする」、「アッシングガス」は、それぞれ、本願発明の「低誘電体層」、「形状を形成」、「基板の上に配置」、「パターニングされたフォトレジストマスク」、「前記誘電体層の上に配置」、「少なくとも1つの形状をエッチングする」、「剥離ガス」に相当する。

したがって、両者は、
「低誘電体層に形状を形成するための方法であって、
低誘電体層を基板の上に配置する工程と、
パターニングされたフォトレジストマスクを前記誘電体層の上に配置する工程と、
前記低誘電体層に少なくとも1つの形状をエッチングする工程と、
CO_(2)を含む剥離ガスを供給する工程と、
CO_(2)を含む前記剥離ガスからプラズマを形成する工程と、
CO_(2)を含む前記剥離ガスから形成された前記プラズマからの生成物を用いて、前記パターニングされたフォトレジストマスクを剥離する工程と、を備える方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
低誘電体層が、本願発明では、「多孔質有機ケイ酸塩ガラス」であるのに対し、引用発明では、「有機シリコン酸化膜等からなる」点。

(相違点2)
前記剥離ガスが、本願発明では、「全流量を有し、前記CO_(2)の流量は、前記全流量の少なくとも25%である」のに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

上記各相違点について検討する。
・(相違点1)について
下記周知文献1-3にも記載のとおり、半導体装置等に用いられる低誘電率絶縁膜材料として、有機ケイ酸塩ガラスは周知のものであり、同文献3には、ポーラスな有機ケイ酸塩ガラス、すなわち多孔性有機ケイ酸塩ガラスについても記載されている。
また、有機ケイ酸塩ガラス表面からのフォトレジストの除去を、周知のO_(2)剥離処理で行うと、酸素プラズマにより、OSGフイルムから炭素と水素が除去され、フイルムが不安定になり、誘電率が増大する課題があることも周知である(例えば、下記周知文献4参照)。

周知文献1:特開2002-329780号公報
「【0055】絶縁膜8a上には、例えばタングステンからなる第1層配線L1が形成されている。第1層配線L1は、プラグ10を通じてnMISQnおよびpMISQpのソ-ス・ドレイン用の半導体領域6,7やゲート電極4と電気的に接続されている。また、絶縁膜8a上には、第1層配線L1を覆うように、絶縁膜8b,8cが下層から順に堆積されている。
【0056】絶縁膜8bは、例えば……有機シリカガラス等のような低誘電率材料からなる。……
……上記有機シリカガラス(SiOC系材料)としては、例えば……、Black Diamond(米Applied Materials,Inc製、比誘電率=3.0?2.4、耐熱温度=450℃)……等がある。この他のSiOC系材料としては、例えばCORAL(米Novellus Systems,Inc製、比誘電率=2.7?2.4、耐熱温度=500℃)、……等がある。」(第8頁第14欄第32行-第9頁第15欄第9行)

周知文献2:特開2003-243505号公報
「【0016】低k誘電体膜の特徴は、誘電率が二酸化ケイ素の誘電率(典型的には約3.9?4.1)よりも低いことである。
……
……典型的な実施形態においては、低k誘電体膜は有機ケイ酸塩ガラス(OSG)であり得る。」(第4頁第6欄第20行-第31行)

周知文献3:国際公開第2002/052642号
・「The present invention relates to
the formation of structures in microelectronic devices such as integrated circuit devices.」(第1頁第10行-第11行)
・「This is particularly important for a class of dielectric materials
referred to as organosilicate glasses (OSGs),which includes trade name materials such as HOSP^(TM),Black Diamond^(TM) and Coral^(TM).These materials can be either porous or non-porous.These materials are extremely attractive in the industry as their dielectric constant is much lower than that of silicon dioxide.」(第2頁第14行-第19行)
以下、当審による翻訳:
(・「本発明は、集積回路デバイスなどのマイクロエレクトロニクスデバイスにおける構造の形成に関する。」
・「これは、有機ケイ酸塩ガラス(OSGs)といわれる種類の誘電体材料の場合に、特に重要である。このガラスには、HOSP(商標)、Black Diamond(商標)、およびCoral(商標)などの商標名の材料が含まれる。これらの材料はポーラスまたは非ポーラスの何れかであり得る。これらの材料は、産業上極めて魅力的である。というのは、これらの誘電率は二酸化ケイ素のそれよりも非常に低いからである。」)

周知文献4:特表2004-502319号公報
「【0006】
興味深い有機低誘電材料の種類として、有機ケイ酸塩ガラスすなわちOSGを含む化合物が挙げられる。」(第4頁第37行-第38行)
「【0013】
OSG材料は、基本的に有機物をドープした酸化物なので、ほとんどの現在のフォトレジスト材料は、OSG材料の有機物成分と同様の化学特性を持つ傾向にある。したがって、周知の酸素による方法を用いて、ウエハ表面のキャッププレートからフォトレジストなどの有機材料を除去すると、周知のO2剥離処理は、ウエハの表面から有機材料を除去できるだけではなく、エッチング形状の側壁や、他の露出した表面からも有機材料を除去するという悪影響を与える可能性もある。さらに、OSG材料は、酸素プラズマに露出された際に酸化されやすい。酸素は、OSGフイルムから炭素と水素を除去するので、フイルムが不安定になり、フイルムの誘電率が増大する。」(
第6頁第1行-第9行)

よって、これらの事項を勘案すると、引用発明における低誘電率化された絶縁膜(低誘電体層)を、「多孔性有機ケイ酸塩ガラス」とし、該相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到しえたことである。

・(相違点2)
全アッシングガス(剥離ガス)におけるCO_(2)の割合をどの程度とするかは、剥離すべきフォトレジストの種類や量、あるいは圧力、温度、パワー等の条件に応じて適宜決定すべき設計的事項にすぎない。

そして、本願発明が、引用刊行物に記載された発明および周知技術からは予想しえない格別の効果を奏するものとは認められない。

したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明および周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[6]むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-21 
結審通知日 2012-08-28 
審決日 2012-09-10 
出願番号 特願2007-524835(P2007-524835)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 淳一  
特許庁審判長 鈴木 正紀
特許庁審判官 松岡 美和
井上 茂夫
発明の名称 エッチングされたウエハからフォトレジストを剥離するための方法  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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