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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1269404
審判番号 不服2011-13279  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-22 
確定日 2013-01-30 
事件の表示 特願2002-508101「位置決定のための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年1月10日国際公開、WO02/03093、平成16年1月29日国内公表、特表2004-502942〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)は、2000年(平成12年)6月30日にフィンランド共和国でされた特許出願に基づくパリ条約の優先権を主張して、平成13年7月2日にされた国際特許出願である。そして、平成14年12月27日付けの手続補正及び平成22年5月6日付けの手続補正により特許請求の範囲についての補正がされ、平成23年2月17日付けで拒絶査定がされ、同年同月22日に査定の謄本が送達された。これに対して、同年6月22日に拒絶査定不服審判が請求された。

2.本願に係る発明
本願の請求項1から70までのそれぞれに係る発明は、平成22年5月6日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1から70までのそれぞれに記載された事項によって特定されるとおりのものである。特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
端末装置において、
複数のアプリケーション・プログラムのうち、特定の1つから前記端末装置の測位データの要求を受け取るステップと、
使用する測位方法を選択するための少なくとも1つの条件を、前記複数のアプリケーション・プログラムのうち、前記特定の1つから受け取るステップと、
前記複数のアプリケーション・プログラムのうち、前記特定の1つが使用するように、複数の測位方法から少なくとも1つの選択条件を満たす測位データを提供することができる測位方法を選択するステップと、
前記の選択した測位方法によって生成された測位データを受け取るステップと、
前記生成された測位データを前記複数のアプリケーション・プログラムのうち、前記特定の1つに提供するステップと、
を有する方法。」

3.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略以下のとおりである。

「本願の請求項1から70までのそれぞれに係る発明は、いずれも、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明及び刊行物2や刊行物3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:アメリカ合衆国特許第6002936号明細書
(発行日:1999年(平成11年)12月14日)
刊行物2:特開2000-102058号公報
(公開日:平成12年4月7日)
刊行物3:国際公開第99/61934号」

4.刊行物に記載された事項
(1)刊行物1
刊行物には、以下の記載がある。原文の引用の後に記載したのは、当審で作成した日本語訳である。

ア.第1欄第9行から第14行まで
「The present invention relates generally to telecommunications
systems and methods for determining the location of a mobile
terminal within a cellular network, and specifically to determining
the optimum positioning method based upon available network
positioning methods and positioning capabilities of the mobile
terminal itself.」
「この発明は、一般的には、携帯電話ネットワーク内の移動端末の位置を決定するための通信システム及び通信方法に関するものであり、具体的には、利用可能なネットワーク測位方法及び移動端末それ自身の測位機能に基づいて最適測位方法を決定することに関するものである。」

イ.第2欄第21行から第31行まで
「As can be seen in FIG. 2 of the drawings, upon a network
positioning request, the Base Station System (BSS) (220 and 240)
serving the MS 200 generates positioning data, which is delivered to
the Mobile Switching Center (MSC) 260. This positioning data is then
forwarded to a Mobile Positioning Center (MPC) 270 for calculation
of the geographical location of the MS 200. The location of the MS
200 can then be sent to the application 280 that requested the
positioning. Alternatively, the requesting application 280 could be
located within the MS 200 itself or within the network (MSC/VLR
260).」
「図面の図2に示されるように、ネットワーク測位要求に応じて、MS(当審注:移動局)200を受け持つ基地局システム(BSS)(220及び240)が測位データを生成し、それが移動切り替えセンター(MSC)260に配信される。この測位データは、MS200の地理的な位置を計算するために移動測位センター(MPC)270に転送される。MS200の位置は、測位要求を出したアプリケーション280に送信される。あるいは、要求を出すアプリケーション280は、MS200それ自身の中に、又はネットワーク(MSC/VLR260)の中に配置することができる。」

ウ.第3欄第15行から第25行まで
「Alternatively, the MS 200 itself can position itself within the
cellular network 205. For example, the MS 200 can have a Global
Positioning System (GPS) receiver built into it, which is used to
determine the location of the MS 200. In addition, the MS 200 can
collect positioning data based on the Observed Time Difference (OTD)
between the time a BTS 220 sends out a signal and the time the MS
200 receives the signal. This time difference information can be
sent to the MPC 270 for calculation of the location of the MS 200,
or the MS 200 itself, with knowledge of the location of the BTS 220,
can determine it's location.」
「あるいは、MS200それ自身が携帯電話ネットワーク205内でそれ自身を測位してもよい。例えば、MS200は、それ自身の位置を決定するために使用される全地球測位システム(GPS)受信機が組み込まれていてもよい。さらに、MS200は、BTS(当審注:基地トランシーバー局)220が信号を送信した時刻とMS200がその信号を受信した時刻との間の観測された時間差(OTD)に基づく測位データを収集してもよい。この時間差情報は、MS200の位置を計算するためにMPC270に送信してもよいし、又は、MS200それ自身が、BTS220の位置に関する知識を用いて、それ自身の位置を決定してもよい。」

エ.第4欄第41行から第59行まで
「With reference now to FIG. 3 of the drawings, when a Requesting
Application (RA) 380 sends a positioning request for a particular
Mobile Station (MS) 300 to a Mobile Positioning Center (MPC) 370
serving the Location Area (LA) 305 that the MS 300 is currently
located in, the RA 380 can also include quality of service
information, such as the data rate and/or the reliability of the
positioning information returned by the cellular network (MPC 370)
performing the positioning. In order to meet these quality of
service demands, the MPC 370 must choose the optimum positioning
method available. Positioning methods can be network-based, e.g.,
Timing Advance (TA) method, Time of Arrival (TOA) method, or Angle
of Arrival (AOA) method, or terminal-based, e.g., Global Positioning
System (GPS) method, Observed Time Difference (OTD) method, or
Enhanced OTD method. In order for the MPC 370 to have knowledge of
the terminal-based positioning methods, this information must be
sent to the MPC 370 prior to receiving a positioning request.」
「図面の図3を参照すると、要求を出すアプリケーション(RA)380が、特定の移動局(MS)300のための測位要求を、そのMS300が現在位置しているロケーションエリア(LA)305を受け持つ移動測位センター(MPC)370に送信するとき、RA380は、データレート及び/又は測位を実行する携帯電話ネットワーク(MPC370)によって返される測位情報の信頼性のような、サービスの質についての情報も含めることができる。これらのサービスの質についての要求に応じるために、MPC370は、利用可能な最適測位方法を選択しなければならない。測位方法は、例えばタイミングアドバンス(TA)法、到着時間(TOA)法、又は到着方位(AOA)法のような、ネットワークベースのものでもよいし、例えば全地球測位システム(GPS)法、観測された時間差(OTD)法、又は拡張OTD法のような、端末ベースのものでもよい。MPC370が端末ベースの測位方法の知識を有するようにするために、この情報は、測位要求を受ける前にMPC370に送信しなければならない。」

オ.第5欄第23行から第29行まで
「Once the MSC/VLR 350 receives the terminal-based positioning
methods, this information can be sent to the serving MPC 370 for
later use in determining the optimum positioning method. However, it
should be understood that the MPC 370 could be co-located with the
MSC/VLR 350, and thus the information would not need to be sent to a
separate node.」
「ひとたびMSC/VLR(当審注:移動切り替えセンター/訪問者位置登録装置)350が端末ベースの測位方法を受信したら、この情報は、最適測位方法の決定に後ほど使用するために、受け持ちのMPC370に送信されてもよい。しかしながら、MPC370は、MSC/VLR350と同じ場所に配置されてもよいことが理解されるべきであり、したがって、その場合は、上述の情報は別のノードに送信しなくてもよい。」

カ.第5欄第30行から第44行まで
「With reference now to FIG. 4 of the drawings, after the classmark
information 310, including the MS 300 positioning capabilities, has
been sent to the MSC/VLR 350 (step 400) and forwarded to the MPC 370
(step 410), when a positioning request comes in to the MPC 370 (step
420), the MPC 370 must then determine the optimum positioning method
based upon the available network-based and terminal-based
positioning methods and the quality of service requested by the RA
380 (step 425). Once the positioning method has been chosen, e.g.,
either a network-based or a terminal-based method (step 425), the
positioning request, along with the positioning method, is sent to
the serving MSC/VLR 350 (steps 430 and 440). The serving MSC/VLR 350
then forwards the positioning request to a serving Base Station
Controller (BSC) 340 (steps 435 and 445).」
「図面の図4を参照すると、MS300の測位機能を含むクラスマーク情報310がMSC/VLR350に送信され(ステップ400)、MPC370に転送された(ステップ410)後、測位要求がMPC370に入ってくる(ステップ420)と、MPC370は、利用可能なネットワークベース及び端末ベースの方法とRA380によって要求されたサービスの質とに基づいて、最適測位方法を決めなければならない(ステップ425)。ひとたび測位方法が、例えばネットワークベース及び端末ベースの一方に選択される(ステップ425)と、測位要求は、その測位方法とともに受け持ちのMSC/VLR350に送信される(ステップ430及び440)。受け持ちのMCS/VLR350は、測位要求を受け持ちの基地局制御装置(BSC)に転送する(ステップ435及び445)。」

キ.第5欄第50行から第67行まで
「If the positioning method is a network-based positioning method
(step 425), the BSC 340 then obtains positioning data from at least
a serving Base Transceiver Stations (BTS) 320 (step 450) (although
typically three BTS's 320 are used), and sends this positioning data
to the MPC 370 (step 455) via the MSC/VLR 350 for calculation of the
location of the MS 300 (step 460). However, if the positioning
method is a terminal-based positioning method (step 425), the BSC
340 sends the positioning request to the MS 300 via the serving BTS
320 (step 470), the MS 300 collects the positioning data (step 475),
and if the MS 300 has calculation abilities (step 480), the MS 300
determines it's location (step 485). However, if the MS 300 does not
have the ability to calculate it's location based upon the
positioning data obtained (step 480), the MS 300 forwards the
positioning data to the MPC 370 via the BSC 340 and the MSC/VLR 350
(step 490) for calculation of the MS 300 location (step 495).」
「測位方法がネットワークベースの測位方法である場合(ステップ425)は、BSC340は、少なくとも受け持ちの基地トランシーバー局(BTS)320から(ただし、通常は3つのBTS320が使用される)測位データを取得し(ステップ450)、その測位データを、MS300の位置を計算する(ステップ460)ためにMSC/VLR350経由でMPC370に送信する(ステップ455)。一方、測位方法が端末ベースの測位方法である場合(ステップ425)は、BSC340は、測位要求を、受け持ちのBTS320経由でMS300に送信し(ステップ470)、MS300が測位データを収集し(ステップ475)、MS300が計算能力を有している場合(ステップ480)は、MS300がそれ自身の位置を決定する(ステップ485)。しかし、MS300が、取得した測位データに基づいてそれ自身の位置を計算する能力を有しない場合(ステップ480)は、MS300は、その測位データを、MS300の位置を計算する(ステップ495)ためにBSC340及びMSC/VLR350経由でMPC370に転送する(ステップ490)。」

ク.第6欄第48行から第50行まで
「Finally, the TA value acquired from the target BTS 230 (TA3),
together with other TA values (TA1 and TA2) are forwarded to the
serving Mobile Positioning Center (MPC) 270 from the MSC/VLR 260
(step 590), where the location of the MS 200 is determined using the
triangulation algorithm (step 595). The MPC 270 then presents the
geographical position of the MS 200 to the Requesting Application
(node) 280 (step 598).」
「最後に、目標BTS230から取得されたTA値(TA3)は、他のTA値(TA1及びTA2)とともに、MSC/VLR260から受け持ちの移動測位センター(MPC)270に転送され(ステップ590)、そこで三角測量アルゴリズムを用いてMS200の位置が決定される(ステップ595)。MPC270は、MS200の地理的位置を、要求を出したアプリケーション(ノード)280に提示する(ステップ598)。」

刊行物1には、アプリケーションからの測位要求に応じて携帯電話ネットワーク内の移動局(移動端末)の位置を決定するための方法が記載されている(上記ア.参照)。
アプリケーションは、移動局の中に配置されてもよい(上記イ.参照)。また、アプリケーションは、特定の移動局についての測位要求を出すときに、サービスの質についての情報をその測位要求に含めることができるが、サービスの質についての情報とは、例えば要求への応答として得られる測位情報の信頼性である(上記エ.参照)。そして、アプリケーションが出した測位要求及びサービスの質についての情報は、移動測位センターに送信される(上記エ.参照)から、移動測位センターは、測位要求及びサービスの質についての情報を受け取っている。
移動局は、例えばGPS受信機が組み込まれていて、端末ベースの測位方法を実施することができる(上記ウ.参照)。そして、移動局が端末ベースで実施可能な測位方法についての情報も、移動測位センターに送信される(上記エ.及びオ.参照)。
一方、移動測位センターは、サービスの質についての要求に応じるために、利用可能な測位方法の中から最適な測位方法を選択する(上記エ.及びカ.参照)。利用可能な測位方法には、例えばTA法、TOA法又はAOA法のようなネットワークベースの測位方法と、例えばGPS法、OTD法又は拡張OTD法のような端末ベースの測位方法とが含まれる(上記エ.参照)。最適なものとして選択された測位方法がネットワークベースの測位方法である場合、測位要求は受け持ちの基地局制御装置に転送され、基地局制御装置が測位データを収集し、それに基づいて移動局の地理的位置を計算する。これに対し、最適なものとして選択された測位方法が端末ベースの測位方法である場合、測位要求は移動局に転送され、移動局が測位データを収集する。移動局は、計算能力を有している場合には、収集した測位データに基づいてその移動局自体の地理的位置を計算し、計算能力を有していない場合には、収集した測位データを移動測位センターに転送し、移動測位センターが移動局の地理的位置を計算する(上記キ.参照)。
計算の結果得られた移動局の地理的位置は、測位要求を出したアプリケーションに提示される(上記イ.及びク.参照)。

以上のことをまとめると、刊行物1には、アプリケーションからの測位要求に応じて携帯電話ネットワーク内の移動局(移動端末)の位置を決定するための方法に関し、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「移動測位センターが、移動局の中に配置されたアプリケーションから、前記移動局についての測位要求を受け取るステップと、
前記移動測位センターが、前記アプリケーションから、サービスの質についての要求を受け取るステップと、
前記移動測位センターが、前記サービスの質についての要求に応じるために、ネットワークベース及び端末ベースの測位方法を含む複数の利用可能な測位方法の中から最適な測位方法を選択するステップと、
前記最適な測位方法を用いて前記基地局制御装置又は前記移動局が計算した前記移動局の地理的位置を受け取るステップと、
前記地理的位置を前記アプリケーションに提示するステップと、
を有する方法。」

(2)刊行物2
刊行物2には、以下の記載がある。

ア.段落0002から0009まで
「【0002】
【従来の技術】従来の位置情報利用端末は、GPS位置検出、PHS位置検出等、単一の位置検出手段を持つものが通例である。あるいは、複数の位置検出手段を持つものでも、一方の位置検出ができない場合の補助的な役割や、主要な位置検出の精度補正といった補助手段にとどまっていた。
【0003】最近、室内空間においても位置検出の見通しが立ったことにより、複数の位置検出手段を合せ持ち、場所に応じて、あるいは検出精度に応じて利用可能な手段を適宜選択することが可能となりつつある。
【0004】…(略)…
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、異なる条件(室外、室内)、異なる精度の位置情報検出手段を統合し、比較評価することにより、一つの位置情報を得ることにある。これらの情報をアプリケーションから利用しやすい形式に変換することも可能である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の第一の特徴は複数の異なる位置検出手段を持つことにある。たとえば、室外におけるGPS、PHS、室内におけるPHS、赤外線、微弱電波の各方式である。これらの各方式は、その特性から、利用範囲、位置検出精度、端末側設備(GPSアンテナ等)にかかるコスト、通信に伴うコスト等が異なる。
【0007】異なる方法で得られた位置情報を、以下の3点の特性で把握する。
・現在地点で入手可能か
・位置検出の精度
・位置検出にかかるコスト
【0008】評価の結果から最善のものを選択する論理をもつか、または、利用者への問合せを行うこと。
【0009】結果として得られた位置情報を、統一フォーマットに変換し、各種のアプリケーションプログラムで処理可能とすること。」

イ.段落0011から0014まで
「【0011】
【発明の実施の形態】システム全体のイメージを図1に示す。
【0012】移動端末1は、異なる複数の位置検出機構を持つものとする。この例では、GPS位置検出、微弱無線による位置検出、赤外線の受信による位置検出の3方式を持つものとする。
【0013】移動端末利用者は、屋外のGPS利用可能部分では、GPSによる位置検出を行う。さらに地域コミュニティエリアなどの、微弱無線によるサービスが受けられる場所においては、GPSより高精度の位置情報を検出する。さらに屋内空間においては、赤外線による位置検出サービスが受けられるエリアでは、これを利用する、という例である。
【0014】この場合、位置の違いにより利用する検出手段が異なっているが、各検出手段のカバーするエリアは重複が生じる。すなわち、同一地点で複数の位置検出が可能であることが一般的である。…(略)…」

ウ.段落0016から0018まで
「【0016】移動端末のハードウェア構成を図2に示す。
【0017】移動端末1の中には、異なる位置検出装置6(例として、A方式、B方式、C方式とする)がある。検出結果は形式変換装置7により統一形式に直したうえで、制御装置8から制御され、必要に応じて取り出されることとなる。
【0018】制御装置8には、記憶装置9に格納されている評価基準となるデータ(評価テーブル)を利用して、選別を行う。この時、必要なら入出力装置10を介して、利用者に確認メッセージを送り、承認を得ることもできる。」

エ.段落0019から0026まで
「【0019】次に、位置情報選択における動作をブロック図(図3)に示す。
【0020】複数の位置検出方式のうち、コストがゼロのものについて、位置検出を行う。(11)
【0021】なお、これらの情報の形式は統一形式に変換する。(12)
【0022】これらの中で最も高い検出精度が得られるデータがあれば、そのデータをそのまま採用する。(13)
【0023】もしコストと精度的により良いデータが別の方法で検出可能であり、しかもその地点で利用可能であれば、初期設定の基準(たとえば精度優先、利用者に確認等)に従って、この検出を実行する。(14、14-1)
【0024】ここで得られたデータも統一形式へ変換し(14-2)、最終的な比較を行う。(15)
【0025】その結果を一つ選択する。(16)
【0026】この値をアプリケーションプログラムに引き渡し、サービスを提供する。(17)」

オ.段落0031から0034まで
「【0031】いずれにしても、各方式を比較する場合、常に現在位置での評価テーブルを参照して判断することが重要である。つまり動的な評価テーブルの更新と動的な判断を行う必要がある。
【0032】比較方法の決定の具体例方法を図5で説明する。
【0033】図5には、現在地点で利用可能な各方式で得られる精度とコストについて、各方式の範囲を座標空間に表示している。
【0034】利用者から指定されている条件はたとえば次のとおりである。
・精度優先(最高の精度が得られる方法を選択し、コストは度外視する)
・コスト優先(最低のコストの方法を選択し、精度は度外視する)
・上記の中間的な複合条件を判断する
・利用者問合せ(0より大きいコストがかかる場合は、必ず利用者の事前確認を取る)」

刊行物2には、互いに異なる複数の位置情報検出手段を持つ位置情報利用端末が記載されている(上記イ.及びウ.参照)。
この位置情報利用端末は、検出した位置情報を各種のアプリケーションプログラムで処理可能にしている(上記ア.、特に段落0009参照)から、この位置情報利用端末で実行可能なアプリケーションプログラムは、複数種類用意されている。
また、この位置情報利用端末は、その端末が具備する互いに異なる複数の位置情報検出方式の中から、その時点における評価条件に照らして最善の方式で取得した位置情報をアプリケーションプログラムに提供している(上記ア.、エ.及びオ.参照)。

以上のことをまとめると、刊行物2には、以下の技術事項が記載されている。

(技術事項1)
「位置情報利用端末において、実行可能なアプリケーションプログラムを複数種類用意する。」

(技術事項2)
「位置情報利用端末において、その端末が具備する互いに異なる複数の位置検出方式のうち、その時点における評価条件に照らして最善の方式で取得した位置情報をアプリケーションプログラムに提供する。」

5.対比
本願発明と引用発明とを比較すると、以下のとおりである。

引用発明の「移動局」は、本願発明の「端末装置」に相当する。

引用発明の「移動局の中に配置されたアプリケーション」と本願発明の「複数のアプリケーション・プログラムのうち、特定の1つ」とは、「端末装置に配置されたアプリケーション・プログラム」である点で共通する。引用発明の「前記移動局についての測位要求」は、本願発明の「前記端末装置の測位データの要求」に相当する。
したがって、引用発明の「移動測位センターが、移動局の中に配置されたアプリケーションから、前記移動局についての測位要求を受け取るステップ」と、本願発明の「端末装置において、複数のアプリケーション・プログラムのうち、特定の1つから前記端末装置の測位データの要求を受け取るステップ」とは、全体として、「端末装置に配置されたアプリケーション・プログラムから前記端末装置の測位データの要求を受け取るステップ」である点で共通する。

引用発明の「サービスの質についての要求」は、それに応じるために最適な測位方法が選択されていることから、本願発明の「使用する測位方法を選択するための少なくとも1つの条件」に相当する。
したがって、引用発明の「前記移動測位センターが、前記アプリケーションから、サービスの質についての要求を受け取るステップ」と、本願発明の「端末装置において、…使用する測位方法を選択するための少なくとも1つの条件を、前記複数のアプリケーション・プログラムのうち、前記特定の1つから受け取るステップ」とは、「使用する測位方法を選択するための少なくとも1つの条件を前記アプリケーション・プログラムから受け取るステップ」である点で共通する。

引用発明の「前記移動測位センターが、前記サービスの質についての要求に応じるために、ネットワークベース及び端末ベースの測位方法を含む複数の利用可能な測位方法の中から最適な測位方法を選択するステップ」と、本願発明の「端末装置において、…前記複数のアプリケーション・プログラムのうち、前記特定の1つが使用するように、複数の測位方法から少なくとも1つの選択条件を満たす測位データを提供することができる測位方法を選択するステップ」とは、「前記アプリケーション・プログラムが使用するように、複数の測位方法から少なくとも1つの選択条件を満たす測位データを提供することができる測位方法を選択するステップ」である点で共通する。

引用発明の「移動局の地理的位置」は、本願発明の「測位データ」に相当し、引用発明の「計算」は、本願発明の「生成」に相当する。
したがって、引用発明の「前記最適な測位方法を用いて前記基地局制御装置又は前記移動局が計算した前記移動局の地理的位置を受け取るステップ」と、本願発明の「端末装置において、…前記の選択した測位方法によって生成された測位データを受け取るステップ」とは、「前記の選択した測位方法によって生成された測位データを受け取るステップ」である点で共通する。

引用発明の「前記地理的位置を前記アプリケーションに提示するステップ」と、本願発明の「端末装置において、…前記生成された測位データを前記複数のアプリケーション・プログラムのうち、前記特定の1つに提供するステップ」とは、「前記生成された測位データを前記アプリケーション・プログラムに提供するステップ」である点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明とは、

「端末装置に配置されたアプリケーション・プログラムから前記端末装置の測位データの要求を受け取るステップと、
使用する測位方法を選択するための少なくとも1つの条件を前記アプリケーション・プログラムから受け取るステップと、
前記アプリケーション・プログラムが使用するように、複数の測位方法から少なくとも1つの選択条件を満たす測位データを提供することができる測位方法を選択するステップと、
前記の選択した測位方法によって生成された測位データを受け取るステップと、
前記生成された測位データを前記アプリケーション・プログラムに提供するステップと
を有する方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
端末に配置されたアプリケーション・プログラムが、本願発明では、「複数のアプリケーション・プログラムのうち、特定の1つ」であるのに対し、引用発明では、どのようなものであるか特定されていない点。

(相違点2)
方法が有する各ステップが、本願発明では、すべて「端末装置において」実行されるのに対し、引用発明では、ステップに応じて「移動測位センター」、「基地局制御装置」及び「移動局」のいずれかにおいて実行される点。

6.判断
相違点についての判断は、以下のとおりである。

(1)相違点1について
引用発明における「アプリケーション」は、測位要求を出し、それに応じて計算された移動局の地理的位置の提示を受けるから、その「アプリケーション」が中に配置された「移動局」は、位置情報利用端末に該当する。
一方、上記4.(2)で述べたとおり、刊行物2には、「位置情報利用端末において、実行可能なアプリケーションプログラムを複数種類用意する。」という技術事項(技術事項1)が記載されている。
引用発明と技術事項1とは、いずれも位置情報利用端末に関するものであるから、引用発明の「移動局」の中に配置される「アプリケーション」を複数種類用意することは、技術事項1に基づいて当業者が容易に思い付くことである。その結果、引用発明において測位要求を出すアプリケーションが「複数のアプリケーション・プログラムのうち、特定の1つ」になることは明らかである。

(2)相違点2について
上記4.(2)で述べたとおり、刊行物2には、「位置情報利用端末において、その端末が具備する互いに異なる複数の位置検出方式のうち、その時点における評価条件に照らして最善の方式で取得した位置情報をアプリケーションプログラムに提供する。」という技術事項(技術事項2)が記載されている。
引用発明と技術事項2とは、いずれも位置情報利用端末に関するものであり、しかも、複数の測位方法(位置検出方式)の中から選択した最適なものを用いて計算した地理的位置(取得した位置情報)をアプリケーション(アプリケーションプログラム)に提供している点でも共通している。
したがって、引用発明の各ステップのうち、「移動測位センター」及び「基地局制御装置」において実行されるものを、「移動局」において実行するように変更することは、技術事項2に基づいて当業者が容易に思い付くことである。

(3)判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明と刊行物2に記載された技術事項1及び2とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.請求人の主張について
請求人は、請求書の「3.1.3.本願発明1と引用文献1-3との対比」において、刊行物1は「ネットワークによる選択とネットワーク・アプリケーションによる制御との組合せを教示しています。これらの二つの面は、絡み合って分離不能です。ネットワーク選択及びネットワーク・アプリケーションの文脈からアプリケーション制御の面を分離することは自明でありません。」と主張している。
しかし、上記4.(1)で述べたとおり、刊行物1には、アプリケーションが移動局の中に配置されてもよいと記載されている(上記4.(1)イ.参照)。
刊行物1に「ネットワークによる選択とネットワーク・アプリケーションによる制御との組合せ」が記載されていることを前提とする請求人の主張は、当を得ない。

8.むすび
本願発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)と刊行物2に記載された技術事項1及び2とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-30 
結審通知日 2012-09-04 
審決日 2012-09-18 
出願番号 特願2002-508101(P2002-508101)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 有軌安高 史朗  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 飯野 茂
▲高▼木 真顕
発明の名称 位置決定のための方法及び装置  
代理人 下道 晶久  
代理人 森 啓  
代理人 青木 篤  
代理人 鶴田 準一  

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