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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C |
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管理番号 | 1270086 |
審判番号 | 不服2011-11434 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-05-31 |
確定日 | 2013-02-13 |
事件の表示 | 特願2004-308287「レーザー水準器」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月19日出願公開、特開2005-128019〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年10月22日の出願(優先権主張:2003年10月24日、米国)であって、平成19年10月31日付けで、図面についての補正がなされ(以下、「補正1」という。)、平成22年8月30日付けで、明細書及び特許請求の範囲についての補正がなされ(以下、「補正2」という。)、平成23年2月2日付けで(送達:同年同月8日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月31日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 その後、当審より、平成24年2月14日付け審尋書により、本件補正後の発明は独立特許要件を欠くものであり、本件補正は却下すべきものである旨の審尋をしたところ、指定した期間を過ぎても、請求人からは何らの回答もなかった。 2.補正却下の決定 [結論] 本件補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のとおり補正するものである。 (本件補正前) 「基準面に配設可能なレーザー水準器であって、 ハウジングと、 前記ハウジングに配設されていて且つ第1の経路に沿って第1のレーザービームを発するための第1のレーザーダイオードと、 前記ハウジングに配設されていて且つ距離計測のための電子式距離計測回路と、 前記ハウジングに旋回可能に接続される振り子と、を具備するレーザー水準器において、 前記第1のレーザーダイオードは、前記振り子に配設されており、 前記第1の経路において前記振り子に配設されていて且つ前記第1のレーザービームを第1の平らなビームに変換するための第1のレンズを更に具備しており、前記第1の平らなビームは前記基準面に第1の線を形成しており、 前記振り子に配設されていて且つ第2の経路に沿って第2のレーザービームを発するための第2のレーザーダイオードと、前記第2の経路において前記振り子に配設されていて且つ前記第2のレーザービームを平らなビームに変換するための第2のレンズと、を更に具備しており、 前記平らなビームは前記基準面に第2の線を形成する、レーザー水準器。」 (本件補正後) 「基準面に配設可能なレーザー水準器であって、 ハウジングと、 前記ハウジングに配設されていて且つ第1の経路に沿って第1のレーザービームを発するための第1のレーザーダイオードと、 前記ハウジングに配設されていて且つ距離計測のための電子式距離計測回路と、 前記ハウジングに旋回可能に接続される振り子と、を具備するレーザー水準器において、 前記振り子はナイフエッジ式であり、 前記第1のレーザーダイオードは、前記振り子に配設されており、 前記第1の経路において前記振り子に配設されていて且つ前記第1のレーザービームを第1の平らなビームに変換するための第1のレンズを更に具備しており、前記第1の平らなビームは前記基準面に第1の線を形成しており、 前記振り子に配設されていて且つ第2の経路に沿って第2のレーザービームを発するための第2のレーザーダイオードと、前記第2の経路において前記振り子に配設されていて且つ前記第2のレーザービームを平らなビームに変換するための第2のレンズと、を更に具備しており、 前記平らなビームは前記基準面に第2の線を形成する、レーザー水準器。」 (下線は補正箇所。) この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「振り子」について「ナイフエッジ式であり、」との限定を付加するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 (2)引用例記載の事項・引用発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-294445号公報(発明の名称:距離計を内蔵した墨出し器、出願人:株式会社オーディオテクニカ、公開日:平成15年10月15日、以下「引用例」という。)には、次の事項(a)ないし(d)が図面とともに記載されている。 (a)「特許請求の範囲】 【請求項1】 レーザー光源からレーザー光を出射し、このレーザー光を一方向にのみ拡散して被照射体にレーザーライン光を照射し、あるいはレーザーポイント光を回転させてあたかもライン光のように水平または垂直方向に照射するレーザー墨出し器において、 墨出し器本体内に、墨出し器の基準位置から被照射体までの距離を測定することを特徴とする距離計を内蔵した墨出し器。」 (b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、墨出し器から被照射体までの距離を測定することができる距離計を内蔵した墨出し器に関するものである。」 (c)「【0012】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明にかかる距離計を内蔵した墨出し器の実施形態について説明する。図1に示す実施形態は、いわゆる下げ振りとして構成されたものである。図1において、下げ振り本体10は、支持体11によって、建物壁など適宜の垂直面に、垂直方向の姿勢で設置される。下げ振り本体10内には、互いに直交する方向の水平軸13、14によって水平維持機構15が支持されている。水平維持機構15の下端からは距離計16が吊り下げられている。図1には明示されていないが、水平維持機構15によって常に所定の姿勢を保持して下げ振り本体10の下端の出射窓32から地墨光を出射するレーザー光源ユニットが取り付けられている。上記地墨光によって床面に形成される地墨からの反射光を距離計16で受光し、地墨点までの距離すなわち地墨点から墨出し器の取り付け高さ位置を測定する。この場合、下げ振り本体10の上端面または下端面を基準位置として、地墨点から下げ振り本体10の上端面または下端面までの距離を演算し計測する。計測結果は、下げ振り本体10の正面に設けられている表示素子12に表示される。表示素子12は例えば液晶表示素子(LCD)で構成することができる。」 (d)「【0013】図2に示す実施形態は、水平ライン光を出射することができる下げ振りに、図1に示すような地墨光出射機能と高さ測定機能を持たせたものである。図2において、水平維持機構15の上には光源ユニット20が一体に載せられている。光源ユニット20は例えば半導体レーザー(LD)からなり、レーザー光を水平方向に出射する。この出射光路上には、出射光を水平方向にのみ拡散させるロッドレンズ18が配置されている。水平方向への拡散光は、出射窓17から外部に出射し、被照射体である壁に照射されてレーザー光による水平ラインが描かれる。光源ユニット20から出射されるレーザー光の一部は、ビームスプリッタによって分割され、出射窓32から鉛直線に沿って下方に出射される。下方に出射されたレーザー光は地墨を形成するためのもので、地墨から反射されて戻ってきたレーザー光を距離計16が受光し、下げ振り本体10から地墨までの距離すなわち下げ振り本体10の高さ位置を測定する。この場合の測定基準位置は、下げ振り本体10の上端、または下端、あるいは、水平ライン光の出射高さ位置とすることが可能で、いずれかの基準位置を選択できるようになっている。なお、光源は、水平ライン光用と地墨用の独立した2光源としてもよいし、上記の例のように1光源をビームスプリッタで水平ライン光用と地墨用に分割してもよく、また、1光源を、墨出し器または下げ振りと距離計とに共用してもよいし別光源にしてもよい。」 上記記載(d)に「【0013】図2に示す実施形態は、水平ライン光を出射することができる下げ振りに、図1に示すような地墨光出射機能と高さ測定機能を持たせたものである。」とあるように、図2に示された実施形態のものは、図1に示された地墨光出射機能と高さ測定機能を持たせた実施形態のものを踏まえたものであることに留意すると、上記記載事項(a)ないし(d)及び図2の記載より、図2に示す実施形態のものとして、次の発明を把握することができる。 「壁に支持体11により設置されるレーザー墨出し器であって、 下げ振り本体10と、 前記下げ振り本体10内に配設されていて、かつ水平方向に沿ってレーザ光を出射するための半導体レーザー(LD)と、 前記下げ振り本体10内に配設されていて、かつ別途設けた光源を用いて、地墨点から下げ振り本体10の上端面又は下端面までの距離を演算し計測するための距離計16と、 前記下げ振り本体10内に旋回可能に接続される水平維持機構15及び該水平維持機構15に吊り下げられた前記距離計16と、を具備するレーザー墨出し器において、 前記水平維持機構15は、互いに直交する方向の水平軸13,14を備えるものであり、 前記半導体レーザー(LD)は、前記水平維持機構15の上に載せられており、 前記水平方向に沿って前記水平維持機構15の上に載せられていて、かつ前記レーザ光を水平方向の拡散光にするためのロッドレンズ18を更に具備しており、前記水平方向の拡散光は前記壁に水平ラインを描いている、 レーザー墨出し器。」(以下、「引用発明」という。) (3)対比 本願補正発明と引用発明とを、主な構成要件について対比する。 ア まず、引用発明における「壁」は、本願補正発明における「基準面」に相当し、引用発明における「レーザー墨出し器」は、本願補正発明における「レーザー水準器」に相当し、以下同様に、「下げ振り本体10」は、「ハウジング」に、「水平方向」は、「第1の経路」に、「レーザ光」は、「第1のレーザービーム」に、「半導体レーザー(LD)」は、「第1のレーザーダイオード」に、「距離計16」は、「電子式距離計測回路」に、「水平方向の拡散光」は、「第1の平らなビーム」に、「ロッドレンズ18」は、「第1のレンズ」に、「水平ライン」は、「第1の線」に、それぞれ相当する。 イ また、引用発明において、水平維持機構15は、距離計16を吊り下げるとともに、互いに直交する方向の水平軸13,14によって下げ振り本体10に支持されていることにより、水平を維持するように機構するものであるから、引用発明における「水平維持機構15及び該水平維持機構15に吊り下げられた前記距離計16」 は、 本願補正発明における「振り子」に相当するといえる。 ウ また、引用発明における「互いに直交する方向の水平軸13,14を備えるもの」も、本願補正発明における「ナイフエッジ式」も、共に、「水平を維持するための支点を備えている」点で共通する。 以上の関係アないしウを総合すると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「基準面に配設可能なレーザー水準器であって、 ハウジングと、 前記ハウジングに配設されていて且つ第1の経路に沿って第1のレーザービームを発するための第1のレーザーダイオードと、 前記ハウジングに配設されていて且つ距離計測のための電子式距離計測回路と、 前記ハウジングに旋回可能に接続される振り子と、を具備するレーザー水準器において、 前記振り子は水平を維持するための支点を備えており、 前記第1のレーザーダイオードは、前記振り子に配設されており、 前記第1の経路において前記振り子に配設されていて且つ前記第1のレーザービームを第1の平らなビームに変換するための第1のレンズを更に具備しており、前記第1の平らなビームは前記基準面に第1の線を形成している、 レーザー水準器。」 (相違点) ・相違点1 本願補正発明では、「前記振り子に配設されていて且つ第2の経路に沿って第2のレーザービームを発するための第2のレーザーダイオードと、前記第2の経路において前記振り子に配設されていて且つ前記第2のレーザービームを平らなビームに変換するための第2のレンズと、を更に具備しており、前記平らなビームは前記基準面に第2の線を形成する、」とあるように、要すれば、振り子が、第1のレーザーダイオードとは別に第2のレーザーダイオードを備えており、これにより基準面に第2の線を形成するようにしているのに対し、引用発明では、水平維持機構15の上に載せられた半導体レーザー(LD)(本願補正発明における「第1のレーザーダイオード」に相当する。以下、同様。)は1つであり、よって、壁(基準面)に形成された水平ライン(第1の線)は、1つであるにとどまる点。 ・相違点2 水平を維持するための支点の構成が、 本願補正発明では、ナイフエッジ式であるとしているのに対し、引用発明では、互いに直交する方向の水平軸13,14である点。 (4)判断 前記相違点について検討する。 ア 相違点1について 一般に、この種のレーザー水準器において、基準面に2本の基準線を形成するために、振り子に2つの光源を設けるようにすることは、周知な技術である。(以下、「周知技術1」という。) 周知技術1については、例えば、原審で引用された特開2003-177020号公報の図1?3に示された、振り子20に設けられた光源ユニット51,52や、特開2000-258160号公報の図7,8に示された、振り子11に設けられたレーザーダイオード120,121を参照されたい。 してみると、引用発明において、水平維持機構15(振り子)の上に半導体レーザー(LD)(第1のレーザーダイオード)をもう1つ設けるようにし、壁(基準面)にもう1つのライン(第2の線)を形成しようとすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 一般に、この種のレーザー水準器において、振り子の支点としてナイフエッジを用いることは、周知な技術である。(以下、「周知技術2」という。) 周知技術2については、例えば、米国特許第5914778号明細書(発行日:1999年6月22日)のFig.1a,1bに示されたナイフエッジ19,20を参照されたい。 よって、引用発明において、水平維持機構15(振り子)の支点として、水平軸13,14に代えて、同等に作用する周知のナイフエッジ機構を採用することは、当業者ならば容易に想到し得たことである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1,2から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術1,2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、補正1及び補正2によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。 「基準面に配設可能なレーザー水準器であって、 ハウジングと、 前記ハウジングに配設されていて且つ第1の経路に沿って第1のレーザービームを発するための第1のレーザーダイオードと、 前記ハウジングに配設されていて且つ距離計測のための電子式距離計測回路と、 前記ハウジングに旋回可能に接続される振り子と、を具備するレーザー水準器において、 前記第1のレーザーダイオードは、前記振り子に配設されており、 前記第1の経路において前記振り子に配設されていて且つ前記第1のレーザービームを第1の平らなビームに変換するための第1のレンズを更に具備しており、前記第1の平らなビームは前記基準面に第1の線を形成しており、 前記振り子に配設されていて且つ第2の経路に沿って第2のレーザービームを発するための第2のレーザーダイオードと、前記第2の経路において前記振り子に配設されていて且つ前記第2のレーザービームを平らなビームに変換するための第2のレンズと、を更に具備しており、 前記平らなビームは前記基準面に第2の線を形成する、レーザー水準器。」(以下、「本願発明」という。) (1)引用例記載の事項・引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された発明・事項は、前記「2.(2)引用例記載の事項・引用発明」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.(1)補正の内容」で検討した本願補正発明から「振り子」についての限定事項である「ナイフエッジ式であり、」との発明特定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)対比」、「2.(4)判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術1,2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-09-12 |
結審通知日 | 2012-09-18 |
審決日 | 2012-10-02 |
出願番号 | 特願2004-308287(P2004-308287) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 須中 栄治 |
特許庁審判長 |
飯野 茂 |
特許庁審判官 |
山川 雅也 小林 紀史 |
発明の名称 | レーザー水準器 |
代理人 | 三橋 庸良 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 島田 哲郎 |
代理人 | 森本 有一 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 篠田 拓也 |