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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04B
管理番号 1270095
審判番号 不服2012-5396  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-22 
確定日 2013-02-13 
事件の表示 特願2006-114601「燃料噴射ポンプの制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 9日出願公開、特開2006-307849〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年4月18日(パリ条約による優先権主張2005年4月28日、独国)の出願であって、平成22年12月9日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成22年12月14日)、これに対し、平成23年5月13日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年11月17日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成23年11月22日)、これに対し、平成24年3月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年5月13日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「少なくとも1つのカム(15)と、ローラ(17)を有する少なくとも1つのロッキングアーム(16)とを備え、1つ或いは複数の前記ロッキングアーム(16)に各々対応して設けられている前記ローラ(17)が、前記カム(15)上を転がり、その転がり運動に関係して、燃料噴射ポンプのプランジャ(11)が、当該プランジャ(11)に付属されたプランジャローラ(21)を介して制御ないし作動される、燃料噴射ポンプの制御装置、即ち、内燃機関の燃料噴射ポンプに含まれている少なくとも1つの前記プランジャ(11)の制御装置において、
前記プランジャローラ(21)が、それに対応した前記ローラ(17)上を直に接しつつ前記プランジャ(11)に設けられた回転中心軸に軸支されて転がるように設定されていると共に、前記ローラ(17)が、前記ロッキングアーム(16)の一端(18)に回転可能に支持されており、
前記ロッキングアーム(16)が、前記一端(18)とは反対側の端部である他端(19)に設けられた回転中心(20)を遥動中心(支点)として揺動可能となっており、かつ、
前記プランジャローラ(21)の回転中心と、それに対応して前記ロッキングアーム(16)の一端(18)に設けられている前記ローラ(17)の回転中心と、それに対応して設けられている前記カム(15)の回転中心とが、略一直線上に配置されていて、前記カム(15)から前記ローラ(17)を介して前記プランジャローラ(21)へと、前記プランジャ(11)の作動方向に沿って略直線的に、前記作動力の導入が行なわれる
ことを特徴とする燃料噴射ポンプの制御装置。」

なお、「前記作動力の導入」とあるが、「作動力の導入」の誤記と認める。


3.引用例
これに対して、原査定の理由に引用された実願昭58-118838号(実開昭60-26281号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

1-a「本考案は燃料噴射装置に係り、とくにカムによってプランジャを移動させて燃料を加圧し、この加圧された燃料を燃料噴射ノズルに供給するようにした燃料噴射装置に関する。
圧縮点火機関を構成するディーゼルエンジンは燃料噴射ポンプを備えており、この燃料噴射ポンプによって燃料を加圧して燃料噴射ノズルに供給し、このノズルによって燃料を霧状にしてシリンダ内へ噴射するようになっている。」(明細書第1頁13行?第2頁1行)

1-b「図面に示すようにこの実施例の燃料噴射ポンプは、エンジンのシリンダ数と同数のプランジャポンプを有し、各プランジャポンプは円柱状のプランジャ1と、このプランジャ1がその中を上下に摺動するプランジャバレル2とから構成されている。」(明細書第2頁20行?第3頁4行)

1-c「プランジャ1の下部にはブラケット18を介してタペットローラ19が回転可能に取付けられている。そしてこのタペットローラ19はコントロールローラ20の周面と接触している。
コントロールローラ20はプレート21に回転可能に支持されるとともに、プレート21は油圧シリンダ22のピストンロッド25の先端に回転可能に連結されている。そしてコントロールローラ20はカム23と接触するようになっており、このカム23はカム軸24に固着されている。」(明細書第4頁3?13行)

1-d「以上のような構成において、エンジンによってカム軸24を介してカム23が回転されると、コントロールローラ20を介してタペットローラ19が押されることになり、プランジャ1はばね17に抗して上方へ押されて移動する。」(明細書第5頁2?6行)

1-e「つぎにこのプランジャポンプの燃料の噴射時期のタイミングの調整について説明すると、コントローラ29によってバルブ28を開き、オイルを油圧シリンダ22の背面側へ供給すれば、ピストン26が戻しばね27に抗して前方へ移動することになる。これに伴なってプレート21を介してコントロールローラ20が図面において右方へ移動し、カム23とタペット19との間に深く挿入されることになる。このようにコントロールローラ20を深く挿入すると、プランジャ1のプリストロークが小さくなって噴射時期が早くなる。」(明細書第6頁5?15行)

1-f「さらに本実施例に係る燃料噴射ポンプによれば、時間に対する燃料供給量の変化の割合、すなわち噴射率を変更することもできる。この噴射率の制御は、コントロールローラ20がプレート21とピストンロッド25とを連結する連結ピン30を中心として公転運動を行なうからであって、カム23が回転してローラ20を介してタペットローラ19を押上げる際に、コントローラ20は図面において鎖線で示すようにピン30を中心としてその中心位置が変化することになる。」(明細書第7頁9?18行)

1-g「さらに本実施例に係る燃料噴射ポンプによれば、噴射のタイミングおよび噴射率をコントロールローラ20の挿入深さを変更することによって達成するようになっており、従って非常に簡単な構造によって燃料の噴射特性を制御することができるようになる。さらにコントロールローラ20はプレート21に回転可能に支持されているために、このローラ20とカム23との間、あるいはローラ20とタペットローラ19との間における摩擦ロスをほとんど無視することができ、これによって損失馬力を極めて小さなものとすることが可能となる。」(明細書第8頁7?18行)

上記記載及び図面に基づけば、コントロールローラ20が、プレート21の一端に回転可能に支持されており、プレート21が、前記一端とは反対側の端部である他端に設けられた連結ピン30を中心として揺動可能となっており、また、カム23からコントロールローラ20を介してタペットローラ19へと、プランジャ1を上下に摺動するように、作動力の導入が行なわれることが示されており、また、燃料の噴射特性の制御を行っているから、燃料噴射ポンプの制御装置であり、エンジンの燃料噴射ポンプに含まれているプランジャ1の制御装置である。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「カムと、コントロールローラを有するプレートとを備え、前記プレートに設けられている前記コントロールローラが、前記カムと接触し、接触した前記コントロールローラを介して、燃料噴射ポンプのプランジャが、当該プランジャの下部に取付けられたタペットローラを介して上下に摺動される、燃料噴射ポンプの制御装置、即ち、エンジンの燃料噴射ポンプに含まれているプランジャの制御装置において、
前記タペットローラが、前記コントロールローラの周面と接触しつつ前記プランジャの下部のブラケットを介して回転可能に取付けられると共に、前記コントロールローラが、前記プレートの一端に回転可能に支持されており、
前記プレートが、前記一端とは反対側の端部である他端に設けられた連結ピンを中心として揺動可能となっており、かつ、
前記コントロールローラが前記カムと前記タペットローラとの間に深く挿入され得るように配置されていて、前記カムから前記コントロールローラを介して前記タペットローラへと、前記プランジャを上下に摺動するように、作動力の導入が行なわれる燃料噴射ポンプの制御装置。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「カム」、「コントロールローラ」、「プレート」、「プレートに設けられているコントロールローラ」、「カムと接触し、接触したコントロールローラを介して」、「プランジャの下部に取付けられた」、「タペットローラ」、「上下に摺動される」、「エンジンの燃料噴射ポンプに含まれているプランジャの制御装置」、「連結ピンを中心」は、それぞれ本願発明の「少なくとも1つのカム(15)」又は「カム(15)」、「ローラ(17)」、「少なくとも1つのロッキングアーム(16)」又は「ロッキングアーム(16)」、「1つ或いは複数のロッキングアーム(16)に各々対応して設けられているローラ(17)」、「カム(15)上を転がり、その転がり運動に関係して」、「プランジャ(11)に付属された」、「プランジャローラ(21)」、「制御ないし作動される」、「内燃機関の燃料噴射ポンプに含まれている少なくとも1つのプランジャ(11)の制御装置」、「回転中心(20)を遥動中心(支点)」に相当する。

その機能をも考慮すると、引用発明の「前記コントロールローラの周面と接触しつつ前記プランジャの下部のブラケットを介して回転可能に取付けられる」は、本願発明の「それに対応した前記ローラ(17)上を直に接しつつ前記プランジャ(11)に設けられた回転中心軸に軸支されて転がるように設定されている」に相当する。

引用発明の「コントロールローラがカムとタペットローラとの間に深く挿入され得るように配置されていて」と、本願発明の「プランジャローラ(21)の回転中心と、それに対応してロッキングアーム(16)の一端(18)に設けられているローラ(17)の回転中心と、それに対応して設けられているカム(15)の回転中心とが、略一直線上に配置されていて」は、「プランジャローラの回転中心と、それに対応してロッキングアームの一端に設けられているローラの回転中心と、それに対応して設けられているカムの回転中心とが、所定の関係に配置されていて」との概念で共通し、引用発明の「カムからコントロールローラを介してタペットローラへと、プランジャを上下に摺動するように、作動力の導入が行なわれる」と、本願発明の「カム(15)からローラ(17)を介してプランジャローラ(21)へと、プランジャ(11)の作動方向に沿って略直線的に、作動力の導入が行なわれる」は、「カムからローラを介してプランジャローラへと、作動力の導入が行なわれる」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「少なくとも1つのカムと、ローラを有する少なくとも1つのロッキングアームとを備え、1つ或いは複数の前記ロッキングアームに各々対応して設けられている前記ローラが、前記カム上を転がり、その転がり運動に関係して、燃料噴射ポンプのプランジャが、当該プランジャに付属されたプランジャローラを介して制御ないし作動される、燃料噴射ポンプの制御装置、即ち、内燃機関の燃料噴射ポンプに含まれている少なくとも1つの前記プランジャの制御装置において、
前記プランジャローラが、それに対応した前記ローラ上を直に接しつつ前記プランジャに設けられた回転中心軸に軸支されて転がるように設定されていると共に、前記ローラが、前記ロッキングアームの一端に回転可能に支持されており、
前記ロッキングアームが、前記一端とは反対側の端部である他端に設けられた回転中心を遥動中心(支点)として揺動可能となっており、かつ、
前記プランジャローラの回転中心と、それに対応して前記ロッキングアームの一端に設けられている前記ローラの回転中心と、それに対応して設けられている前記カムの回転中心とが、所定の関係に配置されていて、前記カムから前記ローラを介して前記プランジャローラへと、作動力の導入が行なわれる燃料噴射ポンプの制御装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
プランジャローラの回転中心と、ローラの回転中心と、カムの回転中心との、所定の関係の配置に関し、本願発明は、略一直線上に配置されているのに対し、引用発明は、ローラがカムとプランジャローラとの間に深く挿入され得るように配置されている点。
〔相違点2〕
カムからローラを介してプランジャローラへと、作動力の導入が行なわれる点に関し、本願発明は、プランジャの作動方向に沿って略直線的に行われるのに対し、引用発明は、この様な特定がなされていない点。


5.判断
相違点1、2について
引用発明は、ローラ(コントロールローラ20)がカム(カム23)とプランジャローラ(タペットローラ19)との間に深く挿入され得ることから、各回転中心が「略一直線上」に配置され得るものである。そうであれば、引用発明において、燃料の噴射時期のタイミングを早くなるようにすべく、ローラ(コントロールローラ20)をカム(カム23)とプランジャローラ(タペットローラ19)との間に深く挿入して、プランジャローラの回転中心と、ローラの回転中心と、カムの回転中心とが「略一直線上」に配置されるように調整して使用することは、当然に想定される使用方法であり、この様な使用方法を採用すれば、カムからローラを介してプランジャローラへと、プランジャの作動方向に沿って略直線的に、作動力の導入が行なわれることになるのは明らかである。
そうすると、引用発明において、燃料の噴射時期のタイミングを上記の如く調整した使用方法とすることにより、上記相違点1及び2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に考えられたものと認められる。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-04 
結審通知日 2012-09-11 
審決日 2012-09-27 
出願番号 特願2006-114601(P2006-114601)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 竜一井上 茂夫  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 大河原 裕
槙原 進
発明の名称 燃料噴射ポンプの制御装置  
代理人 山口 巖  

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