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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1269815
審判番号 不服2012-9550  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-23 
確定日 2013-02-07 
事件の表示 特願2008-286541「発泡充填部材」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月23日出願公開、特開2009- 83497〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年5月6日を出願日とする特願2004-137646号の一部を平成20年11月7日に新たな特許出願としたものであって、平成24年2月21日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成24年5月23日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

2.平成24年5月23日付け手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成24年5月23日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

【理由】
2-1.本件補正
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「構造物の空間を発泡により充填するための発泡充填部材であって、
非発泡材料からなるホルダ部材と、発泡材料からなる発泡基材とを備え、
前記ホルダ部材は、支持板と、前記支持板の周端部において、前記支持板の周方向に沿って互いに所定間隔を隔てて配置される複数の係止部とを備え、
前記発泡基材は、前記支持板の外周面に沿って延び、前記支持板の厚み方向と直交する方向に肉薄な肉薄部と、前記支持板の厚み方向と直交する方向に肉厚な肉厚部とを備えるシート状に形成されており、前記支持板の外周面において支持され、前記支持板の周方向に沿うように前記肉薄部において屈折されるとともに、前記係止部に係止されていることを特徴とする、発泡充填部材。」
とあるのを、
「構造物の空間を発泡により充填するための発泡充填部材であって、
非発泡材料からなるホルダ部材と、発泡材料からなる発泡基材とを備え、
前記ホルダ部材は、支持板と、前記支持板の周端部において、前記支持板の周方向に沿って互いに所定間隔を隔てて配置される複数の係止部とを備え、
前記発泡基材は、前記支持板の外周面に沿って延び、前記支持板の厚み方向と直交する方向に肉薄な肉薄部と、前記支持板の厚み方向と直交する方向に肉厚な肉厚部とを備えるとともに、前記肉薄部が前記支持板の延びる面方向の外側に向かって開放される凹部を備えるシート状に形成されており、前記支持板の外周面において支持され、前記支持板の周方向に沿うように前記肉薄部において屈折されるとともに、前記係止部に係止されていることを特徴とする、発泡充填部材。」
とする補正を含むものである。

補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1の記載において、肉薄部が「支持板の延びる面方向の外側に向かって開放される凹部を備える」ことの限定を付加するものである。また、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.本願補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されたとおりのものと認める。

2-3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である.国際公開第03/004314号(以下、「引用例」という。)には、以下の事項及び引用発明が記載されている(括弧内は日本語訳)。なお、フランス語のアクセント記号付き文字は、「#」と省略して記載した。

(1)「L'invention concerne un dispositif d'isolation acoustique destin# # #tre mont# dans une pi#ce tubulaire, en particulier d'une pi#ce de carrosserie automobile.」(本発明は、筒状部品、特に自動車の車体部品内に取り付けるための防音装置に関する。)(第1頁5?7行参照)

(2)「Un mode de r#alisation du dispositif d'isolation acoustique 10 selon l'invention est illustr# aux figures 2 # 4. Ce dispositif d'isolation 10 est destin# # #tre mont# # l'int#rieur d'une pi#ce tubulaire T, et il comprend au moins un insert de cloisonnement 12, un cordon souple 14 d'une composition apte # s'expanser thermiquement pour former une mousse, et des moyens de retenue 16 du cordon 14 sur le pourtour de l'insert 12, avant l'expansion du cordon.
L'insert de cloisonnement 12 tel qu'illustr# a une forme globalement rectangulaire, sachant que sa forme est conditionn#e par celle de la section int#rieure que pr#sente la pi#ce tubulaire T dans la zone o# l'insert 12 doit #tre mont#.
L'insert de cloisonnement 12 pr#sente une forme en H en section droite avec une partie centrale 12a qui est bord#e sur tout son pourtour par une paroi p#riph#rique 12b qui s'#tend de part et d'autre de la partie centrale 12a. Cette paroi 12b forme un mur pour #viter une expansion du cordon 14 vers l'int#rieur de l'insert 12 et favoriser ainsi son expansion en direction de la paroi int#rieure de la pi#ce tubulaire T. Les moyens de retenue 16 du cordon 14 sont donc situ#s # l'ext#rieur de la paroi p#riph#rique 12b.
Par ailleurs, l'insert 12 pr#sente des dimensions ext#rieures qui sont inf#rieures # celles de la section int#rieure de la pi#ce tubulaire T, de mani#re # pouvoir rapporter le cordon 14 d'une part, et m#nager un espace p#riph#rique (figure 3) qui sera ensuite combl# par la mousse (figure 4) r#sultant de l'expansion par effet thermique du cordon 14 d'autre part.
Les moyens de retenue 16 du cordon 14 ont pour fonction de maintenir le cordon 14 au cours des op#rations de manipulation et de montage de l'insert, sachant que l'expansion par voie thermique du cordon n'interviendra qu'ult#rieurement lors de l'op#ration de mise en peinture de la caisse du v#hicule o# la temp#rature de l'ordre de 150℃ # 200℃ sera suffisante pour assurer son expansion. Le cordon 14 est avantageusement fabriqu# par extrusion sous la forme d'un profil# sensiblement rectiligne sans mise en forme particuli#re, et les moyens de retenue 16 ont #galement pour fonction d'assurer la mise en forme du cordon 14 sur le pourtour de l'insert de cloisonnement 12.」(本発明の防音装置10の一つの具体例が、図2乃至図4に示されている。この防音装置10は、筒状部品Tの内側に取り付けるためのものであり、また、少なくとも1つの仕切用インサート12、発泡体を形成するように熱的に膨張するのに適した組成物からなる可撓性のコード14、及びコードの膨張前に該コードをインサート12の周縁部に保持するための保持手段16を有している。
図示されている仕切用インサート12は、全体の形状において略長方形をしており、その形状は、インサート12が取り付けられるべき箇所に筒状部品Tによって与えられる内部セクションの形状に従ったものであることが、理解される。
かかる仕切用インサート12は、中心部12aの両側部で延びている周壁12bによって周囲全体の境界を成す中心部12aを備えた、H字状の横断面を与えている。この壁12bは、コード14が、インサート12の内側に向かって膨張するのを防ぐためのバリアを形成し、それによって、それが筒状部Tの内壁に向かって膨張するのを促している。コード14を保持するための手段16は、それ故、周壁12bの外側に位置せしめられている。
インサート12は、また、筒状部品Tの内部セクションの寸法よりも小さい外寸法を与えており、それは、第一に、コード14がそこに固定され得るようにするためであり、また第二には、熱効果によるコード14の膨張の結果として、後に発泡体(図4)が充填される周縁部のギャップ(図3)を残すためである。
コード14のための保持手段16は、インサートの取扱い及び取付け作業の間に、コード14を保持する役割を果たし、コードは、車体の塗装作業中に、その結果としてのみ、熱によって膨張せしめられるものであり、その際、約150℃乃至200℃の温度であれば、膨張を惹起するのに十分である。コード14は、特別な成形することなく、実質的に直線状であるロッドの形状に押出し成形して作成することが好ましく、また保持手段16は、仕切用インサート12の周縁部の周りでコード14を成形する役割も果たす。)(第4頁30行?第5頁30行参照)

(3)「Le cordon 14 est avantageusement r#alis# # partir d'un caoutchouc synth#tique vulcanisable du type butyle, butyle halog#ne ou nitrile, en polychloropr#ne ou en EPDM par exemple, c'est-#-dire en une mati#re autre qu'un thermoplastique. En section droite, le cordon 14 peut avoir une forme quelconque, le plus souvent carr#e ou circulaire.」(コード14は、好適には、例えば、ブチル、ハロゲン化ブチル、若しくはニトリル系の加硫可能な合成ゴムのマスチック、ポリクロロプレン又はEPDM製である、つまり、熱可塑性材料以外の材料である。横断面において、コード14は、任意の形状とすることができるが、通常は、正方形又は円形である。)(第7頁3?7行参照)

(4)図2には、複数の保持手段16が仕切用インサート12の周壁12bの周方向に沿って互いに所定間隔を隔てて配置されていることが記載されている。

以上の記載によると、引用例には、
「筒状部品Tの内側に取り付けるための防音装置10であって、
防音装置10は、少なくとも1つの仕切用インサート12、発泡体を形成するように熱的に膨張するのに適した組成物からなる可撓性のコード14、及びコードの膨張前に該コードをインサート12の周縁部に保持するための保持手段16を有し、
仕切用インサート12は、周壁12bによって周囲全体の境界を成す中心部12aを備え、複数の保持手段16が仕切用インサート12の周壁12bの周方向に沿って互いに所定間隔を隔てて配置され、
保持手段16は、仕切用インサート12の周縁部の周りでコード14を成形する防音装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2-4.対比
本願補正発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「筒状部品」、「仕切用インサート」、「保持手段」及び「防音装置」は、それぞれ本願補正発明の「構造物」、「支持板」、「係止部」及び「発泡充填部材」に相当し、
引用発明の「コード」は、発泡体を形成するように熱的に膨張するのに適した組成物からなることから、本願補正発明の「発泡基材」に相当し、また、仕切用インサートの周方向に沿うように屈折されていることは明らかであり、
引用発明の「仕切用インサート」及び「保持手段」は、本願補正発明の「ホルダ部材」を構成し、また、非発泡材料からなることは明らかであることから、両者は、
「構造物の空間を発泡により充填するための発泡充填部材であって、
非発泡材料からなるホルダ部材と、発泡材料からなる発泡基材とを備え、
前記ホルダ部材は、支持板と、前記支持板の周端部において、前記支持板の周方向に沿って互いに所定間隔を隔てて配置される複数の係止部とを備え、
前記発泡基材は、前記支持板の外周面に沿って延び、前記支持板の外周面において支持され、前記支持板の周方向に沿うように屈折されるとともに、前記係止部に係止されている発泡充填部材。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点;本願補正発明では、発泡基材は、支持板の厚み方向と直交する方向に肉薄な肉薄部と、前記支持板の厚み方向と直交する方向に肉厚な肉厚部とを備えるとともに、前記肉薄部が前記支持板の延びる面方向の外側に向かって開放される凹部を備えるシート状に形成され、前記肉薄部において屈折されているのに対し、引用発明では、コードは、そのような肉薄部を備えていなく、また、形状は特定されていない点。

2-5.判断
そこで、上記相違点を検討すると、
本願補正発明が発泡基材における「シート状」とは、本願明細書の「この発泡基材3は、細長いシート状をなし、・・・その幅が、一方側挟持片8の保持片部7の基端部と、他方側挟持片9の保持片部7の基端部との間の間隔と、ほぼ等しいかそれより小さい、3.0?20.0mm、好ましくは、5.0?15.0mmに形成されている。また、その厚みは、例えば、0.5?6.0mm、好ましくは、1.5?4.0mmに設定されている。」(段落【0034】)との記載及び図1の記載からすると、断面形状が長方形のものということができるが、特別な形状とは認められず、また、引用例の上記記載事項(3)に「コード」は任意の形状とすることができる旨も記載されていることから、引用発明のコードの形状を、シート状となすことは、当業者が容易になし得たものと認められる。
そして、各種部材を屈曲して用いる場合に、当該部材の屈曲部に切り込み等の肉薄部を設けて屈曲性をよくすることは、例えば、特開平6-263138号公報、実願平1-62915号(実開平3-1027号)のマイクロフィルム、特開平11-59656号公報、特開2001-353836号公報に記載されているように、技術分野にかかわらず周知慣用技術であること、また、引用発明のコードにおいても、断面積または剛性が大きいこと等により屈曲性が悪い場合には、これを解決して屈曲性をよくすることは当業者にとって自明な課題と認められることから、引用発明のコードにおいて、屈曲性をよくするために上記周知慣用技術を適用して切り込み等の肉薄部を設けることは、当業者が設計上適宜になす程度のことと認められる。また、その際に切り込み等を屈曲部の内側に設けるか外側に設けるかは、設計上適宜に選択し得る事項であり、さらに、切り込み等を屈曲部の外側に設けた場合、屈曲されると外側に開放される凹部が形成されることは、技術常識である(例えば、上記特開平11-59656号公報の図2(b)参照)。
よって、引用例のコードを、上記相違点の本願補正発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
2-6.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成24年5月23日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年9月7日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正前の請求項1参照)により特定されるとおりのものと認める。

4.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項及び引用発明は、前記「2-3.引用発明」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記「2-2.本願補正発明」で検討した本願補正発明から、肉薄部が「支持板の延びる面方向の外側に向かって開放される凹部を備える」ことの限定を省いたものである。

そうすると、本願発明を特定するための事項をすべて含み、さらに他の事
項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2-4.対比」及び「2-5.判断」に記載したとおり引用発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、平成24年10月18日付け回答書において、本願補正発明を「製造方法」とする補正案を示しているが、上述したように各種部材を屈曲して用いる場合に、当該部材の屈曲部に切り込み等の肉薄部を設けて屈曲性をよくすることは、技術分野にかかわらず周知慣用技術であること、また、上記周知慣用技術を引用発明に適用した際に、その製造における作用効果についても当業者が容易に想到しうる程度のものであり、格別なものとは認められないことより、上記補正がなされたとしても結論に変更はない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-28 
結審通知日 2012-12-04 
審決日 2012-12-18 
出願番号 特願2008-286541(P2008-286541)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B29C)
P 1 8・ 121- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 健一  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 河原 英雄
熊倉 強
発明の名称 発泡充填部材  
代理人 岡本 寛之  

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