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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1270131
審判番号 不服2011-18973  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-02 
確定日 2013-02-12 
事件の表示 特願2005-249522「光源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月15日出願公開、特開2007- 67076〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年8月30日に出願され、平成23年6月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月2日に拒絶査定不服審判が請求された後、当審において、平成24年7月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月11日付けで手続補正がなされ、さらに、同年9月24日付けで拒絶の理由(以下「当審最後の拒絶理由」という。)が通知され、同年11月26日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成24年9月11日付けの手続補正書の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「波長の異なる光を混合して使用する光源装置であって、
波長の異なる光を出射する複数の発光素子と、
該発光素子を覆う封止樹脂層と、を備え、
該封止樹脂層中に、真球度が0.9以上である粒子含有率が99体積%以上である平均粒子径1?10μmのシリカ粒子が1?20wt%で、略均一に分散させられている、
ことを特徴とする光源装置。」

第3 引用文献に記載された発明
1 引用文献に記載の事項
当審最後の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-284759号公報(以下「引用文献」という。)には図とともに以下の記載がある。

(1)「【請求項3】パッケージの凹部内に配された発光素子と、該発光素子を保護するモールド部材と、を有する発光装置であって、前記発光素子上のモールド部材の厚みよりも発光素子からパッケージ側面までの厚みの方が大きく、且つ前記モールド部材中に拡散剤が含有されたことを特徴とする発光装置。」

(2)「(拡散剤211)モールド部材201に含有される拡散剤211は、発光素子203から放出される光のうち発光観測面側に放出される光の散乱吸収を少なくし、パッケージ内開口部内壁側に向かう光を多く散乱させることで発光装置の発光輝度を向上させるものである。また、拡散剤211の含有量によって発光素子203が配置されたパッケージ開口部の暗輝度をも調整させることができる。このような拡散剤211としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等の無機部材やメラミン樹脂、CTUグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などの有機部材が好適に用いられる。本願発明の効果を示すために、暗色系としてカーブラックにより黒色に着色したパッケージ内に配置されたモールド部材201として有機部材であるベンゾグアナミン樹脂を用いた拡散剤濃度との関係を図4に示す。図4から拡散剤の分散濃度が増加すれば、発光装置の正面輝度は増加する。これは、発光素子から放出される光が発光観測正面方向のみならずパッケージ開口部内壁方向に多く向かうことから側壁で吸収されていた損失光が、拡散材の散乱などにより前面に導かれたためと考えられる。また、拡散剤濃度が過多になれば、逆に正面輝度は下がり始める。これは、発光素子であるLEDチップからの直接光を散乱する割合が増加し正面輝度の増加は頭打ちになるためと考えられる。また、拡散剤濃度が増加するにしたがい、外光の進入が散乱反射され暗輝度を低下させる効果も付与されると考えられる。なお、他の無機材料などにおいてもほぼ同様の傾向が得られることを確認してある。特に、屋内または屋外にてLEDディスプレイを見る場合、太陽光などのさまざまな外光が進入する可能性があるため、LEDディスプレイの暗輝度を十分に下げコントラスト比が50以上とさせなければ外光反射により視認性が極端に低下する。そのため、拡散剤の濃度は材料などにもよるが拡散剤の分散濃度として3?12%が好ましい。これにより正面輝度の増加は最適化される。また拡散剤により外光進入も直接パッケージ底面に設けられた外部電極等へ達することなく、或いは外部電極などへ達しても外部に反射散乱することを抑制することができる。そのため、暗輝度の低下傾向も強めることができる。これにより、コントラスト比を50以上に最適化することができる。また、球形状のポリマーなどは、0.1?20μmが好適に利用することができるが、小さすぎれば分散性が悪く、大きすぎれば沈降しやす過ぎるため1?5μmがより好ましい。この拡散剤濃度は、通常砲弾型発光ダイオードに使用される拡散濃度に比べて1桁以上多い濃度となっている。発光観測面側のモールド部材の厚みを薄くさせているために1桁以上多く含有させてもLEDの正面輝度低下は少なくてすむ。」(第4頁第5欄第26行ないし同頁第6欄第23行)

(3)「(発光素子113、123、133、203)本願発明に用いられる発光素子203としては、・・・(略)・・・発光装置をフルカラー発光させるためには、RGBの発光色を発光するLEDチップを用いることができる。特に、野外などの使用を考慮する場合、高輝度な半導体材料として緑色及び青色を窒化ガリウム系化合物半導体を用いることが好ましく、また、赤色ではガリウム・アルミニウム・砒素系やアルミニウム・インジュウム・ガリウム・燐系の半導体を用いることが好ましいが、用途によって種々利用できる。なお、フルカラー発光可能な発光装置として、RGBがそれぞれ発光可能な発光素子を利用するためには赤色系の発光波長が600nmから700nm、緑色系が495nmから565nm、青色系の発光波長が400nmから490nmの半導体を用いたLEDチップを使用することが好ましい。」(第5頁第7欄第43行ないし同頁第8欄第32行)

(4)「【実施例】
(実施例1?5)0.1mm厚のりんせい銅をプレス加工し外部電極として使用する。この外部電極を、液晶ポリマ-樹脂にて成型加工行う。この液晶ポリマ-樹脂の原材料は乳白色であるが、カ-ボンブラックを0.4%混入し黒色に着色している。こうして形成されたパッケージ102は、厚さ1mmであり、1辺が3mm角である。また、発光素子が配置される凹部の開口部(直径2.6mm)を持っている。外部電極104となるリ-ドフレ-ム上にRGB(赤色系、緑色系、青色系)がそれぞれ発光可能な発光素子としてLEDベアチップ113、123、133を搭載した。BGが発光可能な発光素子113、123は、発光層に窒化ガリウム系半導体を利用したものを用いた。Rが発光可能な発光素子133は、ガリウム・インジュウム・アルミニウム・燐系半導体を利用したものを用いてある。各発光素子は、Agペーストを用いて固定させた。Rが発光可能な発光素子133は、固定と共に電気的に接続もされている。BGが発光可能な発光素子113、123は、活性層がサファイア基板上に形成されているために同一表面側から金ワイヤ-105にて外部電極とワイヤーボンディングさせそれぞれ電気的に接続し図1の如き構成とさせた。次に、パッケージ開口部内にエポキシで封止硬化しモールド部材201を形成させた。エポキシ樹脂中に球状ポリマ-(ベンゾグアナミン樹脂、平均球径が約2μm)を拡散剤として、重量比9%で分散混合させてある。同様に重量比のみ代えて1、3、6、12%で分散混合させたものもそれぞれ実施例2、3、4、5用として形成させた。各モールド部材201は各発光素子の端部からパッケージ開口の側壁部までが約1mmであり、発光素子上は約0.2mmの厚みがあった。このような発光装置の発光特性として輝度及びコントラスト比をトプコン社製(BM-7)によって調べた。RGBを全て点灯させ白色光とさせたときの正面輝度は、823cd/m^(2)であり、暗輝度は、10cd/m^(2)であった。なお、暗輝度は照度計を発光装置と平行に配置させ外部から400ルックスの光を照射して測定してある。このときの、コントラスト比は82:1である。このようにして形成されたRGBが発光可能な発光装置を、半田クリ-ムを印刷したプリント基板上にチップマウンタ-で表面実装した。これを半田リフロ-炉で半田接合を行い各発光装置と基板とを電気的に接続させた。こうして、図3の如き、4mmドットピッチで発光装置を16×32個ドットマトリックス状に配置されたLED表示器を構成することができる。発光装置が配置され電気的に接続された基板と、LED表示器を駆動させる駆動回路とを電気的に接続させることによりフルカラー表示装置を構成させることができる。」(第6頁第9欄第17行ないし同頁第10欄第14行)

(5)図1は、以下のものである。


2 引用文献の記載から認定できる発明
(1)上記1(1)の記載に照らせば、
引用文献には、
「パッケージの凹部内に配された発光素子と、発光素子を保護するモールド部材と、を有する発光装置であって、
発光素子上のモールド部材の厚みよりも発光素子からパッケージ側面までの厚みの方が大きく、且つモールド部材中に拡散剤が含有された、
発光装置。」
が記載されているものと認められる。

(2)上記1(2)の、
「このような拡散剤211としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等の無機部材やメラミン樹脂、CTUグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などの有機部材が好適に用いられる。」及び「拡散剤の濃度は材料などにもよるが拡散剤の分散濃度として3?12%が好ましい。」
との記載に照らせば、
上記(1)の「モールド部材」は、拡散剤として酸化珪素を分散濃度3ないし12%含有するものであると理解できる。

(3)上記1(4)及び(5)の記載に照らせば、
上記(1)の「発光素子」は、
Rが発光可能な発光素子、Bが発光可能な発光素子及びGが発光可能な発光素子であるといえる。

(4)上記記載から、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「パッケージの凹部内に配された発光可能な発光素子と、発光素子を保護するモールド部材と、を有する発光装置であって、
発光素子上のモールド部材の厚みよりも発光素子からパッケージ側面までの厚みの方が大きく、且つモールド部材中に拡散剤が含有され、
発光素子は、Rが発光可能な発光素子、Bが発光可能な発光素子及びGが発光可能な発光素子であり、
モールド部材は、拡散剤として酸化珪素を分散濃度3ないし12%含有する、
発光装置。」

第4 対比・判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「発光素子」は本願発明の「発光素子」に相当し、同様に、
「発光装置」は「光源装置」に、
「モールド部材」は「封止樹脂」に、それぞれ、相当する。

イ 上記アに照らせば、
引用発明と本願発明とは、
「波長の異なる光を混合して使用する光源装置であって、
波長の異なる光を出射する複数の発光素子と、
該発光素子を覆う封止樹脂層と、を備え」ている点で一致する。

ウ 引用文献の「同様に重量比のみ代えて1、3、6、12%で分散混合させたものもそれぞれ実施例2、3、4、5用として形成させた。」(上記1(4)を参照。)の記載に照らせば、
引用発明の「分散濃度3ないし12%」は「分散濃度3ないし12重量%」を意味するから、引用発明と本願発明とは「封止樹脂(モールド部材)層中に、酸化硅素が1?20wt%で、分散させられている」点で共通する。

(2)一致点
本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。
<一致点>
「波長の異なる光を混合して使用する光源装置であって、
波長の異なる光を出射する複数の発光素子と、
該発光素子を覆う封止樹脂層と、を備え、
該封止樹脂層中に、酸化硅素が1?20wt%で、分散させられている、
光源装置。」

(3)相違点
本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
酸化硅素に関し、
本願発明は、「真球度が0.9以上である粒子含有率が99体積%以上である平均粒子径1?10μmのシリカ粒子」であるのに対して、
引用発明は、シリカ粒子であるか否か不明であり、真球度なども不明である点。

<相違点2>
分散の程度に関し、
本願発明は、「略均一に分散させられている」のに対して、
引用発明は、略均一であるか否か不明である点。

2 判断
(1)上記<相違点1>について検討する。
ア 発光素子を覆う封止樹脂層中に拡散剤として3ないし8μm程度のシリカ粒子を分散させた光源装置は、本願出願時点で周知である(例えば、
(ア)特開平4-137570号公報の第2頁左下欄を参照。
平均粒径4μm程度のシリカなどを利用する旨記載されている。
(イ)特開昭56-19686号公報の第1頁左欄ないし同頁右欄を参照。
平均粒径約3μmないし8μmのシリカ等の充填材を透明な樹脂中に混入する旨記載されている。
(ウ)実願昭56-81158号(実開昭57-193245号)のマイクロフィルムの第2頁第3行ないし第3頁第3行を参照。
平均粒径2ないし5μmのシリカを光散乱剤として利用すること、樹脂中に光散乱剤が小集団を作らないように、充分に散在させることで光拡散効果を向上できる旨記載されている。
以下「周知技術1」という。)。

イ また、封止樹脂にシリカ粒子を分散させる際に、配合時や封止時の流動性等を高めるために、分散させるほぼすべてのシリカ粒子をより真球に近い形状、例えば、真球の程度を表す真球度を0.9以上としたシリカ粒子を99体積%以上の含有率で含む半導体封止用樹脂組成物も、本願出願時点で周知である(例えば、
(ア)特開2005-187302号公報の【0027】及び【0095】を参照。
【0027】には、封止用フィラーは樹脂配合時及び半導体封止時の流動特性が必要であるため球状であることが好ましいこと、【0095】には、真球度0.9以上の粒子含有率を99体積%以上とすることが記載されている。
(イ)特開2005-22915号公報の【0026】及び【0027】を参照。
樹脂配合粘度を低く抑えるために、真球度0.9以上の粒子含有率を99体積%以上とすることが記載されている。
(ウ)特開2004-10420号公報の【0030】及び【0106】を参照。
【0030】には、封止用フィラーは樹脂配合時の流動特性が必要であるため球状であることが好ましいこと、【0106】には、真球度0.9以上の粒子含有率を99体積%以上とすることが記載されている。
(エ)特開2003-277044号公報の【0022】及び【0034】を参照。
【0022】には、樹脂配合時の流動性を高めるためには、球状シリカの真球度は0.9?1.0であることが好ましいこと、【0034】には、真球度0.9以上の粒子含有率が99体積%以上であることが記載されている。
以下「周知技術2」という。)。

ウ 上記周知技術1及び2に照らせば、
引用発明の「封止樹脂(モールド部材)層」中に含有させる「酸化珪素」として「平均粒径3ないし8μm程度のシリカ粒子」を用いることは当業者が適宜なし得たことであり、その際、「封止樹脂(モールド部材)」の配合時の流動性等を高めるために、分散させるシリカ粒子のほぼすべてがより真球に近い形状となるように、真球度0.9以上のシリカ粒子が99体積%以上の含有率で含まれるようにした点に、格別困難性は認められない。

エ 以上の検討によれば、
引用発明において、上記<相違点1>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術1及び2に基づいて適宜なし得たことである。

(2)上記<相違点2>について検討する。
ア 引用文献の「球形状のポリマーなどは、0.1?20μmが好適に利用することができるが、小さすぎれば分散性が悪く、大きすぎれば沈降しやす過ぎるため1?5μmがより好ましい。」(上記1(2)を参照)との記載に照らせば、
引用発明において、封止樹脂(モールド部材)層中に、拡散剤が略均一に分散するようになすことは、当業者が適宜なし得たことである。

イ 以上の検討によれば、
引用発明において、上記<相違点2>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。

(3)効果
本願発明の奏する効果は、当業者が引用発明、引用文献に記載の事項、周知技術1及び2から予測し得る範囲内のものである。

4 進歩性についてのまとめ
本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明、引用文献に記載の事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明、引用文献に記載の事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-11 
結審通知日 2012-12-17 
審決日 2012-12-28 
出願番号 特願2005-249522(P2005-249522)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 道祖土 新吾  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 吉野 公夫
星野 浩一
発明の名称 光源装置  
代理人 井野 砂里  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 弟子丸 健  

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