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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C02F
管理番号 1269254
審判番号 無効2011-800063  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-04-18 
確定日 2013-02-12 
事件の表示 上記当事者間の特許第4552327号発明「超純水製造装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4552327号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第4552327号は、栗田工業株式会社を出願人とし、平成13年1月18日を出願日とする出願であって、平成22年7月23日に設定登録がなされたものであって、平成23年4月18日にオルガノ株式会社を請求人として審判請求がなされたものであり、以後の経緯は以下で示すとおりである。
平成23年7月22日 被請求人:答弁書
平成23年11月10日 請求人:口頭審理陳述要領書
平成23年11月11日 被請求人:口頭審理陳述要領書
平成23年11月25日 口頭審理

II.請求人の主張
請求人は、無効審判請求書および口頭審理陳述要領書を提出し、
「本件特許の請求項1に記載の発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきである。」旨を主張する。
<証拠方法>
・無効審判請求書
○甲第1号証:特開平11-77091号公報
○甲第2号証:特開平9-192658号公報
○甲第3号証:特開平5-300号公報

・口頭審理陳述要領書
本要領書の3頁の「(2)御庁見解の妥当性 イ」には、「(甲第3号証(【0024】)の他、特開昭60-71085号公報(特許請求の範囲等)、特開平8-168784号公報(【0012】、【0017】?【0018】)、特開平11-226569号公報(【0031】)特開平8-168756号公報(【0008】)、特開平10-272474号公報(【0005】)、特開昭58-79590号公報(2頁左上欄18行?左下欄13行)、特開平5-269306号公報(【0013】?【0014】参照)。」との記載があるが、請求人は、口頭審理において、「口頭審理陳述要領書の3頁『(2)御庁見解の妥当性 イ』に記載した甲第3号証を除く特許文献7件については、証拠として提出したものではない。」と陳述した。
よって、特開昭60-71085号公報、特開平8-168784号公報、特開平11-226569号公報、特開平8-168756号公報、特開平10-272474号公報、特開昭58-79590号公報、特開平5-269306号公報の特許文献7件は、証拠としては取り扱われない。

III.被請求人の主張
被請求人は、答弁書および口頭審理陳述要領書を提出し、
「本件発明は、甲第1?3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到できるものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
したがって、本件特許は同法第123条第1項各号のいずれかに該当するものではないため、本件特許は当然に維持されるべきものである。」旨を主張する。

IV.本件特許発明
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本件特許発明」という。)
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置と、
触媒式酸化性物質分解装置と、
脱気装置と、
混床式イオン交換装置と、
微粒子分離膜装置と
を有し、この順に通水可能とした超純水製造装置であって、
該触媒式酸化性物質分解装置の酸化性物質分解触媒が、二酸化チタン、アルミナ、活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂に担持された、パラジウム触媒又は白金触媒であることを特徴とする超純水製造装置。」

V.甲各号証記載の発明
(V-1)甲第1号証(特開平11-77091号公報)には、以下の記載がある。
(1)「【請求項1】 一次純水を、少なくとも185nm付近の波長を照射可能な紫外線酸化装置、合成炭素系粒状吸着剤を充填した酸化性物質分解装置、膜式脱気装置、非再生型イオン交換装置の順に通水して超純水を得るように設置したことを特徴とする超純水製造装置。」

(2)「【0018】次に、本発明の超純水製造装置を用いて超純水を製造する手順を図1を参照して説明する。図1は本発明に実施の形態における超純水製造装置を示す系統図である。各種前処理工程により得られた、例えば、TOC濃度2ppb 以下の一次純水は、二次系システム10の純水貯槽24に供給される。純水貯槽24に蓄えられる一次純水の抵抗率は、通常、10MΩ・cm以上である。純水貯槽24を出た純水は、紫外線酸化装置26で処理される。紫外線酸化装置26は、高い有機物分解能力がある185nm付近の紫外線も強く照射可能な低圧水銀ランプを備えた紫外線酸化装置であり、水中の有機物を炭酸や有機酸に分解するために設置されている。紫外線酸化装置26の前後の溶存酸素濃度を測定したところ、該溶存酸素濃度が22ppb から6ppb へと激変する現象が認められる。この現象は、紫外線酸化装置26の被処理水中の溶存酸素が有機物の酸化のための酸素源として消費されたり、紫外線と水との相互作用によるラジカル、オゾン及び過酸化水素等の生成によって消費されたりするためと考えられる。従って、紫外線酸化装置26の前後の過酸化水素濃度は数ppb から50ppb へと増加する。」

(3)「【0019】次に、紫外線酸化装置26で処理された水を、酸化性物質分解装置27に通水し、該装置に充填された合成炭素系粒状吸着剤に接触させることにより、処理水中の過酸化水素を分解する。この場合、合成炭素系粒状吸着剤への被処理水の接触は充填方式で行うことが過酸化水素の除去効率の点で好ましい。このような充填方式で被処理水を合成炭素系粒状吸着剤に接触させる場合、通水条件は線流速100m/h 以下、特に20?50m/h とすることが好ましい。線流速が100m/h を超えると過酸化水素が十分に除去されないことがある。」

(4)「【0020】次に、酸化性物質分解装置27で処理された水を膜式脱気装置50に通水して、処理水中の溶存酸素を1ppb 以下、全溶存ガス濃度を3000ppb 以下に低減する。」

(5)「【0021】次に、この処理水を非再生型イオン交換装置であるカートリッジポリッシャ28に通水して、前記膜式脱気装置50から発生する溶出イオンを含む一次純水中のイオンを更に除去する。このように、処理水を酸化性物質分解装置27→膜式脱気装置50→カートリッジポリッシャ28の順に通水することにより、膜式脱気装置50からの溶出イオンを有効に除去できるが、処理水を酸化性物質分解装置27→カートリッジポリッシャ28→膜式脱気装置50の順に通水したのでは、膜式脱気装置50からの溶出イオンを除去できないばかりか溶存酸素や過酸化水素によるカートリッジポリッシャ28の酸化劣化を有効に防止できない。」

(6)「【0022】また、限外濾過膜分離装置30は、水中の残存微粒子等を除去して超純水を製造し、この超純水は使用場所32に供給される。該超純水は使用している時及び使用していない時のいずれの場合でも二次純水循環配管34を通って純水貯槽24に戻り、純水貯槽24→紫外線酸化装置26→酸化性物質分解装置27→膜式脱気装置50→カートリッジポリッシャ28→限外濾過膜分離装置30→純水貯槽24からなる閉ループを常時循環している。」

(7)「【0027】(各装置の仕様等)
紫外線酸化装置; 低圧型TDFL-4(千代田工販社製)紫外線照射量0.3kW・h/m^(3)
酸化性物質分解装置;合成炭化系粒状吸着剤(アンバーソーブ572、ローム&ハース社製)を充填した円筒状の充填塔(高さ90cm、内径30cm)
膜式脱気装置; MJ-520p(大日本インキ化学工業社製)真空度18Torr
カートリッジポリッシャ;カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合充填した混床式イオン交換装置、SV70?80h^(-1)
外濾過膜分離装置;FIT-3016型(旭化成工業社製)」

(8)「【0030】
【発明の効果】本発明によれば、紫外線酸化装置で生成した過酸化水素は、後段の合成炭素系粒状吸着剤を充填した酸化性物質分解装置及び膜式脱気装置で除去して、過酸化水素濃度が極めて低い超純水を得ることができる。また、溶存酸素は膜式脱気装置で除去されるため、過酸化水素濃度及び溶存酸素濃度が共に極めて低い超純水を得ることができ、シリコンウエハ上の自然酸化膜の形成を抑制できる。」

(9)上記(2)の「【0018】・・・ 紫外線酸化装置26は、高い有機物分解能力がある185nm付近の紫外線も強く照射可能な低圧水銀ランプを備えた紫外線酸化装置であり、水中の有機物を炭酸や有機酸に分解するために設置されている。・・・」との記載、および、一般的に、超純水におけるTOC濃度を極めて少なくすること自体、普通に行われている事項であることから、
甲第1号証には、「超純水におけるTOC濃度を極めて少なくする(TOC濃度が極めて少ない超純水を得る)」ことが記載されているということができる。

(10)上記(5)の「【0021】・・・このように、処理水を酸化性物質分解装置27→膜式脱気装置50→カートリッジポリッシャ28の順に通水することにより、膜式脱気装置50からの溶出イオンを有効に除去できるが、処理水を酸化性物質分解装置27→カートリッジポリッシャ28→膜式脱気装置50の順に通水したのでは、膜式脱気装置50からの溶出イオンを除去できないばかりか溶存酸素や過酸化水素によるカートリッジポリッシャ28の酸化劣化を有効に防止できない。」との記載からして、
甲第1号証には、「過酸化水素と溶存酸素(DO)によるカートリッジポリッシャ28の酸化劣化を防止する」ことが記載されているということができる。

上記(1)?(8)の記載事項および上記(9)(10)の検討事項より、甲第1号証には、
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置26と、
酸化性物質分解装置27と、
膜式脱気装置50と、
カートリッジポリッシャ(混床式イオン交換装置)28と、
限外濾過膜分離装置30と
を有し、この順に通水可能とした超純水製造装置であって、
該酸化性物質分解装置27の吸着剤が、合成炭素系粒状吸着剤であり、
過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて低い超純水を得る、超純水製造装置。」の発明(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が開示されている。

(V-2)甲第2号証(特開平9-192658号公報)には、以下の記載がある。
(11)「【0002】
【従来の技術】従来から、液晶や半導体素子(LSI)、あるいは医薬品の製造工程においては、イオン状物質、微粒子、有機物、溶存ガスおよび生菌等の含有量の極めて少ない超純水が用いられている。特に、電子工業においては、LSIの集積度の増加に伴って超純水の純度に対する要求は益々厳しくなってきており、特に、超純水中のΤOCおよび溶存酸素の低減が大きな課題である。」

(12)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の問題を解決すべくなされたもので、超純水中のTOC濃度および溶存酸素濃度の増加と機器の劣化とをほぼ防止する超純水製造装置を提供することを目的とする。」

(13)「【0009】これらの問題について、本発明者らが鋭意研究した結果、有機物濃度を極めて低濃度にまで減少させた一次純水に対し、180?190nmの波長を有する紫外線、特に、184.9nmに波長のピークを有する紫外線を紫外線照射装置により照射した場合、当該紫外線照射装置出口において微量の過酸化水素(H_(2)O_(2))がリークすることを見いだした。微量の過酸化水素が生成する機構としては次式に示すように、水の紫外線分解により生成したOΗラジカル(ヒドロキシラジカル)が一次純水中の微量な有機物と反応できず、OHラジカル同士が反応して生成する機構が提示される。」

(14)「【0010】H_(2)O+hν→・OH
・OH+・OH→H_(2)O_(2)
そして、リークした過酸化水素が後段に設置されたポリッシャー装置(イオン交換装置)内部のイオン交換樹脂を酸化劣化させることによりイオン交換樹脂から微細な樹脂の破片や有機物等が発生し、ポリッシャー装置(イオン交換装置)を通過した被処理水中のTOC濃度が、二次系システムにおいて処理する以前の一次純水に比べて上昇したと推測することができるのである。また、リークした過酸化水素がポリッシャー装置(イオン交換装置)内部のイオン交換樹脂を酸化劣化させる際、一部の過酸化水素が酸素と水とに分解されることにより、ポリッシャー装置(イオン交換装置)を通過した被処理水中の溶存酸素濃度が、二次系システムにおいて処理する以前の一次純水に比べて上昇したと推測される。さらに、180?190nmの波長を有する紫外線を発生する紫外線照射装置の後段に膜脱気装置を配置した場合には、リークした過酸化水素により膜脱気装置の脱気膜が急速に酸化劣化したと推測することができるのである。」

(15)「【0015】また、本発明においては、被処理水である一次純水は、アニオン交換樹脂、特に好ましくは強塩基性アニオン交換樹脂を充填した単床式イオン交換装置に導入され、被処理水中のアニオン成分が除去されるとともに、被処理水中のpHはアルカリサイドにシフトされる。次に、被処理水は、180?190nmの波長を有する紫外線を発生する紫外線照射装置に導入され、被処理水中に溶存する有機物がほぼ完全に有機酸あるいは二酸化炭素にまで分解される。また同時に、OΗラジカル同士の反応により生成した過酸化水素は、被処理水のpΗがアルカリサイドにシフトしているために自己分解し、酸素と水に変化する。次いで、被処理水は、気体透過膜を装備した膜脱気装置に導入され、紫外線照射装置により発生した酸素と二酸化炭素が除去される。最後に、膜脱気装置において脱ガスされた被処理水は、ポリッシャー装置に導入され、被処理水中のイオン成分が除去される。」

(16)「【0016】さらに、本発明においては、被処理水である一次純水は、180?190nmの波長を有する紫外線を発生する紫外線照射装置に導入され、被処理水中に溶存する有機物がほぼ完全に有機酸あるいは二酸化炭素にまで分解される。次に、被処理水はパラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置に導入され、被処理水中の過酸化水素がパラジウムを担持した触媒樹脂媒表面上で紫外線照射装置において生成した水素と反応して水に変化する。」

(17)「【0017】H_(2)O_(2)+H_(2)+Pd→2H_(2)O+Pd
最後に、被処理水はポリッシャー装置に導入され、被処理水中のイオン成分が除去される。」

(18)「【0022】(5)H_(2)O_(2)+hν→O_(2)+H_(2)O
また、紫外線照射装置により紫外線を照射した後に、被処理水中からイオン成分を除去する場合、通常、ポリッシャー装置に被処理水を導入する。このとき使用されるポリッシャー装置としては、被処理水中の二酸化炭素、有機酸あるいは他のイオン成分を除去するために強塩基性アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂を充填した非再生型の混床式イオン交換装置を好ましく用いることができる。イオン交換装置に用いるイオン交換樹脂としては、新品もしくはそれに類する破砕が無く、イオン交換性能が高く、また溶出のないものが望ましい。イオン交換樹脂に要求される性能は、本発明で用いられる再生型あるいは非再生型の単床式イオン交換装置に充填して用いられる強塩基性アニオン交換樹脂についても同様である。」

(19)「【0038】図2において、符号13は、単床式イオン交換装置であり、アニオン交換樹脂として強塩基性アニオン交換樹脂デュオライトA-113plus(ローム&ハース社)56lを予め再生し、OH型に変換した後に充填したものである。符号9、11および12は、それぞれ低圧紫外線ランプ酸化装置、膜脱気装置およびポリッシャー装置であり、図1と全く同一のものである。」

(20)「【0042】表2に、本実施例および本比較例における、ポリッシャー装置12の入口および出口での被処理水の水質測定結果を示す。」

(21)「【0044】表2から明らかなように、実施例2においては、ポリッシャー装置12の入口および出口での被処理水中の過酸化水素濃度は0.00ppmであり、一方、比較例1においては、ポリッシャー装置12の入口での被処理水中の過酸化水素濃度は、低圧紫外線ランプ酸化装置9の出口における被処理水中の過酸化水素濃度0.02ppmと同値であった。これは、実施例2では、単床式イオン交換装置13に被処理水を通過させたために被処理水のpHがアルカリ側にシフト(本実施例におけるpHは8.7、pHの測定は純水用pH計、東亜電波工業(株)、FAR-101による)することから、低圧紫外線ランプ酸化装置9で発生した過酸化水素が自己分解したのに対し、比較例2では単床式イオン交換装置13をバイパスしたために、低圧紫外線ランプ酸化装置9に供給される被処理水のpHが中性付近であり、このため低圧紫外練ランプ酸化装置9内で発生した過酸化水素が自己分解しないために低圧紫外線ランプ酸化装置9より過酸化水素がリークしてポリッシャー装置12の入口まで到達したものと推測される。」

(22)「【0047】(実施例3および比較例3)図3は、本発明の他の実施例である超純水製造装置(二次系システム)の構成を示した図である。」

(23)「【0054】表3から明らかなように、実施例3においては、ポリッシャー装置12の入口および出口での被処理水中の過酸化水素濃度は0.00ppmであり、一方、比較例3においては、ポリッシャー装置12の入口での被処理水中の過酸化水素濃度は、低圧紫外線ランプ酸化装置9の出口における被処理水中の過酸化水素濃度0.02ppmと同値であった。これは、実施例3では、パラジウム触媒樹脂装置14に被処理水を通過させたために低圧紫外線ランプ酸化装置9内で発生した過酸化水素が分解されたのに対し、比較例3では、パラジウム触媒樹脂装置14をバイパスしたために低圧紫外線ランプ酸化装置9内で発生した過酸化水素が分解されず、低圧紫外線ランプ酸化装置9よりリークした過酸化水素がポリッシャー装置12の入口まで到達したものと推測される。」

(24)【0043】【表2】には、「実施例2の入口の溶存酸素が0.5ppbであり、同H_(2)O_(2)が0.00ppmである」ことの表示がある。

(25)【0053】【表3】には、「実施例3の入口の溶存酸素が0.8ppbであり、同H_(2)O_(2)が0.00ppmである」ことの表示がある。

(26)【図2】には、「ポリッシャー装置12のすぐ上流に膜脱気装置11が配置されている」ことの図示がある。

(27)【図3】には「パラジウム触媒樹脂装置14のすぐ下流にポリッシャー装置12が配置されている」ことの図示がある。

(28)上記(11)の「【0002】
【従来の技術】従来から・・・特に、超純水中のΤOCおよび溶存酸素の低減が大きな課題である。」との記載、上記(12)の「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の問題を解決すべくなされたもので、超純水中のTOC濃度および溶存酸素濃度の増加と機器の劣化とをほぼ防止する超純水製造装置を提供することを目的とする。」との記載、および、一般的に、超純水におけるTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度を極めて少なくすること自体、普通に行われている事項であることから、
甲第2号証には、「超純水におけるTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度を極めて少なくする(TOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて少ない超純水を得る)」ことが記載されているということができる。

(29)上記(14)の「【0010】・・・リークした過酸化水素が後段に設置されたポリッシャー装置(イオン交換装置)内部のイオン交換樹脂を酸化劣化させることによりイオン交換樹脂から微細な樹脂の破片や有機物等が発生し、ポリッシャー装置(イオン交換装置)を通過した被処理水中のTOC濃度が、二次系システムにおいて処理する以前の一次純水に比べて上昇したと推測することができるのである。また、リークした過酸化水素がポリッシャー装置(イオン交換装置)内部のイオン交換樹脂を酸化劣化させる際、一部の過酸化水素が酸素と水とに分解されることにより、ポリッシャー装置(イオン交換装置)を通過した被処理水中の溶存酸素濃度が、二次系システムにおいて処理する以前の一次純水に比べて上昇したと推測される。さらに、180?190nmの波長を有する紫外線を発生する紫外線照射装置の後段に膜脱気装置を配置した場合には、リークした過酸化水素により膜脱気装置の脱気膜が急速に酸化劣化したと推測することができるのである。」との記載、上記(16)の「【0016】さらに、本発明においては、被処理水である一次純水は、180?190nmの波長を有する紫外線を発生する紫外線照射装置に導入され、被処理水中に溶存する有機物がほぼ完全に有機酸あるいは二酸化炭素にまで分解される。次に、被処理水はパラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置に導入され、被処理水中の過酸化水素がパラジウムを担持した触媒樹脂媒表面上で紫外線照射装置において生成した水素と反応して水に変化する。」との記載、上記(17)の「【0017】H_(2)O_(2)+H_(2)+Pd→2H_(2)O+Pd・・・」との記載、上記(22)の「【0047】(実施例3および比較例3)図3は、本発明の他の実施例である超純水製造装置(二次系システム)の構成を示した図である。」との記載、上記(23)の「【0054】表3から明らかなように、実施例3においては、ポリッシャー装置12の入口および出口での被処理水中の過酸化水素濃度は0.00ppmであり・・・」との記載、上記(25)の「実施例3の入口の溶存酸素が0.8ppbであり、同H_(2)O_(2)が0.00ppmである」との表示内容、および、一般的に、超純水における過酸化水素濃度を極めて少なくすること自体、普通に行われている事項であることから、
甲第2号証には、「酸素を発生させずに過酸化水素を完全に除去する、パラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置14」、「触媒樹脂装置14の触媒が、イオン交換樹脂に担持されたパラジウム触媒である」こと、および「過酸化水素によるイオン交換樹脂と脱気膜の酸化劣化を防止すると共に、超純水における過酸化水素濃度を極めて少なくする(過酸化水素濃度が極めて少ない超純水を得る)」ことが記載されているということができる。

(30)上記(11)の「【0002】・・・従来から・・・微粒子・・・の含有量の極めて少ない超純水が用いられている。・・・超純水の純度に対する要求は益々厳しくなってきており・・・」との記載からして、超純水製造装置において、微粒子を除去(分離)する装置を設けること自体、普通に行われている事項であるということができるので、甲第2号証には、「微粒子分離装置を有する」ことが記載されているということができる。

上記(11)?(27)の記載事項および上記(28)?(30)の検討事項からして、甲第2号証(実施例3)には、
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置と、
酸素を発生させずに過酸化水素を完全に除去する、パラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置(「触媒式」酸化性物質分解装置)と、
ポリッシャー装置(混床式イオン交換装置)と、
微粒子分離装置と
を有する超純水製造装置であって、
該触媒樹脂装置の触媒(酸化性物質分解触媒)が、イオン交換樹脂に担持されたパラジウム触媒であり、
過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて低い超純水を得る、超純水製造装置。」の発明(以下、「甲第2号証記載の発明」という。)が開示されている。

VI.対比・判断
本件特許発明と甲第1号証記載の発明とを対比する。
甲第1号証記載の発明の「紫外線酸化装置26」、「酸化性物質分解装置27」、「膜式脱気装置50」、「カートリッジポリッシャ(混床式イオン交換装置)28」、「微粒子分離膜装置」は、
本件特許発明の「紫外線酸化装置」、「酸化性物質分解装置」、「脱気装置」、「混床式イオン交換装置」、「微粒子分離膜装置」にそれぞれ相当する。

上記より、本件特許発明と甲第1号証記載の発明とは、
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置と、
酸化性物質分解装置と、
脱気装置と、
混床式イオン交換装置と、
微粒子分離膜装置と
を有し、この順に通水可能とした超純水製造装置。」という点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点>
本件特許発明では、「酸化性物質分解触媒が、二酸化チタン、アルミナ、活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂に担持された、パラジウム触媒又は白金触媒である」「触媒式」酸化性物質分解装置であるのに対して、
甲第1号証記載の発明では、「吸着剤が、合成炭素系粒状吸着剤である」酸化性物質分解装置である点。

<相違点>について検討する。
上記(V-1)(V-2)より、甲第1、2号証記載の発明は、
「185nm付近の波長を有する紫外線を照射する紫外線酸化装置と、
酸化性物質分解装置と、
混床式イオン交換装置と、
微粒子分離装置と
を有する超純水製造装置であって、
過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて低い超純水を得る、超純水製造装置。」という点で共通している。
さらに、甲第1号証には、上記(V-1)(10)で示したように、「過酸化水素と溶存酸素(DO)によるカートリッジポリッシャ28の酸化劣化を防止する」こと、つまり、「過酸化水素と溶存酸素(DO)によるイオン交換樹脂の酸化劣化を防止する」ことが記載されているということができ、
一方、甲第2号証には、上記(V-2)(29)で示したように、「過酸化水素によるイオン交換樹脂と脱気膜の酸化劣化を防止する・・・」ことが記載されているということができ、
これらからして、甲第1、2号証記載の発明は、「酸化性物質(過酸化水素、溶存酸素(DO))による部材(イオン交換樹脂、脱気膜)の酸化劣化を防止する」という点でも共通している。
そうすると、甲第1号証記載の発明の「酸化性物質分解装置27と、膜式脱気装置(脱気装置)50」および「酸化性物質分解装置27の吸着材が、合成炭素系粒状吸着材であ」ることについて、上記の点で共通する甲第2号証記載の発明の「酸素を発生させずに過酸化水素を完全に除去する、パラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置(「触媒式」酸化性物質分解装置)14」および「触媒樹脂装置14の触媒(酸化性物質分解触媒)が、イオン交換樹脂に担持されたパラジウム触媒であ」ることを適用してこれに代えることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、上記(v-2)によれば、
甲第2号証記載の発明の実施例3(【表3】【図3】等)では、「酸素を発生させずに過酸化水素を完全に除去する、パラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置(「触媒式」酸化性物質分解装置)14」から出た、溶存酸素(DO)濃度が0.8ppbであると共にH_(2)O_(2)濃度が0.00ppmである被処理水をポリッシャー装置(混床式イオン交換装置)12に送り、
同実施例2(【表2】【図2】等)では、「膜脱気装置11」から出た、溶存酸素(DO)濃度が0.5ppbであると共にH_(2)O_(2)濃度が0.00ppmである被処理水をポリッシャー装置12に送っており、
また、甲第1、2号証記載の発明は、「過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度が極めて低い超純水を得る、超純水製造装置」であり、そうである以上、過酸化水素濃度とTOC濃度と溶存酸素(DO)濃度をさらに低くしたいとの技術的思想を内包するものであるとみるのが妥当である。
そうすると、上記のように、甲第1号証記載の発明について、「酸素を発生させずに過酸化水素を完全に除去する、パラジウムを担持した触媒樹脂が充填された触媒樹脂装置(「触媒式」酸化性物質分解装置)14」および「触媒樹脂装置14の触媒(酸化性物質分解触媒)が、イオン交換樹脂に担持されたパラジウム触媒であ」ることに代えたとき、
「触媒式」酸化性物質分解装置から出た、溶存酸素(DO)濃度が0.8ppbであると共にH_(2)O_(2)濃度が(H_(2)O_(2)による脱気膜の酸化劣化を生じさせない)0.00ppmであるとみることができる被処理水について、これの溶存酸素(DO)濃度をさらに低くするために、上記被処理水を膜脱気装置(脱気装置)11に送って処理して溶存酸素(DO)濃度が0.5ppbであると共にH_(2)O_(2)濃度が0.00ppmである被処理水にする、つまり、「触媒式」酸化性物質分解装置のすぐ下流に「脱気装置」を配置し、「脱気装置」から出た被処理水をカートリッジポリッシャ28(ポリッシャー装置12)に送ることは、当業者であれば適宜決定する設計的事項であるということができる。
そして、酸素を発生させずに過酸化水素を完全に除去する、パラジウムを担持した「触媒式」酸化性物質分解装置のすぐ下流に「脱気装置」を配置し、「脱気装置」から出た被処理水をカートリッジポリッシャ(混床式イオン交換装置)28に送るとき、「脱気装置」から出た被処理水の溶存酸素(DO)濃度は、上記で示したように、「脱気装置」を配置しないときと比べてより低減し、また、H_(2)O_(2)濃度は0.00ppmになっていることから、上記(V-1)(5)の「【0021】・・・溶存酸素や過酸化水素によるカートリッジポリッシャ28の酸化劣化を有効に防止できない。」および上記(V-2)(14)の「【0010】・・・リークした過酸化水素が後段に設置されたポリッシャー装置(イオン交換装置)内部のイオン交換樹脂を酸化劣化させることによりイオン交換樹脂から微細な樹脂の破片や有機物等が発生し、ポリッシャー装置(イオン交換装置)を通過した被処理水中のTOC濃度が、二次系システムにおいて処理する以前の一次純水に比べて上昇し・・・リークした過酸化水素がポリッシャー装置(イオン交換装置)内部のイオン交換樹脂を酸化劣化させる際、一部の過酸化水素が酸素と水とに分解されることにより、ポリッシャー装置(イオン交換装置)を通過した被処理水中の溶存酸素濃度が、二次系システムにおいて処理する以前の一次純水に比べて上昇し・・・」というようなことの発生がより抑制される、つまり、TOC濃度と溶存酸素(DO)濃度をさらに低減させることができることは、当業者であれば甲第1、2号証記載の発明から十分に予測し得ることである。
よって、本件特許発明は、甲第1、2号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

VII.むすび
以上のとおりであるので、本件特許発明は、甲第1、2号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2011-12-26 
出願番号 特願2001-10433(P2001-10433)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富永 正史  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 斉藤 信人
中澤 登
登録日 2010-07-23 
登録番号 特許第4552327号(P4552327)
発明の名称 超純水製造装置  
代理人 安國 忠彦  
代理人 早川 裕司  
代理人 磯田 志郎  
代理人 永島 孝明  

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