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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G08G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08G
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G08G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08G
管理番号 1270197
審判番号 不服2012-6454  
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-10 
確定日 2013-02-14 
事件の表示 特願2007- 26977「駐車場監視システム及びその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月21日出願公開、特開2008-191990〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成19年2月6日の出願であって、平成23年5月18日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成23年7月15日付けで意見書とともに手続補正書が提出され、平成24年1月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年4月10日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。


第2.平成24年4月10日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲に関して、本件補正前に下記(1)であったものを下記(2)に補正するものであり、その補正事項は下記(3)に示したものであると認められる。

(1)本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
駐車場を撮影するステレオカメラ装置と、
前記ステレオカメラ装置から出力される撮影画像を送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された撮影画像を使用し、前記撮影画像から車両の3次元座標を算出するステレオ画像処理を実行して、前記車両を個別に検知するための前記車両の大きさと前記駐車場での駐車位置を含むステレオ画像処理結果を出力する画像処理手段と、
前記画像処理手段のステレオ画像処理結果に基づいて、個別に検知されている前記車両の駐車連続時間を計測するための時間情報を取得し、前記車両について駐車時間の算出可能な情報を生成する情報生成手段と、
前記情報生成手段により生成された情報に基づいて、設定した基準時間を超えて前記駐車場に駐車している車両の存在を判定する判定手段と
を具備したことを特徴とする駐車場監視システム。
【請求項2】
前記情報生成手段は、
前記時間情報として、前記駐車場での前記車両の出入りの時刻を示す情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の駐車場監視システム。
【請求項3】
前記駐車場は車両毎の複数の駐車エリアを有し、
前記情報生成手段は、
前記駐車エリア毎に個別に検知された前記車両について駐車時間の算出可能な情報を生成することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の駐車場監視システム。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記基準時間を超えて連続的に駐車している車両が存在している場合に、当該車両が迷惑駐車の車両であると判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の駐車場監視システム。
【請求項5】
前記判定手段は、
前記基準時間を超えて連続的に駐車している車両の駐車エリアを検知し、当該駐車エリアに駐車している車両が迷惑駐車の車両であると判定することを特徴とする請求項3に記載の駐車場監視システム。
【請求項6】
前記情報生成手段により生成された情報及び前記判定手段による判定結果を含む通知情報を生成する手段と、
前記通知情報を出力する手段と
を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の駐車場監視システム。
【請求項7】
前記判定手段の判定結果が前記迷惑駐車の車両である場合に、前記迷惑駐車の車両であることを通知するための通知情報を生成する手段を有することを特徴とする請求項4または請求項5のいずれか1項に記載の駐車場監視システム。
【請求項8】
前記駐車場とは異なる駐車場を監視する他方の駐車場監視システムとの間で、データ通信を行なう通信手段と、
前記判定手段により、前記基準時間を超えて前記駐車場に駐車していると判定された車両を特定する情報を、前記通信手段を介して前記他方の駐車場監視システムに通知する通知手段と
を具備したことを特徴とする請求項1に記載の駐車場監視システム。
【請求項9】
前記駐車場を複数の監視範囲に分割して、他方の監視範囲を監視する他方の駐車場監視システムとの間で、データ通信を行なう通信手段と、
前記一方の監視範囲から前記他方の監視範囲に移動する車両を検知する移動検知手段と、
前記移動検知手段により得られる移動検知情報を、前記他方の駐車場監視システムに前記通信手段を介して通知する通知手段と
を具備したことを特徴とする請求項1に記載の駐車場監視システム。
【請求項10】
駐車場を撮影するステレオカメラ装置から出力される撮影画像を使用し、前記駐車場での車両を監視する駐車場監視システムに適用する監視方法であって、
前記撮影画像から車両の3次元座標を算出するステレオ画像処理を実行して、前記車両を個別に検知するための前記車両の大きさと前記駐車場での駐車位置を含むステレオ画像処理結果を出力する処理と、
前記ステレオ画像処理結果に基づいて、個別に検知されている前記車両の駐車連続時間を計測するための時間情報を取得し、前記車両について駐車時間の算出可能な情報を生成する処理と、
前記生成された情報に基づいて、設定した基準時間を超えて前記駐車場に駐車している車両の存在を判定する処理と
を有する手順を実行することを特徴とする監視方法。
【請求項11】
前記判定する処理により前記基準時間を超えて前記駐車場に駐車していると判定された車両を特定する情報を、前記駐車場とは異なる駐車場を監視する駐車場監視システムに通知する処理をさらに有することを特徴とする請求項10に記載の監視方法。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
駐車場を撮影するステレオカメラ装置と、
前記ステレオカメラ装置から出力される撮影画像を送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された撮影画像を使用し、前記撮影画像から車両の3次元座標を算出するステレオ画像処理を実行して、前記車両を個別に検知するための前記車両の大きさと前記駐車場での駐車位置を含むステレオ画像処理結果を出力する画像処理手段と、
前記画像処理手段のステレオ画像処理結果に基づいて、個別に検知されている前記車両の駐車連続時間を計測するための時間情報を取得し、前記車両について駐車時間の算出可能な情報を生成する情報生成手段と、
前記情報生成手段により生成された情報に基づいて、設定した基準時間を超えて前記駐車場に駐車している車両の存在を判定する判定手段と、
前記駐車場とは異なる駐車場を監視する他方の駐車場監視システムとの間で、データ通信を行なう通信手段と、
前記判定手段により、前記基準時間を超えて前記駐車場に駐車していると判定された車両を特定する情報を、前記通信手段を介して前記他方の駐車場監視システムに通知する通知手段と
を具備したことを特徴とする駐車場監視システム。
【請求項2】
駐車場を撮影するステレオカメラ装置と、
前記ステレオカメラ装置から出力される撮影画像を送信する送信手段と、 前記送信手段から送信された撮影画像を使用し、前記撮影画像から車両の3次元座標を算出するステレオ画像処理を実行して、前記車両を個別に検知するための前記車両の大きさと前記駐車場での駐車位置を含むステレオ画像処理結果を出力する画像処理手段と、
前記画像処理手段のステレオ画像処理結果に基づいて、個別に検知されている前記車両の駐車連続時間を計測するための時間情報を取得し、前記車両について駐車時間の算出可能な情報を生成する情報生成手段と、
前記情報生成手段により生成された情報に基づいて、設定した基準時間を超えて前記駐車場に駐車している車両の存在を判定する判定手段と、
前記駐車場を複数の監視範囲に分割して、他方の監視範囲を監視する他方の駐車場監視システムとの間で、データ通信を行なう通信手段と、
前記一方の監視範囲から前記他方の監視範囲に移動する車両を検知する移動検知手段と、
前記移動検知手段により得られる移動検知情報を、前記他方の駐車場監視システムに前記通信手段を介して通知する通知手段と
を具備したことを特徴とする駐車場監視システム。
【請求項3】
前記情報生成手段により生成された情報及び前記判定手段による判定結果を含む通知情報を生成する手段と、
前記通知情報を出力する手段と
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の駐車場監視システム。
【請求項4】
駐車場を撮影するステレオカメラ装置から出力される撮影画像を使用し、前記駐車場での車両を監視する駐車場監視システムに適用する監視方法であって、
前記撮影画像から車両の3次元座標を算出するステレオ画像処理を実行して、前記車両を個別に検知するための前記車両の大きさと前記駐車場での駐車位置を含むステレオ画像処理結果を出力する処理と、
前記ステレオ画像処理結果に基づいて、個別に検知されている前記車両の駐車連続時間を計測するための時間情報を取得し、前記車両について駐車時間の算出可能な情報を生成する処理と、
前記生成された情報に基づいて、設定した基準時間を超えて前記駐車場に駐車している車両の存在を判定する処理と、
前記判定する処理により前記基準時間を超えて前記駐車場に駐車していると判定された車両を特定する情報を、前記駐車場とは異なる駐車場を監視する駐車場監視システムに通知する処理と
を有する手順を実行することを特徴とする監視方法。」(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付したものである。)

(3)補正事項
[補正事項1]
補正前の請求項1ないし5、7及び10を削除し、補正前の請求項8、9及び11に係る発明の特定事項をそれぞれ補正後の請求項1、2及び4に記載する補正。

[補正事項2]
補正前の請求項1ないし5のいずれか1項を引用していた補正前の請求項6に記載されていた事項を、補正後の請求項1又は2(補正前の請求項8又は請求項9)のいずれかを引用して、補正後の請求項3に記載する補正。


2.本件補正の目的の適否について
(1)補正事項1の検討
補正事項1は、補正前の請求項1ないし5、7及び10を削除し、それに伴い特許請求の範囲の記載を整えたものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第1号に掲げる「請求項の削除」を目的とするものである。

(2)補正事項2の検討
補正後の請求項3は、補正後の請求項1又は2(補正前の請求項8又は請求項9)のいずれかを引用するものとなったことにより、補正前の請求項1、6及び8に記載された事項をすべて含む発明、又は、補正前の請求項1、6及び9に記載された事項をすべて含む発明を特定する記載がされたものとなった。
しかしながら、補正前の特許請求の範囲においては、請求項8及び9は、それぞれ請求項1を引用するのみであり、請求項6を引用していないので、請求項1、6及び8に記載された事項をすべて含む発明、又は、請求項1、6及び9に記載された事項をすべて含む発明を特定する記載は何らされていない。
そうすると、補正事項2は、改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる「請求項の削除」を目的とするものとはいえない。
そこで、補正事項2が改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるかについて検討する。
「特許請求の範囲の減縮」は、第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られ、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。
補正後の請求項3は補正後の請求項1又は2のいずれかを引用するところ、補正後の請求項1及び2に対応する補正前の請求項8及び9を選択的に引用する請求項は補正前の特許請求の範囲にはなかったのであるから、補正前の請求項と補正後の請求項には一対一又はこれに準ずるような対応関係がなく、補正後の請求項3が新たに追加された請求項であること、すなわち、補正事項2が増項補正であることは明らかである。
また、補正後の請求項3が補正前の請求項6に対応するものであるとして検討すると、補正前の請求項6は補正前の請求項1ないし5のいずれか1項を引用しており、補正前の請求項6に記載された発明が補正前の請求項1及び6に記載された事項により特定されるものであったのを、補正後の請求項3に記載された発明では補正前の請求項1、6及び8に記載された事項により特定されるもの、又は、補正前の請求項1、6及び9に記載された事項により特定されるものとなっており、補正後の請求項3に記載された発明は補正前の請求項6に記載された発明に対して補正前の請求項8又は9に記載された事項のいずれかが追加されたものとなっている。
しかしながら、補正前の請求項8に記載された事項は、複数の駐車場のそれぞれに設置された駐車場監視システムが連携して、迷惑駐車などの駐車場管理システムを実現すること(本願明細書の【0043】を参照。)を目的として、補正前の請求項1及び6に記載されていない「通信手段」と「通知手段」を備えるものであり、また、補正前の請求項9に記載された事項は、複数の監視範囲に分割された広域駐車場において、迷惑駐車などの駐車場管理を確実に実現すること(本願明細書の【0056】を参照。)を目的として、補正前の請求項1及び6に記載されていない「通信手段」と「通知手段」を備えるものであるから、補正前の請求項6に記載された発明の解決しようとする課題(迷惑駐車を抑制できる駐車管理システムを提供すること)と補正後の請求項3に記載された発明の解決しようとする課題が同一であるとは認められず、しかも、補正後の請求項3が補正前の請求項6を限定した関係にあるとも認められない。
よって、補正事項2は「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものとは認められない。
さらに、補正事項2が、改正前の特許法第17条の2第4項第3号に掲げる「誤記の訂正」及び同項第4号に掲げる「明りょうでない記載の釈明」に該当しないことも明らかである。

3.独立特許要件について
上記のとおり、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないが、仮に本件補正が、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するとして、本件補正後の請求項1を引用する請求項3に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用例
(1-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-344697号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【請求項5】 駐車場平面を上方から撮影する手段と、
前記駐車場平面の最新の撮影画像と無駐車状態の撮影画像又は直前の撮影画像とを比較して前記駐車場平面の各駐車位置の車両の有無を検出する手段と、
前記各駐車位置の車両有りの検出の連続から長時間駐車車両を検出する手段とを備えたことを特徴とする駐車場の管理装置。」

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に大規模な自走式の平面駐車場に好適な駐車状態の検出,駐車案内及び管理に関する。」

・「【0008】本発明は、第1には、この種の駐車場の満車,空車の状態を自動的に迅速に検出することを課題とし、第2には、駐車待ちの入庫車両を空いている駐車位置に迅速に誘導してすみやかに駐車させることを課題とし、第3には、長時間駐車する車両や侵入物体の自動的な監視を行うことを課題とする。」

・「【0016】つぎに、本発明の第1の駐車場の管理装置においては、駐車場平面を上方から撮影する手段と、駐車場平面の最新の撮影画像と,無駐車状態の撮影画像又は直前の撮影画像とを比較して駐車場平面の各駐車位置の車両の有無を検出する手段と、各駐車位置の車両有りの検出の連絡から長時間駐車車両を検出する手段とを備える。
【0017】したがって、大規模な駐車場にあっても、長時間駐車する車両等を自動的に検出して監視することができる。」

・「【0020】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態につき、図1?図14を参照して説明する。
(第1の形態)まず、本発明の実施の第1の形態について、図1?図10を参照して説明する。図1は図15の駐車場に適用した場合を示し、図1において、図15と同一符号は同一のものを示す。
【0021】そして、図15の係員4,6は配置せず、代わり、場内の適当な位置に支柱9を立設してその上端部に白黒又はカラーのモニタカメラ(ビデオカメラ)10を取付ける。
【0022】このモニタカメラ10は場内の全駐車位置5,5aを撮影するように高さ,撮影角度等が設定される。
【0023】また、場内に3列に配設された24(3×8)の各駐車位置5,5aは、各列をa,b,cとして、a-1,a-2,…,a-8,b-1,b-2,…,b-8,c-1,c-2,…,c-8 の番号が付され、例えば、これらの番号が後述のフィルタ処理で画像上からはマスキングされて消去され易い色彩で、各駐車位置5,5aの同色の枠内に描かれる。
【0024】そして、モニタカメラ10の撮影画像は、車両が全く駐車していないときに、図2に示すようにほぼ各駐車位置5の枠線及び番号のみの無駐車画像P_(10)になり、車両が駐車したときに、例えば図3に示すように無駐車画像P_(10)に、駐車車両を上書きして重ねた有駐車画像P_(10)’になる。
【0025】つぎに、入口2にLED表示パネル,液品表示パネル等からなる電光掲示板状の大型の案内表示装置11が、先頭の入庫車両3から見易いように設けられ、各列a,b,cの入口2側の端部に誘導表示装置12が設けられる。
【0026】そして、ビデオカメラ10及び表示装置11,12は、場内又は場外の管理所等に設けられたコンピュータ構成の管理制御装置13に有線又は無線で接続される。
【0027】この管理制御装置13は具体的にはいわゆるパソコンからなり、このパソコンは図4に示すように本体13a及びCRT等のモニタ表示器13bを備える。
【0028】そして、モニタカメラ10の撮影画像の信号は、本体13aのビデオボードに取込まれ、このボードのA/D変換部14によりデジタル信号に変換された後、画像のライン間又はフィールド間の相関を利用して、フィルタ部15でノイズが低減され、輪部強調部16で輪部線の2値画像に加工される。
【0029】このとき、各駐車位置5,5aの枠線や番号は、周囲の舗装色とほぼ同じ階調であることから、フィルタ部15のフィルタ処理でマスキングされて画像上からは消去される。
【0030】そして、輪部線の2値画像は参照メモリ17,比較部18及びハードディスク等の記憶部19に供給され、参照メモリ17は例えば無駐車画像P_(10)の2値画像又は直前の2値画像を保持して比較部18に供給する。
【0031】なお、記憶部19はA/D変換部14の撮影画像のデジタル信号も、駐車管理に必要な例えば一日分等の最新の一定期間分ずつ更新しながら蓄積記憶する。
【0032】つぎに、管理制御装置13比較部18,検出部20等の各部は、管理制御装置13が図5,図6の処理プログラムを実行することにより、いわゆるソフトウェア処理で形成される。
【0033】そして、通常は図5のステップS_(1)から図6のステップS_(2)に移行し、駐車場が開場(営業)中であれば、状態検出装置及び駐車案内装置として動作するため、ステップS_(2)からステップS_(3)に移行し、例えば数十秒?数分の適当な周期の検出タイミング毎に、ステップS_(4),S_(5)により、比較部18が最新の両2値画像参照メモリ17の2値画像とを比較して異なる部分を抽出し、異なる部分の画像(差画像)を記憶部19及び検出部20に送る。
【0034】この検出部20はステップS_(6) により、各駐車位置5,5aの車両の有無を検出して駐車場の満車状態,空車状態を検出する。
【0035】ところで、検出部20においては、記憶部19から読出された検出条件に基づき、各駐車位置5,5aの撮影画像上での車両の有無の検出領域が検出される。
【0036】これらの検出領域は、撮影画像上において、各駐車位置5,5aに駐車した車両が隣の車両と重ならない範囲であり、モニタカメラ10の実際の撮影画像等から予め決定され記憶部19に保持される。
【0037】そして、参照メモリ17に無駐車画像P_(10)の2値画像が保持されるときは、この2値画像の各検出領域に車両の輪部線が存在せず、車両が駐車したときのみ、差画像のその検出領域に車両の輪部線が出現することから、差画像の各検出領域の車両の輪部線の有無から、各駐車位置5の車両の有無を検出する。
【0038】一方、参照メモリ17に直前の撮影画像の2値画像が保持されるときは、この2値画像に基づく各駐車位置5,5aの前回の車両の有無の検出結果と、今回の差画像の各検出領域の車両の輪郭線の有無とから、各駐車位置5,5’の車両の有無を検出する。
【0039】すなわち、各駐車位置5,5aにおいて、前回の検出結果が車両無しであれば、参照メモリ17に無駐車画像P_(10)が保持される場合と同様であり、今回の差画像の車両の輪部線の有無からそれぞれの車両の有無を検出する。
【0040】また、前回の検出結果が車両有りであれば、既に車両が駐車していることから、差画像の車両の輪部線は、車両が駐車し続けている検出領域には出現せず、今回空き状態になった検出領域に出現する。
【0041】そのため、前回の検出結果が車両有りの駐車領域5,5aについては、差画像の各検出領域の輪部線の有無の逆から現在の車両の有無を検出する。
【0042】そして、ステップS_(6 )は図7に示す各ステップQ_(1a),…,Q_(1n),Q_(2),Q_(3),Q_(4)からなり、検出部20はステップQ_(1a)?Q_(1n)により、参照メモリ17の保持画像及び記憶部19の前回の検出結果に基づき、比較部18から検出画像が出力される毎に、その差画像の各検出領域の車両の輪部線の有無から、各駐車位置の現在の車両の有無を検出する。
【0043】さらに、ステップQ_(2)により、駐車位置5の全てが車両有りであれば満車状態を検出し、駐車位置5の少なくとも1つが車両無しであれば空車状態を検出し、ステップQ_(3),Q_(4)により、各駐車位置5の車両の有無の検出結果とともに満車状態,空車状態の検出出力を記憶部19及び後段の表示処理部21に供給する。」

・「【0055】つぎに、この駐車場システムは長時間駐車車両を検出して監視する管理装置としても動作する。
【0056】すなわち、検出部20により図6のステップS_(6),S_(7)の状態検出を行う際、車両無しから車両有りに変化した駐車位置5,5aが検出される毎に、図4の計測部23によりその駐車位置5,5aのタイマを起動し、車両有の検出が連続する間、そのタイマを動作し続けて駐車時間を計測する。
【0057】そして、ステップS_(8) ,S_(11)の空車の表示出力の後、ステップS_(12)により、計測部23の各タイマの駐車時間を読取り、これらの駐車時間が設定した上限時間を超えると、その駐車位置5,5aの車両を長時間駐車車両として検出し、例えば、その駐車位置5,5aの番号,タイマ起動開始時刻(駐車開始時刻)等の駐車情報を記憶部19に書込む。
【0058】さらに、駐車していた車両が出庫し、ステップS_(7) において、その駐車位置の検出結果が車両有りから車両無しに変化すると、タイマをリセットして停止し、記憶部19の前記駐車情報にその時刻を駐車終了時刻として付加する。
【0059】そして、駐車場の管理者等が本体13aの図示省略したキーボード,マウス等で長時間駐車の管理表示を選択すると、図5のステップS_(1) からステップS_(13),ステップS_(14)を介してステップS_(15)に移行する。
【0060】そして、記憶部19の各駐車情報を読出して適当な表示フォーマットの表示信号に加工し、この表示信号をモニタ出力部24を介してモニタ表示器13bに供給し、長時間駐車車両が検出された駐車位置の番号及び駐車時間を、例えば一覧表状にモニタ表示器13bに表示し、長時間駐車車両を報知する。
【0061】さらに、表示された各駐車時間情報の駐車位置の番号及び時刻を選択等して指定すると、ステップS_(15)からステップS_(16)を介してステップS_(17)に移行し、記憶部19からモニタ出力部24に該当する撮影画像の情報を読出し、モニタ表示器13bにその駐車画像を表示する。
【0062】そのため、この画像表示から、管理者等は長時間駐車車両を確認して必要な措置をとることができる。
【0063】なお、この長時間駐車の管理表示は、例えばモニタ表示器13bの終了表示をマウスクリック等で選択することにより、図5のステップS_(18)からステップS_(1)に戻って終了する。」

・「【0075】したがって、この形態においては、モニタ10,表示装置11,12及び管理制御装置13からなる駐車場管理システムにより、駐車場の状態検出装置,駐車案内装置及び監視装置を形成し、駐車場の満車,空車の状態検出,空車時の空きの駐車位置への案内,誘導及び長時間駐車の検出,監視,閉場中の侵入物体の監視を行うことができる。
【0076】そして、満車,空車の状態検出により、従来のように係員によって空いている駐車位置を検出することなく、自動的に迅速に空いている駐車位置を検出することができる。
【0077】また、空車時の空きの駐車位置への案内,誘導により、係員を省き、自動的にすみやかに入庫車両3を駐車させることができ、駐車待ちの車両を少なくして近隣の交通渋滞を防止することができる。
【0078】さらに、長時間期駐車車両及び侵入物体の検出,監視により、駐車場の管理が自動的に行え、閉場中の不審者の侵入等を監視して安全性を向上することができる。
【0079】なお、モニタカメラ10が駐車場平面を上方から撮影する手段を形成し、監視制御装置13の比較部18が駐車場平面の最新の撮影画像と無駐車画像又は直前の撮影画像とを比較して駐車場平面の各駐車位置の車両の有無を検出する手段を形成する。
【0080】また、管理制御装置13の検出部20が、駐車場の満車状態,空車状態を検出する手段を形成する。
【0081】さらに、管理制御装置13の表示処理部21,表示出力部22が、駐車場入口の案内表示装置11に満車状態,空車状態の検出結果を表示し、空車状態の検出時に、案内表示装置11に車両無しの駐車位置への順路案内を表示する手段を形成する。
【0082】また、各誘導表示装置12が、駐車場の入口から前記順路案内に沿って車両無しの駐車位置に車両を誘導する表示を行う手段である。
【0083】つぎに、管理制御装置13の検出部20及び計測部23が、各駐車位置の車両有りの検出の連続から長時間駐車車両を検出する手段を形成する。」

・「【0088】(第2の形態)つぎに、本発明の実施の第2の形態について、図11?図14を参照して説明する。図11は第1の形態の場合より大規模な駐車場1’に適用した場合を示し、同図において、ダッシュ(’)を付した符号のものは図1の同一符号のものと同一もしくは相当するものを示し、27はショッピングセンタ等の店舗であり、3個所に出入口28がある。
【0089】そして、このような大規模な駐車場1’の場合、画像処理の精度等を考慮して1台のモニタカメラ10’の撮影範囲を20台分の駐車位置5’の範囲とすると、駐車場平面を20台分の駐車位置5’の広さの複数(6個)の監視領域1a,1b,…,1fに分割し、領域1a?1f毎にモニタカメラ10’を設置する。
【0090】そして、これらのカメラ10’の撮影画像の信号を有線,無線で店内の管理室に設けた図1の管理制御装置13と同様の管理制御装置13’に送り、この装置13’により前記第1の形態の場合と同様にして満車,空車の状態検出,駐車案内及び長時間駐車,侵入物体の検出,監視の管理を行う。」

・「【0093】また、この形態にあっては、近隣の駐車場の管理制御装置13’間で電話線等の通信線を介して互いに情報をやりとりし、満車時には表示画面P_(11)’に図14に示すように、上段に満車を表示し、その下に、近隣の駐車場の状態及び地図を表示する。
【0094】したがって、この形態の場合は、前記第1の形態の場合と同様の効果が得られ、とくに大規模な駐車場での極めて円滑な駐車場管理を実現することができる。」

・「【0105】つぎに、請求項5の管理装置の場合は、駐車場に長時間駐車する車両等を自動的に検出監視して管理することができる。」

・そして、段落【0026】及び【0090】の記載によれば、モニタカメラは場内又は場外の管理所等に設けられたコンピュータ構成の管理制御装置13に有線又は無線で接続されているのであるから、モニタカメラから出力される撮影画像を送信する送信手段を備えていることは明らかである。
また、特に、【請求項5】、段落【0016】、【0032】?【0043】及び【0079】の記載によれば、駐車場平面の最新の撮影画像と無駐車状態の撮影画像又は直前の撮影画像とを比較して、前記駐車場平面の各駐車位置の車両の有無の検出結果を出力する手段(以下、この手段を「第1の検出手段」という。)が記載されていると認められ、この第1の検出手段が送信手段から送信された撮影画像を使用していることは明らかである。
また、段落【0056】の記載によれば、車両無しから車両有りに変化した駐車位置が検出される毎に、その駐車位置のタイマを起動し、車両有りの検出が連続する間、そのタイマを動作し続けて駐車時間を計測する計測部が記載されていると認められ、この計測部が駐車時間を計測するのに、第1の検出手段の検出結果に基づいていることは明らかである。
また、特に、【請求項5】、段落【0016】、【0057】及び【0083】の記載によれば、計測部の各タイマの駐車時間を読取り、これらの駐車時間が設定した上限時間を超えると、その駐車位置の車両を長時間駐車車両として検出する手段(以下、この手段を「第2の検出手段」という。)が記載されていると認められる。
また、段落【0057】及び【0060】?【0061】の記載によれば、駐車時間及び長時間駐車車両が検出された駐車位置の番号等の駐車情報を適当な表示フォーマットの表示信号に加工する手段と、表示信号がモニタ出力部を介して供給され、前記駐車時間及び前記長時間駐車車両が検出された駐車位置の番号等の駐車情報を表示するモニタ表示器が記載されていると認められる。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「駐車場平面を上方から撮影するモニタカメラと、
前記モニタカメラから出力される撮影画像を送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された撮影画像を使用し、前記駐車場平面の最新の撮影画像と無駐車状態の撮影画像又は直前の撮影画像とを比較して、前記駐車場平面の各駐車位置の車両の有無の検出結果を出力する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段の検出結果に基づいて、車両無しから車両有りに変化した駐車位置が検出される毎に、その駐車位置のタイマを起動し、車両有りの検出が連続する間、そのタイマを動作し続けて駐車時間を計測する計測部と、
前記計測部の各タイマの駐車時間を読取り、これらの駐車時間が設定した上限時間を超えると、その駐車位置の車両を長時間駐車車両として検出する第2の検出手段と、
前記駐車時間及び前記長時間駐車車両が検出された駐車位置の番号等の駐車情報を適当な表示フォーマットの表示信号に加工する手段と、
前記表示信号がモニタ出力部を介して供給され、前記駐車時間及び前記長時間駐車車両が検出された駐車位置の番号等の駐車情報を表示するモニタ表示器と
を備えた駐車場の管理装置。」

(1-2)引用例2
同じく、原査定の拒絶の理由に周知例として引用された特開2000-99894号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0052】図15は、前記第3の実施例の変形例であって、各駐車ブロック6a?6dには、それぞれ前記局所領域用カメラ1a?1dに代えて、一対のカメラ26U,26Lから成るステレオカメラ1A?1Dが配置される。また各制御ボックス2a?2d内の車両検出部11a?11dには3次元計測用の機能が組み込まれる。なお入口8の近傍の支柱4上には、図13と同様、単一の主カメラ1と制御ボックス2Mとが配備される。
【0053】各制御ボックス2a?2d内の車両検出部11a?11dでは、それぞれステレオカメラ1A?1Dからの2枚の画像を用いた3次元計測処理が実施された後、その計測結果とマップ情報とが対応づけられて、駐車エリア毎に車両の有無が判別される。メインの制御ボックス2M内の構成は、前記図13と同様であって、各駐車ブロック6a?6d毎の判別結果を統合して、主カメラ1からの画像に応じたパターン画像が作成された後、このパターン画像と主カメラ1からの画像とが合成されて、表示板3に出力される。
【0054】上記構成によれば、各駐車ブロック6a?6d毎の車両検出が3次元計測処理により行われるので、車両検出精度を向上できる。また3次元計測の場合、画像上の車両が分離されていなくとも、各車両を切り分けて認識できるため、ステレオカメラ1A?1Dの設置位置を低くすることができる。よって専用の支柱4a?4dに代えて、既存の照明灯や建物を利用できるようになり、支柱設置用の費用を削減することができる。」

(1-3)引用例3
前置報告書で新たに引用した特開2004-234429号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0052】
次に、本発明の第6の実施例を詳細に説明する。図6は、本発明にかかる駐車場管理システムの第6の実施例の構成図である。駐車場管理システムは、車番読取装置100(動画像入力部110、車番読取部130、ネットワーク接続部140とから成る)、集中精算機500、退出阻止装置200(退出阻止部210、制御部220、警告発生部230とから成る)、退出阻止装置300(退出阻止部310、制御部320、警告発生部330とから成る)とから成る。なお、退出阻止装置は、本実施例では2個であるが、3個以上の構成とした場合も、本実施例に準じた動作である。車番読取装置100、退出阻止装置200、退出阻止装置300、集中精算機500、はLANで接続される。当該LANは、駐車場ごとに構築されるものである。さらに、当該LANは、WAN600に接続され、WAN600には、共通データベース装置700(共通データベース700、車番照合部710、ネットワーク接続部720とから成る)が接続されている。
【0053】
次に、図6の第6の実施例における駐車場管理システムの構成図に基づいて、第6の実施例の動作を説明する。本実施例における駐車場管理システムは、車番読取装置100、集中精算機500、退出阻止装置200、退出阻止装置300で構成され、それらが、施設内のネットワーク(LAN)で結ばれる。先ず、車番読取り装置の動作を説明ずる。車番読取り装置は、動画像入力部110、データベース部120、車番読取り部130、ネットワーク部140から成り、動画像入力部110は、パンチルトカメラなどで構成され、施設全体の映像を撮影し、車番読取り部130に送る。車番読取部130は、第一の実施例と同様の構成、動作であるので、説明を省略する。
【0054】
車番読取部130から出力された、車番画像および車番は、ネットワーク接続部140を介して、WAN600を経由し、共通データベース装置700に送られる。共通データベース装置700のネットワーク接続部730は、これを受け、車番照合部720に送る。車番照合部720は、当該車番とデータベース部710とを照合する。
【0055】
照合した結果が一致しない場合は、当該車番および車番画像および利用回数1および料金支払回数0をデータベース部120に登録する。
【0056】
照合した結果が一致する場合は、当該データベース内容の駐車回数と料金支払い回数を比較する。駐車回数と料金支払い回数が一致しない(駐車回数が多い)場合は、当該車両が過去に不正駐車を行ったことがわかる。その旨を、ネットワーク接続部730を介して、退出阻止装置200または300に送出するとともに、当該車両のデータベース内容の駐車回数を1だけ増やす。なお、駐車回数と料金支払い回数が一致した場合は、当該車両のデータベース内容の駐車回数を1だけ増やす。
【0057】
一方、当該車両が料金を支払った場合はその旨を集中精算機500よりWAN600を介して共通データベース装置700のネットワーク接続部730に送られる。ネットワーク接続部730は、車番照合部720に送り、当該車両に関するデータベース部710の内容の料金支払回数を1増加する。
【0058】
車両が過去に不正駐車を行ったのでその旨を、ネットワーク接続部730を介して、退出阻止装置200または300が受けると退出阻止装置の対応する制御部は退出阻止装置に対して車両の入庫前に退出阻止部のフラップを上げるよう指示する。したがって、当該車両の入庫は抑止される。
【0059】
また、警告発生部230または330が警報を発生し、きちんと料金を支払うように促す。
【0060】
WAN600には、共通データベース装置700が接続されるとともに、同様の駐車場管理システムが、複数接続される。当該共通データベース装置は、複数の駐車場間で、最新の情報と照合することができる。これにより、他駐車場で不正駐車を行ったものに対して、別の駐車場に駐車した際に不正駐車しないよう警告などを与えることができる。
【0061】
以上説明したように、第6の実施例によれば、車番、車番画像を格納するデータベース部を共通データベースとし、駐車場管理システム間をWANやインターネットで接続する構成とし、複数の施設から同一データベースの読出し、書込み、更新が可能となったので、複数の施設で、他駐車場の不正駐車車両についても不正抑止の警告を行うことが可能となり、抑止効果を飛躍的に高めることが出来る。
【0062】
また、一般にデータベース装置は大量のデータを格納するため規模が大きくコストがかかる場合が多い。共通データベース装置とすることにより、費用を分担することが出来、規模の小さな駐車場においても容易に導入できる。ひいては、導入施設が増えることで、不正駐車を一層抑止することが可能となるので、効果がより高まる。
【0063】
第6の実施例では、第1から第3の実施例に対して、不正駐車車両のデータベースの内容を、複数の駐車場間で共通化するようにしたもので、他駐車場の不正駐車車両に対して、警告を発することができ、一層の抑止効果をあげることが可能となる。さらに、駐車場相互間の情報提供を行うことが出来るので、例えば、区画空き情報の共有・配信・提供なども可能になり、利用者へ駐車場の空き情報などを提供することができ、サービスが向上する。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、車番読取りした結果とデータベースを照合して、照合した結果により、過去に不正のある車両に対す措置を実施できる。また、優良利用者に対しては、割引などのサービスを提供することができ、利便性が向上し、利用率を上げることが可能となる。さらに複数の駐車場でこれらの情報を共有することができるので、さらに優れた効果を有する。」

(2)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを、その機能・作用を考慮して対比する。
・後者の「駐車場平面を上方から撮影する」態様は,前者の「駐車場を撮影する」態様に相当する。
また、後者の「モニタカメラ」と前者の「ステレオカメラ装置」とは、「カメラ装置」との概念で共通する。

・後者の「駐車場平面の最新の撮影画像と無駐車状態の撮影画像又は直前の撮影画像とを比較して」との態様と、前者の「撮影画像から車両の3次元座標を算出するステレオ画像処理を実行して」との態様とは、「画像処理を実行して」との概念で共通する。
また、後者の「駐車場平面の各駐車位置の車両の有無の検出結果」と、前者の「車両を個別に検知するための前記車両の大きさと前記駐車場での駐車位置を含むステレオ画像処理結果」とは、「車両を個別に検知するための駐車場での駐車位置を含む画像処理結果」との概念で共通する。
さらに、後者の「第1の検出手段」は前者の「画像処理手段」に相当する。

・後者の「第1の検出手段の検出結果」と前者の「画像処理手段のステレオ画像処理結果」とは、「画像処理手段の画像処理結果」との概念で共通する。
また、前者の「個別に検知されている車両の駐車連続時間を計測するための時間情報を取得し、前記車両について駐車時間の算出可能な情報を生成する」態様については、本願明細書の段落【0023】?【0027】の記載によれば、駐車開始時刻からの経過時間を計測して駐車連続時間を、監視情報に含まれる時間情報の一部として生成するものであり、経過時間を計測することはタイマを動作させる態様を含むものであるから、後者の「車両無しから車両有りに変化した駐車位置が検出される毎に、その駐車位置のタイマを起動し、車両有りの検出が連続する間、そのタイマを動作し続けて駐車時間を計測する」態様は前者の「個別に検知されている車両の駐車連続時間を計測するための時間情報を取得し、前記車両について駐車時間の算出可能な情報を生成する」態様に相当する。
さらに、後者の「計測部」は前者の「情報生成手段」に相当する。

・後者の「計測部の各タイマの駐車時間を読取り」との態様は、前者の「情報生成手段により生成された情報に基づいて」との態様に相当する。
また、後者の「これらの駐車時間が設定した上限時間を超えると、その駐車位置の車両を長時間駐車車両として検出する」態様は、前者の「設定した基準時間を超えて駐車場に駐車している車両の存在を判定する」態様に相当する。
さらに、後者の「第2の検出手段」は前者の「判定手段」に相当する。

・後者の「駐車時間」は前者の「情報生成手段により生成された情報」に相当し、後者の「長時間駐車車両が検出された駐車位置の番号」は前者の「判定手段による判定結果」に相当し、後者の「適当な表示フォーマットの表示信号」は前者の「通知情報」に相当する。
よって、後者の「駐車時間及び長時間駐車車両が検出された駐車位置の番号等の駐車情報を適当な表示フォーマットの表示信号に加工する手段」は、前者の「情報生成手段により生成された情報及び前記判定手段による判定結果を含む通知情報を生成する手段」に相当する。

・後者の「表示信号がモニタ出力部を介して供給され、駐車時間及び長時間駐車車両が検出された駐車位置の番号等の駐車情報を表示するモニタ表示器」は、前者の「通知情報を出力する手段」に相当する。

・後者の「備えた」態様は前者の「具備した」態様に相当する。
また、後者の「駐車場の管理装置」は前者の「駐車場監視システム」に相当する。

したがって、両者は、
「駐車場を撮影するカメラ装置と、
前記カメラ装置から出力される撮影画像を送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された撮影画像を使用し、画像処理を実行して、車両を個別に検知するための前記駐車場での駐車位置を含む画像処理結果を出力する画像処理手段と、
前記画像処理手段の画像処理結果に基づいて、個別に検知されている前記車両の駐車連続時間を計測するための時間情報を取得し、前記車両について駐車時間の算出可能な情報を生成する情報生成手段と、
前記情報生成手段により生成された情報に基づいて、設定した基準時間を超えて前記駐車場に駐車している車両の存在を判定する判定手段と、
前記情報生成手段により生成された情報及び前記判定手段による判定結果を含む通知情報を生成する手段と、
前記通知情報を出力する手段と
を具備した駐車場監視システム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
カメラ装置に関し、本願補正発明ではステレオカメラ装置であるのに対して、引用発明ではモニタカメラであって、それ以上の特定はされていない点。

[相違点2]
画像処理手段に関し、本願補正発明では撮影画像から車両の3次元座標を算出するステレオ画像処理を実行して、ステレオ画像処理結果を出力するのに対して、引用発明では画像処理を実行して、画像処理結果を出力するといえるものの、それ以上の特定はされていない点。

[相違点3]
画像処理結果に関し、本願補正発明では車両を個別に検知するための前記車両の大きさと駐車場での駐車位置を含むのに対して、引用発明では車両を個別に検知するための駐車場での駐車位置を含むといえるものの、それ以上の特定はされていない点。

[相違点4]
本願補正発明が、駐車場とは異なる駐車場を監視する他方の駐車場監視システムとの間で、データ通信を行なう通信手段と、判定手段により、基準時間を超えて前記駐車場に駐車していると判定された車両を特定する情報を、前記通信手段を介して前記他方の駐車場監視システムに通知する通知手段とを具備しているのに対して、引用発明ではそのような特定はされていない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1及び相違点2について]
請求人も平成23年7月15日付け意見書において「なお、ステレオ画像処理により車両などの物体を検知する技術は、引用例2を参照するまでもなく、画像処理の分野では周知事項です。」(3頁5?6行)と述べているように、各駐車位置毎の車両検出をするのに、車両検出精度を向上するために、ステレオカメラからの画像を用いた3次元計測処理を実施すること(すなわち、ステレオカメラ装置から出力される撮影画像を使用し、該撮影画像から車両の3次元座標を算出するステレオ画像処理を実行すること)は引用例2にも記載があるように本願の出願前に周知技術である。
そして、引用発明において、各駐車位置毎の車両の有無を検出するのに、その検出精度を向上させることは当然に考慮されることであるから、引用発明に上記周知技術を適用し、上記相違点1及び2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものと認められる。

[相違点3について]
駐車場内の車両を識別するための情報として車両の大きさを用いることは、本願の出願前に慣用手段(必要であれば、特開平10-2120号公報(特に、段落【0032】?【0035】)、特開2001-134898号公報(特に、段落【0012】)及び特開2001-67599号公報(特に、【請求項1】、【請求項5】、段落【0004】?【0005】、【0015】及び【0019】)を参照。)である。
そして、引用発明において、モニタ表示器の画像表示から、管理者等が長時間駐車車両を確認して必要な措置をとる(引用例1の段落【0062】を参照。)際に、前記長時間駐車車両を確認しやすくすることは内在する課題であり、そのために前記長時間駐車車両を特定する情報を増せばよいことは技術常識として理解できることであるから、引用発明に上記慣用手段を適用し、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものと認められる。

[相違点4について]
引用例3には、不正駐車の一層の抑止効果をあげるために、不正駐車車両のデータベースの内容を、複数の駐車場管理システム間で共通化し(車番、車番画像を格納するデータベース部を共通データベースとし、駐車場管理システム間をWANやインターネットで接続する構成とし)、駐車場管理システムにおいて、他駐車場で不正駐車を行った車両の情報を用いて駐車場の管理を行う(他駐車場の不正駐車車両についても不正抑止の警告を行う)こと(以下「引用例3に記載の事項」という。)が記載されている。
そして、引用発明においても、長時間駐車車両、すなわち、不正駐車車両の監視を行うものであって、不正駐車の抑止効果をあげることは内在する課題であるから、それを可能とする上記引用例3に記載の事項を引用発明に適用することは当業者が容易に着想し得ることである。
また、複数の管理システム間で互いの情報を共通化するのに、データ通信を行う通信手段(電話線等の通信線、WANやインターネット等)を用いて、複数の管理システム間で互いの情報を通知することは、常套手段(必要であれば、引用例1の段落【0093】及び引用例3の段落【0061】?【0063】を参照。)である。
そうすると、引用発明において、引用例3に記載の事項及び上記常套手段に基づき、上記相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものと認められる。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果は、引用発明、引用例3に記載の事項、上記周知技術、上記慣用手段及び上記常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例3に記載の事項、上記周知技術、上記慣用手段及び上記常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に本件補正が改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるとしても、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成23年7月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「駐車場を撮影するステレオカメラ装置と、
前記ステレオカメラ装置から出力される撮影画像を送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された撮影画像を使用し、前記撮影画像から車両の3次元座標を算出するステレオ画像処理を実行して、前記車両を個別に検知するための前記車両の大きさと前記駐車場での駐車位置を含むステレオ画像処理結果を出力する画像処理手段と、
前記画像処理手段のステレオ画像処理結果に基づいて、個別に検知されている前記車両の駐車連続時間を計測するための時間情報を取得し、前記車両について駐車時間の算出可能な情報を生成する情報生成手段と、
前記情報生成手段により生成された情報に基づいて、設定した基準時間を超えて前記駐車場に駐車している車両の存在を判定する判定手段と
を具備したことを特徴とする駐車場監視システム。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2.[理由]3.(1)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から「前記駐車場とは異なる駐車場を監視する他方の駐車場監視システムとの間で、データ通信を行なう通信手段」、「前記判定手段により、前記基準時間を超えて前記駐車場に駐車していると判定された車両を特定する情報を、前記通信手段を介して前記他方の駐車場監視システムに通知する通知手段」、「前記情報生成手段により生成された情報及び前記判定手段による判定結果を含む通知情報を生成する手段」及び「前記通知情報を出力する手段」を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比した場合の相違点は、上記「第2.[理由]3.(2)」で挙げた相違点1、2及び3となるから、上記「第2.[理由]3.(3)」における検討内容を踏まえれば、本願発明は引用発明、上記周知技術及び上記慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をされるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-13 
結審通知日 2012-12-18 
審決日 2012-12-26 
出願番号 特願2007-26977(P2007-26977)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08G)
P 1 8・ 575- Z (G08G)
P 1 8・ 572- Z (G08G)
P 1 8・ 571- Z (G08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神山 貴行鈴木 貴雄  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 川口 真一
槙原 進
発明の名称 駐車場監視システム及びその方法  
代理人 河野 哲  
代理人 中村 誠  
代理人 中村 誠  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  
代理人 河野 哲  
代理人 村松 貞男  
代理人 峰 隆司  
代理人 峰 隆司  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  
代理人 村松 貞男  

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