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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1270023 |
審判番号 | 不服2005-23932 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-12 |
確定日 | 2013-03-05 |
事件の表示 | 特願2000-558803「バルサルタンとカルシウムチャンネルブロッカーの抗高血圧組合わせ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月20日国際公開、WO00/02543、平成14年 7月 9日国内公表、特表2002-520274〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年7月9日(優先権主張1998年7月10日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年9月7日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月22日付で手続補正がなされたものである。 2.平成17年12月22日付の手続補正についての補正却下の決定 [結論] 平成17年12月22日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容と当審の判断 本件請求人の平成17年12月22日付の手続補正書の【その他】の項の説明によれば、本件補正は、拒絶査定の対象である平成17年7月11日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項4、5、10および11を削除し、カルシウムチャンネルブロッカーをアムロジピンに減縮するものである。 そこで、本件補正後の請求項7について検討する。 本件補正後の請求項7は、 「【請求項7】 (i)バルサルタンまたはその薬学的に許容される塩と、(ii)アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩を、医薬的に許容される担体とともに含む、医薬的組合せ組成物。」 である。 当該請求項7と、本件補正前の各請求項との関係について検討する。 本件補正前の平成17年7月11日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8は、「糖尿病または糖尿病患者における高血圧の処置または予防、糖尿病性腎障害の進行の遅延または糖尿病患者における蛋白尿の低減に使用する」ための医薬的組合せ組成物であり、医薬として使用する用途については何ら限定するものではない本件補正後の請求項7が、本件補正前の請求項1?8のいずれかを減縮するものとはいえない。 次に、本件補正前の請求項9?11は、カルシウムチャンネルブロッカーが非DHPから選択される医薬的組成物であり、DHPであるアムロジピンまたはその薬学的に許容される塩をカルシウムチャンネルブロッカーとする本件補正後の請求項7が、本件補正前の請求項9?11のいずれかを減縮するものとはいえない。 さらに、本件補正前の請求項12?14は、固定された医薬的組合せ組成物である。 「固定された」との発明を特定するための事項について検討する。 本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0029】には、「本組成物において、成分(i)および(ii)は得ることができ、一つの組合わせ単位投与形で一緒に、逐次または別々に、または二つの別の単位投与形で投与する。単位投与形はまた固定された組合わせであり得る。」と記載されており、本願明細書の特許請求の範囲では、「固定された組合わせ形態にある請求項○記載の組成物。」と「医薬的組合せ組成物」を「固定された組合せ形態」という事項で限定していることからみて、「医薬的組合せ組成物」は、「一つの組合わせ単位投与形で一緒に、逐次または別々に」投与する形態、「二つの別の単位投与形で投与する」形態といった種々の形態があり、「単位投与形」は「固定された組合せ」であり得るのであるから、「医薬的組合せ組成物」は、例えば、成分(i)と(ii)がそれぞれ別の単位投与形で投与されるといった、「固定された組合せ」以外の形態を取り得るものである。 したがって、「医薬的組合せ組成物」の形態については何ら限定するものではない本件補正後の請求項7が、「医薬的組合せ組成物」の形態が「固定された」ものに限定される本件補正前の請求項12?14のいずれかを減縮するものとはいえない。 さらに、本件補正後の請求項7が、本件補正前の請求項1?14の誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないことは明らかである。 以上のとおりであるから、本件補正後の請求項7についての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1?4号の規定するいずれの事項を目的とするものにも該当しない。 (2)むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成17年12月22日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項12に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年7月11日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項12に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項12】(i)AT_(1) レセプターアンタゴニストバルサルタンまたはその薬学的に許容される塩と、(ii) カルシウムチャンネルブロッカーである遊離形または塩形のを、医薬的に許容される坦体とともに含む、固定された医薬的組合せ組成物。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された 藤村葉子ら「薬理と治療」Vol.23, No.12, p. 87-93(1995)(以下、引用例という。)には、次の事項を内容とする記載がある。 (ア) 自然発症高血圧ラット(SHR)を用いてバルサルタン単独及びサイアザイド系利尿薬のヒドロクロロチアザイド、カルシウム拮抗薬のニフェジピン又はβ遮断薬のプロプラノロールとの併用による降圧効果を検討したこと。(87頁「はじめに」の項) (イ) バルサルタンとニフェジピンは投与直前に 0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液(以下、0.5% CMC-Naという。)中に懸濁し、4 ml/kgの用量で経口投与したこと。(87頁「使用薬物」の項) (ウ) バルサルタン3mg/kg単独とニフェジピン1mg/kgとの併用投与を比較した場合、単回投与では、投与1時間後に有意な降圧効果の増強がみられ、28日間連続投与では投与15日目の午前の血圧のみバルサルタン単独投与と比較して有意であったが、その他の時点の降圧効果も増強される傾向にあったこと。(88頁II結果の項) (エ) 併用投与による降圧作用の増強は連続投与で顕著に現れ、ニフェジピン併用群では投与期間中、薬物投与前の血圧が投与開始前値より下降する傾向が認められたこと。(90頁右欄) (オ) 高血圧の維持機構には多くの因子が関与し、降圧剤はこれらの特定の因子を抑制することによって降圧をもたらし、作用機序の異なる降圧剤を併用すればおのおのの少量の投与でも降圧効果が期待でき、副作用が現れにくくなるという利点があること。(89頁右欄?90頁左欄) (2)対比・判断 引用例には、SHRを用いた降圧効果試験(上記 (ア))の結果として、バルサルタン3mg/kgとニフェジピン1mg/kgの 0.5%CMC-Na中懸濁液を連続投与した場合(上記 (イ))、降圧効果が増強されること(上記(ウ)及び(エ))が記載されている。 したがって、引用例には、「バルサルタン3mg/kgとニフェジピン1mg/kgの 0.5%CMC-Na中懸濁液」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 そこで、以下、本願発明と引用発明とを対比する。 AT_(1) レセプターアンタゴニストはバルサルタン自体がもつ性質であるから、前者の「(i)AT_(1) レセプターアンタゴニストバルサルタン」は、後者の「バルサルタン」と同じである。 次に、ニフェジピンはカルシウム拮抗薬である(上記 (ア))が、カルシウムチャンネルブロッカーとカルシウム拮抗薬とは同意語であることは明らかであるから、後者の「ニフェジピン」は、前者の「(ii) カルシウムチャンネルブロッカーである遊離形または塩形」に含まれる。 次に、後者のCMC-Naは、バルサルタンとニフェジピンを懸濁させているのであり、医薬的に許容される担体であることは明らかである。 後者は、懸濁液が組成物であることは明らかであり、それぞれが医薬であるバルサルタンとニフェジピンを含むものであるから、「医薬的組合せ組成物」である。 ところで、前者は「固定された」医薬的組合せ組成物であるので、後者が「固定された」ものにあたるかどうかについて検討する。 「固定された」との事項について、 本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0029】には、「本組成物において、成分(i)および(ii)は得ることができ、一つの組合わせ単位投与形で一緒に、逐次または別々に、または二つの別の単位投与形で投与する。単位投与形はまた固定された組合わせであり得る。」と記載されているだけであり、他に説明は記載されていない。 一方、一般に、固定とは、ひと所に定まって移動しないこと、または、動かないようにすることを意味する用語である(新村出編「広辞苑」岩波書店)。 そこで、引用発明について検討するに、引用発明は、経口投与される単一の懸濁液の中に、成分(i)および(ii)にあたるバルサルタンとニフェジピンが混在しているものであり、経口投与剤として一緒に投与されるものである。 そうすると、引用発明の組み合わされた両成分の関連は、上記の本願明細書に記載された組合せの形態の中で最も強い関連性を有する「一つの組合わせ単位投与形で一緒に」投与されるという形態のものである。そして、その存在形態は、両成分が0.5%CMC-Na中に共存して懸濁液を構成しており、他への移動はないものである。 したがって、引用発明は、「固定された医薬的組合せ組成物」である。 以上のとおりであるから、本願発明と引用発明に相違する点はない。 (3)その他 請求人は、カルシウムチャンネルブロッカーをアムロジピンに限定することを内容とする手続補正書を提出し、本願発明の医薬製剤は、糖尿病又はそれに関連した疾病の処置又は予防、より具体的には糖尿病又は糖尿病患者における高血圧の処置又は予防、糖尿病性腎障害の進行の遅延又は糖尿病患者における蛋白尿の低減に有効であり、本願発明は新規性,進歩性を有すると主張している。 しかしながら、上述の「2.平成17年12月22日付の手続補正についての補正却下の決定」のとおり、カルシウムチャンネルブロッカーをアムロジピンに限定することを内容とする補正は却下された。 そして、特許請求の範囲には、出願当初から平成17年12月22日付の手続補正に至るまで一貫して、医薬用途について何ら限定をしていない請求項が存在しており、特定の医薬用途に関する効果をもって本願発明の新規性、進歩性を主張しようとする上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。 なお、仮に、本願発明をカルシウムチャンネルブロッカーをアムロジピンに、医薬用途を、糖尿病または糖尿病患者における高血圧の処置または予防、糖尿病性腎障害の進行の遅延または糖尿病患者における蛋白尿の低減に使用するためのものと限定しても、以下の通り、本願発明は依然として特許を受けることはできない。 すなわち、アムロジピンはニフェジピンと同じDHP(ジヒドロピリジン系)の公知のカルシウムチャンネルブロッカーである。そして、アムロジピンはバルサルタンと併用できないといった特段の事情も認められないし、Corea et al.,Clinical Pharmacology Therapeutics,1996年,Vol.60,p.341-346(審査における引用例1)には、バルサルタンで不十分である場合はアムロジピンを追加投与している。 したがって、引用発明において、ニフェジピンに代えてアムロジピンを使用することは当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本願明細書には、糖尿病性SHRの生存率のデータが記載されているが、カルシウムチャンネルブロッカーがベラパミルである。アムロジピンを用いた試験例は一切記載されていない。また、ベラパミルは非DHPであり、DHPであるアムロジピンとは異なる種類のカルシウムチャンネルブロッカーである。以上のとおり、本願明細書の記載から、バルサルタンとアムロジピンの医薬的組合せ組成物について、糖尿病又は糖尿病患者における高血圧の処置又は予防、糖尿病性腎障害の進行の遅延又は糖尿病患者における蛋白尿の低減に関する効果において予想できない顕著な効果を奏するものとは認められない。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-12-07 |
結審通知日 | 2009-12-08 |
審決日 | 2010-01-04 |
出願番号 | 特願2000-558803(P2000-558803) |
審決分類 |
P
1
8・
57-
Z
(A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K) P 1 8・ 121- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松波 由美子 |
特許庁審判長 |
塚中 哲雄 |
特許庁審判官 |
伊藤 幸司 弘實 謙二 |
発明の名称 | バルサルタンとカルシウムチャンネルブロッカーの抗高血圧組合わせ |
代理人 | 岩崎 光隆 |
代理人 | 青山 葆 |
代理人 | 中嶋 正二 |